説明

プラスチックレンズ又は光導波路の製造方法

【課題】光インプリント法で0.2mm以上の厚みでも透明性の高い硬化物が得られ、露光機の照度を落とすことがなく高スループットを維持でき、酸素透過性のあるポリジメチルシロキサン樹脂をモールド材料に用いた場合でも、十分に硬化出来、モールドの劣化を少なくすることができるプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法を提供する。
【解決手段】光源、光透過性モールド及び光硬化性樹脂組成物をこの順で配置し、光透過性モールドを通して光を照射して光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られるプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法において、光透過性モールドが光拡散性を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物を用いた、プラスチックレンズ、例えば、撮像用の光学レンズ、LED用のレンズ、及び光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なパターン形成を低コストで行うための新たな技術として、インプリント技術の開発が進められており、下記の特許文献1〜4などにおいて開示されている。
これは、表面にレンズ形状など微細な凹凸(型パターン)が形成された型(以下、「モールド」ともいう)を用いて被加工材に対して型押しすることにより所定のパターンを被加工材に転写するものである。このインプリント技術には、被加工材の材料に応じて熱インプリント方式と光インプリント方式の2つに大別される。
【0003】
熱インプリント方式は、基板上に転写する樹脂材料として熱可塑性樹脂を載置し、この熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上まで加熱することにより軟化させた状態で、型を軟化した樹脂上からプレスして、凹凸形状が転写された樹脂成形部材を得ることができるが、加熱と冷却に長時間掛かるため、スループットが低い事と、熱膨張と収縮により、寸法精度が低い事が欠点となっている。これに対して、光インプリントは室温に近い温度でモールド成型できるため、高スループットと高精度で熱インプリントより優れている。
【0004】
光インプリント方式では基板上に被加工材として光硬化性樹脂組成物を載置し、光硬化性樹脂組成物に型をプレスし、これに紫外線(UV)を照射することにより光硬化性樹脂組成物を硬化させて、型の3次元形状(凹凸形状)を転写して樹脂成型部材を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186570号公報
【特許文献2】特開2007−176037号公報
【特許文献3】特開2007−150053号公報
【特許文献4】特開2004−34300号公報
【特許文献5】特開平6−8252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光インプリント方式は高精度加工、高スループットが実現可能であるが、厚みが0.2mmを超えるような厚みのあるものを光インプリント方式で作成すると、光硬化性樹脂組成物の不均一な硬化により、樹脂内部にうねりやむらのようなものができ、硬化物の透明性が落ちる問題があった。特許文献5にはこのような光硬化でできるむらを解消するために、露光光源と型の間に光拡散板を挿入することが開示されている。
しかしながら、装置上、光拡散板を設置しにくく煩雑である場合や、装置の構造上設置できない場合があった。また簡単に設置可能な場合でも、光拡散板と光硬化性樹脂組成物との距離が少しでも離れた場合、拡散板からの出射光が周辺に約20〜30%広がるのと、間に空気層が存在する事により、光拡散板と空気界面反射で約4%、空気と光硬化性樹脂組成物との界面反射で約4%の計約8%の照度の減衰が起こり、光硬化性樹脂組成物に直接当たる光量が下がってしまい、スループットが落ちてしまうという問題があった。
【0007】
特に酸素透過性のあるポリジメチルシロキサン(以下PDMS)樹脂をモールド材料として用いて、光硬化性樹脂組成物として光ラジカル硬化型の光硬化性樹脂組成物では、酸素硬化阻害の対策に高露光量が必要で、光量が下がると、得られた硬化物のモールド側に、タック性がある状態のままモールドをはがすことになり、得られた硬化物としては表面硬化が不十分となり、また、モールドの劣化が早くなるといった問題もあった。
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、透明性の高い厚みのある光学部材を高スループットで形成でき、酸素透過性の高いPDMS樹脂をモールド材料としてを用いた場合でも十分硬化でき、モールドの寿命も長くすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した従来技術の問題に鑑みて、鋭意検討し実験を重ねた結果、光源、光透過性モールド及び光硬化性樹脂組成物をこの順で配置し、光拡散性を有する光透過性モールドを用いてプラスチックレンズ又は拡散板を製造することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]光源、光透過性モールド及び光硬化性樹脂組成物をこの順で配置し、光透過性モールドを通して光を照射して光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られるプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法において、光透過性モールドが光拡散性を有する、プラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[2]上記光透過性モールドの365nmにおけるヘーズ値が50%以上であり、且つ、365nmにおける光透過率が80%以上である、上記[1]に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[3]上記光透過性モールドが、光硬化性樹脂組成物側の面に厚みが0.2mm〜5mmの型パターンを有し、光源側の面に厚み0.1μm〜50μmの凹凸形状を有する、上記[1]又は[2]に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[4]上記0.1μm〜50μmの凹凸形状が、球状又は半球状である、[3]記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[5]上記光透過性モールドが、モールド内部にモールド材料とは異なる屈折率の微粒子を分散させたモールドである、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【0010】
[6]上記光透過性モールドが、ポリジメチルシロキサンを原料とするモールドである上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[7]上記光透過性モールドが、石英又はガラス上に型パターンを有する樹脂を積層して得られたモールドであり、該石英又はガラスが光拡散性を有する、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[8]上記型パターンを有する樹脂が、ポリジメチルシロキサンである上記[7]に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[9]上記光透過性モールドが、光拡散性を有する支持体上に型パターンを有する部材を型パターン面が外側になるように積層して得られたモールドであって、該支持体と該型パターンを有する部材との屈折率差が0.1以下である、上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
[10]上記光透過性モールドが、光拡散性を有する支持体として石英又はガラスを、型パターンを有する部材としてポリジメチルシロキサンを用い、両者の間に空気が存在しないように積層したモールドである、上記[9]に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
以上により、本発明によれば光インプリント法で0.2mm以上の厚みでも透明性の高い硬化物が得られ、露光機の照度を落とすことがなく高スループットを維持でき、酸素透過性のあるPDMS樹脂をモールド材料に用いた場合でも、十分に硬化出来、モールドの劣化を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法を詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、光源、光透過性モールド及び光硬化性樹脂組成物をこの順で配置し、光透過性モールドを通して光を照射して光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られ、光透過性モールドが光拡散性を有する。
光透過性モールドの365nmにおけるヘーズ値は、50%以上であり、且つ、365nmにおける透過率が80%以上であることが好ましい。
上記ヘーズ値は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。得られる硬化物(プラスチックレンズ又は光導波路)の透明性の観点から、50%以上が好ましい。ヘーズ値はJIS K-7136によって測定される。
また光透過性モールドの365nmにおける光透過率は80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。得られる硬化物(プラスチックレンズ又は光導波路)の機械物性の観点から、光透過率は80%以上が好ましい。365nmにおける光透過率は、JIS K-7361-1で測定される。
【0013】
光透過性モールドに光拡散性を持たせる方法としては、例えば、
1)モールドの凹凸面(パターン面、その厚みは0.2mm〜5mmであることが好ましい)と反対になる側(光源側)に、サンドブラストや型押し成型などの方法で厚み0.1μm〜50μmの凹凸形状を形成する方法、
2)光拡散剤を塗布する方法、
3)モールド内部に、モールド材料とは異なる屈折率の微粒子を練り混ぜて分散させる方法、
などが挙げられる。
【0014】
上記1)の方法においては、光拡散性を有する石英又はガラス上に型パターンを有する樹脂を積層して得られたモールドを用いることができる。
この場合、光拡散性を有する石英又はガラスが、型パターンを有する樹脂(例えば、PDMS樹脂)を支持することができ、光照射時に有る程度の圧力をかけることが出来るため、好ましい。光拡散性を有する石英又はガラスは、その表面に厚み0.1μm〜50μmの凹凸形状を形成することで得ることができる。
また、厚み0.1μm〜50μmの凹凸形状は、球状又は半球状であることが、三角形状よりもガラスとの入射角が大きくなるため、表面での反射が減り光硬化性樹脂組成物への入射光量が高くできるので望ましい。凹凸形状の厚みは、0.5μm〜10μmであることが更に好ましい。
また、光透過性モールドの材料としては、石英やガラス、PDMS樹脂を用いることができる。
【0015】
上記3)の方法においては、例えばPDMSやポリメタクリル酸メチル(PMMA)などモールドの材料と屈折率の異なる微粒子を用いればよい。このような微粒子の部材としてはシリカ、アルミナ、タルク、ジルコニア、酸化亜鉛、二酸化チタンなどの無機系の微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、シリコーン樹脂などの有機系の微粒子を使用することができる。微粒子の形状は球形が好ましく、粒子径の直径は0.1μm〜20μmが好ましく、0.1μm〜10μmが更に好ましい。これらの微粒子は、表面での反射が減り光硬化性樹脂組成物への入射光量が高くできる観点から好ましい。
粒子径の直径は、モールドの光透過性の観点から、0.5μm〜5μmであることが最も好ましい。また、モールドの光硬化性樹脂組成物と接する表面に微粒子の形状がでてこないようにするため、透明凹凸モールド層と光拡散剤を練りこんだ層を2層にすることが好ましい。
【0016】
また、モールドとして、光拡散性を有する支持体上に凹凸面(モールドの型パターン面)を有する部材を凹凸面が外側になるように積層して得られたモールドを用いる場合、積層した界面での反射を減らす観点から光拡散性を有する支持体と凹凸面を有する部材との屈折率差が0.1以下であるモールドであることが好ましい。
また、上記支持体と凹凸面を有する部材との間には空気層が存在しないようにすることが好ましい。
これは、光拡散性を有する支持体を透過した光は拡散光となるため、凹凸面を有する部材に入射する前に空気の層を透過すると、空気界面での反射が大きくなり拡散光(Td)と直進光(Tt)との比が小さくなりヘーズ値の低下を招いてしまうため、また、空気層の存在によって透過率全体の低下は約10%近くなるためである。
そして、空気層が形成されないように積層する観点から、光拡散性を有する支持体の材料はガラス又は石英であり、凹凸面を有する部材の材料はPDMSであることが好ましい。
【0017】
光硬化性樹脂組成物としては、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂と光重合開始剤を含有するものであることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては、例えば、下記のポリオルガノシロキサンを用いることができる。
ポリオルガノシロキサンは、少なくとも下記一般式(1):
(R4−n−(Si)−(OR・・・・・(1)
{式中、Rは、水素原子、フェニル基又は炭素数1〜17の1価の有機基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜18の有機基であり、そしてnは、1〜から4の整数であり、RとRは、複数存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。}で表されるオルガノシランを原料とする縮合物である。
【0018】
保存の対象となるポリオルガノシロキサンは、シランに結合したアルコキシ基又はシランに結合した水酸基が存在する場合、更に光重合性基が存在する場合、本発明の保存方法により、その効果が顕著に発現する。
【0019】
シランに結合したアルコキシ基又はシランに結合した水酸基を有するポリオルガノシロキサンは、少なくとも1種のシラノール化合物{上記一般式(1)において複数のRが、それぞれ独立に、芳香族基を少なくとも1つ含む炭素数6〜18の有機基であり、そしてRが水素原子である。}と、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物{上記一般式(1)においてRが、エポキシ基及び炭素−炭素二重結合基からなる群より選択される基を少なくとも1つ含む炭素数2〜17の有機基であり、複数存在する場合Rは同一であっても異なっていてもよく、Rが、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基であり、そしてnが、2又は3の整数である。}と、触媒とを混合し、積極的に水を添加することなく重合させる方法で得られる。
【0020】
好適なシラノール化合物としては、ジフェニルシランジオール、ジ−p−トルイルシランジオール、ジ−p−スチリルシランジオール、ジナフチルシランジオールなどが挙げられるが、共重合、耐熱性の観点などを考慮すると、ジフェニルシランジオール(以下、「DPD」ともいう。)が特に好適である。
【0021】
好適なアルコキシシラン化合物としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、ビニルエチルトリエトキシシラン、1−プロペニルトリメトキシシラン、1−プロペニルトリエトキシシラン、2−プロペニルトリメトキシシラン、2−プロペニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−(1−プロペニルフェニル)トリメトキシシラン、p−(1−プロペニルフェニル)トリエトキシシラン、p−(2−プロペニルフェニル)トリメトキシシラン、p−(2−プロペニルフェニル)トリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、p−スチリルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0022】
好適なアルコキシシラン化合物としては、さらに、優れたUV−i線感光特性を得るために、光重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシランがより好ましく、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシランが好ましい。
【0023】
前記触媒として、シラノール化合物のシラノール基と、アルコキシシラン化合物のアルコキシシリル基との脱アルコール縮合反応を促進する化合物を使用することができる。
好適な触媒としては、下記一般式(2):
(OR・・・・・(2)
{式中、Mは、ケイ素、ゲルマニウム、チタニウム、ジルコニウム、ホウ素又はアルミニウムのいずれかであり、複数のRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてnは、3又は4である。}で表される金属アルコキシド(以下、単に「金属アルコキシド」ともいう。)の内の少なくとも1つの触媒、又はアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0024】
上記一般式(2)で示される金属アルコキシドは、シラノール化合物(シラノール基)とアルコキシシラン化合物(アルコキシシリル基)の脱アルコール縮合反応を触媒しつつ、自身もアルコキシ基含有化合物として振る舞って脱アルコール縮合反応に関与し、分子内に取り込まれる形でポリシロキサン又はポリシルセスキオキサン構造を形成する。
【0025】
好適に用いられるシラノール化合物、アルコキシシラン化合物、及び触媒を適宜混合し、加熱することにより、ポリオルガノシロキサンを重合生成させることができる。この際の加熱温度は、生成するポリオルガノシロキサンの重合度を制御する上で重要なパラメーターである。目的の重合度にもよるが、上記原料混合物を70℃〜150℃で加熱し、重合させるのが好ましい。
【0026】
上記シラノール化合物と上記アルコキシシラン化合物を、積極的に水を添加することなく75〜85℃の温度で30〜1時間加水分解するステップを経たものとしては、ドイツ国 Fraunhofer ISC社から「ORMOCER」(登録商標)ONEとして入手することができる。
光硬化性樹脂組成物としては、上記ポリオルガノシロキサンに、光重合開始剤、各種添加剤などを含有してもよい。
【実施例】
【0027】
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0028】
<光硬化性樹脂組成物>
DPDとMEMOを1対1モルで混合したのち、積極的に水を添加することなく75〜85℃の温度で30〜1時間加水分解して、光硬化性樹脂としたドイツ国 Fraunhofer ISC社から得たORMCER(登録商標)ONE (ORMOCER ONE合成の反応温度は80℃、反応時間は15分、触媒はBa(OH)Oを0.002モル)に、光ラジカル重合開始剤IRGACURE(登録商標)814(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製) 1.0質量%を添加混合し、0.2μmのフィルターでろ過した後光硬化性樹脂組成物とした。最終粘度としては15ポイズであった。
【0029】
<型パターンを有する部材>
SILPOT184 W/C(東レ・ダウコーニング社製)10.0gにCATALYST184を1.0g加え攪拌し、透明型パターンを有する部材用液とした。
SILPOT184 W/C(東レ・ダウコーニング社製)10.0gにアクリル製微粒子SX−350H(綜研化学社製2.5μm径ビーズ)1gを加えよく攪拌したのち、CATALYST184を1.0g加え攪拌し、拡散型パターンを有する部材用液とした。
透明型パターンを有する部材用液を高さ5mmの壁の付いた箱型の石英製のマスターモールド(5cmx5cm)に液を1mmの厚みで塗布した。真空脱泡を30分間行なった後、80度のホットプレートの上にのせ、硬化させ、室温に放置した。
マスターモールドから1層目のPDMSを剥離せずに、2層目に上記拡散型パターンを有する部材用液をPDMS厚みの合計が2、3、4mmになる様に厚みを変えて塗布し、真空脱泡した後、80度のホットプレートの上にのせ、硬化させた。室温に放置したのち、原版から剥離し厚みを変えた事で光拡散度の異なる3種類(各厚み2、3、4mmで、ヘーズ値%49、75、85)の光拡散性を有する型パターンを有する部材1,2,3を得た。
また、拡散型パターンを有する部材用液を塗布せずに、上記マスターモールドから一層目のPDMSを剥離して、厚み約1mmの透明型パターンを有する部材を得た。
【0030】
[実施例1]
明昌機工株式会社製ナノインプリント装置を用い、厚み1mmのPC樹脂板をスペーサとして、フッ素樹脂でコート処理したガラス基板上(5cmx5cm、厚み0.7mm)に上述した光硬化性樹脂組成物を滴下し、上述の光拡散性を有する型パターンを有する部材1(屈折率1.41)を、厚み0.7mm支持ガラス(UV光透過性の無アルカリガラス、コーニング製1737、屈折率1.51)上に、両者の間に空気が存在しないように積層して、光透過性モールド1とした。光透過性モールド1のPDMS面を下側(光硬化性樹脂組成物側)にして指で光硬化性樹脂組成物に密着させ、プレスせずに、光硬化性樹脂組成物面での照度が8mW/cm2(365nm波長)で60秒露光した。露光後60秒経過したのち光透過性モールド1をはがし、以下の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0031】
<評価>
1)表面硬化性:得られた硬化物を指で触って表面タック性を判定した。
表面タック性なし;○
表面タック性有り;×
2)硬化物の外観:得られた硬化物を目視で観察した。
透明むらなし;○
僅かにむらがある;△
はっきりとむら、にごりが見える;×
3)透明性:UV透過率:日立分光光度計 U-3040を用い、リファレンスはなにもいれず、無アルカリガラス基板に貼り付けた状態の硬化物の550nmの透過率を測定した。
【0032】
[実施例2〜3]
実施例1において、光拡散性を有する型パターンを有する部材1に換えて、光拡散性を有する型パターンを有する部材2又は3を用いて、光透過性モールド2又は3を作成し、これを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0033】
[実施例4]
実施例1において、光透過性モールド1に換えて、上記透明型パターンを有する部材を厚み0.7mm支持ガラス(UV光透過性の無アルカリガラス、コーニング製1737について、透明モールドとは反対の面をサンドブラスト処理をして直径約50μmで厚みが約30μmの半球状の凹凸形状を付けたもの)上に、両者の間に空気が存在しないように積層して、光透過性モールド4として、これを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0034】
[比較例1]
実施例1において、光透過性モールド1に換えて、上述の透明型パターンを有する部材を用いて透明モールドとして、これを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0035】
[比較例2]
実施例4において、光透過性モールド4に換えて、透明型パターンを有する部材と支持ガラスとを約1cm離して設置した以外は、実施例4と同様に行った。支持ガラスからの光が周囲にも広がったのと、間に空気層が発生したため、光硬化性樹脂組成物面での照度は5mW/cm2(365nm波長)と約40%近く減衰した。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、光硬化性樹脂組成物を用いた、プラスチックレンズ、例えば、撮像用の光学レンズ、LED用のレンズ、及び光導波路の製造に用いることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源、光透過性モールド及び光硬化性樹脂組成物をこの順で配置し、光透過性モールドを通して光を照射して光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られるプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法において、光透過性モールドが光拡散性を有する、プラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項2】
上記光透過性モールドの365nmにおけるヘーズ値が50%以上であり、且つ、365nmにおける光透過率が80%以上である、請求項1に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項3】
上記光透過性モールドが、光硬化性樹脂組成物側の面に厚みが0.2mm〜5mmの型パターンを有し、光源側の面に厚み0.1μm〜50μmの凹凸形状を有する、請求項1又は2に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項4】
上記0.1μm〜50μmの凹凸形状が、球状又は半球状である、請求項3記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項5】
上記光透過性モールドが、モールド内部にモールド材料とは異なる屈折率の微粒子を分散させたモールドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項6】
上記光透過性モールドが、ポリジメチルシロキサンを原料とするモールドである請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項7】
上記光透過性モールドが、石英又はガラス上に型パターンを有する樹脂を積層して得られたモールドであり、該石英又はガラスが光拡散性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項8】
上記型パターンを有する樹脂が、ポリジメチルシロキサンである請求項7に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項9】
上記光透過性モールドが、光拡散性を有する支持体上に型パターンを有する部材を型パターン面が外側になるように積層して得られたモールドであって、該支持体と該型パターンを有する部材との屈折率差が0.1以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。
【請求項10】
上記光透過性モールドが、光拡散性を有する支持体として石英又はガラスを、型パターンを有する部材としてポリジメチルシロキサンを用い、両者の間に空気が存在しないように積層したモールドである、請求項9に記載のプラスチックレンズ又は光導波路の製造方法。

【公開番号】特開2011−235461(P2011−235461A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106501(P2010−106501)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】