説明

プラスチック薄膜の製造方法

ある実施形態において、薄膜製造方法は、プラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入するステップと、前記プラスチック溶融物を前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通して、薄膜を製造するステップと、前記弾性ロールの外側表面を能動的に冷却することによって、前記薄膜の粗度を制御するステップとを含むことができる。別の実施形態では、薄膜製造方法は、ある溶融温度を有するプラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入するステップと、前記プラスチック溶融物を前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通して、薄膜を製造するステップと、一定の製造速度と一定のロール間隙圧において薄膜の粗度を調節するステップとを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フラットパネルディスプレイ(例えばバックライトコンピュータディスプレイ)では、光学薄膜(シート、層、フォイルなどとも呼ばれる)材料が、例えば光を指向、拡散、または偏光させるために通常使用されている。例えば、バックライトディスプレイでは、輝度向上薄膜が、その表面の上でプリズム構造を使用して、光を視軸(すなわちディスプレイに対して垂直(直角)な軸)に沿って指向させる。これは、ディスプレイの使用者によって見られる光の輝度を向上させて、所望のレベルのオンアクシス(on−axis)照明を作り出す場合にシステムの消費電力を減らすことができる。このような薄膜はまた、投影ディスプレイ、交通信号、および照明看板におけるなどの、広範囲のその他の光学的設計において使用することもできる。
【0003】
現在、例えばバックライトディスプレイは、見る人に向けられる光の所望の輝度と拡散とを得るように配置された複数の薄膜を使用している。高い製造速度で制御可能なヘーズと低応力(low stress)とを伴う光学ポリマー薄膜を製造する方法の開発が望まれている。製造ラインでは、製造速度は低くなっており、すなわち厚さ7ミル(0.178mm)の織ポリカーボネート(PC)薄膜のために40%のヘーズを得るために、20フィート/分(6m/分)に限られている。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
そこで、光学プラスチック薄膜(film)を製造するための方法と、この方法から作られる薄膜を開示する。
【0005】
ある実施形態では、薄膜製造方法は、カレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙(nip)にプラスチック溶融物を導入すること、カレンダロールと弾性ロールとの間にプラスチック溶融物を通して薄膜を製造すること、および弾性ロールの外側表面(external surface)を能動的に冷却することによって薄膜の粗度を制御することを含むことができる。
【0006】
別の実施形態では、薄膜製造方法は、カレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に、或る溶融温度を有するプラスチック溶融物を導入すること、およびカレンダロールと弾性ロールとの間にプラスチック溶融物を通して薄膜を製造することを含むことができる。溶融物が弾性ロールと接触する箇所に近くてこれに続く(near and subsequent)点が、溶融温度より低減温度(reduction temperature)だけ低い温度に等しいロール温度に維持され、この低減温度は約100°F(38℃)以上である。
【0007】
別の実施形態では、薄膜製造方法は、カレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙にプラスチック溶融物を導入すること、弾性ロールの外側表面を能動的に冷却すること、およびカレンダロールと弾性ロールとの間を、標準ロール速度より約25%以上高いロール速度でプラスチック溶融物を通して、定格表面粗度(rate surface roughness)を達成することを含むことができる。定格表面粗度は、同じプラスチック溶融物が同じカレンダロールと同じ弾性ロールとを標準速度で、外側表面を能動的に冷却することなく通された場合に達成される低速表面粗度(slow surface roughness)に、実質的にほぼ同じになることができる。
【0008】
さらに別の実施形態では、薄膜製造方法は、カレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に溶融温度を有するプラスチック溶融物を導入すること、カレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙にプラスチック溶融物を通して薄膜を製造すること、および一定製造速度と一定ロール間隙圧において薄膜の粗度を調節することを含むことが可能である。
【0009】
上述およびその他の特徴を添付の図面と下記の詳細な説明の中で例示する。
【0010】
図面の簡単な説明
ここで図面を参照するが、これは例示的であり限定的でなく、ここで、同様の要素には同様の番号が付されている。
【0011】
図1は、チルロール(chill roll)を使用する薄膜製造方法を示す図である。
【0012】
図2は、エアナイフを使用する薄膜製造方法を示す図である。
【0013】
発明の詳細な説明
用語「第1」、「第2」など、本明細書では、量、順序、または重要性のいずれを表示するものでもなく、むしろある要素を別の要素から区別するために使用され、用語「a」および「an」は本明細書では量の限定を表示するものではなく、むしろ言及される品目の少なくとも1つの存在を表示することに注目されたい。その上、本明細書に開示された全ての範囲は包括的(inclusive)かつ組合せ可能なものである(例えば、「25重量%までであり、5重量%〜20重量%が望ましい」は、「5重量%〜25重量%」範囲の両端値およびすべての中間値を含む)。表記「±10%」は、指示された測定値が、述べられた量のマイナス10%である量から述べられた量のプラス10%である量までにあってもよいことを意味する。本明細書で使用される、用語「約」は、ある数値範囲の中の1つの数に関連して使用されるとき、「約」が修飾する数の標準偏差内にあるものとして定義される。本明細書で使用される、薄膜およびシートという用語は、互換可能に使用され、約0.0005インチ(0.0127ミリメートル(mm))から約0.060インチ(in)(1.52mm)までの最終厚さを有する、または最終用途に応じてもっと厚い熱可塑性材料を言う。別に特定されない限りは、本明細書で述べられるヘーズ値および粗度値は平均値である。
【0014】
最終的に得られる薄膜において所望の光学的遅延(optical retardation)(例えば、残留応力(residual stress))および光学的遅延勾配(optical retardation gradient)(例えば、単位距離当り光学的遅延の変化)を維持するために、カレンダ加工ロールの少なくとも1つは、弾性材料、例えばゴム(例えばEPDM(エチレンプロピレンジアミンモノマー)ベースのゴム、シリコーンなど)、および/または同類の物などのエラストマー材料を含む。光学的遅延は約50ナノメートル(nm)以下の低光学的遅延にすることができ、また光学的遅延勾配は約50ナノメートル/インチ(nm/in)(19.7nm/cm)以下にすることができる。さまざまな実施形態において、このロール全体を弾性材料で作ることができる。代替案として、弾性材料をロールの外側表面に、すなわち薄膜と物理的に連絡するように配置されるロールの表面の上に配置することができる。弾性ロールのテクスチャ仕上げを、粗度(Ra)として、ASME B46.1−1995に従ったSurfometerモデルPDD−400−COを使用して、約0.1マイクロメートル(μm)から約5.0μmまで、またはさらに特定すれば約0.3μm〜約1.5μmにすることができる。さまざまな弾性材料を使用することができるが、約0.4μm〜約1.0μmの粗度を有するシリコーン弾性ロールを使用して、約50フィート/分(ft/分)(15.2メートル/分(m/分))以上の速度で、約0.3μm〜約0.8μmの粗度を有する0.05mm〜約0.25mm厚の薄膜を製造することができる。
【0015】
所望の光学的遅延の達成に加えて、ヘーズとライン速度もまた薄膜製造においては重要な要素である。所望のヘーズ(例えば約40%以下のヘーズ)を達成するために、低い光学的遅延を達成することができるが、最高ライン速度は満足な(すなわち商業的に容認可能な)レベルよりはるかに低かった。ある場合には、20フィート/分(ft/分、6.1メートル/分(m/分))以下のライン速度が、40%以下のヘーズ値を達成するために必要であった。別に注記されない限り、すべてのヘーズ値はBYK−Gardnerヘーズメータモデル番号HB−4725を使用して、ASTM D1003−95に従って測定される。
【0016】
下記の式によって、パーセントヘーズを予測し計算することができることに注目されたい。
【0017】
【数1】

【0018】
ただし、全透過は総合透過(integrated transmission)、全拡散透過はASTM D1003によって定義されるように薄膜によって散乱される光透過(light transmission)である。
【0019】
弾性ロールの外側表面温度を制御することによって低い光学的遅延と目標ヘーズとを維持しながら、ライン速度を実質的に改善できることがわかった。弾性ロールの外側表面温度を、溶融物の軟化点よりも低く維持することができ、さらに具体的には所望のヘーズ値および/または粗度値を達成するために制御することができる。例えばポリカーボネートを含む溶融物のために、弾性ロールの外側表面温度を、ロール上のロール間隙とは反対側の点において、約200°F(93℃)以下にすることができ、さらに詳しくは約175°F(79℃)以下にすることができる。弾性ロールの外側表面温度を、特定の溶融物組成のために所望の最終ヘーズ値および/または粗度値を所望のライン速度で達成することができるように、十分に低くすることができる。弾性ロールの外側表面温度は、ロール間隙の前(すなわちロールが冷却される点の後)のロール上の点において、溶融物のガラス転移温度より約100°F(38℃)以上低い表面温度、またはさらに特定すれば、溶融物のガラス転移温度より約100°F(38℃)以上低い表面温度、またはさらに特定すれば、溶融物のガラス転移温度より約125°F(52℃)以上低い表面温度、またはさらになお特定すれば、溶融物のガラス転移温度より約150°F(65℃)以上低い表面温度を有することができる。
【0020】
弾性ロールの表面温度を制御することは、外部(external)冷却装置によって弾性ロールの外側表面を冷却することを含むことができる。弾性材料の熱伝導率は低いので、弾性ロールの内部冷却(internal cooling)だけではヘーズの制御を可能にするために弾性ロールの外表面を冷却するには不十分である。したがって、(単数または複数の)外部冷却装置、すなわち(単数または複数の)冷却ロール、ガス流など、ならびに上述の外部冷却装置の少なくとも1つを含む組合せを使用して、ヘーズ値を所望に応じて制御するために弾性ロールの表面温度を低下させることができる。
【0021】
理論に限定されることなく、弾性ロールの弾性材料の熱伝導率は低いので、ポリマー溶融物をロール表面上に接触した後に十分急速に冷却することはできないことが究明された。溶融した熱可塑性物質、例えばポリカーボネート(PC)の緩慢な冷却が光学的特性に影響するので、望ましくないヘーズ値および光沢値が不利益に生成される可能性がある。具体的には、弾性ロールの比較的低い熱伝導性に基因するより緩慢な冷却は、熱がロール表面から離れて伝導することを妨げ、ロールの表面に高く上昇した温度を発現させる。ゴムロールのこの上昇した表面温度によって、ポリマーは、これがゴム表面のテクスチャをより正確に複製する程度に軟らかい状態のままとなり、こうして、より高い粗度とより高いヘーズのポリマー薄膜を生成する。
【0022】
(単数または複数の)チルロールを使用してヘーズを制御することは、薄膜の加工処理中に弾性ロールの表面をチルロールの表面に接触させることを含むことができる。チルロールは、十分な温度に、かつ十分な圧力(すなわち、チルロールと弾性ロールとの間の圧力)の下で表面と接触した状態に維持され、弾性ロールの表面を、所望の製造速度で所望のヘーズ値を備えた薄膜の製造を可能にする温度にまで、十分に冷却するための十分なサイズを有する。例えば薄膜を、約15m/分以上のライン速度で製造して、約40%以下のヘーズを有する薄膜を製造することができる。チルロールの温度を、例えば約60℃以下、または特定すれば約40℃以下、またはさらに特定すれば約5℃〜約40℃にすることができる。チルロールとゴムロールとの間の圧力を、約2ポンド/リニアインチ(PLI)(3.5N/リニアcm)〜約10PLI(17.5N/リニアcm)、さらに特定すれば約2PLI(3.5N/リニアcm)〜約6PLI(10N/リニアcm)、またはさらに特定すれば約5PLI(8.8N/リニアcm)〜約6PLI(10N/リニアcm)にすることができる。より高いロール間隙力は接触面積を大きくすることができるだろうし、したがってより高い冷却を生じさせる。しかし、その目的は、チルロールとゴムロールの間のロール間隙圧力を、約40〜約50PLI(約70〜88N/リニアcm)でありうるゴムロールと金属クロムロールとの間の圧力に対して低い比率(≦10%)の下で、制御することである。これらの範囲は、これらの例において使用された正確な機械的セットアップに特定のものであり、これらの例は、チルロール間隙力をずっとカレンダロール間隙へ、したがって加工処理中のプラスチック薄膜へ伝達する外部の機械的力機構を使用したということが注目される。しかし、チルロール間隙機構を変更して、このロール間隙力をカレンダロール間隙から隔離することができ、したがってより高いチルロール間隙力とより効果的なゴムロール表面冷却を可能にする。
【0023】
代替案として、または加えて、ガス流を使用して(例えば、エアナイフおよび/または同類の物によって)ヘーズを制御することは、薄膜の加工処理中にガス(例えば、空気、不活性ガス、および/または同類の気体)の流れに弾性ロールの表面を接触させることを含むことができる。ガス流は、所望の製造速度において所望のヘーズ値を含む薄膜の製造を可能にする温度に、弾性ロールの表面を十分に冷却するための、温度と十分な流量に維持される。ガス流(例えば圧縮空気)の温度を、約60℃以下、さらに特定すれば約5℃〜約30℃にすることができる。ガス流の流速を、約5メートル/秒(m/秒)以上、または特定すれば約5m/秒〜約25m/秒、またはさらにまた特定すれば約5m/秒〜約20m/秒にすることができる。ガス流れ装置に入るガス流の圧力を、約10ポンド/平方インチ(psi)(0.069MPa)〜120psi(0.83MPa)、または特定すれば約10psi(0.069MPa)〜75psi(0.52MPa)、またはさらに特定すれば約15psi(0.10MPa)〜30psi(0.21MPa)にすることができる。
【0024】
簡単にするため、および効率よくするために、ガスを例えばエアナイフによって供給される空気にすることができる。空気を、約20℃〜約25℃の温度(すなわち室温)で弾性ロールの表面に向ける(direct)ことができる。代替案として、空気を例えば熱交換器または同類の物によって冷却することができる。ガスを表面にさまざまな角度で向けることもでき、例えばガスを、ガスが表面に約5°〜約90°の角度で、または特定すれば約45°〜約90°の角度で接触するように、向けることができ、この場合、各ガス流を表面において同じまたは異なる角度で向けることができる。例えば、複数のエアナイフが複数のガス流を弾性ロールの表面に向け、ロール全体にわたって所望の温度プロファイルを、したがって最終薄膜において所望のヘーズ値を達成することができる。
【0025】
第2のカレンダ加工ロールを別の弾性ロールにすることができ、またはテクスチャ(textured)表面または研磨表面のいずれかを有する剛性(rigid)ロールにすることができる。剛性カレンダ加工ロールを例えばクロム、クロムめっき、鋼、鋼めっきなど、ならびにこれらの少なくとも1つを含む組合せにすることができる。第2の弾性ロールを使用する場合には、これに従って追加の(単数または複数の)チルロールおよび/または(単数または複数の)ガス流を使用することができる。
【0026】
カレンダ加工ロールは本質的に水平面に(すなわち熱可塑性樹脂の下向き押出しに対して本質的に直角な面)、または鉛直面に位置して、仕上げられた薄膜を形成することができる。別の実施形態では、カレンダ加工ロールを水平面に、または水平から0°(水平、すなわち下向き押出し溶融樹脂の平面に本質的に直角)〜約45°、または特定すれば約0°〜約30°のいずれかの角度にある平面に位置してもよい(図2を参照)。
【0027】
薄膜の組成を、カレンダ加工ロールによって薄膜に形成することができる光学的に透明な材料(すなわち、80%を超える光透過率を有する材料)にすることができる。例えば、プラスチックは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などの熱可塑性プラスチックにすることができ、ホモポリマー、コポリマー、および上述の熱可塑性プラスチックの少なくとも1つを含む組成物、ならびに上述の少なくとも1つを含む組成物の反応生成物を含むが、これらに限られるものではない。ポリカーボネート薄膜の製造に使用することができる熱可塑性ポリカーボネート樹脂には制限がない。例えば、熱可塑性ポリカーボネート樹脂は芳香族ホモポリカーボネート樹脂にすることができる。その他のポリカーボネート樹脂は、ジアリルカーボネートなどのカーボネート前駆物質と芳香族ジヒドロキシ化合物の反応によって得ることもできる。芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノール−A(BPA))がある。
【0028】
ポリカーボネートを、コポリエステルポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートとも呼ばれるポリエステルポリカーボネートと組み合わせることができる。ある実施形態では、ここで使用されうるようなポリエステルポリカーボネートを、レソルシノール(例えば、イソフタレートテレフタレートレソルシノールなど、ならびにレソルシノールの反応生成物)を含む耐候性の組成物にすることができる。
【0029】
薄膜の製造方法は、(例えば、押出機にプラスチックを送り込んでプラスチックを加熱し、押出し可能な溶融物を形成することによる)プラスチックを溶融することを含むことができる。溶融物を押出ノズルのオリフィス(例えば、スロット(slot)または同類の物)を通じて、一対のカレンダ加工ロールの間の(ギャップとも呼ばれる)ロール間隙の中に(例えば下向きに)押し出すことができる。(押出しは光学プラスチックと他の材料との共押出しも含む意図があることが理解され、ここで光学プラスチックは弾性ロールに接触している。)押し出された溶融物は、ロール間隙に通すことができる溶融プラスチック(押出し物)の連続薄膜を形成することができる。
【0030】
カレンダ加工ロールを、薄膜をロールに粘着させることなく薄膜の形成を可能にする温度に維持することができる。例えば、金属カレンダ加工ロールの内側表面を、約140℃以下、または特定すれば約85℃〜約130℃、またはさらに特定すれば約110℃〜約130℃の温度に維持することができる。随意に、弾性カレンダ加工ロールの内側表面を、約50℃以下、または特定すれば室温程度〜約50℃の温度に維持することができる。
【0031】
例えば、この方法は、樹脂(例えばポリカーボネート)をそのガラス転移温度(Tg)より高い温度で押出機に送り込むことを含むことができる。溶融樹脂は押出機を通って進み、押出しノズル(ダイとも呼ばれる)のオリフィスを通って、樹脂のTgより低く維持された2つのカレンダ加工ロールの間のロール間隙の中に押し出される(例えば下向きに押し出される)。樹脂は、ロールの間を通過しながらそのガラス転移温度より低い温度まで冷却され、随意に貯蔵するかまたは所望に応じてさらに加工処理することができる薄膜を形成する。
【0032】
薄膜の所望のヘーズと使用される(単数または複数の)冷却装置の組合せに基づいて、ロールのライン速度を調節することができる。製造効率のために、特性(例えば、光学的遅延およびヘーズ)の所望の組合せを含む薄膜を製造する間に達成可能な最高ライン速度が、一般に採用される。約7ミル(0.18ミリメートル(mm))の薄膜厚さにおいて約40%以下のヘーズ値を有する薄膜の製造のためにさえも、ロールのライン速度(およびしたがってロールを出る薄膜の速度)を、約40フィート/分(ft/分、12.2メートル/分(m/分))以上、または特定すれば約50ft/分(15.2m/分)以上、またはさらに特定すれば約60ft/分(18.3m/分)以上、またはさらに特定すれば約80ft/分(24.4m/分)以上、および約90ft/分(27.4m/分)以上にさえすることができる。この所望のライン速度を達成し、約80%以下、または特定すれば約5%〜約60%の所望のヘーズを有する薄膜を達成するために、弾性ロールの表面を冷却する。代替案として、(例えば不透明薄膜のための)所望の粗度を達成することができ、これについてヘーズの粗度に対する関係を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
結果として得られる薄膜は、低い光学的遅延(例えば約50nm以下)と、低い光学的遅延勾配(例えば50nm/インチ(19.7nm/cm)以下)と、所望のヘーズ(例えば80%以下)とを有している。得られた薄膜の遅延を約50nm以下、または特定すれば約30nm以下、および特に約20nm以下にすることができる。光学的遅延を、例えばStrainoptic Technologies(現在はStrainoptic,Inc.)から市販のSCA1500システムを使用して、ASTM D4093−95に従って測定することができる。別の方法で言えば、光学的遅延勾配は光学的遅延プロファイルの一次導関数であり、約50nm/インチ(19.7nm/cm)以下にすることができる。
【0035】
図1は、溶融プラスチック4を押し出す押出しノズル2を示し、チルロールを使用する薄膜製造方法を示す。押し出された溶融物4はカレンダ加工ロール8および10によって形成されたロール間隙6を通過し、冷却され、次いでプルロール(pull rolls)12を通過する。チルロール16は弾性カレンダ加工ロール8に接触して、その表面を冷却する。
【0036】
図2は、溶融プラスチック4を押し出す押出しノズル2を示し、エアナイフを使用する薄膜製造方法を示す。押し出された溶融物4は、薄膜4を冷却するカレンダ加工ロール8および10間に形成されたロール間隙6と、プルロール12とを通過する。エアナイフ18は空気流20を弾性カレンダ加工ロール8に直接向け、このロールを冷却する。ここで、エアナイフ18はロールを直接冷却し、樹脂を直接冷却せず、すなわち、空気流は弾性ロールの表面に接触する前に樹脂に接触しない。冷却された仕上がり薄膜14は、貯蔵またはさらなる加工処理のために送ることができる。この実施形態では、ロール8および10は水平から30°の角度にある平面内にあるものとして図示されている。
【0037】
次の例は、本明細書で論述された原理を適用する方法を当業者に示すためのみに提供されている。この例は本明細書に添付された特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0038】
実施例
例1
ポリカーボネート(PC)樹脂を270℃で押し出して、厚さ約175マイクロメートルの基本薄膜(base film)にした。この薄膜を、127℃に維持された研磨クロムカレンダ加工ロールと厚さ0.5インチ(約1.3センチメートル(cm))、70デュロメータ(ショアA)のシリコーンゴムで被覆された鋼製カレンダロールとの間に押し出した。両ロールを、水で43℃の温度で内部的に冷却した。19フィート/分(ft/分)(約5.8メートル/分(m/分))のライン速度で、7.2nm/インチ遅延の光学的遅延勾配と40%のヘーズを有する基本薄膜が得られた。この光学的遅延勾配が得られた応力プロファイルを構成したとき、光学的遅延を薄膜の長さにわたって0.25インチ(0.64センチメートル)毎に測定したことが注目される。
【0039】
例2
PC薄膜を66ft/分(約20m/分)のライン速度で調製した。PC薄膜のヘーズは、ゴムロール表面上の異なる冷却位置における異なる空気速度によるエアナイフ冷却を使用して(ASTM D1003による測定して)36%〜90%間で変化した。PC薄膜のヘーズ値は弾性ゴムロール表面温度との良好な相関を示した。エアナイフをゴムの下に取り付けて、製造の観点から容易な取付けを図った。空気の流れの速度を8メートル/秒(m/秒)より低く保って、ポリマー溶融物を阻害する危険性を少なくした。
【0040】
例3
PC薄膜を49ft/分(約15m/分)のライン速度で調製した。PC薄膜のヘーズは、表1に明記された冷却技術を適用した後に、15%〜60%間で変化した。
【0041】
例4
PC薄膜を10m/分のライン速度で調製した。PC薄膜は表2に明記された冷却技術を使用して19%〜42%のヘーズを有した。
【0042】
【表2】

【0043】
1空気を、90°の角度、25℃の温度、7.2メートル/秒(m/秒)の速度、および29psi(0.20MPa)のエアナイフへの空気供給圧で、エアナイフのノズルからゴムロールまでの距離を2インチとして、ゴムロールに向けた。
2チルロールを15℃の温度に維持し、チルロールとゴムロールとの間の圧力は5PLI(9N/cm)であった。
aカレンダロール間のロール間隙圧は57PLI(100N/cm)であった。
bカレンダロール間のロール間隙圧は40PLI(70N/cm)であった。
c薄膜の厚さは10ミル(0.254ミリメートル(mm))である。その他の試料の厚さは7ミル(0.18mm)である。
【0044】
表2からわかるように、33ft/分(10m/分)の速度においても、ゴムロールを冷却することなく、40%以下のヘーズを達成することは困難であった。しかし、試料7(冷却なし、33ft/分(10m/分)の速度)を試料3(チルロール、66ft/分(20m/分)の速度)と比較すると、冷却技法を適用した後では約40%のヘーズを維持しながら製造速度は2倍であった。チルロールに対するエアナイフの使用からわかるように、達成可能な光学的遅延は低くできることがさらに注目される。すなわち、66ft/分(20m/分)の速度においても、約25nm以下の光学的遅延が約60以下のヘーズ値を伴って維持され、または特定すれば、約22nm以下の光学的遅延が約60以下のヘーズ値を伴って維持され、またはさらに特定すれば、約22nm以下の光学的遅延が約40以下のヘーズ値を伴って維持される。
【0045】
このデータはまた、光学的遅延を許容レベルに留めたまま、樹脂薄膜(例えばポリカーボネート薄膜)のヘーズ(および粗度)が一定の製造速度において制御可能である(換言すれば、製造速度を変えることなく薄膜のヘーズを制御することができる)という意外な発見も支持する。例えば、例3(試料4〜6)を参照すると、光学的遅延を25nmより小さく留めたまま、同じ製造速度(例えば49ft/分(15m/分))でヘーズを15%〜60%の範囲内で調節することができる。
【0046】
例5
PC薄膜を、66ft/分(20m/分)のライン速度、23PLI(40N/cm)のゴムロールとクロムロールとの間のロール間隙力(例えば、表2における試料1のロール間隙圧の半分より低いロール間隙圧)、およびゴムロールの冷却なしで調製した。調製したPC薄膜のヘーズは(ASTM D1003−95で測定して)約60%であった。調製したPC薄膜のヘーズ値が試料1と同じライン速度で90%から低下しても、この薄膜の外見上の特性は光学薄膜の要件から離脱していた。カラーバンド、研削線、および/または類似物などを含む多くの外見上の欠陥が、調製されたPC薄膜の上に認識できた。したがって、ゴムロールとクロムロールとの間のロール間隙圧を低下させると、所望のヘーズを有する受け入れ可能な薄膜が製造されず、薄膜は外見上の欠陥を有することになった。
【0047】
多くの要因がヘーズに影響することができるが、要因を調節すると、望ましくない他の副作用(カラーバンド、研削線、ゲージバンド、および/または類似物など)が生じ、同時にライン速度の上昇もできないという結果になる可能性がある。しかしここで、弾性ロールの外側表面を冷却することによって、薄膜(例えば、約0.05mm〜約0.30mmの厚さを有する薄膜)を高い製造速度(例えば約49ft/分(15m/分)以上、特定すれば約66ft/分(20m/分)以上、さらにまた約98ft/分(30m/分)以上)で製造することができ、このとき約40%以下(さらにまた30%以下)のヘーズを有する薄膜を製造できることを、意外にも発見した。この薄膜はさらに、約50nm/インチ(19.7nm/cm)以下、特定すれば約40nm/インチ(15.7nm/cm以下、さらに特定すれば約30nm/インチ(11.8nm/cm)以下、さらにまた特定すれば約15nm/インチ(5.9nm/cm)以下の光学的遅延勾配を有する。言い換えれば、望ましくない副作用を招くことなく、ヘーズ/表面粗度を制御することができ、ライン速度を上昇させることができ、低い光学的遅延を保持することができる。
【0048】
かなり高い速度で、実質的に同じ特性を有する薄膜が製造可能であることを発見した。例えば、プラスチック溶融物を形成し、プラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入することによって、薄膜(例えば、ポリカーボネート薄膜など)を製造することができる。弾性ロールの外側表面を能動的に冷却する(すなわち、冷却は通常環境による受動的冷却ではなく、例えばチルロール、流体の流れ、および/または同類物によって、能動的にロールに加えられる)。次いでプラスチック溶融物を、実質的に同じ特性を達成しながら(例えば特性の差は約5±%の変化)、加速された速度でロールに通すことができる。例えば、標準速度より約25%以上高いロール速度で定格表面粗度を得ることができる。定格表面粗度は、同じプラスチック溶融物が同じカレンダロールと同じ弾性ロールとを標準速度で(および同じ溶融温度およびロール間隙圧)で、外側表面を能動的に冷却することなく、通された場合に達成される低速表面粗度とほぼ実質的に等しいものである。実際に、標準速度より約50%以上高いロール速度で、さらには標準速度より約100%以上高いロール速度でも、またある場合には標準速度より約200%以上高いロール速度でさえ、実質的に、同じ特性を達成することができる。言い換えれば、標準速度が10ft/分(3m/分)で特性(例えば、Xである表面粗度)を達成する場合には、能動的冷却により、同じロールを使用して、同じロール間隙圧で、同じ特性を、約12.5ft/分(3.8m/分)以上、約15ft/分(4.7m/分)以上、または20ft/分(6m/分)以上、さらにおそらくは30ft/分(9m/分)以上の速度で、実質的に達成することができる。
【0049】
本方法はさらに、著しく低いヘーズと粗度で、実質的に同じ速度での薄膜の製造を可能にする。例えば、薄膜(例えば、ポリカーボネート薄膜など)を、プラスチック溶融物を形成して、プラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入することによって製造することができる。次にプラスチック溶融物をロール間のロール間隙に通して、第1ヘーズ/粗度値を有する薄膜を製造することができる。この第1ヘーズ/粗度値を、溶融温度、ロール速度、またはロール間隙圧を変えることなく、弾性ロールの外側表面を能動的に冷却することによって調節する(例えば低下させる)ことができる。例えば、薄膜のヘーズ/粗度を、同じ速度の同じカレンダロールおよび同じ弾性ロール、同じ溶融温度、および同じロール間隙圧で、外側表面を能動的に冷却することなく決定されたヘーズ/粗度値と比較して、約25%以上、または特定すれば40%以上、または特定すれば50%以上、または特定すれば60%以上、またはさらに特定すれば75%以上だけ低下させることができる。
【0050】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな変更を行なってもよく、その要素を等価物と代えてもよいことは、当業者には理解されよう。その上、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況または材料を適合させるために多くの変更を行なってもよい。したがって、本発明は本発明を実施するために企画された最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に入るすべての実施形態を含むことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】チルロールを使用する薄膜製造方法を示す図である。
【図2】エアナイフを使用する薄膜製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
2 押出しノズル
4 溶融プラスチック
6 ロール間隙
8 カレンダ加工ロール(弾性ロール)
10 カレンダ加工ロール
12 プルロール
14 仕上がり薄膜
16 チルロール
18 エアナイフ
20 空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入するステップと、
前記プラスチック溶融物を前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通して、薄膜を製造するステップと、
前記弾性ロールの外側表面を能動的に冷却することによって、前記薄膜の粗度を制御するステップと
を含む薄膜製造方法。
【請求項2】
前記外側表面を冷却するステップが、前記外側表面にガス流を向けることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外側表面を冷却するステップが、前記外側表面をチルロールと接触させることをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラスチック溶融物を前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通すステップが、前記プラスチック溶融物を約15m/分以上の速度で通して、約0.050mm〜約0.30mmの厚さとASTM D1003−95で測定して約40%以下のヘーズとを有する薄膜を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記速度が約15m/分以上である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記速度が約20m/分以上である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記速度が約30m/分以上である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチックが、ポリカーボネートと、ポリカーボネートを含む混合物と、ポリカーボネートを含む組成物と、ポリカーボネートから形成された反応生成物とからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薄膜が約50nm/インチ(約19.7mm/cm)以下の光学的遅延勾配を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
同じ速度、同じ溶融温度、および同じロール間隙圧で動作する同じカレンダロールおよび同じ弾性ロールで、外側表面を能動的に冷却することなく決定された粗度値と比較して、粗度が約25%以上だけ低い請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ある溶融温度を有するプラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入するステップと、
前記プラスチック溶融物を前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通して薄膜を製造するステップと
を含み、
前記溶融物が前記弾性ロールに接触する箇所に近くてこれに続く点が、該溶融温度マイナス或る低減温度、に等しいロール温度に維持され、
前記低減温度は約50°F(10℃)以上である
薄膜製造方法。
【請求項12】
前記低減温度が約100°F(38℃)以上である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記低減温度が約125°F(52℃)以上である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入するステップと、
弾性ロールの外側表面を能動的に冷却するステップと、
前記プラスチック溶融物を、標準速度より約25%以上高いロール速度で前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通して、定格表面粗度を得るステップと
を含み、
前記定格表面粗度が、同じプラスチック溶融物が同じカレンダロールと同じ弾性ロールとを標準速度で、前記外側表面を能動的に冷却することなく通された場合に達成される低速表面粗度に、実質的にほぼ同じである
薄膜製造方法。
【請求項15】
前記ロール速度が標準速度よりも約50%以上高い請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ロール速度が標準速度よりも約100%以上高い請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記能動的冷却が前記外側表面をガス流と接触させることをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記能動的冷却が前記外側表面をチルロールと接触させることをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記チルロールが約40℃以下の温度を有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ある溶融温度を有するプラスチック溶融物をカレンダロールと弾性ロールとの間のロール間隙に導入するステップと、
前記プラスチック溶融物を前記カレンダロールと前記弾性ロールとの間に通して、薄膜を製造するステップと、
一定の製造速度と一定のロール間隙圧とにおいて前記薄膜の粗度を調節するステップと
を含む薄膜製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501098(P2009−501098A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521469(P2008−521469)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/026541
【国際公開番号】WO2007/008676
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】