説明

プラスミン阻害療法

【課題】癌、血管新生関連障害、およびリンパ管新生関連障害の新規な処置の提供。
【解決手段】止血を実質的に達成せず、他のプロテアーゼも実質的に阻害しないで、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質(クニッツドメインは、少なくとも二つのポリマー部分、例えば各1級アミンに結合したポリマー部分を含むことができる)を被験体に投与する、癌、血管新生関連障害、およびリンパ管新生関連障害を処置する方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2004年11月22日に出願された、米国特許出願第60/630,226号に対する優先権を主張する。米国特許出願第60/630,226号の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(概要)
プラスミンは、体内では主にその不活性チモーゲン型(プラスミノゲン)で存在するセリンプロテアーゼである。活性化されると、プラスミンは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)のチモーゲンを含むタンパク質を加工することができる。線維素溶解(プラスミノゲン/プラスミン)およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)タンパク質分解系はECM分解の一因であり、治療的介入の魅力的な標的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様として、本開示は、転移性障害または他の癌性障害を処置する方法を特徴とする。本方法は、プラスミン阻害剤(例えばプラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質)を被験体に投与することを含む。一実施形態では、プラスミン阻害剤は、止血を実質的に達成しないものである。一実施形態では、プラスミン阻害剤は、他のプロテアーゼを実質的に阻害しない。一実施形態では、クニッツドメインは、少なくとも二つのポリマー部分(例えば各1級アミンに結合したポリマー部分)を含むことができる。一実施形態では、クニッツドメインを、担体タンパク質、例えばアルブミンまたはその断片、例えばヒト血清アルブミン(HSA)またはその断片に融合させることができる。被験体は、転移性障害もしくは他の癌性障害の危険があるもの、転移性障害もしくは他の癌性障害を持つと疑われるもの、または転移性障害もしくは他の癌性障害を持つものであることができる。例えば本方法は、転移性癌または潜在的に転移性の癌が存在するかどうかを決定するために、被験体を評価することを含むことができる。一実施形態では、癌細胞が、プラスミンの過剰な生成につながる高レベルのウロキナーゼを発現させる。
【0004】
一実施形態では、クニッツドメインが、20nM、2nM、または0.2nM未満のKでプラスミンを阻害することができる。クニッツドメインはプラスミンに対して高い特異性を持つことができる。例えばクニッツドメインは、100nM〜1mMのKiでカリクレインも阻害しうるが、プラスミノゲン、uPa、またはtPaを500nM未満のKiでは阻害しない。
【0005】
一実施形態では、クニッツドメインが、インビトロでLNCAPまたはHT−1080細胞浸潤を阻害すること、および/またはインビトロで内皮細胞による管形成を阻害することができる。
【0006】
一実施形態では、クニッツドメインが、
【0007】
【数1】

を含む。Xaaは任意のアミノ酸(例えば非システインアミノ酸)であるか、特定の位置ではXaaは存在しないことができる。特定の位置で有用なアミノ酸は本明細書に記載する。クニッツドメインはヒトフレームワーク領域を含むことができる。一実施形態では、クニッツドメインがDX−1000のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、クニッツドメインがDX−1000と少なくとも80%同一である。一実施形態では、クニッツドメインがDX−1000と少なくとも90%同一である。一実施形態では、クニッツドメインがDX−1000と少なくとも95%同一である。一実施形態では、クニッツドメインがDX−1000と同一である。一実施形態では、クニッツドメインとDX−1000との相違点が3アミノ酸未満の相違である。
【0008】
一実施形態では、プラスミン阻害剤が凝固もしくは血小板機能を損なわないか、または凝固もしくは血小板機能を損なわない濃度で投与される。例えば、プラスミン阻害剤の濃度は、700、500、または200nM未満である。
【0009】
本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0010】
他の態様として、本開示は、癌(例えば線維肉腫、線維肉腫由来の転移、前立腺癌、前立腺癌由来の転移、乳癌、乳癌由来の転移、血管新生依存性癌、血管新生依存性癌由来の転移、リンパ管新生関連癌または本明細書に記載する他の癌)を処置する方法を特徴とする。本方法は、プラスミンを阻害するタンパク質の有効量を被験体に投与することを含む。例えばタンパク質は、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含む。
【0011】
本方法は、第2の抗癌剤を被験体に投与することを、さらに含むことができる。例えば第2の抗癌剤は、ロイプロリド、ゴセレリン、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、ケトコナゾールまたはアミノグルテチミドである。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0012】
本方法は、血漿カリクレイン阻害剤(例えばDX−88)を被験体に投与することを、さらに含むことができる。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0013】
他の態様として、本開示は、本明細書に記載するプラスミン阻害剤をアジュバント療法として例えば被験体に投与する方法を特徴とする。アジュバント療法は、被験体が腫瘍の全部または一部を摘除するための手術を受けた後(例えば前立腺癌または乳癌または血管新生依存性癌を処置するための手術後)に被験体に投与される術後療法であることができる。例えばプラスミン阻害剤は、プラスミンを阻害するタンパク質、例えばクニッツドメインを含むタンパク質である。一実施形態では、プラスミン阻害剤が、手術の6、12、24、48、または100時間以内に投与される。プラスミン阻害剤は、手術後だけでなく、手術前、手術中にも投与することができる。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0014】
他の態様として、本開示は、過剰なプラスミン活性に起因すると考えられる障害を処置する方法を特徴とする。本方法は、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質のプラスミン阻害量をヒトまたは動物被験体に投与することを含む。例えばタンパク質は少なくとも二つのポリマー部分を含む。タンパク質はDX−1000および3個または4個のPEG部分を含むことができる。一実施形態では、タンパク質は、止血を実質的に達成しないものである。一実施形態では、タンパク質は、他のプロテアーゼを実質的に阻害しない。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0015】
他の態様として、本開示は、過剰なプラスミン活性に起因すると考えられる障害を処置する方法を特徴とする。本方法は、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質のプラスミン阻害量をヒトまたは動物被験体に投与することを含む。例えばタンパク質は、アルブミンまたはその断片に融合されたDX−1000を含む。一実施形態では、タンパク質は、止血を実質的に達成しないものである。一実施形態では、タンパク質は、他のプロテアーゼを実質的に阻害しない。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0016】
他の態様として、本開示は、癌(例えば転移性癌)の危険または存在に関して被験体を評価し、癌(特に転移性癌)の徴候が検出される場合は、その被験体に、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質の有効量を投与することを含む方法を特徴とする。一実施形態では、癌が、前立腺癌または本明細書に開示する別の癌である。例えば、評価ステップは、被験体から採取した試料中の前立腺特異抗原を検出することを含むことができる。評価ステップは、前立腺特異抗原に結合する試薬を被験体に投与して被験体を撮像することを含むことができる。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0017】
他の態様として、本開示は、被験体における血管新生を阻害する方法を特徴とする。一実施形態では、本方法は、プラスミン阻害剤、例えばプラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質であって、クニッツドメインが少なくとも二つのポリマー部分を含むものを被験体に投与することを含む。例えば、タンパク質はDX−1000および3個または4個のPEG部分を含む。例えば、タンパク質は、ヒト血清アルブミン(HSA)またはその断片に融合されたDX−1000を含む。一実施形態では、プラスミン阻害剤は、止血を実質的に達成しないものである。一実施形態では、プラスミン阻害剤は、他のプロテアーゼを実質的に阻害しない。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0018】
他の態様として、本開示は、血管新生関連障害(例えば眼内血管新生性疾患、炎症、または血管新生依存性の癌もしくは腫瘍)を処置する方法を特徴とする。本方法は、有効量のプラスミン阻害剤(例えばプラスミンを阻害するタンパク質)を被験体に投与することを含む。例えば、タンパク質は、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含む。例えば、タンパク質は、少なくとも二つのポリマー部分を含む。タンパク質は、DX−1000および3個または4個のPEG部分を含むことができる。一実施形態では、タンパク質は、止血を実質的に達成しないものである。一実施形態では、タンパク質は他のプロテアーゼを実質的に阻害しない。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0019】
他の態様として、本開示は、リンパ管新生関連障害(例えば癌、例えば転移性癌、例えば転移性乳癌、転移性卵巣癌または転移性直腸結腸癌)を処置する方法を特徴とする。一実施形態では、本方法は、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質のプラスミン阻害量をヒトまたは動物被験体に投与することを含む。例えば、タンパク質は、少なくとも二つのポリマー部分を含む。タンパク質はDX−1000および3個または4個のPEG部分を含むことができる。一実施形態では、タンパク質は、止血を実質的に達成しないものである。一実施形態では、タンパク質は、他のプロテアーゼを実質的に阻害しない。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0020】
他の態様として、本開示は、被験体におけるVEGF−Cおよび/またはVEGF−D活性を減少させる方法を特徴とする。一実施形態では、本方法は、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質(例えばDX−1000)のプラスミン阻害量をヒトまたは動物被験体に投与することを含む。本方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことができる。
【0021】
本明細書に記載するタンパク質(例えばクニッツドメインを含むタンパク質)は、本明細書に記載する特定のタンパク質と比較して、タンパク質機能(例えばプラスミンを阻害する能力)に実質的な影響を及ぼさない突然変異(例えば保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換)を持ちうると理解される。ある特定の置換が許容されるかどうか、すなわち望ましい生物学的性質(例えば結合活性)に有害な影響を及ぼさないかどうかは、Bowieら(1990)Science 247:1306−1310に記述されているように決定することができる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似する側鎖を持つアミノ酸残基で置き換えられる置換である。当技術分野では、類似する側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーが定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を持つアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。多くのフレームワークアミノ酸残基およびCDRアミノ酸残基は、1以上の保存的置換を含むことができる。
【0022】
二つの配列間の配列比較および一致率の決定は、数学的アルゴリズムを使って行うことができる。典型的には、二つのヌクレオチド配列間の一致率は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムにより、Blossum62スコアリング行列を使って、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5で決定される。
【0023】
「非必須」アミノ酸残基が、生物学的活性を破壊せずに、より好ましくは生物学的活性を実質的に変化させずに、結合剤(例えば抗体)の野生型配列から変化させることができる残基であるのに対して、「必須」アミノ酸残基はそのような変化をもたらす。
【0024】
「アルキル」という用語は、直鎖でも分枝鎖でもよい、表示した数の炭素原子を含有する炭化水素鎖である。例えばC−C12アルキルは、その中に1〜12(1および12を含む)個の炭素原子を持ちうる基を示す。
【0025】
「アリール」という用語は、芳香族単環式、二環式、または三環式炭化水素環系を指し、置換が可能な任意の環原子は置換基で置換することができる。アリール部分の例には、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルなどがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
結合親和力は、BIA−CORE解析または同等なアッセイを使って、pH7.2のリン酸緩衝食塩水中で決定することができる。
【0027】
添付の図面および以下の説明では、本発明の1以上の実施形態の詳細を述べる。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明白になるだろう。本明細書で言及する公開特許出願、特許、および参考文献は全て、参照により、そのまま本明細書に組み入れられる。特に、米国特許第5,663,143号、第5,223,409号、第6,010,080号、第6,103,499号および第6,333,402号ならびに米国特許出願第10/931,153号は、参照により、そのまま本明細書に組み入れられる。
本発明はまた、以下の項目も提供する。
(請求項1)
被験体における前立腺癌または前立腺癌由来の転移を処置するための医薬の製造のための、DX−1000の結合ループ、またはDX−1000の結合ループとは2個以下のアミノ酸が異なっているループを含むクニッツドメインを含むタンパク質の使用。
(請求項2)
被験体における乳癌または乳癌由来の転移を処置するための医薬の製造のための、DX−1000の結合ループまたはDX−1000の結合ループとは2個以下のアミノ酸が異なっているループを含むクニッツドメインを含むタンパク質の使用。
(請求項3)
被験体における血管新生関連障害またはリンパ管新生関連障害を処置するための医薬の製造のための、DX−1000の結合ループまたはDX−1000の結合ループとは2個以下のアミノ酸が異なっているループを含むクニッツドメインを含むタンパク質の使用。
(請求項4)
前記血管新生関連障害が眼内血管新生性疾患である、請求項3に記載の使用。
(請求項5)
前記血管新生関連障害が炎症である、請求項3に記載の使用。
(請求項6)
前記血管新生関連障害が血管新生依存性癌または腫瘍である、請求項3に記載の使用。
(請求項7)
前記リンパ管新生関連障害が、VEGF−CおよびVEGF−Dを高度に発現させる乳癌、卵巣癌または結腸直腸癌である、請求項3に記載の使用。
(請求項8)
前記クニッツドメインが静脈内投与される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
(請求項9)
前記クニッツドメインがモノPEG化される、請求項1〜8に記載の使用。
(請求項10)
前記クニッツドメインがポリPEG化される、請求項1〜8に記載の使用。
(請求項11)
前記クニッツドメインがアルブミンまたはその断片に融合される、請求項1〜8に記載の使用。
(請求項12)
前記クニッツドメインが血漿カリクレイン阻害剤と組み合わせて投与される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用
(請求項13)
前記クニッツドメインが凝固または血小板機能を損なわない、上記請求項にいずれか一項に記載の使用。
(請求項14)
前記クニッツドメインが術後アジュバント療法の一部として、腫瘍を摘除するための手術を受けた被験体に投与される、請求項1、2、6、または7に記載の使用。
(請求項15)
前記クニッツドメインがDX−1000とは3アミノ酸未満の相違で異なっている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
(請求項16)
前記クニッツドメインがDX−1000と同一である、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】プラスミンの機能を他のタンパク質と関連づけて説明する図である。
【図2】DX−1000の存在下および不在下での細胞移動の変化を示すグラフである。
【図3】LNCaP細胞浸潤に対するDX−1000の阻害効果を示すグラフである。
【図4】HT−1080細胞浸潤に対するDX−1000の阻害効果のグラフである。
【図5】HT−1080細胞浸潤に対するDX−1000の阻害効果のグラフである。
【図6】LNCaP細胞(図6)およびHT−1080細胞(図7)に対するDX−1000および4−PEG DX−1000の阻害効果を比較したグラフである。
【図7】LNCaP細胞(図6)およびHT−1080細胞(図7)に対するDX−1000および4−PEG DX−1000の阻害効果を比較したグラフである。
【図8】正常マウスにおけるDX−1000および4−PEG5−DX−1000の体内分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
プラスミン(プラスミノゲンの活性化型)は線維素溶解に重要なセリンプロテアーゼである。プラスミンは血管新生または血管リモデリングにおけるキー酵素でもある。プラスミンの阻害剤は、新生物細胞の転移を、例えば血管リモデリングの阻害、細胞外マトリックスの改変および他の機序などによって、防止し、または減少させるために、使用することができる。血管リモデリングは、血行力学的刺激に呼応して血管壁の持続的構造変化をもたらす。血管リモデリングは、細胞外マトリックス(ECM)の分解、細胞増殖および細胞移動を必要とする多くの病態生理学的過程の一構成要素である。このリモデリング過程を阻害する方法は、新生物障害、特に転移性癌に関係する障害を処置するために使用することができる。代表的な癌として、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、直腸結腸癌および線維肉腫が挙げられる。関連する他の癌として、肺、リンパ系、胃腸路(例えば結腸)および尿生殖路、卵巣、ならびに咽頭に由来する癌を挙げることができる。
【0030】
代表的なプラスミン阻害剤として、DX−1000およびクニッツドメインを含む他のタンパク質が挙げられる。
【0031】
DX−1000
DX−1000は、ヒトプラスミン阻害剤を阻害するクニッツドメインである(K=88pM)。クニッツドメインの詳細については後述する。DX−1000タンパク質は、ヒトLACIのフレームワーク領域を含むが、他のフレームワークを使用することもできる。DX−1000の配列は、以下のアミノ酸配列(配列番号22)を含むことができる。
【0032】
【数2】

この配列に二つのN末端アミノ酸(「EA」)を先行させて以下の配列(配列番号23)が含まれるようにすることができる。
【0033】
【数3】

いくつかの機能的細胞系活性アッセイで試験したところ、DX−1000は強力な阻害活性を示した。第1に、DX−1000(1nM)は、マトリゲルを通したLNCaP(前立腺癌)およびHT−1080(線維肉腫)のDHT刺激による浸潤(プラスミノゲン/プラスミン系に依存することが知られている過程)を、どちらも阻害した。興味深いことに、DX−1000は、癌細胞浸潤およびECMタンパク質分解に直接関与するゼラチナーゼ類の発現および活性化を、効率よくダウンレギュレートした。また、DX−1000(1〜10nM)は、ヒトおよびマウス内皮細胞の管形成を、マトリゲル上に播種したか、コラーゲンI型上に播種したかに関わらず、効率よく阻止した。止血面に関して、DX−1000は、包括的凝固スクリーニング検査にも血小板機能スクリーニング検査にも、臨床的に有意な効果を示さなかった。
【0034】
DX−1000は、例えばPEG化などによって修飾することができる。mPEGによる修飾には三つのリジンおよびN−末端を利用することができ、これらの位置のうち1箇所、2箇所またはそれ以上を修飾することができる(例えばこれら4箇所の全てを修飾することができる)。化合物4×PEG DX−1000は、4個のPEG部分を含む代表的な修飾DX−1000分子である。DX−1000は、約5kDaまたは7kDaの平均分子量を持つmPEGスクシンイミジルプロピオン酸と化合させることができる。
【0035】
DX−1000をアルブミンまたはその断片と融合させて、その生体内半減期、治療活性、または貯蔵寿命を延ばすこともできる。アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミン(例えばヒト血清アルブミン)またはその断片を含み、C末端部分としてDX−1000を含むことができる。もう一つの選択肢として、アルブミン融合タンパク質は、C末端部分としてアルブミン(例えばヒト血清アルブミン)またはその断片を含み、N末端部分としてDX−1000を含んでもよい。さらにまた、DX−1000を、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)またはその断片の内部領域に挿入することもできる。
【0036】
DX−1000変種および他の阻害性クニッツドメイン
米国特許第6,103,499号には、QS4、NS4、SPI11、SPI15、SPI08、SPI23、SPI22、SPI60、SPI43、SPI51、SPI54、SPI47、SPI41、DPI−1.1.1、DPI−1.1.2、DPI−1.1.6などといった種々のクニッツドメインを含む、さらなるプラスミン阻害剤が記載されている。この特許には、結合ループ中の特定位置における変異の例も示されており、プラスミンを阻害するDX−1000変種が記載されている。本明細書に記載する治療方法では、この特許に記載されているクニッツドメインも使用することができる。
【0037】
式:
【0038】
【数4】

を持つクニッツドメインを含むタンパク質の代表的なプラスミン阻害量。
【0039】
Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa56、Xaa57および/またはXaa58は、存在しなくてもよい。Xaa10は、Asp、Glu、Tyr、またはGlnであることができる。Xaa11は、Thr、Ala、Ser、ValまたはAspであることができる。Xaa13は、Pro、LeuまたはAlaであることができる。Xaa15は、LysまたはArgであることができる。Xaa16は、AlaまたはGlyであることができる。Xaa17は、Arg、LysまたはSerであることができる。Xaa18は、PheまたはIleであることができる。Xaa19は、Glu、Gln、Asp、Pro、Gly、SerまたはIleであることができる。Xaa21は、Phe、TyrまたはTrpであることができる。Xaa22は、TyrまたはPheであることができる。Xaa23は、TyrまたはPheであることができる。Xaa31は、Asp、Glu、Thr、Val、GlnまたはAlaであることができる。Xaa32は、Thr、Ala、Glu、Pro、またはGlnであることができる。Xaa34は、Val、Ile、Thr、Leu、Phe、Tyr、His、Asp、Ala、またはSerであることができる。Xaa35は、TyrまたはTrpであることができる。Xaa36は、GlyまたはSerであることができる。Xaa39は、Glu、Gly、Asp、Arg、Ala、Gln、Leu、Lys、またはMetであることができる。Xaa40は、GlyまたはAlaであることができる。Xaa43は、AsnまたはGlyであることができ;あるいはXaa45は、PheまたはTyrであることができる。指定しない場合、Xaaは任意のアミノ酸、特に任意の非システインアミノ酸であることができる。
【0040】
さらに、Xaa10はAspまたはGluであることができる。Xaa11は、Thr、Ala、またはSerであることができる。Xaa13はProである。Xaa15はArgである。Xaa16はAlaである。Xaa17はArgである。Xaa18はPheである。Xaa19はGluまたはAspであることができる。Xaa21はPheまたはTrpであることができる。Xaa22はTyrまたはPheであることができる。Xaa23はTyrまたはPheであることができる。Xaa31はAspまたはGluであることができる。Xaa32は、Thr、Ala、またはGluであることができる。Xaa34は、Val、IleまたはThrであることができる。Xaa35はTyrである。Xaa36はGlyである。Xaa39はGlu、Gly、またはAspであることができる。Xaa40はGlyまたはAlaであることができる。Xaa43はAsnまたはGlyであることができ;あるいはXaa45はPheまたはTyrであることができる。
【0041】
一実施形態では、タンパク質が、DX−1000の第1および/または第2結合ループのアミノ酸配列の少なくとも80、85、90、95%、または100%を含む。一実施形態では、タンパク質が、ヒトクニッツドメイン(例えば本明細書に記載するヒトクニッツドメイン)に由来するフレームワーク領域を含む。
【0042】
代表的なDX−1000変種として、(例えば置換、挿入、または消去などによって)DX−1000のアミノ酸配列(例えば配列番号23)または配列番号22のアミノ酸配列とは少なくとも一つのアミノ酸が異なるが、相違するアミノ酸は8個、6個、5個、4個、3個、または2個未満であるようなアミノ酸配列を持つタンパク質が挙げられる。相違は、第1結合ループ以外の領域、または第1および第2結合ループ以外の領域、例えばフレームワーク領域中に存在することができる。典型的には、そのクニッツドメインは、自然界においてヒトには存在しないが、ヒトクニッツドメイン(例えば本明細書に記載するヒトクニッツドメイン)との相違が10、7、または4アミノ酸未満であるアミノ酸配列を含みうる。
【0043】
一実施形態では、プラスミンに関する化合物のKiが、プラスミンに関するDX−1000のKの0.5〜1.5倍、0.8〜1.2倍、0.3〜3.0倍、0.1〜10.0倍、または0.02〜50.0倍の範囲にある。
【0044】
クニッツドメイン
DX−1000はプラスミンを阻害するクニッツドメインを含む。DX−1000および関連クニッツドメインをここに説明する。
【0045】
クニッツドメインは、少なくとも51個のアミノ酸を持ち、少なくとも2個、好ましくは3個のジスルフィドを含有する、ポリペプチドドメインである。このドメインは、第1システインと第6システイン、第2システインと第4システイン、そして第3システインと第5システインがジスルフィド結合を形成するように折りたたまれる(例えば58個のアミノ酸を有するクニッツドメインでは、システインが、以下に記載するBPTI配列の番号で、アミノ酸5、14、30、38、51、および55に相当する位置に存在することができ、ジスルフィドは、5位と55位、14位と38位、そして30位と51位にあるシステイン間に形成することができる)か、あるいは二つのジスルフィドが存在する場合、それらのジスルフィドは、その対応するシステインサブセット間に形成することができる。各システイン間の間隔は、以下に記載するBPTI配列の番号付けで5と55、14と38、および30と51に相当する位置の間の間隔に対して7、5、4、3または2アミノ酸以内であることができる。BPTI配列は、任意の一般クニッツドメインにおける特定位置を指すための基準として使用することができる。関心被験体のクニッツドメインとBPTIとの比較は、整列したシステインの数が最大になるような最適アラインメントを同定することによって行うことができる。
【0046】
BPTIのクニッツドメインの3D構造(高分解能)が知られている。X線構造の一つは、Brookhaven Protein Data Bankに「6PTI」として登録されている。いくつかのBPTIホモログの3D構造が知られている(Eigenbrotら(1990)Protein Engineering,3(7):591−598;Hynesら(1990)Biochemistry,29:10018−10022)。少なくとも70のクニッツドメイン配列が知られている。既知のヒトホモログには、LACIの三つのクニッツドメイン(Wunら(1988)J.Biol.Chem.263(13):6001−6004;Girardら(1989)Nature,338:518−20;Novotnyら(1989)J.Biol.Chem.,264(31):18832−18837)、インター−α−トリプシンインヒビター、APP−Iの二つのクニッツドメイン(Kidoら,(1988)J.Biol.Chem.,263(34):18104−18107)、コラーゲン由来のクニッツドメイン、およびTFPI−2の三つのクニッツドメイン(Sprecherら(1994)PNAS USA,91:3353−3357)などがある。LACIは、三つのクニッツドメインを含有する分子量39kDaのヒト血清リン酸化糖タンパク質(表1のアミノ酸配列)である。
【0047】
【表1】

上記クニッツドメインをLACI−K1(残基50〜107)、LACI−K2(残基121〜178)、およびLACI−K3(213〜270)と呼ぶ。LACIのcDNA配列は、Wunら(J.Biol.Chem.,1988,263(13):6001−6004)に報告されている。Girardら(Nature,1989,338:518−20)には、三つのクニッツドメインのそれぞれのP1残基を変化させた突然変異研究が報告されている。LACI−K1は、第VIIa因子(F.VIIa)が組織因子と複合体を形成した時にF.VIIaを阻害し、LACI−K2は第Xa因子を阻害する。
【0048】
代表的なクニッツドメインを含有するタンパク質には、以下に挙げるものがある(カッコ内はSWISS−PROTアクセッション番号):
【0049】
【数5】

【0050】
【数6】

表2:19のヒトクニッツドメインのアミノ酸配列(19のヒトクニッツドメイン結合ループのアミノ酸配列に下線を引く)
【0051】
【数7】

【0052】
【数8】

さまざまな方法を使って配列データベースからクニッツドメインを同定することができる。例えば、クニッツドメインの既知のアミノ酸配列、コンセンサス配列、またはモチーフ(例えばProSite Motif)を、GenBank配列データベース(国立バイオテクノロジー情報センター、米国国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ)に対して、例えばBLASTを使って検索したり、HMM(隠れマルコフモデル)のPfamデータベースに対して、例えばPfam検索用のデフォルトパラメータを使って検索したり、SMARTデータベースに対して検索したり、またはProDomデータベースに対して検索したりすることができる。例えば、Pfam Release 9のPfamアクセッション番号PF00014は、数多くのクニッツドメインと、クニッツドメインを同
定するためのHMMを与える。Pfamデータベースの説明はSonhammerら(1997)Proteins 28(3):405−420に見出すことができ、HMMの詳細な説明は、例えばGribskovら(1990)Meth.Enzymol.183:146−159;Gribskovら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4355−4358;Kroghら(1994)J.Mol.Biol.235:1501−1531;およびStultzら(1993)Protein Sci.2:305−314などに見出すことができる。Schultzら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:5857およびSchultzら(2000)Nucl.Acids Res 28:231に記載されているHMMのSMARTデータベース(Simple Modular Architecture Research Tool,EMBL,ドイツ・ハイデルベルク)。SMARTデータベースには、HMMer2検索プログラムの隠れマルコフモデルを使ったプロファイリングによって同定されるドメインが含まれている(R.Durbinら(1998)「Biological sequence analysis:probabilistic models of proteins and nucleic acids」ケンブリッジ大学出版局)。このデータベースはアノテーションが付され、モニターされる。ProDomタンパク質ドメインデータベースは相同ドメインの自動編集物からなる(Corpetら(1999)Nucl.Acids Res.27:263−267)。ProDomの最新バージョンは、SWISS−PROT38およびTREMBLタンパク質データベースの反復的PSI−BLAST検索を使って構築される(Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Gouzyら(1999)Computers and Chemistry 23:333−340)。このデータベースは各ドメインについてコンセンサス配列を自動的に生成する。Prositeでは、クニッツドメインがモチーフとして列挙され、クニッツドメインを含むタンパク質が同定される。例えばFalquetら,Nucleic Acids Res.30:235−238(2002)を参照されたい。
【0053】
プロテアーゼ阻害剤を選択するのに有用なクニッツドメインとしては、特定のリジン残基数を持つフレームワーク領域を有するクニッツドメインを挙げることができる。ある実施態様では、4個のリジン残基を持つフレームワークが有用であり、それらを、例えば3〜8kDa(例えば約5kDa)の平均分子量を持つPEG部分の結合などによって、修飾することができる。例えばITIフレームワークは4個のリジンを持っている。もう一つの実施態様では、3個のリジンを持つフレームワークが有用であり、それらを、例えば4〜10kDa(例えば約5kDaまたは7kDa)の平均分子量を持つPEG部分の結合などによって、修飾することができる。LACIはそのようなフレームワークの一つである。フレームワークには、含まれるリジンの数が増減するように、例えば結合ループの5、4、または3残基以内にあるリジンの数を減らすために、または小さなPEG部分(例えば3〜8kDaのPEG部分)でタンパク質を修飾することによってタンパク質のサイズおよびインビボでのタンパク質の安定性を増加させることができるように十分な数のリジンを導入するために、改変を加えることもできる。
【0054】
クニッツドメインは、主に二つのループ領域(「結合ループ」)中のアミノ酸を使って、標的プロテアーゼと相互作用する。第1ループ領域は、BPTIのアミノ酸11〜21にほぼ相当する残基間にある。第2ループ領域は、BPTIのアミノ酸31〜42にほぼ相当する残基間にある。クニッツドメインの代表的なライブラリーでは、第1および/または第2ループ領域中の1以上のアミノ酸位置を変化させる。変化させるのに特に有用な位置には以下に挙げる位置がある:BPTIの配列に関して13、16、17、18、19、31、32、34、および39位。これらの位置の少なくとも一部は、標的プロテアーゼと密接に接触すると予想される。
【0055】
クニッツドメインの「フレームワーク領域」は、クニッツドメインの一部を成す残基であるが、第1および第2結合ループ領域中の残基(例えばBPTIのアミノ酸11〜21およびBPTIのアミノ酸31〜42にほぼ相当する残基)は特に除外した残基であると定義される。フレームワーク領域はヒトクニッツドメイン(例えばLACI)に由来することができる。代表的なフレームワークは、少なくとも1個、2個、または3個のリジンを含むことができる。一実施形態では、それらのリジンがLACIのフレームワーク内に見出される位置に相当する位置、またはそのような位置から少なくとも3、2、または1アミノ酸以内にある位置に存在する。
【0056】
逆に、これらの特定位置にない残基またはループ領域中にない残基は、これらのアミノ酸位置よりも、広範囲にわたるアミノ酸置換(例えば保存的および/または非保存的置換)を許容しうる。
【0057】
特定の特異性を持つクニッツドメインをスクリーニングし単離するための代表的方法には、例えばUS2004−0209243、US5,223,409、およびUS6,423,498に記載されている方法がある。クニッツドメインを含むタンパク質は、組換え技法を使って、細菌(例えば大腸菌)、酵母(例えばサッカロミセスまたはピキア)、昆虫細胞、哺乳動物細胞、またはトランスジェニック動物(例えば乳汁中に分泌させるため)で産生させることができる。
【0058】
プラスミン阻害剤−抗体
プラスミン阻害剤の一種類には抗体が含まれる。代表的な抗体は、プラスミンに特異的に結合する。抗体はいくつかの方法でプラスミンを阻害することができる。例えば、活性部位の1以上の残基と接触したり、活性部位を立体的に障害または妨害したり、プラスミンの成熟を防いだり、触媒活性に必要なコンフォメーションを不安定化したりすることができる。
【0059】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、少なくとも一つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質を指す。例えば抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)を含むことができる。もう一つの例では、抗体が二つの重(H)鎖可変領域と二つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、完全な抗体だけでなく、抗体の抗原結合性断片(例えば単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)、Fd断片、Fv断片、およびdAb断片)も包含する。
【0060】
VH領域およびVL領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変領域と、その中に点在する保存度の高い「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる領域とに、さらに細分することができる。フレームワーク領域およびCDRは精密に定義されている(Kabat,E.A.ら(1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版,米国保険社会福祉省,NIH Publication No.91−3242およびChothia,C.ら(1987)J.MoI.Biol.196:901−917を参照されたい)。ここではKabatの定義を使用する。各VHおよびVLは、典型的には、三つのCDRおよび四つのFRから構成され、それらがアミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0061】
「免疫グロブリンドメイン」とは、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインに由来するドメインを指す。免疫グロブリンドメインは、典型的には、およそ七つのβストランドと保存されたジスルフィド結合とから形成される二つのβシートを含有する(例えばA.F.WilliamsおよびA.N.Barclay 1988 Ann Rev Immunol.6:381−405を参照されたい)。
【0062】
本明細書にいう「免疫グロブリン可変ドメイン配列」とは、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成することができるアミノ酸配列を指す。例えばその配列は、天然可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を含むことができる。例えばその配列は、1個、2個またはそれ以上のN末端またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を欠くか、1以上の挿入または追加末端アミノ酸を含むか、あるいは他の改変を含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドが、もう一つの免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して、標的結合構造(または「抗原結合部位」)(例えば、非活性型構造と比較して、活性型インテグリン構造または活性型インテグリン構造の模倣物と優先的に相互作用する構造)を形成することができる。
【0063】
抗体のVH鎖またはVL鎖は、さらに、重鎖または軽鎖定常領域の全部または一部を含むことにより、それぞれ免疫グロブリン重鎖または免疫グロブリン軽鎖を形成することができる。一実施形態では、抗体が、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖の四量体であって、それらの免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖が、例えばジスルフィド結合によって互いに連結されている。重鎖定常領域は三つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖定常領域はCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、典型的には、例えば免疫系のさまざまな細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体活性化経路の第1成分(C1q)などといった宿主組織または宿主因子に対する抗体の結合を媒介する。「抗体」という用語は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM型(ならびにそのサブタイプ)の完全な免疫グロブリンを包含する。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型またはラムダ型であることができる。一実施形態では、抗体は、グリコシル化される。抗体は、抗体依存性細胞傷害および/または補体媒介性細胞傷害に関して機能的であっても非機能的であってもよい。
【0064】
抗体の1以上の領域は、ヒト型または事実上ヒト型であることができる。例えば可変領域の1以上は、ヒト型または事実上ヒト型であることができる。例えばCDRの1以上はヒト型、例えばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3であることができる。軽鎖CDRのそれぞれはヒト型であることができる。HC CDR3はヒト型であることができる。フレームワーク領域の1以上はヒト型、例えばHCまたはLCのFR1、FR2、FR3、およびFR4であることができる。一実施形態では、全てのフレームワーク領域が、ヒト体細胞(例えば免疫グロブリンを産生する造血細胞または非造血細胞)などに由来するヒト型である。一実施形態では、ヒト配列が、生殖系列核酸などによってコードされる生殖系列配列である。定常領域の1以上はヒト型または事実上ヒト型であることができる。もう一つの実施形態では、抗体全体の少なくとも70、75、80、85、90、92、95、または98%が、ヒト型または事実上ヒト型であることができる。「事実上ヒト型」の免疫グロブリン可変領域とは、その免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫原応答を誘発しないように、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含んでいる免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒト型」の抗体とは、その抗体が正常なヒトにおいて免疫原応答を誘発しないように、十分な数のヒトアミノ酸位置を含んでいる抗体である。
【0065】
抗体の全部または一部は、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによってコードされうる。代表的なヒト免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)が可変領域遺伝子によってコードされ、COOH末端がカッパまたはラムダ定常領域によってコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)も同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および他の上記定常領域遺伝子の一つ、例えばガンマ(約330アミノ酸をコードする)によってコードされる。
【0066】
プラスミンに結合してプラスミンを阻害する抗体を同定するための代表的方法の一つは、非ヒト動物をプラスミンまたはその断片で免疫することを含む。小さなペプチドでも免疫原として使用することができる。一実施形態では、触媒活性が低下しているか触媒活性を持たない突然変異型プラスミンを、免疫原として使用する。免疫した動物から脾細胞を単離し、それを使ってハイブリドーマ細胞を標準的方法で作出することができる。一実施形態では、非ヒト動物が1以上のヒト免疫グロブリン遺伝子を含む。
【0067】
プラスミンに結合してプラスミンを阻害するタンパク質を同定するためのもう一つの代表的方法は、タンパク質のライブラリーを用意し、そのライブラリーから、プラスミンまたはその断片に結合する1以上のタンパク質を選択することを含む。選択はいくつかの方法で行うことができる。例えばライブラリーは、ディスプレイライブラリーまたはタンパク質アレイの形式で用意することができる。選択に先だって、非標的分子(例えばプラスミン以外のプロテアーゼまたは活性部位にアクセスできない(例えばアプロチニンなどの阻害因子によって結合されている)プラスミン)と相互作用するメンバーを除去するために、ライブラリーを予備選別(例えば消耗)することができる。
【0068】
抗体ライブラリー(例えば抗体ディスプレイライブラリー)は、いくつかの方法で構築することができる(例えばde Haardら(1999)J.Biol.Chem 274:18218−30;Hoogenboomら(1998)Immunotechnology 4:1−20およびHoogenboomら(2000)Immunol Today 21:371−8を参照されたい)。さらに、各方法の構成要素を他の方法の構成要素と併用することもできる。単一の免疫グロブリンドメイン(例えばVHもしくはVL)または複数の免疫グロブリンドメイン(例えばVHおよびVL)に変異が導入されるような形で、これらの方法を使用することができる。変異は、免疫グロブリン可変ドメインの、例えばCDR1、CDR2、CDR3、FR1、FR2、FR3、およびFR4(重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの一方または両方のこれらの領域を指す)の1以上の領域内に、導入することができる。一実施形態では、与えられた可変ドメインの三つのCDRの全てに、変異が導入される。もう一つの好ましい実施形態では、変異が(例えば重鎖可変ドメインの)CDR1およびCDR2内に導入される。任意の組み合わせを実施することができる。抗体(例えば完全長抗体またはその抗原結合性部分)を組換え発現させるための代表的な系では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウムトランスフェクションによって、dhfr− CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内では、遺伝子の高レベルな転写が起こるように、抗体重鎖遺伝子および抗体軽鎖遺伝子のそれぞれが、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなど、SV40、CMV、アデノウイルス、その他に由来するもの)に作動可能に連結される。組換え発現ベクターは、ベクターがトランスフェクトされているCHO細胞をメトトレキサート選択/増幅で選択することを可能にするDHFR遺伝子も保持する。選択された形質転換体宿主細胞を培養して、抗体重鎖および抗体軽鎖を発現させ、完全な抗体を培養培地から回収する。標準的な分子生物学技法を使って、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収する。例えば一部の抗体は、プロテインAまたはプロテインGを使ったアフィニティクロマトグラフィーによって単離することができる。抗体は、トランスジェニック動物に産生させることもできる。
【0069】
プラスミン阻害剤−ペプチド
結合性リガンドは、標的分子に独立して結合する32アミノ酸以下のペプチドを含むことができる。そのようなペプチドの一部は、1以上のジスルフィド結合を含むことができる。他のペプチド、いわゆる「線状ペプチド」は、システインを欠いている。一実施形態では、ペプチドが人工ペプチド、すなわち自然界には存在しないか、1以上の関心被験体ゲノム(例えばヒトゲノム)によってコードされるタンパク質中には存在しないペプチドである。合成ペプチドは、溶解状態ではほとんどまたは全く構造を持たない(例えば無構造)か、不均一な構造を持つか(例えば選択的コンフォメーションもしくは「柔構造」)を持つか、または唯一のネイティブ構造を持つ(例えば共同的に折りたたまれる)ことができる。一部の合成ペプチドは、標的分子に結合した時に、特定の構造をとる。代表的な合成ペプチドのいくつかは、少なくとも一つのジスルフィド結合と、例えば約4〜12個の非システイン残基のループとを持つ、いわゆる「環状ペプチド」である。代表的なペプチドは、28、24、20、または18アミノ酸未満の長さである。
【0070】
プラスミンに独立して結合するペプチド配列は、さまざまな方法のいずれかによって同定することができる。例えばそれらは、ディスプレイライブラリーまたはペプチドのアレイから選択することができる。同定後は、それらのペプチドを、合成的に、または組換え手段によって、製造することができる。それらの配列は、より長い配列に組み入れる(例えば挿入する、付け加える、または結合する)ことができる。
【0071】
代表的なファージライブラリーをスクリーニングすることにより、本明細書に記載するペプチドリガンドの少なくとも一部を見出すことができる。各ライブラリーは、短い変化に富む外因性ペプチドを、M13ファージの表面にディスプレイすることができる。これらのライブラリーの五つのペプチドディスプレイは、システイン残基が隣接するそれぞれ4、5、6、7、8、10、11、または12アミノ酸のセグメントを持つ親ドメインに基づくことができる。システインの対は、安定なジスルフィド結合を形成して、環状ディスプレイペプチドをもたらすと考えられる。それらの環状ペプチドを、ファージ表面上のプロテインIIIのアミノ末端にディスプレイさせることができる。20アミノ酸線状ディスプレイを持つファージライブラリーをスクリーニングすることもできる。
【0072】
Kayら「Phage Display of Peptides and Proteins :A Laboratory Manual」(Academic Press,Inc.,サンディエゴ 1996)および米国特許第5,223,409号で論じられている技法は、選択した親テンプレートに対応する潜在的結合剤のライブラリーを調製するのに有用である。そのような技法に従ってライブラリーを調製し、例えばプラスミンに結合してプラスミンを阻害するペプチドを求めて、そのライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0073】
また、ファージライブラリーまたはファージライブラリーから選択した集団を、例えば、アプロチニンの結合または他のプラスミン阻害剤の結合などによって失活させたプラスミンを使って、対抗選択することもできる。そのような手順は、活性部位と接触しないペプチドを捨てるために用いることができる。
【0074】
代替的主鎖(例えばペプトイド主鎖)を使ってペプチドを合成することにより、例えば増加したプロテアーゼ耐性を持つ化合物を製造することもできる。特にこの方法は、プラスミンに結合してプラスミンを阻害する化合物であって、それ自体はプラスミンによる効果的な切断を受けない化合物を製造するために使用することができる。
【0075】
その他のプラスミン阻害剤として小分子(例えば700ダルトンより小さい分子または4個未満のペプチド結合を含む分子)が挙げられる。さらなる代表的プラスミン阻害剤としてアルファ2−プラスミンインヒビターおよびアルファ2−マクログロブリンが挙げられる。
【0076】
薬学的組成物
プラスミン阻害剤(例えばプラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質(例えばDX−1000))を含む化合物を含む組成物(例えば薬学的に許容できる組成物)も特徴の一つである。一実施形態では、タンパク質を例えばPEGなどのポリマーで修飾する。薬学的組成物には、治療用または予防用化合物だけでなく、診断(例えばインビボ撮像)用化合物(例えば標識化合物)も包含される。
【0077】
薬学的に許容できる担体には、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤などが含まれる。一実施形態では、担体が水以外である。好ましくは、担体は、(例えば注射または注入による)静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与に適する。投与経路によっては、化合物を酸や化合物を失活させうる他の自然条件から保護するための素材で、活性化合物を被覆してもよい
薬学的に許容できる塩は、親化合物の望ましい生物学的活性を保っていて、望ましくない毒性効果を付与しない塩である(例えばBerge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照されたい)。そのような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホスホン酸などの無毒性無機酸から誘導されるもの、ならびに例えば脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの無毒性有機酸から誘導されるものが含まれる。塩基付加塩には、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属から誘導されるもの、ならびに例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒性有機アミンから誘導されるものが含まれる。
【0078】
本組成物はさまざまな形態をとりうる。それらには、例えば、溶液剤(例えば注射用および注入用溶液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、リポソームおよび坐剤などの、液体、半固体および固体剤形が含まれる。形態は意図する投与様式および治療用途に依存しうる。典型的な組成物は、注射用または注入用溶液剤(例えば抗体をヒトに投与する際に用いられるものと同様の組成物)の形態をとる。投与は非経口投与であることができる。非経口投与の例には、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射が含まれる。一実施形態では、化合物が静脈内注入または静脈内注射によって投与される。もう一つの実施形態では、化合物が筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0079】
薬学的組成物は、典型的には、無菌であり、製造条件下および貯蔵条件下で安定である。薬学的組成物が投与に関する規制基準および工業規格を満たすことを保証するために、薬学的組成物を検査することもできる。例えば、USP 24/NF 19の方法に従い、リムルス変形細胞溶解物アッセイを使って(例えばBio Whittakerのキット、ロット番号7L3790,感度0.125EU/mLを使って)、調製物中のエンドトキシンレベルを検査することができる。薬学的組成物の無菌性は、USP 24/NF 19の方法に従い、チオグリコール酸培地を使って決定することができる。例えば、調製物を使ってチオグリコール酸培地に接種し、35℃で14日以上インキュベートする。
微生物の成長を検出するために、培地を定期的に点検する。
【0080】
組成物は、溶液剤、マイクロエマルション剤、分散剤、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造物として調剤することができる。滅菌注射用溶液剤は、必要量の活性化合物を、適当な溶媒に、上に列挙した成分の一つまたは組み合わせと共に組み入れた後、必要に応じて、滅菌濾過することによって、製造することができる。一般に分散剤は、活性成分を、基礎分散媒および上に列挙した成分から選択される必要な他の成分を含有する滅菌賦形剤に組み入れることによって製造される。滅菌注射用溶液剤を調製するための滅菌粉末剤の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それにより、活性成分と、他の任意の望ましい成分(前もって滅菌濾過しておいたその溶液に由来するもの)との粉末が得られる。溶液剤の適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用などによって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えばモノステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物に含めることによって、引き起こすことができる。
【0081】
本明細書に記載するプラスミン阻害剤は、さまざまな方法によって投与することができる。多くの用途では、投与経路/投与様式が、静脈内注射、皮下注射、または注入である。例えば治療用途では、化合物を、静脈内注入により、例えば30、20、10、5または1mg/分未満の速度で、約1〜100mg/mまたは7〜25mg/mの用量に達するまで投与することができる。投与経路および/または投与様式は所望する結果に依存して変化しうる。
【0082】
一定の実施形態では、プラスミン阻害剤が、その阻害剤を急速な放出から保護するであろう担体を使って調製される(例えば、インプラントを含む制御放出製剤、およびマイクロカプセル化送達システムなど)。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を製造するための方法は数多く特許され、または広く知られている。例えば「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1978などを参照されたい。薬学的調剤は確立された技術であり、Gennaro(編)「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第20版,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)(ISBN:0683306472);Anselら「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」第7版,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(1999)(ISBN:0683305727);およびKibbe編「Handbook of Pharmaceutical Excipients」American Pharmaceutical Association,第3版(2000)(ISBN:091733096X)に詳述されている。
【0083】
一定の実施形態では、例えば不活性希釈剤または同化可能な食用担体などを使って、組成物を経口投与してもよい。化合物(および所望であれば他の成分)は、ハードシェルまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に圧縮するか、被験体の食餌に直接組み入れることもできる。治療的経口投与には、化合物を賦形剤と共に組み入れて、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。化合物を非経口投与以外の方法で投与するには、化合物を、その失活を防止する素材でコーティングするか、化合物と、その失活を防止する阻害とを、同時投与することが必要かもしれない。
【0084】
薬学的組成物は医用装置を使って投与することができる。代表的な医用装置には、ニードルレス皮下注射装置、注入ポンプ、浸透圧送達システムなどがある。
【0085】
プラスミン阻害剤は、有効量(障害を改善することができる量または障害のさらなる悪化を防止することができる量)の阻害剤を与えるために投与することができる。最適な所望の応答(例えば治療的応答)が得られるように、投薬レジメンを調節することができる。投薬量は、例えば個々の状況および/または利用できるインビボデータもしくはインビトロデータを考慮するなどして、担当医師および/または薬剤師の判断に基づくことができる。例えば、治療的状況に応じて、単回ボーラスを投与したり、時間をかけて数回の分割投与を行ったり、用量を比例的に増減したりすることができる。投与を容易にし、投薬量を均一にするために、非経口組成物を投薬単位剤形に調剤することは、特に有利である。投薬単位剤形は、処置被験体に単一の投薬量を与えるために使用することができ、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を、必要な薬学的担体と一緒に含有する。投薬単位剤形の仕様は、(a)活性化合物に特有の特徴および達成されるべき治療効果、ならびに(b)個体における感受性を処置する目的でそのような活性化合物を配合する際につきまとう制限によって定められ、それらに直接依存しうる。
【0086】
一定の実施形態では、インビボでの適正な分布が保証されるように、化合物を調剤することができる。例えば、リポソームを使って、または血液脳関門(BBB)を横切って送達するための適当な部分に結合させることによって、化合物を調剤することができる。リポソームは、特別な細胞または器官に選択的に輸送される1以上の部分を含むことができ、それゆえに標的薬物送達を増進することができる(例えばV.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685参照)。
【0087】
本開示は、プラスミン阻害剤(例えば本明細書に記載するプラスミン阻害剤)および使用(例えば処置、予防、または診断的使用)のための指示を含むキットも提供する。一実施形態では、キットが、(a)化合物、例えば化合物を含む組成物と、任意に(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載する方法および/または本明細書に記載する方法のための化合物の使用に関する記述的資料、指示資料、マーケティング資料または他の資料であることができる。例えば情報資料には、転移性癌または血管新生関連障害を調整する目的で化合物を投与するための方法が記述される。
【0088】
一実施形態では、情報資料が、化合物を適切な方法(例えば適切な用量、剤形、または投与様式(例えば本明細書に記載する用量、剤形、または投与様式))で投与するための指示を含みうる。もう一つの実施形態では、情報資料が、適切な被験体(例えばヒト、例えば過剰なプラスミン活性を特徴とする障害を持っているヒト、またはそのような障害のリスクがあるヒト)を同定するための指示を含みうる。情報資料は、化合物の製造、化合物の分子量、濃度、使用期限、バッチまたは生産拠点情報などに関する情報を含みうる。キットの情報資料の形態に制限はない。
【0089】
キットは、少なくとも一つの追加試薬、例えば診断剤または治療剤、例えば本明細書に記載する診断または治療剤、および/または転移性癌または血管新生関連障害を処置するための1以上の追加薬剤を、さらに含有することができる。
【0090】
ポリマー
さまざまな部分を使って、クニッツドメインを含むタンパク質または他のプロテアーゼ阻害剤の分子量および/または半減期を増加させることができる。一実施形態では、その部分がポリマー(例えば水溶性および/または実質的に非抗原性のポリマー、例えばホモポリマー、または非生体ポリマー)である。実質的に非抗原性のポリマーには、例えばポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドが含まれる。この部分は、循環、例えば血液、血清、リンパ、または他の組織におけるクニッツドメインの安定性および/または貯留を、例えば少なくとも1.5、2、5、10、50、75、または100倍改善しうる。複数の部分がクニッツドメインに結合される。例えば、タンパク質は少なくとも三つのポリマー部分に結合される。タンパク質の各リジンを、ポリマー部分に結合することができる。一般に、本明細書に記載するクニッツドメインは、U.S.S.N.10/931,153に記述されているように修飾することができる。US6,103,499に記載の配列を持つかそのモチーフに合致するクニッツドメインは、本明細書に記載するように修飾することができる。
【0091】
適切なポリマーは実質的に重量が異なりうる。例えば、約200ダルトン〜約40kDa、例えば1〜20kDa、4〜12kDaまたは3〜8kDaの範囲(例えば約4、5、6、または7kDa)の平均分子量を持つポリマーを使用することができる。一実施形態では、化合物に結合される個々のポリマー部分の平均分子量が、20、18、17、15、12、10、8、または7kDa未満である。最終的な分子量は、コンジュゲートの望ましい有効サイズ、ポリマーの性質(例えば線状または分岐などの構造)、および誘導体化度にも依存しうる。
【0092】
限定するわけではないが、代表的なポリマーの一覧には、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、そのコポリマーおよびそのブロックコポリマーが含まれる(ただしブロックコポリマーの水溶性は維持されるものとする)。ポリマーは親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンであることができる。他の有用なポリマーには、ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー(Pluronic);ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリメタクリレート;カルボマー;糖モノマーD−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例えばポリマンヌロン酸、またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースおよびノイラミン酸を含む分岐または非分岐多糖(ラクトース、セルロース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、デキストラン硫酸、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸性ムコ多糖の多糖サブユニット(例えばヒアルロン酸)などのホモ多糖およびヘテロ多糖を含む);糖アルコールのポリマー、例えばポリソルビトールおよびポリマンニトール;ヘパリンまたはヘパロン(heparon)などがある。一部の実施形態では、ポリマーが種々の異なるコポリマーブロックを含む。
【0093】
クニッツドメインを含むタンパク質は、様々な方法で、ポリマーと物理的に結合させることができる。典型的にはタンパク質をポリマーに複数の部位で共有結合する。例えばタンパク質を、複数の1級アミン(例えば全ての利用可能な1級アミンまたは全ての1級アミン)で、ポリマーにコンジュゲートする。他の化合物、例えば細胞毒、ラベル、またはもう一つのターゲティング剤、例えばクニッツドメインと同じ標的に結合するもう一つのリガンドまたは別の標的に結合するリガンド、例えば無関係なリガンドなどを、同じポリマーに結合することもできる。他の化合物はタンパク質に結合してもよい。
【0094】
一実施形態では、タンパク質へのコンジュゲーション前に、ポリマーが水溶性である(ただしそうである必要があるわけではない)。一般に、タンパク質へのコンジュゲーション後は、生成物は水溶性であり、例えば少なくとも0.01mg/ml、より好ましくは少なくとも約0.1mg/ml、さらに好ましくは少なくとも約1mg/mlの水溶性を示す。加えて、ポリマーは、コンジュゲートの形態で高度に免疫原性であってはならないし、コンジュゲートを静脈内注入または静脈内注射で投与しようとする場合には、そのような経路に適合しない粘性を持ってはならない。
【0095】
一実施形態では、ポリマーが反応性の基を一つだけ含有する。これは、一つのポリマーが複数のタンパク質分子にコンジュゲートすることを避けるのに役立つ。タンパク質へのコンジュゲーションには、モノ活性化アルコキシ末端ポリアルキレンオキシド(PAO)、例えばモノメトキシ末端ポリエチレングリコール(mPEG);C1−4アルキル末端ポリマー;およびビス活性化ポリエチレンオキシド(グリコール)を使用することができる。例えばU.S.5,951,974を参照されたい。
【0096】
ポリ(エチレングリコール)、PEGは、その最も一般的な形態では、ヒドロキシル基を末端とする線状または分岐ポリエーテルである。線状PEGは以下の一般構造を持つことができる:
HO−(CHCHO)−CHCH−OH
PEGは、エポキシド環への水酸化物イオンの求核攻撃によって開始されるエチレンオキシドのアニオン開環重合によって合成することができる。タンパク質修飾に特に有用なものは、一般構造:
CHO−(CHCHO)−CHCH−OH
を持つモノメトキシPEG(mPEG)である。
【0097】
さらなる説明については、例えばRobertsら(2002)Advanced Drug Delivery Reviews 54:459−476を参照されたい。一実施形態では、コンジュゲーションに用いられるポリマー単位が単分散であるか、さもなければ高度に均一である(例えば95%の分子または全ての分子が互いに7、5、4、3、2、または1kDa以内にあるような調製物中に存在する)。もう一つの実施形態では、ポリマー単位が多分散である。
【0098】
ポリマー単位間の架橋または複数のタンパク質へのコンジュゲーションを減少させる反応条件を選択し、実質的に均一な誘導体(例えばクニッツドメインタンパク質を一つだけ含む誘導体)を回収するために、ゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィーによって反応生成物を精製することが可能である。別の実施形態では、ポリマーが、複数のタンパク質(例えば複数ユニットのクニッツドメインタンパク質)をポリマーに連結する目的で、2個以上の反応性基を含有する。この場合も、ゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィーを使って、所望の誘導体を実質的に均一な形態で回収することができる。
【0099】
クニッツドメインを含むタンパク質は、一般に、複数のPEG分子に結合される。例えば、20または30kDaより大きい化合物を形成させるために、クニッツドメイン(約7kDa)を、少なくとも三つの、8kDaのPEG分子に結合させることができる。例えば少なくとも2分子、4分子、または5分子のPEGなど、他の組み合わせも可能である。PEG分子の分子量は、化合物の最終的分子量が望ましい分子量(例えば17〜35、または20〜25、または27〜33kDa)と同等か、それ以上になるように選択することができる。複数のPEG分子は、クニッツドメインの任意の領域に、好ましくは標的と相互作用する領域から少なくとも5、10、または15Åの位置に、または標的と相互作用するアミノ酸から少なくとも2、3、または4残基の位置に、結合させることができる。PEG分子は、例えばリジン残基またはリジン残基とN末端との組み合わせに、結合させることができる。
【0100】
タンパク質(例えばクニッツドメインを含むタンパク質)をポリマーに結合させるには、共有結合(例えばN末端アミノ基およびリジン残基上に見出されるイプシロンアミノ基、ならびに他のアミノ、イミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ヒドロキシルまたは他の親水性基へのコンジュゲーション)を用いることができる。ポリマーは、多官能性(通常は二官能性)架橋剤を使用せずに、タンパク質に直接的に共有結合することができる。アミノ基への共有結合は、塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド反応性基(PEGアルコキシド+ブロモアセトアルデヒドのジエチルアセチル;PEG+DMSOおよび酢酸無水物、またはPEG塩化物+4−ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシド、活性化スクシンイミジルエステル、活性化ジチオカーボネートPEG、2,4,5−トリクロロフェニルクロロホルメートまたはP−ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEG)に基づく既知の化学によって達成することができる。カルボキシル基は、カルボジイミドを使ってPEG−1級アミンをカップリングすることによって、誘導体化することができる。スルフヒドリル基は、マレイミド置換PEG(例えばWO97/10847)またはPEG−マレイミド(例えばShearwater Polymers,Inc.(アラバマ州ハンツビル)から販売されているもの)へのカップリングによって誘導体化することができる。もう一つの選択肢として、例えばPedleyら,Br.J.Cancer,70:1126−1130(1994)に記述されているように、タンパク質上の遊離アミノ基(例えばリジン残基上のイプシロンアミノ基)を2−イミノ−チオレート(トラウト試薬)でチオール化した後、それをPEGのマレイミド含有誘導体にカップリングすることもできる。
【0101】
クニッツドメインを含むタンパク質に結合させることができる官能化PEGポリマーとして、例えばShearwater Polymer,Inc.(アラバマ州ハンツビル)などから市販されているポリマーが挙げられる。そのようなPEG誘導体には、例えばアミノ−PEG、PEGアミノ酸エステル、PEG−ヒドラジド、PEG−チオール、PEG−スクシネート、カルボキシメチル化PEG、PEG−プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEGスクシンイミジルスクシネート、PEGスクシンイミジルプロピオネート、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル、PEGのスクシンイミジルカーボネートなどがある。これらのPEG誘導体をカップリングするための反応条件は、タンパク質、所望するPEG化度、および利用するPEG誘導体に応じて、さまざまでありうる。PEG誘導体の選択に関与する因子には、例えば、望ましい結合点(リジンまたはシステインR基など)、誘導体の加水分解安定性および反応性、結合の安定性、毒性および抗原性、解析への適性などがある。
【0102】
クニッツドメインを含むタンパク質とポリマーとのコンジュゲートは、クロマトグラフィー法を使って、例えばゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィー、例えばHPLCにより、未反応の出発物質から分離することができる。同じ方法で異種のコンジュゲート種が相互に精製される。未反応アミノ酸のイオン特性の相違により、異なる種(例えば一つまたは二つのPEG残基を含有するもの)の分割も可能である。例えばWO96/34015を参照されたい。
【0103】
一実施形態では、非タンパク質部分(例えば本明細書に記載のポリマー)を、クニッツドメイン上の利用可能な1級アミン(例えばN末端1級アミンおよび溶媒の接近が可能な任意の1級アミン、例えばクニッツドメイン中のリジン側鎖の接近可能な1級アミン)のそれぞれに結合させる。例えば、考えうる1級アミンの全てを非タンパク質部分の一つにコンジュゲートする。クニッツドメインは、少なくとも1個、2個、3個、または4個のリジンを持ちうる。例えばクニッツドメインは、リジン残基を1個だけ、2個だけ、3個だけ、4個だけ、または5個だけ持ちうる。一実施形態では、タンパク質がN末端1級アミンを持つ。もう一つの実施形態では、タンパク質がN末端1級アミンを含まない(例えば、非ポリマー化合物などを使って、タンパク質をそのN末端1級アミンで化学的に修飾することにより、タンパク質がその位置に1級アミンを含まないようにすることができる)。
【0104】
タンパク質中の1級アミンのうち、二つ以上に、非タンパク質部分(例えばポリマー)を結合させることができる。例えば全てのリジンまたは溶媒の接近が可能な1級アミンを持つ全てのリジンが、非タンパク質部分に結合される。好ましくは、クニッツドメインは、その結合ループの一つ(例えばBPTIのアミノ酸11〜21およびBPTIの31〜42に対応する残基付近)の中に、リジンを含まない。そのような結合ループ内のリジンは、例えばアルギニン残基で置き換えることができる。例えばタンパク質を少なくとも三分子のポリマーに結合させる。タンパク質の各リジン、またはリジンの1個、2個、3個もしくはそれ以上を、1分子のポリマーに結合させることができる。
【0105】
1級アミン(例えば特定のリジンのもの、またはN末端にあるもの)が修飾されている、またはそこに非タンパク質部分が結合されていると言った場合、別段の表示がない限り、調製物中の全ての分子上の指定した1級アミン位置が、そのように修飾されているわけではないかもしれないと解釈される。調製物は完全に均一である必要はない。一部の実施形態では均一であることが望ましいものの、それが絶対的に必要なわけではない。好ましい実施形態では、修飾されるとした1級アミンの少なくとも60、70、80、90、95、97、98、99、または100%に、非タンパク質部分が結合しているだろう。しかし、他の実施形態には、分子の大半、例えば少なくとも60、70、80、90、95、97、98、99、または100%が、二つ以上の部位でPEG化されているが、調製物中の分子上の部位(および場合によっては修飾部位の数)はさまざまであるような分子種の混合物を含有する調製物が含まれる。例えば一部の分子は修飾されたリジンA、B、およびDを持ち、他の分子は修飾されたアミノ末端ならびにリジンA、B、C、およびDを持つだろう。このような調製物は、例えば本明細書に記載する処置方法または治療方法に従って、被験体に投与することができる。
【0106】
一実施形態では、非タンパク質部分が、親水性ポリマー、例えば実質的に均一なポリマーを含む。ポリマーは分岐していても、分岐していなくてもよい。例えばポリマー部分は、20、18、15、12、10、8、7、もしくは6kDa未満、または少なくとも1.5、2、2.5、3、5、6、10kDa、例えば約5kDaの分子量(例えば化合物に付加される部分の平均分子量)を持つ。一実施形態では、化合物上のPEG部分の分子量の和が、少なくとも15、20、25、30、もしくは35kDa、および/または60、50、40、35、30、25、もしくは23kDa未満である。
【0107】
一実施形態では、ポリマーがポリアルキレンオキシドである。例えば、そのポリマーのコポリマーブロックの少なくとも20、30、50、70、80、90、または95%は、エチレングリコールである。一実施形態では、ポリマーがポリエチレングリコールである。
【0108】
一実施形態では、化合物が以下の構造を持つ:P−X−[(CR’R”)−Xα−(CH−X−R[式中、Pはタンパク質であり、R’およびR”のそれぞれは独立してHまたはC−C12アルキルである;XはO、N−R、Sであるか、存在せず(この場合、RはH、C−C12アルキルまたはアリールである)、XはO、N−R、Sであり(この場合、RはH、アルキルまたはアリールである)、XはO、N−R、Sであるか、存在せず(この場合、RはH、アルキルまたはアリールである)、各nは1〜5(例えば2)であり、aは少なくとも4であり、mは0〜5であり、RはH、C−C12アルキルまたはアリールである]。R’およびR”はHであることができる。一実施形態では、R’またはR”が独立してH,またはC1−C4,C1−C6、もしくはC1−C10アルキルである。
【0109】
一実施形態では、化合物が以下の構造を持つ:P−X−[CHCHO]−(CH−X−R[式中、Pはタンパク質であり、aは少なくとも4であり、mは0〜5であり、XはO、N−R、Sであるか、存在せず(この場合、RはH、アルキルまたはアリールである)、XはO、N−R、Sであるか、存在せず(この場合、RはH、アルキルまたはアリールである)、RはH、C−C12アルキルまたはアリールである]。例えばXはOであり、RはCHである。(mPEGの使用は好ましい。)一実施形態では、クニッツドメインタンパク質の分子量が14、8、または7kDa未満である。一実施形態では、クニッツドメインタンパク質がクニッツドメインを一つだけ含む。一般に、化合物はクニッツドメインを一つだけ含むが、一部の実施形態では、含まれるクニッツドメインが一つより多い場合もある。
【0110】
一実施形態では、クニッツドメインがDX−1000のアミノ酸配列を含むか、DX−1000のアミノ酸配列とは、アミノ酸の相違(例えば置換、挿入、または欠失)が少なくとも一つはあるが、アミノ酸の相違は6、5、4、3、または2個未満であるようなアミノ酸配列を含む。典型的には、このクニッツドメインは、ヒトに、天然には存在しないものである。クニッツドメインは、ヒトクニッツドメインとは10、7、または4個未満のアミノ酸が異なっているアミノ酸配列を含みうる。
【0111】
一実施形態では、エラスターゼに対する化合物のKが、未修飾タンパク質のKの0.5〜1.5、0.8〜1.2、0.3〜3.0、0.1〜10.0、または0.02〜50.0倍の範囲にある。例えばhNEに対するKiは、100、50、18、12、10、または9pM未満であることができる。
【0112】
一実施形態では、化合物は、ウサギまたはマウスモデルにおいて、その最も寿命の長い成分の循環半減期(「最長期循環半減期」)が、ポリマーを含まない実質的に同一の化合物よりも、少なくとも1.5、2、4、または8倍大きい。化合物は、ウサギまたはマウスモデルにおいて、非タンパク質部分を含まない実質的に同一な化合物と比較して少なくとも1.5、2,2.5、または4倍の大きさを持つ最長期循環半減期を持つことができる。化合物は、ウサギまたはマウスモデルにおいて、非タンパク質部分を含まない実質的に同一の化合物と比較して少なくとも20、30、40、または50%小さい大きさを持つα期循環半減期を持つことができる。例えば化合物は、少なくとも40、45、46、50、53、54、60、または65%の大きさを持つ最長期循環半減期を持つ。一実施形態では、化合物が、マウスまたはウサギモデルにおいて、少なくとも2、3、4、5、6、または7時間というβ期循環半減期を持つ。一実施形態では、化合物が、70kgのヒトにおいて、少なくとも6時間、12時間、24時間、2日、5日、7日、または10日という最長期循環半減期を持つ。
【0113】
血清アルブミン融合物
プラスミン阻害剤(例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質)を担体タンパク質(例えば血清アルブミン)またはその断片に融合することにより、アルブミン融合タンパク質のプラスミン阻害剤部分を安定化し、そのインビボ半減期、治療活性または貯蔵寿命を、非融合状態にあるプラスミン阻害剤のインビボ半減期、治療活性または貯蔵寿命と比較して延長し、または拡大することができる(例えばUS−2004−0171794を参照されたい)。
【0114】
本明細書にいう「アルブミン」は、アルブミンタンパク質もしくはアルブミンアミノ酸配列、またはアルブミンの機能的活性(例えば生物学的活性)を一つ以上持っているアルブミン断片もしくはアルブミン変種を集合的に指す。アルブミンの一例は、ヒトアルブミンまたはその断片である(例えばEP201239、EP322094、WO97/24445、WO95/23857を参照されたい)。
【0115】
特に、本願方法のアルブミン融合タンパク質は、ヒトアルブミンおよびヒトアルブミン断片、例えばEP322094に開示されている断片(すなわちHA(Pn)、この場合、nは369〜419である)の天然多型変種を含みうる。アルブミンは、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来しうる。非哺乳類アルブミンには、例えばニワトリおよびサケのアルブミンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、プラスミン阻害剤タンパク質とは異なる動物に由来しうる。
【0116】
本願方法のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、少なくとも一つの、アルブミンのサブドメインもしくはドメイン、またはその保存的変形を含みうる。融合物がサブドメインに基づく場合は、プラスミン阻害剤に連結するために、要すれば、隣接するリンカーの一部または全部を使用してもよい。
【0117】
アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミンを、C末端部分としてプラスミン阻害剤を含みうる。もう一つの選択肢として、アルブミン融合タンパク質は、C末端部分としてアルブミンを、N末端部分としてプラスミン阻害剤を含むこともできる。
【0118】
アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端にもC末端にも融合したプラスミン阻害剤を含みうる。一実施形態では、N末端およびC末端に融合したプラスミン阻害剤が同じプラスミン阻害剤である。もう一つの実施形態では、N末端およびC末端に融合したプラスミン阻害剤が異なるプラスミン阻害剤である。
【0119】
癌の処置
プラスミン阻害剤、例えばプラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000は、さまざまな癌、特に転移性癌もしくは転移期に進行する危険がある癌または血管新生依存性癌もしくはリンパ管新生関連癌を処置するために使用することができる。癌とは、正常な成長制御に対する応答性を失っている1以上の細胞を指し、典型的には、対応する正常細胞ほど多くの調節を受けずに増殖する。
【0120】
癌障害の例には、例えば固形腫瘍、軟組織腫瘍、および転移性病変などがあるが、これらに限定されるわけではない。固形腫瘍の例には、悪性疾患、例えばさまざまな器官系の肉腫、腺癌および癌腫、例えば肺、乳房、リンパ組織、胃腸管(例えば結腸)および尿生殖路(例えば腎細胞、尿路上皮細胞)、咽頭、前立腺、卵巣を冒すもの、ならびにほとんどの結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝癌、非小細胞肺癌、小腸癌などの悪性疾患を含む腺癌などがある。上述した癌の転移性病変も、本明細書に記載の方法を使って処置または予防することができる。一部の癌は、高レベルのウロキナーゼを発現させることができ、それがプラスミンの過剰な生成につながりうる。高レベルのウロキナーゼを発現させるそのような癌も、本明細書に記載の方法を使って処置または予防することができる。
【0121】
例えば、プラスミン阻害剤を使って、さまざまな器官系の悪性疾患、例えば肺、乳房、リンパ組織、胃腸管(例えば結腸)および尿生殖路、前立腺、卵巣、咽頭を冒すもの、ならびにほとんどの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌および/または精巣癌、非小細胞肺癌、小腸癌および食道癌などの悪性疾患を含む腺癌を処置することができる。処置することができる代表的固形腫瘍には以下に挙げるものがある:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢包腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫。
【0122】
線維肉腫は、紡錘状線維芽細胞様細胞の束から構成される軟組織腫瘍である。骨の線維肉腫は、悪性紡錘細胞ストロマから構成されることが多く、それが、多くの場合、豊富なコラーゲンを産生する。
【0123】
癌腫は、呼吸系癌、胃腸系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、および黒色腫を含む上皮組織または内分泌組織の悪性疾患である。代表的な癌腫には、子宮頸、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸および卵巣の組織から形成されるものがある。この用語には、例えば癌腫性組織および肉腫性組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含まれる。腺癌は、腺組織に由来する癌腫、または腫瘍細胞が認識しうる腺構造を形成する癌腫である。
【0124】
一実施形態では、処置が、(i)プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000と、(ii)第2の治療剤、例えば抗癌剤とを投与することを含む。代表的抗癌剤には、例えば抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害する能力を持つ薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、放射線、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体(裸の抗体、イムノトキシンおよび放射性コンジュゲートを含む)などがある。特定クラスの抗癌剤の例を以下に詳述する:抗チューブリン/抗微小管剤、例えばパクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害剤、例えばトポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、メルバロン、塩酸ピロキサントロン;代謝拮抗物質、例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/Ara−C、トリメトレキセート、ゲムシタビン、アシビシン、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホンアセチル−L−アスパラギン酸(PALA)、ペントスタチン、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ara−A、クラドリビン、5−フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸;アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、ダカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタード、ピポブロマン、4−イポメアノール;他の作用機序によって作用する薬剤、例えばジヒドロレンペロン(dihydrolenperone)、スピロムスチン、およびデシペプチド;生物学的応答調整物質、例えば抗腫瘍応答を増進するためのもの、例えばインターフェロン;アポトーシス剤、例えばアクチノマイシンD;および抗ホルモン剤、例えばタモキシフェンなどの抗エストロゲン、または例えば4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリドなどの抗アンドロゲン。
【0125】
一実施形態では、処置が、(i)プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000と、(ii)第2の治療剤、例えば血漿カリクレイン阻害剤、例えばDX−88またはDX−88と少なくとも80、85、90、95、96、97、98%、または100%同一なタンパク質とを投与することを含む。DX−88のアミノ酸配列はUS−2005−0089515に記載されている。
【0126】
他の態様として、本開示は、プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000を、アジュバント療法として、例えば被験体に投与することを特徴とする。アジュバント療法は、被験体が腫瘍の全部または一部を摘除するための手術を受けた後(例えば前立腺癌または乳癌または膠芽腫または結腸直腸癌または肺癌を処置するための手術後)に被験体に投与される術後療法であることができる。一実施形態では、クニッツドメインを含むタンパク質が、手術の6、12、24、48、または100時間以内に投与される。本タンパク質は、手術後だけでなく、手術前、手術中にも投与することができる。
【0127】
前立腺癌の処置
前立腺癌は、前立腺に由来する癌性細胞を特徴とする。初期では、癌性細胞は前立腺に限定されるが、転移が起こると、細胞は、近傍のリンパ節、精嚢、および身体の遠隔部位に、移動することができる。
【0128】
前立腺癌を検出するための診察および検査には、デジタル直腸内触診、経直腸的超音波、膀胱鏡検査、血液または感染を調べるための尿検査診断、PSAレベルを測定するための血液検査、および生検を含めることができる。
【0129】
前立腺癌は四つの病期のうちの一つに割り当てることができる。病期Iは、直腸内診では触れることができない癌である。これは、別の理由(通常はBPH)で手術が行われた時に、偶然に見出される。癌は前立腺にしか見出されない。病期IIは、より進行した癌であるが、前立腺の外には拡がっていない。病期IIIは、前立腺の外層を越えて拡がっている癌である。これは、精嚢には見出されうるが、リンパ節までは拡がっていない。病期IVは以下の特徴の一つ以上を特徴とする:膀胱、直腸、または他の近傍構造(精嚢を除く)に既に浸潤している癌;既にリンパ節に拡がっている癌;および既に身体の他の部分、例えば骨に拡がっている癌。プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000は、これらの病期の任意の段階(特に病期II、IIIまたはIV)にある前立腺癌を処置するために使用することができる。
【0130】
前立腺癌は、病理学的試料のグリーソンスコアリングを使って病期分類することもできる。スコアは2〜10の範囲にあり、腫瘍が拡がる可能性がどれくらいあるかを示す。低いグリーソンスコアは、癌細胞が正常前立腺細胞に似ていて、拡がる可能性が低いことを意味するのに対して、高いグリーソンスコアは、癌細胞が正常とは著しく異なり、拡がる可能性が高いことを意味する。プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000は、3以上(例えば少なくとも5、6、7、または8)のグリーソンスコアを特徴とする前立腺癌を処置するために使用することができる。
【0131】
前立腺癌の処置は、少なくとも二つの治療法の併用、例えばプラスミン阻害剤(例えば本明細書に記載するもの)を第2の治療法と組み合わせて投与することを含みうる。第2の治療法の例には、手術、放射線療法、およびホルモン療法などがある。代表的な外科的治療には、例えば恥骨後式根治的前立腺摘除術、会陰式根治的前立腺摘除術、および経尿道的前立腺切除(TURP)などがある。放射線療法は体内法または体外法であることができる。体内放射線療法(インプラント照射または近接照射療法)は、癌性組織の中または近傍への放射線源(例えばシードまたはニードル)の植込みを含むことができる。
【0132】
一実施形態では、治療が、(i)プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000と、(ii)ホルモン療法剤とを投与することを含む。代表的なホルモン療法には、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)アゴニスト(例えばロイプロリドおよびゴセレリン)、抗アンドロゲン(例えばフルタミド、ビカルタミド、およびニルタミド)、ならびに副腎がテストステロンを産生しないようにすることができる薬剤(例えばケトコナゾールおよびアミノグルテチミド)などがある。
【0133】
他の態様として、本開示は、プラスミン阻害剤(例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質)を、アジュバント療法として、例えば被験体に投与することを特徴とする。アジュバント療法は、被験体が腫瘍の全部または一部を摘除するための手術を受けた後(例えば前立腺癌または乳癌または膠芽腫または結腸直腸癌または肺癌を処置するための手術後)に被験体に投与される術後療法であることができる。一実施形態では、プラスミン阻害剤が、手術の6、12、24、48、または100時間以内に投与される。プラスミン阻害剤は、手術後だけでなく、手術前、手術中にも投与することができる。
【0134】
乳癌の処置
乳癌は、米国で、そして世界中で、重大な健康問題である。これは、正常な乳房上皮が浸潤癌へと病理学的トランスフォーメーションを起こした結果として発生する。
【0135】
乳癌は病期0〜IVに分類される。病期0は非浸潤癌または上皮内癌と呼ばれることもあり、小葉癌(LCIS)および非浸潤性乳管癌(DCIS)をどちらも包含する。病期Iおよび病期IIは初期であって、癌が葉または乳管を越えて拡がっていて、近傍組織に浸潤している。病期IIIは局所進行癌と呼ばれる。ここでは、癌が腋窩リンパ節または乳房に近い他のリンパ節まで拡がっている。病期IVは乳房および腋窩リンパ節を越えて身体の他の部分に拡がった転移性癌である。乳癌は、例えばリンパ節、骨、肺、脳、肝臓、髄膜、肋膜、皮膚、眼、および膀胱などに転移することができる。再発癌とは、初期処置にもかかわらず、疾患が再発したことを意味する。主な乳癌タイプは、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、上皮内小葉癌、浸潤性小葉癌、髄様癌、および乳房パジェット病である。
【0136】
プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質は、上述した病期および/または上述した乳癌タイプのうち、任意の乳癌を処置するために、使用することができる。一実施形態では、乳癌の処置が、少なくとも二つの治療法の併用、例えばプラスミン阻害剤(例えば本明細書に記載するもの)を第2の治療法と組み合わせて投与することを含みうる。第2の治療法の例には、手術、放射線療法、およびホルモン療法などがある。
【0137】
他の態様として、本開示は、プラスミン阻害剤(例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質)を、アジュバント療法として、例えば被験体に投与することを特徴とする。アジュバント療法は、被験体が腫瘍の全部または一部を摘除するための手術を受けた後(例えば乳癌、または前立腺癌、または膠芽腫、または結腸直腸癌、または肺癌を処置するための手術後)に被験体に投与される術後療法であることができる。一実施形態では、プラスミン阻害剤、例えばプラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質が、手術の6、12、24、48、または100時間以内に投与される。プラスミン阻害剤は、手術後だけでなく、手術前、手術中にも投与することができる。
【0138】
血管新生関連障害の処置
プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質は、インビボの細胞(例えば内皮細胞)を阻害する(例えば、細胞の少なくとも一つの活性を阻害し、細胞の増殖、移動、成長または生存能を低下させる)ために使用することができる。この方法には、プラスミン阻害剤を単独で、または別の治療剤と組み合わせて、そのような処置を必要とする被験体に投与することが含まれる。
【0139】
プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質は、血管新生関連障害、特に血管新生依存性の癌および腫瘍を処置または予防するために使用することができる。血管新生関連障害には、例えば固形腫瘍;腫瘍転移;良性腫瘍(例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;慢性関節リウマチ);乾癬;眼内血管新生性疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス;オスラー・ウェーバー症候群;心筋血管新生;プラーク新血管形成;毛細血管拡張症;血友病関節症;線維性血管腫;および創傷肉芽形成などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0140】
「血管新生依存性の癌および腫瘍」とは、その成長(体積および/または質量の拡大)に、それらに血液を供給する血管の数および密度の増加を必要とするような癌および腫瘍である。プラスミン阻害剤は、そのような癌および腫瘍の退縮を引き起こすための処置に使用することができる。「退縮」とは、腫瘍の質量および大きさの減少、例えば少なくとも2、5、10、または25%の減少を指す。
【0141】
プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質は、アジュバント療法として、例えば被験体に投与することができる。アジュバント療法は、被験体が腫瘍の全部または一部を摘除するための手術を受けた後(例えば血管新生依存性癌を処置するための手術後)に被験体に投与される術後療法であることができる。一実施形態では、プラスミン阻害剤が、手術の6、12、24、48、または100時間以内に投与される。プラスミン阻害剤は、手術後だけでなく、手術前、手術中にも投与することができる。
【0142】
リンパ管新生関連障害の処置
VEGF−CおよびVEGF−Dは、VEGF受容体VEGFR−2およびVEGFR−3を活性化することにより、組織および腫瘍におけるリンパ管新生および血管新生を刺激する。これらの成長因子は、NH2−およびCOOH−末端プロペプチドならびに受容体結合部位を含有する中央のVEGFホモロジードメインからなる完全長不活性型として分泌される。タンパク質分解的切断により、プロペプチドが除去されて、完全長型よりはるかに強い親和力で受容体を結合するVEGFホモロジードメインの二量体からなる成熟型が生成する。プラスミンは、ヒトVEGF−DのVEGFホモロジードメインから両プロペプチドを切断することにより、完全長物質と比較して著しく強化されたVEGFR−2およびVEGFR−3の結合および架橋を示す成熟型を生成させる。プラスミンはVEGF−Cも活性化する。リンパ管新生性成長因子はリンパ管を介した癌の転移拡大を促進するので、これらの分子のタンパク質分解による活性化は、抗転移剤の潜在的標的になる。VEGF−CとVEGF−Dが共に高度に発現され、それがリンパ節転移に関係している乳癌、卵巣癌および結腸直腸癌では特に、プラスミン阻害剤を抗転移剤として処置に使用することができる(Nakamuraら,2003,Mod.Pathol.16:309−314;Yokoyamaら,2003,Br.J.Cancer.88:237−244;Whiteら,2002,Cancer Res.62:1669−1675;Nakamuraら,2003.Clin.Cancer Res.9:716−721)。
【0143】
プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載する他のタンパク質は、リンパ管新生関連障害、例えば癌、例えば転移性乳癌、卵巣癌または結腸直腸癌に使用することができる。一実施形態では、リンパ管新生関連障害の処置が、少なくとも二つの治療法の併用、例えばプラスミン阻害剤(例えば本明細書に記載するもの)を第2の治療法と組み合わせて投与することを含みうる。第2の治療法の例には、手術、放射線療法、およびホルモン療法などがある。
【0144】
他の態様として、本開示は、被験体におけるVEGF−Cおよび/またはVEGF−D活性を低下させる方法を特徴とする。一実施形態では、本方法は、ヒトまたは動物被験体に、プラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質(例えばDX−1000)のプラスミン阻害量を投与することを含む。
【0145】
他の態様として、本開示は、プラスミン阻害剤、例えばクニッツドメインを含むタンパク質、例えばDX−1000または本明細書に記載の他のタンパク質を、アジュバント療法として、例えば被験体に投与することを特徴とする。アジュバント療法は、被験体が腫瘍の全部または一部を摘除するための手術を受けた後(例えば乳癌、卵巣癌、または結腸直腸癌を処置するための手術後)に被験体に投与される術後療法であることができる。一実施形態では、プラスミン阻害剤、例えばプラスミンを阻害するクニッツドメインを含むタンパク質が、手術の6、12、24、48、または100時間以内に投与される。プラスミン阻害剤は、手術後だけでなく、手術前、手術中にも投与することができる。
【実施例】
【0146】
(実施例1)
本発明者らは、DX−1000が、(i)プラスミンによるMMPの活性化を阻害し、(ii)腫瘍細胞のインビトロ浸潤性を減少させ、(iii)インビトロ血管新生を減少させ、(iv)移動を阻害せず、(v)インビトロで止血に有意な影響を及ぼさないことを観察した。これらの性質は、癌、特に転移性癌の処置および予防に、DX−1000および類似のプラスミン阻害剤を使用できるということを示している。
【0147】
方法
腫瘍細胞株の細胞培養:HT−1080(線維肉腫)細胞株およびLNCaP(アンドロゲン依存性前立腺癌)細胞株は、10%FCS、グルタミン(292mg/ml)、重炭酸ナトリウム(2.1g/l)、アスコルビン酸(50g/ml)およびペニシリン−ストレプトマイシン(P/S)(100U/ml)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、80%コンフルエントまで成長させた。LNCaP細胞はジヒドロテストステロン(DHT,10nM)で刺激した。非付着性HL−60(急性骨髄性白血病)細胞株は、20%FCS、グルタミン4mM、重炭酸ナトリウム(1.5g/l)およびP/S(100U/ml)を添加したRPMI培地で成長させた。培養物を1e5〜1e6/mlの細胞濃度に保った。
【0148】
ゼラチンザイモグラフィー:HL−60細胞を無血清培地(Ultraculture培地)で培養した。さまざまな条件を検討した:1μMのDX−1000有りおよび無し;プロ−MMP−9活性化因子(プラスミン+プロ−MMP−3)有りまたは無し。細胞を37℃/5%COで48時間培養した。次に、条件培地(CM)の一部を収集し、遠心分離によって清澄化し、還元剤を含まない電気泳動試料緩衝液と混合し、ゼラチン(1mg/ml)を含有する10%アクリルアミドゲルに適用した。活性組換えゼラチナーゼを標準とした。試料を20mAで分割し、2%トリトンX−100で1時間洗浄し、50mMトリス−HCl、pH7.4、0.2M NaCl、5mM CaClを含有する活性化緩衝液中、37℃で16時間インキュベートした。クーマシーブリリアントブルーR−250による染色後に、ゼラチン分解活性が、青色の背景に対する透明なバンドとして検出された。
【0149】
化学浸潤(chemo−invasion):HT−1080細胞およびLNCaP細胞を10/ウェル(24ウェルクラスタープレート)の密度で播種し、終夜インキュベートした。次にそれらをある用量範囲のDX−1000の存在下で24時間インキュベートした。周知のプラスミン阻害剤、アプロチニン(TRASYLOL(登録商標))およびTIMP−4を対照として使用した。化学浸潤は、低成長因子型(Growth Factor Reduced)マトリゲル(登録商標)(GRF−マトリゲル(登録商標))被覆フィルターを持つトランスウェル細胞培養チャンバーインサート(Becton Dickinson)を使って評価した。トリプシン処理後に、細胞を浸潤チャンバーの上側に播種した(1e4/インサート)。HT−1080細胞およびLNCaP細胞用の化学誘引物質として、5%FCSおよび1%BSAを添加したRPMI培地およびNIH3T3 CMをそれぞれ使用した。37℃で24時間インキュベートした後、フィルターをチャンバーから取り出し、染色し、浸潤細胞の%を評価した。各条件を2重に行った。
【0150】
管形成アッセイ:HUVECを、ゼラチン被覆培養皿上、RPMI培地で培養した。細胞(継代数2)を、その培養培地(10%FCSを添加したEGM−2完全培地)中のI型コラーゲン(1.5m/ml,SERVA)上に、8e4/ウェル(96ウェルプレート)の密度で播種し、1時間拡がらせた。次に培養培地を捨て、細胞を、コラーゲンI型(1.5mg/ml,新しく調製)の新しい層で覆った。ゲルの重合後に、DX−1000(1nM〜10μM)またはアプロチニンの存在下または不在下で、培養培地を各ウェルに加え、37℃/5%COで16〜18時間インキュベートした。マウス内皮細胞(EC)(LEII細胞株)を、ある用量範囲のDX−1000の存在下で、その培養培地(10%FCSを添加したIMDM)中のGFR−マトリゲル(BD)上に、2e4/ウェル(96ウェルプレート)の密度で播種し、37%/5%COで5時間インキュベートした。倒立顕微鏡写真機(Analis)で内皮管形成を評価した。各ウェルの中心部の低倍率(40×)の顕微鏡写真を、イメージング−キャプチャソフトウェア(ニコン)の助けを借りて、ニコンカメラで撮影した。MetaVue(商標)ソフトウェア(Universal Imaging Corporation)を使って、顕微鏡写真における管形成を、定量的に解析した。完全な内皮細胞成長培地における無処理HUVECによる管形成を対照として使用した。IC50値をSIGMAPLOT(商標)で決定した。
【0151】
本発明者らの観察によれば、HUVECによる管形成を阻害するIC50値は1.4±0.3nMだった。
【0152】
擦過アッセイ:HT−1080細胞を、完全培地に、2e6/ウェル(6ウェルプレート)の密度で播種した。コンフルエント細胞をDX−1000またはアプロチニン(1〜10μM)の存在下で5時間インキュベートした。次に細胞層をプラスチックチップで擦過した。無処理細胞が擦過領域を完全に覆うのに必要な時間に相当する6時間にわたって、1時間ごとに写真を撮影した。
【0153】
結果
本発明者らは、DX−1000が腫瘍細胞のインビトロ浸潤性を低下させることを観察した。例えば図3〜7を参照されたい。HT−1080細胞(線維肉腫)およびLNCaP(アンドロゲン依存性前立腺癌)を使って浸潤を評価した。DX−1000は、インビトロでの浸潤の阻害に、ナノモル濃度およびサブナノモル濃度で有効だった。DX−1000はこれらのアッセイではアプロチニンより強力な阻害剤でもあった。
【0154】
本発明者らは、DX−1000がMMPの発現および活性化をダウンレギュレートすることも観察した。本発明者らは、ゼラチンザイモグラフィーを使って、DX−1000が、HL−60細胞において、プラスミンによるプロ−MMP−9の活性化を阻害することを観察した(64%阻害)。同様の結果は4−PEG DX−1000でも観察された(92%阻害)。
【0155】
ゼラチンザイモグラフィーの他に、本発明者らは、BIOTRAK(登録商標)アッセイキットを使ってプラスミン阻害剤を評価した。HL60を4×10細胞/ウェル(24ウェルプレート)の密度で無血清培地(UltraCulture培地)に播種した。翌日、さまざまな条件を評価した:プロ−MMP9の活性化因子を含む試料および含まない試料(プラスミンおよびプロ−MMP−3)ならびにDX−1000および4−PEG−DX−1000(1μM)を含む試料および含まない試料。2日間の培養後に、条件培地を収集し、BIOTRAK(登録商標)アッセイキットを使ってMMP−9の活性を評価した。アッセイ時間は標準条件下で約1時間だった。DX−1000および4−PEG DX−1000は、1μM濃度で、プラスミン活性化MMP−9活性の約68〜70%の減少をもたらした。
【0156】
二つの異なるアッセイ、すなわち擦過アッセイおよびマトリゲルを用いないボイデンチャンバーアッセイを使って、細胞移動に対するDX−1000の効果を評価した。DX−1000は、インビトロでHT−1080細胞の二次元移動を阻害しない(図2)。同様の結果がアプロチニンでも観察された。
【0157】
DX−1000を、インビトロ内皮管形成アッセイ(「方法」に記載の「管形成アッセイ」)におけるその活性についても調べた。本発明者らは、これがインビトロで管形成の強力な阻害剤であり、管形成の阻害に関して少なくともアプロチニンと同程度に効果的であることを観察した。4−PEG DX−1000も管形成を阻害した。観察されたIC50値は以下のとおりだった:
【0158】
【数9】

本発明者らは、インビボ研究に進む前に、薬物に対するヒト腫瘍の感受性を測定するためのアッセイでも、DX−1000を評価した。SW−480細胞を軟寒天中、インビトロで成長させることで、細胞運動を減少させ、個々の細胞を、単一コロニーとして同定される細胞クローンに発展させる。3000個のSW480細胞を、6ウェルプレートの各ウェルに播種した。各処理を3重に行った。定量のために、METAVIEW(登録商標)ソフトウェアを使って、各ウェルから5枚の4倍画像を撮影した。DX−1000および4−PEG DX−1000はどちらも、0.1〜50μMの範囲の濃度で、SW480細胞によるコロニー形成を阻害しなかった(これに対して、シスプラチンは33μMで、コロニー形成を阻害した)。
【0159】
DX−1000および4−PEG DX−1000は、HL−60細胞およびSW−480細胞におけるアポトーシスを誘導しない。カスパーゼ3/7基質を使ってカスパーゼ3/7活性を検出するためのアッセイを用いて、アポトーシスを評価した。FACSアッセイでもアポトーシスは検出されなかった。
【0160】
本発明者らは、包括的凝固スクリーニング検査でも、DX−1000に関して、臨床的に有意な効果を検出しなかった。低濃度のDX−1000は、血塊溶解を阻害することなく使用することができる。血塊溶解の阻害は700nMを上回るDX−1000濃度で観察された。
【0161】
止血評価の包括的方法であるトロンボエラストグラフィ(TEG)では、正常上限値を持つ二人の被験者で、280〜560nMのDX−1000による線維素溶解の阻害を示す証拠が得られた。tPA:280〜560nM DX−1000で線維素溶解の減少。
【0162】
DX−1000は、活性化部分トロンボプラスチン時間(ATPP)に対して、さらに高い用量(1.4〜5.6μM)で、弱い用量依存的作用を示した。凝固時間はまだ正常範囲内に留まっていた。プロトロンビン時間(PT)、Claussフィブリノゲンアッセイに対するDX−1000の効果は、5.6μMを上回る濃度で、観察されなかった。
【0163】
(実施例2)
以下の薬物動態研究は、正常マウスおよび正常ウサギにおけるDX−1000および4PEG−DX−1000の血漿クリアランス、安定性および体内分布を示す。
【0164】
方法:
ラベリング:500〜700mgのタンパク質およびIodogen(Pierce)法を使用した(約1.7mCi)。
【0165】
精製:D−saltポリアクリルアミドカラムを使用し、画分を集めた。総回収率は約90%だった。高収率画分を注射用にプールした。
【0166】
マウス:尾静脈を通して5mg/匹を注射した。1時点/匹;4匹/時点。以下の時点を使用した:PEGなし、0、7、15、30、および90分;PEG、0、7、15、30、および90分、4、8、16、および24時間。総血漿カウントを解析し、Superose12でのHPLCを使用し(安定性)、体内分布を解析した。
【0167】
ウサギ:左耳静脈を通して80mg/匹を注射した。以下の時点で右耳から採血した:PEGなし、0、7、15、30、90分、4、8、16、24、48、72、および96時間;PEG、0、7、15、30、90分、4、8、16、24、48、72、96、120、144、168、および192時間。以下の解析を行った:48、72、96、120、144、168、および192時間の時点で、総血漿カウントおよびSuperose12でのHPLC(安定性)。
【0168】
結果
ヨード化されたDX−1000および4PEG−DX1000を使ったマウスにおけるインビボ薬物動態研究は、DX−1000とそのPEG化誘導体の間に見られる半減期の有意な増加を示す(DX−1000:0.45時間;4PEG−DX1000:13時間)。図8は正常マウスにおける体内分布研究の結果を示す。
【0169】
ヨード化されたDX−1000および4PEG−DX1000を使ったウサギにおけるインビボ薬物動態研究は、DX−1000とそのPEG化誘導体の間に見られる半減期の有意な増加を示す(DX−1000:約1時間;4PEG−DX1000:59時間)。アロメトリーによる外挿から、ヒトでは9日間という安定性を予想すべきである。
【0170】
(実施例3)
以下のインビトロ実験を使って、タンパク質を、腫瘍浸潤を調整するその能力について評価することができる。評価することができるタンパク質の例には、プラスミン阻害剤、例えばDX−1000、PEG化DX−1000、およびアルブミンまたはその断片に融合したDX−1000がある。
【0171】
DX−1000は、MDA−MB−231(ヒト乳癌細胞)およびPC−3(ヒト前立腺癌細胞)腫瘍細胞浸潤アッセイで試験することができる。これらのアッセイは、マトリゲル浸潤アッセイの確立されたプロトコルに従って行うことができる。腫瘍細胞浸潤能力を変化させるDX−1000の能力を評価するために、賦形剤対照、アプロチニン、およびDX−1000の希釈液3種類を3重に試験することができる。これらの研究は3回繰り返すことができる。
【0172】
3種類のDX−1000濃度を、MDA−MB−231およびPC−3腫瘍細胞浸潤および移動アッセイで試験することもできる。賦形剤対照およびDX−1000を3重に試験することができる。これらの実験は3回繰り返すことができる。
【0173】
(実施例4)
以下のインビボ実験を使って、タンパク質を、腫瘍の成長および浸潤を調整するその能力について評価することができる。評価することができるタンパク質の例には、プラスミン阻害剤、例えばDX−1000、PEG化DX−1000、およびアルブミンまたはその断片に融合したDX−1000がある。
【0174】
緑色蛍光タンパク質をトランスフェクトしたヒト乳癌細胞MDA−MB−231(MDA−MB−231−GFP)を、雌BALB.c nu/nuマウスの乳房脂肪体に接種することができる。動物を腫瘍成長について監視することができる。腫瘍細胞接種の4〜5週後に、3〜50mmの腫瘍を持つ動物を選択し、無作為化して4群に分割することができる。動物を賦形剤のみまたは2種類の用量のDX−1000で処置することができる。適当な陽性対照(DOX、タキソテール)を研究の一部に含めることができる。投薬量、投与経路および頻度は、例えば動物モデルおよびインビトロ研究から得られる指針に従って決定することができる。
【0175】
ヒト前立腺癌PC−3−GFP細胞を、雌BALB.c nu/nuマウスの頸骨または左心室に接種することができる。週1回の放射線(Faxitron)解析により、動物を腫瘍成長について監視することができる。動物は賦形剤のみまたは2種類の用量のDX−1000で処置することができる。適当な陽性対照(DOX、タキソテール)を研究の一部に含めることができる。
【0176】
組織解析:
1:上述した研究の全てが終了した時点で、原発腫瘍およびさまざまな器官を、少なくとも6匹/群から、顕微鏡的腫瘍転移を検出および定量するために摘出することができる。
【0177】
2:PC−3−GFP研究の全動物を定期的に放射線解析に付すことができる。
【0178】
3:これらの研究の終了時に、動物を屠殺することができ、代表的長骨がマイクロCT解析によって解析されるだろう。
【0179】
4:代表的(各群6個)原発腫瘍および長骨を摘出し、組織学的解析および骨組織形態計測的解析に付して、腫瘍体積対組織体積比を決定することができる。
【0180】
5:原発腫瘍および長骨の免疫組織学的解析を行って、DX−1000による処理後の腫瘍進行に関与するさまざまな遺伝子の発現(uPA、プラスミノゲン、CD31、Ki67)の変化を評価することができる。
【0181】
以下の請求項には他の実施形態も包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−184453(P2011−184453A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−108759(P2011−108759)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2007−543396(P2007−543396)の分割
【原出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(506065987)ダイアックス コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】