説明

プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置

【課題】プロセス条件を変更することなく、経時変化に伴うレジストのエッチング速度の低下を抑制することができるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】処理ガスを供給するとともに、保持部16及び電極板36の少なくとも一方に高周波電力を供給することによって発生させたプラズマにより基板をエッチングするプラズマエッチング方法において、処理ガスが流れる流路45内の圧力を計測して計測値を取得する取得ステップと、取得した計測値が、予め設定された基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定する判定ステップと、計測値が所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、電極板36を支持する電極支持体38から電極板36までの間隔と流路45内の圧力との関係に基づいて、間隔の設定値を決定する決定ステップと、間隔を、決定された設定値に調整する調整ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマによりエッチングを行うプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、例えば半導体ウェハ等の基板に形成された所定の層に所定のパターンを形成するために、例えばレジスト層をマスクとしてプラズマによりエッチングするプラズマエッチングが多用されている。
【0003】
このようなプラズマエッチングを行うためのプラズマエッチング装置として、種々のものが用いられているが、その中でも容量結合型平行平板プラズマエッチング装置が主流である。
【0004】
容量結合型平行平板プラズマエッチング装置は、チャンバ内に設けられた、上部電極及び下部電極よりなる一対の平行平板電極を有する。そして、一方の電極例えば下部電極に基板を保持し、処理ガスをチャンバ内に導入するとともに、少なくとも一方の電極に高周波電力を供給して両電極間に高周波電界を印加し、印加した高周波電界により処理ガスをプラズマ化する。そして、プラズマ化した処理ガスにより、基板に形成された所定の層をエッチングする。
【0005】
このような容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として、上部電極の温度を設定温度に制御するものがある。例えば、上部電極の温度を所定の設定温度に調整するために必要な熱媒体の目標温度を算出し、基板をエッチングする際に、目標温度に基づいて温調した熱媒体を、上部電極の内部に形成された循環路を循環させる。このような方法によって、上部電極を設定温度に保持する制御を行うものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−305856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記したようなプラズマエッチング装置により基板に連続してプラズマエッチングを行う場合、経時変化に伴ってレジスト層のエッチング速度が低下するという問題がある。この経時変化に伴うレジスト層のエッチング速度の低下は、上部電極を新品部材に交換することにより回復するため、上部電極の経時変化に伴うものと考えられる。
【0008】
近時では、半導体デバイスの微細化に伴って、半導体デバイスの製造プロセスにおける各種のプロセス条件の変動が許容される範囲は小さくなる。従って、レジスト層のエッチング速度の低下が許容される範囲も小さくなる。そうすると、経時変化によって不良となった上部電極を新品部材へ交換する頻度が多くなり、上部電極の使用可能時間が短くなる。また、上部電極を新品部材へ交換する際には、プロセス条件を再調整しなくてはならず、連続して安定に装置を稼働することが難しくなる。
【0009】
上部電極の温度が径時変化する場合には、例えば特許文献1に示す上部電極の設定温度のような各種のプロセス条件を変更することでエッチング速度の経時変化を抑制すればよいとも考えられる。しかし、上部電極の設定温度等のプロセス条件を変更すると、複数の基板を連続してプラズマエッチングする際に、例えば、最初の基板の処理と最後の基板の処理との間でレジスト層のエッチング速度が所望の値から変動するおそれがある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、プロセス条件を変更することなく、経時変化に伴うレジストのエッチング速度の低下を抑制することができるプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、処理容器内に処理ガスを供給するとともに、前記処理容器内に設けられた、基板を保持する保持部、及び、前記保持部と対向するように設けられた電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給することによって、プラズマを発生させ、発生したプラズマにより前記保持部に保持されている基板をエッチングするプラズマエッチング方法において、前記処理ガスが流れる流路内の圧力を計測して計測値を取得する取得ステップと、取得した前記計測値が、予め設定された基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定する判定ステップと、前記計測値が前記所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、前記電極板を支持する電極支持体から前記電極板までの間隔と前記流路内の圧力との関係に基づいて、前記間隔の設定値を決定する決定ステップと、前記間隔を、決定された前記設定値に調整する調整ステップとを有する、プラズマエッチング方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一実施例によれば、基板をプラズマによりエッチングするプラズマエッチング装置において、処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する供給部と、前記処理容器内に設けられた、基板を保持する保持部と、前記保持部と対向するように設けられた電極板と、前記保持部及び前記電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給する高周波電源と、前記電極板を支持する電極支持体と、処理ガスが流れる流路内の圧力を計測する計測部と、前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を他方に対して移動させることによって、前記電極支持体から前記電極板までの間隔を調整する間隔調整機構と、前記供給部、前記高周波電源、前記計測部及び前記間隔調整機構の動作を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記供給部により処理ガスを供給するとともに、前記高周波電源により高周波電力を供給することによって、プラズマを発生させ、発生したプラズマにより前記保持部に保持されている基板をエッチングするように制御するものであるとともに、前記計測部により、前記流路内の圧力を計測して計測値を取得し、取得した前記計測値が、予め設定された基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定し、前記計測値が前記所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、前記間隔と前記流路内の圧力との関係に基づいて、前記間隔の設定値を決定し、前記間隔調整機構により、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するように制御するものである、プラズマエッチング装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プロセス条件を変更することなく、経時変化に伴うレジストのエッチング速度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係るプラズマエッチング方法に好適なプラズマエッチング装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】電極支持体と電極板の近傍を拡大して示す断面図である。
【図3】電極支持体と電極板との間にシールドスパイラルが挟まれている状態を示す一部断面を含む斜視図である。
【図4】電極支持体と電極板との間にシールドスパイラルが挟まれている状態を示す断面図である。
【図5】間隔調整機構として別の例を用いた場合における、電極支持体と電極板の近傍を拡大して示す断面図である。
【図6】複数のトルク制御部が連動するように設けられている例の構成を示す断面図である。
【図7】複数のトルク制御部が連動するように設けられている例の構成を示す上面図である。
【図8】実施の形態に係るプラズマエッチング方法における各工程の手順を示すフローチャートである。
【図9】トルクと間隔との関係を模式的に示すグラフである。
【図10】間隔と圧力との関係を模式的に示すグラフである。
【図11】電極板と電極支持体とが対向している状態を模式的に示す図である。
【図12】比較例においてレジスト層のエッチング速度の経時変化を実際に計測したデータの一例である。
【図13】比較例における圧力の経時変化を実際に計測したデータの一例である。
【図14】比較例における電極板の温度の経時変化を実際に計測したデータの一例である。
【図15】使用時間の増加に伴って電極板のガス通流孔の形状の変化の様子を模式的に示す断面図(その1)である。
【図16】使用時間の増加に伴って電極板のガス通流孔の形状の変化の様子を模式的に示す断面図(その2)である。
【図17】比較例においてシリコン層をエッチングして形成される穴部の形状を模式的に示す断面図である。
【図18】比較例におけるレジスト層のエッチング速度の経時変化を模式的に示すグラフである。
【図19】実施の形態においてシリコン層をエッチングして形成される穴部の形状を模式的に示す断面図である。
【図20】実施の形態におけるレジスト層のエッチング速度の経時変化を模式的に示すグラフである。
【図21】複数の基板を連続してプラズマエッチングする際に、電極板の温度の経時変化を実際に計測したデータの一例である。
【図22】トルクを10kgf・cmとした場合における、レジスト層のエッチング速度のウェハ面内分布を測定した結果である。
【図23】トルクを8kgf・cmとした場合における、レジスト層のエッチング速度のウェハ面内分布を測定した結果である。
【図24】トルクを5kgf・cmとした場合における、レジスト層のエッチング速度のウェハ面内分布を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
始めに、本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法に好適なプラズマエッチング装置の構成を示す概略断面図である。
【0018】
プラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0019】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成するとともに、その上に被処理基板である半導体ウェハWが載置される。
【0020】
サセプタ16の上面には、半導体ウェハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウェハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0021】
なお、サセプタ16及び静電チャック18は、本発明における保持部に相当する。
【0022】
静電チャック18(半導体ウェハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0023】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室28には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a、30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ上の半導体ウェハWの処理温度を制御することができる。
【0024】
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウェハWの裏面との間に供給される。
【0025】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部電極34と下部電極であるサセプタ16との間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウェハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
【0026】
上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されている。上部電極34は、電極板36と、電極支持体38と間隔調整機構90とを有する。
【0027】
電極板36は、サセプタ16との対向面を構成するとともに、多数のガス吐出孔37を有する。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体よりなることが好ましく、例えばシリコンやSiCよりなることが好ましい。
【0028】
電極支持体38は、間隔調整機構90により電極板36を着脱自在に支持しており、導電性材料、例えばアルミニウムからなる水冷構造を有する。なお、間隔調整機構90の構造、及び、電極板36が間隔調整機構90により電極支持体38に支持される方法については、図2から図7を用いて後述する。
【0029】
電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。電極支持体38には、ガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口44が形成されており、このガス導入口44にはガス供給管45が接続され、ガス供給管45には処理ガス供給源46が接続されている。ガス供給管45には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)48及び開閉バルブ49が設けられている。そして、処理ガス供給源46から、処理ガスとして、例えばCガスのようなフルオロカーボンガス(C)がガス供給管45からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0030】
ガス供給管45の途中であって、ガス導入口44とMFC48との間には、圧力計50が設けられている。圧力計50は、ガス供給管45の内部の圧力を計測することによって、ガス拡散室40の内部の圧力をモニタするためのものである。圧力計50として、例えばバラトロン真空計を用いることができる。なお、ガス拡散室40の内部の圧力をモニタすることができればよく、圧力計50は、ガス拡散室40に直接連通するように設けてもよい。なお、ガス供給管45及びガス拡散室40は、本発明における流路に相当する。
【0031】
また、図1に示すように、ガス拡散室40は、例えばOリングよりなる環状隔壁部材43によって、中心側の第1ガス拡散室40aと、外周側の第2ガス拡散室40bとに分離されていてもよい。このとき、ガス拡散室40a、40bへ処理ガスを導くガス導入口44a、44bが形成されている。そして、ガス導入口44aにはガス供給管45aが接続され、ガス導入口44bにはガス供給管45bが接続されている。ガス供給管45a、45bは、処理ガス供給源46に接続されているガス供給管45が分岐してなる。ガス供給管45aには、上流側から順にMFC48a及び開閉バルブ49aが設けられており、ガス供給管45bには、上流側から順にMFC48b及び開閉バルブ49bが設けられている。
【0032】
このときは、図1に示すように、圧力計は、50aとしてガス供給管45aの途中に設けることができる。また、圧力計は、50bとしてガス供給管45bの途中に設けられていてもよい。あるいは、圧力計は、50a、50bとしてガス供給管45a、45bの両方の途中に設けられていてもよい。
【0033】
また、電極支持体38の内部には、例えばブラインよりなる熱媒体が流れるリング状の流路52が形成されている。流路52は、戻り流路54、チラー56及び供給流路58とともに循環流路60を構成しており、戻り流路54及び供給流路58の途中にはフローコントロールバルブユニット62が設けられている。また、電極支持体38の上部には、電極支持体38を加熱するヒータ66が設けられており、ヒータ66には、電力を供給する電源68が接続されている。更に、電極支持体38の温度を検出する図示しない温度センサが設けられていてもよい。温度センサは、電極支持体38に接触するように設けられていてもよく、あるいは、非接触で測定可能な例えば放射温度計よりなる温度センサを用いるときは、チャンバ10に設けた観測窓を介してチャンバ10の外側に設けられていてもよい。そして、後述する制御部100は、温度センサにより検出した電極支持体38の温度が設定温度に近づくように、フローコントロールバルブユニット62の流量及び電源68がヒータ66に供給する電力を制御する。これにより、電極支持体38の温度を所定の温度に制御することができる。
【0034】
上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)70を介して第1の直流電源73が電気的に接続されている。第1の直流電源73は、負極が上部電極34側となるように接続されており、上部電極34に負(マイナス)の電圧を印加するようになっている。ローパスフィルタ(LPF)70は後述する第1及び第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0035】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられている。
【0036】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器71を介して、プラズマ生成用の第1の高周波電源72が電気的に接続されている。第1の高周波電源72は、27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの高周波電力を出力する。
【0037】
下部電極であるサセプタ16には、また、第2の整合器78を介して第2の高周波電源79も電気的に接続されている。この第2の高周波電源79から下部電極であるサセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウェハWにバイアスが印加され半導体ウェハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源79は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、例えば3MHzの高周波電力を出力する。
【0038】
第1の直流電源73、第1の高周波電源72、第2の高周波電源79、第1の整合器71および第2の整合器78は、電源コントローラ80に電気的に接続されており、これらは電源コントローラ80により制御されるようになっている。
【0039】
なお、第1の高周波電源72及び第2の高周波電源79は、上部電極34及び下部電極であるサセプタ16の少なくともいずれか一方の高周波電力を供給するように設けられていればよい。従って、第1の高周波電源72及び第2の高周波電源79が、上部電極34に高周波電力を供給するように設けられていてもよい。
【0040】
チャンバ10の底部には排気口81が設けられ、この排気口81に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウェハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0041】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウェハWとほぼ同じ高さの部分には、グランドに接地された導電性部材(GNDブロック)87が設けられており、これにより異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材87は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限られず、例えばサセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極近傍に設けてもよい。
【0042】
プラズマ処理装置の各構成部、例えば電源系やガス供給系、駆動系、さらには電源コントローラ80等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータがプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザインターフェース101が接続されている。
【0043】
さらに、制御部100には、記憶部102が接続されている。記憶部102には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部100の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0044】
そして、必要に応じて、ユーザインターフェース101からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。なお、本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング装置は、この制御部100を含むものである。
【0045】
次に、間隔調整機構90の構造、電極支持体38の電極板36の支持方法について説明する。
【0046】
図2は、電極支持体38と電極板36の近傍を拡大して示す断面図である。図3は、電極支持体38と電極板36との間にシールドスパイラル94が挟まれている状態を示す一部断面を含む斜視図である。図4は、電極支持体38と電極板36との間にシールドスパイラル94が挟まれている状態を示す断面図である。なお、図2においては、図示を容易にするために、電極支持体38の内部に形成されている流路52及びヒータ66の図示を省略している。
【0047】
前述したように、電極板36は、間隔調整機構90により電極支持体38に支持されている。間隔調整機構90は、クランプ部材91、連結部92及びトルク制御部93を有する。間隔調整機構90は、図4を用いて後述するように、電極支持体38と電極板36との間隔dを調整するためのものである。
【0048】
クランプ部材91は、リング形状を有し、電極板36の外周に接するように設けられていてもよい。電極板36として、例えば外周下側に切欠部36aが形成されてなるとともに、外周上側に突出部36bが形成されてなるものを用いることができる。このとき、クランプ部材91として、電極板36の外周下側に形成された切欠部36aに対応して、内周下端に内周方向に突出した突出部91aが形成されており、周方向から視たときに断面L字形状を有するものを用いることができる。クランプ部材91は、連結部92により電極支持体38又はトルク制御部93に連結されていてもよく、電極支持体38とクランプ部材91の突出部91aとの間に電極板36の突出部36bを挟んで支持するように設けられていてもよい。
【0049】
連結部92は、例えばネジ部材92aとナット部材92bとよりなるものを用いることができる。ネジ部材92aの下端部92cは、ネジ部材92aの本体部92dよりも直径が大きくなっており、クランプ部材91の内部に、回転自在であるとともにクランプ部材91から抜けないように、取り付けられていてもよい。ナット部材92bは、電極支持体38に取り付けられており、ネジ部材92aはナット部材92bに螺合するように設けられていてもよい。
【0050】
トルク制御部93は、回転駆動部93aとトルク検出部93bとを有する。回転駆動部93aの回転軸は、ネジ部材92aと一体で回転可能に設けられている。回転駆動部93aとして、例えばモータを用いることができる。トルク制御部93は、トルク検出部93bによりトルクを検出しながら回転駆動部93aにより所定のトルクになるようにネジ部材92aをネジ止めすることができる。
【0051】
間隔調整機構90は、クランプ部材91に回転自在に取り付けられたネジ部材92aを回転駆動させることで、電極支持体38に固定されたナット部材92bに対する上下方向の相対位置を変化させることができる。これにより、電極支持体38に対する電極板36の上下方向の相対位置を変化させることができる。
【0052】
あるいは、ネジ部材92aの下端部がクランプ部材91に取り付けられたナット部材に螺合するように設けられていてもよい。そして、電極支持体38には、ネジ部材92aが軸方向に摺動可能及び周方向に回転可能になるように、ナット部材92bに代えボールスプラインが設けられていてもよい。
【0053】
また、電極支持体38と電極板36との間には、弾性部材94が挟まれている。弾性部材94として、例えばシールドスパイラルを用いることができる。
【0054】
図2及び図3に示すように、例えば電極板36の上面に溝部36cが形成されており、溝部36cに螺旋形状を有するシールドスパイラル94が嵌め込まれている。溝部36cの深さは、シールドスパイラル94の外径よりも小さくなっており、図4に示すように、電極板36の上面と電極支持体38の下面とは直接接触せず、シールドスパイラル94を介して接触するようになっている。また、シールドスパイラル94として、EMI(Electro Magnetic Interference)シールドスパイラルを用いることができる。
【0055】
また、電極板36の上面と電極支持体38の下面との間であって、シールドスパイラル94よりも内周側には、ガス吐出孔37とガス通流孔41の気密性を確保するために、リング形状を有する気密シール部材が設けられていてもよい。気密シール部材として、例えばOリングを用いることができ、弾性部材94としての役割を持たせる事も可能である。
【0056】
このように構成された間隔調整機構90によれば、連結部92例えばネジ部材92aを締め付けるトルクTrを調整することによって、電極板36を電極支持体38に押し付ける力Fを調整することができる。この押し付け力Fの強さとシールドスパイラル94の弾性力とのバランスにより、電極支持体38と電極板36との間隔dを調整することができる。
【0057】
なお、間隔調整機構90は、電極支持体38と電極板36との間隔dを調整することができるものであればよく、間隔調整機構90の構造として種々の変更が可能である。図5は、間隔調整機構として別の例90Aを用いた場合における、電極支持体38と電極板36の近傍を拡大して示す断面図である。図5に示すように、クランプ部材を設けず、ネジ部材92aの下端部92cが、電極板36の内部に、回転自在であるとともに電極板36から抜けないように、取り付けられていてもよい。なお、図5においては、図示を容易にするために、電極支持体38の内部に形成されている流路52及びヒータ66の図示を省略している。
【0058】
また、トルク制御部93は、電極板36及び電極支持体38の外周に沿って、複数の箇所に設けられていてもよい。そして、複数のトルク制御部93が設けられているときは、それぞれのトルク制御部93は、独立してトルク制御可能に設けられていてもよく、あるいは、以下のように、それぞれのトルク制御が連動して行なわれるように構成されていてもよい。
【0059】
図6及び図7は、それぞれ複数のトルク制御部93が連動するように設けられている例の構成を示す断面図及び上面図である。なお、図6においては、図示を容易にするために、電極支持体38の内部に形成されている流路52及びヒータ66の図示を省略している。
【0060】
図6及び図7に示すように、例えば中央に設けられた駆動ギヤ95と、駆動ギヤ95の外周に沿って複数の箇所に設けられた被駆動ギヤ96とが設けられており、駆動ギヤ95が1つのトルク制御部93に接続されているとともに、それぞれの被駆動ギヤ96がそれぞれの連結部92と一体で回転可能に設けられていてもよい。
【0061】
次に、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0062】
図8は、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法における各工程の手順を示すフローチャートである。図9は、トルクTrと間隔dとの関係を模式的に示すグラフである。図10は、間隔dと圧力Pとの関係を模式的に示すグラフである。
【0063】
予め、電極支持体38から電極板36までの間隔dと、供給される処理ガスが流れる流路内の圧力Pとの関係を設定するためのデータを準備する(ステップS11)。
【0064】
まず、ネジ部材92aのトルクTrと間隔dとの関係を設定するためのデータを準備する。例えば電極支持体38から電極板36までの間隔dをネジ部材92aにより調整するものであるときは、ネジ部材92aを回転するトルクTrを調整することによって、間隔dを調整することができる。従って、トルクTrと間隔dとの関係を設定するためのデータを準備しておく。トルクTrと間隔dとの関係としては、図9に示すように、トルクTrの増加に伴って間隔dが減少するような関係を有するものとすることができる。
【0065】
次に、間隔dと圧力Pとの関係を設定するためのデータを準備する。間隔dと圧力Pとは、図10に示すように、間隔dの減少に伴って圧力Pも減少するような関係を有する。
【0066】
ここで、間隔dと圧力Pとの関係は、以下のように、間隔dと圧力Pと電極板36の温度T1との関係により説明することができる。
【0067】
図11は、電極板36と電極支持体38とが間隔dで対向している状態を模式的に示す図である。
【0068】
図11に示すように、電極板36と電極支持体38とが間隔dで対向しているものとする。そして、電極板36の温度がT1に、電極支持体38の温度がT2(T1>T2)に保たれているとする。そして、T1とT2の温度差をΔT(=T1−T2)とするとき、定常状態における電極板36と電極支持体38との間の熱流束qは、下記式(1)
q=κ・ΔT/d (1)
に示される。ここで、κは、気体の熱伝導率である。
【0069】
式(1)を変形すると、熱伝導効率q/ΔTは、
q/ΔT=κ/d (2)
となる。
【0070】
また、圧力Pが相対的に低く、間隔dが平均自由行程λよりも十分大きい場合(λ<<d)には、熱伝導率κは、圧力Pに略比例する。これは、例えば、以下のクヌーセン数Knの圧力依存を用いて説明することができる。クヌーセン数Knは、下記式(3)
【0071】
【数1】

に示されるように、間隔dに相当する代表長さLに対する平均自由行程λの比として定義される。式(3)において、kはボルツマン定数、σは分子直径、Tは絶対温度である。
【0072】
式(3)に示すように、クヌーセン数Knは、圧力Pの逆数に比例する。また、圧力Pが相対的に低く、間隔d(代表長さL)が平均自由行程λよりも十分大きい場合(λ<<d)には、熱伝導率κは、クヌーセン数Knの逆数に略比例する。従って、圧力Pの減少に伴って、熱伝導率κも減少する。
【0073】
以上の関係により、間隔dを増加させると、熱伝導効率q/ΔTも減少し、電極支持体38の温度T2が一定のとき、電極板36の温度T1は上昇する。また、圧力Pを減少させると熱伝導率κも減少するため、熱伝導効率q/ΔTも減少し、電極支持体38の温度T2が一定のとき、電極板36の温度T1は上昇する。よって、間隔dと圧力Pとは、図10に示すように、間隔dの減少に伴って圧力Pも減少するような関係を有する。
【0074】
次いで、ウェハWをエッチングする際に、処理ガスが流れる流路内の圧力を計測して計測値を取得する(ステップS12)。なお、ステップS12は、本発明における取得ステップに相当する。
【0075】
例えば、ウェハWのエッチングを開始する前に、圧力計50により、ガス供給管45内の圧力を計測し、計測した計測値を制御部100が取得する。また、複数のウェハWを連続してエッチングするときは、例えばこれから処理するウェハWの前のウェハWをプラズマエッチングしている間に、圧力計50により、ガス供給管45内の圧力を計測してもよい。
【0076】
次いで、取得した計測値が、予め設定された基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS13)。なお、ステップS13は、本発明における判定ステップに相当する。
【0077】
ステップS12で取得した計測値が図10に示すP1であるときは、ステップS13において計測値P1が基準値P0から所定の範囲内にあると判定する。このときは、間隔dを変更せず、後述するプラズマエッチングを行うステップ(ステップS16)に進む。
【0078】
一方、ステップS12で取得した計測値が図10に示すP2であるときは、ステップS13において計測値P2が基準値P0から所定の範囲内にないと判定する。このときは、ステップS11で予め設定された、間隔dと圧力Pとの関係、すなわち図10に示す関係と、計測値P2とに基づいて、間隔dの設定値d2を決定する(ステップS14)。次いで、図10に示すように、間隔dを、現在値、例えば基準値P0に対応したd0から決定された設定値d2に調整する(ステップS15)。ステップS15では、ネジ部材92aを回転させるトルクTrを、図9に示す間隔d0に対応したトルクTr0から、図9に示すトルクTrと間隔dとの関係と、間隔dの設定値d2とに基づいて定まるトルクTr2に調整する。これにより、間隔dを、決定された間隔dの設定値d2に調整する。
【0079】
なお、ステップS14は、本発明における決定ステップに相当し、ステップS15は、本発明における調整ステップに相当する。
【0080】
また、ステップS13において、計測値が所定の範囲内にないと判定されたときに、例えば制御部100が、計測値が所定の範囲内にないことを示す信号を出力するようにしてもよい。そして、ステップS13で信号が出力されたときに、ステップS14において間隔dの設定値を決定するようにしてもよい。
【0081】
このようにして、ステップS13で計測値が基準値から所定の範囲内にあると判定した後、又は、ステップS13で計測値が基準値から所定の範囲内にないと判定し、かつ、ステップS14及びステップS15を行って間隔dを設定値d2に調整した後、ウェハWをプラズマエッチングする(ステップS16)。
【0082】
ここでは、例えば後述する図17に示すように、シリコン層111よりなるウェハW上にフォトリソグラフィによりパターン化されたレジスト(例えばArFレジスト)よりなるレジスト層112がエッチングマスクとして形成された構造のウェハWを準備し、ウェハWにプラズマエッチングを施す。なお、シリコン層111上に例えばSiOxよりなる絶縁膜が形成され、絶縁膜上にレジスト層112が形成されたものでもよい。
【0083】
まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介して上記構成の半導体ウェハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。この状態でゲートバルブ86を閉じ、排気装置84によりチャンバ10内を排気しながら、処理ガス供給源46から処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給し、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ供給しつつ、その中の圧力を例えば0.1〜150Paの範囲内の設定値とする。そして、所定の高周波電力と直流電圧を印加してウェハWに対してプラズマエッチングを行う。このとき、半導体ウェハWは、直流電源22から静電チャック18の電極20に直流電圧を印加することにより静電チャック18に固定されている。
【0084】
ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばCガスのようなフルオロカーボンガス(C)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ArガスやOガス等の他のガスが含まれていてもよい。
【0085】
そして、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源72から27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの比較的高い周波数のプラズマ生成用の高周波電力を印加する。また、第2の高周波電源79から400kHz〜13.56MHzの周波数、例えば3MHzのプラズマ生成用の高周波電力よりも低い周波数のイオン引き込み用の高周波電力を連続的に印加する。更に、上部電極34に第1の直流電源73から所定の直流電圧を連続的に印加する。
【0086】
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成される正イオンやラジカルによって、レジスト層112をマスクとしてウェハWのシリコン層111がエッチングされる。
【0087】
本実施の形態では、前述したように、ステップS16を行う前に、ステップS13で圧力Pの計測値が基準値から所定の範囲内にあるか否か判定する。そして、計測値が基準値から所定の範囲内にないと判定したときは、ステップS14及びステップS15を行って間隔dを新たな間隔に変更する。これにより、上部電極の経時変化に伴うレジストのエッチング速度の低下を抑制することができる。
【0088】
次に、本実施の形態に係るプラズマエッチング方法によれば、プロセス条件を変更することなく、上部電極の経時変化に伴うレジストのエッチング速度の低下を抑制することができることを、比較例を参照しながら説明する。
【0089】
図12から図14は、間隔dの変更を行わない場合を比較例としたときに、比較例におけるそれぞれレジスト層のエッチング速度、圧力P、及び電極板36の温度の経時変化を実際に計測したデータの一例である。
【0090】
図12及び図13に示すように、間隔dの変更を行わないときは、使用時間の増加に伴って、エッチング速度、圧力Pが減少する。また、図14に示すように、間隔dの変更を行わないときは、使用時間の増加に伴って、電極板36の温度が増加する。このような変化の理由について、一例として、図15から図18を用いて説明することができる。
【0091】
図15及び図16は、使用時間の増加に伴って電極板36のガス吐出孔37の形状の変化の様子を模式的に示す断面図である。図17は、比較例においてシリコン層をエッチングして形成される穴部の形状を模式的に示す断面図である。図18は、比較例におけるレジスト層のエッチング速度の経時変化を模式的に示すグラフである。図19は、本実施の形態においてシリコン層をエッチングして形成される穴部の形状を模式的に示す断面図である。図20は、本実施の形態におけるレジスト層のエッチング速度の経時変化を模式的に示すグラフである。
【0092】
使用時間の増加に伴って、図15及び図16に示すように、例えば電極板36のガス吐出孔37の内径がDI0からDI1に増加し、ガス吐出孔37を流れるガスの流れ易さ、すなわちコンダクタンスが増加する。すると、電極板36と、電極支持体38との間の空間が排気装置84により排気されやすくなり、電極板36と、電極支持体38との間の空間における圧力が減少する。そして、前述したように、空間における圧力が減少すると、電極板36が電極支持体38との間の熱伝導効率が減少する。
【0093】
一方、下部電極であるサセプタ16には、第1の高周波電源72又は第2の高周波電源79を介して高周波電力が供給される。上部電極34である電極板36は、シールドスパイラル94、電極支持体38、ローパスフィルタ(LPF)70及び第1の直流電源73を介して接地されているため、サセプタ16に供給された高周波電力は電極板36にも供給される。そして、供給された高周波電力により処理ガスがプラズマ化してプラズマが発生すると、プラズマにより電極板36が加熱される。このとき、電極板36が電極支持体38との間の熱伝導効率が減少していると、電極板36が電極支持体38により冷却されにくくなり、電極板36の温度が上昇することになる。
【0094】
電極板36の温度が上昇すると、エッチングの際に電極板36の表面に堆積する堆積物の量が減少する一方、レジスト層112の表面に堆積する堆積物113が増加し、レジスト層のエッチング速度が低下する。また、堆積物113は、レジスト層112の表面とともに、レジストパターンの側壁にも堆積する。従って、図17に示すように、シリコン層111をエッチングして形成される穴部の内径DH0は、相対的に小さくなる。
【0095】
このように、レジスト層のエッチング速度は、エッチングして形成される穴部の形状を決定する重要なパラメータであるため、所定の許容範囲内にあることが好ましい。従って、図18に示すように、エッチング速度が低下して許容範囲内の下限値に等しくなるときに、上部電極34(電極板36)を交換しなくてはならず、上部電極34を新品部材へ交換する頻度が多くなり、上部電極34の使用可能時間が短くなる。また、上部電極34を新品部材へ交換する際には、プロセス条件を再調整しなくてはならず、連続して安定に装置を稼働することが難しくなる。
【0096】
一方、本実施の形態では、処理ガスの流路内の圧力Pを計測して計測値を取得し、取得した計測値が基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定し、所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、電極板36と電極支持体38との間隔dと圧力Pとの関係と、取得した計測値とに基づいて、間隔dを変更する。このとき、圧力Pの減少に伴って間隔dも減少するように変更するため、電極板36と電極支持体38との間の熱伝導効率の変化を防止できる。従って、電極板36の温度が所定の範囲を超えて上昇すること、及び、エッチングの際に電極板36の表面に堆積する堆積物の量が減少することを防止できる。従って、図18に示すように、シリコン層111をエッチングして形成される穴部の内径DH1は、相対的に小さくならず、所定の範囲内の値とすることができる。
【0097】
また、使用時間の増加に伴ってレジスト層のエッチング速度が低下して許容範囲内の下限値に等しくなったときに、図20に示すように、間隔dを変更することによって、レジスト層のエッチング速度を例えば許容範囲内の上限値になるように調整することができる。従って、エッチング速度が低下して許容範囲内の下限値に等しくなったときに、上部電極34(電極板36)を交換する必要はなく、上部電極34を新品部材へ交換する頻度を少なくすることができ、上部電極34の使用可能時間を長くすることができる。また、上部電極34を新品部材へ交換する際に必要な、プロセス条件の再調整の回数も減らすことができ、より連続して安定に装置を稼働することができる。
【0098】
図21は、複数のウェハを連続してプラズマエッチングする際に、電極板36の温度の経時変化を実際に計測したデータの一例である。図21では、7枚のウェハを連続して処理した例を示している。
【0099】
電極板36の温度が径時変化する場合、例えば電極支持体38の設定温度のような、各種のプロセス条件を予め調節することでエッチング速度の経時変化を抑制すればよいとも考えられる。しかし、電極支持体38の設定温度等のプロセス条件を変更すると、複数のウェハを連続してプラズマエッチングする際に、図21に示すように、1枚のウェハの処理の開始時と終了時との間でプロセス条件が変動することがある。あるいは、最初のウェハの処理と最後のウェハの処理との間でプロセス条件が変動するおそれがある。
【0100】
一方、本実施の形態では、処理ガスの流路内の圧力Pを計測して計測値を取得し、取得した計測値が基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定し、所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、電極板36と電極支持体38との間隔dと圧力Pとの関係と、取得した計測値とに基づいて、間隔dを変更する。従って、電極支持体38の温度が経時変化することを防止するために、例えば電極支持体38の設定温度等のプロセス条件を変更する必要がない。よって、複数のウェハを連続してプラズマエッチングする際に、図21に示すように、1枚のウェハの処理の開始時と終了時との間でのプロセス条件の変動を抑制できる。あるいは、最初のウェハの処理と最後のウェハの処理との間でのプロセス条件の変動を抑制することができる。
【0101】
次に、実施例として、本実施の形態に係るネジ部材92aを用いた場合において、ネジ部材92aをネジ止めするトルクTrを変えた場合において、レジスト層のエッチング速度を測定した結果について説明する。トルクTr以外の条件は、下記の通りである。
(実施例)
成膜装置内圧力 :30mTorr
高周波電源パワー(上部電極/下部電極):1700/6000W
処理ガス :C/C/CF/O
図22から図24は、それぞれトルクTrを10、8、5kgf・cmと変えた場合における、レジスト層のエッチング速度のウェハ面内分布を測定した結果である。
【0102】
図22から図24に示すように、トルクの減少に伴って、レジスト層のエッチング速度の面内分布を示すプロファイルが、縦方向において徐々に下方に下がっている。また、それぞれのプロファイルから求めたエッチング速度の平均値は、57.4、55.3、53.9nm/minと変化し、徐々に減少している。従って、トルクTrを調整することでレジスト層のエッチング速度を自在に調整できることが示された。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 チャンバ(処理容器)
16 サセプタ
34 上部電極
36 電極板
38 電極支持体
40 ガス拡散室
45 ガス供給管
46 処理ガス供給源
50 圧力計
72 第1の高周波電源
79 第2の高周波電源
90、90A 間隔調整機構
92 連結部
92a ネジ部材
93 トルク制御部
94 シールドスパイラル(弾性部材)
100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に処理ガスを供給するとともに、前記処理容器内に設けられた、基板を保持する保持部、及び、前記保持部と対向するように設けられた電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給することによって、プラズマを発生させ、発生したプラズマにより前記保持部に保持されている基板をエッチングするプラズマエッチング方法において、
前記処理ガスが流れる流路内の圧力を計測して計測値を取得する取得ステップと、
取得した前記計測値が、予め設定された基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定する判定ステップと、
前記計測値が前記所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、前記電極板を支持する電極支持体から前記電極板までの間隔と前記流路内の圧力との関係に基づいて、前記間隔の設定値を決定する決定ステップと、
前記間隔を、決定された前記設定値に調整する調整ステップと
を有する、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、前記計測値が前記所定の範囲内にないと判定されたときに、前記計測値が前記所定の範囲内にないことを示す信号を出力するものであり、
前記決定ステップは、前記信号が出力されたときに、前記設定値を決定するものである、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記調整ステップは、間隔調整機構により、前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を他方に対して移動させることによって、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するものである、請求項1又は請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記間隔調整機構は、前記電極板を前記電極支持体に連結する連結部と、前記電極支持体と前記電極板との間に挟まれた弾性部材とを含み、
前記調整ステップは、前記連結部が、前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を前記弾性部材を介して他方に押し付ける力を調整することによって、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するものである、請求項3に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記連結部は、前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を他方にネジ止めするネジ部材を含み、
前記調整ステップは、前記ネジ部材を回転させるトルクを調整することによって、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するものである、請求項4に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
基板をプラズマによりエッチングするプラズマエッチング装置において、
処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する供給部と、
前記処理容器内に設けられた、基板を保持する保持部と、
前記保持部と対向するように設けられた電極板と、
前記保持部及び前記電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給する高周波電源と、
前記電極板を支持する電極支持体と、
処理ガスが流れる流路内の圧力を計測する計測部と、
前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を他方に対して移動させることによって、前記電極支持体から前記電極板までの間隔を調整する間隔調整機構と、
前記供給部、前記高周波電源、前記計測部及び前記間隔調整機構の動作を制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、
前記供給部により処理ガスを供給するとともに、前記高周波電源により高周波電力を供給することによって、プラズマを発生させ、発生したプラズマにより前記保持部に保持されている基板をエッチングするように制御するものであるとともに、
前記計測部により、前記流路内の圧力を計測して計測値を取得し、取得した前記計測値が、予め設定された基準値から所定の範囲内にあるか否かを判定し、前記計測値が前記所定の範囲内にないと判定されたときに、予め設定された、前記間隔と前記流路内の圧力との関係に基づいて、前記間隔の設定値を決定し、前記間隔調整機構により、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するように制御するものである、プラズマエッチング装置。
【請求項7】
前記間隔調整機構は、前記電極板を前記電極支持体に連結する連結部と、前記電極支持体と前記電極板との間に挟まれた弾性部材とを含み、
前記制御部は、前記連結部が、前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を前記弾性部材を介して他方に押し付ける力を調整することによって、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するように制御するものである、請求項6に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項8】
前記連結部は、前記電極板及び前記電極支持体のいずれか一方を他方にネジ止めするネジ部材を含み、
前記制御部は、前記ネジ部材を回転させるトルクを調整することによって、前記間隔を、決定された前記設定値に調整するように制御するものである、請求項7に記載のプラズマエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−16534(P2013−16534A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146242(P2011−146242)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】