説明

プラズマエッチング方法

【課題】ネッキングやボウイングの発生を抑制し、高いエッチングレートで、高いマスク選択比を有するプラズマエッチング方法を提供すること。
【解決手段】被処理体の戴置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向して配置される上部電極を有するプラズマエッチング装置を用いたプラズマエッチング方法であって、フルオロカーボン系ガスを含む第1の処理ガスを用いてプラズマエッチングする第1のエッチング工程と、プラズマ生成用の高周波電力をオンにする第1条件とオフにする第2条件とを交互に繰り返しながら、前記第1条件の期間よりも前記第2条件の期間の方が印加電圧の絶対値が大きくなるように、前記上部電極に負の直流電圧を印加して、フルオロカーボン系ガスを含む第2の処理ガスを用いてプラズマエッチングするエッチング工程であって、前記第1の処理ガスのラジカルの被処理体に対する付着性は、前記第2の処理ガスのラジカルの前記被処理体に対する付着性より大きい、第2のエッチング工程とを含む、プラズマエッチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマにより基板に対してプラズマエッチングを施すプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理体である半導体ウエハに形成された所定の層に所定のパターンを形成するために、レジストをマスクとしてプラズマによりエッチングするプラズマエッチング処理が多用されている。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化が進み、アスペクト比が20以上のHARC(High Aspect Ratio Contact)エッチングが求められている。最近では、次世代HARCとしてアスペクト比40を超えるような非常に高いアスペクト比のエッチングが要求されるに至っている。
【0004】
このようなHARCエッチングにおいては、フォトレジスト等のエッチングマスクは負に帯電しており、エッチング初期にはエッチング面において電荷が中和している。そして、エッチングが進行してアスペクト比が高くなると、ホールの底に正イオンがたまりエッチング面が正に帯電するようになる。このため、正イオンがホール内で反発により曲がってしまい、エッチング形状の曲がりや歪みが生じるようになる。また、このようにホールの底が正に帯電することにより、シェーディングダメージが懸念される。さらに、正イオンがホール底部に到達し難くなるため、エッチングレートの低下がもたらされる。
【0005】
そこで、特許文献1等には、プラズマ生成用の高周波電力をパルス状に印加し、より多くの2次電子をホール底部に供給し、ホール底部の正の帯電を中和する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−219491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、HARCエッチングのために付着性が高いラジカルを有する処理ガスでエッチングすると、ネッキングが発生し、エッチングレートの低下やボウイングの発生につながることがあった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ネッキングやボウイングの発生を抑制し、高いエッチングレートで、高いマスク選択比を有するプラズマエッチング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
被処理体の戴置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向して配置される上部電極を有するプラズマエッチング装置を用いたプラズマエッチング方法であって、
フルオロカーボン系ガスを含む第1の処理ガスを用いてプラズマエッチングする第1のエッチング工程と、
プラズマ生成用の高周波電力をオンにする第1条件とオフにする第2条件とを交互に繰り返しながら、前記第1条件の期間よりも前記第2条件の期間の方が印加電圧の絶対値が大きくなるように、前記上部電極に負の直流電圧を印加して、フルオロカーボン系ガスを含む第2の処理ガスを用いてプラズマエッチングするエッチング工程であって、前記第1の処理ガスのラジカルの被処理体に対する付着性は、前記第2の処理ガスのラジカルの前記被処理体に対する付着性より大きい、第2のエッチング工程と
を含む、プラズマエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ネッキングやボウイングの発生を抑制し、高いエッチングレートで、高いマスク選択比を有するプラズマエッチング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】処理ガスの付着性とホール形状の相関性を説明するための図であって、保護膜が形成されたホールの一例の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法を実施することが可能なプラズマエッチング装置の一例を示す概略断面図である。
【図3】図2のプラズマエッチング装置において第1の高周波電源に接続された第1の整合器の構造を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法における第1の高周波電源、第2の高周波電源、および第1の直流電源の状態を示すタイミングチャートの例である。
【図5】上部電極で負の直流電圧印加により発生した2次電子の挙動を示す模式図である。
【図6】高周波電力のオン・オフにともなうプラズマのオン・オフと、半導体ウエハWへの電子の入射量の指標である半導体ウエハWへの入射電子電流(A)との関係を説明するためのグラフの一例である。
【図7】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法後の、コンタクトホールの側壁形状の一例を説明するための概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法後の、コンタクトホールの側壁形状の他の例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
≪処理ガス≫
まず、本発明で使用できる処理ガスについて説明する。
【0014】
図1に、処理ガスの付着性とホール形状の相関性を説明するための図であって、保護膜が形成されたホールの一例の概略図を示す。図1(a)と図1(b)とでは、使用する処理ガスのラジカルの、被処理体(即ち、エッチング対象膜であり、例えば、処理基板、下地膜、酸化膜や窒化膜等のハードマスク、反射防止膜等)への付着性が異なり、図1(a)のラジカルは、図1(b)のラジカルよりも相対的に付着性が高いと仮定している。
【0015】
また、図1は、被処理体として、Si基板1上に絶縁膜2が形成され、その上のフォトリソグラフィによりパターン化されたフォトレジスト膜がエッチングマスク3として形成された構造の半導体ウエハWについて説明する。しかしながら、本発明は、この半導体ウエハWの構造に限定されない。
【0016】
図1(a)では、付着性が高いラジカルを使用しているため、エッチングマスク3表面及びホール4側面に、比較的厚い保護膜5が形成される。高アスペクト比のコンタクトホールのエッチング(HARCエッチング)を行う際には、高いマスク選択比を確保するため、付着性が高いラジカルを使用することが好ましい。しかしながら、ホール径が小さくなるにつれ、エッチングマスク3側面に生成した保護膜の膜厚が厚くなり、ホール入り口を塞ぐネッキングが生じやすくなる。それにより、ホール内部に侵入するイオン量が不足し、ホール底部のCD(critical dimension)が縮小及び/又はエッチングレートの低下につながる。また、ネッキングの上方で入射イオンが反射され、ネッキングの下方でボウイング(側壁の抉れ)が発生することがある。
【0017】
一方、図1(b)では、上述のネッキングを回避するために、付着性が低いラジカルを使用している。付着性が低いラジカルを使用する場合、エッチングマスク3上の保護膜5は、薄膜として比較的広範囲に付着する傾向にある。そのため、プラズマ耐久性は、前述の場合と比較して悪化するため、HARCエッチングするための十分なマスク選択比が得られない。
【0018】
そこで、本発明では、プラズマエッチング処理期間中に、処理ガスを少なくとも一回以上変更する。この時、エッチング初期(例えば、メインエッチング工程)においては、保護膜のエッチング対象膜への付着性が高い第1の処理ガスを選択し、エッチング時のマスク選択比を稼ぐ。その後、エッチング後期(オーバーエッチング工程)においては、保護膜がホール内部の側壁に薄く付着する第2の処理ガスを選択し、前述のネッキングを抑制してプラズマエッチングを行う。ネッキングを抑制してプラズマエッチングを進行させることで、アスペクト比が高い領域においてもホール垂直形状を良好にすることができる。なお、処理ガスの切り替えのタイミングは、エッチング条件、所望するアスペクト比等に依存し、当業者が適宜選択できるものである。
【0019】
本発明で好ましく使用できる処理ガスとしては、フルオロカーボン系ガスを含む処理ガスである。使用できるフルオロカーボン系ガスとしては、特に制限はなく、例えば、CF、CF、CF,CF、C、C、C、C、C、C10、C及び他のフルオロカーボン系ガス(C)が挙げられる。フルオロカーボン系のガスは1種類を単独で使用しても良く、2種類以上を混合して併用しても良い。また、上述のフルオロカーボン系ガスに加えて、例えば、アルゴンガス及び/又は酸素ガスを含有するガスを添加しても良い。アルゴンガスや酸素ガスを添加することにより、エッチング時の電子温度が上昇する。そして、電子温度の上昇に伴い、ラジカル解離度が上昇するため、ホール内部に供給されるラジカル量が増加する。即ち、保護膜のデポレートを高くすることができる。
【0020】
フルオロカーボン系ガスのラジカルの、エッチング対象膜への付着性は、通常、ラジカル1分子中のFの数に対するCの数(即ち、C/F比)に依存し、C/F比が大きいほど、エッチング対象膜への付着性は高くなる。この時、エッチング時の条件(例えば、温度や滞在時間)に応じて、処理ガスの解離を考慮して、処理ガスを選択する。例えば、フルオロカーボン系ガスとしてC及びCを使用した場合の例について説明する。Cのラジカルは、通常のエッチング温度では、一部CFに解離するが、主としてCのラジカルとして存在する。一方、Cのラジカルは、通常のエッチング温度では概ね解離し、主としてCのラジカルとして存在する。そのため、プラズマエッチング初期(例えば、メインエッチング工程)では第1の処理ガスとして付着性が高いCを使用して選択比を稼ぎ、プラズマエッチング後期(例えば、オーバーエッチング工程)では第2の処理ガスとして付着性が低いCを使用する。
【0021】
≪プラズマエッチング装置≫
次に、本発明の第1の実施形態のプラズマエッチング装置について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るプラズマエッチング方法を実施することが可能なプラズマエッチング装置の一例を示す概略断面図である。
【0022】
図2に示すプラズマエッチング装置は、容量結合型平行板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0023】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に、例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理体である半導体ウエハWは戴置される。
【0024】
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層又は絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には、直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0025】
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16及びサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0026】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給されている。この冷媒の温度を変更することで、サセプタ上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
【0027】
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0028】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部および下部電極34,16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、即ち対向面を形成する。
【0029】
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されている。また、上部電極34は、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、この電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料、例えばアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38とによって構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体が好ましい。また、後述するようにレジストを強化する観点から、シリコン含有物質が好ましい。このような観点から、電極板36はシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からは、ガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
【0030】
電極支持体38には、ガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されている。このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。処理ガス供給源66は、制御部100によって制御され、プロセスに応じて、複数の種類の処理ガスを所定の量、時間供給することができる。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68及び開閉バルブ70が設けられ、処理ガスの供給量を制御することができる(MFCの代わりにFCSでも良い)。そして、処理ガス供給源66から、エッチングのための処理ガスとして、例えば前述の処理ガスがガス供給管64からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。即ち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0031】
上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)46aを介して第1の直流電源50が電気的に接続されている。第1の直流電源50は、負極が上部電極34側となるように接続されており、上部電極34に負(マイナス)の電圧を印加するようになっている。ローパスフィルタ(LPF)46aは後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0032】
円筒状の接地導体10aは、チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
【0033】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器46を介して、プラズマ生成用の第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの高周波電力を出力する。第1の整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。第1の整合器46は、図3に示すように、第1の高周波電源46の給電ライン96から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ97と、給電ライン96のその分岐点の第1の高周波電源48側に設けられた第2の可変コンデンサ98と、分岐点の反対側に設けられたコイル99とを有している。
【0034】
サセプタ16はまた、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90も電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極であるサセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウエハWにバイアスが印加され半導体ウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、例えば3MHzの高周波電力を出力する。第2の整合器88は第2の高周波電源90の内部(又は出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0035】
第1の直流電源50、第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、第1の整合器46及び第2の整合器88は、電源コントローラ95に電気的に接続されており、これらは電源コントローラ95により制御される。
【0036】
電源コントローラ95は、第1の高周波電源48のオン・オフ及び出力の制御が可能となっている。具体的には、第1の高周波電源48を連続的にオンにしてプラズマを生成する状態及び交互にオン・オフし、例えばパルス状として、プラズマが存在している状態とプラズマが消滅した状態を交互に形成する状態に制御することが可能となっている。同様に、バイアス用の第2の高周波電源90のオン・オフ及び出力の制御も可能となっており、プラズマ処理中に所定の出力で連続的にバイアスを印加する状態及び第2の高周波電源90の出力を第1の高周波電源48のオン・オフに同期して、例えばパルス状の出力を制御することが可能となっている。さらに、電源コントローラ95は、第1の直流電源50のオン・オフ制御及び電流・電圧制御を行うことが可能となっている。
【0037】
本実施形態の場合、通常のプラズマエッチングと異なり、第1の高周波電源48は、高周波電力が所定周期でオン・オフされるモードの際に、電源コントローラ95が、第1の整合器46における整合動作をこのオン・オフに同期させて切り換えるように制御する。
【0038】
この場合に、電源コントローラ95は、第1の高周波電力供給ユニット48をオン・オフモードで動作させる際に、可変コンデンサがオン・オフに追従できない場合には、第1の整合器46の動作を行わないように制御する。第2の整合器88についても、基本的に第1の整合器46と同様に構成されており、電源コントローラ95は、第2の高周波電源90の出力を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力制御する際に、可変コンデンサがオン・オフに追従できない場合には、第2の整合器88の動作を行わないように制御する。
【0039】
しかしながら、第1の整合器46及び第2の整合器88の可変コンデンサの動作が十分に速い場合には、高出力の際に第1の整合器46が第1の高周波電源48の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように、また、第2の整合器88が第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御してもよい。
【0040】
チャンバ10の底部に排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するために、デポシールド11が着脱自在に設けられている。即ち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11及び排気プレート83としては、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0041】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWと概ね同じ高さの部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材91は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は図2の位置に限られない。例えば、サセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極近傍に設けてもよい。
【0042】
プラズマ処理装置の各構成部(例えば、電源系、ガス供給系、駆動系、電源コントローラ95等)は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータがプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。
【0043】
さらに、制御部100には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部100の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラム(即ち、処理レシピ)が格納された記憶部102が接続されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0044】
プラズマ処理装置での処理は、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下で行われる。
【0045】
≪プラズマエッチング方法≫
次に、上述の処理ガスとプラズマエッチング装置とを用いて行われる、第1の実施形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。
【0046】
被処理体として、例えば、Si基板上に絶縁膜が形成され、その上にエッチングマスクであるハードマスク膜が形成された構造の半導体ウエハWを準備し、絶縁膜にプラズマエッチングを施す場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0047】
プラズマエッチングを施すに際しては、まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介して上記構成の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。この状態でゲートバルブ86を閉じ、排気装置84によりチャンバ10内を排気しながら、処理ガス供給源66から第1の処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給する。さらに、ガス通流孔41及びガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ第1の処理ガスを供給しつつ、チャンバ内の圧力を例えば0.75〜113mmTorrの範囲内の設定値とする。そして、所定の高周波電力と直流電圧を印加してウエハWに対してプラズマエッチングを行う。このとき、半導体ウエハWは、直流電源22から静電チャック18の電極20に直流電圧を印加することにより静電チャック18に固定されている。
【0048】
本実施形態のプラズマエッチング方法の第1の工程として、付着性が高い第1の処理ガスを使用して、通常、第1の高周波電源48からは27〜100MHzの周波数のプラズマ生成用の高周波電力を印加する。また、第2の高周波電源90からは400kHz〜13.56MHzの周波数のイオン引き込み用の高周波電力を印加する。第1の高周波電力及び第2の高周波電力の採り得る周波数を例示すると、第1の高周波電力としては、27MHz、40MHz、60MHz、80MHz、100MHzを挙げることができ、第2の高周波電力としては、400kHz、800kHz、1MHz、2MHz、3MHz、13MHz、13.6MHzを挙げることができる。プロセスに応じて適宜の組み合わせで用いることができるため、本発明はこの点において限定されない。
【0049】
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された第1の処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化する。このプラズマで生成される正イオンやラジカルによって、ハードマスク膜をエッチングマスクとして半導体ウエハWの絶縁膜がエッチングされる。
【0050】
このとき、下部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加することで、ウエハにより近い位置でプラズマを生成することができる。また、プラズマが広い領域に拡散せず処理ガスの解離を抑えることができるので、チャンバ10内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件であっても、エッチングレートを上昇させることができる。また、プラズマ形成用の高周波電力の周波数が高い場合でも、比較的大きなイオンエネルギーを確保することができる。また、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力とイオン引き込み用の高周波電力を別々に印加することで、プラズマエッチングに必要なプラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが可能となる。したがって、高い微細加工性が要求されるエッチングの条件を満たすことが可能となる。さらに、プラズマ生成用に27MHz以上の高い周波数領域の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを生成することができる。
【0051】
そして、プラズマが形成される際に、可変直流電源50から上部電極34に負の直流電圧を印加するので、プラズマ中の正イオンが上部電極34に衝突してその近傍に2次電子が生成される。生成された2次電子は、鉛直方向下方へ加速され、加速された2次電子(高速電子)は被処理体である半導体ウエハWに供給される。
【0052】
エッチングは、プラズマ中の正イオンが支配的になって進行する。第1の工程でのエッチング初期では、エッチングにより形成されたコンタクトホールは浅く、電子がエッチング面に到達し、正イオンがエッチング面に供給されても電荷が中和する。したがって、エッチングが正常に進行する。
【0053】
エッチングが進行して行き、コンタクトホールのアスペクト比が高くなってくると、電子はコンタクトホール内に到達し難くなり、コンタクトホール内には正イオンがたまって、エッチング面は正に帯電した状態となる。第1の工程では付着性が高いラジカルを使用しているため、プラズマエッチングが進行するにつれ、エッチングマスク表面及びホール側面に、比較的厚い保護膜が形成される。この状態のままエッチングを進行させると、エッチングのためにコンタクトホール内に進入した正イオンが、コンタクトホール内の正の電荷との間の反発により曲がり、エッチング形状の曲がりや歪みが生じるようになる。また、コンタクトホールの底部の正イオンによりシェーディングダメージが生じやすくなる。さらに、正イオンがホール底部に到達し難くなるため、エッチングレートの低下がもたらされる。特に、次世代HARCであるアスペクト比40超のコンタクトホールを形成する場合には、このような不都合が顕著となる。
【0054】
そこで、本実施形態では、保護膜がホール内部の側壁に薄く付着する第2の処理ガスに切り替えて、ネッキングを抑制してプラズマエッチング方法の第2の工程を行う。
【0055】
図4に、本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法における第1の高周波電源、第2の高周波電源、および第1の直流電源の状態を示すタイミングチャートの例を示す。また、図5(a)に、プラズマシースが厚い場合における、上部電極で負の直流電圧印加により発生した2次電子の挙動を示す模式図を、図5(b)に、プラズマシースが存在しない場合における、上部電極で負の直流電圧印加により発生した2次電子の挙動を示す模式図を示す。
【0056】
図4に示すように、プラズマエッチング方法の第2の工程では、プラズマ生成用の第1の高周波電源48を交互にオン・オフし、それに同期して第2のバイアス印加用の第2の高周波電源90を交互にオン・オフする。即ち、第1の高周波電源48によるプラズマ(グロープラズマ)が生成した状態(プラズマオン)とグロープラズマが消失した状態(プラズマオフ)とをパルス状に交互に繰り返す。
【0057】
前述の通り、プラズマが形成される際には、可変直流電源から上部電極に負の直流電圧を印加するので、プラズマ中の正イオンが上部電極に衝突して、上部電極近傍に2次電子が生成される。生成した2次電子は、可変直流電源から上部電極へ印加した直流電圧値と、プラズマ電位との電位差により、処理空間の鉛直方向下向きへと加速される。この時、可変直流電源の極性、電圧値、電流値を所望のものにすることにより、2次電子(高速電子)は半導体ウエハに照射される。しかしながら、図5(a)に示すように、プラズマ処理が進行するプラズマオンの期間は、第1の高周波電源48により生成されるプラズマのプラズマシースと、バイアス印加用の第2の高周波電源90により生成されるプラズマシースとが合わさり、非常に厚いプラズマシースSが形成される。そのため、2次電子がプラズマシースで反射されてしまう。一方、図5(b)に示すように、プラズマオフの期間は、第1の高周波電源48も、第2の高周波電源90もオフとなっている。そのため、プラズマシースはほぼ完全に消滅し、2次電子(高速電子)を半導体ウエハWに容易に到達させることができる。
【0058】
本発明ではさらに、図4に示すように、第1の直流電源50から上部電極34に、プラズマのオン・オフに同期して、プラズマオンの期間よりもプラズマオフの期間のほうが印加電圧の絶対値が大きくなるように負の直流電圧を印加する。プラズマオフの期間に、印加電圧の絶対値が大きくなるように負の直流電圧を印加することにより、より多くの2次電子をホール内に供給することができる。
【0059】
前述のプロセスにより照射・供給された2次電子は、エッチングマスク(特に、ArFフォトレジスト等の有機マスク)の組成を改質し、エッチングマスクは強化される。したがって、可変直流電源の印加電圧値及び印加電流値により上部電極近傍で生成する2次電子の量を制御し、さらに2次電子のウエハへの加速電圧を制御することで、エッチングマスクに対する所定の強化を図ることができる。このエッチングマスクのプラズマ耐性を向上させる効果は、特に、エッチングマスクとしてArFフォトレジスト等のプラズマ耐性が低い有機マスクを使用している場合に大きくなる。
【0060】
第2の工程においては、ネッキングの抑制のために保護膜がホール内部に薄く付着する、エッチング対象膜へのラジカルの付着性が低い処理ガスを使用している。しかしながら、前述のプロセスにより、ホール内に供給された2次電子は、エッチングマスク(特に、有機マスク)のプラズマ耐性を向上させることができる。そのため、HARCエッチングにおいても、エッチングマスクの残膜の低下を効果的に防ぐことができる。
【0061】
図6に、高周波電力のオン・オフにともなうプラズマのオン・オフと、半導体ウエハWへの電子の入射量の指標である半導体ウエハWへの入射電子電流(A)との関係を説明するためのグラフの一例を示す。図6に示すように、高周波(RF)電力をオフにしてプラズマオフとした期間は、入射電子電流が増加しており、プラズマオフの期間に多量の電子が供給されることがわかる。
【0062】
プラズマオンの期間に印加する直流電圧は、形成しようとするプラズマに応じた値にすればよく、例えば0〜−300V程度が例示される。また、プラズマオフの期間に印加する直流電圧は、プラズマオンの期間よりも絶対値が大きければよいが、装置の耐性を考慮すると、−2000Vよりも絶対値が小さいことが好ましい。
【0063】
プラズマオフの期間は、50μsec以下が好ましい。50μsecを超えるとエッチングに寄与していない時間が長くなって効率が低下してしまう。また、プラズマオフから、次のプラズマオフまでの期間、即ちパルスの間隔は、短くすることにより、半導体ウエハWに2次電子が流入するタイミングが増え、ホール内への2次電子の供給量が増えるため、好ましい。例えば、50μsec(20kHz)、100μsec(10kHz)等にすることができる。また、パルスの間隔は、段階的に減少させても良い。さらに、プラズマオフから次のプラズマオフまでの期間に対する、プラズマオンの期間の割合は、例えば、70%とすることができる。
【0064】
なお、第1の直流電源50からの直流電圧を、プラズマオンの期間にオフにし、プラズマオフの期間にオンにするようにしても良い。
【0065】
また、本実施形態では、アルゴンガス流量が高いことが、上部電極の近傍に生じる2次電子の量を増やすことができるため好ましく、例えば、275sccmや、550sccmとすることができる。前述の通り、通常、アスペクト比が高い領域においては、ホールに供給される2次電子の量が不足する傾向にある。そのため、プラズマエッチング工程が進行するにつれ、アルゴンガス流量を増加させ、上部電極の近傍に生じる2次電子の量を増やすことが好ましい。
【0066】
第2の処理ガスを用いた工程においても、通常、第1の高周波電源48からは27〜100MHzの周波数、例えば40MHzのプラズマ生成用の高周波電力を印加する。また、第2の高周波電源90からは400kHz〜13.56MHzの周波数、例えば3MHzのイオン引き込み用の高周波電力を印加する。
【0067】
したがって、本実施形態のように、プラズマエッチング方法の第1の工程として、先ずは付着性が高いラジカルを使用してマスク選択比を稼ぐ。続いて第2の工程として、付着性が低いラジカルを使用して、ネッキングを抑制する。この時、プラズマオンとプラズマオフの期間をパルス状に交互に形成させ、プラズマのオン・オフに同期して、プラズマオンの期間よりもプラズマオフの期間のほうが印加電圧の絶対値が大きくなるように負の直流電圧を印加し、マスク残膜の低下を効果的に防ぐ。本実施形態では、ネッキングが少ないため、エッチングレートの低下も防ぐことができる。これにより、ボトムCD(Btm CD)を確保することができる。即ち、ホール垂直形状が良好で高いアスペクト比を実現できるプラズマエッチング方法を供することができる。
【0068】
本発明は、第1の工程と第2の工程に限定されず、第3の工程を有してもよい。例えば、前述した第1の工程と第2の工程との間に、第1の処理ガスと第2の処理ガスとの間の付着性のラジカルを有する、第3の処理ガスを用いた第3の工程を有しても良い。
【0069】
≪第1の実施形態≫
次に、この実施形態の方法の効果を確認した実験について説明する。
【0070】
シリコン基板上に酸化膜が成膜され、その上にハードマスクとして窒化膜、酸化膜が順次積層し、さらに、Poly−Siが積層された被処理体を使用した。Poly−Si及びハードマスクを予めエッチング(パンチステップ)したサンプルを準備し、下記に詳細に示すエッチング条件により、プラズマエッチングを施した。
(1ステップ(前記第1の工程))
エッチングガス:C/Ar/O=80/400/60sccm
圧力:20mTorr
第1の高周波電源の出力:1700W
第2の高周波電源の出力:6600W
高周波電源のパルスの間隔:10kHz(100μsec)
第1の直流電源からの直流電圧:150V(プラズマオン時)、500V(プラズマオフ時)
エッチング時間:180sec
(2ステップ(前記第3の工程))
エッチングガス:C/C/Ar/O=40/40/400/50sccm
圧力:20mTorr
第1の高周波電源の出力:1700W
第2の高周波電源の出力:6600W
高周波電源のパルスの間隔:10kHz(100μsec)
第1の直流電源からの直流電圧:150V(プラズマオン時)、600V(プラズマオフ時)
エッチング時間:400sec(ジャストエッチ)
(3ステップ(前記第2の工程))
エッチングガス:C/Ar/O=80/550/37sccm
圧力:20mTorr
第1の高周波電源の出力:1700W
第2の高周波電源の出力:6600W
高周波電源のパルスの間隔:20kHz(50μsec)
第1の直流電源からの直流電圧:150V(プラズマオン時)、1000V(プラズマオフ時)
エッチング時間:180sec(オーバーエッチ)
この時、比較例として、3ステップ(前記第2の工程)において、第1の直流電源からの直流電圧を一定(150V)にした以外は、第1の実施形態と同様の工程により、プラズマエッチングを行った。
【0071】
図7に第1の実施形態及び比較例のプラズマエッチング方法後の、コンタクトホールの垂直形状を説明するための概略図を示す。なお、図7(a)及び(c)が第1の実施形態後の図であり、図7(b)及び(d)は比較例後の図である。
【0072】
図7(a)と図7(b)とを比較することにより、第1の実施形態と比較例のプラズマエッチング方法においては、ボウイングCDはほぼ同程度である。しかしながら、第1の実施形態の方法を使用することにより、同一エッチング時間において、ボトムCDが大きく拡大していることがわかる。即ち、ボウイングCDを同程度に抑制しつつ、ボトムCDを確保でき、コンタクトホールの垂直形状を良好にすることができることがわかる。なお、ここで言うボウイングCDとは、コンタクトホール内において、ボウイングによって最も広がった部分の径のことを指す。また、図7(c)及び図7(d)では、より精度よくエッチング形状性を把握するために、ボウイングCDとボトムCDとの比(Btm/Bow ratio)を示す。図7(c)及び図7(d)との比較においても、第1の実施形態の方法を使用することにより、ボウイングCDを抑制しつつ、ボトムCDを確保できたことがわかる。さらに、第1の実施形態の方法は比較例の方法と比して、より多くの2次電子を半導体ウエハ上に供給するため、Poly−Siマスクの残膜量が多いことがわかる。
【0073】
≪第2の実施形態≫
第1の実施形態における、3ステップ(前記第2の工程)のレシピを変更した以外は、第1の実施形態と同様の工程により、プラズマエッチングを施した。具体的なエッチング条件は、下記に示す。
(1ステップ(前記第1の工程))
エッチングガス:C/Ar/O=80/400/60sccm
圧力:20mTorr
第1の高周波電源の出力:1700W
第2の高周波電源の出力:6600W
高周波電源のパルスの間隔:10kHz(100μsec)
第1の直流電源からの直流電圧:150V(プラズマオン時)、500V(プラズマオフ時)
エッチング時間:180sec
(2ステップ(前記第3の工程))
エッチングガス:C/C/Ar/O=40/40/400/50sccm
圧力:20mTorr
第1の高周波電源の出力:1700W
第2の高周波電源の出力:6600W
高周波電源のパルスの間隔:10kHz(100μsec)
第1の直流電源からの直流電圧:150V(プラズマオン時)、600V(プラズマオフ時)
エッチング時間:400sec(ジャストエッチ)
(3ステップ(前記第2の工程))
エッチングガス:C/Ar/O=100/550/37sccm
圧力:20mTorr
第1の高周波電源の出力:1700W
第2の高周波電源の出力:6600W
高周波電源のパルスの間隔:20kHz(50μsec)
第1の直流電源からの直流電圧:150V(プラズマオン時)、1000V(プラズマオフ時)
エッチング時間:180sec(オーバーエッチ)
図8に第2の実施形態及び比較例のプラズマエッチング方法後の、コンタクトホールの垂直形状を説明するための概略図を示す。なお、図8(a)及び(c)が第2の実施形態後の図であり、図8(b)及び(d)は比較例後の図である。
【0074】
図8(a)と図8(b)とを比較することにより、第2の実施形態のプラズマエッチング方法では、比較例のプラズマエッチング方法と比して、ボウイングCDが大きく抑制されたことがわかる。さらに、第2の実施形態の方法を使用することにより、同一エッチング時間において、ボトムCDが大きく拡大していることがわかる。即ち、ボウイングCDを抑制しつつ、ボトムCDを確保でき、コンタクトホールの垂直形状を良好にすることができることがわかる。また、図8(c)及び図8(d)との比較においても、ボウイングCDを抑制しつつ、ボトムCDを確保できたことがわかる。さらに、第2の実施形態の方法でも、比較例の方法と比して、より多くの2次電子が半導体ウエハ上に供給されるため、Poly−Siマスクの残膜量が多いことがわかる。
【0075】
≪第3の実施形態≫
本発明は、前述の通り、先ず、プラズマエッチング方法の第1の工程として、付着性が高いラジカルを使用してマスク選択比を稼ぐ。続いて第2の工程として、付着性が低いラジカルを使用して、ネッキングを抑制する。この時、プラズマオンとプラズマオフの期間をパルス状に交互に形成させ、さらに、プラズマのオン・オフに同期してプラズマオンの期間よりもプラズマオフの期間のほうが印加電圧の絶対値が大きくなるように負の直流電圧を印加し、マスク残膜の低下を効果的に防ぐ。
【0076】
この時の第2の工程において、アルゴンガス流量が高いこと及び高周波電源のパルスの間隔を短くすることの効果を確認した実験について、表1を用いて説明する。
【0077】
表1に、各エッチング条件におけるマスク選択比を示す。なお、表1における、DCシンクロパルスとは、プラズマオンとプラズマオフの期間をパルス状に交互に形成させ、プラズマのオン・オフに同期して、プラズマオンの期間よりもプラズマオフの期間のほうが印加電圧の絶対値が大きくなるように、上部電極に負の直流電圧を印加した場合のエッチングのことを指す。また、シンクロパルスとは、第1の直流電源からの直流電圧を一定にし、プラズマオンとプラズマオフの期間をパルス状に交互に形成させた場合のエッチングのことを指す。
【0078】
【表1】

通常、プラズマ発生のための高周波電源の出力を増大させると、エッチングレートを上昇させることができるが、マスク選択比は低下する。しかしながら、表1においてDCシンクロパルスを使用することで、マスク選択比の低下幅が抑制できていることがわかる。これは、DCシンクロパルスを使用することにより、2次電子が大量に供給され、エッチングマスクが改質・強化されたことに起因する。
【0079】
また、表1では、アルゴンガス流量を高くすることでも、マスク選択比が高くなることがわかる。これは、アルゴンガス流量を高くすることにより、上部電極(近傍)で発生する2次電子の量が増大したことに起因する。
【0080】
さらに、表1では、高周波電源のパルスの間隔を短くすることでも、マスク選択比が高くなることがわかる。これは、グロープラズマが消失した状態での、2次電子の打ち込み回数が増えたことにより、2次電子のコンタクトホール内への供給量が増えたことに起因する。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、本発明を実施する装置は、上に例示したものに限らず、例えば高周波電源を下部電極にプラズマ生成用のもの一つ設けたものであってもよい。また、上記実施形態では、プラズマエッチングの際に第1の直流電圧を印加したが、必須ではない。さらに、プラズマオンとプラズマオフの期間をパルス状に交互に形成させる方法は、上述の第1の工程及び第3の工程においても適用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 Si基板
2 絶縁膜
3 エッチングマスク
4 ホール
5 保護膜
10 チャンバ(処理容器)
16 サセプタ(下部電極)
34 上部電極
46 第1の整合器
48 第1の高周波電源
50 第1の直流電源
66 処理ガス供給源
84 排気装置
88 第2の整合器
90 第2の高周波電源
95 電源コントローラ
100 制御部
102 記憶部
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の戴置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向して配置される上部電極を有するプラズマエッチング装置を用いたプラズマエッチング方法であって、
フルオロカーボン系ガスを含む第1の処理ガスを用いてプラズマエッチングする第1のエッチング工程と、
プラズマ生成用の高周波電力をオンにする第1条件とオフにする第2条件とを交互に繰り返しながら、前記第1条件の期間よりも前記第2条件の期間の方が印加電圧の絶対値が大きくなるように、前記上部電極に負の直流電圧を印加して、フルオロカーボン系ガスを含む第2の処理ガスを用いてプラズマエッチングするエッチング工程であって、前記第1の処理ガスのラジカルの被処理体に対する付着性は、前記第2の処理ガスのラジカルの前記被処理体に対する付着性より大きい、第2のエッチング工程と
を含む、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記第1エッチング工程と前記第2エッチング工程との間に、フルオロカーボン系ガスを含む第3の処理ガスを用いてプラズマエッチングする工程を更に含み、
前記第3の処理ガスのラジカルの前記被処理体に対する付着性は、前記第1の処理ガスのラジカルの前記被処理体に対する付着性より小さく、前記第2の処理ガスのラジカルの前記被処理体に対する付着性より大きい、
請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記第2条件の期間の間隔を段階的に減少させながらプラズマエッチングする、請求項1又は2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記第1の処理ガスに含まれるフルオロカーボン系ガスはCであり、前記第2の処理ガスに含まれるフルオロカーボン系ガスはCである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
Poly−Si層をマスクとして、酸化シリコン膜をエッチングする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−33856(P2013−33856A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169296(P2011−169296)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】