プラズマエッチング装置
【課題】エッチング時に生成されるプラズマの密度を高めることのできるプラズマエッチング装置を提供する。
【解決手段】高周波アンテナ10を有するプラズマエッチング装置であって、高周波アンテナ10の備える上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列されて互いに並列の線路部材を有している。上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bは、複数の線路部材として、配列ラインの中心側に配置された内側線路11と、内側線路11を取り巻く線路部材である外側線路12とからなる。配列ラインにおける旋回の回数が、内側線路11と外側線路12とで連続している。
【解決手段】高周波アンテナ10を有するプラズマエッチング装置であって、高周波アンテナ10の備える上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列されて互いに並列の線路部材を有している。上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bは、複数の線路部材として、配列ラインの中心側に配置された内側線路11と、内側線路11を取り巻く線路部材である外側線路12とからなる。配列ラインにおける旋回の回数が、内側線路11と外側線路12とで連続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘導放電によって生成されるプラズマを用いて対象物のエッチングを行うプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマエッチング装置の一つとして、例えば特許文献1に記載のような誘導放電プラズマ(ICP)エッチング装置が知られている。ICPエッチング装置の一例を図7に示す。図7に示されるように、ICPエッチング装置30には、円筒状の真空槽31と、真空槽31の開口を封止する円盤状の石英板QBとが設けられている。真空槽31内には、処理対象となる基板Sを保持する基板ステージ32が配置されている。基板ステージ32には、バイアス用高周波電源RF4の出力インピーダンスと負荷の入力インピーダンスとを整合させるバイアス用整合器33を介して、基板Sにバイアス電圧を印加するバイアス用高周波電源RF4が接続されている。
【0003】
真空槽31に貫通形成された排気口31aには、真空槽31内の流体を排気する排気部34が接続されているとともに、同じく真空槽31に貫通形成された供給口31bには、エッチングに用いられるガスを供給するガス供給部35が接続されている。石英板QBの上方には、高周波アンテナ36が配置されるとともに、該高周波アンテナ36の有する円柱状の入力端子36aには、アンテナ用高周波電源RF5の出力インピーダンスと負荷の入力インピーダンスとを整合させるアンテナ用整合器37と入力側可変コンデンサーVC5とを介して、アンテナ用高周波電源RF5が接続されている。他方、高周波アンテナ36の有する円柱状の出力端子36bは、出力側可変コンデンサーVC6を介して、接地電位に接続されている。
【0004】
こうした高周波アンテナ36の平面構造を図8に示す。図8に示されるように、高周波アンテナ36は、該高周波アンテナ36を構成する線路の一端であるアンテナ中心36cを始端にして巻き回した渦巻き形状である。詳述すると、図8に示される平面上において、入力端子36aの中心であるアンテナ中心36cと出力端子36bの中心とを通る直線を基準軸Aとし、アンテナ中心36cと線路上の任意の点Pとの直線距離を距離rとする。また、アンテナ中心36cと点Pとを結ぶ直線と基準軸Aとのなす角度を旋回角度θとする。高周波アンテナ36は、これらのパラメーターを用いて「r=aθ」によって表される渦巻き形状であって、線路の間隔Dが等間隔となるように、例えば上記アンテナ中心36cを始端として3回半巻き回された渦巻き形状である。
【0005】
上記ICPエッチング装置30では、高周波アンテナ36に高周波電流が供給されると、排気部34とガス供給部35とにより所定の圧力に維持された真空槽31内に、エッチングガスを用いたプラズマが生成される。そして、基板ステージ32への高周波電力の供給によって基板Sにバイアス電圧が印加されることで、プラズマ中の正イオンが基板Sの表面に引き込まれるとともに、プラズマ中に含まれるラジカルが基板Sの表面に到達する。これにより、基板Sが、その表面から所定の形状にエッチングされる。
【0006】
ここで、ICPエッチング装置30の備える高周波アンテナ36が、上述のような渦巻き形状であることから、真空槽31内における石英板QBの近傍には、該石英板QBの略全体にわたって高周波アンテナ36に沿った誘導電界が形成される。そのため、真空槽31内に形成されるプラズマの均一性が高められることにより、基板Sのエッチングの均一性も高められることになる。
【0007】
加えて、真空槽31内にプラズマが生成されるときには、高周波アンテナ36とプラズマとが、石英板QBと高周波アンテナ36との間の外気や石英板QBそのものを介して、容量的にも結合する。そして、負のバイアス電圧が、石英板QBの真空槽31内に露出する面の略全体に印加されることにより、石英板QBの近傍に生成されたプラズマ中の正イオンが、石英板QBの略全体に衝突する。これにより、基板Sのエッチング時に石英板QBに付着したエッチング生成物が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−23797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、渦巻き形状の高周波アンテナ36によれば、真空槽31内に形成されるプラズマ密度の均一性が高められとともに、石英板QBに付着したエッチング生成物を該石英板QBの略全体から取り除くことができるようにはなる。
【0010】
しかしながら、高周波アンテナ36の巻き数が多くなるほど、高周波アンテナ36の自己インダクタンスが大きくなる。これにより、高周波アンテナ36に電流が流れにくくなってしまうため、真空槽31内に生成されるプラズマの密度が低下してしまう。
【0011】
このように、渦巻き形状の高周波アンテナ36を備えるICPエッチング装置30は、均一性の高められたプラズマを生成することのできる構成ではあるものの、生成したプラズマの密度を高める構成としては未だ改良の余地を残すものである。
【0012】
なお、こうした問題は、上述のような「r=aθ」という数式にて表現される渦巻き形状をなした高周波アンテナ36に限らず、単一の線路が巻き回されたかたちの高周波アンテナであれば概ね共通するものである。
【0013】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エッチング時に生成されるプラズマの密度を高めることのできるプラズマエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、高周波アンテナを有するプラズマエッチング装置であって、前記高周波アンテナは、渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列された互いに並列の複数の線路部材を有し、前記複数の線路部材は、前記配列ラインの中心側に配置された第1の線路部材と、前記第1の線路を取り巻く線路部材である第2の線路部材とを含み、前記配列ラインにおける旋回の回数が前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とで連続していることを要旨とする。
【0015】
請求項1に記載の発明では、高周波アンテナが、渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列された互いに並列の第1の線路部材と第2の線路部材とを含み、配列ラインにおける旋回の回数が第1の線路部材と第2の線路部材との間で連続している。そのため、一つの渦巻き形状をなす高周波アンテナでありながら、その自己インダクタンスについては、該渦巻き形状よりも線路長の短い内側の第1の線路部材の自己インダクタンスと、外側の第2の線路部材の自己インダクタンスの和となることによって、高周波アンテナの自己インダクタンスを小さくすることができる。それゆえに、高周波アンテナにおいて高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナへの通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0016】
また、高周波アンテナの自己インダクタンスが小さくなることから、高周波電流の周波数が高まることで該高周波アンテナに高周波電流が流れにくくなることを抑えられる。そのため、より周波数の高い帯域の高周波電流を用いたとしても、プラズマ密度の低下を抑えることができる。それゆえに、より高い周波数の高周波電流を用いたエッチングを行うことで、高周波アンテナとプラズマの生成される空間とを隔てる誘電体に、より多くの荷電粒子を引き込むことができるようになる。したがって、誘電体に付着したエッチング生成物が除去されやすくなる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラズマエッチング装置において、前記複数の線路部材の各々における両端のうち、前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の小さい端が入力端であり、前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の大きい端が出力端であることを要旨とする。
【0018】
請求項2に記載の発明では、複数の線路部材の両端のうち、配列ライン上にて中心までの線路長の小さい端が入力端であり、配列ライン上にて中心までの線路長の大きい端が出力端である。そのため、高周波アンテナの下方では、配列ラインの最内周の端である始端から配列ラインの最外周の端である終端までにわたって、同一方向の誘導電流が流れることになる。それゆえに、高周波アンテナが、互いに離間して設けられた第1の線路部材と第2の線路部材とから構成されていたとしても、高周波アンテナに供給された高周波電流により誘導された電界が、配列ラインの全長において連続しやすくなる。したがって、第1の線路部材と第2の線路部材との間であって、高周波アンテナを形成する線路の存在しない領域においてプラズマ密度が低下することを抑えることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のプラズマエッチング装置において、前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とには、各別の高周波電源が接続されていることを要旨とする。
【0020】
請求項3に記載の発明では、第1の線路部材と第2の線路部材とに各別の高周波電源が接続されている。そのため、第1の線路部材及び第2の線路部材のそれぞれに対して互いに異なる周波数や大きさの高周波電力を供給することができる。それゆえに、第1の線路部材及び第2の線路部材の各々に対して、各線路部材の自己インダクタンス等の特性に応じた高周波電力を供給することができる。したがって、高周波アンテナに供給された高周波電力がプラズマ生成に寄与する割合を高めることで、高周波アンテナへの通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置において、前記複数の線路部材は、互いに同心の複数の円弧の各々が該円弧に隣接する他の円弧に連結された一つの渦巻き状をなす前記配列ライン上に配列されていることを要旨とする。
【0022】
請求項4に記載の発明では、複数の線路部材は、互いに同心の複数の円弧の各々が該円弧に隣接する他の円弧に連結された一つの渦巻き状をなす。一つの渦巻き状をなす配列ラインの形状としては、例えばアルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる形状が挙げられる。ただし、このような配列ラインに倣う高周波アンテナでは、高周波アンテナの中心と高周波アンテナの最外周との距離も、旋回角度に応じて変わることになる。一方、プラズマエッチング装置の処理対象となる基板の外形が円形であることが少なくないため、こうした処理対象に対してプラズマ密度の均一化を図るうえでは、高周波アンテナの外形が処理対象の外形と相似、すなわち円形であることが好ましい。この点、上述した構成によれば、複数の線路部材が互いに同心の複数の円弧上に配置されることになるため、外形が円形の処理対象に対してプラズマ密度の均一化を図ることが可能にもなる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置において、複数の前記高周波アンテナを備え、複数の前記高周波アンテナの各々は、該高周波アンテナにおける前記配列ラインの中心が同一中心線上に配置されるように並列に積み重ねられ、複数の前記高周波アンテナの各々における前記第1の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続され、複数の前記高周波アンテナの各々における前記第2の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続されていることを要旨とする。
【0024】
請求項5に記載の発明では、第1の線路部材と第2の線路部材とで構成される高周波アンテナを並列に複数段備えるようにしている。そして、各高周波アンテナにおける第1の線路部材の両端同士を接続するとともに、第2の線路部材の両端同士を接続するようにしている。つまり、複数段の高周波アンテナにおいては、複数の第1の線路部材が並列に接続されているとともに、複数の第2の線路部材も並列に接続されている。そのため、第1の線路部材及び第2の線路部材の各々において、単一の線路部材からなる場合と比較して自己インダクタンスが小さくなることから、第1の線路部材の自己インダクタンスと第2の線路部材の自己インダクタンスとの和も小さくなる。それゆえに、高周波アンテナに高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナへの通電により生成されるプラズマの密度が高められるようになる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置において、前記高周波アンテナは、前記配列ライン上に配列されて互いに並列の3つ以上の前記線路部材を有し、前記配列ラインにおける旋回の回数が互いに隣接する前記線路部材間で連続していることを要旨とする。
【0026】
請求項6に記載の発明では、高周波アンテナが3つ以上の線路部材によって構成され、且つ配列ラインにおける旋回の回数が互いに隣接する線路部材間で連続している。そのため、線路長が略同一であるという前提であれば、1つの第1の線路部材と1つの第2の線路部材とによって構成された高周波アンテナと比較して、線路部材の数量が多くなる分だけ各線路部材の線路長が短くなることから、高周波電流が高周波アンテナを流れやすくなる。ひいては、高周波アンテナへの通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のプラズマエッチング装置における一実施形態が備える高周波アンテナの斜視構造を示す斜視図。
【図2】同高周波アンテナの平面構造を示す平面図。
【図3】図2の2−2線に沿った高周波アンテナの断面構造を示す断面図。
【図4】同高周波アンテナに高周波電力を供給する電力供給系における電気的構成を示す電気回路図。
【図5】他の実施形態における高周波アンテナに高周波電力を供給する電力供給系における電気的構成を示す電気回路図。
【図6】他の実施形態における高周波アンテナの平面構造を示す平面図。
【図7】従来のプラズマエッチング装置の全体構成を示す概略図。
【図8】従来の高周波アンテナの平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のプラズマエッチング装置における一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。本実施形態のプラズマエッチング装置は、先に説明した従来のICPエッチング装置30とは、高周波アンテナと、該高周波アンテナに高周波電力を供給する高周波電源等、高周波アンテナ及びその周辺構成が異なる。そのため以下では、先のICPエッチング装置30と同じ構成には同一の符号を付して説明するとともに、こうした相違点について詳細に説明する。
[高周波アンテナの全体構造]
まず、高周波アンテナの全体斜視構造について図1を参照して説明する。
【0029】
円板状をなす石英板QBの上には、樹脂等の絶縁物からなるアンテナホルダHDが積載されている。アンテナホルダHDは、石英板QBの外径と略同じ大きさの外径を有した円板状に形成されている。このアンテナホルダHD上には、上段アンテナ10aが下段アンテナ10bに積み重ねられたかたちの多段アンテナである高周波アンテナ10が取り付けられている。上段アンテナ10aと下段アンテナ10bの各々は、石英板QBの上面と互いに平行な平面に沿った同一の形状であるとともに、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとが互いに重なるように配置されている。
【0030】
上段アンテナ10aは、中心軸Cに垂直な第1平面F1上に配置され、他方、下段アンテナ10bは、中心軸Cに垂直であって、且つ第1平面F1に平行な第2平面F2上に配置されている。上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、内側線路11と外側線路12とを有している。
[配列ラインの平面構造]
次に、高周波アンテナの平面構造について図2を参照して説明する。なお、図2においては説明の便宜上、上記アンテナホルダHDを割愛している。また、以下では、高周波アンテナ10の平面構造に関し、高周波アンテナ10を構成する2つのアンテナのうち、上段アンテナ10aの平面構造を代表して説明することとし、下段アンテナ10bの平面構造についての説明は割愛する。
【0031】
上段アンテナ10aは、内側線路11と外側線路12とを有するとともに、これら内側線路11と外側線路12とが、渦巻き状をなす1つの配列ラインL上に配列されている。ここで、上段アンテナ10aの形状の説明に先立ち、該上段アンテナ10aを構成する内側線路11と外側線路12とが配設される配列ラインLについて説明する。
【0032】
配列ラインLは、石英板QBの中心軸Cと同心である4つの円弧と、互いに隣接する円弧間を接続する3つの接続線分とからなる一つの連続するラインである。配列ラインLにおける中心軸C側の端部であるライン始端Lsと、同中心軸Cからの距離が大きい側の端部であるライン終端Ltとは、中心軸Cを通る同一の直線である基準軸A1上に、中心軸Cを挟むように位置する。
【0033】
配列ラインLに含まれる4つの円弧は、中心軸Cからの距離が小さい順から第1円弧C1、第2円弧C2、第3円弧C3、及び第4円弧C4である。また、配列ラインLに含まれる3つの接続線分は、第1円弧C1と第2円弧C2とを結ぶ線分を第1接続線分J1、第2円弧C2と第3円弧C3とを結ぶ線分を第2接続線分J2、及び第3円弧C3と第4円弧C4とを結ぶ線分を第3接続線分J3である。
【0034】
第1円弧C1は、半径が50mmの優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約220°となるように、第1円弧C1の一方の端であるライン始端Lsから右回りに形成されている。第1円弧C1の他方の端である第1終端C1eには、第1円弧C1の外側に向けて、第2円弧C2の一方の端である第2始端C2sと第1終端C1eとをつなぐ直線状の第1接続線分J1が接続されている。
【0035】
第1接続線分J1は、第1終端C1eにおける第1円弧C1の法線に対して、第1終端C1eを中心に右周りに傾いた線分であり、且つライン始端Lsと第2終端C2eとを結ぶ直線に対して、第2始端C2sを中心に左周りに傾いた線分でもある。なお、このような傾きを有した第1接続線分J1は、例えば基準軸A1とのなす角度が65°をなす線分として具体化することが可能である。ちなみに、こうした第1接続線分J1では、該第1接続線分J1の延長された直線と基準軸A1との交点が、中心軸Cではなく、中心軸Cから10mmだけライン終端Lt側に偏ることとなる。また、このような傾きを有した第1接続線分J1において、その外側の端である第2始端C2sは、上記基準軸A1から例えば95mmだけ離れた点として具体化することが可能である。
【0036】
第2円弧C2は、半径が第1円弧C1の半径よりも周回ピッチD1である60mmだけ大きい優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約310°となるように、第2円弧C2の一方の端である第2始端C2sから右回りに形成されている。第2円弧C2の他方の端である第2終端C2eには、第2円弧C2の外側に向けて、第3円弧C3の一方の端である第3始端C3sと第2終端C2eとをつなぐ直線状の第2接続線分J2が接続されている。
【0037】
第2接続線分J2は、第1接続線分J1と平行な線分であって、第2終端C2eにおける第2円弧C2の法線に対して、これもまた第1接続線分J1と同様に、第2終端C2eを中心に右周りに傾いた線分である。なお、このような傾きを有した第2接続線分J2において、その外側の端である第3始端C3sは、これもまた第1接続線分J1と同様に、上記基準軸A1から例えば95mmだけ離れた点として具体化することが可能である。
【0038】
第3円弧C3は、半径が第2円弧C2の半径よりも周回ピッチD1だけ大きい優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約320°となるように、第3円弧C3の一方の端である第3始端C3sから右回りに形成されている。第3円弧C3の他方の端である第3終端C3eには、第3円弧C3の外側に向けて、第4円弧C4の一方の端である第4始端C4sと第3終端C3eとをつなぐ直線状の第3接続線分J3が接続されている。
【0039】
第3接続線分J3は、第1接続線分J1と平行な線分であって、第3終端C3eにおける第3円弧C3の法線に対して、これもまた第1接続線分J1と同様に、第3終端C3eを中心に右周りに傾いた線分である。なお、このような傾きを有した第3接続線分J3において、その外側の端である第4始端C4sは、これもまた第1接続線分J1と同様に、上記基準軸A1から例えば95mmだけ離れた点として具体化することが可能である。
【0040】
第4円弧C4は、半径が第3円弧C3の半径よりも周回ピッチD1だけ大きい優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約335°となるように、第4円弧C4の一方の端である第4始端C4sから右回りにライン終端Ltまで形成されている。
【0041】
このように、配列ラインLは、その外縁である第4円弧C4が上記石英板QBの外縁と相似な形状であるとともに、各円弧が、隣接する他の円弧に対して各線分によって連結された1つの渦巻き状をなしている。なお、配列ラインLとは、中心軸Cの周りを旋回するにつれて該中心軸Cから遠ざかるとともに、下記条件(a)、条件(b)を満たした渦巻き形状をなす一続きのラインであればよい。
・条件(a):中心軸Cの周りを囲う3つ以上の弧状の線分を有する。例えば、上述したように、配列ラインLは、第1円弧C1、第2円弧C2、第3円弧C3、第4円弧C4を有する。
・条件(b):互いに隣接する弧状の線分間の距離が所定の関係を有する。例えば、上述したように、第1円弧C1と第2円弧C2との距離と、第2円弧C2と第3円弧C3との距離とが互いに等しく、また第2円弧C2と第3円弧C3との距離と、第3円弧C3と第4円弧C4との距離とが互いに等しい関係を有する。
【0042】
なお、本実施形態では、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsから第1終端C1eまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを1回旋回したこととする。また、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsから第2終端C2eまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを2回旋回したこととする。また、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsから第3終端C3eまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを3回旋回したこととする。そして、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsからライン終端Ltまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを4回旋回したこととする。
[高周波アンテナの平面構造]
次に、上記配列ラインLの形状を前提として、上段アンテナ10aの形状について説明する。上段アンテナ10aは、配列ラインL上のうち石英板QBの中心軸C側に配置された第1の線路部材としての内側線路11と、内側線路11を取り巻く第2の線路部材としての外側線路12とを有している。内側線路11と外側線路12との各々は、配列ラインLに沿った線路部材であって、配列ラインLおける中心軸C側と石英板QBの外縁側とに同一の幅ずつ、例えば10mmずつ拡がった線路幅を有している。
【0043】
内側線路11は、第1円弧C1の始端であるライン始端Lsから第3円弧C3と基準軸A1との交点付近までを配列ラインL上にて連続する一つの線路部材である。一方、外側線路12は、第3円弧C3と基準軸A1との交点付近から第4円弧C4の終端であるライン終端Ltまでを同じく配列ラインL上にて連続する一つの線路部材である。
【0044】
詳述すると、第1円弧C1上には、内側線路11を構成する線路部分である第1円弧線路T1が配置されている。第1円弧線路T1の両端のうちライン始端Ls側の端である内側入力端11sには、石英板QBに向けて延びる円柱状の内側入力端子1PIが連結されている。また、上述したように、基準軸A1とのなす角度が65°となる第1接続線分J1上には、内側線路11を構成して第1円弧線路T1から連続した線路部分である第1接続線路TJ1が配置されている。さらに、第2円弧C2上には、内側線路11を構成して第1接続線路TJ1から連続した線路部分である第2円弧線路T2が配置されている。
【0045】
上述したように、第1接続線分J1は、第1終端C1eにおける第1円弧C1の法線に対して、第1終端C1eを中心に右周りに傾いた線分である。それゆえに、第1円弧C1上に配置された第1円弧線路T1と第1接続線分J1上に配置された第1接続線路TJ1との接続部では、第1円弧線路T1に対して第1接続線路TJ1が屈曲するものの、第1接続線分J1が傾く分、これらのなす角度が小さくなることを抑えることが可能である。また、第1接続線分J1は、ライン始端Lsと第2始端C2sとを結ぶ直線に対して、第2始端C2sを中心に左周りに傾いた線分でもある。それゆえに、第2円弧C2上に配置された第2円弧線路T2と第1接続線分J1上に配置された第1接続線路TJ1との接続部でも、第2円弧線路T2に対して第1接続線路TJ1が屈曲するものの、第1接続線分J1が傾く分、これらのなす角度が小さくなることを抑えることが可能でもある。
【0046】
そのため、内側線路11を流れる電流が上記接続部に集中することを抑えられる。それゆえに、こうした高周波アンテナ10を備えるプラズマエッチング装置においては、高周波アンテナ10が局所的に発熱することによって該高周波アンテナ10の一部が損傷すること、また、真空槽内に形成されるプラズマ密度が上記接続部の下方の領域において他の領域よりも高くなることを抑えられる。
【0047】
第2接続線分J2上には、内側線路11を構成して第2円弧線路T2から連続した線路部分である第2接続線路TJ2が配置されている。また、第3円弧C3には、内側線路11を構成して第2接続線路TJ2から連続した線路部分である第3内側円弧線路T3aが、第3円弧C3と基準軸A1との交点付近まで配置されている。そして、第3内側円弧線路T3aの両端のうちライン終端Lt側の端である内側出力端11eには、石英板QBに向けて延びる円柱状の内側出力端子1POが連結されている。
【0048】
上述したように、第2接続線分J2もまた、第2円弧C2の法線に対して、第2終端C2eを中心に右周りに傾いた線分であり、またライン始端Lsと第3始端C3sとを結ぶ直線に対して、第3始端C3sを中心に左周りに傾いた線分でもある。それゆえに、第2円弧線路T2と第2接続線分J2との接続部や第3内側円弧線路T3aと第2接続線分J2との接続部においても、内側線路11を流れる電流が該接続部に集中することを抑えられる。
【0049】
第3円弧C3上には、外側線路12を構成する線路部分である第3外側円弧線路T3bが、第3円弧C3と基準軸A1との交点付近から第3終端C3eまで配置されている。第3外側円弧線路T3bの両端のうちライン始端Ls側の端である外側入力端12sには、石英板QBに向けて延びる円柱状の外側入力端子2PIが連結されている。
【0050】
第3接続線分J3上には、外側線路12を構成して上記第3外側円弧線路T3bから連続した線路部分である第3接続線路TJ3が配置されている。また、第4円弧C4上には、外側線路12を構成して上記第3接続線路TJ3から連続した線路部分である第4円弧線路T4が配置されている。そして、第4円弧線路T4の両端のうちライン終端Lt側の端である外側出力端12eには、石英板QBに向けて延びる円柱状の外側出力端子2POが連結されている。
【0051】
このように、内側線路11は、配列ラインLの3回目の旋回における途中までに沿った線路部材である一方、外側線路12は、配列ラインLの3回目の旋回における途中から4回目の旋回までに沿った線路部材である。つまり、内側線路11と外側線路12とは、高周波アンテナ10を配列ラインL上にて2つに分割する一方、これらは、高周波アンテナ10が中心軸Cの周りを旋回する回数を配列ラインL上にて連続させるものでもある。なお、内側線路11の内側出力端11eと外側線路12の外側入力端12sとの間の距離は、第3円弧C3上において、周回ピッチD1よりも小さく、且つアンテナ10aの線幅よりも小さい。
[高周波アンテナの断面構造]
次に、高周波アンテナの断面構造について図3を参照して説明する。なお、図3に示される断面構造とは、先の図2の2−2線、つまりライン始端Ls、石英板QBの中心軸C、及びライン終端Ltを通る直線に沿った断面構造である。
【0052】
アンテナホルダHD上には、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとからなる高周波アンテナ10が、上述のように、それぞれのアンテナ10a,10bに対する配列ラインLの中心と石英板QBの中心軸Cとが一致するように取り付けられている。これにより、上段アンテナ10aと、下段アンテナ10bとにおいては、上記各円弧線路T1〜T4及び各接続線路TJ1〜TJ3における同一線路同士が互いに上下方向で対向するように配置される。なお、上段アンテナ10aを構成する内側線路11及び外側線路12、及び下段アンテナ10bを構成する内側線路11及び外側線路12は、その幅Wが例えば20mmであり、且つその厚さTが例えば4mmである銅線からなる。また、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは、距離P3、例えば13mmだけ離間して接続されている。
【0053】
詳述すると、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとにおいては、互いの内側線路11同士が、例えば内側入力端子1PIの螺着や内側出力端子1POの螺着等によって、内側入力端子1PI及び内側出力端子1POに対し、着脱可能に接続されている。内側入力端子1PI及び内側出力端子1POは、各々の下端が、下段アンテナ10bのアンテナホルダHD側の面と同一の面を形成している一方、各々の上端は、上段アンテナ10aにおけるアンテナホルダHDとは反対側の面から突出している。そして、上段アンテナ10aの内側線路11と下段アンテナ10bの内側線路11とが、内側入力端子1PI及び内側出力端子1POを介して並列に接続されている。
【0054】
上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとにおいては、互いの外側線路12同士が、例えば外側入力端子2PIの螺着や外側出力端子2POの螺着等によって、外側入力端子2PI及び外側出力端子2POに対し、着脱可能に接続されている。外側入力端子2PI及び外側出力端子2POは、内側入力端子1PI及び内側出力端子1POと同様、各々の下端が、下段アンテナ10bのアンテナホルダHD側の面と同一の面を形成している一方、各々の上端は、上段アンテナ10aにおけるアンテナホルダHDとは反対側の面から突出している。そして、上段アンテナ10aの外側線路12と下段アンテナ10bの外側線路12とが、外側入力端子2PI及び外側出力端子2POを介して並列に接続されている。
[電力供給系の電気的構成]
次に、上記高周波アンテナ10に高周波電力を供給する電力供給系の電気的構成について図4を参照して説明する。図4に示されるように、例えば周波数が13.56MHzの高周波電力を出力するアンテナ用高周波電源RF1の出力端には、アンテナ用マッチングボックス13が接続されている。
【0055】
アンテナ用マッチングボックス13には、アンテナ用高周波電源RF1の出力端に接続される例えばπ型回路からなる第1マッチング回路13aが設けられている。この第1マッチング回路13aには、2つの内側線路11からなる並列回路と2つの外側線路12からなる並列回路とが並列に接続されている。また、2つの外側線路12からなる並列回路と第1マッチング回路13aとの間には、アンテナ用マッチングボックス13に設けられた可変コンデンサー13bが直列に接続されている。また、2つの内側線路11からなる並列回路は、内側出力用可変コンデンサーVC1を介して接地電位に接続され、また2つの外側線路12からなる並列回路は、外側出力用可変コンデンサーVC2を介して接地電位に接続されている。
[プラズマエッチング装置の作用]
次に、上述のように構成された高周波アンテナ10を備えるプラズマエッチング装置の作用について以下に説明する。
【0056】
アンテナ用高周波電源RF1が高周波電力を出力すると、アンテナ用高周波電源RF1の出力した高周波電力は、2つの内側線路11からなる並列回路と2つの外側線路12からなる並列回路とに同時に供給される。この際、アンテナ用マッチングボックス13は、第1マッチング回路13aによって、アンテナ用高周波電源RF1の出力インピーダンスと、2つの内側線路11を含む負荷の入力インピーダンスとを整合させる。また、アンテナ用マッチングボックス13は、第1マッチング回路13aと可変コンデンサー13bとによって、アンテナ用高周波電源RF1の出力インピーダンスと、2つの外側線路12を含む負荷の入力インピーダンスとを整合させる。
【0057】
また、内側出力用可変コンデンサーVC1が、内側入力端子1PI側に流れる電流量と、内側出力端子1PO側に流れる電流量とを略等しくする。また、外側出力用可変コンデンサーVC2が、外側入力端子2PI側に流れる電流量と、外側出力端子2PO側に流れる電流量とを略等しくする。
【0058】
そして、内側線路11と外側線路12とに高周波電力が並列に供給されるため、内側線路11の下方と外側線路12の下方には、各々の線路に沿った同一方向の誘導電流が流れる。この際、上述したように、配列ラインL上において、内側出力端11eと外側入力端12sとの間の距離は、周回ピッチD1よりも小さく、且つアンテナ10aの線幅よりも小さい。また、各アンテナ10a,10bでは、複数の線路部材の両端のうち、配列ラインL上にて中心軸Cまでの線路長の小さい端が入力端であり、配列ラインL上にて中心軸Cまでの線路長の大きい端が出力端である。それゆえに、高周波アンテナ10が、互いに離間して設けられた内側線路11と外側線路12とから構成されていても、高周波アンテナ10に供給された高周波電力により誘導された電界が、ライン始端Lsからライン終端Ltまで、配列ラインLの全長において連続しやすくなる。その結果、配列ラインL上において高周波アンテナ10の線路が存在しない領域、すなわち内側線路11と外側線路12との間において、プラズマ密度が低下することを抑えることができる。
【0059】
そのうえ、内側線路11及び外側線路12は、中心軸Cと互いに同心である円弧線路T1〜T4が、接続線路TJ1〜TJ3によって連結された一つの渦巻き状をなす。そのため、配列ラインLがアルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる渦巻き状とは異なり、高周波アンテナ10により生成される誘導電流が互いに同心の複数の円上を流れる。それゆえに、プラズマエッチング装置の処理対象である外形が円形の基板に対してプラズマ密度の均一化を図ることが可能にもなる。
【0060】
また、高周波アンテナ10が、渦巻き状をなす一つの配列ラインL上に配列されて互いに並列の内側線路11と外側線路12とからなるとともに、配列ラインLにおける旋回の回数が内側線路11と外側線路12との間で連続している。そのため、高周波アンテナ10は、一つの渦巻き形状をなすアンテナでありながら、その自己インダクタンスについては、該渦巻き形状よりも線路長の短い内側線路11の自己インダクタンスと、外側線路12の自己インダクタンスの和となる。そして、内側線路11及び外側線路12の各々において、これらが単一の線路部材からなる場合と比較して、自己インダクタンスが小さくなることから、内側線路11の自己インダクタンスと外側線路12の自己インダクタンスとの和も小さくなる。それゆえに、高周波アンテナ10に高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナ10への通電により生成されるプラズマの密度が高められるようになる。
【0061】
加えて、高周波アンテナ10の自己インダクタンスが小さくなることから、高周波電流の周波数が高まることで高周波アンテナ10に高周波電流が流れにくくなることを抑えられる。そのため、より周波数の高い帯域の高周波電流を用いたとしても、プラズマ密度の低下を抑えることができる。それゆえに、より高い周波数の高周波電流を用いたエッチングを行うことで、高周波アンテナ10とプラズマの生成される空間とを隔てる誘電体である石英板QBに、より多くの荷電粒子を引き込むことができるようになる。したがって、石英板QBに付着したエッチング生成物が除去されやすくなる。
[実施例1]
断面の幅が20mmであり、厚さが4mmである銅線を用いて上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bを形成し、これらのアンテナ10a,10bが、互いに13mmだけ離間するように積層された高周波アンテナ10を形成した。上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、上記配列ラインLに沿って配置される形状とした。上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは同一形状のアンテナであって、各アンテナに対応する配列ラインLの中心が同一直線上に位置するように積層した。
【0062】
上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bは、内側線路11と外側線路12とを有し、そして、内側線路11を、配列ラインLにおける上記第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、及び第2接続線分J2に沿って配置される線路とした。また、外側線路12を、同配列ラインLにおける上記第3円弧C3、第3接続線分J3、及び第4円弧C4に沿って配置される線路とした。なお、第1円弧C1、第2円弧C2、第3円弧C3、及び第4円弧C4の半径を、順に60mm、120mm、180mm、及び240mmとした。
【0063】
こうした高周波アンテナ10において2つの内側線路11の並列回路における自己インダクタンスを算出したところ、0.642μHであった。また、2つの外側線路12の並列回路における自己インダクタンスを算出したところ、2.603μHであった。そして、2つの内側線路11の並列回路における自己インダクタンスと、2つの外側線路12の並列回路における自己インダクタンスとの並列回路である高周波アンテナ10の自己インダクタンスは、0.624μHであった。
[実施例2]
上記実施例1とは以下の点が異なる高周波アンテナ10を作成した。つまり、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々を構成する内側線路11を、配列ラインLにおける第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、第2接続線分J2、第3円弧C3、及び第3接続線分J3に沿って配置される線路とした。また、外側線路12を、同配列ラインLにおける第4円弧C4に沿って配置される線路とした。
【0064】
こうした高周波アンテナ10において、2つの内側線路11の並列回路からなる自己インダクタンスを算出したところ、0.642μHであるとともに、2つの外側線路12の並列回路からなる自己インダクタンスを算出したところ、1.0002μHであった。そして、2つの内側線路11の並列回路からなる自己インダクタンスと、2つの外側線路の並列回路からなる自己インダクタンスとの並列回路である高周波アンテナの自己インダクタンスは、0.918μHであった。
[比較例]
上記実施例1とは以下の点が異なる高周波アンテナを作成した。つまり、上段アンテナ及び下段アンテナを、上記配列ラインの全長に沿った単一の線路として形成した。これら上段アンテナ及び下段アンテナからなる高周波アンテナの自己インダクタンスを算出したところ、4.123μHであった。
【0065】
このように、高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々を内側線路11及び外側線路12からなるようにすることで、同一の配列ラインL上に配置されたアンテナでありながら、単一の線路からなる高周波アンテナよりも自己インダクタンスが小さくなることが認められた。
【0066】
以上説明したように、上記実施形態のプラズマエッチング装置によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々が、渦巻き状をなす一つの配列ラインL上に配列されて互いに並列の内側線路11と外側線路12とからなるとともに、配列ラインLにおける旋回の回数が内側線路11と外側線路12との間で連続している。そのため、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bのそれぞれは、一つの渦巻き形状をなす高周波アンテナ10でありながら、その自己インダクタンスについては、該渦巻き形状よりも線路長の短い内側線路11の自己インダクタンスと、外側線路12の自己インダクタンスの和となる。これによって、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々の自己インダクタンスを小さくすることができる。それゆえに、これら上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bからなる高周波アンテナ10において高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナ10への通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0067】
(2)高周波アンテナ10の備える上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの自己インダクタンスが小さくなることから、高周波電流の周波数が高まることで該高周波アンテナ10に高周波電流が流れにくくなることを抑えられる。そのため、より周波数の高い帯域の高周波電流を用いたとしても、プラズマ密度の低下を抑えることができる。それゆえに、より高い周波数の高周波電流を用いたエッチングを行うことで、高周波アンテナ10とプラズマの生成される空間とを隔てる誘電体である石英板QBに、より多くの荷電粒子を引き込むことができるようになる。したがって、石英板QBに付着したエッチング生成物が除去されやすくなる。
【0068】
(3)各アンテナ10a,10bでは、複数の線路部材の両端のうち、配列ラインL上にて中心軸Cまでの線路長の小さい端が入力端であり、配列ラインL上にて中心軸までの線路長の大きい端が出力端である。そのため、高周波アンテナ10の下方では、配列ラインLの最内周の端であるライン始端Lsから配列ラインLの最外周の端であるライン終端Ltまでにわたって、同一方向の誘導電流が流れやすくなる。それゆえに、各アンテナ10a,10bが、互いに離間して設けられた内側線路11と外側線路12とから構成されていたとしても、各アンテナ10a,10bに供給された高周波電力により誘導された電界が、配列ラインLの全長において連続しやすくなる。したがって、内側線路11と外側線路12との間であって、各アンテナ10a,10bを形成する線路の存在しない領域においてプラズマ密度が低下することを抑えることができる。
【0069】
(4)内側線路11及び外側線路12は、互いに同心の複数の円弧線路の各々が該円弧線路に隣接する他の円弧に接続線路によって連結された一つの渦巻き状をなす。そのため、例えばアルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる渦巻き状とは異なり、内側線路11及び外側線路12が互いに同心の複数の円弧上に配置されることから、外形が円形の処理対象である基板に対してプラズマ密度の均一化を図ることが可能にもなる。
【0070】
(5)高周波アンテナ10は、内側線路11と外側線路12とで構成されるアンテナ10a,10bを並列に二段備えるようにしている。そして、各アンテナ10a,10bにおける内側線路11の両端同士を接続するとともに、外側線路12の両端同士を接続するようにしている。つまり、二段の高周波アンテナ10においては、複数の内側線路11が並列に接続されているとともに、複数の外側線路12も並列に接続されている。そのため、内側線路11及び外側線路12の各々において、単一の線路部材からなる場合と比較して自己インダクタンスが小さくなることから、内側線路11の自己インダクタンスと外側線路12の自己インダクタンスとの和も小さくなる。それゆえに、高周波アンテナ10に高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナ10への通電により生成されるプラズマの密度が高められるようになる。
【0071】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・アンテナ用高周波電源RF1の出力する高周波電力の周波数は13.56MHzに限らず、真空槽内でのプラズマの生成が可能な範囲で適宜変更可能である。
【0072】
・アンテナ用マッチングボックス13は、第1マッチング回路13aと可変コンデンサー13bとを備えるようにした。これに限らず、第1マッチング回路13aのみによって、内側線路11と外側線路12との両方の入力インピーダンスとアンテナ用高周波電源RF1の出力インピーダンスとを整合することが可能であれば、可変コンデンサー13bを設けなくともよい。
【0073】
・内側線路11と外側線路12とには、同一のアンテナ用高周波電源RF1を接続するようにしたが、図5に示されるように、2つの内側線路11と2つの外側線路12とに、各別の高周波電源を接続するようにしてもよい。
【0074】
より詳細には、同図5に示されるように、2つの内側線路11の並列回路における内側入力端子1PIには、内側線路用高周波電源RF2が、内側線路用整合器14を介して接続されている。他方、2つの内側線路11の並列回路における内側出力端子1POには、接地電位に接続された内側出力用可変コンデンサーVC3が接続されている。
【0075】
内側線路用高周波電源RF2が、例えば13.56MHzの周波数の高周波電力を出力するときに、内側線路用整合器14は、内側線路用高周波電源RF2の出力インピーダンスと、その負荷の入力インピーダンスとを整合させる。そして、内側出力用可変コンデンサーVC3は、2つの内側線路11の並列回路における内側入力端子1PI側の電流量と、内側出力端子1PO側の電流量とを略同一にする。
【0076】
また、2つの外側線路12の並列回路における外側入力端子2PIには、外側線路用高周波電源RF3が、外側線路用整合器15を介して接続されている。他方、外側線路12の並列回路における外側出力端子2POには、接地電位に接続された外側出力用可変コンデンサーVC4が接続されている。
【0077】
外側線路用高周波電源RF3が、例えば2MHzの周波数の高周波電力を出力するときに、外側線路用整合器15は、外側線路用高周波電源RF3の出力インピーダンスと、その負荷の入力インピーダンスとを整合させる。そして、外側出力用可変コンデンサーVC4は、2つの外側線路12の並列回路における外側入力端子2PI側の電流量と、外側出力端子2PO側の電流量とを略同一にする。
【0078】
このように、内側線路11に内側線路用高周波電源RF2を接続するとともに、外側線路12に外側線路用高周波電源RF3を接続するようにしていることから、内側線路用高周波電源RF2を含めた内側線路11と、外側線路用高周波電源RF3を含めた内側線路11とが並列に接続されている。つまり、2つの内側線路11からなる並列回路と2つの外側線路12からなる並列回路とが、電力供給系において並列に接続されている。
【0079】
こうした構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(6)内側線路11と外側線路12とに各別の高周波電源が接続されている。そのため、内側線路11及び外側線路12のそれぞれに対して互いに異なる周波数や大きさの高周波電力を供給することができる。それゆえに、内側線路11及び外側線路12の各々に対して、各線路部材の自己インダクタンス等の特性に応じた高周波電力を供給することができる。したがって、高周波アンテナ10に供給された高周波電力がプラズマ生成に寄与する割合を高めることで、高周波アンテナ10への通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。また、内側線路11によって形成される誘導電界と外側線路12によって形成される誘導電界との干渉を抑えることが容易なものにもなる。
【0080】
・内側線路用高周波電源RF2の出力する高周波電力の周波数を13.56MHzとし、外側線路用高周波電源RF3の出力する高周波電力の周波数を2MHzとした。内側線路用高周波電源RF2の出力する高周波電力の周波数と、外側線路用高周波電源RF3の出力する高周波電力の周波数とは、上記の組み合わせに限らず、2つの高周波電源RF2,RF3から出力される高周波電力が干渉しない周波数の組み合わせであればよい。なお、内側線路用高周波電源RF2の出力する高周波電力の周波数と、外側線路用高周波電源RF3の出力する高周波電力の周波数とには、1MHz以上の差を持たせることが好ましい。
【0081】
・内側線路11と外側線路12とに各別の高周波電源RF2,RF3を接続するときには、各高周波電源RF2,RF3が、互いに異なる周波数の高周波電力を出力するものとしたが、これら高周波電源RF2,RF3から出力される高周波電力が干渉しないのであれば、両高周波電源RF2,RF3から同一周波数の高周波電力を出力するようにしてもよい。
【0082】
・上記上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bでは、それぞれ内側線路11と外側線路12とが同一平面上に配置されるようにした。これに限らず、例えば、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bは、中心軸Cを中心とする互いに平行な半球面上に配置される構成でもよい。
【0083】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとが、平行な2平面のそれぞれに配置されるようにした。これに限らず、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bの各々が配置される2平面は、所定の角度をなすように交差する平面であってもよい。
【0084】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは同一の形状としたが、上段アンテナ10aが上記中心軸Cの周りを旋回する回数と、下段アンテナ10bが同中心軸Cの周りを旋回する回数とを異ならせるようにしてもよい。
【0085】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは、中心軸Cの周りでの旋回方向を同一としたが、上段アンテナ10aの旋回方向と下段アンテナ10bの旋回方向とは、互いに逆方向であってもよい。
【0086】
・配列ラインLを構成する円弧は、同心でなくともよい。
・配列ラインLは、4つの円弧C1〜C4と、これら円弧間を接続する3つの接続線分J1〜J3とからなるようにした。これに限らず、配列ラインLを形成する円弧の数は、任意に変更してよい。なお、配列ラインLを形成する円弧の数を変更することにより、隣接する円弧同士を接続する接続線分の数も自ずと変更される。
【0087】
・各円弧C1〜C4の半径は、最外周の円弧の大きさが石英板QBの外縁以下の大きさであれば任意に変更可能である。
・配列ラインLを構成する各円弧C1〜C4の形成される角度範囲や、各接続線分J1〜J3が、上記基準軸A1となす角度は、上述に限らず任意に変更可能である。要は、配列ラインLが、中心軸Cの周りを旋回するにつれて該中心軸Cから遠ざかる渦巻き形状をなした一続きのラインであって、中心軸Cからの距離が、配列ラインLの旋回角度に対して上記条件(a)(b)を満たした周期性を有した形状であればよい。
【0088】
・高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの外形、すなわちこれらアンテナ10a,10bの最外周である第4円弧線路T4の形状を石英板QBの外縁と相似としたが、高周波アンテナ10の外形と石英板QBの外縁とは、相似でなくともよい。例えば、石英板QBが矩形であってもよい。あるいは、各アンテナが矩形状をなして中心軸の周りを複数回旋回し、且つ該アンテナの外形が矩形であってもよい。
【0089】
・配列ラインLは、同心の4つの円弧C1〜C4と、隣接する円弧を接続する接続線分J1〜J3とからなるようにした。これに限らず、例えば、アルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる渦巻き形状でもよい。要は、配列ラインLが、中心軸Cの周りを旋回するにつれて該中心軸Cから遠ざかる渦巻き形状をなした一続きのラインであって、中心軸Cからの距離が、配列ラインLの旋回角度に対して上記条件(a)(b)を満たした周期性を有した形状であればよい。
【0090】
・石英板QBの中心軸C上に配列ラインLの中心を配置するようにしたが、配列ラインLの中心は、中心軸C上に配置しなくともよい。
・各線路の幅Wを20mmとしたが、線路の一部と他の一部とが接触しない範囲で任意に変更可能である。
【0091】
・各線路の厚さTを4mmとしたが、高周波アンテナ10を用いてのプラズマの生成が可能な範囲で任意に変更可能である。
・各アンテナ10a,10bは、配列ラインLのライン始端Lsから第3円弧C3の途中までに沿って配置される内側線路11と、内側線路11の外側を取り巻くように配列ラインLの第3円弧C3の途中から配列ラインLのライン終端Ltまでに沿って配置される外側線路12とからなるようにした。これに限らず、配列ラインLにおいて内側線路11が配置される領域と、同配列ラインLにおいて外側線路12が配置される領域とは、互いに重ならず、且つ内側線路11の旋回と外側線路12の旋回とが連続する範囲で適宜変更可能である。
【0092】
例えば、上記実施例1のように、内側線路11が、配列ラインLの第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、及び第2接続線分J2に沿って配置され、他方、外側線路12が、配列ラインL上の第3円弧C3、第3接続線分J3、及び第4円弧C4に沿って配置されるようにしてもよい。また、上記実施例2のように、内側線路11が、配列ラインLの第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、第2接続線分J2、第3円弧C3、及び第3接続線分J3に沿って配置され、他方、外側線路12が、配列ラインLの第4円弧C4に沿って配置されるようにしてもよい。
【0093】
・アンテナ10a,10bの備える各線路では、線路の端部である入力端に入力端子が連結されている。これに限らず、入力端子は、線路における端部以外の領域に連結されていてもよい。
【0094】
・アンテナ10a,10bの備える各線路では、線路の端部である出力端に出力端子が連結されている。これに限らず、出力端子は、線路における端部以外の領域に連結されていてもよい。
【0095】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとを接続する入力端子1PI,2PI及び出力端子1PO,2POは、平行に配置された上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの両方と垂直をなすように連結される。これに限らず、各端子1PI,1PO,2PI,2POは、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bと、垂直以外の所定の角度をなすようにこれらアンテナ10a,10bに連結されるようにしてもよい。
【0096】
・高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bはいずれも内側線路11と外側線路12との2つの線路からなるようにした。これに限らず、図6に示されるように、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、3つの線路からなるようにしてもよい。なお、各線路は、上記実施形態と同様、配列ラインL上に配置されている。
【0097】
より詳細には、図6に示されるように、高周波アンテナ20の備える上段アンテナ20aは、配列ラインLのライン始端Ls側から順に、内側線路21、中間線路23、及び外側線路22からなる。これら線路21〜23のそれぞれの入力端21s,22s,23s及び出力端21e,22e,23eは、上記実施形態の入力端11s,12s及び出力端11e,12eと同様の形状である。また、各入力端21s,22s,23sには、これも上記実施形態と同様の内側入力端子1PI、中間入力端子3PI、及び外側入力端子2PIが順に連結されている。他方、各出力端21e,22e,23eには、内側出力端子1PO、中間出力端子3PO、及び外側出力端子2POが順に連結されている。
【0098】
上記内側線路21は、上記第1円弧C1に沿った第1円弧線路T1、第1接続線分J1に沿った第1接続線路TJ1、及び第2円弧C2に沿った第2円弧線路T2からなる。中間線路23は、第2接続線分J2に沿った第2接続線路TJ2、第3円弧C3に沿った第3円弧線路T3、及び第3接続線分J3に沿った第3接続線路TJ3からなる。外側線路22は、第4円弧C4に沿った第4円弧線路T4からなる。
【0099】
こうした構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(7)高周波アンテナ20を構成する上段アンテナ20aが内側線路21、中間線路23、及び外側線路22の3つの線路部材によって構成され、且つ配列ラインLにおける旋回の回数が互いに隣接する線路部材間で連続している。そのため、線路長が略同一であるという前提であれば、例えば内側線路と外側線路との2つの線路部材によって構成された高周波アンテナと比較して、線路部材の数量が多くなる分だけ各線路部材の線路長が短くなることから、高周波電流が高周波アンテナを流れやすくなる。ひいては、高周波アンテナ20への通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0100】
・上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bが、4以上の線路からなるようにしてもよい。
・内側線路11及び外側線路12において、上記ライン始端Ls側の端部を高周波電力の入力される入力端とし、同線路11,12において、上記ライン終端Lt側の端部を高周波電力の出力される出力端とした。これに限らず、各線路11,12におけるライン終端Lt側の端部を入力端とし、他方、同線路11,12におけるライン始端Ls側の端部を出力端としてもよい。
【0101】
・内側線路11のライン始端Ls側の端部を入力端とし、同内側線路11のライン終端Lt側の端部を出力端とする一方、外側線路12のライン始端Ls側の端部を出力端とし、同外側線路12のライン終端Lt側の端部を入力端とするようにしてもよい。また、内側線路11のライン始端Ls側の端部を出力端とし、同内側線路11のライン終端Lt側の端部を入力端とする一方、外側線路12のライン始端Ls側の端部を入力端とし、同外側線路12のライン終端Lt側の端部を出力端とするようにしてもよい。
【0102】
・高周波アンテナ10は、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとの2つのアンテナからなるようにしたが、1つのアンテナからなるようにしてもよいし、3つ以上のアンテナからなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10,20…高周波アンテナ、10a…上段アンテナ、10b…下段アンテナ、11,21…内側線路、11e,21e…内側出力端、11s,21s…内側入力端、12,22…外側線路、12e,22e…外側出力端、12s,22s…外側入力端、13…アンテナ用マッチングボックス、14…内側線路用整合器、15…外側線路用整合器、23…中間線路、23e…中間出力端、23s…中間入力端、30…ICPエッチング装置、31…真空槽、32…基板ステージ、33…バイアス用整合器、34…排気部、35…ガス供給部、36…高周波アンテナ、36a…入力端子、36b…出力端子、36c…アンテナ中心、37…アンテナ用整合器、1PI…内側入力端子、1PO…内側出力端子、2PI…外側入力端子、2PO…外側出力端子、3PI…中間入力端子、3PO…中間出力端子、A,A1…基準軸、C…中心軸、C1…第1円弧、C1e…第1終端、C2…第2円弧、C2e…第2終端、C2s…第2始端、C3…第3円弧、C3s…第3始端、C3e…第3終端、C4…第4円弧、C4s…第4始端、D1…周回ピッチ、F1…第1平面、F2…第2平面、HD…アンテナホルダ、J1…第1接続線路、J2…第2接続線路、J3…第3接続線路、L…配列ライン、Ls…ライン始端、Lt…ライン終端、RF1,RF5…アンテナ用高周波電源、RF2…内側線路用高周波電源、RF3…外側線路用高周波電源、RF4…バイアス用高周波電源、T1…第1円弧線路、T2…第2円弧線路、T3a…第3内側円弧線路、T3b…第3外側円弧線路、T4…第4円弧線路、TJ1…第1接続線路、TJ2…第2接続線路、TJ3…第3接続線路、VC1,VC3…内側出力用可変コンデンサー、VC2,VC4…外側出力用可変コンデンサー、VC5…入力側可変コンデンサー、VC6…出力側可変コンデンサー、QB…石英板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘導放電によって生成されるプラズマを用いて対象物のエッチングを行うプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマエッチング装置の一つとして、例えば特許文献1に記載のような誘導放電プラズマ(ICP)エッチング装置が知られている。ICPエッチング装置の一例を図7に示す。図7に示されるように、ICPエッチング装置30には、円筒状の真空槽31と、真空槽31の開口を封止する円盤状の石英板QBとが設けられている。真空槽31内には、処理対象となる基板Sを保持する基板ステージ32が配置されている。基板ステージ32には、バイアス用高周波電源RF4の出力インピーダンスと負荷の入力インピーダンスとを整合させるバイアス用整合器33を介して、基板Sにバイアス電圧を印加するバイアス用高周波電源RF4が接続されている。
【0003】
真空槽31に貫通形成された排気口31aには、真空槽31内の流体を排気する排気部34が接続されているとともに、同じく真空槽31に貫通形成された供給口31bには、エッチングに用いられるガスを供給するガス供給部35が接続されている。石英板QBの上方には、高周波アンテナ36が配置されるとともに、該高周波アンテナ36の有する円柱状の入力端子36aには、アンテナ用高周波電源RF5の出力インピーダンスと負荷の入力インピーダンスとを整合させるアンテナ用整合器37と入力側可変コンデンサーVC5とを介して、アンテナ用高周波電源RF5が接続されている。他方、高周波アンテナ36の有する円柱状の出力端子36bは、出力側可変コンデンサーVC6を介して、接地電位に接続されている。
【0004】
こうした高周波アンテナ36の平面構造を図8に示す。図8に示されるように、高周波アンテナ36は、該高周波アンテナ36を構成する線路の一端であるアンテナ中心36cを始端にして巻き回した渦巻き形状である。詳述すると、図8に示される平面上において、入力端子36aの中心であるアンテナ中心36cと出力端子36bの中心とを通る直線を基準軸Aとし、アンテナ中心36cと線路上の任意の点Pとの直線距離を距離rとする。また、アンテナ中心36cと点Pとを結ぶ直線と基準軸Aとのなす角度を旋回角度θとする。高周波アンテナ36は、これらのパラメーターを用いて「r=aθ」によって表される渦巻き形状であって、線路の間隔Dが等間隔となるように、例えば上記アンテナ中心36cを始端として3回半巻き回された渦巻き形状である。
【0005】
上記ICPエッチング装置30では、高周波アンテナ36に高周波電流が供給されると、排気部34とガス供給部35とにより所定の圧力に維持された真空槽31内に、エッチングガスを用いたプラズマが生成される。そして、基板ステージ32への高周波電力の供給によって基板Sにバイアス電圧が印加されることで、プラズマ中の正イオンが基板Sの表面に引き込まれるとともに、プラズマ中に含まれるラジカルが基板Sの表面に到達する。これにより、基板Sが、その表面から所定の形状にエッチングされる。
【0006】
ここで、ICPエッチング装置30の備える高周波アンテナ36が、上述のような渦巻き形状であることから、真空槽31内における石英板QBの近傍には、該石英板QBの略全体にわたって高周波アンテナ36に沿った誘導電界が形成される。そのため、真空槽31内に形成されるプラズマの均一性が高められることにより、基板Sのエッチングの均一性も高められることになる。
【0007】
加えて、真空槽31内にプラズマが生成されるときには、高周波アンテナ36とプラズマとが、石英板QBと高周波アンテナ36との間の外気や石英板QBそのものを介して、容量的にも結合する。そして、負のバイアス電圧が、石英板QBの真空槽31内に露出する面の略全体に印加されることにより、石英板QBの近傍に生成されたプラズマ中の正イオンが、石英板QBの略全体に衝突する。これにより、基板Sのエッチング時に石英板QBに付着したエッチング生成物が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−23797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、渦巻き形状の高周波アンテナ36によれば、真空槽31内に形成されるプラズマ密度の均一性が高められとともに、石英板QBに付着したエッチング生成物を該石英板QBの略全体から取り除くことができるようにはなる。
【0010】
しかしながら、高周波アンテナ36の巻き数が多くなるほど、高周波アンテナ36の自己インダクタンスが大きくなる。これにより、高周波アンテナ36に電流が流れにくくなってしまうため、真空槽31内に生成されるプラズマの密度が低下してしまう。
【0011】
このように、渦巻き形状の高周波アンテナ36を備えるICPエッチング装置30は、均一性の高められたプラズマを生成することのできる構成ではあるものの、生成したプラズマの密度を高める構成としては未だ改良の余地を残すものである。
【0012】
なお、こうした問題は、上述のような「r=aθ」という数式にて表現される渦巻き形状をなした高周波アンテナ36に限らず、単一の線路が巻き回されたかたちの高周波アンテナであれば概ね共通するものである。
【0013】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エッチング時に生成されるプラズマの密度を高めることのできるプラズマエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、高周波アンテナを有するプラズマエッチング装置であって、前記高周波アンテナは、渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列された互いに並列の複数の線路部材を有し、前記複数の線路部材は、前記配列ラインの中心側に配置された第1の線路部材と、前記第1の線路を取り巻く線路部材である第2の線路部材とを含み、前記配列ラインにおける旋回の回数が前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とで連続していることを要旨とする。
【0015】
請求項1に記載の発明では、高周波アンテナが、渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列された互いに並列の第1の線路部材と第2の線路部材とを含み、配列ラインにおける旋回の回数が第1の線路部材と第2の線路部材との間で連続している。そのため、一つの渦巻き形状をなす高周波アンテナでありながら、その自己インダクタンスについては、該渦巻き形状よりも線路長の短い内側の第1の線路部材の自己インダクタンスと、外側の第2の線路部材の自己インダクタンスの和となることによって、高周波アンテナの自己インダクタンスを小さくすることができる。それゆえに、高周波アンテナにおいて高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナへの通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0016】
また、高周波アンテナの自己インダクタンスが小さくなることから、高周波電流の周波数が高まることで該高周波アンテナに高周波電流が流れにくくなることを抑えられる。そのため、より周波数の高い帯域の高周波電流を用いたとしても、プラズマ密度の低下を抑えることができる。それゆえに、より高い周波数の高周波電流を用いたエッチングを行うことで、高周波アンテナとプラズマの生成される空間とを隔てる誘電体に、より多くの荷電粒子を引き込むことができるようになる。したがって、誘電体に付着したエッチング生成物が除去されやすくなる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラズマエッチング装置において、前記複数の線路部材の各々における両端のうち、前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の小さい端が入力端であり、前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の大きい端が出力端であることを要旨とする。
【0018】
請求項2に記載の発明では、複数の線路部材の両端のうち、配列ライン上にて中心までの線路長の小さい端が入力端であり、配列ライン上にて中心までの線路長の大きい端が出力端である。そのため、高周波アンテナの下方では、配列ラインの最内周の端である始端から配列ラインの最外周の端である終端までにわたって、同一方向の誘導電流が流れることになる。それゆえに、高周波アンテナが、互いに離間して設けられた第1の線路部材と第2の線路部材とから構成されていたとしても、高周波アンテナに供給された高周波電流により誘導された電界が、配列ラインの全長において連続しやすくなる。したがって、第1の線路部材と第2の線路部材との間であって、高周波アンテナを形成する線路の存在しない領域においてプラズマ密度が低下することを抑えることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のプラズマエッチング装置において、前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とには、各別の高周波電源が接続されていることを要旨とする。
【0020】
請求項3に記載の発明では、第1の線路部材と第2の線路部材とに各別の高周波電源が接続されている。そのため、第1の線路部材及び第2の線路部材のそれぞれに対して互いに異なる周波数や大きさの高周波電力を供給することができる。それゆえに、第1の線路部材及び第2の線路部材の各々に対して、各線路部材の自己インダクタンス等の特性に応じた高周波電力を供給することができる。したがって、高周波アンテナに供給された高周波電力がプラズマ生成に寄与する割合を高めることで、高周波アンテナへの通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置において、前記複数の線路部材は、互いに同心の複数の円弧の各々が該円弧に隣接する他の円弧に連結された一つの渦巻き状をなす前記配列ライン上に配列されていることを要旨とする。
【0022】
請求項4に記載の発明では、複数の線路部材は、互いに同心の複数の円弧の各々が該円弧に隣接する他の円弧に連結された一つの渦巻き状をなす。一つの渦巻き状をなす配列ラインの形状としては、例えばアルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる形状が挙げられる。ただし、このような配列ラインに倣う高周波アンテナでは、高周波アンテナの中心と高周波アンテナの最外周との距離も、旋回角度に応じて変わることになる。一方、プラズマエッチング装置の処理対象となる基板の外形が円形であることが少なくないため、こうした処理対象に対してプラズマ密度の均一化を図るうえでは、高周波アンテナの外形が処理対象の外形と相似、すなわち円形であることが好ましい。この点、上述した構成によれば、複数の線路部材が互いに同心の複数の円弧上に配置されることになるため、外形が円形の処理対象に対してプラズマ密度の均一化を図ることが可能にもなる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置において、複数の前記高周波アンテナを備え、複数の前記高周波アンテナの各々は、該高周波アンテナにおける前記配列ラインの中心が同一中心線上に配置されるように並列に積み重ねられ、複数の前記高周波アンテナの各々における前記第1の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続され、複数の前記高周波アンテナの各々における前記第2の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続されていることを要旨とする。
【0024】
請求項5に記載の発明では、第1の線路部材と第2の線路部材とで構成される高周波アンテナを並列に複数段備えるようにしている。そして、各高周波アンテナにおける第1の線路部材の両端同士を接続するとともに、第2の線路部材の両端同士を接続するようにしている。つまり、複数段の高周波アンテナにおいては、複数の第1の線路部材が並列に接続されているとともに、複数の第2の線路部材も並列に接続されている。そのため、第1の線路部材及び第2の線路部材の各々において、単一の線路部材からなる場合と比較して自己インダクタンスが小さくなることから、第1の線路部材の自己インダクタンスと第2の線路部材の自己インダクタンスとの和も小さくなる。それゆえに、高周波アンテナに高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナへの通電により生成されるプラズマの密度が高められるようになる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置において、前記高周波アンテナは、前記配列ライン上に配列されて互いに並列の3つ以上の前記線路部材を有し、前記配列ラインにおける旋回の回数が互いに隣接する前記線路部材間で連続していることを要旨とする。
【0026】
請求項6に記載の発明では、高周波アンテナが3つ以上の線路部材によって構成され、且つ配列ラインにおける旋回の回数が互いに隣接する線路部材間で連続している。そのため、線路長が略同一であるという前提であれば、1つの第1の線路部材と1つの第2の線路部材とによって構成された高周波アンテナと比較して、線路部材の数量が多くなる分だけ各線路部材の線路長が短くなることから、高周波電流が高周波アンテナを流れやすくなる。ひいては、高周波アンテナへの通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のプラズマエッチング装置における一実施形態が備える高周波アンテナの斜視構造を示す斜視図。
【図2】同高周波アンテナの平面構造を示す平面図。
【図3】図2の2−2線に沿った高周波アンテナの断面構造を示す断面図。
【図4】同高周波アンテナに高周波電力を供給する電力供給系における電気的構成を示す電気回路図。
【図5】他の実施形態における高周波アンテナに高周波電力を供給する電力供給系における電気的構成を示す電気回路図。
【図6】他の実施形態における高周波アンテナの平面構造を示す平面図。
【図7】従来のプラズマエッチング装置の全体構成を示す概略図。
【図8】従来の高周波アンテナの平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のプラズマエッチング装置における一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。本実施形態のプラズマエッチング装置は、先に説明した従来のICPエッチング装置30とは、高周波アンテナと、該高周波アンテナに高周波電力を供給する高周波電源等、高周波アンテナ及びその周辺構成が異なる。そのため以下では、先のICPエッチング装置30と同じ構成には同一の符号を付して説明するとともに、こうした相違点について詳細に説明する。
[高周波アンテナの全体構造]
まず、高周波アンテナの全体斜視構造について図1を参照して説明する。
【0029】
円板状をなす石英板QBの上には、樹脂等の絶縁物からなるアンテナホルダHDが積載されている。アンテナホルダHDは、石英板QBの外径と略同じ大きさの外径を有した円板状に形成されている。このアンテナホルダHD上には、上段アンテナ10aが下段アンテナ10bに積み重ねられたかたちの多段アンテナである高周波アンテナ10が取り付けられている。上段アンテナ10aと下段アンテナ10bの各々は、石英板QBの上面と互いに平行な平面に沿った同一の形状であるとともに、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとが互いに重なるように配置されている。
【0030】
上段アンテナ10aは、中心軸Cに垂直な第1平面F1上に配置され、他方、下段アンテナ10bは、中心軸Cに垂直であって、且つ第1平面F1に平行な第2平面F2上に配置されている。上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、内側線路11と外側線路12とを有している。
[配列ラインの平面構造]
次に、高周波アンテナの平面構造について図2を参照して説明する。なお、図2においては説明の便宜上、上記アンテナホルダHDを割愛している。また、以下では、高周波アンテナ10の平面構造に関し、高周波アンテナ10を構成する2つのアンテナのうち、上段アンテナ10aの平面構造を代表して説明することとし、下段アンテナ10bの平面構造についての説明は割愛する。
【0031】
上段アンテナ10aは、内側線路11と外側線路12とを有するとともに、これら内側線路11と外側線路12とが、渦巻き状をなす1つの配列ラインL上に配列されている。ここで、上段アンテナ10aの形状の説明に先立ち、該上段アンテナ10aを構成する内側線路11と外側線路12とが配設される配列ラインLについて説明する。
【0032】
配列ラインLは、石英板QBの中心軸Cと同心である4つの円弧と、互いに隣接する円弧間を接続する3つの接続線分とからなる一つの連続するラインである。配列ラインLにおける中心軸C側の端部であるライン始端Lsと、同中心軸Cからの距離が大きい側の端部であるライン終端Ltとは、中心軸Cを通る同一の直線である基準軸A1上に、中心軸Cを挟むように位置する。
【0033】
配列ラインLに含まれる4つの円弧は、中心軸Cからの距離が小さい順から第1円弧C1、第2円弧C2、第3円弧C3、及び第4円弧C4である。また、配列ラインLに含まれる3つの接続線分は、第1円弧C1と第2円弧C2とを結ぶ線分を第1接続線分J1、第2円弧C2と第3円弧C3とを結ぶ線分を第2接続線分J2、及び第3円弧C3と第4円弧C4とを結ぶ線分を第3接続線分J3である。
【0034】
第1円弧C1は、半径が50mmの優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約220°となるように、第1円弧C1の一方の端であるライン始端Lsから右回りに形成されている。第1円弧C1の他方の端である第1終端C1eには、第1円弧C1の外側に向けて、第2円弧C2の一方の端である第2始端C2sと第1終端C1eとをつなぐ直線状の第1接続線分J1が接続されている。
【0035】
第1接続線分J1は、第1終端C1eにおける第1円弧C1の法線に対して、第1終端C1eを中心に右周りに傾いた線分であり、且つライン始端Lsと第2終端C2eとを結ぶ直線に対して、第2始端C2sを中心に左周りに傾いた線分でもある。なお、このような傾きを有した第1接続線分J1は、例えば基準軸A1とのなす角度が65°をなす線分として具体化することが可能である。ちなみに、こうした第1接続線分J1では、該第1接続線分J1の延長された直線と基準軸A1との交点が、中心軸Cではなく、中心軸Cから10mmだけライン終端Lt側に偏ることとなる。また、このような傾きを有した第1接続線分J1において、その外側の端である第2始端C2sは、上記基準軸A1から例えば95mmだけ離れた点として具体化することが可能である。
【0036】
第2円弧C2は、半径が第1円弧C1の半径よりも周回ピッチD1である60mmだけ大きい優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約310°となるように、第2円弧C2の一方の端である第2始端C2sから右回りに形成されている。第2円弧C2の他方の端である第2終端C2eには、第2円弧C2の外側に向けて、第3円弧C3の一方の端である第3始端C3sと第2終端C2eとをつなぐ直線状の第2接続線分J2が接続されている。
【0037】
第2接続線分J2は、第1接続線分J1と平行な線分であって、第2終端C2eにおける第2円弧C2の法線に対して、これもまた第1接続線分J1と同様に、第2終端C2eを中心に右周りに傾いた線分である。なお、このような傾きを有した第2接続線分J2において、その外側の端である第3始端C3sは、これもまた第1接続線分J1と同様に、上記基準軸A1から例えば95mmだけ離れた点として具体化することが可能である。
【0038】
第3円弧C3は、半径が第2円弧C2の半径よりも周回ピッチD1だけ大きい優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約320°となるように、第3円弧C3の一方の端である第3始端C3sから右回りに形成されている。第3円弧C3の他方の端である第3終端C3eには、第3円弧C3の外側に向けて、第4円弧C4の一方の端である第4始端C4sと第3終端C3eとをつなぐ直線状の第3接続線分J3が接続されている。
【0039】
第3接続線分J3は、第1接続線分J1と平行な線分であって、第3終端C3eにおける第3円弧C3の法線に対して、これもまた第1接続線分J1と同様に、第3終端C3eを中心に右周りに傾いた線分である。なお、このような傾きを有した第3接続線分J3において、その外側の端である第4始端C4sは、これもまた第1接続線分J1と同様に、上記基準軸A1から例えば95mmだけ離れた点として具体化することが可能である。
【0040】
第4円弧C4は、半径が第3円弧C3の半径よりも周回ピッチD1だけ大きい優弧であって、中心軸Cを中心にして中心角が約335°となるように、第4円弧C4の一方の端である第4始端C4sから右回りにライン終端Ltまで形成されている。
【0041】
このように、配列ラインLは、その外縁である第4円弧C4が上記石英板QBの外縁と相似な形状であるとともに、各円弧が、隣接する他の円弧に対して各線分によって連結された1つの渦巻き状をなしている。なお、配列ラインLとは、中心軸Cの周りを旋回するにつれて該中心軸Cから遠ざかるとともに、下記条件(a)、条件(b)を満たした渦巻き形状をなす一続きのラインであればよい。
・条件(a):中心軸Cの周りを囲う3つ以上の弧状の線分を有する。例えば、上述したように、配列ラインLは、第1円弧C1、第2円弧C2、第3円弧C3、第4円弧C4を有する。
・条件(b):互いに隣接する弧状の線分間の距離が所定の関係を有する。例えば、上述したように、第1円弧C1と第2円弧C2との距離と、第2円弧C2と第3円弧C3との距離とが互いに等しく、また第2円弧C2と第3円弧C3との距離と、第3円弧C3と第4円弧C4との距離とが互いに等しい関係を有する。
【0042】
なお、本実施形態では、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsから第1終端C1eまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを1回旋回したこととする。また、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsから第2終端C2eまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを2回旋回したこととする。また、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsから第3終端C3eまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを3回旋回したこととする。そして、配列ラインL上における点が、ライン始端Lsからライン終端Ltまで移動することによって、配列ラインL上における点が中心軸Cの周りを4回旋回したこととする。
[高周波アンテナの平面構造]
次に、上記配列ラインLの形状を前提として、上段アンテナ10aの形状について説明する。上段アンテナ10aは、配列ラインL上のうち石英板QBの中心軸C側に配置された第1の線路部材としての内側線路11と、内側線路11を取り巻く第2の線路部材としての外側線路12とを有している。内側線路11と外側線路12との各々は、配列ラインLに沿った線路部材であって、配列ラインLおける中心軸C側と石英板QBの外縁側とに同一の幅ずつ、例えば10mmずつ拡がった線路幅を有している。
【0043】
内側線路11は、第1円弧C1の始端であるライン始端Lsから第3円弧C3と基準軸A1との交点付近までを配列ラインL上にて連続する一つの線路部材である。一方、外側線路12は、第3円弧C3と基準軸A1との交点付近から第4円弧C4の終端であるライン終端Ltまでを同じく配列ラインL上にて連続する一つの線路部材である。
【0044】
詳述すると、第1円弧C1上には、内側線路11を構成する線路部分である第1円弧線路T1が配置されている。第1円弧線路T1の両端のうちライン始端Ls側の端である内側入力端11sには、石英板QBに向けて延びる円柱状の内側入力端子1PIが連結されている。また、上述したように、基準軸A1とのなす角度が65°となる第1接続線分J1上には、内側線路11を構成して第1円弧線路T1から連続した線路部分である第1接続線路TJ1が配置されている。さらに、第2円弧C2上には、内側線路11を構成して第1接続線路TJ1から連続した線路部分である第2円弧線路T2が配置されている。
【0045】
上述したように、第1接続線分J1は、第1終端C1eにおける第1円弧C1の法線に対して、第1終端C1eを中心に右周りに傾いた線分である。それゆえに、第1円弧C1上に配置された第1円弧線路T1と第1接続線分J1上に配置された第1接続線路TJ1との接続部では、第1円弧線路T1に対して第1接続線路TJ1が屈曲するものの、第1接続線分J1が傾く分、これらのなす角度が小さくなることを抑えることが可能である。また、第1接続線分J1は、ライン始端Lsと第2始端C2sとを結ぶ直線に対して、第2始端C2sを中心に左周りに傾いた線分でもある。それゆえに、第2円弧C2上に配置された第2円弧線路T2と第1接続線分J1上に配置された第1接続線路TJ1との接続部でも、第2円弧線路T2に対して第1接続線路TJ1が屈曲するものの、第1接続線分J1が傾く分、これらのなす角度が小さくなることを抑えることが可能でもある。
【0046】
そのため、内側線路11を流れる電流が上記接続部に集中することを抑えられる。それゆえに、こうした高周波アンテナ10を備えるプラズマエッチング装置においては、高周波アンテナ10が局所的に発熱することによって該高周波アンテナ10の一部が損傷すること、また、真空槽内に形成されるプラズマ密度が上記接続部の下方の領域において他の領域よりも高くなることを抑えられる。
【0047】
第2接続線分J2上には、内側線路11を構成して第2円弧線路T2から連続した線路部分である第2接続線路TJ2が配置されている。また、第3円弧C3には、内側線路11を構成して第2接続線路TJ2から連続した線路部分である第3内側円弧線路T3aが、第3円弧C3と基準軸A1との交点付近まで配置されている。そして、第3内側円弧線路T3aの両端のうちライン終端Lt側の端である内側出力端11eには、石英板QBに向けて延びる円柱状の内側出力端子1POが連結されている。
【0048】
上述したように、第2接続線分J2もまた、第2円弧C2の法線に対して、第2終端C2eを中心に右周りに傾いた線分であり、またライン始端Lsと第3始端C3sとを結ぶ直線に対して、第3始端C3sを中心に左周りに傾いた線分でもある。それゆえに、第2円弧線路T2と第2接続線分J2との接続部や第3内側円弧線路T3aと第2接続線分J2との接続部においても、内側線路11を流れる電流が該接続部に集中することを抑えられる。
【0049】
第3円弧C3上には、外側線路12を構成する線路部分である第3外側円弧線路T3bが、第3円弧C3と基準軸A1との交点付近から第3終端C3eまで配置されている。第3外側円弧線路T3bの両端のうちライン始端Ls側の端である外側入力端12sには、石英板QBに向けて延びる円柱状の外側入力端子2PIが連結されている。
【0050】
第3接続線分J3上には、外側線路12を構成して上記第3外側円弧線路T3bから連続した線路部分である第3接続線路TJ3が配置されている。また、第4円弧C4上には、外側線路12を構成して上記第3接続線路TJ3から連続した線路部分である第4円弧線路T4が配置されている。そして、第4円弧線路T4の両端のうちライン終端Lt側の端である外側出力端12eには、石英板QBに向けて延びる円柱状の外側出力端子2POが連結されている。
【0051】
このように、内側線路11は、配列ラインLの3回目の旋回における途中までに沿った線路部材である一方、外側線路12は、配列ラインLの3回目の旋回における途中から4回目の旋回までに沿った線路部材である。つまり、内側線路11と外側線路12とは、高周波アンテナ10を配列ラインL上にて2つに分割する一方、これらは、高周波アンテナ10が中心軸Cの周りを旋回する回数を配列ラインL上にて連続させるものでもある。なお、内側線路11の内側出力端11eと外側線路12の外側入力端12sとの間の距離は、第3円弧C3上において、周回ピッチD1よりも小さく、且つアンテナ10aの線幅よりも小さい。
[高周波アンテナの断面構造]
次に、高周波アンテナの断面構造について図3を参照して説明する。なお、図3に示される断面構造とは、先の図2の2−2線、つまりライン始端Ls、石英板QBの中心軸C、及びライン終端Ltを通る直線に沿った断面構造である。
【0052】
アンテナホルダHD上には、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとからなる高周波アンテナ10が、上述のように、それぞれのアンテナ10a,10bに対する配列ラインLの中心と石英板QBの中心軸Cとが一致するように取り付けられている。これにより、上段アンテナ10aと、下段アンテナ10bとにおいては、上記各円弧線路T1〜T4及び各接続線路TJ1〜TJ3における同一線路同士が互いに上下方向で対向するように配置される。なお、上段アンテナ10aを構成する内側線路11及び外側線路12、及び下段アンテナ10bを構成する内側線路11及び外側線路12は、その幅Wが例えば20mmであり、且つその厚さTが例えば4mmである銅線からなる。また、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは、距離P3、例えば13mmだけ離間して接続されている。
【0053】
詳述すると、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとにおいては、互いの内側線路11同士が、例えば内側入力端子1PIの螺着や内側出力端子1POの螺着等によって、内側入力端子1PI及び内側出力端子1POに対し、着脱可能に接続されている。内側入力端子1PI及び内側出力端子1POは、各々の下端が、下段アンテナ10bのアンテナホルダHD側の面と同一の面を形成している一方、各々の上端は、上段アンテナ10aにおけるアンテナホルダHDとは反対側の面から突出している。そして、上段アンテナ10aの内側線路11と下段アンテナ10bの内側線路11とが、内側入力端子1PI及び内側出力端子1POを介して並列に接続されている。
【0054】
上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとにおいては、互いの外側線路12同士が、例えば外側入力端子2PIの螺着や外側出力端子2POの螺着等によって、外側入力端子2PI及び外側出力端子2POに対し、着脱可能に接続されている。外側入力端子2PI及び外側出力端子2POは、内側入力端子1PI及び内側出力端子1POと同様、各々の下端が、下段アンテナ10bのアンテナホルダHD側の面と同一の面を形成している一方、各々の上端は、上段アンテナ10aにおけるアンテナホルダHDとは反対側の面から突出している。そして、上段アンテナ10aの外側線路12と下段アンテナ10bの外側線路12とが、外側入力端子2PI及び外側出力端子2POを介して並列に接続されている。
[電力供給系の電気的構成]
次に、上記高周波アンテナ10に高周波電力を供給する電力供給系の電気的構成について図4を参照して説明する。図4に示されるように、例えば周波数が13.56MHzの高周波電力を出力するアンテナ用高周波電源RF1の出力端には、アンテナ用マッチングボックス13が接続されている。
【0055】
アンテナ用マッチングボックス13には、アンテナ用高周波電源RF1の出力端に接続される例えばπ型回路からなる第1マッチング回路13aが設けられている。この第1マッチング回路13aには、2つの内側線路11からなる並列回路と2つの外側線路12からなる並列回路とが並列に接続されている。また、2つの外側線路12からなる並列回路と第1マッチング回路13aとの間には、アンテナ用マッチングボックス13に設けられた可変コンデンサー13bが直列に接続されている。また、2つの内側線路11からなる並列回路は、内側出力用可変コンデンサーVC1を介して接地電位に接続され、また2つの外側線路12からなる並列回路は、外側出力用可変コンデンサーVC2を介して接地電位に接続されている。
[プラズマエッチング装置の作用]
次に、上述のように構成された高周波アンテナ10を備えるプラズマエッチング装置の作用について以下に説明する。
【0056】
アンテナ用高周波電源RF1が高周波電力を出力すると、アンテナ用高周波電源RF1の出力した高周波電力は、2つの内側線路11からなる並列回路と2つの外側線路12からなる並列回路とに同時に供給される。この際、アンテナ用マッチングボックス13は、第1マッチング回路13aによって、アンテナ用高周波電源RF1の出力インピーダンスと、2つの内側線路11を含む負荷の入力インピーダンスとを整合させる。また、アンテナ用マッチングボックス13は、第1マッチング回路13aと可変コンデンサー13bとによって、アンテナ用高周波電源RF1の出力インピーダンスと、2つの外側線路12を含む負荷の入力インピーダンスとを整合させる。
【0057】
また、内側出力用可変コンデンサーVC1が、内側入力端子1PI側に流れる電流量と、内側出力端子1PO側に流れる電流量とを略等しくする。また、外側出力用可変コンデンサーVC2が、外側入力端子2PI側に流れる電流量と、外側出力端子2PO側に流れる電流量とを略等しくする。
【0058】
そして、内側線路11と外側線路12とに高周波電力が並列に供給されるため、内側線路11の下方と外側線路12の下方には、各々の線路に沿った同一方向の誘導電流が流れる。この際、上述したように、配列ラインL上において、内側出力端11eと外側入力端12sとの間の距離は、周回ピッチD1よりも小さく、且つアンテナ10aの線幅よりも小さい。また、各アンテナ10a,10bでは、複数の線路部材の両端のうち、配列ラインL上にて中心軸Cまでの線路長の小さい端が入力端であり、配列ラインL上にて中心軸Cまでの線路長の大きい端が出力端である。それゆえに、高周波アンテナ10が、互いに離間して設けられた内側線路11と外側線路12とから構成されていても、高周波アンテナ10に供給された高周波電力により誘導された電界が、ライン始端Lsからライン終端Ltまで、配列ラインLの全長において連続しやすくなる。その結果、配列ラインL上において高周波アンテナ10の線路が存在しない領域、すなわち内側線路11と外側線路12との間において、プラズマ密度が低下することを抑えることができる。
【0059】
そのうえ、内側線路11及び外側線路12は、中心軸Cと互いに同心である円弧線路T1〜T4が、接続線路TJ1〜TJ3によって連結された一つの渦巻き状をなす。そのため、配列ラインLがアルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる渦巻き状とは異なり、高周波アンテナ10により生成される誘導電流が互いに同心の複数の円上を流れる。それゆえに、プラズマエッチング装置の処理対象である外形が円形の基板に対してプラズマ密度の均一化を図ることが可能にもなる。
【0060】
また、高周波アンテナ10が、渦巻き状をなす一つの配列ラインL上に配列されて互いに並列の内側線路11と外側線路12とからなるとともに、配列ラインLにおける旋回の回数が内側線路11と外側線路12との間で連続している。そのため、高周波アンテナ10は、一つの渦巻き形状をなすアンテナでありながら、その自己インダクタンスについては、該渦巻き形状よりも線路長の短い内側線路11の自己インダクタンスと、外側線路12の自己インダクタンスの和となる。そして、内側線路11及び外側線路12の各々において、これらが単一の線路部材からなる場合と比較して、自己インダクタンスが小さくなることから、内側線路11の自己インダクタンスと外側線路12の自己インダクタンスとの和も小さくなる。それゆえに、高周波アンテナ10に高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナ10への通電により生成されるプラズマの密度が高められるようになる。
【0061】
加えて、高周波アンテナ10の自己インダクタンスが小さくなることから、高周波電流の周波数が高まることで高周波アンテナ10に高周波電流が流れにくくなることを抑えられる。そのため、より周波数の高い帯域の高周波電流を用いたとしても、プラズマ密度の低下を抑えることができる。それゆえに、より高い周波数の高周波電流を用いたエッチングを行うことで、高周波アンテナ10とプラズマの生成される空間とを隔てる誘電体である石英板QBに、より多くの荷電粒子を引き込むことができるようになる。したがって、石英板QBに付着したエッチング生成物が除去されやすくなる。
[実施例1]
断面の幅が20mmであり、厚さが4mmである銅線を用いて上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bを形成し、これらのアンテナ10a,10bが、互いに13mmだけ離間するように積層された高周波アンテナ10を形成した。上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、上記配列ラインLに沿って配置される形状とした。上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは同一形状のアンテナであって、各アンテナに対応する配列ラインLの中心が同一直線上に位置するように積層した。
【0062】
上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bは、内側線路11と外側線路12とを有し、そして、内側線路11を、配列ラインLにおける上記第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、及び第2接続線分J2に沿って配置される線路とした。また、外側線路12を、同配列ラインLにおける上記第3円弧C3、第3接続線分J3、及び第4円弧C4に沿って配置される線路とした。なお、第1円弧C1、第2円弧C2、第3円弧C3、及び第4円弧C4の半径を、順に60mm、120mm、180mm、及び240mmとした。
【0063】
こうした高周波アンテナ10において2つの内側線路11の並列回路における自己インダクタンスを算出したところ、0.642μHであった。また、2つの外側線路12の並列回路における自己インダクタンスを算出したところ、2.603μHであった。そして、2つの内側線路11の並列回路における自己インダクタンスと、2つの外側線路12の並列回路における自己インダクタンスとの並列回路である高周波アンテナ10の自己インダクタンスは、0.624μHであった。
[実施例2]
上記実施例1とは以下の点が異なる高周波アンテナ10を作成した。つまり、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々を構成する内側線路11を、配列ラインLにおける第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、第2接続線分J2、第3円弧C3、及び第3接続線分J3に沿って配置される線路とした。また、外側線路12を、同配列ラインLにおける第4円弧C4に沿って配置される線路とした。
【0064】
こうした高周波アンテナ10において、2つの内側線路11の並列回路からなる自己インダクタンスを算出したところ、0.642μHであるとともに、2つの外側線路12の並列回路からなる自己インダクタンスを算出したところ、1.0002μHであった。そして、2つの内側線路11の並列回路からなる自己インダクタンスと、2つの外側線路の並列回路からなる自己インダクタンスとの並列回路である高周波アンテナの自己インダクタンスは、0.918μHであった。
[比較例]
上記実施例1とは以下の点が異なる高周波アンテナを作成した。つまり、上段アンテナ及び下段アンテナを、上記配列ラインの全長に沿った単一の線路として形成した。これら上段アンテナ及び下段アンテナからなる高周波アンテナの自己インダクタンスを算出したところ、4.123μHであった。
【0065】
このように、高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々を内側線路11及び外側線路12からなるようにすることで、同一の配列ラインL上に配置されたアンテナでありながら、単一の線路からなる高周波アンテナよりも自己インダクタンスが小さくなることが認められた。
【0066】
以上説明したように、上記実施形態のプラズマエッチング装置によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々が、渦巻き状をなす一つの配列ラインL上に配列されて互いに並列の内側線路11と外側線路12とからなるとともに、配列ラインLにおける旋回の回数が内側線路11と外側線路12との間で連続している。そのため、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bのそれぞれは、一つの渦巻き形状をなす高周波アンテナ10でありながら、その自己インダクタンスについては、該渦巻き形状よりも線路長の短い内側線路11の自己インダクタンスと、外側線路12の自己インダクタンスの和となる。これによって、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々の自己インダクタンスを小さくすることができる。それゆえに、これら上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bからなる高周波アンテナ10において高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナ10への通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0067】
(2)高周波アンテナ10の備える上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの自己インダクタンスが小さくなることから、高周波電流の周波数が高まることで該高周波アンテナ10に高周波電流が流れにくくなることを抑えられる。そのため、より周波数の高い帯域の高周波電流を用いたとしても、プラズマ密度の低下を抑えることができる。それゆえに、より高い周波数の高周波電流を用いたエッチングを行うことで、高周波アンテナ10とプラズマの生成される空間とを隔てる誘電体である石英板QBに、より多くの荷電粒子を引き込むことができるようになる。したがって、石英板QBに付着したエッチング生成物が除去されやすくなる。
【0068】
(3)各アンテナ10a,10bでは、複数の線路部材の両端のうち、配列ラインL上にて中心軸Cまでの線路長の小さい端が入力端であり、配列ラインL上にて中心軸までの線路長の大きい端が出力端である。そのため、高周波アンテナ10の下方では、配列ラインLの最内周の端であるライン始端Lsから配列ラインLの最外周の端であるライン終端Ltまでにわたって、同一方向の誘導電流が流れやすくなる。それゆえに、各アンテナ10a,10bが、互いに離間して設けられた内側線路11と外側線路12とから構成されていたとしても、各アンテナ10a,10bに供給された高周波電力により誘導された電界が、配列ラインLの全長において連続しやすくなる。したがって、内側線路11と外側線路12との間であって、各アンテナ10a,10bを形成する線路の存在しない領域においてプラズマ密度が低下することを抑えることができる。
【0069】
(4)内側線路11及び外側線路12は、互いに同心の複数の円弧線路の各々が該円弧線路に隣接する他の円弧に接続線路によって連結された一つの渦巻き状をなす。そのため、例えばアルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる渦巻き状とは異なり、内側線路11及び外側線路12が互いに同心の複数の円弧上に配置されることから、外形が円形の処理対象である基板に対してプラズマ密度の均一化を図ることが可能にもなる。
【0070】
(5)高周波アンテナ10は、内側線路11と外側線路12とで構成されるアンテナ10a,10bを並列に二段備えるようにしている。そして、各アンテナ10a,10bにおける内側線路11の両端同士を接続するとともに、外側線路12の両端同士を接続するようにしている。つまり、二段の高周波アンテナ10においては、複数の内側線路11が並列に接続されているとともに、複数の外側線路12も並列に接続されている。そのため、内側線路11及び外側線路12の各々において、単一の線路部材からなる場合と比較して自己インダクタンスが小さくなることから、内側線路11の自己インダクタンスと外側線路12の自己インダクタンスとの和も小さくなる。それゆえに、高周波アンテナ10に高周波電流が流れやすくなり、ひいては、高周波アンテナ10への通電により生成されるプラズマの密度が高められるようになる。
【0071】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・アンテナ用高周波電源RF1の出力する高周波電力の周波数は13.56MHzに限らず、真空槽内でのプラズマの生成が可能な範囲で適宜変更可能である。
【0072】
・アンテナ用マッチングボックス13は、第1マッチング回路13aと可変コンデンサー13bとを備えるようにした。これに限らず、第1マッチング回路13aのみによって、内側線路11と外側線路12との両方の入力インピーダンスとアンテナ用高周波電源RF1の出力インピーダンスとを整合することが可能であれば、可変コンデンサー13bを設けなくともよい。
【0073】
・内側線路11と外側線路12とには、同一のアンテナ用高周波電源RF1を接続するようにしたが、図5に示されるように、2つの内側線路11と2つの外側線路12とに、各別の高周波電源を接続するようにしてもよい。
【0074】
より詳細には、同図5に示されるように、2つの内側線路11の並列回路における内側入力端子1PIには、内側線路用高周波電源RF2が、内側線路用整合器14を介して接続されている。他方、2つの内側線路11の並列回路における内側出力端子1POには、接地電位に接続された内側出力用可変コンデンサーVC3が接続されている。
【0075】
内側線路用高周波電源RF2が、例えば13.56MHzの周波数の高周波電力を出力するときに、内側線路用整合器14は、内側線路用高周波電源RF2の出力インピーダンスと、その負荷の入力インピーダンスとを整合させる。そして、内側出力用可変コンデンサーVC3は、2つの内側線路11の並列回路における内側入力端子1PI側の電流量と、内側出力端子1PO側の電流量とを略同一にする。
【0076】
また、2つの外側線路12の並列回路における外側入力端子2PIには、外側線路用高周波電源RF3が、外側線路用整合器15を介して接続されている。他方、外側線路12の並列回路における外側出力端子2POには、接地電位に接続された外側出力用可変コンデンサーVC4が接続されている。
【0077】
外側線路用高周波電源RF3が、例えば2MHzの周波数の高周波電力を出力するときに、外側線路用整合器15は、外側線路用高周波電源RF3の出力インピーダンスと、その負荷の入力インピーダンスとを整合させる。そして、外側出力用可変コンデンサーVC4は、2つの外側線路12の並列回路における外側入力端子2PI側の電流量と、外側出力端子2PO側の電流量とを略同一にする。
【0078】
このように、内側線路11に内側線路用高周波電源RF2を接続するとともに、外側線路12に外側線路用高周波電源RF3を接続するようにしていることから、内側線路用高周波電源RF2を含めた内側線路11と、外側線路用高周波電源RF3を含めた内側線路11とが並列に接続されている。つまり、2つの内側線路11からなる並列回路と2つの外側線路12からなる並列回路とが、電力供給系において並列に接続されている。
【0079】
こうした構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(6)内側線路11と外側線路12とに各別の高周波電源が接続されている。そのため、内側線路11及び外側線路12のそれぞれに対して互いに異なる周波数や大きさの高周波電力を供給することができる。それゆえに、内側線路11及び外側線路12の各々に対して、各線路部材の自己インダクタンス等の特性に応じた高周波電力を供給することができる。したがって、高周波アンテナ10に供給された高周波電力がプラズマ生成に寄与する割合を高めることで、高周波アンテナ10への通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。また、内側線路11によって形成される誘導電界と外側線路12によって形成される誘導電界との干渉を抑えることが容易なものにもなる。
【0080】
・内側線路用高周波電源RF2の出力する高周波電力の周波数を13.56MHzとし、外側線路用高周波電源RF3の出力する高周波電力の周波数を2MHzとした。内側線路用高周波電源RF2の出力する高周波電力の周波数と、外側線路用高周波電源RF3の出力する高周波電力の周波数とは、上記の組み合わせに限らず、2つの高周波電源RF2,RF3から出力される高周波電力が干渉しない周波数の組み合わせであればよい。なお、内側線路用高周波電源RF2の出力する高周波電力の周波数と、外側線路用高周波電源RF3の出力する高周波電力の周波数とには、1MHz以上の差を持たせることが好ましい。
【0081】
・内側線路11と外側線路12とに各別の高周波電源RF2,RF3を接続するときには、各高周波電源RF2,RF3が、互いに異なる周波数の高周波電力を出力するものとしたが、これら高周波電源RF2,RF3から出力される高周波電力が干渉しないのであれば、両高周波電源RF2,RF3から同一周波数の高周波電力を出力するようにしてもよい。
【0082】
・上記上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bでは、それぞれ内側線路11と外側線路12とが同一平面上に配置されるようにした。これに限らず、例えば、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bは、中心軸Cを中心とする互いに平行な半球面上に配置される構成でもよい。
【0083】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとが、平行な2平面のそれぞれに配置されるようにした。これに限らず、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bの各々が配置される2平面は、所定の角度をなすように交差する平面であってもよい。
【0084】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは同一の形状としたが、上段アンテナ10aが上記中心軸Cの周りを旋回する回数と、下段アンテナ10bが同中心軸Cの周りを旋回する回数とを異ならせるようにしてもよい。
【0085】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとは、中心軸Cの周りでの旋回方向を同一としたが、上段アンテナ10aの旋回方向と下段アンテナ10bの旋回方向とは、互いに逆方向であってもよい。
【0086】
・配列ラインLを構成する円弧は、同心でなくともよい。
・配列ラインLは、4つの円弧C1〜C4と、これら円弧間を接続する3つの接続線分J1〜J3とからなるようにした。これに限らず、配列ラインLを形成する円弧の数は、任意に変更してよい。なお、配列ラインLを形成する円弧の数を変更することにより、隣接する円弧同士を接続する接続線分の数も自ずと変更される。
【0087】
・各円弧C1〜C4の半径は、最外周の円弧の大きさが石英板QBの外縁以下の大きさであれば任意に変更可能である。
・配列ラインLを構成する各円弧C1〜C4の形成される角度範囲や、各接続線分J1〜J3が、上記基準軸A1となす角度は、上述に限らず任意に変更可能である。要は、配列ラインLが、中心軸Cの周りを旋回するにつれて該中心軸Cから遠ざかる渦巻き形状をなした一続きのラインであって、中心軸Cからの距離が、配列ラインLの旋回角度に対して上記条件(a)(b)を満たした周期性を有した形状であればよい。
【0088】
・高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの外形、すなわちこれらアンテナ10a,10bの最外周である第4円弧線路T4の形状を石英板QBの外縁と相似としたが、高周波アンテナ10の外形と石英板QBの外縁とは、相似でなくともよい。例えば、石英板QBが矩形であってもよい。あるいは、各アンテナが矩形状をなして中心軸の周りを複数回旋回し、且つ該アンテナの外形が矩形であってもよい。
【0089】
・配列ラインLは、同心の4つの円弧C1〜C4と、隣接する円弧を接続する接続線分J1〜J3とからなるようにした。これに限らず、例えば、アルキメデスの螺旋、双曲螺旋、対数螺旋のように、中心からの距離が連続的に大きくなる渦巻き形状でもよい。要は、配列ラインLが、中心軸Cの周りを旋回するにつれて該中心軸Cから遠ざかる渦巻き形状をなした一続きのラインであって、中心軸Cからの距離が、配列ラインLの旋回角度に対して上記条件(a)(b)を満たした周期性を有した形状であればよい。
【0090】
・石英板QBの中心軸C上に配列ラインLの中心を配置するようにしたが、配列ラインLの中心は、中心軸C上に配置しなくともよい。
・各線路の幅Wを20mmとしたが、線路の一部と他の一部とが接触しない範囲で任意に変更可能である。
【0091】
・各線路の厚さTを4mmとしたが、高周波アンテナ10を用いてのプラズマの生成が可能な範囲で任意に変更可能である。
・各アンテナ10a,10bは、配列ラインLのライン始端Lsから第3円弧C3の途中までに沿って配置される内側線路11と、内側線路11の外側を取り巻くように配列ラインLの第3円弧C3の途中から配列ラインLのライン終端Ltまでに沿って配置される外側線路12とからなるようにした。これに限らず、配列ラインLにおいて内側線路11が配置される領域と、同配列ラインLにおいて外側線路12が配置される領域とは、互いに重ならず、且つ内側線路11の旋回と外側線路12の旋回とが連続する範囲で適宜変更可能である。
【0092】
例えば、上記実施例1のように、内側線路11が、配列ラインLの第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、及び第2接続線分J2に沿って配置され、他方、外側線路12が、配列ラインL上の第3円弧C3、第3接続線分J3、及び第4円弧C4に沿って配置されるようにしてもよい。また、上記実施例2のように、内側線路11が、配列ラインLの第1円弧C1、第1接続線分J1、第2円弧C2、第2接続線分J2、第3円弧C3、及び第3接続線分J3に沿って配置され、他方、外側線路12が、配列ラインLの第4円弧C4に沿って配置されるようにしてもよい。
【0093】
・アンテナ10a,10bの備える各線路では、線路の端部である入力端に入力端子が連結されている。これに限らず、入力端子は、線路における端部以外の領域に連結されていてもよい。
【0094】
・アンテナ10a,10bの備える各線路では、線路の端部である出力端に出力端子が連結されている。これに限らず、出力端子は、線路における端部以外の領域に連結されていてもよい。
【0095】
・上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとを接続する入力端子1PI,2PI及び出力端子1PO,2POは、平行に配置された上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの両方と垂直をなすように連結される。これに限らず、各端子1PI,1PO,2PI,2POは、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bと、垂直以外の所定の角度をなすようにこれらアンテナ10a,10bに連結されるようにしてもよい。
【0096】
・高周波アンテナ10を構成する上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bはいずれも内側線路11と外側線路12との2つの線路からなるようにした。これに限らず、図6に示されるように、上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bの各々は、3つの線路からなるようにしてもよい。なお、各線路は、上記実施形態と同様、配列ラインL上に配置されている。
【0097】
より詳細には、図6に示されるように、高周波アンテナ20の備える上段アンテナ20aは、配列ラインLのライン始端Ls側から順に、内側線路21、中間線路23、及び外側線路22からなる。これら線路21〜23のそれぞれの入力端21s,22s,23s及び出力端21e,22e,23eは、上記実施形態の入力端11s,12s及び出力端11e,12eと同様の形状である。また、各入力端21s,22s,23sには、これも上記実施形態と同様の内側入力端子1PI、中間入力端子3PI、及び外側入力端子2PIが順に連結されている。他方、各出力端21e,22e,23eには、内側出力端子1PO、中間出力端子3PO、及び外側出力端子2POが順に連結されている。
【0098】
上記内側線路21は、上記第1円弧C1に沿った第1円弧線路T1、第1接続線分J1に沿った第1接続線路TJ1、及び第2円弧C2に沿った第2円弧線路T2からなる。中間線路23は、第2接続線分J2に沿った第2接続線路TJ2、第3円弧C3に沿った第3円弧線路T3、及び第3接続線分J3に沿った第3接続線路TJ3からなる。外側線路22は、第4円弧C4に沿った第4円弧線路T4からなる。
【0099】
こうした構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(7)高周波アンテナ20を構成する上段アンテナ20aが内側線路21、中間線路23、及び外側線路22の3つの線路部材によって構成され、且つ配列ラインLにおける旋回の回数が互いに隣接する線路部材間で連続している。そのため、線路長が略同一であるという前提であれば、例えば内側線路と外側線路との2つの線路部材によって構成された高周波アンテナと比較して、線路部材の数量が多くなる分だけ各線路部材の線路長が短くなることから、高周波電流が高周波アンテナを流れやすくなる。ひいては、高周波アンテナ20への通電によって生成されるプラズマの密度を高めることができる。
【0100】
・上段アンテナ10a及び下段アンテナ10bが、4以上の線路からなるようにしてもよい。
・内側線路11及び外側線路12において、上記ライン始端Ls側の端部を高周波電力の入力される入力端とし、同線路11,12において、上記ライン終端Lt側の端部を高周波電力の出力される出力端とした。これに限らず、各線路11,12におけるライン終端Lt側の端部を入力端とし、他方、同線路11,12におけるライン始端Ls側の端部を出力端としてもよい。
【0101】
・内側線路11のライン始端Ls側の端部を入力端とし、同内側線路11のライン終端Lt側の端部を出力端とする一方、外側線路12のライン始端Ls側の端部を出力端とし、同外側線路12のライン終端Lt側の端部を入力端とするようにしてもよい。また、内側線路11のライン始端Ls側の端部を出力端とし、同内側線路11のライン終端Lt側の端部を入力端とする一方、外側線路12のライン始端Ls側の端部を入力端とし、同外側線路12のライン終端Lt側の端部を出力端とするようにしてもよい。
【0102】
・高周波アンテナ10は、上段アンテナ10aと下段アンテナ10bとの2つのアンテナからなるようにしたが、1つのアンテナからなるようにしてもよいし、3つ以上のアンテナからなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10,20…高周波アンテナ、10a…上段アンテナ、10b…下段アンテナ、11,21…内側線路、11e,21e…内側出力端、11s,21s…内側入力端、12,22…外側線路、12e,22e…外側出力端、12s,22s…外側入力端、13…アンテナ用マッチングボックス、14…内側線路用整合器、15…外側線路用整合器、23…中間線路、23e…中間出力端、23s…中間入力端、30…ICPエッチング装置、31…真空槽、32…基板ステージ、33…バイアス用整合器、34…排気部、35…ガス供給部、36…高周波アンテナ、36a…入力端子、36b…出力端子、36c…アンテナ中心、37…アンテナ用整合器、1PI…内側入力端子、1PO…内側出力端子、2PI…外側入力端子、2PO…外側出力端子、3PI…中間入力端子、3PO…中間出力端子、A,A1…基準軸、C…中心軸、C1…第1円弧、C1e…第1終端、C2…第2円弧、C2e…第2終端、C2s…第2始端、C3…第3円弧、C3s…第3始端、C3e…第3終端、C4…第4円弧、C4s…第4始端、D1…周回ピッチ、F1…第1平面、F2…第2平面、HD…アンテナホルダ、J1…第1接続線路、J2…第2接続線路、J3…第3接続線路、L…配列ライン、Ls…ライン始端、Lt…ライン終端、RF1,RF5…アンテナ用高周波電源、RF2…内側線路用高周波電源、RF3…外側線路用高周波電源、RF4…バイアス用高周波電源、T1…第1円弧線路、T2…第2円弧線路、T3a…第3内側円弧線路、T3b…第3外側円弧線路、T4…第4円弧線路、TJ1…第1接続線路、TJ2…第2接続線路、TJ3…第3接続線路、VC1,VC3…内側出力用可変コンデンサー、VC2,VC4…外側出力用可変コンデンサー、VC5…入力側可変コンデンサー、VC6…出力側可変コンデンサー、QB…石英板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波アンテナを有するプラズマエッチング装置であって、
前記高周波アンテナは、
渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列された互いに並列の複数の線路部材を有し、
前記複数の線路部材は、
前記配列ラインの中心側に配置された第1の線路部材と、
前記第1の線路部材を取り巻く線路部材である第2の線路部材とを含み、
前記配列ラインにおける旋回の回数が前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とで連続している
ことを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項2】
前記複数の線路部材の各々における両端のうち、
前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の小さい端が入力端であり、
前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の大きい端が出力端である
請求項1に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とには、各別の高周波電源が接続されている
請求項1又は2に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項4】
前記複数の線路部材は、
互いに同心の複数の円弧の各々が該円弧に隣接する他の円弧に連結された一つの渦巻き状をなす前記配列ライン上に配列されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項5】
複数の前記高周波アンテナを備え、
複数の前記高周波アンテナの各々は、該高周波アンテナにおける前記配列ラインの中心が同一中心線上に配置されるように並列に積み重ねられ、
複数の前記高周波アンテナの各々における前記第1の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続され、
複数の前記高周波アンテナの各々における前記第2の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続されている
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項6】
前記高周波アンテナは、
前記配列ライン上に配列されて互いに並列の3つ以上の前記線路部材を有し、
前記配列ラインにおける旋回の回数が互いに隣接する前記線路部材間で連続している
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項1】
高周波アンテナを有するプラズマエッチング装置であって、
前記高周波アンテナは、
渦巻き状をなす一つの配列ライン上に配列された互いに並列の複数の線路部材を有し、
前記複数の線路部材は、
前記配列ラインの中心側に配置された第1の線路部材と、
前記第1の線路部材を取り巻く線路部材である第2の線路部材とを含み、
前記配列ラインにおける旋回の回数が前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とで連続している
ことを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項2】
前記複数の線路部材の各々における両端のうち、
前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の小さい端が入力端であり、
前記配列ライン上にて該配列ラインの中心までの線路長の大きい端が出力端である
請求項1に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記第1の線路部材と前記第2の線路部材とには、各別の高周波電源が接続されている
請求項1又は2に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項4】
前記複数の線路部材は、
互いに同心の複数の円弧の各々が該円弧に隣接する他の円弧に連結された一つの渦巻き状をなす前記配列ライン上に配列されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項5】
複数の前記高周波アンテナを備え、
複数の前記高周波アンテナの各々は、該高周波アンテナにおける前記配列ラインの中心が同一中心線上に配置されるように並列に積み重ねられ、
複数の前記高周波アンテナの各々における前記第1の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続され、
複数の前記高周波アンテナの各々における前記第2の線路部材の両端は、隣接する他の前記高周波アンテナにおける前記第1の線路部材の両端と互いに着脱可能に接続されている
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項6】
前記高周波アンテナは、
前記配列ライン上に配列されて互いに並列の3つ以上の前記線路部材を有し、
前記配列ラインにおける旋回の回数が互いに隣接する前記線路部材間で連続している
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−248578(P2012−248578A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117224(P2011−117224)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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