説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】被印刷物として量産効率の高い多面取り基板を用いて2枚同時にスクリーン印刷を行う場合に、単純な構成の位置決め機構を用いて精度良く被印刷物の位置決めを行うことを可能とし、もって、塗布膜の位置精度が良好な、量産性に優れたパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数枚の被印刷物10へ同時にスクリーン印刷する工程を備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、このスクリーン印刷する工程が、印刷ステージに被印刷物10を位置決め固定する際、被印刷物10の間に位置する位置決めユニット19aをそれぞれの被印刷物10の共通の位置基準として用いて位置決めを行う工程を備えることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマテレビや大型モニター等に用いられるプラズマディスプレイパネル(以下、パネルという)の製造方法に関し、特に、ペースト状の材料を、スクリーン版を介してガラス基板などの被印刷物に転写するスクリーン印刷技術を用いることで、電極や誘電体等のパネル構造物を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷は、ポスターや看板などの商業的な用途からプリント基板やプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどの電子産業への用途まで、広く普及している。近年、電子産業用途への普及に伴い、印刷対象への均一な成膜が要求されるため、より高精度な技術へと発展している。さらに、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイのように大型デバイスへの用途を考えた場合、ディスプレイ自体の大型化や、複数の素材を同時に生産できる大きな基板への一括成膜化が進んでいるため、印刷面積は飛躍的に大きくなっている。特にパネルにおいては、パネル構造物の多くをスクリーン印刷によって作製していることに加え、大型化、多面取り化が急速に進んでいるため、大型スクリーン印刷の需要が増えている。
【0003】
プラズマディスプレイは、放電現象を利用したディスプレイであるが、各々の画素に放電空間を形成し、電圧印加を可能とする「パネル」と、各々の画素における放電による発光を制御して映像表示を可能とする「駆動回路」を備える。
【0004】
代表的なパネルの方式である交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、フロート法による硼珪酸ナトリウム系ガラスの前面ガラス基板上に、透明電極およびバス電極からなる1対の走査電極および維持電極(表示電極対)および遮光を行うブラックストライプがそれぞれ平行に複数対形成され、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とが形成されている。背面板は、排気および放電ガス導入用の細孔を設けた背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらデータ電極を覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層がそれぞれ形成されている。
【0005】
前面板と背面板とは表示電極対とデータ電極とが立体交差するように対向配置され、その周囲がシールフリットにより密封されるとともに放電ガス(例えば、Ne−Xeの場合で約530hPa〜800hPaの圧力)が導入されている。このような構成のパネルでは、表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成され、各電極に映像信号にもとづく駆動電圧をそれぞれ印加することによって各放電セル内で放電を発生させ、放電により発生する紫外線でR、G、Bの各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0006】
この前面板および背面板の構造物の作製方法として、スクリーン印刷が多く用いられている。具体的には、感光性ペーストをスクリーン印刷により塗布形成した後にフォトリソグラフィ法によりパターン形成される前面板のバス電極およびブラックストライプや、背面板のデータ電極および隔壁などのほかに、ベタ膜形成される前面板の誘電体および背面板の誘電体などが挙げられる。なお、前面板の保護層や背面板の蛍光体層および前面板と背面板の封止に用いるシールフリットに至るまでもスクリーン印刷を用いて形成することは可能である。つまりは、パネルのほとんどの構造体の形成にスクリーン印刷を用いることが可能である。
【0007】
図4は、従来のスクリーン印刷における動作を概略的に示す概略断面図である。なお、図4はスキージ16およびスクレッパー15の進行方向と平行な方向から見た断面概略図であり、図4(a)はペーストコート時の状態を表す断面概略図、図4(b)はプリント時の状態を表す断面概略図である。
【0008】
スクリーン印刷は、ガラス基板などの被印刷物10にスクリーン版を介してペースト11を転写して塗布膜を形成する技術である。
【0009】
スクリーン版は、ポリスチレンやSUSなどからなる糸を織って作製した紗12を、版枠13の内側に面内のテンションが出来るだけ均一となるように張り、印刷領域以外を乳剤14で保護することで作製する。
【0010】
塗布膜の形成方法としては、まずは図4(a)に示すようなコート動作を行う。すなわち、スクリーン版の上にペースト11を乗せ、紗12が被印刷物10に接触しない状態でスクレッパー15をコート方向に走行させて、印刷領域の紗12の糸と糸の隙間にペースト11を充填する。
【0011】
ここで、被印刷物10の位置固定方法について、図4(a)および図4(b)を用いて説明する。
【0012】
まず、固定位置決めユニット19および押し当て位置決めユニット20を上昇させ被印刷物10が突き当てられる状態にすると共に、被印刷物10を印刷ステージ17に乗せる。このとき押し当て位置決めユニット20は、被印刷物10から離れた位置で上昇させる。
【0013】
次に、押し当て位置決めユニット20を被印刷物10に押し当て、被印刷物10の一方の側を固定位置決めユニット19に接触させる。
【0014】
次に、被印刷物10の裏面を吸着して最終的な位置固定をした後、固定位置決めユニット19および押し当て位置決めユニット20を、助走板18の表面と同等の垂直位置もしくはそれ以下まで下降させることで、次に説明するプリント動作におけるスキージ16の走行を妨げない状態とする。以上により、被印刷物10の位置固定が完了する。
【0015】
次に、図4(b)に示すようなプリント動作を行う。すなわち、スクリーン版と被印刷物10の間に隙間を設けた状態でスキージ16を長手方向にほぼ一定の圧力で押し当てて紗12と被印刷物10を接触させた状態で印刷方向に走行することで、紗12の糸と糸の隙間に充填されたペースト11を被印刷物10に接触させ転写して塗布膜を形成する。
【0016】
なお、被印刷物10は印刷ステージ17上に固定され、被印刷物10の外周はSUSなどの金属製もしくはポリエチレンなどのプラスチック製の助走板18を設置し、少なくともスキージ16の走行範囲で被印刷物10と印刷ステージ17の段差を補っている。これは、プリント動作時にスキージ16を押込んだ際、被印刷物10と印刷ステージ17に段差があると被印刷物10の端部でスクリーン版が極端に折り曲がるためスキージ16およびスクリーン版に大きな負荷が生じるため、スクリーン版の寿命が短くなるためであり、この負荷を軽減するために、被印刷物10と同等以下の板厚を有する助走板18を設置するのが一般的である。スクリーン印刷装置は、これらの一連のスクリーン印刷の動作を行うことを可能とする装置である。
【0017】
ここで、被印刷物の固定に関して、図5に、従来のスクリーン印刷における被印刷物の位置決め方法を概略的に示す概略平面図を用いて、より詳細に説明する。
【0018】
図5は1枚の被印刷物10を印刷ステージ17上に設置したときの概略平面図であり、図4(b)における被印刷物10が設置された状態を示すものである。
【0019】
被印刷物10には、その上にスクリーン印刷によって形成するパターン要素の寸法基準となる基準辺21が存在し、被印刷物10上に形成されるパターン要素の位置などは、基準辺21を基準として位置補正されることで、高精度な寸法精度が確保される。特に被印刷物10のサイズが大きくなると、寸法誤差は大きくなるため、基準辺21を基準に、被印刷物10とその上に形成するパターン要素との相対位置などの寸法を合わせることは、寸法精度を高精度に確保する上で重要となる。
【0020】
具体的には、スクリーン印刷における被印刷物10の位置決めを行う際は、印刷ステージ上の水平方向位置が固定である固定位置決めユニット19に被印刷物10の基準辺21を接触させる。固定位置決めユニット19の数は、非印刷物10の基準辺21のうちの一辺に2箇所、もう一辺に1箇所の合計3箇所配置し、各々の固定位置決めユニット19の対向する辺に押し当て位置決めユニット20を配置することで、被印刷物10の位置は繰り返し同一の場所に固定されることとなる。
【0021】
また助走板18は、固定位置決めユニット19および押し当て位置決めユニット20の可動範囲を切り欠いたものが用いられる。ここで固定位置決めユニット19および押し当て位置決めユニット20の基板と接触する部分は、樹脂などからなるボールやコロなどの摩擦減少機構により形成されることにより、接触箇所が点接触となるために、より精度が得られやすくなる。
【0022】
次に、印刷ステージ上に固定された被印刷物10にスクリーン版を位置合わせする。被印刷物10およびスクリーン版にあらかじめ位置決め用のマーカーが形成されている場合は、CCDカメラなどにより読み取った面内数点の被印刷物10のマーカーとスクリーン版のマーカーのずれが最も少なくなるようにスクリーン版もしくは印刷ステージを位置補正して固定する。また、被印刷物10に位置決め用のマーカーが形成されていない場合は、基準辺21を含む基板の端面をスクリーン版に形成された端面位置決め用マーカーに合わせるように位置補正する(例えば、特許文献1参照)。
【0023】
以上の方法で位置決めした被印刷物10およびスクリーン版で印刷することにより、パターンずれの少ない良好な塗布膜を得ることが可能となり、そしてそのようにして得られた塗布膜を乾燥させ、ペースト11中の溶剤成分を除去し、パターンを形成する場合には、乾燥を行った塗布膜を露光・感光・現像により、不要部分を除去し、そして、焼成することでパネル構成要素を形成し、パターンを形成しない場合は、焼成のみを行いパネル構成要素を形成する。
【0024】
また、昨今、パネルの量産において効率よくパネルを作製するために、被印刷物を多面取り基板とすることで低コスト化を図る手段が一般的に使われているが、その際には一度にスクリーン印刷する面積が大きくなるため、スクリーン版も大型化しており、一辺が3mを超えるスクリーン版も多く用いられている。
【0025】
そして、被印刷物の大型化が進む一方で、別の量産効率を高める手段として、複数枚の被印刷物を同時にスクリーン印刷する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平4−218235号公報
【特許文献2】特開2004−160732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ところで、被印刷物としては、多面取り基板ではなく構成単位サイズの基板を複数枚並べる方法と、多面取り基板を複数枚並べる方法が考えられる。しかしながら、一つのスクリーン版に対して被印刷物が複数の場合、被印刷物とスクリーン版の位置合わせはより複雑となり、精度を維持するのが困難となる。
【0027】
複数の被印刷物の印刷ステージへの位置決め方法として、被印刷物の搬入前に1枚ごとに位置調整をして搬入する方法があるが、被印刷物が大型化すると各々の被印刷物に対する位置調整機構が大型化すると共に、位置調整した後に印刷ステージまで移動することになるため、位置調整後の搬入手段にも高い精度が要求されることとなり、設備が巨大化すると共に設備コストが大幅に増大することとなる。
【0028】
また、印刷ステージ上で位置調整方法を単純に並べる方法では、1枚の被印刷物は精度良く固定できるが、各々の被印刷物同士の相対位置を共通のスクリーン版のパターンに対して精度良く位置合わせすることが困難となる。
【0029】
また、印刷ステージを個別に動かしてスクリーン版のパターンに位置合わせする方法も考えられるが、各々の印刷ステージの間隔をある程度は取る必要が生じるため、被印刷物間の距離が長くなり、スクリーン版やスクリーン印刷装置自体も必要以上に大型化することとなるうえ、設備が煩雑となり設備コストが増大することとなる。
【0030】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、被印刷物として量産効率の高い多面取り基板を用いて2枚同時にスクリーン印刷を行う場合に、単純な構成の位置決め機構を用いて精度良く被印刷物の位置決めを行うことを可能とし、もって、塗布膜の位置精度が良好な、量産性に優れたパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を実現するために本発明のパネルの製造方法は、複数枚の被印刷物へ同時にスクリーン印刷する工程を備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、このスクリーン印刷する工程が、印刷ステージに被印刷物を位置決め固定する際、被印刷物の間に位置する位置決めユニットをそれぞれの被印刷物の共通の位置基準として用いて位置決めを行う工程を備えることを特徴とするものである。
【0032】
複数枚、例えば2枚の被印刷物を1枚のスクリーン版で同時に印刷を行う場合、2枚の被印刷物の固定位置をスクリーン版に対して正確に位置合わせを行う際、2枚の被印刷物の間に位置する位置決めユニットをそれぞれの被印刷物の共通の位置基準として用いて2枚の被印刷物の相対位置を固定化することで、非常に簡易な構成で、2枚の被印刷物の固定位置の誤差を最小に抑えることができ、もって、量産効率の優れた2枚の多面取り基板などの被印刷物の同時スクリーン印刷によっても、位置精度の優れた塗布膜の形成が可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、被印刷物として量産効率の高い多面取り基板を用いて2枚同時にスクリーン印刷を行う場合に、単純な構成の位置決め機構を用いて精度良く被印刷物の位置決めを行うことが可能となり、もって、塗布膜の位置精度が良好な、量産性に優れたパネルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法について、図面を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0035】
図1は、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法により製造されるパネル45の概略構成を示す分解斜視図である。
【0036】
ガラス製の前面板31上には、透明電極32およびバス電極33から構成される走査電極34および維持電極35とからなる表示電極対39と、遮光を行うブラックストライプ36とが互いに平行に複数形成されている。そして表示電極対39とブラックストライプ36を覆うように誘電体層37が形成され、その誘電体層37上に酸化マグネシウム(MgO)等からなる保護層38が形成されている。
【0037】
背面板40上にはデータ電極41が複数形成され、データ電極41を覆うように誘電体層42が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁43が形成されている。そして、隔壁43の側面および誘電体層42上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層44が設けられている。
【0038】
これら前面板31と背面板41とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対39とデータ電極41とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、ネオンやキセノン等を含む放電ガスが所定の圧力(例えば、Ne−Xe混合ガスの場合、約530hPa〜800hPaの圧力)で封入されている。
【0039】
放電空間は隔壁43によって複数の区画に仕切られており、表示電極対39とデータ電極41とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。なお、パネル45の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0040】
次に、このパネル45の製造方法について説明する。なお、用いるガラス基板としては、量産性に優れ低コスト化が可能な多面取り基板を複数枚用い、構成単位サイズのパネルを複数枚同時に途中工程まで形成する多面取り工法を用いる。また、以下の説明では、1枚の被印刷物を42吋サイズ8面取り基板で説明し、作製するパネルサイズも42吋サイズで説明するが、別のパネルサイズでも良く、被印刷物は42吋サイズ8面取り基板に限られるものではない。
【0041】
まず、ガラス製の前面板31上に、走査電極34および維持電極35とブラックストライプ36とを形成する。これらの走査電極34および維持電極35は透明電極32とバス電極33とから構成される。透明電極32は、スパッタリング法などを用いて膜形成した後にフォトリソグラフィ法等を用いてパターニングして形成される。バス電極33は、銀材料を含む感光性ペーストを用い、スクリーン印刷により透明電極32がパターン形成された基板上に前記感光性ペーストを転写した後、所望の温度で乾燥して膜形成を行う。その後、バス電極33のパターンを有するフォトマスクを介して紫外光を照射した後、アルカリなどを含む現像液で不要部分を除去して、所望の温度で焼成することで固化している。
【0042】
また、ブラックストライプ36も同様に、黒色顔料を含む感光性ペーストをスクリーン印刷により形成して所望の温度で乾燥した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。なお、バス電極33は、銀材料を含む感光性ペーストのみならず、黒色顔料を含む感光性ペーストと重ね合わせて複数層として形成しても良い。
【0043】
この後、走査電極34、維持電極35およびブラックストライプ36を覆うように前面板31上にガラス粉末等の誘電体材料を含む誘電体ペーストをスクリーン印刷やダイコート法等により塗布して誘電体ペースト層を形成した後、所望の温度で乾燥する。
【0044】
その後、焼成固化することにより、走査電極34、維持電極35およびブラックストライプ36を覆う誘電体層37が形成される。なお、誘電体層37は、単層で形成しても、複数層に分けて形成しても良い。
【0045】
次に、誘電体層37上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層38を真空蒸着やスクリーン印刷、ダイコート等により形成する。
【0046】
以上の工程により、前面板31上に所定の構成部材(表示電極対39、ブラックストライプ36、誘電体層37、保護層38)が形成され、前面板31が完成する。なお、基板として多面取り基板を用いているため、いずれかの工程の間で割断を行い、構成単位サイズ状態にする必要がある。一般的には保護層38を形成する前に割断を行うが、これに限られるわけではない。また、100吋サイズを超える超大型パネルを作製する際も同様に作製されるが、この時には割断が行われない場合もある。
【0047】
一方、背面板40は以下のようにして形成される。なお、用いるガラス基板としては、背面板も前面板と同様、量産性に優れ低コスト化が可能な多面取り基板を複数枚用い、構成単位サイズのパネルを複数枚同時に途中工程まで形成する多面取り工法を用いる。また、以下の説明では、1枚の被印刷物を42吋サイズ8面取り基板で説明し、作製するパネルサイズも42吋サイズで説明するが、別のパネルサイズでも良く、被印刷物は42吋サイズ8面取り基板に限られるものではない。
【0048】
まず、ガラス製の背面板40上に、銀材料を含む感光性ペーストをスクリーン印刷により転写した後、所望の温度で乾燥して膜形成を行う。その後、データ電極41のパターンを有するフォトマスクを介して紫外光を照射した後、アルカリなどを含む現像液で不要部分を除去して、所望の温度で焼成固化することでデータ電極41を形成する。
【0049】
次に、データ電極41が形成された背面板40上にスクリーン印刷等によりデータ電極41を覆うようにガラス粉末等の誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布し、所望の温度で乾燥を行うことで誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより誘電体層42を形成する。
【0050】
この後、誘電体層42上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストをスクリーン印刷やダイコート法等により塗布し所望の温度で乾燥して隔壁ペースト層を形成する。そのあと所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、所望の温度で焼成固化することにより隔壁43を形成する。ここで、誘電体層42上に塗布した隔壁ペースト層をパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法等を用いることができる。
【0051】
そして、隔壁43を形成した背面板40には、隣接する隔壁43間の誘電体層42上および隔壁43の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストをスクリーン印刷やディスペンサー法等により塗布し所望の温度で乾燥した後、所望の温度で焼成することにより蛍光体層44が形成される。
【0052】
以上の工程により、背面板40上に所定の構成部材(データ電極41、誘電体層42、隔壁43、蛍光体層44)が形成され、背面板40が完成する。なお、基板として多面取り基板を用いているため、いずれかの工程の間で割断を行い、構成単位サイズ状態にする必要がある。一般的には蛍光体層44を形成する前に割断を行うが、これに限られるわけではない。また、100吋サイズを超える超大型パネルを作製する際も同様に作製されるが、この時には割断が行われない場合もある。
【0053】
そして、スクリーン印刷やインクジェットまたはディスペンサーにより、前面板31または背面板40の周囲の所定の位置に封着材を塗布・形成し、封着材に含まれる樹脂成分を燃焼できる温度で仮焼成を行った後、前面板31と背面板40とを電極形成面側が向かい合うように対向配置させてパネル45を組み立てる。
【0054】
続いて、前面板31および背面板40の周囲を気密封着し、排気および放電ガス導入用の排気管を封着材によって気密封着する。そして、排気管を通してパネル45内部を真空排気し、パネル45内部へネオンやキセノン等を含む放電ガスを所定の圧力(例えば、Ne−Xe混合ガスの場合、約530hPa〜800hPaの圧力)にて導入を行った後、排気管を加熱して溶融し排気管を閉塞して封じ切る(チップオフ)。
【0055】
このようにして、ネオンやキセノン等を含む混合ガスが放電ガスとしてパネル45内部の放電空間に封入され、パネル45が完成する。完成したパネル45では、表示電極対39およびデータ電極41に映像信号にもとづく駆動電圧を選択的に印加して放電セル内に放電を発生させ、その放電によって発生した紫外線が各色の蛍光体層44を励起してR、G、Bの各色を発光させることによってカラー画像の表示を実現している。
【0056】
図2は、上述したパネル45の電極配列を模式的に示す図である。パネル45には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極34)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極35)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極41)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。なお、図1に示したように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対をなして形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に大きな電極間容量Cpが存在する。
【0057】
このパネル45は、サブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法で駆動する。各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有し、初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を各電極上に形成する。書込み期間では、表示を行うべき放電セルにおいて選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させることにより画像表示を行う。
【0058】
ここで、以上で説明した、パネル45を製造するための、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法について、以下、詳細に説明する。
【0059】
まず、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法によってパネル45を製造する際に用いるスクリーン印刷装置について説明する。
【0060】
スクリーン印刷装置は、被印刷物を設置固定する印刷ステージと、印刷スクリーン版を固定し上下動が可能であるクランプ機構と、例えばウレタンゴムからなるスキージ、および、例えばSUS製プレートからなるスクレッパーの走行および上下動が可能な走行機構を有する。
【0061】
印刷スクリーン版のクランプ機構は、印刷スクリーン版の版枠を印刷装置に固定し、かつ印刷スクリーン版と被印刷物のクリアランスを所望の距離に設定できる。スキージおよびスクレッパーの走行機構は、スキージおよびスクレッパーの固定および取り外しが可能であり、かつ被印刷物に対して平行に設置するための調整機構も具備している。また、印刷ステージ上の被印刷物の周囲で少なくともスキージ走行範囲に相当する場所には、被印刷物と厚さが類似した助走板を設置している。助走板としては、例えば、板厚が被印刷物の厚さより0.3mm薄いSUS板を用いる。
【0062】
そして、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法において用いられるスクリーン印刷装置は、被印刷物の固定方法に特徴がある。以下、図を用いて詳細に説明する。
【0063】
図3は、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法において用いられるスクリーン印刷装置における、被印刷物の位置決め方法を概略的に示す概略平面図であり、2枚の被印刷物10を印刷ステージ17上に設置した状態を示す図である。なお図3には、一例として、被印刷物10は、1枚が42吋サイズ8面取り基板であり、同基板を2枚並べることにより42吋サイズを16枚同時に印刷する例を示すが、この被印刷物10の枚数および配列は特にこれに限るものではない。
【0064】
各々の被印刷物10は、基準辺21のうちの一方の基準辺21aを、2枚の被印刷物10の間に設置された2箇所の固定位置決めユニット19aを共用した状態で接触するように配置され、その上で、もう一方の基準辺21bに対しそれぞれ接触するように、固定位置決めユニット19bが配設される。
【0065】
すなわち、被印刷物10の基準辺は一辺21aのみでなく、それに直交するもう一辺21bとの二辺が基準辺となるのが一般的であることから、2枚の被印刷物10を図3に示すように、一辺の基準辺21aを中央で向かい合わせて固定位置決めユニット19aを共用した状態で接触させた場合、もう一辺の基準辺21bは、上方から見て図3に示すような互いに対して180度回転した位置となる。そのため、それぞれの基準辺21bに対しそれぞれ接触するように、固定位置決めユニット19bが配設される。
【0066】
以上のような、固定位置決めユニット19aを共通とした位置決め機構により、単純な構成にもかかわらず、精度良く被印刷物10の位置決めを行うことが可能となる。
【0067】
さらに、押し当て位置決めユニット20を、被印刷物10を介して各々の固定位置決めユニット19a、19bに対して略対向するように配置した。
【0068】
なお、固定位置決めユニット19および押し当て位置決めユニット20の数は、上述した個数が望ましいが、それ以上の数であっても構わない。
【0069】
以上のように配置した被印刷物10を、印刷ステージ17に設けられた吸着溝よりを吸引することで被印刷物10を固定した。また、印刷ステージ17の上の被印刷物10の周囲および間には、助走板18を設置した。
【0070】
次に、被印刷物10とスクリーン版のパターン位置を合わせる方法について説明する。被印刷物10には、形成するパネルの構成部材の種類によって、その構成部材を形成するためのパターン要素用のスクリーン版として、印刷前に位置決め用のマーカーがあるスクリーン版と、マーカーがなく被印刷物10の外形から位置合わせを行わなければならないスクリーン版とがある。
【0071】
被印刷物10にあらかじめ位置決め用のマーカーが形成されている場合は、CCDカメラなどにより読み取った面内数点の被印刷物10のマーカーとスクリーン版のマーカーのずれが最も少なくなるようにスクリーン版もしくは印刷ステージを位置補正して固定する。このとき読み取るマーカーは、少なくとも被印刷物間の固定位置決めユニット19に近い場所のマーカーを含むことが望ましい。
【0072】
また、被印刷物10に位置決め用のマーカーが形成されていない場合は、少なくとも2枚の被印刷物10間に位置する各々の基準辺21を含む被印刷物10の端面をスクリーン版に形成された端面位置決め用マーカーに合わせるように位置補正する。
【0073】
以上の方法で位置決めした被印刷物10およびスクリーン版で印刷することにより、パネル構成部材を形成するために、パターン要素を複数層積層しても、全ての面付け位置におけるパターンずれ誤差の少ない良好な塗布膜が得られ、その結果、、図1に示すような、例えば、前面板の、バス電極33、ブラックストライプ36、誘電体層37、保護層38や、背面板の、データ電極41、誘電体層42、隔壁43、蛍光体層44などを位置ずれなどの不具合を抑制した状態で形成することができた。
【0074】
なお、被印刷物に形成するパターン要素の寸法基準となる被印刷物の一辺が、前記2枚の被印刷物の間に位置する位置決めユニット19aに接触する被印刷物の一辺となるようにすれば、被印刷物の、外見寸法精度の基準となる辺を、前記スクリーン印刷方法における基準として使用することで、被印刷物の外形寸法基準と同一の基準となるため、塗布膜の位置精度を外形寸法精度に対して最適にすることができる。
【0075】
また、塗布膜を積層する場合や、塗布膜をパターン加工する場合などの基準としても同一の基準辺をそれぞれの工程の基準位置として使用することで、より精度の高いデバイスの作製が可能となる。
【0076】
また、2枚の被印刷物の間が位置する場所は、スクリーン版においても略中央付近となるようにすれば、被印刷物およびスクリーン版の位置基準が中央付近になることで、被印刷物の外形交差の影響やスクリーン版のパターン交差の影響を最小限に抑えることができる効果もあり、好ましい。
【0077】
以上述べたように、本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法によれば、被印刷物として量産効率の高い多面取り基板などを用いて複数枚同時にスクリーン印刷を行う場合に、被印刷物の間の位置決めユニットを共通の位置基準として用いるとともに、各々の被印刷物の基準辺を前記位置決めユニットに接触させる配置とすることで、単純な構成の位置決め機構を用いて精度良く被印刷物の位置決めを行うことができ、塗布膜の位置精度を良好な状態とする事ができる。
【0078】
その結果、コストメリットに優れた複数枚同時印刷などでの大型スクリーン版を用いた場合においても、品質の優れたパネルが作製可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように本発明は、大画面、高精細のパネル(プラズマディスプレイパネル)を提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法により製造されるパネルの概略構成を示す分解斜視図
【図2】パネルの電極配列を模式的に示す図
【図3】本発明の一実施の形態によるパネルの製造方法において用いられるスクリーン印刷装置における、被印刷物の位置決め方法を概略的に示す概略平面図
【図4】従来のスクリーン印刷における動作を概略的に示す概略断面図
【図5】従来のスクリーン印刷における被印刷物の位置決め方法を概略的に示す概略平面図
【符号の説明】
【0081】
10 被印刷物
11 ペースト
12 紗
13 版枠
14 乳剤
15 スクレッパー
16 スキージ
17 印刷ステージ
18 助走板
19、19a、19b 固定位置決めユニット
20 押し当て位置決めユニット
21、21a、21b 基準辺
31 前面板
32 透明電極
33 バス電極
34 走査電極
35 維持電極
36 ブラックストライプ
37 誘電体層
38 保護層
39 表示電極対
40 背面板
41 データ電極
42 誘電体層
43 隔壁
44 蛍光体層
45 プラズマディスプレイパネル(パネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の被印刷物へ同時にスクリーン印刷する工程を備えるプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
このスクリーン印刷する工程が、印刷ステージに被印刷物を位置決め固定する際、被印刷物の間に位置する位置決めユニットをそれぞれの被印刷物の共通の位置基準として用いて位置決めを行う工程を備えることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−211979(P2010−211979A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54531(P2009−54531)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】