説明

プラズマディスプレイ用フィルタ、表示装置およびその製造方法

【課題】 電磁波シールド能や近赤外線カット能、画質改善能などの所望のフィルタ特性を有し、低コスト、軽量薄型化、パネル保護性、不具合発生時の作業性、生産性の向上などの改善を図ることができるプラズマディスプレイ用フィルタ、並びに該フィルタを搭載した表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 プラズマディスプレイ用フィルタは、色素を含有する透明粘着層(C)31、高分子フィルム(B)20、透明導電層(D)10、透明粘着層(E)40、反射防止性、ハードコート性、ガスバリア性、静電気防止性、防汚性を有する機能性透明層(A)60が順次積層されて構成され、ディスプレイ表示部00の上に接着され、透明導電層(D)10は電極50、導電性銅箔粘着テープ80を介してディスプレイのグランド端子に接地される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイの画面上に設置され、ディスプレイ画面から発生する電磁波のうち可視光以外の電磁波を遮蔽可能なフィルタ特性、及び/又は可視光スペクトルを補正可能なフィルタ特性を有するディスプレイ用フィルタ、並びに該フィルタを搭載した表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の高度情報化に伴って、光エレクトロニクス関連の部品、機器は著しく進歩、普及している。そのなかでも、ディスプレイはテレビジョン用、パーソナルコンピューター用等として著しく普及し、その薄型化、大型化が要望されている。大型の薄型ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されている。プラズマディスプレイは、その構造や動作原理上、表示画面から強度の漏洩電磁界、近赤外線を発生する。
【0003】
近年、電子機器からの漏洩電磁波が人体や他の機器に与える影響について取り沙汰されるようになっており、例えば、漏洩電磁波を、日本のVCCI(Voluntary Control
Council for Interference by data processing equipment electronic office machine)による基準値内に抑えることが必要となる。
【0004】
また、ディスプレイ画面からの近赤外線は、コードレスフォン等の周辺電子機器に作用して誤動作を引き起こす可能性がある。リモコンや伝送系光通信では波長820nm,880nm,980nm等の近赤外線が使用されているため、近赤外領域である800〜1100nmの波長領域の光を実用上問題ないレベルまで抑圧する必要がある。
【0005】
近赤外線のカットに関して、従来、近赤外線吸収色素を用いて作製された近赤外吸収フィルターを用いることが知られている。しかしながら、近赤外線吸収色素は、湿度、熱、光といった環境による劣化を受けやすく、色素を用いた近赤外吸収フィルタは経時とともに近赤外線カット能の低下、フィルタの透過色の変化、等の光学特性の変化を生じる傾向がある。
【0006】
特にプラズマディスプレイでは、広い波長領域に渡って強度の近赤外線が発生するため、広い波長領域に渡って近赤外領域の吸収率の大きい近赤外吸収フィルタを使用する必要がある。従来の近赤外線吸収フィルタでは可視光線透過率が低いものしか実現していない。
【0007】
一方、漏洩電磁波のカットに関して、ディスプレイ画面の表面を導電性の高い導電物で覆う必要がある。この方法として透明導電層が用いられるが、この透明導電層は、導電性メッシュと透明導電性薄膜の2つに大別される。導電性メッシュには、アースした金属メッシュ、合成繊維または金属繊維のメッシュに金属被覆したもの、または、金属膜を形成後に格子パターン状にエッチング処理したエッチング膜等が用いられるが、これらの導電性メッシュは、導電性が高く電磁波シールド性能に優れるが、光の干渉による縞の発生、歩留りの悪さによるコスト高などで難がある。
【0008】
導電性メッシュの代わりに、金属薄膜や酸化物半導体薄膜等から成る透明導電性薄膜を電磁波シールド層として用いる方法がある。金属薄膜は、良好な導電性は得られるが、広い波長領域にわたる金属の反射及び吸収により可視光線透過率の高いものは得られない。酸化物半導体薄膜は、金属薄膜に比べ透明性に優れるものの、導電性に劣り、しかも、近赤外線の反射能は乏しい。上記したように、漏洩電磁界のカットを目的とした透明導電層には、そのシールド性能を重視する場合には導電性メッシュが、コスト性を重視する場合には、透明導電性薄膜をそれぞれ用いる場合が多い。
【0009】
また、ディスプレイの色純度を改善する試みとして色素を用いる方法が、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に記載されている。特許文献1は、プラズマ表示パネル(プラズマディスプレイパネル)への適用について言及している。
【0010】
しかしながら、これらの先行技術には、プラズマディスプレイパネルに用いる際に必須となる電磁波シールドとしての透明導電層と、色素との組み合わせについては何ら言及がなく、用いる色素についての具体的な言及もない。
【0011】
プラズマディスプレイ用フィルタは、ディスプレイと別体に形成し、ディスプレイの前面板として、近赤外線、電磁波遮蔽、表示画面の保護を目的に設置することが考えられる。しかしながら、前面板方式は、その構成部材数・製造工程数が多いためコストが高くなり、薄型・軽量化が困難になる。
【0012】
さらに、プラズマディスプレイ表示部の表面反射は一般に低減されておらず、ガラス基板の反射率を有しているので、熱設計等の観点から前面板を表示部と離して設置する場合には、ディスプレイ表面の外光反射と前面板の外光反射により、反射映像が二重以上になってしまい、ディスプレイの視認性を低下させることがある。また、プラズマディスプレイは、画面表面におけるガラスの反射や蛍光体の反射により、明所コントラストが低く、加えて発光の色再現範囲が狭いという特性を有する。
【0013】
一方、前面板を除去し、ディスプレイパネル上に光学フィルムを直接貼合わせることが特許文献4、特許文献5、特許文献6などで提案されている。しかしながら、これらの先行技術はいずれも、透明高分子フィルム全体の合計厚さに対する規定はなく、また耐衝撃性の付与について具体的な言及はなされていない。
【0014】
一方、特許文献7では、外部からの衝撃を吸収するために、直接貼合わせ用の光学フィルムを厚さ1mm以上の透明高分子シートに積層して使用するとの提案がある。しかしながら、厚さ1mm以上の透明高分子シートは、ロール形態からの連続貼合わせ工程やディスプレイへの直接貼合わせは実用上困難であり、実施例でも厚さ3mmのアクリルシートに貼合わせていることから、枚葉貼合わせ型の従来前面板型フィルターの改良を意図したものであることは明らかである。
【0015】
一般に、本発明の利用分野における各機能を有した透明高分子フィルムは、ロール形態にて使用されているが、作業効率などの観点から、通常厚さ75〜100μmのものが使われる。従って、単純に機能を有する2枚の透明高分子フィルムを貼合わせた場合、その厚さ合計は0.3mmに満たない。また、反射防止フィルムでは、一部厚さ188μmのものも利用されているが、ベースフィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)であり、好適に用いられるベースフィルム厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)に比べ反射防止性が劣るため、フィルム同士の貼合わせ用にこれが積極的に用いられることはない。
【0016】
また、ディスプレイパネル本体に直接フィルムを貼合わせる場合には、ディスプレイ自体が高価であるため、不具合発生時のフィルム剥離処理が不可欠となるが、この作業性については上記先行特許では言及されていない。また、ディスプレイへのフィルム貼合わせに関しては、既に液晶ディスプレイやフラットテレビなどにおいて実施されているが、プラズマディスプレイでは面積が大幅に大きくなることから、既存のディスプレイ以上に、剥離に力を必要とするため手間がかかる、ディスプレイ表面上への糊残りが発生しやすいなど、作業上の問題がある。
【0017】
また、電磁波シールド体においては、電磁波を電流として外部に取り出す電極を用いて、透明導電層と外部との導通を得なければならない。その手法としては、透明導電層上に保護などの目的でフィルムを貼合わせる際に、フィルターの周囲に当該層が一部露出するようにして貼合わせ、この部分を電極として外部との導通を行う部位とすることが挙げられる。従来、前面板へのフィルム貼付けによって得られる電磁波シールド体は、この手法によって外部との導通を得ていた。透明導電層を露出させるための方法としては、透明導電層上に貼合わせるフィルムの面積を透明導電層の面積より少し小さくする等の方法が行われていた。
【0018】
この方法を用いると剛性の高い板等に透明導電層を有するフィルムを枚葉でまず貼付け、さらにそれよりも面積が小さい保護フィルムを枚葉で貼合わせるという2回の枚葉貼合わせ作業が必要であるため、生産性に問題がある。
【0019】
また、従来前面板へのフィルム貼付けによって得られる電磁波シールド体においては、全周部分に電極を設けていた。この方法を用いると電極形成作業を枚葉で行う必要があり、生産性に問題がある。
【0020】
【特許文献1】特開昭58−153904号
【特許文献2】特開昭60−22102号
【特許文献3】特開昭59−221943号
【特許文献4】特開平10−156991号
【特許文献5】特開平10−188822号
【特許文献6】特開2000−98131号
【特許文献7】特開平10−211668号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、電磁波シールド能や近赤外線カット能、画質改善能などの所望のフィルタ特性を有し、低コスト、軽量薄型化、パネル保護性、不具合発生時の作業性、生産性の向上などの改善を図ることができるプラズマディスプレイ用フィルタ、並びに該フィルタを搭載した表示装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、1)プラズマディスプレイから発生する非常に強度な電磁波を遮蔽するには、面抵抗0.01〜30Ω/□の透明導電層が必要であること、2)このような透明導電層を備えた電磁波シールド体をプラズマディスプレイ表面に直接形成することによって、電磁波シールド能、近赤外線カット能、画像・視認性・コストに優れるプラズマディスプレイを用いた表示装置が得られること、3)特定の層構成を有し、色素を含有し、且つ、可視光線透過率が30〜85%である調光フィルムをディスプレイ表面に直接形成することによって、画像・視認性・コストに優れるディスプレイを用いた表示装置が得られること、4)光学フィルターを構成する透明高分子高分子フィルムの合計厚さを0.3mm以上とし、それをディスプレイ前面に直接貼合わせることで、軽量薄型化とパネル保護性を両立した上に、作業性の向上が得られること、5)電極を形成位置を制限し、例えば長方形の光学フィルターの場合、一組の向かい合う2辺のみに電極を形成すること及び電極の形状を工夫することにより、高い生産効率を有するロールツーロール方式で電極形成を行なうことができること、等を見出し、本発明に至った。
【0023】
本発明は、プラズマディスプレイ画面に接着可能で、所定のフィルタ特性を有するプラズマディスプレイ用フィルタであって、
外気側に設けられ、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)と、
プラズマディスプレイ側に設けられ、画面に接着するための透明粘着層(C)と、
機能性透明層(A)と透明粘着層(C)との間に基体として設けられた高分子フィルム(B)とを備え、
機能性透明層(A)、高分子フィルム(B)および透明粘着層(C)のうち少なくとも1つの層に、波長570〜605nmの範囲に吸収極大を有する色素が含有され、
フィルタ全体における高分子フィルムの厚さ合計が0.3mm以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ用フィルタである。
【0024】
また本発明は、機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間、及び/又は高分子フィルム(B)と透明粘着層(C)との間に設けられ、0.01〜30Ω/□の面抵抗を有する透明導電層(D)を備えることが好ましい。
【0025】
また本発明は、透明導電層(D)の一部もしくは全てが、導電性メッシュで構成されることが好ましい。
【0026】
また本発明は、透明導電層(D)は、高屈折率透明薄膜層(Dt)及び金属薄膜層(Dm)の組合せ(Dt)/(Dm)を繰り返し単位として2回〜4回繰り返して積層され、さらにその上に高屈折率薄膜層(Dt)が積層されて構成されることが好ましい。
【0027】
また本発明は、複数の高屈折率透明薄膜層(Dt)のうち少なくとも一つの層が、インジウム、スズ及び亜鉛のいずれか1種以上を主成分とする酸化物で形成されることが好ましい。
【0028】
また本発明は、複数の金属薄膜層(Dm)のうち少なくとも一つの層が、銀又は銀合金で形成されることが好ましい。
【0029】
また本発明は、機能性透明層(A)は、ハードコート性、静電気防止性、防汚性、ガスバリア性および紫外線カット性のうち少なくとも1つの機能をさらに有することが好ましい。
【0030】
また本発明は、機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間に、粘着層(E)が設けられることが好ましい。
【0031】
また本発明は、高分子フィルム(B)の両面または片面に、ハードコート層(F)が形成されることが好ましい。
【0032】
また本発明は、前記色素は、テトラアザポルフィリン化合物であることが好ましい。
また本発明は、テトラアザポルフィリン化合物は、下記の化学式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、A1〜A8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、A1とA2、A3とA4、A5とA6、A7とA8はそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
【0035】
また本発明は、波長800〜1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素が含有されることが好ましい。
【0036】
また本発明は、機能性透明層(A)の表面において、可視光線反射率が2%以下であることが好ましい。
【0037】
また本発明は、30〜85%の可視光線透過率を有することが好ましい。
また本発明は、波長800〜1100nmにおける透過率極小が20%以下であることが好ましい。
【0038】
また本発明は、色素が含有可能な厚さ嵩上げ用の高分子フィルムを備えることが好ましい。
【0039】
また本発明は、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることが好ましい。
また本発明は、フィルタの周縁部に、透明導電層(D)と電気接続する電極が周方向に沿って連続的に形成されることが好ましい。
【0040】
また本発明は、一部露出した導通部に電極が形成されることが好ましい。
また本発明は、フィルタ形状が長方形であり、対向した2つの周辺に電極が形成されることが好ましい。
【0041】
また本発明は、フィルタの周縁端面に、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることが好ましい。
【0042】
また本発明は、フィルタの厚さ方向に沿って最表面から少なくとも透明導電層(D)に連通する連通孔が形成され、
該連通孔の内部に、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることが好ましい。
【0043】
また本発明は、透明導電層(D)とこれに隣接する層との間に導電性テープが介在することが好ましい。
【0044】
また本発明は、画像を表示するためのプラズマディスプレイと、
プラズマディスプレイ画面に設けられ、上記のプラズマディスプレイ用フィルタとを備えることを特徴する表示装置である。
【0045】
また本発明は、上記のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、上記のプラズマディスプレイ用フィルタを透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)の電極とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0046】
また本発明は、上記のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、高分子フィルム(B)、透明導電層(D)、および透明粘着層(C)を含む積層フィルタを透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
該積層フィルタの上に、直接又は第2の粘着層を介して、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を配置する工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0047】
また本発明は、上記のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、透明粘着層(C)を配置する工程と、
高分子フィルム(B)、透明導電層(D)、および反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を含む積層フィルタを、前記透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0048】
また本発明は、上記のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、透明粘着層(C)を配置する工程と、
高分子フィルム(B)および、透明導電層(D)を含む積層フィルタを、前記透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
該積層フィルタの上に、直接又は第2の粘着層を介して、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を配置する工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、透過特性、透過率、反射特性が優れた調光フィルムとして機能するプラズマディスプレイ用フィルタを低コストに実現できる。これをプラズマディスプレイ等の表示装置の画面に直接形成することにより、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その色純度及びコントラストを向上させることができ、優れた画質を有する表示装置を実現できる。
【0050】
また、過特性、透過率、可視光線反射率に優れ、プラズマディスプレイ等の表示装置から発生する電磁波を遮断する電磁波シールド体として機能するプラズマディスプレイ用フィルタを低コストに実現できる。さらに、プラズマディスプレイからでる800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる。また、耐候性・耐環境性に優れ、反射防止性及び/または防眩性、耐擦傷性、防汚性、帯電防止性等を兼ね備え、優れた画質を有する表示装置を実現できる。
【0051】
また、プラズマディスプレイ用フィルタを構成する透明高分子高分子フィルムの合計厚さを0.3mm以上とすることで、プラズマディスプレイパネルの保護機能及び作業性の向上が図れ、プラズマディスプレイ前面に直接貼合わせる電磁波シールド体または調光フィルムを提供することができる。
【0052】
また、電磁波シールド体の電極形状を工夫することによって、充分な電磁波遮断効果をもち、しかも電極形成に要する時間が大幅に短縮されており、生産効率が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明に係るディスプレイ用フィルタは、波長570〜605nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有することによって、ディスプレイ画面の可視光スペクトルを補正するフィルタ特性を有する調光フィルムとして機能する。
【0054】
また、本発明に係るディスプレイ用フィルタは、面抵抗0.01〜30Ω/□の透明導電層を備えることによって、ディスプレイ画面からの電磁波を遮断するフィルタ特性を有する電磁波シールド体として機能する。
【0055】
また、本発明に係るディスプレイ用フィルタは、波長800〜1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素を含有することによって、ディスプレイ画面からの近赤外線を遮断するフィルタ特性を有する近赤外線フィルタとして機能する。
【0056】
これらの機能を有するディスプレイ用フィルタをプラズマディスプレイ等のディスプレイ表面に直接貼付けることによって、低コスト、軽量薄型化、パネル保護性、不具合発生時の作業性、生産性の向上などの改善を図ることができる。
【0057】
本発明に係る電磁波シールド体は、少なくとも、高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成した少なくとも面抵抗0.01〜30Ω/□の透明導電層(D)と、高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成される透明粘着層(C)を有し、さらに該透明導電層(D)上に導通部、及び、直接又は透明粘着層を介して形成された機能性透明層(A)を有する。
【0058】
また、本発明に係る電磁波シールド体は、少なくとも、高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成された少なくとも面抵抗0.01〜30Ω/□の透明導電層(D)と、高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成された機能性透明層(A)とを有し、さらに、該透明導電層(D)上に、導電性粘着層および透明粘着層(C)を有する。
【0059】
また、本発明に係る電磁波シールド体は、少なくとも、高分子フィルム(B)、該高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成された少なくとも面抵抗0.01〜30Ω/□の透明導電層(D)、透明粘着層(C)、高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成された機能性透明層(A)、を有する。
【0060】
また、本発明に係る調光フィルムは、少なくとも、高分子フィルム(B)、該高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成された反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)、該高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成された透明粘着層(C)を有し、且つ、色素を含有し、可視光線透過率が55〜90%である。
【0061】
1.高分子フィルム(B)
高分子フィルム(B)は、フィルタの基体として機能し、例えば透明導電層(D)を形成するための基体であり、しかも、本発明のディスプレイ用フィルタはディスプレイ表面に直接形成されるものであるため、透明な高分子フィルムが用いられる。
【0062】
高分子フィルム(B)としては、可視波長領域において透明であればよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6等のポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
高分子フィルムは、通常、厚み10〜250μmである。薄すぎるとフィルタをディスプレイ表面に直接形成するのが困難であり、可撓性が制限される。従って、高分子フィルム(B)の厚さは、50μm以上、好ましくは75μm以上が好適である。また、厚さ250μm以上では可撓性が不足しすぎて、フィルムをロールで巻きとって利用するのに適さないことがある。また、本発明分野のように、高い透明性が要求される分野では、高分子フィルムの厚さ100μm程度のものが広く用いられている。
【0064】
本発明で用いる透明な高分子フィルムは可撓性を有しており、透明導電膜をロールツーロール法で連続的に形成することができるため、効率よく、また、長尺大面積の透明積層体を生産することができる。さらに、フィルム状のフィルタは、ディスプレイ表面に、ラミネートにより容易に直接形成することができる。さらに、ディスプレイ表面に直接貼合された高分子フィルムを基体とするフィルタは、ディスプレイの基板ガラスが破損したときのガラス飛散を防止することができ、好適である。
【0065】
本発明においては、高分子フィルム(B)の表面を、スパッタリング処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射、電子線照射などのエッチング処理や、下塗り処理により、その上に形成される透明導電層(D)の高分子フィルム(B)に対する密着性を予め向上させてもよい。また、高分子フィルム(B)と透明導電層(D)の間に任意の金属などの無機物層を形成してもよく、透明導電膜を成膜する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などの防塵処理を施してもよい。
【0066】
また、透明積層体の耐擦傷性を向上させるために、高分子フィルム(B)の少なくとも一方の主面にハードコート層(F)が形成されていても良い。
【0067】
2.ハードコート層(F)
ハードコート層(F)となるハードコート膜としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。これら膜の厚さは、1〜100μm程度である。また、ハードコート層(F)には後述の色素を1種以上含有させることが出来る。
【0068】
3.透明導電層(D)
本発明の電磁波シールド体では、高分子フィルム(B)の一方の主面上に透明導電層(D)が形成される。本発明における透明導電層(D)とは、単層または多層薄膜からなる透明導電膜である。なお、本発明では、高分子フィルム(B)の主面上に透明導電層(D)を形成したものを透明積層体(H)という。
【0069】
単層の透明導電膜としては、前述した金属メッシュや導電性格子状パターン膜などの導電性メッシュ、金属薄膜や酸化物半導体薄膜などの透明導電性薄膜がある。
【0070】
多層の透明導電膜としては、金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜がある。金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜は、銀などの金属の持つ導電性及びその自由電子による近赤外線反射特性と、ある波長領域における金属による反射の高屈折率透明薄膜による防止により、導電性、近赤外線カット能、可視光線透過率のいずれにおいても好ましい特性を有している。
【0071】
電磁波シールド能、近赤外線カット能を有するディスプレイ用フィルタを得るためには、電磁波吸収のための高い導電性と電磁波反射のための反射界面を多く有する金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜が好適である。
【0072】
ところで、VCCIにおいては、業務用途の規制値を示すClass A では放射電界強度50dBμV/m未満であり、民生用途の規制値を示すClass B では40dBμV/m未満である。しかし、プラズマディスプレイの放射電界強度は20〜90MHz帯域内で、対角20インチ型程度で40dBμV/m、対角40インチ型程度で50dBμV/mを越えている。このため、そのままでは家庭用途には使用できない。
【0073】
プラズマディスプレイの放射電界強度は、その画面の大きさ及び消費電力が大きいほど強く、シールド効果の高い電磁波シールド材が必要である。
【0074】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高い可視光線透過率と低い可視光線反射率に加え、プラズマディスプレイに必要な電磁波シールド能を有するには、透明導電層(D)が、面抵抗0.01〜30Ω/□、より好ましくは0.1〜15Ω/□、さらに好ましくは0.1〜5Ω/□の低抵抗な導電性を有していることが必要なことを見出した。本発明における可視光線透過率、可視光線反射率とは、透過率及び反射率の波長依存性からJIS(R−3106)に従って計算される。
【0075】
また、本発明者らは、プラズマディスプレイの発する強度の近赤外線を実用上問題とならないレベルまで遮断するには、ディスプレイ用フィルターの近赤外線波長領域800〜1100nmにおける光線透過率極小を20%以下にすることが必要であること、この要求を満たすためには、部材数低減の要求や色素を用いた近赤外線吸収の限界から、透明導電層自体が近赤外線カット性を持つことが必要であること、を見出した。透明導電層で近赤外線をカットするには、金属の自由電子による反射を利用することができる。
【0076】
金属薄膜層は厚くすると可視光線透過率が低くなり、薄くすると近赤外線の反射が弱くなる。しかし、ある厚さの金属薄膜層を高屈折率透明薄膜層で挟み込んだ積層構造を1段以上重ねることにより、可視光線透過率を高くし、かつ全体的な金属薄膜層の厚さを増やすことが可能である。また、層数及び/又はそれぞれの層の厚さを制御することにより可視光線透過率、可視光線反射率、近赤外線の透過率、透過色、反射色をある範囲で変化させることも可能である。
【0077】
一般に、可視光線反射率が高いと画面への照明器具等の映り込みが大きくなり、表示部表面の反射を防止する効果が低下し、視認性とコントラストが低下するようになる。また、反射色としては、白色、青色、紫色系の目立たない色が好ましい。これらのことから、透明導電層は、光学的に設計、制御しやすい多層積層が好ましくなる。
【0078】
本発明の電磁波シールド体においては、高分子フィルム(B)の一方の主面上に多層薄膜の透明導電層(D)を形成した透明積層体(H)を用いることが好ましい。
【0079】
本発明において好ましい透明導電層(D)は、高分子フィルム(B)の一方の主面上に、高屈折率透明薄膜層(Dt)、金属薄膜層(Dm)の順に、(Dt)/(Dm)を繰り返し単位として2〜4回繰り返し積層され、さらにその上に少なくとも高屈折率透明薄膜層(Dt)を積層して形成され、該透明導電層の面抵抗が0.1〜5Ω/□であることを特徴とし、電磁波シールド能のための低抵抗性、近赤外線カット能、透明性、可視光線反射率に優れた性能を有する。なお、本発明において、多層薄膜とは、特に記載がない限り、金属薄膜層を高屈折率透明薄膜層で挟み込んだ積層構造を1段以上重ねた多層積層の透明導電膜のことをいう。
【0080】
本発明の透明導電層において、繰り返し積層数は2回〜4回が好適である。つまり、高分子フィルム(B)の主面上に透明導電層を積層した本発明の透明積層体(D)は、(B)/(Dt)/(Dm)/(Dt)/(Dm)/(Dt)、または、(B)/(Dt)/(Dm)/(Dt)/(Dm)/(Dt)/(Dm)/(Dt)、または、(B)/(Dt)/(Dm)/(Dt)/(Dm)/(Dt)/(Dm)/(Dt)/(Dm)/(Dt)の層構成を有するものである。繰り返し積層数が5回以上では、生産装置の制限、生産性の問題が大きくなり、また、可視光線透過率の低下と可視光線反射率の増加が生じる傾向がある。また、繰り返し回数が1回であると、低抵抗性、近赤外線カット能と、可視光線反射率を同時に十分なものとすることが出来難い。
【0081】
なお、繰り返し積層数が2回〜4回の多層薄膜において、近赤外線カット能、可視光線透過率、可視光線反射率を同時に、プラズマディスプレイに好適な特性とするには、その面抵抗が0.1〜5Ω/□であることを本発明者らは見出した。
【0082】
なお、将来的にはプラズマディスプレイから放出される電磁波強度が低下することも想定される。その場合は、電磁波シールド体の面抵抗が5〜15Ω/□でも充分な電磁波遮断特性を得ることができることが予想される。また、さらにプラズマディスプレイから放出される電磁波強度が低下することも想定される。その場合は、電磁波シールド体の面抵抗が15〜30Ω/□でも充分な電磁波遮断特性を得ることができるようになることが予想される。一方、放出される電磁波強度とは別の観点として、プラズマディスプレイの更なる大画面化、薄型化が求められる場合には、電磁波シールド体の面抵抗0.01〜1Ω/□を求められることも想定される。
【0083】
金属薄膜層(Dm)の材料としては、銀が、導電性、赤外線反射性および多層積層したときの可視光線透過性に優れているため、好適である。しかし、銀は化学的、物理的安定性に欠け、環境中の汚染物質、水蒸気、熱、光等によって劣化するため、銀に金、白金、パラジウム、銅、インジウム、スズ等の環境に安定な金属を一種以上加えた合金や、これら環境に安定な金属も好適に使用できる。特に金やパラジウムは耐環境性、光学特性に優れ好適である。
【0084】
銀を含む合金中の銀の含有率は、特に限定されるものではないが、銀薄膜の導電性、光学特性と大きく変わらないことが望ましく、50重量%以上、100重量%未満程度である。しかしながら、銀に他の金属を添加すると、その優れた導電性、光学特性が阻害されるので、複数の金属薄膜層を有する場合は、可能であれば少なくとも1つの層は銀を合金にしないで用いることや、基体から見て最初の層及び/又は最外層にある金属薄膜層のみを合金にすることが望ましい。
【0085】
金属薄膜層(Dm)の厚さは、導電性、光学特性等から光学設計的かつ実験的に求められ、透明導電層が要求特性を持てば特に限定されるものではないが、導電性等から薄膜が島状構造ではなく、連続状態であることが必要であり、4nm以上であることが望ましい。また、金属薄膜層が厚すぎると透明性が問題になるので30nm以下が望ましい。金属薄膜層が複数ある場合は、各層が全て同じ厚さとは限らず、また、全て銀、あるいは、同じ銀を含む合金でなくともよい。
【0086】
金属薄膜層(Dm)の形成方法には、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、メッキ等、従来公知の方法のいずれでも採用できる。
【0087】
高屈折率透明薄膜層(Dt)を形成する透明薄膜としては、可視領域において透明性を有し、金属薄膜層の可視領域における光線反射を防止する効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、可視光線に対する屈折率が1.6以上、好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2.0以上の屈折率の高い材料が用いられる。このような透明薄膜を形成する具体的な材料としては、インジウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス、スズ、亜鉛、アンチモン、タンタル、セリウム、ネオジウム、ランタン、トリウム、マグネシウム、ガリウム等の酸化物、または、これら酸化物の混合物や、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0088】
これら酸化物あるいは硫化物は、金属と、酸素原子あるいは硫黄原子との化学量論的な組成にズレがあっても、光学特性を大きく変えない範囲であるならば差し支えない。なかでも、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウムや酸化インジウムと酸化スズの混合物(ITO)は、透明性、屈折率に加えて、成膜速度が速く、金属薄膜層との密着性等が良好であることから好適に使用できる。
【0089】
高屈折率透明薄膜層(Dt)の厚さは、高分子フィルム(B)〔透明基体ともいう〕の光学特性、金属薄膜層の厚さ、光学特性、および、透明薄膜層の屈折率等から光学設計的かつ実験的に求められ、特に限定されるものではないが、5nm以上、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、100nm以下である。また、高屈折率透明薄膜第1層…第(n+1)層(n≧1)は、同じ厚さとは限らず、同じ透明薄膜材料でなくともよい。
【0090】
高屈折率透明薄膜層(Dt)の形成方法には、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビームアシスト、真空蒸着、湿式塗工等、従来公知の方法のいずれでも採用できる。
【0091】
上記の透明導電層(D)の耐環境性を向上させるために、透明導電層の表面に、導電性、光学特性を著しく損なわない程度に有機物又は無機物の任意の保護層を設けてもよい。また、金属薄膜層の耐環境性や金属薄膜層と高屈折率透明薄膜層との密着性等を向上させるため、金属薄膜層と高屈折率透明薄膜層の間に、導電性、光学特性を損なわない程度に任意の無機物層を形成してもよい。これらの具体的な材料としては銅、ニッケル、クロム、金、白金、亜鉛、ジルコニウム、チタン、タングステン、スズ、パラジウム等、あるいはこれらの材料の2種類以上からなる合金があげられる。その厚さは、好ましくは、0.2nm〜2nm程度である。
【0092】
所望の光学特性の透明導電層(D)を得るには、得ようとする電磁波シールド能の為の導電性、つまり、金属薄膜材料・厚さを勘案して、透明高分子フィルム(B)および薄膜材料の光学定数(屈折率、消光係数)を用いたベクトル法、アドミッタンス図を用いる方法等を使った光学設計を行い、各層の薄膜材料及び、層数、膜厚等を決定する。この際、透明導電層(D)上に形成される隣接層を考慮すると良い。このことは透明高分子フィルム(B)上に形成された透明導電層への光の入射媒質が、空気または真空等の屈折率1の入射媒質と違うために透過色(及び透過率、反射色、反射率)が変化するためである。すなわち、透明導電層(D)上に機能性透明層(A)を形成する際に透明粘着層(C)を介する場合は、透明粘着層(C)の光学定数を考慮する設計を行う。また、透明導電層(D)上に機能性透明層(A)を直接する場合は、透明導電層(D)と接する材料の光学定数を考慮する設計を行う。
【0093】
上記のように、透明導電層(D)の設計を行なうことにより、高屈折率透明薄膜層(Dt)では高分子フィルム(B)から見て最下層と最上層がその間の層より薄く、金属薄膜層(Dm)では高分子フィルム(B)から見て最下層がその他の層より薄く、屈折率1.45〜1.65、消光係数ほぼ0の厚み10〜50μmの粘着材が隣接層であるとき、透明積層体の反射が著しく増加しないこと、すなわち、隣接層形成による界面反射の増加が2%以下であることを見出した。
【0094】
特に、繰り返し回数が3回、すなわち、計7層からなる透明導電層においては、3層の金属薄膜層(Dm)の真ん中の2番目の層が他の層より厚いと、前記の粘着材が隣接層であるときに、透明積層体の反射が著しく増加しないことを見出した。
【0095】
なお、光学定数はエリプソメトリー(楕円偏光解析法)やアッベ屈折計により測定でき、また、光学特性を観察しながら、層数、膜厚等を制御して成膜を行うこともできる。
【0096】
上記の方法により形成した透明導電層の原子組成は、オージェ電子分光法(AES)、誘導結合プラズマ法(ICP)、ラザフォード後方散乱法(RBS)等により測定できる。また、層構成および膜厚は、オージェ電子分光の深さ方向観察、透過型電子顕微鏡による断面観察等により測定できる。
【0097】
なお、膜厚は、成膜条件と成膜速度の関係を予め明らかにした上で成膜を行うことや、水晶振動子等を用いた成膜中の膜厚モニタリングにより制御される。
【0098】
以上述べた透明導電性薄膜を用いる方法のほか、導電性メッシュを透明導電層として用いる方法もある。導電性メッシュの一例として、以下の単層の金属メッシュについて述べるが、本発明における導電性メッシュはこれに限定されるものではない。
【0099】
単層の金属メッシュは、高分子フィルム上に銅メッシュ層を形成したものが一般的である。通常は、高分子フィルム上に銅箔を貼合わせ、その後、メッシュ状に加工する。
【0100】
本発明に用いられる銅箔は、圧延銅、電界銅とも使い得るが、金属層は多孔性のものが好ましく用いられ、その孔径は、0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜3μmであり、さらに好ましくは0.5〜1μmである。孔径がこれ以上大きくなるとパターニングの障害になるおそれがあり、また、これ以上小さな値になると、光線透過率の向上が期待しにくい。なお、銅箔のポロシティーとしては、0.01〜20%の範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜5%である。本発明でいうポロシティーとは、体積Rとして、孔容積をPとしたときに、P/Rで定義される値である。例えば、体積0.1ccに対応する銅箔の孔容積を、水銀ポロシティーで測定したところ、0.001ccであったとすると、ポロシティーは1%ということができる。用いられる銅箔は、各種表面処理をされていても構わない。具体的に例示すれば、クロメート処理、粗面化処理、酸洗、ジンク・クロメート処理等である。
【0101】
銅箔の厚さは3〜30μmが好ましく、より好ましくは5〜20μm、さらに好ましくは7〜10μmである。この厚さより厚いとエッチングに時間を要するという問題があり、またこの厚さよりも薄いと電磁波シールド能に劣るという問題が発生する。
【0102】
光透過部分の開口率は60%以上、95%以下が好ましく、より好ましくは65%以上、90%以下、さらにより好ましくは70%以上、85%以下である。開口部の形状は、特に限定されるものではないが、正三角形、正四角形、正六角形、円形、長方形、菱形等に形がそろっており、面内に並んでいることが好ましい。光透過部分の開口部の代表的な大きさは、1辺もしくは直径が5〜200μmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは10〜150μmである。この値が大きすぎると、電磁波シールド能が低下し、また小さすぎるとディスプレイの画像に好ましくない影響を与える。また、開口部を形成しない部分の金属の幅は、5〜50μmが好ましい。すなわち、ピッチが10〜250μmであることが好ましい。この幅よりも細いと加工がきわめて困難になる一方、この幅より太いと画像に好ましくない影響を与える。
【0103】
光透過部分を有する金属層の実質的なシート抵抗とは、上記パターンよりも5倍以上大きな電極を用いて、上記パターンの繰り返し単位よりも5倍以上の電極間隔をもつ4端子法より測定したシート抵抗をいう。例えば、開口部の形状が1辺100μmの正方形で金属層の幅が20μmをもって規則的に正方形が並べられたものであればφ1mmの電極を1mm間隔で並べて測定することができる。あるいはパターン形成したフィルムを短冊状に加工し、その長手方向の両端に電極を設けて、その抵抗を測り(R)、長手方向の長さa、短手方向の長さbとすると、実質的なシート抵抗=R×b/aで求めることができる。このように測定された値は、0.01Ω/□以上、0.5Ω/□以下が好ましく、より好ましくは0.05Ω/□以上、0.3Ω/□以下である。この値よりも小さな値を得ようとすると膜が厚くなりすぎ、かつ開口部が充分取れなくなり、一方、これ以上大きな値にすると充分な電磁波シールド能を得ることができなくなる。
【0104】
銀箔を高分子フィルムにラミネートする方法としては、透明な接着剤を用いる。接着剤の種類としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリエステル系等があるが、特に接着剤に限定はない。2液系及び熱硬化タイプが好適に使用される。なお、耐薬品性に優れた接着剤であることが好ましい。高分子フィルムに接着剤を塗布した後、銀箔と貼合わせることもできるし、銀箔に接着剤を貼合わせてもよい。
【0105】
光透過部分を形成する方法としては、印刷法やフォトレジスト法を用いることができる。印刷法では、マスク層を印刷レジスト材料を用いてスクリーン印刷法でパターン形成する方法が一般的である。フォトレジスト材料を用いる方法では、ロールコーティング法、スピンコーティング法、全面印刷法、転写法などで、金属箔上にフォトレジスト材料をべた形成し、フォトマスクを用いて露光現像してレジストのパターニングを行う。レジストパターニングを完成させた後、開口部とする金属部分を湿式エッチングで除去することで、所望の開口形状と開口率の、光透過部分を有する金属メッシュを得ることができる。
【0106】
4.透過特性
電磁波シールド体の透光部における可視光線透過率は、30〜85%が好ましい。更に好ましくは50〜80%である。30%未満であると輝度が下がりすぎ視認性が悪くなる。また、コントラストを得るために、85%以下、好ましくは80%以下であることが必要とされることがある。
【0107】
また、調光フィルムにおいては可視光線透過率は、55〜90%が好ましい。さらに好ましくは60〜85%である。55%未満であると輝度が下がり過ぎ視認性が悪くなる。また、コントラストを得るためには85%以下、好ましくは80%以下であることが必要とされることがある。
【0108】
なお、本発明における可視光線透過率(Tvis)、可視光線反射率(Rvis)とは、透過率及び反射率の波長依存性からJIS(R−3106)に従って計算される。
【0109】
5.色特性、色素
ところで、ディスプレイ用フィルタの透過色において、黄緑〜緑色味が強いと、ディスプレイのコントラストが低下し、さらには色純度が低くなり、白色表示も緑色がかったものになることがある。このことは、黄緑〜緑色である550nm前後の波長の光が最も視感度が高いことにもよる。
【0110】
多層薄膜は、可視光線透過率・可視光線反射率を重視すると、一般に透過色調に劣る。電磁波シールド能即ち導電性と、近赤外線カット能をあげるほど、金属薄膜の総膜厚が厚いことが必要となる。しかし、金属薄膜の総膜厚が大きくなる程、緑色〜黄緑色になる傾向がある。従って、プラズマディスプレイに用いる電磁波シールド体はその透過色がニュートラルグレーまたはブルーグレーであることが要求される。これは、緑色透過が強いことによるコントラスト低下や、赤色及び緑色発光色に比べ青色発光が弱いこと、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれること、等による。加えて、電磁波シールド体の透過特性は、プラズマディスプレイの白色表示の色度座標が極力、黒体軌跡に近いことが望ましい。
【0111】
多層薄膜を透明導電層(D)に用いた場合は、多層薄膜の色調を補正して電磁波シールド体の透過色をニュートラルグレーまたはブルーグレーにすることが肝要である。色調を補正するには可視波長領域に吸収のある色素を用いれば良い。例えば、透明導電層(D)の透過色に緑色味がある場合、赤色の色素を用いてグレーに補正し、透過色に黄色味がある場合は青〜紫の色素を用いて補正する。
【0112】
カラープラズマディスプレイでは、希ガスの直流または交流放電により発生する真空紫外光で励起発光する(Y,Gd,Eu)BO3等の赤色(Red)発光蛍光体、(Zn,Mn)2SiO4等の緑色
(Green)発光蛍光体、(Ba,Eu)MgAl10O17:Eu 等の青色(Blue)発光蛍光体が、画素を構成する表示セルに形成されている。蛍光体は、色純度の他に放電セルへの塗布性、残光時間の短さ、発光効率、耐熱性等を指標に選定されており、実用化されている蛍光体はその色純度に改良を要するものが多い。特に赤色発光蛍光体の発光スペクトルは、波長580nmから700nm程度までにわたる数本の発光ピークを示しており、比較的強度な短波長側の発光ピークは黄〜オレンジ色の発光であるので赤色発光がオレンジに近い色純度の良くないものとなってしまう問題がある。希ガスにXeとNeの混合ガスを用いた場合、Ne励起状態の発光緩和によるオレンジ色発光も同様に色純度を落としてしまう。また、緑色発光、青色発光に関しても、そのピーク波長の位置、発光のブロードさが色純度を下げる要因となっている。
【0113】
色純度の高さは、例えば、国際照明委員会(CIE)が定めた横軸色度x、縦軸色度yで色相と彩度を表す座標系において、RGB三色を頂点とした三角形の広さで示す色再現範囲の広さで表すことができる。色純度の低さからプラズマディスプレイの発光の色再現範囲は、NTSC(National Television System Committee)方式で定めているRGB三色の色度が示す色再現範囲より通常狭い。
【0114】
また、表示セル間での発光の滲み出しに加えて、各色の発光が広い範囲にわたって不必要な光を含んでおり、必要な発光が際立たないことは、色純度だけではなくプラズマディスプレイのコントラストを下げる要因にもなっている。さらに、プラズマディスプレイは一般に室内照明等による外光が存在する明時においては暗時に比べコントラストが悪くなる。これは、基板ガラス、蛍光体等が外光を反射し、不必要な光が必要な光を際立たせなくするために起きる。プラズマディスプレイパネルのコントラスト比は、暗示は100〜200、周囲照度100lx 程度の明時は10〜30であり、その向上が課題となっている。また、コントラストが低いことも色再現範囲を狭くしている要因である。
【0115】
コントラストを向上させるためにはディスプレイ前面にニュートラル・デンシティ(ND)フィルタの如く、可視波長領域全体の透過率を下げ、基板ガラス、蛍光体における外光反射等の透過を少なくする方法があるが、可視光線透過率が著しく低いと、輝度・画像の鮮明さが低下することになり、また、色純度の改善はあまり見られない。
【0116】
本発明者らは、カラープラズマディスプレイの発光色の色純度及びコントラストを向上させることは、発光色の色純度及びコントラストを下げる原因となる不要発光及び外光反射を低減することによって達成できることを見出した。
【0117】
また、本発明者らは、色素を用いることによって、電磁波シールド体をニュートラルグレーまたはニュートラルブルーに調色するだけではなく、発光色の色純度及びコントラストを下げる原因となる不要発光及び外光反射を低減できることを見出した。特に、赤色発光がオレンジに近いものは顕著であり、その原因である波長580nm〜605nmの発光を低減することによって赤色発光の色純度を向上させることができることを見い出した。
【0118】
本発明のディスプレイ用フィルタにおいて、不要発光及び外光反射の低減は、波長570nm〜605nmに吸収極大を有する色素をシールド体に含有させることによって行うことができる。この際、ディスプレイ用フィルタによって、赤色である発光ピークのある波長615nm〜640nmの光線透過を著しく損なってしまわないことが必要である。
【0119】
一般に、色素はブロードな吸収範囲を有しており、所望の吸収ピークを有するものも、その裾の吸収により好適な波長の発光まで吸収してしまうことがある。Neによる発光が存在する場合は、オレンジ色発光の低減を行うこともできるため、RGB表示セルからの発光の色純度が向上する。
【0120】
また、カラープラズマディスプレイの緑発光はブロードであり、そのピーク位置は、例えば、NTSC方式で要求される緑色より若干長波長側、すなわち黄緑側にあることがある。
【0121】
本発明者らは、波長570nm〜605nmに吸収極大を有する色素の短波長側の吸収によって、緑色発光の長波長側を吸収して削り、さらに不要発光を削ること、及び/又は、ピークをシフトさせることによって色純度を向上できることを見出した。
【0122】
赤色発光、更に加えて緑色発光の色純度向上には、波長570nm〜605nmに吸収極大を有する色素を用いることによって、波長570nm〜605nmにおける電磁波シールド体の最低透過率が、必要な赤色発光のピーク位置での透過率に対して80%以下であることが好適である。
【0123】
青色発光の色純度が低い場合は、赤色発光、緑色発光と同様に、不要発光を低減し、また、そのピーク波長をシフトさせ、青緑発光を吸収する色素を用いれば良い。さらに、色素による吸収は、外光の蛍光体への入射を低減することによって蛍光体での外光反射を低減させることができる。このことによってもまた色純度及びコントラストを向上させることができる。
【0124】
本発明のディスプレイ用フィルタに色素を含有させる方法としては、(1)透明な樹脂に少なくとも1種類以上の色素を混錬させた高分子フィルム、(2)樹脂または樹脂モノマー/有機系溶媒の樹脂濃厚液に少なくとも1種類以上の色素を分散・溶解させ、キャスティング法により作製した高分子フィルム、(3)樹脂バインダーと有機系溶媒に少なくとも1種類以上の色素を加え、塗料として透明な基体上にコーティングしたもの、(4)少なくとも1種類以上の色素を含有する透明な粘着材、のいずれか一つ以上の形態として用いる方法である。
【0125】
本発明でいう含有とは、基材または塗膜等の層または粘着材の内部に含有されることは勿論、基材または層の表面に塗布した状態をも意味する。
【0126】
色素は、可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料または顔料で良く、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系等の一般に市販もされている有機色素があげられる。その種類・濃度は、色素の吸収波長・吸収係数、透明導電層の色調及び電磁波シールド体に要求される透過特性・透過率、そして分散させる媒体または塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではない。
【0127】
透明導電層(D)に多層薄膜を用いる場合、電磁波シールド能に加え、近赤外線カット能も有しているが、より高い近赤外線カット能が必要であったり、透明導電層が近赤外線カット能を有していない場合に、近赤外線カット能をディスプレイ用フィルターに付与するために、前記色素に近赤外線吸収色素を1種類以上併用しても良い。
【0128】
近赤外線吸収色素としては、透明導電層の近赤外線カット能を補填し、プラズマディスプレイの発する強度の近赤外線を充分実用的になる程度に吸収するものであれば、特に限定されるものではなく、濃度も限定されるものではない。近赤外線吸収色素としては、例えば、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイミニウム系化合物が挙げられる。
【0129】
プラズマディスプレイパネルはパネル表面の温度が高く、特に環境の温度が高いときは電磁波シールド体の温度も上がるため、本発明で用いる色素は、耐熱性、例えば、80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。
【0130】
また、色素によっては、耐熱性に加えて、耐光性に乏しいものもある。プラズマディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いることによって、色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない色素を用いることが肝要である。熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。色素が劣化すると電磁波シールド体の透過特性が変わってしまう。
【0131】
実際に、プラズマディスプレイパネルの表面温度が70℃から80℃になることは特開平8−220303号に明記されている。また、プラズマディスプレイパネルより発生する光は、例えば、300cd/m2と明記されており(富士通株式会社Image Site カタログ AD25−000061C Oct.1997M)、立体角を2πとして、これを2万時間照射すると、2π×20000×300=3800万(lx・時間)となることから、実用上数千万(lx・時間)程度の耐光性が必要になることが分かる。
【0132】
さらには、色素を媒体または塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性も重要である。異なる吸収波長を有する色素2種類以上を一つの媒体または塗膜に含有させても良い。
【0133】
本発明のディスプレイ用フィルタは、カラープラズマディスプレイの輝度・視認性を著しく損なわない優れた透過特性・透過率を有し、カラープラズマディスプレイの発光色の色純度及びコントラストを向上させることができる。本発明者らは、1種以上含有せしめる色素の、少なくとも一つがテトラアザポルフィリン化合物の場合には、特に低減したい570〜605nmの不要発光の波長と同じか、または近い波長に主要吸収波長を有し、且つ、吸収波長巾が比較的狭いので、好適な発光を吸収してしまうことによる輝度の損失を少なくできることを見出し、優れた透過特性・透過率・発光色の色純度及びコントラストを向上させる能力が優れたディスプレイ用フィルタを得ることができた。
【0134】
本発明で用いるテトラアザポルフィリン化合物は、前記式(1)で示すことができる。以下、式(1)は、下記構造式(2)(化3)の様に略記する。
【0135】
【化3】

【0136】
〔式(2)中、Am及びAnは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又は、アリールチオ基を表し、AmとAnは各々独立に連結基を介して、芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又は、オキシ金属原子を表す。〕
【0137】
式(1)で示されるテトラアザポルフィリン化合物の具体例を次に述べる。式中、A1〜A8の具体例としては、各々独立に、水素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、neo-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、cyclo-ペンチル基、n-ヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、3-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、cyclo-ヘキシル基、n-へプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルペンチル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、n-ノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、4-エチルオクチル基、4-エチル-4,5-ジメチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、4-ブチルオクチル基、6,6-ジエチルオクチル基、n-トリデシル基、6-メチル-4-ブチルオクチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、3,5 -ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,2,5,5-テトラメチルヘキシル基、
1-cyclo-ペンチル-2,2-ジメチルプロピル基、1-cyclo-ヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基等の炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;
クロロメチル基、ジクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基等の炭素数1〜20のハロゲノアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;
メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、3-メトキシプロピルオキシ基、3-(iso- プロピルオキシ) プロピルオキシ基等の炭素数2〜20のアルコキシアルコキシ基;
フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基、2-メトキシフェノキシ基、4-iso-プロピルフェノキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基;
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基等の炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n- プロピルアミノ基、ジ-n- ブチルアミノ基、N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ基等の炭素数2〜20のジアルキルアミノ基;
ベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ジクロロベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基、ナフチルメチル基、ニトロナフチルメチル基、シアノナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基、トリフルオロメチルナフチルメチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;
フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ジクロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、N,N-ジメチルアミノフェニル基、ナフチル基、ニトロナフチル基、シアノナフチル基、ヒドロキシナフチル基、メチルナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;
ピロリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾイル基、イソオキサゾイル基、オキサジアゾイル基、イミダゾイル基、ベンゾオキサゾイル基、ベンゾチアゾイル基、ベンゾイミダゾイル基、ベンゾフラニル基、インドイル基等のヘテロアリール基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基、1-メチルブチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、1,2-ジメチルプロピルチオ基、1,1-ジメチルプロピルチオ基等の炭素数1〜20のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、4-メチルフェニルチオ基、2-メトキシフェニルチオ基、4-t-ブチルフェニルチオ基等の炭素数6〜20のアリールチオ基などを挙げることができる。
【0138】
1とA2、A3とA4、A5とA6、A7とA8が連結基を介して環を形成した例としては、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH(NO2 )CH2−、−CH2 CH(CH3 )CH2CH2−、−CH2CH(Cl)CH2CH2 −等を挙げることができる。
【0139】
Mで示される2価金属の例としては、Cu、Zn,Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Pt,Mn,Sn,Mg,Hg,Cd,Ba,Ti,Be,Ca等が挙げられる。
【0140】
1置換の3価金属の例としては、Al−F,Al−Cl,Al−Br,Al−I,Ga−F,Ga−Cl,Ga−Br,Ga−I,In−F,InCl,In−Br,In−I,Tl−F,Tl−Cl,Tl−Br,Tl−I,Al−C6 H5 ,Al−C64(CH3 ),In−C65 ,In−C64(CH3 ),Mn(OH),Mn(OC65 ),Mn[OSi(CH33 ],Fe−Cl,Ru−Cl等が挙げられる。
【0141】
2置換の4価金属の例としては、CrCl2 ,SiF2 ,SiCl2 ,SiBr2 ,SiI2 ,SnF2 ,SnCl2 ,SnBr2 ,ZrCl2 ,GeF2 ,GeCl2 ,GeBr2 ,GeI2 ,TiF2 ,TiCl2 ,TiBr2 ,Si(OH)2 ,Sn(OH)2 ,Ge(OH)2 ,Zr(OH)2 ,Mn(OH)2 ,TiA2 ,CrA2 ,SiA2 ,SnA2 ,GeA2 [但し、Aはアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びその誘導体を表す]、Si(OA)2 ,Sn(OA)2 、Ge(OA)2 、Ti(OA)2 ,Cr(OA)2 [但し、Aはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基及びその誘導体を表す]、Si(SA)2 、Sn(SA)2 ,Ge(SA)2 [但し、Aはアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びその誘導体を表す]等が挙げられる。
【0142】
オキシ金属の例としては、VO,MnO,TiO等が挙げられる。
好ましくは、Pd,Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y)2 ,Ge(Y)2 (但し、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、トリアルキルシリルオキシ基、トリアルキルスズオキシオ基又はトリアルキルゲルマニウムオキシ基を表す)である。
【0143】
さらに好ましくは、Cu、VO、Ni,Pd,Pt,Coである。
本発明者らはさらに、式(1)のアザポルフィリン化合物が、例えば、テトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン錯体やテトラ−neo−ペンチル−テトラアザポルフィリン錯体であると、製造が比較的容易であること、溶媒への溶解性、錯体が安定であること、吸収特性に優れていること、t−ブチル基やテトラ−neo−ペンチル基を付与した結果、錯体が立体性を持つことによって溶媒への溶解性が高くなり、色素を含有させやすくなることを見出し、優れた電磁波シールド体を得られることができた。
【0144】
本発明のディスプレイ用フィルタにおいては、前記の色素を含有させる方法(1)〜(4)は、色素を含有する高分子フィルム(B)、色素を含有する後述の透明粘着層(C)または第2の透明粘着層、色素を含有する後述の機能性透明層(A)、色素を含有する前述のハードコート層(F)のいずれか1つ以上の層において実施することが出来る。色素を含有する後述の機能性透明層(A)は、色素を含有し且つ各機能を有する膜でも、色素を含有し且つ各機能を有する膜が高分子フィルム上に形成されたものでも、各機能を有する膜が色素を含有する基材に形成されたもの、のいずれでも良い。
【0145】
なお、本発明では、異なる吸収波長を有する色素2種類以上を一つの媒体または塗膜に含有させてもよく、また色素層を2つ以上有していても良い。
【0146】
まず、樹脂に色素を混練し、加熱成形する(1)の方法について説明する。
樹脂材料としては、プラスチック板または高分子フィルムにした場合にできるだけ透明性の高いものが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6等のポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を挙げることが出来るが、これらの樹脂に限定されるものではない。
【0147】
作製方法としては、用いる色素、ベース高分子によって、加工温度、フィルム化条件等が多少異なるが、通常、(i) ベース高分子の粉体或いはペレットに色素を添加し、150〜350℃で加熱、溶解させた後、成形してプラスチック板を作製する方法、(ii)押し出し機によりフィルム化する方法、(iii)押し出し機により原反を作製し、30〜120℃で2〜5倍に、1軸乃至は2軸に延伸して10〜200μm厚のフィルムにする方法、等が挙げられる。なお、混練する際に可塑剤等の通常の樹脂成型に用いる添加剤を加えてもよい。色素の添加量は、色素の吸収係数、作製する高分子成形体の厚み、目的の吸収強度、目的の透過特性・透過率等によって異なるが、通常、ベース高分子成形体の重量に対して1ppm〜20%である。
【0148】
(2)のキャスティング法では、樹脂または樹脂モノマーを有機系溶媒に溶解させた樹脂濃厚液に、色素を添加・溶解させ、必要であれば可塑剤、重合開始剤、酸化防止剤を加え、必要とする面状態を有する金型やドラム上へ流し込み、溶剤揮発・乾燥または重合・溶剤揮発・乾燥させることにより、プラスチック板、高分子フィルムを得る。
【0149】
通常、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変成樹脂(PVB、EVA等)或いはそれらの共重合樹脂の樹脂モノマーを用いる。溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合物系等を用いる。
【0150】
色素の濃度は、色素の吸収係数、板またはフィルムの厚み、目的の吸収強度、目的の透過特性・透過率等によって異なるが、樹脂モノマーの重量に対して、通常、1ppm〜20%である。
【0151】
また、樹脂濃度は、塗料全体に対して、通常、1〜90%である。
塗料化してコーティングする(3)の方法としては、色素をバインダー樹脂及び有機系溶媒に溶解させて塗料化する方法、未着色のアクリルエマルジョン塗料に色素を微粉砕(50〜500nm)したものを分散させてアクリルエマルジョン系水性塗料とする方法、等がある。
【0152】
前者の方法では、通常、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変成樹脂(PVB、EVA等)或いはそれらの共重合樹脂をバインダー樹脂として用いる。溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合物系等を用いる。
【0153】
色素の濃度は、色素の吸収係数、コーティングの厚み、目的の吸収強度、目的の可視光透過率等によって異なるが、バインダー樹脂の重量に対して、通常、0.1〜30%である。
【0154】
また、バインダー樹脂濃度は、塗料全体に対して、通常、1〜50%である。
後者のアクリルエマルジョン系水系塗料の場合も、前記と同様に、未着色のアクリルエマルジョン塗料に、色素を微粉砕(50〜500nm)したものを分散させて得られる。塗料中には、酸化防止剤等の通常塗料に用いるような添加物を加えてもよい。
【0155】
上記の方法で作製した塗料は、透明高分子フィルム、透明樹脂、透明ガラス等の上にバーコーダー、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーター、或いはスプレー等の従来公知のコーティングをして、色素を含有する基材を作製する。
【0156】
コーティング面を保護するために保護層を設けたり、コーティング面を保護するようにコーティング面に、電磁波シールド体の他の構成部材を貼合わせても良い。
【0157】
色素を含有する粘着材として用いる方法(4)では、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等のシート状または液状の粘着材または接着剤に、色素を10ppm〜30%添加して用いる。
【0158】
なお、これらの方法では、色素含有の電磁波シールド体の耐光性を上げるために紫外線吸収剤を色素と共に含有させることもできる。紫外線吸収剤の種類、濃度は特に限定されない。
【0159】
6.透明粘着層、導電性粘着層
本発明において、貼合わせ(ラミネート)は、任意の透明粘着層を介する。本発明の透明粘着層(C)などは、任意の透明な接着剤または粘着剤または粘着材からなる層である。具体的にはアクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等が挙げられる。この際肝要なことは、ディスプレイからの光線透過部である中心部分に用いられる粘着材は可視光線に対して充分透明である必要がある。
【0160】
導電性粘着層は、透明導電層(D)と表示装置のアース部(グランド導体)とを電気的に接続させるための粘着層であって、導電性が必要だが、透明である必要はない。電磁波シールド体は、透明導電層(D)と外部との電気的接続が必要であるので、透明粘着層は導電性粘着層による外部との電気的接続を著しく妨げてはならない。すなわち、透明導電層(D)上に透明粘着層が形成されていない導通部が必要である。例えば、透明粘着層は透明導電層(D)の周縁部を残すように形成し、導通部を残すことが肝要である。
【0161】
導電性粘着層に用いる導電性接着剤、導電性粘着材は、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等をベース剤として、導電性粒子としてカーボンやCu,Ni,Ag,Fe等の金属粒子を分散させたものである。分散粒子の導電性が低くて、かつ、粒子径が細かく且つ粒子数が多くて粒子同士の接触面積が広いと、導電性接着剤、導電性粘着材の体積固有抵抗が低くなり好適になる。用いることが出来る導電性接着剤、導電性粘着材の体積固有抵抗は1×10-4〜1×103Ω・cmである。実用上の接着強度があればシート状のものでも液状のものでもよい。
【0162】
粘着材としては感圧型接着剤でシート状のものが好適に使用できる。シート状粘着材貼付け後または接着材塗布後にラミネートすることによって貼合わせを行う。
【0163】
液状のものは塗布、貼合わせ後に室温放置または加熱または紫外線照射により硬化する接着剤である。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等が挙げられるが、接着剤の種類、粘度、塗布量等から考慮、選定される。層の厚みは、特に限定されるものではないが、体積固有抵抗と必要な導電性を勘案して0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。また、両面ともに導電性を有する両面接着タイプの市販の導電性テープも好適に使用できる。この厚さもまた特に限定されるものではないが、数μm〜数mm程度である。
【0164】
粘着材は、実用上の接着強度があればシート状のものでも液状のものでもよい。粘着材は、感圧型接着剤でシート状のものが好適に使用できる。シート状粘着材貼付け後または接着材塗布後に、各部材をラミネートすることによって貼合わせを行う。
【0165】
液状のものは、塗布、貼合わせ後に、室温放置または加熱により硬化する接着剤である。
【0166】
塗布方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等が挙げられるが、接着剤の種類、粘度、塗布量等から考慮、選定される。
【0167】
層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。透明粘着層を形成される面、貼合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。
【0168】
さらに、透明粘着層を介して貼合わせた後は、貼合わせ時に部材間に入り込んだ空気を脱泡、または、粘着材に固溶させ、さらには部材間の密着力を向上させる為に、できれば加圧、加温の条件で養生を行うことが肝要である。このとき、加圧条件としては数気圧〜20気圧以下程度、加温条件としては各部材の耐熱性に依るが、室温以上80℃以下程度であるが、これらに特に制限を受けない。透明粘着層の少なくとも1つの層には色素を含有させることができる。
【0169】
7.機能性透明層(A)
本発明のディスプレイ用フィルタには、ディスプレイへの設置方法や要求される機能に応じて、ハードコート性、反射防止性、防眩性、静電気防止性、防汚性、ガスバリア性、紫外線カット性のいずれか一つ以上の機能を有し、且つ、可視光線を透過する機能性透明層(A)が直接または第2の透明粘着層を介して、透明導電層(D)の上に形成される。1つの機能性透明層(A)が、複数の機能を有していることは好ましいことである。
【0170】
本発明における機能性透明層(A)は、上記各機能を一つ以上有する機能膜そのものでも、機能膜を塗布または印刷または従来公知の各種成膜法により形成した透明な基体でも、各機能を有する透明な基体でも良い。
【0171】
機能膜そのものの場合は、機能性透明層(A)を形成する透明導電層(D)の主面に塗布または印刷または従来公知の各種成膜法により直接形成する。
【0172】
機能膜を形成した透明な基体、各機能を有する透明な基体の場合は、粘着材または色素を含有する粘着材を介して透明導電層(D)の主面に貼付けても良い。これらの作製方法は特に制限を受けない。
【0173】
透明な基体は、透明な高分子フィルムであり、その種類、厚さも特に制限を受けないし、透明な基体に色素を含有させることもできる。機能性透明層(A)が機能膜そのものでも、膜中に色素を含有させることができる。
【0174】
電磁波シールド体は、透明導電層(D)と外部との電気的接続が必要であるので、機能性透明層(A)はこの電気的接続を妨げてはならない。すなわち、透明導電層(D)上に機能性透明層(A)が形成されていない導通部が必要である。例えば、機能性透明層(A)を透明導電層の周縁部を残すように形成し、この周辺部を導通部とすることができる。
【0175】
ディスプレイは、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうので、機能性透明層(A)は、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、防眩(AG:アンチグレア)性またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能を有していることが必要である。電磁波シールド体表面の可視光線反射率が低いと、前述した通り、プラズマディスプレイの蛍光体への外光入射及び反射が低減し、映り込み防止だけではなく、コントラスト及び色純度向上につながる。
【0176】
反射防止(AR)性を有する機能性透明層(A)は、反射防止膜を形成する基体の光学特性を考慮し、光学設計によって反射防止膜の構成要素及び各構成要素の膜厚を決定する。具体的には、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低いフッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を基体から見て高屈折率層、低屈折率層の順に2層以上積層したものがある。
【0177】
単層形成したものは、製造が容易であるが、反射防止性が2層以上積層したものに比べ劣る。4層積層したものは、広い波長領域にわたって反射防止能を有し、基体の光学特性による光学設計の制限が少ない。
【0178】
これらの無機化合物薄膜の成膜には、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、湿式塗工等、従来公知の方法のいずれでも採用できる。有機化合物薄膜の成膜には、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等の湿式塗工後に乾燥・硬化させる方法等、従来公知の方法を採用できる。
【0179】
反射防止性を有する機能性透明層(A)の表面の可視光線反射率は2%以下、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0180】
防眩(AG)性を有する機能性透明層(A)は、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する可視光線に対して透明な層を指している。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂に、シリカ、有機珪素化合物、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等によって基体上に塗布、硬化させる。粒子の平均粒径は、1〜40μmである。または、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂を基体に塗布し、所望のヘイズまたは表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても防眩性を得ることができる。要は適当な凹凸を有することが重要であり、必ずしも上記方法に限定されるものではない。
【0181】
防眩性のヘイズは0.5%以上、20%以下であり、好ましくは1%以上、10%以下である。ヘイズが小さすぎると防眩性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると平行光線透過率が低くなり、ディスプレイの視認性が悪くなる。
【0182】
反射防止防眩(ARAG)性を有する機能性透明層(A)は、防眩性を有する膜または基体上に前述の反射防止膜を形成することによって得られる。この際、防眩性を有する膜が高屈折率の膜である場合、反射防止膜が単層でも比較的高い反射防止性を付与することができる。
【0183】
ARまたはARAGによる反射防止はディスプレイ用フィルタの光線透過率を向上させることができる。
【0184】
本発明のディスプレイ用フィルタは、透明粘着層(C)を介してディスプレイ表示部に貼合わせるため、表示部表面の基板ガラス反射が無くなる。従って、さらに加えて、ARまたはARAGの機能を有する機能性透明層(A)を形成したフィルタは、その表面の反射も低く、ディスプレイのコントラスト及び色純度をさらに向上させることが出来る。ARまたはARAGの機能を有する機能性透明層(A)の表面における可視光線反射率は2%以下、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0185】
ディスプレイ用フィルタに耐擦傷性を付加させるために、機能性透明層(A)がハードコート性を有していることも好適である。ハードコート膜としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。これら膜の厚さは、1〜100μm程度である。ハードコート膜が反射防止性を有する透明機能層(A)の高屈折率層または低屈折率層に用いられたり、ハードコート膜上に反射防止膜が形成されて、機能性透明層(A)が反射防止性とハードコート性の両方を有しても良い。同様に防眩性とハードコート性の両方を有しても良い。この場合はハードコート膜が粒子の分散さ等により凹凸を有すれば良いし、その上に反射防止膜が形成されれば反射防止防眩性とハードコート性を両方有する機能性透明層(A)が得られる。ハードコート性を有する機能性透明層(A)の表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともH、好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。
【0186】
さらに、ディスプレイ用フィルタには、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理が必要とされる場合がある。従って、静電気防止能を付与するために、機能性透明層(A)が導電性を有していても良い。この場合に必要とされる導電性は面抵抗で1011Ω/□程度以下であれば良いが、ディスプレイ画面の透明性や解像度を損なうものであってはならない。導電層としてはITOをはじめとする公知の透明導電膜やITO超微粒子や酸化スズ超微粒子をはじめとする導電性超微粒子を分散させた導電膜が挙げられる。
【0187】
また、先述した反射防止性、防眩性、反射防止防眩性、ハードコート性のいずれか一つ以上の機能を有した機能性透明層(A)を構成する層が導電性を有していると好適である。
【0188】
また、多層薄膜に銀を用いた場合、銀は化学的、物理的安定性に欠け、環境中の汚染物質、水蒸気等によって劣化し、凝集、白化現象を起こすため、透明導電性積層体の薄膜形成面には、薄膜が使用環境中の汚染物質、水蒸気がさらされないように、ガスバリア性を有する機能性透明層(A)で被覆することが肝要である。必要とされるガスバリア性は、透湿度で10g/m2 ・day以下である。ガスバリア性を有する膜の具体例としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム等、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を微量に添加した金属酸化物薄膜や、ポリ塩化ビニリデンほか、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これら膜の厚さは、金属酸化物薄膜の場合、10〜200nm、樹脂の場合1〜100μm程度であり、単層でも多層でも良いが、これもまた特に制限されるものではない。また、水蒸気透湿度が低い高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデンや、塩化ビニリデンと塩化ビニル、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合物、フッ素系樹脂等が挙げられるが、透湿度が10g/m2 ・day以下であれば特に限定されるものではない。透湿度が比較的高い場合でも、フィルムの厚みが増えることや適当な添加物を加えることにより、透湿度は低下する。
【0189】
また、先述した反射防止性、防眩性、反射防止防眩性、帯電防止性、アンチニュートンリング性、ハードコート性のいずれか一つ以上の機能を有した機能性透明層(A)を構成する層がガスバリア性を有する膜であったり、全体または隣接する透明粘着層と併用で上記のガスバリア性を有していると、好適である。
【0190】
例えば、色素を含有する反射防止性、ハードコート性、帯電防止性、および、ガスバリア性を有する機能性透明層(A)としては、色素含有のポリエチレンテレフタレートフィルム/ハードコート膜/ITO/含ケイ素化合物/ITO/含ケイ素化合物、等があげられる。
【0191】
また、反射防止防眩性、ハードコート性、帯電防止性、および、ガスバリア性を有する機能性透明層(A)としては、トリアセチルセルロースフィルム/ITO微粒子分散ハードコート膜/含ケイ素化合物化合物、等があげられる。
【0192】
さらに、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるよう、機能性透明層(A)表面が防汚性を有していると良い。防汚性を有するものとしては、水及び/または油脂に対して非濡性を有するものであって、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。反射防止性や帯電防止性等の他の機能と併せる際には、それら機能を妨げるものであってはならない。この場合、反射防止膜の構成材料に低屈折率であるフッ素化合物を使用することや、1〜数分子のフッ素系有機分子を最表面にコートすることによって、反射防止性や帯電防止性を維持しつつ防汚性を付与することができる。
【0193】
例えば、防汚性、反射防止性、ハードコート性、帯電防止性、および、ガスバリア性を有する機能性透明層(A)としては、ハードコート膜/ITO/含ケイ素化合物/ITO/含ケイ素化合物/フッ素系有機分子の単分子コート膜、等があげられる。
【0194】
さらにまた、電磁波シールド体が含有する色素が、ディスプレイから放射される、または、外光が含む紫外線により劣化することを防ぐために、機能性透明層(A)が、紫外線カット性を有していると良い。例えば、紫外線を吸収する無機薄膜単層または多層からなる反射防止膜、または、紫外線吸収剤を含有する機能性透明膜を形成する基材、ハードコート膜を有している機能性透明層(A)である。紫外線吸収剤の種類、濃度は特に限定されない。
【0195】
また、透明粘着層のうち少なくとも1つの層は紫外線吸収剤を含有していても良い。
紫外線カットする部材は、紫外線が入射する面と色素を含有する層の間に配されることが肝要であり、紫外線カット性は、色素の耐久性によって異なり特に限定されない。
【0196】
8.厚さ
「接着・粘着の辞典(朝倉書店)」によると、支持体の厚みと粘着力の関係について、「一般には、支持体の厚みが大きくなると曲げエネルギーが大きくなるので粘着力は大きくなるが、ある点から曲げモーメントなどの影響により粘着力は低下してくる」との記載がある。本発明者らは、透明高分子フィルムの全体厚を0.3mm以上とすることで、光学フィルターフィルムのガラス面からの剥離を容易に行うことができることを見出した。光学フィルターフィルムの剛性は主に透明高分子フィルムの厚さ合計によって支配されるため、本発明における効果は、上記曲げモーメントの効果によるものと推察される。また、光学フィルターフィルムの剛性が増すことにより、平均した力による連続的な剥離が可能となり、剥離中断点を起点とするガラス板への糊残りが生じることが少なくなる。
【0197】
さらには、透明高分子フィルムの厚さ合計を上げることによって耐衝撃性も向上する。透明高分子フィルムの厚さ合計が大きいほど、その耐衝撃性は向上するが、フィルムの積層枚数が多くなると生産効率が低くなる、その剛性が大幅増加することによりディスプレイへの直接貼合わせが困難になる。従って透明高分子フィルムの厚さ合計については特に指定はないが、0.3〜1.0mmが好ましく、さらに好ましくは、0.4mm〜0.8mmである。また、透明高分子フィルムの積層枚数についても特に指定はないが、2〜6枚が好ましく、さらに好ましくは2枚〜4枚である。
【0198】
図12〜図17は、本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【0199】
図12において、透明粘着層30、近赤外遮蔽機能を有する透明高分子フィルム(B)23(150μm)、透明粘着層30、反射防止機能を示す機能性透明層(A)を有する透明高分子フィルム(B)24(188μm)が順次積層されて、ディスプレイ用フィルタを構成する。
【0200】
図13において、透明粘着層30、嵩上げ用透明高分子フィルム(B)25(200μm)、透明粘着層30、近赤外遮蔽機能を有する透明高分子フィルム(B)23(75μm)、透明粘着層30、反射防止機能を示す機能性透明層(A)を有する透明高分子フィルム(B)24(80μm)が順次積層されて、ディスプレイ用フィルタを構成する。
【0201】
図14において、透明粘着層30、近赤外遮蔽機能を有する透明高分子フィルム(B)23(75μm)、透明粘着層30、嵩上げ用透明高分子フィルム(B)25(200μm)、透明粘着層30、反射防止機能を示す機能性透明層(A)を有する透明高分子フィルム(B)24(80μm)が順次積層されて、ディスプレイ用フィルタを構成する。
【0202】
図15において、透明粘着層30、嵩上げ用透明高分子フィルム(B)25(200μm)、透明粘着層30、反射防止機能を示す機能性透明層(A)及び赤外線遮蔽機能を有する透明高分子フィルム(B)26(150μm)が順次積層されて、ディスプレイ用フィルタを構成する。
【0203】
図16において、透明粘着層30、嵩上げ用透明高分子フィルム(B)25(200μm)、透明粘着層30、電磁波遮蔽機能を示す透明導電層(D)を有する透明高分子フィルム(B)23(75μm)、透明粘着層30、防眩性機能をを示す機能性透明層(A)を有する透明高分子フィルム(B)24(150μm)が順次積層され、透明高分子フィルム23の上に電極50が形成されてディスプレイ用フィルタを構成する。
【0204】
図17において、透明粘着層30、嵩上げ用透明高分子フィルム(B)25(200μm)、透明粘着層30、反射防止機能を示す機能性透明層(A)及び電磁波遮蔽機能を示す透明導電層(D)を有する透明高分子フィルム(B)26(188μm)が順次積層され、透明高分子フィルム25と26の上に電極50が形成されてディスプレイ用フィルタを構成する。
【0205】
図18は、図16に示した電磁波遮蔽機能を示す透明高分子フィルム(B)23の構成を示す断面図である。高分子フィルム(B)20の上に、電磁波遮蔽機能を示す透明導電層(D)10が形成され、透明導電層(D)10は、高屈折率透明薄膜層(Dt)11と銀又は銀合金から成る金属薄膜層(Dm)12とがDt/Dm/Dt/Dm/Dtの順で積層されて構成される。フィルタの裏面には透明粘着層30が設けられ、ディスプレイ画面に接着可能になる。
【0206】
図19は、図17に示した電磁波遮蔽機能を示す透明高分子フィルム(B)26の構成を示す断面図である。高分子フィルム(B)20の上に、電磁波遮蔽機能を示す透明導電層(D)10が形成され、透明導電層(D)10は、高屈折率透明薄膜層(Dt)11と銀又は銀合金から成る金属薄膜層(Dm)12とがDt/Dm/Dt/Dm/Dt/Dm/Dtの順で積層されて構成される。高分子フィルム(B)20の反対面には機能性透明層(A)として反射防止膜61が設けられる。フィルタの裏面には透明粘着層30が設けられ、ディスプレイ画面に接着可能になる。
【0207】
図20は、図16または図17に示したディスプレイ用フィルタの平面図である。フィルタの平面形状は長方形で、ディスプレイで表示された画像はフィルタ中央部を透過して観察される。フィルタの長辺および短辺を含む周辺部には透明導電層と電気接続された電極50が形成され、電極50はディスプレイのグランド端子に接続される。
【0208】
9.電極
電磁波シールドを必要とする機器には、機器のケース内部に金属層を設けたり、ケースに導電性材料を使用して電波を遮断する。ディスプレイ画面の如く透明性が必要である場合には、透明導電層を形成した窓状の電磁波シールド体を設置する。電磁波は導電層において吸収されたのち電荷を誘起するため、アースをとることによって電荷を逃がさないと、再び電磁波シールド体がアンテナとなって電磁波を発振し電磁波シールド能が低下する。従って、電磁波シールド体とディスプレイ本体のアース部が電気的に接続している必要がある。そのため、図3に示したように透明導電層(D)上に透明粘着層(C)及び機能性透明層(A)が形成されている場合は、透明粘着層(C)及び機能性透明層(A)は、導通部を残すように透明導電層(D)上に形成されることが好ましい。
【0209】
導通部の形状は特に限定しないが、電磁波シールド体とディスプレイ本体の間に、電磁波の漏洩する隙間が存在しないことが肝要である。
【0210】
本発明における電極とは、電磁波シールド体における外部との電気的導通部をいう。これは、透明導電層の剥き出し部でもよいし、剥き出し部の上部に、その保護と良好な電気的接触を目的として、導電性の金属ペーストを印刷したり、導電性テープ、導電性粘着材などの導電性材料を貼合わせてもよい。また、機能性透明層上に透明導電層と電気接続がとれる形で形成してもよい。以上のように、電極の形状や材料は特に限定しないが、透明導電層の剥き出し部を導電性材料で覆うように電極を形成することが好適である。
【0211】
但し、本発明における電極は、透明導電層を含む本発明のフィルムの断面部に導電性材料を接触させて得てもよい。断面部とは、透明導電層を含むフィルムの断面部は、少なくとも透明導電性層とそれを保護するためのフィルムが層状をなしていることが観察できるが、適当な導電性材料が透明導電層と断面部において接触していれば所望の電極を得ることができる。
【0212】
この場合に透明導電層上に形成される透明粘着層の端部が透明導電層の端部よりも内側に入り込んでいると、導電ペースト等を用いて電極を形成する場合にその隙間部分に導電ペーストが入り込み、透明導電層と電極との接触面積が増加するので好ましい。
【0213】
図21〜図25は、本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【0214】
図21において、透明粘着層30、透明高分子フィルム(B)23、透明導電層(D)10、機能性透明層(A)である防眩性フィルム71が順次積層され、透明導電層(D)10の上に電極50が形成されてディスプレイ用フィルタを構成する。
【0215】
図22において、外気側からディスプレイ側に向かって、機能性透明層(A)である防眩性フィルム71、透明高分子フィルム(B)23、透明導電層(D)10が順次積層され、透明導電層(D)10の周辺に電極50が形成される。透明導電層(D)10の裏面で、電極50を除いた中央部には透明粘着層30が設けられ、ディスプレイ画面に接着可能になる。
【0216】
図23において、透明粘着層30、透明高分子フィルム(B)23、透明導電層(D)10、機能性透明層(A)である防眩性フィルム71が順次積層され、積層体の側端面に電極50が形成されてディスプレイ用フィルタを構成する。
【0217】
図24において、透明粘着層30、透明導電層(D)10、透明高分子フィルム(B)23、機能性透明層(A)である防眩性フィルム71が順次積層され、透明粘着層30と透明導電層(D)10との間に銅テープ等の導電テープ51がフィルタ周辺部に介在して、透明導電層(D)10の電気接続を確保している。
【0218】
図25において、透明粘着層30、透明導電層(D)10、透明高分子フィルム(B)23、機能性透明層(A)である防眩性フィルム71が順次積層され、フィルタの厚さ方向に貫通するスルーホール電極52が形成され、透明導電層(D)10の電気接続を確保している。
【0219】
図26は、図21〜図25に示したディスプレイ用フィルタの平面図である。フィルタの平面形状は長方形で、ディスプレイで表示された画像はフィルタ中央部を透過して観察される。フィルタの2つの長辺には透明導電層と電気接続された電極50、導電テープ51又はスルーホール電極52が形成され、これらの電極はディスプレイのグランド端子に接続される。なお、図21〜図25に示したディスプレイ用フィルタの電極は、もちろん図20の平面図に示したように、フィルタの全周に配置されていてもよい。
【0220】
図24に示したように透明導電層とその上に貼合わせる透明粘着層との間に銅テープのような導電テープを挟み込み、その導電テープの一部分を電磁波シールド体外部に引き出すことによって電極を形成しても良い。この場合、外部に引き出された導電性テープが実質的に電極となる。
【0221】
図25に示したように透明導電層から電磁波シールド体最表面に通じるような隙間を設け、電極を形成しても良い。表面から見える隙間の形状には特に指定はなく、円形でもよいし、角型でも良い。また線状に形成されていても構わない。表面から見える個々の隙間の大きさにも特に指定はない。ただし、あまり大きすぎると視認部分にかかってしまうので好ましくない。隙間の形成位置は、視認部分を避ける位置であれば特に指定はない。必然的に端部から近い位置となる。形成する隙間の数にも特に制限はないが、全周に渡ってできるだけ多く形成されている方が電流の取り出し効率が上昇するので好ましい。隙間は透明導電層と電磁波シールド体最表面の間に設けられていれば良いが、形成する電極との接触面積を増やす観点から、透明導電層を貫通していることが好ましい。
【0222】
隙間を埋める部材に関しても特に指定はない。金属部材で埋めても良いし、導電性ペーストで埋めても良い。この場合、隙間を埋めた部材が実質的に電極となる。
【0223】
導通部は透明導電層(D)の周縁部に、且つ連続的に設けられていることが好適である。すなわち、ディスプレイの表示部である中心部分を除いて、枠状に、導通部が設けられていることが好ましい。
【0224】
但し、全周に導通部が形成されていなくとも一定の電磁波遮断能力はあるので、装置からの電磁波発生量と許容電磁波漏洩量とを総合的に考慮することによって、使用可能な場合も多い。
【0225】
例えば、長方形の向い合う辺のみに導電材料を付与し電極を形成する設計にすれば、ロールツーロール方式で電極を形成したり、ロール状態のまま電極を形成したりすることができるため、非常に生産効率良く光学フィルターを作製することができるので都合が良い。また、この手法は先に示した、電極として導電性テープを用いる場合においても利用することができる。
【0226】
長方形の向い合う2辺以外の部分に加えてさらに別の部分に電極が形成されていたり、向い合う2辺における一部分に電極が形成されていない部分が存在しても特に問題はない。
【0227】
導通部を覆う電極は、耐環境性及び耐擦傷性に劣る透明導電層(D)の保護にもなる。電極に用いる材料は、導電性、耐触性および透明導電膜との密着性等の点から、銀、金、銅、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、亜鉛、カーボン等の単体もしくは2種以上からなる合金や、合成樹脂とこれら単体または合金の混合物、もしくは、ホウケイ酸ガラスとこれら単体または合金の混合物からなるペーストを使用できる。電極形成にはメッキ法、真空蒸着法、スパッタ法など、ペーストといったものは印刷、塗工する方法など従来公知の方法を採用できる。
【0228】
用いる導電性材料は電気を通導することのできるものであれば特に指定はない。通常は、銀ペーストなどの導電性の材料をペースト状にした物が用いられる。
【0229】
電極の形成方法としては、ペースト状の物であれば断面部に塗布し乾燥させたりして行う。ロール状態のフィルムの側面に導電性材料を塗布しても良いし、ロールツーロールで繰り出しながら側面に塗布しても構わない。また、テープ状の導電性材料も用いることができる。
【0230】
また、透明支持基体に透明導電性薄膜層が形成された透明高分子フィルムを貼合わせた後に、断面部に塗布することもできる。
【0231】
塗布方法としては、効率および精度の観点から、スクリーン印刷法が用いられる場合が多い。
【0232】
また隙間を金属部材で埋めて電極を形成する場合は、電磁波シールド体自体には予め加工を施さなくても構わない。ねじ穴を形成した金属性のアースを予め表示装置の外周部分に準備しておき、金属性のアース部分を含めて、表示装置の表示部分に電磁波シールド体を貼付けた後に電磁波シールド体を貫通するようにして金属性アースのねじ穴に導電性のねじを埋め込めば良い。この場合導電性のねじが実質的に電極の役割を果たす。この手法を用いると電磁波シールド体をロールツーロール方式で生産性高く作製できるうえ、電磁波シールド体の全周部分に渡って電極を形成することも容易である。
【0233】
10.電磁波シールド
電磁波シールド体と表示装置との間からの電磁波の漏れを最小限にするためには、電磁波シールド体の導電層と表示装置との間の絶縁空間をできるだけ減らすことが必要である。空気やその他絶縁物が隙間に介在しているとそこから電磁波が外部に漏れ出してしまい好ましくない。
【0234】
従来のように支持基体に透明導電性フィルムを貼合わせて電磁波シールド体を作製する場合は、透明導電層と表示装置との間に主に絶縁物である支持基体が存在することになり、透明導電層と表示装置との間を全周に渡って導電性を保つように接触させなければ、十分な電磁波遮断効果を得ることができなかった。このため、電磁波シールド体の製造工程においては、枚葉により透明支持基体に貼付けるという工程および枚葉で全外週部分に電極を形成するという作業が必要であった。
【0235】
本発明において、フィルム状態の電磁波シールド体を表示装置に直接貼付ける場合は、導電層と表示装置との距離が非常に近いため、絶縁空間を従来の手法に比較して大幅に狭くすることができるため、電極を全周部分に渡って形成せずとも十分な電磁波遮断効果を得ることできるので好ましい。このことは電磁波シールド体の透明導電層が表示装置側に形成されている場合に顕著である。すなわち長方形の2つの長辺のみに電極を形成することによって十分な電磁波遮断効果を得ることができる。その場合、製造手法として非常に生産性の高い手法であるロールツーロール法を用いることができるので非常に好適である。
【0236】
11.表示装置及びその製造方法
本発明の表示装置は、装置の表示部に接着された、電磁波シールド体及び/又は調光フィルムとして機能するディスプレイ用フィルタを具備する。電磁波シールド体は、表示装置とを電気的に接触する。
【0237】
本発明に係る表示装置の製造方法は、主として以下の(1)〜(10)の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0238】
方法(1):機能性透明層(A)及び導通部(及び電極)/透明導電層(D)/高分子フィルム(B)(及びハードコート層(F))/透明粘着層(C)、または、機能性透明層(A)及び導通部(及び電極)/透明粘着層(C)/透明導電層(D)/高分子フィルム(B)(及びハードコート層(F))/透明粘着層(C)である本発明の電磁波シールド体を表示装置の表示部に透明粘着層(C)を貼合わせ面にして、貼合わせる。
【0239】
貼合わせ後、本発明の電磁波シールド体の導通部または導通部上に形成された電極と表示装置本体の導通部すなわちアース部を、導電性テープまたは導電性接着剤または導電性塗料または導電性の成形部品をもって電気的に接続する。
【0240】
方法(2):表示装置の表示部に、透明導電層(D)/高分子フィルム(B)(及びハードコート層(F))/透明粘着層(C)の順に構成される積層体を、透明粘着層(C)を貼合わせ面として、貼合わせた後、透明導電層(D)上に導通部を残して機能性透明層(A)を直接または透明粘着層(C)を介して形成し、且つ、積層体の導通部と表示装置本体の導通部すなわちアース部を、導電性テープまたは導電性接着剤または導電性塗料または導電性の成形部品をもって電気的に接続する。
【0241】
方法(3):表示装置の表示部に透明粘着層(C)を塗工または貼合し、機能性透明層(A)及び導通部(及び電極)/透明導電層(D)/高分子フィルム(B)(及びハードコート層(F))の順に構成される積層体を、高分子フィルム(B)を貼合わせ面として、貼合わせた後、積層体の導通部と表示装置本体の導通部すなわちアース部を、導電性テープまたは導電性接着剤または導電性塗料または導電性の成形部品をもって電気的に接続する。
【0242】
方法(4):表示装置の表示部に透明粘着層(C)を塗工または貼合し、透明導電層(D)/高分子フィルム(B)(及びハードコート層(F))の順に構成される透明積層体を高分子フィルム(B)を貼合わせ面として、貼合わせた後、透明導電層(D)上に導通部を残して機能性透明層(A)を直接または第2の透明粘着層を介して形成し、且つ、積層体の導通部と表示装置本体の導通部すなわちアース部を、導電性テープまたは導電性接着剤または導電性塗料または導電性の成形部品をもって電気的に接続する。
【0243】
方法(5):機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明導電層(D)/透明粘着層(C)および導電性粘着層からなる電磁波シールド体を、表示装置の少なくとも表示部に透明粘着層(C)を貼合わせ面にし、且つ、表示装置の少なくともアース部に導電性粘着層を貼合わせ面にして貼合わせる。
【0244】
方法(6):表示装置の少なくとも表示部、または、少なくとも透明導電層(D)/高分子フィルム(B)/機能性透明層(A)の順に構成される積層体の透明導電層(D)上の透光部に透明粘着層(C)を形成し、また、表示装置の少なくともアース部、または、該積層体の透明導電層(D)上に導電性粘着層を形成した後、該積層体と表示装置を貼合わせる。
【0245】
方法(7):機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明導電層(D)/透明粘着層(C)および導電性粘着層からなり、端部において透明導電層(D)と高分子フィルム(B)の間に銅テープ等の導電性テープの一部分が挟み込まれている電磁波シールド体を、表示装置の少なくとも表示部に透明粘着層(C)を貼合わせ面にし、且つ、表示装置の少なくともアース部に導電性テープの外部露出部分を貼合わせる。
【0246】
方法(8):表示装置の少なくとも表示部、または、少なくとも透明導電層(D)/高分子フィルム(B)/機能性透明層(A)の順に構成され、端部において透明導電層(D)と高分子フィルム(B)の間に銅テープ等の導電性テープの一部分が挟み込まれている積層体の透明導電層(D)上の透光部に透明粘着層(C)を形成し、また、表示装置の少なくともアース部、または、該積層体の透明導電層(D)上に導電性粘着層を形成した後、該積層体と表示装置を貼合わせる。
【0247】
本発明の電磁波シールド体は、透過特性、透過率、可視光線反射率が優れているため、プラズマディスプレイに形成することにより、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その色純度及びコントラストを向上させることができる。さらにまた、プラズマディスプレイから発生する健康に害をなすといわれている電磁波を遮断する電磁波シールド能に優れ、さらに、プラズマディスプレイからでる800〜1100nm付近の近赤外線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる。また、耐候性・耐環境性に優れ、反射防止性及び/または防眩性、耐擦傷性、防汚性、帯電防止性等を兼ね備えており、低コストに提供できる。本発明の電磁波シールド体を具備せしめることにより、優れた特性を有するプラズマディスプレイを提供できる。
【0248】
本発明の電磁波シールド体は、光学特性、電磁波シールド能、近赤外線カット能に優れているので、プラズマディスプレイ以外の電磁波及び/又は近赤外線を発生するFED
(Field Emission Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等の各種ディスプレイに好適に使用できる。
【0249】
調光フィルムを具備した表示装置の製造方法に関しては、主として以下の2つの方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0250】
方法(9):少なくとも機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明粘着層(C)である本発明の調光フィルムを表示装置の少なくとも表示部に透明粘着層(C)を貼合わせ面として貼合わせる。
【0251】
方法(10):表示装置の少なくとも表示部に透明粘着層(C)を形成し、少なくとも透明導電層(D)/高分子フィルム(B)の順に構成される積層体の高分子フィルム(B)面を貼合わせ面として、表示装置と貼合わせる。
【0252】
本発明の調光フィルムは、透過特性、透過率、反射特性が優れているため、カラープラズマディスプレイ等のディスプレイの表示部に直接形成することにより、ディスプレイの輝度を著しく損なうことなく、その色純度及びコントラストを向上させることができる。また、耐擦傷性、防汚性、静電気防止性等を兼ね備えており、低コストに提供できる。
【0253】
また、本発明の調光フィルムを直接ディスプレイ表面に形成し具備せしめることにより、優れた特性を有する表示装置を提供できる。
【実施例】
【0254】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0255】
実施例中の透明導電層(D)を構成する薄膜は、基材の一方の主面にマグネトロンDCスパッタリング法により成膜した。薄膜の厚さは、成膜条件から求めた値であり、実際に測定した膜厚ではない。
【0256】
高屈折率透明薄膜層(Dt)はITO薄膜で形成され、ターゲットに酸化インジウム・酸化スズ焼結体(組成比In23:SnO2=90:10wt%)又は酸化スズ焼結体を、スパッタガスにアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa:酸素分圧5mPa)を用いて成膜した。
【0257】
金属薄膜層(Dm)は銀薄膜又は銀−パラジウム合金薄膜で形成され、ターゲットに銀又は銀−パラジウム合金(パラジウム10wt%)を、スパッタガスにアルゴンガス(全圧266mPa)を用いて成膜した。
【0258】
尚、透明導電層の面抵抗は、四探針測定法(プローブ間隔1mm)により測定した。また、表面の可視光線反射率(Rvis )は、まず測定対象物の小辺を切り出し、透明粘着層を取り除いて高分子フィルム(B)側表面をサンドペーパーで荒らした後、艶消し黒スプレーしてこの面の反射を無くし、反射積分球(光線入射角度6゜)を用いた(株)日立製作所製分光光度計(U−3400)により可視領域の全光線反射率を測定し、ここで求められた反射率からJISR3106に従って計算した。
【0259】
(実施例1)
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下PET)フィルム(厚さ:188μm)を高分子フィルム(B)としてその一方の主面に、PETフィルムから順に、ITO薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:11nm)、ITO薄膜(膜厚:95nm)、銀薄膜(膜厚:14nm)、ITO薄膜(膜厚:90nm)、銀薄膜(膜厚:12nm)、ITO薄膜(膜厚:40nm)の計7層の透明導電層(D)を形成し、面抵抗2.2Ω/□の透明導電層(D)を有する透明積層体1を作製した。
【0260】
PETフィルム/透明導電層の断面を、本発明における高分子フィルム(B)/透明導電層(D)の一例を示す断面図として、(図1)に示した。図1において、符号10は透明導電層(D)、符号11は高屈折率透明薄膜層(Dt)、符号12は金属薄膜層(Dm)、符号20は高分子フィルム(B)である。
【0261】
酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤に有機色素を分散・溶解させ、アクリル系粘着剤の希釈液とした。アクリル系粘着剤/色素入り希釈液(80:20wt%)を混合し、コンマコーターにより透明積層体1の高分子フィルム(B)側の面に乾燥膜厚25μmに塗工の後、乾燥、粘着面に離型フィルムをラミネートして、離型フィルムと透明積層体の高分子フィルム(B)に挟み込まれた透明粘着層(C)(粘着材1)を形成した。なお、粘着材1の屈折率は1.51、消光係数は0であった。
【0262】
有機色素としては、プラズマディスプレイが放射する不要発光を吸収させるための波長595nmに吸収極大を有する三井化学(株) 製色素PD−319、及び白色発光の色度を補正するための三井化学(株) 製赤色色素PS−Red−Gを用い、それぞれ乾燥した粘着材1の中に1150(wt)ppm、1050(wt)ppmで含有されるようにアクリル系粘着剤/色素入り希釈液を調整した。なお、PD−319は下記式(3)(化4)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・バナジル錯体である。
【0263】
【化4】

【0264】
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm)の一方の主面に、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化によって導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成し、その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工・90℃乾燥・熱硬化させ、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート性(JISK5400準拠の鉛筆硬度:2H)、ガスバリア性(ASTM−E96準拠、1.8g/m2・day)、反射防止性(表面のRvis:1.0%)、帯電防止性(表面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚性を有する機能性透明層(A)として反射防止フィルム1を得た。反射防止フィルム1の他方の主面に、粘着材1と同様の素材で色素を入れない粘着剤/希釈液を塗工・乾燥させ、厚さ25μmの透明粘着層(粘着材2)を形成し、さらに離型フィルムをラミネートした。
【0265】
ロール状の透明積層体1/粘着材1/離型フィルムを970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層(D)面を上にして固定した。さらに、ラミネーターを用いて、透明導電層(D)の周縁部20mmが剥き出しになるように導通部を残して、内側だけに反射防止フィルムをラミネートした。透明導電層(D)面から見た平面図を、本発明の電磁波シールド体の一例を示す平面図として、(図2)に示した。図2において、符号02は電磁波シールド体の透光部、符号03は電磁波シールド体の導通部である。
【0266】
さらに、透明導電層(D)の剥き出しの導通部を覆うように周縁部の幅22mmの範囲に、銀ペースト(三井化学(株)製MSP−600F)をスクリーン印刷し、乾燥させ厚さ15μmの電極を形成した。支持板からはずして、透明粘着層(C)面に離型フィルムを有する本発明の電磁波シールド体を作製した。
【0267】
さらに、該電磁波シールド体の離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた後、60℃、2×105Paの加圧加温条件下でオートクレーブ処理した。電磁波シールド体の電極部と該プラズマディスプレイパネルのアース部を、(株)寺岡製作所製・導電性銅箔粘着テープ(510FR)を用いて接続し、本発明の電磁波シールド体を具備する表示装置を得た。該電磁波シールド体の断面を、本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例を示す断面図として、(図3)に示した。図3において、符号00はディスプレイ表示部、符号10は透明導電層(D)、符号20は高分子フィルム(B)、符号31は色素を含有する透明粘着層(C)、符号40は透明粘着層(E)、符号50は電極、符号60は反射防止性、ハードコート性、ガスバリア性、静電気防止性、防汚性を有する機能性透明層(A)、符号61は防汚性を有する反射防止膜、符号62は帯電防止性を有するハードコート膜、符号63はハードコート膜62及び反射防止膜61が形成される透明な基材、符号80は導電性銅箔粘着テープである。
【0268】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレートペレット1203(ユニチカ(株)製)に白色発光の色度を補正するための三井化学(株)製赤色色素PS−Red−Gを0.01wt%、同じく紫色色素PS−Violet−RCを0.015wt%混合し、260〜280℃で溶融させ、押し出し機により厚み200μmのフィルムを作製した。その後、このフィルムを2軸延伸して、厚み100μmの色素を含有した色素入りPETフィルム〔高分子フィルム(B)〕を作製した。
【0269】
該PETフィルムの一方の主面にアルコキシシランを氷酢酸で加水分解したものにシリコーン系表面平滑剤を加えたコート液を、グラビアコーターにて塗工・120℃の熱硬化によってハードコート膜(膜厚:10μm、鉛筆硬度:3H)を形成し、ハードコート層(F)を形成した色素含有のPETフィルムを得た。該ハードコート層上に、順にSnO2 薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:9nm)、SnO2 薄膜(膜厚:80nm)、銀−パラジウム合金薄膜(膜厚:11nm)、SnO2 薄膜(膜厚:40nm)の計5層の面抵抗5.3Ω/□の透明導電層(D)を形成し、色素を含有するPETフィルム/ハードコート層(F)/透明導電層(D)である透明積層体2を作製した。
【0270】
透明積層体2のPETフィルム面に粘着材1と同様の素材で色素を入れない粘着剤/希釈液を塗工・乾燥させ、厚さ25μmの透明粘着層(C)(粘着材3)を形成し、さらに離型フィルムをラミネートした。
【0271】
ロール状の透明積層体2/粘着材3/離型フィルムを970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層(D)面を上にして固定した。
【0272】
多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を添加、さらに有機シリカ微粒子(平均粒径:15μm)を分散させた塗工液を調製した。
【0273】
透明導電層(D)の周縁部20mmが剥き出しになるように導通部を残して内側だけにフレキソ印刷した後、紫外線硬化し、防眩性(ヘーズメーター測定のヘーズ値:5%)、ハードコート性(鉛筆硬度:2H)を有する機能性透明層(A)として、アンチグレア層を形成した。支持板からはずして、透明粘着層(C)面に離型フィルムを有する本発明の電磁波シールド体を作製した。
【0274】
さらに、該電磁波シールド体の離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた後、60℃、2×105Paの加圧加温条件下でオートクレーブ処理した。電磁波シールド体の導通部と該プラズマディスプレイパネルのアース部を、(株)寺岡製作所製・導電性銅箔粘着テープ(510FR)を用いて接続し、本発明の電磁波シールド体を具備する表示装置を得た。
【0275】
該電磁波シールド体の断面を、本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例を示す断面図として、(図4)に示した。図4において、符号00はディスプレイ表示部、符号10は透明導電層(D)、符号21は色素を含有する高分子フィルム(B)、符号22はハードコート層(F)、符号30は透明粘着層(C)、符号70はアンチグレア層(防眩性、ハードコート性を有する機能性透明層(A))、符号80は導電性銅箔粘着テープである。
【0276】
(実施例3)
実施例1と同様に高分子フィルム(B)/透明導電層(D)積層体を作製した。
【0277】
さらにロール状に巻き取られた上記PETフィルム/透明導電層のPETフィルムの反対側主面に、機能性透明層(A)として次の機能性透明膜1をロール・ツー・ロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化によって導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成し、その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工・90℃乾燥・熱硬化させ、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート性(JIS K5400準拠の鉛筆硬度:2H)、反射防止性(表面のRvis :0.9%)、帯電防止性(表面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚性を有する機能性透明層(A)を形成した。上記のロール状の機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明導電層(D)を970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層(B)面を上にして固定した。酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤に有機色素を分散・溶解させ、アクリル系粘着剤の希釈液とした。アクリル系粘着剤/色素入り希釈液(80:20wt%)を混合し、バッチ式ダイコーターにより透明導電層(D)上に、周縁部22mmを除いて、乾燥膜厚25μmに塗工の後、乾燥させ、透明粘着層(C)として粘着材1を形成した。なお、粘着材1の屈折率は1.51、消光係数は0であった。
【0278】
有機色素はプラズマディスプレイが放射する不要発光を吸収させるための波長595nmに吸収極大を有する三井化学( 株) 製色素PD−319、及び、白色発光の色度を補正するための三井化学( 株) 製赤色色素PS−Red−Gが、それぞれ乾燥した粘着材1の中で1150(wt)ppm、1050(wt)ppm含有するようにアクリル系粘着剤/色素入り希釈液を調整した。PD−319は式(3)(化5)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・バナジル錯体である。
【0279】
【化5】

【0280】
さらに、透明導電層(D)の剥き出しの導通部を覆うように、周縁部の幅22mmの範囲に、二液性常温硬化型接着剤((株)スリーボンド製3381)をメタルマスクを用いて印刷し、乾燥させ厚さ25μmの導電性粘着層を形成した。
【0281】
支持体からはずして、透明粘着層(C)及び導電性粘着層面に離型フィルムをラミネートして、片面に離型フィルムを有する本発明の電磁波シールド体を作製した。
【0282】
さらに、該電磁波シールド体の離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた。この際、少なくとも表示部に透明粘着層(C)部が、少なくともアース部に導電性粘着層を貼合わせるように位置合わせを行なった。貼合わせ後、60℃、2×105 Paの加圧加温条件下でオートクレーブ処理し、本発明の電磁波シールド体を具備する表示装置を得た。
【0283】
該電磁波シールド体の透明粘着層側から見た平面を、本発明の電磁波シールド体との一例を示す平面図として、(図5)に示した。図5において、符号31は色素を含有する透明粘着層(C)、符号41は導電性粘着層である。
【0284】
該電磁波シールド体の断面を、本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例を示す断面図として、(図6)に示した。図6において、符号00はディスプレイ表示部、符号10は透明導電層(D)、符号20は高分子フィルム(B)、符号31は色素を含有する透明粘着層(C)、符号41導電性粘着層、符号60は反射防止性、ハードコート性、静電気防止性、防汚性を有する機能性透明層(A)、符号61は防汚性を有する反射防止膜、符号62は帯電防止性を有するハードコート膜である。
【0285】
(実施例4)
実施例3と同様に高分子フィルム(B)を作製した。
【0286】
ポリエチレンテレフタレートペレット1203(ユニチカ(株)製)に白色発光の色度を補正するための三井化学(株)製赤色色素PS−Red−Gを0.01wt%、同じく紫色色素PS−Violet−RCを0.015wt%混合し、260〜280℃で溶融させ、押し出し機により厚み200μmのフィルムを作製した。その後、このフィルムを2軸延伸して、厚み100μmの色素を含有した高分子フィルム(B)である色素入りPETフィルムを作製した。
【0287】
該PETフィルムの一方の主面に、順にSnO2 薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:9nm)、SnO2 薄膜(膜厚:80nm)、銀−パラジウム合金薄膜(膜厚:11nm)、SnO2 薄膜(膜厚:40nm)の計5層の面抵抗5.3Ω/□の透明導電層(D)を形成し、色素を含有するPETフィルム/透明導電層(D)である透明積層体2をロールツーロールで作製した。
【0288】
さらにロール状に巻き取られた上記PETフィルム/透明導電層のPETフィルムの反対側主面に、機能性透明層(A)として次の機能性透明膜2をロールツーロールで連続的に形成した。多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を添加、さらに有機シリカ微粒子(平均粒径:15μm)を分散させた塗工液を調製し、塗工後、紫外線硬化させ、防眩性(ヘーズメーター測定のヘーズ値:5%)、ハードコート性(鉛筆硬度:2H)を有する機能性透明層(A)として、アンチグレア層を形成した。
【0289】
上記のロール状の機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明導電層(D)を970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層(D)面を上にして固定した。
【0290】
実施例1の粘着材1と同様の素材で色素を入れない粘着材2を離型フィルム上に25μm厚さに形成した。粘着材2/離型フィルムを、透明導電層上且つ周縁部20mm残した内側に、粘着材2面を貼合わせ面として額縁貼りラミネーターを用いてラミネートした。さらに、透明導電層(D)の剥き出しの導通部を覆うように、周縁部の幅20mmの範囲に、導電性両面粘着テープ(寺岡製作所製WMFT791)を、片面の離型フィルムを剥離して貼った。
【0291】
支持体からはずして、片面に離型フィルムを有する本発明の電磁波シールド体を作製した。さらに、該電磁波シールド体の離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた。この際、少なくとも表示部に透明粘着層(C)部が、少なくともアース部に導電性粘着層を貼合わせるように、位置合わせを行なった。貼合わせ後、60℃、2×105 Paの加圧加温条件下でオートクレーブ処理し、本発明の電磁波シールド体を具備する表示装置を得た。
【0292】
該電磁波シールド体の断面を、本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例を示す断面図として、(図7)に示した。図7において、符号00はディスプレイ表示部、符号10は透明導電層(D)、符号21は色素含有の高分子フィルム(B)、符号30は透明粘着層(C)、符号41は導電性粘着層、符号70はアンチグレア層(防眩性、ハードコート性を有する機能性透明層(A))である。
【0293】
(比較例1)
PETフィルム(厚さ:188μm)を高分子フィルム(B)として、その一方の主面に、ITO薄膜(膜厚:400nm)からなる面抵抗15Ω/□の透明導電層を形成し、透明積層体3を作製した。透明積層体3を用いて、色素を使用しないほかは、実施例1と同様に、電磁波シールド体を作製し、それを具備した表示装置を得た。
【0294】
以上のようにして得られた実施例1〜4の本発明の電磁波シールド体を有する表示装置であるプラズマディスプレイについて、以下の評価を行った。
【0295】
1)電磁波シールド体の透過率
ミノルタ(株)製CRTカラーアナライザ(CA100)を用いて、電磁波シールド体を形成する前後でのプラズマディスプレイの分光放射輝度を求め、形成後の輝度の、形成前の輝度に対する比を百分率で示した。
【0296】
2)プラズマディスプレイの明所コントラスト比(最高最低輝度比)
電磁波シールド体を形成する前後で評価した。周囲明るさ100lxの明時において、プラズマディスプレイパネルの白色表示時の最高輝度(cd/m2 )と黒色表示時の最低輝度(cd/m2 )を、ミノルタ(株)製の輝度計(LS−110)を用いて測定し、その比(最高輝度/最低輝度)を求めた。
【0297】
3)プラズマディスプレイの発光色の色純度
電磁波シールド体を形成する前後で評価した。プラズマディスプレイにディスプレイ用フィルターを装着しない場合と、実施例1のディスプレイ用フィルターを装着した場合について測定した。
【0298】
白色(W)表示、赤色(R)表示、緑色(G)表示、青色(B)表示において、ミノルタ(株)製CRTカラーアナライザ(CA100)を用いて、RGB色度(x,y)及び白色の色度、色温度、黒体軌跡からの白色偏差を測定した。
【0299】
PDP発光の三原色がNTSC方式で定めたRGB色の色再現範囲に近くなる程好ましい。また、PDP発光の三原色をx−y色度図上で結んだ三角形の面積の、NTSCの色再現範囲の面積に対する比の百分率が100%に近くなると、色再現範囲が広くなることを示す。
【0300】
4)電磁波シールド能
電磁波シールド体を形成していないプラズマディスプレイと実施例1〜4及び比較例1の電磁波シールド体を設けたプラズマディスプレイにおいて、以下の測定を行った。
【0301】
ダイポールアンテナを表示部中心位置から面の垂線方向10mの位置に設置し、アドバンテスト性スペクトラル・アナライザ(TP4172)で30〜230MHz帯域における放射電界強度を測定した。VCCIの3m法においては、この領域での許容値は、
Class Aで50dBμV/m以下、 ClassBで40dBμV/m以下である。評価は33MHz、90MHzで行った。
【0302】
5)電磁波シールド体の近赤外線透過率
実施例1〜4及び比較例1の電磁波シールド体を評価した。
【0303】
電磁波シールド体の透光部を小片に切り出し、(株)日立製作所分光光度計(U−3400)により、800〜1000nmの平行光線透過率を測定し、820nm、850nm、950nmにおける透過率を評価した。
【0304】
6)近赤外線カット能
電磁波シールド体を形成していないプラズマディスプレイと実施例1、2及び比較例1の電磁波シールド体を設けたプラズマディスプレイにおいて、以下の測定を行った。
【0305】
赤外線リモートコントローラーを使用する電子機器として家庭用VTRを0.2〜5mディスプレイから離して、その誤動作を確認した。誤動作がある場合は、その限界距離を求めた。実用的には、少なくとも3m以下、好適には1.5m以下である。
【0306】
実施例1の本発明の電磁波シールド体は、プラズマディスプレイ発光の透過率が可視光線透過率で50%であり、不要発光がある波長595nmに吸収極大を有する色素により、必要な発光のある波長610nmの透過率に対する、595nmの透過率の百分率は38%であった。また、これを具備したプラズマディスプレイは、反射防止性を有する機能性透明層(A)が形成されている電磁波シールド体を用いたことにより、ディスプレイ表面の反射を抑制されたこと、及び、電磁波シールド体の透過特性により、周囲照度100lxの条件下における明所コントラスト比が、電磁波シールド体を形成される前が20であったのに対して45に向上した。また、映り込みも少ないので、視認性の良いプラズマディスプレイが得られた。
【0307】
実施例2の本発明の電磁波シールド体はプラズマディスプレイ発光の透過率が可視光線透過率で58%であり、映り込みも少ないので、視認性の良いプラズマディスプレイが得られた。明所コントラスト比は20から37に改善された。
【0308】
実施例3の本発明の電磁波シールド体はプラズマディスプレイ発光の透過率が可視光線透過率で58%であり、映り込みも少ないので、視認性の良いプラズマディスプレイが得られた。明所コントラスト比は20から37に改善された。
【0309】
実施例4の本発明の電磁波シールド体はプラズマディスプレイ発光の透過率が可視光線透過率で59%であり、映り込みも少ないので、視認性の良いプラズマディスプレイが得られた。明所コントラスト比は20から37に改善された。
【0310】
(図8)に電磁波シールド体形成前後の色再現範囲を示すx−y色度図を示した。(図8)はPDP(プラズマディスプレイパネル)に実施例1の電磁波シールド体を形成する前後の白色(W)、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)発光の色度をx−y色度図にプロットしたものである。さらに目標とされるNTSCの色度も合わせてプロットした。
【0311】
白色は、好適な白色色度の軌跡である黒体軌跡と比較した位置で評価できる。
本発明の電磁波シールド体を用いると、白色の色度偏差が少ないこと、また、実施例1の電磁波シールド体を形成する前より、色温度が高い位置にあることが判る。色温度はおよそ7000Kからおよそ10000Kに上昇した。
【0312】
また、RGBの点を結んだ三角形を図中に示した。NTSCに近くなるほど好ましいといえる。実施例1の電磁波シールド体を用いることにより、赤色、緑色の色度がNTSCの示す色度に近づき、色再現範囲を示す三角形が大きくなっていることが判る。三角形の面積の、NTSCが示す三角形の面積に対する百分率を求めたところ、実施例1の電磁波シールド体を形成する前が74%であったのに対し、形成することによって85%に改善できた。
また、上記の評価4)〜6)の結果を表1にまとめて示した。
【0313】
【表1】

【0314】
表1より、本発明の電磁波シールド体を用いることにより、VCCI規格の ClassBまたは ClassAをクリアできることが判る。透明導電層の面抵抗が低い程電磁波シールド能に優れていた。
【0315】
また、本発明の電磁波シールド体を用いることにより、近赤外線カット能に優れていることが判る。金属薄膜と項屈折率透明薄膜を高後に積層した透明導電層を用いた本発明の電磁波シールド体は、近赤外線の透過率が低くて、近赤外線カット能に優れ、その透明導電層の面抵抗が低い程近赤外線カット能に優れていた。さらにまた、本発明の電磁波シールド体は、機能性透明層(D)に各機能を持たせることによって、耐環境性及び/または耐擦傷性及び/または防汚性及び/または静電気防止性に優れている。
【0316】
(実施例5)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm)を高分子フィルム(B)として用い、その一方の主面に、機能性透明層(A)として次の機能性透明膜1をロール・ツー・ロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化によって導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成し、その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工・90℃乾燥・熱硬化させ、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート性(JIS K5400準拠の鉛筆硬度:2H)、反射防止性(表面のRvis :0.9%)、帯電防止性(表面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚性を有する機能性透明膜1を形成した。
【0317】
酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤に有機色素を分散・溶解させ、アクリル系粘着剤の希釈液とした。アクリル系粘着剤/色素入り希釈液(80:20wt%)を混合し、機能性透明膜1/TACフィルムのTACフィルム面上に、カンマコーターにより乾燥膜厚25μmに塗工後、乾燥させ、透明粘着層(C)として粘着材1を形成した。透明粘着層面に離型フィルムをラミネートしてロール状に巻き取り、透明粘着層面に離型フィルムを有するロール状の本発明の調光フィルムを得た。
【0318】
有機色素としては、プラズマディスプレイが放射する不要発光を吸収させるための波長595nmに吸収極大を有する三井化学(株)製色素PD−319、及び白色発光の色度を補正するための三井化学(株)製赤色色素PS−Red−Gを用い、それぞれ乾燥した粘着材1の中で1650(wt)ppm、450(wt)ppm含有するように、アクリル系粘着剤/色素入り希釈液を調整した。PD−319は式(3)(化6)のテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・バナジル錯体である。
【0319】
【化6】

【0320】
さらに、該調光フィルムをシート状に裁断し、離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた。この際、少なくとも表示部全体に透明粘着層(C)部を貼合わせるようにシート裁断、貼り位置合わせを行なった。貼合わせ後、60℃、2×105Paの加圧加温条件下でオートクレーブ処理し、本発明の調光フィルムを具備する表示装置を得た。
【0321】
該調光フィルムの断面を、本発明の調光フィルムとその装着状態の一例を示す断面図として、(図9)に示した。図9において、符号00はディスプレイ表示部、符号20は高分子フィルム(B)、符号31は色素含有の透明粘着層(C)、符号60は反射防止性、ハードコート性、静電気防止性、防汚性を有する機能性透明層(A)、符号61は防汚性を有する反射防止膜、符号62は静電気防止性を有するハードコート膜である。
【0322】
(実施例6)
ポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット1203(ユニチカ(株)製)に、前記の式(3)で表わされる三井化学(株)製色素PD−319を0.018wt%、波長585nmに吸収極大を有する三井化学(株)製色素PD−311を0.018wt%、白色発光の色度を補正するための三井化学(株)製赤色色素PS−Red−Gを0.004wt%混合し、260〜280℃で溶融させ、押し出し機により厚み250μmのフィルムを作製した。その後、このフィルムを2軸延伸して、厚み125μmの色素を含有した高分子フィルム(B)である色素入りPETフィルムを作製した。
【0323】
PD−311は式(4)(化7)のテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体である。
【0324】
【化7】

【0325】
さらにロール状に巻き取られた上記PETフィルムの一方の主面上に機能性透明層(A)として次の機能性透明膜2をロールツーロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を添加、さらに有機シリカ微粒子(平均粒径:15μm)を分散させた塗工液を調製し、塗工後、紫外線硬化させ、防眩性(ヘーズメーター測定のヘーズ値:5%)、ハードコート性(鉛筆硬度:2H)を有するアンチグレア層である機能性透明膜2を形成した。実施例1の粘着材1と同様の素材で色素を入れない粘着材2を機能性透明膜2/色素入りPETフィルムのPETフィルム面上に形成した。透明粘着層面に離型フィルムをラミネートしてロール状に巻き取り、透明粘着層面に離型フィルムを有するロール状の本発明の調光フィルムを得た。
【0326】
さらに、該調光フィルムをシート状に裁断し、離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた。この際、少なくとも表示部全体に透明粘着層(C)部を貼合わせるようにシート裁断、貼り位置合わせを行なった。貼合わせ後、60℃、2×105 Paの加圧加温条件下でオートクレーブ処理し、本発明の調光フィルムを具備する表示装置を得た。
【0327】
該調光フィルムの断面を、本発明の調光フィルムとその装着状態の一例を示す断面図として、(図10)に示した。図10において、符号00はディスプレイ表示部、符号21は色素を含有する高分子フィルム(B)、符号30は透明粘着層(C)、符号70はアンチグレア層(防眩性、ハードコート性を有する機能性透明層(A)である。
【0328】
以上のようにして得られた実施例5及び6の本発明の調光フィルムを有する表示装置であるプラズマディスプレイは、調光フィルム形成前のプラズマディスプレイとともに、以下のように評価した。
【0329】
1)調光フィルムの透過率
ミノルタ(株)製CRTカラーアナライザ(CA100)を用いて、調光フィルムを形成する前後でのプラズマディスプレイの分光放射輝度を求め、形成後の輝度の、形成前の輝度に対する比を百分率で示した。
【0330】
2)プラズマディスプレイの明所コントラスト比(最高最低輝度比)
調光フィルムを形成する前後で評価した。周囲明るさ100lxの明時において、プラズマディスプレイパネルの白色表示時の最高輝度(cd/m2 )と黒色表示時の最低輝度(cd/m2 )を、ミノルタ(株)製の輝度計(LS−110)を用いて測定し、その比(最高輝度/最低輝度)を求めた。
【0331】
3)プラズマディスプレイの発光色の色純度
調光フィルムを形成する前後で評価した。
【0332】
白色(W)表示、赤色(R)表示、緑色(G)表示、青色(B)表示において、ミノルタ(株)製CRTカラーアナライザ(CA100)を用いて、RGB色度(x,y)及び白色の色度、色温度、黒体軌跡からの白色偏差を測定した。
【0333】
PDP発光の三原色がNTSC方式で定めRGB色の色再現範囲に近くなる程好ましい。また、PDP発光の三原色をxy色度図上で結んだ三角形の面積の、NTSCの色再現範囲の面積に対する比の百分率が100%に近くなると、色再現範囲が広くなることを示す。
【0334】
実施例5の本発明の調光フィルムはプラズマディスプレイ発光の透過率が可視光線透過率で69%であり、不要発光がある波長595nmに吸収極大を有する色素により、必要な発光のある波長610nmの透過率に対する595nmの透過率の百分率は21%であった。また、これを具備したプラズマディスプレイは、反射防止性を有する機能性透明層(A)が形成されている調光フィルムを用いたことにより、ディスプレイ表面の反射を抑制されたこと、及び、調光フィルムの透過特性により、周囲照度100lxの条件下における明所コントラスト比が、調光フィルムを形成される前が20であったのに対して41に向上した。輝度も著しく損なわれておらず、映り込みも少ないので、視認性の良いプラズマディスプレイが得られた。さらに加えて赤色、緑色の発光の色純度が特に著しく改善された。緑色の発光の色純度改善は、595nm吸収色素の黄緑色発光の低減による。
【0335】
同じく、実施例6の本発明の調光フィルムは、プラズマディスプレイ発光の透過率が可視光線透過率で70%であり、不要発光がある波長595nmに吸収極大を有する色素と同じ波長585nmに吸収極大を有する色素より、必要な発光のある波長610nmの透過率に対する595nmの透過率の百分率は30%であった。また、これを具備したプラズマディスプレイは、調光フィルムの透過特性により、周囲照度100lxの条件下における明所コントラスト比が、調光フィルムを形成される前が20であったのに対して37に向上した。輝度も著しく損なわれておらず、映り込みも少ないので、視認性の良いプラズマディスプレイが得られた。さらに加えて赤色、緑色の発光の色純度が特に著しく改善された。緑色の発光の色純度改善は、595nm及び585nm吸収色素の黄緑色発光の低減による。特により短波長を吸収する585nm吸収色素により、その効果が大きかった。
【0336】
(図11)に本発明の調光フィルム形成前後の色再現範囲を示すx−y色度図を示した。
【0337】
(図11)はPDP(プラズマディスプレイパネル)に実施例5の調光フィルムを形成する前後の白色(W)、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)発光の色度をx−y色度図にプロットしたものである。さらに目標とされるNTSCの色度も合わせてプロットした。
【0338】
白色は、好適な白色色度の軌跡である黒体軌跡と比較した位置で評価できる。
本発明の電磁波シールド体を用いると、白色の色度偏差が少ないこと、また、実施例5または実施例6の調光フィルムを形成する前より、色温度が高い位置にあることが判る。色温度はおよそ7000Kからおよそ9500Kに上昇し、黒体軌跡からのずれを示す白色偏差もほぼ0であった。
【0339】
また、RGBの点を結んだ三角形を図中に示した。NTSCに近くなるほど好ましいといえる。実施例5または実施例6の調光フィルムを用いることにより、赤色、緑色の色度がNTSCの示す色度に近づき、色再現範囲を示す三角形が大きくなっていることが判る。三角形の面積の、NTSCが示す三角形の面積に対する百分率を求めたところ、実施例5の調光フィルムを形成する前が74%であったのに対し、形成することによって86%に改善できた。また、実施例6の調光フィルムを形成した場合は88%に改善できた。
【0340】
さらにまた、本発明の調光フィルムは、機能性透明層(A)に各機能を持たせることによって、耐擦傷性及び/または防汚性及び/または静電気防止性に優れている。
【0341】
(実施例7)
ポリエチレンテレフタレートペレット1203(ユニチカ(株)製)に近赤外吸収色素である三井化学(株)製SIR−128、SIR−130を各0.15wt%混合し約280℃で溶融後、押出2軸延伸により厚さ150μmの近赤外遮蔽フィルムを作製した。さらに、酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤を希釈液として、アクリル系粘着剤と希釈液とを80:20の割合で混合し、近赤外遮蔽フィルム面上に、カンマコーターにより乾燥膜厚25μmに塗工後、乾燥させ、粘着材層を形成し離型フィルムをラミネートした。
【0342】
上記のように作製した近赤外遮蔽フィルム(B)の上に、ベースフィルム厚さ188μmの反射防止フィルム(日本油脂製リアルック1200)をラミネートし、長さ960mm×幅550mmに裁断することによって、透明高分子フィルムの厚さ合計が0.338mmとなる光学フィルターフィルムを得た。
【0343】
このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0344】
(実施例8)
ポリエチレンテレフタレートペレット1203(ユニチカ(株)製)に近赤外吸収色素である三井化学(株)製SIR−128、SIR−130を各0.3wt%混合し約280℃で溶融後、押出2軸延伸により厚さ75μmの近赤外遮蔽フィルムを作製した。さらに、酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤を希釈液として、アクリル系粘着剤と希釈液とを80:20の割合で混合し、近赤外遮蔽フィルム面上に、カンマコーターにより乾燥膜厚25μmに塗工後、乾燥させ、粘着材層を形成し離型フィルムをラミネートした。
【0345】
また、近赤外吸収色素を加えずに、同様の手法を用いて、厚さ200μmの嵩上げ用透明高分子フィルムを作製した。
【0346】
近赤外遮蔽フィルムに、ベースフィルム厚さ80μmの反射防止フィルム(日本油脂製リアルック2200)をラミネートし、長さ960mm×幅550mmに裁断後、フィルム厚み200μmの嵩上げ用透明高分子フィルムの上に貼合わせた。これにより、透明高分子フィルムの合計厚さが、0.355mmとなる光学フィルターフィルムを得た。このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0347】
(実施例9)
実施例7に示した厚さ150μmの近赤外線遮蔽フィルムの主面上に機能性透明層(A)として、次の機能性透明膜をロールツーロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を添加、さらに有機シリカ微粒子(平均粒径:15μm)を分散させた塗工液を調製し、塗工後、紫外線硬化させ、防眩性(ヘーズメーター測定のヘーズ値:5%)、ハードコート性(鉛筆硬度:2H)を有する防眩性機能をもった機能性透明層を形成した。
【0348】
この近赤外遮蔽機能と防眩性機能を有する透明高分子フィルムに実施例8で示した厚さ200μmの嵩上げ用透明高分子フィルムをラミネートし、長さ960mm×幅550mmに裁断することにより透明高分子フィルムの合計厚さが、0.350mmとなる光学フィルターフィルムを得た。このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0349】
(実施例10)
押出2軸延伸によって厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを作製し、その一方の主面に、フィルムから順に、SnO2 薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:9nm)、SnO2 薄膜(膜厚:80nm)、銀−パラジウム合金薄膜(膜厚:11nm)、SnO2 薄膜(膜厚:40nm)の計5層を形成し、面抵抗5.3Ω/□の透明導電性薄膜層(D)を持った電磁波遮蔽機能を有する透明高分子フィルムを作製した。
【0350】
上記の電磁波遮蔽フィルムに対し、以下の方法で粘着材層を形成した。
酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤に有機色素を分散・溶解させ、アクリル系粘着剤の希釈液とした。有機色素は、プラズマディスプレイが放射する不要発光を吸収させるための波長595nmに吸収極大を有する三井化学製色素PD−319、及び、白色発光の色度を補正するための三井化学製赤色色素PS−Red−Gが、それぞれ乾燥した粘着材中で1150(wt)ppm、1050(wt)ppm含有するようにアクリル系粘着剤/色素入り希釈液を調整した。
【0351】
アクリル系粘着剤/色素入り希釈液(80:20wt%)を混合し、コンマコーターにより電磁波遮蔽フィルム側の面に乾燥膜厚25μmに塗工の後、乾燥、粘着面に離型フィルムをラミネートして、透明粘着層を形成した。
【0352】
このフィルムを実施例8に示した厚さ200μmの嵩上げ用透明高分子フィルムの上に透明導電性薄膜層を上にしてラミネートし、長さ960mm×幅550mmに裁断した。
【0353】
さらにベースフィルム厚さ188μmの反射防止フィルム(日本油脂製リアルック1200)を長さ920mm×幅510mmに裁断し、透明導電性薄膜層の周縁部20mmが剥き出しになるように反射防止フィルムを内貼りした。さらに、透明導電性薄膜層の剥き出しの導通部を覆うように周縁部の幅22mmの範囲に、銀ペースト(三井化学(株)製MSP−600F)をスクリーン印刷し、乾燥させ厚さ15μmの電極を形成した。これにより、透明高分子フィルムの合計厚さが、0.463mmとなる光学フィルターフィルムを得た。このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0354】
(実施例11)
押出2軸延伸によって厚さ200μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを作製し、その一方の主面に、フィルムから順に、ITO薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:11nm)、ITO薄膜(膜厚:95nm)、銀薄膜(膜厚:14nm)、ITO薄膜(膜厚:90nm)、銀薄膜(膜厚:12nm)、ITO薄膜(膜厚:40nm)の計7層の透明導電性薄膜層(D)を形成し、面抵抗2.2Ω/□の透明導電層を有する電磁波遮蔽フィルムを作製した。
【0355】
さらに、この電磁波遮蔽フィルムの透明導電性薄膜層が形成されていない他方の主面に、次の機能性透明層をロールツーロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化によって導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成し、その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工・90℃乾燥・熱硬化させ、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート性(JISK5400準拠の鉛筆硬度:2H)、反射防止性(表面のRvis :0.9%)、帯電防止性(表面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚性を有する機能性透明層を形成した。
【0356】
さらに、酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤を希釈液として、アクリル系粘着剤と希釈液とを80:20の割合で混合し、透明導電層面上に、カンマコーターにより乾燥膜厚25μmに塗工後、乾燥させ、離型フィルムをラミネートし透明粘着材層を形成した。
【0357】
上記機能性透明層付電磁波遮蔽フィルムを長さ920mm×幅510mmに裁断し、長さ960mm×幅550mmに裁断した厚さ200μmの嵩上げ用透明高分子フィルムの上に、周縁部各20mmを残して内貼りした。
【0358】
さらに、透明導電層の厚さ断面導通部を覆うように周縁部の幅22mmの範囲に、銀ペースト(三井化学(株)製MSP−600F)をスクリーン印刷し、乾燥させ厚さ15μmの電極を形成した。これにより、透明高分子フィルムの合計厚さが、0.4mmとなる光学フィルターフィルムを得た。このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0359】
(比較例2)
実施例9に示した厚さ150μmの近赤外遮蔽フィルムと、ベースフィルム厚さ80μmの反射防止フィルムとを貼合わせ、フィルム全体厚さが、0.230mmとなる光学フィルターフィルムを得た。このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0360】
(比較例3)
実施例10に示した厚さ75μmの電磁波遮蔽フィルムと、ベースフィルム厚さ188μmの反射防止フィルムとを貼合わせ、フィルム全体厚さが、263μmとなる光学フィルターフィルムを得た。このフィルムを長さ980×幅580mm×厚さ2.5mmの半強化ガラス板に貼合わせた。
【0361】
上記のように、各光学フィルターフィルムをガラス板に貼合わせたサンプルについて、耐衝撃性の向上と剥離性、ガラス板への接着剤残り状態を調べた。
【0362】
耐衝撃試験は、ガラス板に貼合わせたフィルムサンプルを上面にして高さ1.5mから重さ500gの鋼球を落下させ、基板ガラスの損傷状態を調べた。試験は各5枚実施した。
【0363】
剥離性とガラスへの糊残り試験については、光学フィルムをガラス板に貼合わせ後1時間経過ののち、フィルムをガラス板から剥離し、その状態を調べた。
以上の結果を表2に掲げた。
【0364】
【表2】

【0365】
表2から分かるように、全ての実施例において耐衝撃性、剥離性、ガラス板への糊残り状態が向上していることが判る。
【0366】
以上のように、本発明によれば、光学フィルターフィルムを構成する透明高分子高分子フィルムの合計厚さを0.3mm以上とすることで、ディスプレイパネルの保護機能及び作業性の向上が図れ、ディスプレイ前面に直接貼合わせる光学フィルターフィルムを提供することができる。
【0367】
(実施例14)
透明高分子フィルム(B)としてポリエチレンテレフタレートフィルム[巾558mm、長さ500m、厚さ75μm]ロールを用意し、その一方の主面に、ロールコーターを用いて、直流マグネトロンスパッタリング法により、透明導電性薄膜層(D)を形成した。透明導電性薄膜層は、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層(Dt)、銀薄膜層(Dm)をB/Dt[厚さ40nm]/Dm[厚さ15nm]/Dt[厚さ80nm]/Dm[厚さ20nm]/Dt[厚さ80nm]/Dm[厚さ15nm]/Dt[厚さ40nm]/Dm[厚さ15nm]/Dt[厚さ40nm]なる順に積層してなる。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層は、透明高屈折率薄膜層を、銀薄膜層は、銀または銀合金からなる金属薄膜層を構成する。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層の形成には、ターゲットとして、酸化インジウム・酸化スズ焼結体[In23:SnO2=90:10(重量比)]、スパッタリングガスとしてアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa、酸素分圧5mPa)を用いた。また、銀薄膜層の形成には、ターゲットとして銀を用い、スパッタガスにはアルゴンガス(全圧266mPa)を用いた。チタン層の形成には、ターゲットとしてチタンを用い、スパッタガスにアルゴンガス(全圧266mPa)を用いた。
【0368】
次に防眩性フィルム[巾548mm、長さ500m、厚さ100μm]ロールを防眩性層と反対側に透明粘着材[厚さ100μm]が貼付けられている状態で用意した。
【0369】
続いて、透明導電性薄膜フィルムの透明導電性薄膜層上に上記防眩性フィルムを透明粘着材を介してロールツーロール式に貼付け、1本のロールを作製した。透明導電性フィルムと防眩性フィルムの幅方向の中心位置が、一致するように行なった。さらにこの透明導電性薄膜フィルムと防眩性フィルムの貼合わせ体の防眩層と反対面にロールツーロール方式で透明粘着材[厚さ100μm]を貼合わせた。続いてロール両端部の各5mm幅の透明導電性薄膜層部分にロールコート方式で銀ペーストを塗布した。ロールを送る速さは0.5m/sとした。
【0370】
上記で得られたフィルムを958mmの長さに切断し電磁波シールド体を作製した。図21に断面図を示した。図21において、符号23は電磁波遮蔽機能を有する透明高分子フィルム(B)、符号30は透明粘着層(C)、符号24は機能透明層(A)を有する透明高分子フィルム(B)である。
【0371】
その中で、電磁波シールド体1枚当りの、電極形成に要する時間を調べた。
続いてプラズマディスプレイパネル[NEC製 PX−42VP1]前面へ透明粘着層を介して、電磁波シールド体を取り付けた。
【0372】
視認面側に位置している電極へは、ディスプレイ外部に電流を取り出すように配線されている、平板上の金属部材を接しさせた。
【0373】
プラズマディスプレイパネルを動作させて、外部に放出される電磁波の強度をFCC規格 Part15Jに基いて測定し、クラスA基準を満たしているかどうか調べた。図22に断面図を示した。
【0374】
(実施例15)
防眩性フィルム[巾554mm、長さ500m、厚さ100μm]のロールを用意し、その防眩性層と反対面に実施例14と同様に透明導電性薄膜層を形成した。続いて透明導電性薄膜層上にロールツーロール方式で透明粘着材[、巾548mm、厚さ100μm]及び導電性粘着材[巾3mm、厚さ100μm]を貼合わせた。導電性粘着材は、ロール両端部の位置に貼合わせ、それ以外の部分には、透明粘着材を貼合わせた。上記により、電磁波シールド体を作製した。
【0375】
プラズマディスプレイパネル[NEC製 PX−42VP1]前面へ電磁波シールド体を取りつけた。プラズマディスプレイパネルの2長辺には、予め端部に沿って6mm幅を銅箔テープを貼付けておいた。導電性粘着材と銅箔テープを合わせた部分が実質的電極になる。視認面側に位置している電極へは、ディスプレイ外部に電流を取り出すように配線されている、平板上の金属部材を接しさせた。その他は、実施例14と同様に実施した。
【0376】
(実施例16)
実施例14と同様に透明導電性薄膜フィルムを用意した。
【0377】
次に、防眩性フィルム[巾558mm、長さ500m、厚さ100μm]ロールを用意し、透明導電性フィルムと防眩性フィルムの幅方向の中心位置が、一致するように行なった。さらにこの透明導電性薄膜フィルムと防眩性フィルムの貼合わせ体の防眩層と反対面にロールツーロール方式で透明粘着材[厚さ100μm]を貼合わせた。
【0378】
ロール端面に銀ペーストを塗布した。上記により、電磁波シールド体を作製した。断面図を図23に示した。
【0379】
その中で、電磁波シールド体1枚当りの、電極形成に要する時間を調べた。
続いてプラズマディスプレイパネル[NEC製 PX−42VP1]前面へ電磁波シールド体を取り付けた。電極へは、ディスプレイ外部に電流を取り出すように配線されている、平板状の金属部材を接しさせた。
【0380】
プラズマディスプレイバネルを動作させて、外部に放出される電磁波の強度をFCC規格 Part15Jに基いて測定し、クラスA基準を満たしているかどうか調べた。
【0381】
(比較例4)
実施例14と同様に、透明高分子フィルム(B)としてポリエチレンテレフタレートフィルム[巾558mm、長さ500m、厚さ75μm]ロールを用意し、その一方の主面に、透明導電性薄膜層を形成した。
【0382】
上記フィルムの透明導電性薄膜形成面と反対面にロールツーロール方式で透明粘着材[厚さ100μm]を貼合わせた。
【0383】
さらに得られたフィルムを切断しながらガラス基板[大きさ560mm×960mm、厚さ3mm]に弱粘着材を介して貼合わせた。
【0384】
続いて、防眩性フィルム[巾548mm、長さ500m、厚さ100μm]のロールを防眩性層と反対側に透明粘着材が貼付けられている状態で用意し、上記の貼合わせ体の透明導電性薄膜層上に切断しながら貼合わせた。この時、透明導電性薄膜層の外周部分より端部が5mm内側に位置するように貼合わせた。
【0385】
外周部分の透明導電性薄膜層剥き出し部分全周が覆われるようにスクリーン印刷法を用いて銀ペーストを塗布し、乾燥させた。乾燥後、ガラス基板より剥がした。上記により、電磁波シールド体を作製した。その他、実施例14と同様に実施した。
以上の結果を表3に掲げた。
【0386】
【表3】

【0387】
表3から分かるように、全ての実施例において、電磁波遮断効果に関しては、比較例4に示した従来の場合と同様に問題がない。さらに電極形成に要する時間が大幅に短縮されており、生産するための効率が大幅に向上していることが分かる。
【0388】
(実施例17)
透明高分子フィルム(B)としてポリエチレンテレフタレートフィルム[厚さ75μm]の巾565mm、長さ500mロールを用意し、その一方の主面に、ロールコーターを用いて、直流マグネトロンスパッタリング法により、透明導電層(D)を形成した。透明導電性薄膜層は、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層(Dt)、銀薄膜層(Dm)をB/Dt[厚さ40nm]/Dm[厚さ15nm]/Dt[厚さ80nm]/Dm[厚さ20nm]/Dt[厚さ80nm]/Dm[厚さ15nm]/Dt[厚さ40nm]/Dm[厚さ15nm]/Dt[厚さ40nm]なる順に積層してなる。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層は、透明高屈折率薄膜層を、銀薄膜層は、銀または銀合金からなる金属薄膜層を構成する。インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層の形成には、ターゲットとして、酸化インジウム・酸化スズ焼結体[In23:SnO2=90:10(重量比)]、スパッタリングガスとしてアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa、酸素分圧5mPa)を用いた。また、銀薄膜層の形成には、ターゲットとして銀を用い、スパッタガスにはアルゴンガス(全圧266mPa)を用いた。チタン層の形成には、ターゲットとしてチタンを用い、スパッタガスにアルゴンガス(全圧266mPa)を用いた。
【0389】
次に防眩性フィルムの巾565mm、長さ500mロールを防眩性層と反対側に透明粘着材が貼付けられている状態で用意した。
【0390】
続いて、透明導電性薄膜フィルムの透明導電性薄膜層上に上記防眩性フィルムを透明粘着材を介してロールツーロール式に貼付け、1本のロールを作製した。さらにこの透明導電性薄膜フィルムと防眩性フィルムの貼合わせ体の防眩層と反対面にロールツーロール方式で透明粘着材を貼合わせた。
【0391】
上記で得られたフィルムを切断しながら透明支持基板に透明粘着材を介して貼合わせた。
【0392】
さらにフィルム側面が覆われるように端部全周にスクリーン印刷法を用いて銀ペーストを塗布し、乾燥させた。
【0393】
上記により、電磁波シールド体を作製した。断面図を図23に示した。
電極上お互い最も遠い2点を選び、その間の抵抗値を調べた。
【0394】
また、電磁波シールド体1枚当りに要する貼合わせ時間を調べた。なお、透明導電性フィルムと防眩性フィルムとの光学フィルター1枚当りの貼合わせ時間は、全ロールツーロールでの全貼合わせ時間をそのロールから切り出すことができるフィルムの枚数で割ることによって求めた。
【0395】
(実施例18)
防眩性フィルムの巾565mm、長さ500mロールを用意し、その防眩性層と反対面に実施例17と同様に透明導電性薄膜層を形成した。続いて透明導電性薄膜層上にロールツーロール方式で透明粘着材を貼合わせた。
【0396】
上記で得られたフィルムを切断しながら透明支持基板に透明粘着材を介して貼合わせた。
【0397】
さらにフィルム側面が覆われるように端部全周にスクリーン印刷法を用いて銀ペーストを塗布し、乾燥させた。上記により、電磁波シールド体を作製した。
【0398】
この時、電極上お互い最も遠い2点を選び、その間の抵抗値を調べた。
また、電磁波シールド体1枚当りに要する貼合わせ時間を調べた。
【0399】
(実施例19)
防眩性フィルムの巾565mm、長さ500mロールを用意し、その防眩性層と反対面に実施例17と同様に透明導電性薄膜層を形成し、防眩性透明導電性フィルムの長さ500mロールを作製した。
【0400】
銅テープ[巾15mm、厚さ75μm、長さ500m、片面に導電性粘着材付き]のロールを2本用意した。
【0401】
防眩性透明導電フィルムの両端部に銅テープを貼合わせた。防眩性透明導電性に形成されている透明導電層に銅テープの導電性粘着材が接するように貼合わせを行った。また、各銅テープと防眩性透明導電性フィルムとの重なり幅は10mmとなるようにした。貼合わせはロールツーロール方式で行った。
【0402】
透明粘着材[巾575mm、厚さ25μm、長さ500m]のロールを用意した。銅テープが側面に貼合わせられている防眩性透明導電性フィルムにこの透明粘着材を貼合わせながら、さらに長さ958mmのシートに裁断した。透明導電層及び銅テープの未粘着加工面に粘着材を貼合わせるようにした。貼合わせはロールツーロール方式で行った。上記により、電磁波シールド体を作製した。断面図を図24に示した。
【0403】
この時、電極上お互い最も遠い2点を選び、その間の抵抗値を調べた。
また、電磁波シールド体1枚当りに要する貼合わせ時間を調べた。
【0404】
(実施例20)
防眩性フィルムの巾565mm、長さ500mロールを用意し、その防眩性層と反対面に実施例17と同様に透明導電性薄膜層を形成した。続いて透明導電性薄膜層上にロールツーロール方式で透明粘着材を貼合わせながら、さらに長さ958mmのシートに裁断し電磁波シールド体を作製した。
【0405】
ガラス基板[大きさ545mm×960mm、厚さ3mm]を用意し、その2長辺に銅板[大きさ10mm×960mm、厚さ3mm]を設置した。その銅板には、ねじ留め用の穴をあけた。ねじ留め用の穴は30mm間隔で長手方向の端より端まで形成した。このガラス板と銅板を併せた支持基体に電磁波シールド体を貼合わせた。銅板に形成されているねじ留め用の穴にねじを装着した。ねじの装着は、電磁波シールド体の最表面から電磁波シールド体を貫通させて行った。この時、このねじが実質上のスルーホール電極となる。上記により、電磁波シールド体を作製した。断面図を図25に示した。
【0406】
この時、電極上お互い最も遠い2点を選び、その間の抵抗値を調べた。
また、電磁波シールド体1枚当りに要する貼合わせ時間を調べた。
【0407】
(比較例5)
実施例18と同様に、透明高分子フィルム(B)としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)の巾565mm、長さ500mロールを用意し、その一方の主面に、透明導電性薄膜層を形成した。
【0408】
上記フィルムの透明導電性薄膜形成面と反対面にロールツーロール方式で透明粘着材を貼合わせた。
【0409】
さらに得られたフィルムを切断しながら透明支持基板に透明粘着材を介して貼合わせた。
【0410】
続いて、防眩性フィルムの巾565mm、長さ500mロールを防眩性層と反対側に透明粘着材が貼付けられている状態で用意し、上記の貼合わせ体の透明導電性薄膜層上に切断しながら貼合わせた。この時、透明導電性薄膜層の外周部分より端部が5mm内側に位置するように貼合わせた。
【0411】
外周部分の透明導電性薄膜層剥き出し部分全周が覆われるようにスクリーン印刷法を用いて銀ペーストを塗布し、乾燥させた。上記により、電磁波シールド体を作製した。
【0412】
この時、電極上お互い最も遠い2点を選び、その間の抵抗値を調べた。
また、電磁波シールド体1枚当りに要する貼合わせ時間を調べた。
以上の結果を表4に掲げた。
【0413】
【表4】

【0414】
表4から分かるように、全ての実施例において、電極間の電気抵抗値は、比較例に示した、従来の電極形状のものに比較してほとんど低下していない。また、全ての実施例において、電磁波シールド体1枚当りのフィルム貼合わせ時間が大幅に短縮され、電磁波シールド体の生産効率が大幅に上昇していることが分かる。
【0415】
(実施例21)
以下の点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0416】
透明積層体1を以下のとおり作製した。
ポリエチレンテレフタレートペレット1203(ユニチカ(株)製)に近赤外線を吸収する色素、三井化学(株)製SIR128を0.25重量%、SIR130を0.23重量%を混合し、260〜280℃で溶融させ、2軸延伸押し出し機により厚み188μmの高分子フィルム(B)を作製した。
【0417】
上記で作製した高分子フィルム(B)の一方の主面に、架橋材を含むポリエステル系の接着剤を厚さ10μmに塗布した。次に厚さ7μm、孔径1μm、ポロシティー12%の銀箔をラミネートした。なお、この銀箔の両主面には前もってモリブデンを厚み50μmとなるようにスパッタリング法により形成しておいた。次に熱硬化型のインキを用いて、スクリーン印刷にて金属層上に格子幅20μm、目の大きさ150μm×150μmの格子模様を印刷した。90℃×5分の加熱によりインキを硬化させた後、塩化第2鉄水溶液によりインキにより保護されていない部分の金属層を除去し、次に、溶剤でインキを除去した。かくして図27に示す模様の金属層をもつ、開口率75%の積層体を得ることができた。可視光線の平均透過率を測定したところ、67%であった。シート抵抗を測定したところ、0.11Ω/□であった。
【0418】
(実施例22)
以下の点を除いて実施例3と同様に実施した。
【0419】
高分子フィルム(B)/透明導電層(D)を以下の手法で用意した。
ポリエチレンテレフタレートペレット1203(ユニチカ(株)製)に近赤外線を吸収する色素、三井化学(株)製SIR128を0.25重量%、SIR130を0.23重量%を混合し、260〜280℃で溶融させ、2軸延伸押し出し機により厚み188μmの高分子フィルム(B)を作製した。
【0420】
上記で作製した高分子フィルム(B)の上に、アクリル系の接着剤で、厚さ7μm、孔径1μm、ポロシティー8%の銀箔をラミネートした。なお、この銀箔の両面にも前もってクロメート処理を行っておいた。次にアルカリ現像型のフォトレジストを銅層の上にコーティングし、プリベーク後にフォトマスクを用いて露光、現像して格子幅25μm、目の大きさ125μm×125μmの格子パターンを設けた後、塩化第2鉄水溶液によりレジストにより保護されていない部分の金属層をエッチングし、次にアルカリ溶液中でレジストを除去した。かくして図27に示す模様の金属層をもつ、開口率69%の積層体を得ることができた。可視光線透過率を測定したところ65%、シート抵抗は0.07Ω/□であった。
【0421】
表5により、本発明の電磁波シールド体を用いることにより、VCCI規格のClassBまたはClassAをクリアできることが判る。透明導電層の面抵抗が低いほど電磁波シールド能が優れていた。
【0422】
また本発明の電磁波シールド体を用いることにより、近赤外線カット能に優れることが判る。
【0423】
金属メッシュ層を用いた本発明の電磁波シールド体は、可視光透過性に優れ、電磁波シールド性、近赤外線シールド性に優れる。
【0424】
さらに本発明の電磁波シールド体は、機能性透明層(A)に各機能を持たせることによって、耐環境性及び/又は耐擦傷性及び/又は防汚性及び/又は静電気防止性に優れている。
【0425】
【表5】

【0426】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)ディスプレイ画面に接着可能で、所定のフィルタ特性を有するディスプレイ用フィルタであって、
外気側に設けられ、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)と、
ディスプレイ側に設けられ、画面に接着するための透明粘着層(C)と、
機能性透明層(A)と透明粘着層(C)との間に基体として設けられた高分子フィルム(B)とを備えることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0427】
(2)機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間、及び/又は高分子フィルム(B)と透明粘着層(C)との間に設けられ、0.01〜30Ω/□の面抵抗を有する透明導電層(D)を備えることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0428】
(3)透明導電層(D)の一部もしくは全てが、導電性メッシュで構成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0429】
(4)透明導電層(D)は、高屈折率透明薄膜層(Dt)及び金属薄膜層(Dm)の組合せ(Dt)/(Dm)を繰り返し単位として2回〜4回繰り返して積層され、さらにその上に高屈折率薄膜層(Dt)が積層されて構成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0430】
(5)複数の高屈折率透明薄膜層(Dt)のうち少なくとも一つの層が、インジウム、スズ及び亜鉛のいずれか1種以上を主成分とする酸化物で形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0431】
(6)複数の金属薄膜層(Dm)のうち少なくとも一つの層が、銀又は銀合金で形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0432】
(7)機能性透明層(A)は、ハードコート性、静電気防止性、防汚性、ガスバリア性および紫外線カット性のうち少なくとも1つの機能をさらに有することを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0433】
(8)機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間に、粘着層(E)が設けられることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0434】
(9)高分子フィルム(B)の両面または片面に、ハードコート層(F)が形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0435】
(10)機能性透明層(A)、高分子フィルム(B)、透明粘着層(C)、透明導電層(D)、粘着層(E)およびハードコート層(F)のうち少なくとも1つの層に、1種以上の色素が含有されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0436】
(11)波長570〜605nmの範囲に吸収極大を有する色素が含有されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0437】
(12)前記色素は、テトラアザポルフィリン化合物であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0438】
(13)テトラアザポルフィリン化合物は、下記の化学式(1)で表される化合物であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0439】
【化8】

【0440】
(式中、A1〜A8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、A1とA2、A3とA4、A5とA6、A7とA8はそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
【0441】
(14)波長800〜1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素が含有されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0442】
(15)機能性透明層(A)の表面において、可視光線反射率が2%以下であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0443】
(16)30〜85%の可視光線透過率を有することを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0444】
(17)波長800〜1100nmにおける透過率極小が20%以下であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0445】
(18)フィルタ全体における高分子フィルムの厚さ合計が0.3mm以上であることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0446】
(19)色素が含有可能な厚さ嵩上げ用の高分子フィルムを備えることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0447】
(20)透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0448】
(21)フィルタの周縁部に、透明導電層(D)と電気接続する電極が周方向に沿って連続的に形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0449】
(22)一部露出した導通部に電極が形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0450】
(23)フィルタ形状が長方形であり、対向した2つの周辺に電極が形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0451】
(24)フィルタの周縁端面に、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0452】
(25)フィルタの厚さ方向に沿って最表面から少なくとも透明導電層(D)に連通する連通孔が形成され、
該連通孔の内部に、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0453】
(26)透明導電層(D)とこれに隣接する層との間に導電性テープが介在することを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【0454】
(27)画像を表示するためのディスプレイと、
ディスプレイ画面に設けられ、上記のディスプレイ用フィルタとを備えることを特徴する表示装置。
【0455】
(28)表示装置のディスプレイ画面に、上記のディスプレイ用フィルタを透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)の電極とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【0456】
(29)表示装置のディスプレイ画面に、高分子フィルム(B)、透明導電層(D)、および透明粘着層(C)を含む積層フィルタを透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
該積層フィルタの上に、直接又は第2の粘着層を介して、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を配置する工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【0457】
(30)表示装置のディスプレイ画面に、粘着層を配置する工程と、
高分子フィルム(B)、透明導電層(D)、および反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を含む積層フィルタを前記粘着層を介して貼合わせる工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【0458】
(31)表示装置のディスプレイ画面に、粘着層を配置する工程と、
高分子フィルム(B)および、透明導電層(D)を含む積層フィルタを前記粘着層を介して貼合わせる工程と、
該積層フィルタの上に、直接又は第2の粘着層を介して、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を配置する工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【0459】
以上詳説したように、透過特性、透過率、反射特性が優れた調光フィルムとして機能するディスプレイ用フィルタを低コストに実現できる。これをプラズマディスプレイ等の表示装置の画面に直接形成することにより、ディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その色純度及びコントラストを向上させることができ、優れた画質を有する表示装置を実現できる。
【0460】
また、過特性、透過率、可視光線反射率に優れ、プラズマディスプレイ等の表示装置から発生する電磁波を遮断する電磁波シールド体として機能するディスプレイ用フィルタを低コストに実現できる。さらに、ディスプレイからでる800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる。また、耐候性・耐環境性に優れ、反射防止性及び/または防眩性、耐擦傷性、防汚性、帯電防止性等を兼ね備え、優れた画質を有する表示装置を実現できる。
【0461】
また、ディスプレイ用フィルタを構成する透明高分子高分子フィルムの合計厚さを0.3mm以上とすることで、ディスプレイパネルの保護機能及び作業性の向上が図れ、ディスプレイ前面に直接貼合わせる電磁波シールド体または調光フィルムを提供することができる。
【0462】
また、電磁波シールド体の電極形状を工夫することによって、充分な電磁波遮断効果をもち、しかも電極形成に要する時間が大幅に短縮されており、生産効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0463】
【図1】本発明における高分子フィルム(B)/透明導電層(D)の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電磁波シールド体の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例(実施例1)を示す断面図である。
【図4】本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例(実施例2)を示す断面図である。
【図5】本発明の電磁波シールド体の一例を示す平面図である。
【図6】本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例(実施例3)を示す断面図である。
【図7】本発明の電磁波シールド体とその装着状態の一例(実施例4)を示す断面図である。
【図8】電磁波シールド体形成前後の色再現範囲を示すx−y色度図である。
【図9】本発明の調光フィルムとその装着状態の一例(実施例5)を示す断面図である。
【図10】本発明の調光フィルムとその装着状態の一例(実施例6)を示す断面図である。
【図11】調光フィルム形成前後の色再現範囲を示すx−y色度図である。
【図12】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図13】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図14】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図15】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図16】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図17】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図18】図16に示した電磁波遮蔽機能を示す透明高分子フィルム(B)23の構成を示す断面図である。
【図19】図17に示した電磁波遮蔽機能を示す透明高分子フィルム(B)26の構成を示す断面図である。
【図20】図16または図17に示したディスプレイ用フィルタの平面図である。
【0464】
【図21】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図22】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図23】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図24】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図25】本発明に係るディスプレイ用フィルタの構成例を示す断面図である。
【図26】図21〜図25に示したディスプレイ用フィルタの平面図である。
【図27】金属パターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0465】
00 ディスプレイ表示部
01 ディスプレイのアース部
02 電磁波シールド体の透光部
03 電磁波シールド体の導通部
10 透明導電層(D)
11 高屈折率透明薄膜層(Dt)
12 金属薄膜層(Dm)
20 高分子フィルム(B)
21 色素含有の高分子フィルム(B)
22 ハードコート層(F)
23,24,26 透明高分子フィルム(B)
25 嵩上げ用透明高分子フィルム(B)
30 透明粘着層(C)
31 色素含有の透明粘着層(C)
40 透明粘着層(E)
41 導電性粘着層
50 電極
51 導電テープ
52 スルーホール電極
60 機能性透明層(A)
61 反射防止膜
62 ハードコート膜
63 透明な基材
70 アンチグレア層(機能性透明層(A))
71 防眩性フィルム
80 導電性銅箔粘着テープ
110 パターン化された導箔
120 光透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイ画面に接着可能で、所定のフィルタ特性を有するプラズマディスプレイ用フィルタであって、
外気側に設けられ、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)と、
プラズマディスプレイ側に設けられ、画面に接着するための透明粘着層(C)と、
機能性透明層(A)と透明粘着層(C)との間に基体として設けられた高分子フィルム(B)とを備え、
機能性透明層(A)、高分子フィルム(B)および透明粘着層(C)のうち少なくとも1つの層に、波長570〜605nmの範囲に吸収極大を有する色素が含有され、
フィルタ全体における高分子フィルムの厚さ合計が0.3mm以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項2】
機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間、及び/又は高分子フィルム(B)と透明粘着層(C)との間に設けられ、0.01〜30Ω/□の面抵抗を有する透明導電層(D)を備えることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項3】
透明導電層(D)の一部もしくは全てが、導電性メッシュで構成されることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項4】
透明導電層(D)は、高屈折率透明薄膜層(Dt)及び金属薄膜層(Dm)の組合せ(Dt)/(Dm)を繰り返し単位として2回〜4回繰り返して積層され、さらにその上に高屈折率薄膜層(Dt)が積層されて構成されることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項5】
複数の高屈折率透明薄膜層(Dt)のうち少なくとも一つの層が、インジウム、スズ及び亜鉛のいずれか1種以上を主成分とする酸化物で形成されることを特徴とする請求項4記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項6】
複数の金属薄膜層(Dm)のうち少なくとも一つの層が、銀又は銀合金で形成されることを特徴とする請求項4記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項7】
機能性透明層(A)は、ハードコート性、静電気防止性、防汚性、ガスバリア性および紫外線カット性のうち少なくとも1つの機能をさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項8】
機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間に、粘着層(E)が設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項9】
高分子フィルム(B)の両面または片面に、ハードコート層(F)が形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項10】
前記色素は、テトラアザポルフィリン化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項11】
テトラアザポルフィリン化合物は、下記の化学式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項10記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【化1】

(式中、A1〜A8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、A1とA2、A3とA4、A5とA6、A7とA8はそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
【請求項12】
波長800〜1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素が含有されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項13】
機能性透明層(A)の表面において、可視光線反射率が2%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項14】
30〜85%の可視光線透過率を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項15】
波長800〜1100nmにおける透過率極小が20%以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項16】
色素が含有可能な厚さ嵩上げ用の高分子フィルムを備えることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項17】
透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることを特徴とする請求項2または3記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項18】
フィルタの周縁部に、透明導電層(D)と電気接続する電極が周方向に沿って連続的に形成されることを特徴とする請求項17記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項19】
一部露出した導通部に電極が形成されることを特徴とする請求項17記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項20】
フィルタ形状が長方形であり、対向した2つの周辺に電極が形成されることを特徴とする請求項18または19記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項21】
フィルタの周縁端面に、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることを特徴とする請求項18または19記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項22】
フィルタの厚さ方向に沿って最表面から少なくとも透明導電層(D)に連通する連通孔が形成され、
該連通孔の内部に、透明導電層(D)と電気接続する電極が形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項23】
透明導電層(D)とこれに隣接する層との間に導電性テープが介在することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタ。
【請求項24】
画像を表示するためのプラズマディスプレイと、
プラズマディスプレイ画面に設けられ、請求項1〜23のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタとを備えることを特徴する表示装置。
【請求項25】
請求項17〜23のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、請求項17〜23のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタを透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)の電極とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項26】
請求項17〜23のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、高分子フィルム(B)、透明導電層(D)、および透明粘着層(C)を含む積層フィルタを透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
該積層フィルタの上に、直接又は第2の粘着層を介して、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を配置する工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項27】
請求項17〜23のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、透明粘着層(C)を配置する工程と、
高分子フィルム(B)、透明導電層(D)、および反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を含む積層フィルタを、前記透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項28】
請求項17〜23のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルタを備える表示装置の製造方法であって、
表示装置のプラズマディスプレイ画面に、透明粘着層(C)を配置する工程と、
高分子フィルム(B)および、透明導電層(D)を含む積層フィルタを、前記透明粘着層(C)を介して貼合わせる工程と、
該積層フィルタの上に、直接又は第2の粘着層を介して、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)を配置する工程と、
表示装置のグランド導体と透明導電層(D)とを電気接続する工程とを含むことを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−58896(P2006−58896A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239108(P2005−239108)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【分割の表示】特願2001−23071(P2001−23071)の分割
【原出願日】平成13年1月31日(2001.1.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】