説明

プラズマ発生体、反応装置及び光源装置

【課題】温度制御が可能で且つ小型化が可能なプラズマ発生体、反応装置及び光源装置を提供する。
【解決手段】プラズマ発生体1は、放電空間5A,5B,5Cにプラズマを発生させる電極15A,15B,15C,15Dと、電極15A,15B,15C,15Dが固定され、電極15A,15B,15C,15Dに沿って流体を流動させ、プラズマ発生体1の温度制御を可能ならしめる流路17を有し、一体的に形成された誘電体としての基体3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させるプラズマ発生体、反応装置及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、反応器やランプの技術分野など様々な分野で利用されている。例えば、反応系では、NOx分解装置 / HC分解装置、ダイオキシン分解装置、PFC分解装置、脱臭装置、ウイルス除菌装置、オゾン発生装置、マイナスイオン発生装置においてプラズマが利用されている。また、例えば、光源系では、プラズマランプ(蛍光灯、ネオン管など)、エッチング装置用光源、レジスト露光装置用光源、プラズマディスプレイにおいてプラズマが利用されている。
【0003】
プラズマを発生させる方法としては、放電による方法が知られている(例えば特許文献1〜3)。すなわち、気体が存在する放電空間の内部又は放電空間の周囲に配置された電極に電圧を印加して放電空間内で放電を行わせることにより、放電空間内の気体からプラズマを生成する方法が知られている。
【特許文献1】特開2006−179202号公報
【特許文献2】特開2003−286829号公報
【特許文献3】特開2005−220019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高出力でプラズマを発生させると熱が発生し、プラズマ発生体が高温化する。冷却するためには冷却水を循環可能な冷却板などを接触させる必要があり、部材が多くなるとともにプラズマ発生体が大型化する。
【0005】
本発明の目的は、温度制御が可能で且つ小型化が可能なプラズマ発生体、反応装置及び光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラズマ発生体は、放電空間にプラズマを発生可能な電極と、前記電極が固定され、前記電極に沿って延びる流路を有した誘電体とを備える。
【0007】
好適には、前記誘電体は、前記放電空間を有し、一体的に形成されている。
【0008】
好適には、前記電極は、前記誘電体に埋設され、前記流路は、前記放電空間と前記電極との間に配置されている。
【0009】
好適には、前記電極として、前記放電空間を挟んで互いに対向配置され、前記誘電体に埋設された一対の電極を備え、前記流路は、前記一対の電極それぞれに沿って延びている。
【0010】
好適には、前記放電空間は、所定方向に沿って複数設けられ、前記電極として、前記所定方向において、前記複数の放電空間と交互に配置された複数の電極を備え、前記流路は、前記複数の電極それぞれに沿って延びている。
【0011】
好適には、前記流体を供給可能な流動管又は前記流体を排出可能な流動管と接続可能で、前記流路に連通する接続管が前記誘電体に設けられている。
【0012】
好適には、前記接続管は前記誘電体と一体的に形成されている。
【0013】
好適には、前記流路は平面視して前記電極の中央部に位置する部分の断面積が前記電極の外周部に位置する部分の断面積よりも大きい。
【0014】
好適には、前記流路は平面視して前記電極の中央部に位置する部分同士の間隔が前記電極の外周部に位置する部分同士の間隔よりも小さい。
【0015】
好適には、前記放電空間に露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高い。
【0016】
好適には、前記誘電体は、少なくとも前記放電空間に露出した部位の主成分がコージェライトセラミックスである。
【0017】
好適には、前記誘電体にヒータが形成されている。
【0018】
好適には、前記誘電体に温度検出素子が形成されている。
【0019】
好適には、前記誘電体は、積層された複数の誘電層が焼成されて形成され、前記流路は、前記誘電層に穴部が設けられることにより形成された前記複数の誘電層間の隙間を含んで形成されている。
【0020】
好適には、前記電極は、前記誘電層に配置された導電ペーストが前記積層された複数の誘電層と共に焼成されて形成されたものである。
【0021】
本発明の反応装置は、上記のいずれか一に記載のプラズマ発生体と、前記放電空間に被処理流体を供給可能な供給部と、前記放電空間でプラズマを発生させて前記被処理流体を化学変化させるように前記電極に電圧を印加可能な電極制御部と、前記流路に冷却媒体を流動させることが可能な冷却部とを具備する。
【0022】
本発明の光源装置は、上記のいずれか一に記載のプラズマ発生体と、該プラズマ発生体を収容するとともに、前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光を放出可能な透光部を有する筐体と、前記流路に冷却媒体を流動させることが可能な冷却部とを具備する。
【0023】
好適には、前記筐体内に前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光を反射可能な反射部が設けられている。
【0024】
好適には、前記誘電体は前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光の反射率が50%以上である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、プラズマ発生体の温度制御及び小型化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ発生体1の外観を示す斜視図であり、図1(a)は、プラズマ発生体1の第1の面S1側から見た図、図1(b)は、第1の面S1の背面となる第2の面S2側から見た図である。
【0027】
プラズマ発生体1は、略直方体状に形成された基体3を備えている。基体3は、互いに対向する第1の面S1及び第2の面S2と、第1の面S1及び第2の面S2に直交し、互いに対向する第3の面S3及び第4の面S4と、第1〜第4の面S1〜S4に直交し、互いに対向する第5の面S5及び第6の面S6とを有している。
【0028】
基体3は、好適には、一体的に形成されている。すなわち、基体3は全体が同一の材料により形成され、かつ、一部材として形成されており、界面を有しない。換言すれば、基体3は、複数の部材を接着剤、ネジ、係合部により互いに固定したものではない。基体3は、誘電体(不導体)により構成されている。例えば、基体3はセラミックにより構成されている。
【0029】
基体3には、プラズマ発生のために放電が行われる第1〜第3放電空間5A〜5C(以下、単に「放電空間5」といい、これらを区別しないことがある。)が形成されている。図1では、放電空間5が3つ設けられている場合を例示している。
【0030】
放電空間5は、第1の面S1及び第2の面S2に開口する抜け穴状に形成されている。換言すれば、放電空間5は、四方(第3〜第6の面S3〜S6の面する方向)が囲まれ、2方向が開放された空間である。放電空間5は、例えば、薄型な直方体状に形成されている。なお、以下では、第1の面S1及び第2の面S2の対向方向を放電空間5の長さ方向又は開口方向、第3の面S3及び第4の面S4の対向方向を放電空間5の幅方向、第5の面S5及び第6の面S6の対向方向を放電空間5の厚み方向ということがある。第1〜第3放電空間5A〜5Cは、互いに同一形状に形成されている。
【0031】
第1〜第3放電空間5A〜5Cは、所定の方向に一列に配列されている。具体的には、第1〜第3放電空間5A〜5Cは、厚さ方向に一列に配置され、開口方向に対して並列に配置されている。第1〜第3放電空間5A〜5Cの互いの間隔は同一である。すなわち、第1放電空間5Aと第2放電空間5Bとの間隔と、第2放電空間5Bと第3放電空間5Cとの間隔とは等しい。
【0032】
基体3の表面には、端子等の種々の部材が露出している。具体的には以下のとおりである。
【0033】
第3の面S3には、後述する電極15(図2参照)に電圧を印加するための第1電極用端子7Aが露出し、第4の面S4には、電極15に電圧を印加するための第2電極用端子7B(以下、単に「電極用端子7」といい、これらを区別しないことがある。)が露出している。電極用端子7は、例えば平板状の金属により構成され、第3の面S3や第4の面S4に沿って配置されている。電極用端子7は、例えば、第3の面S3や第4の面S4の略中央に配置されている。
【0034】
第3の面S3からは、基体3内部に冷却媒体を流入させるための流入用接続管9Aが突出し、第4の面S4からは、基体3内部から冷却媒体を流出させるための流出用接続管9B(以下、単に「接続管9」といい、これらを区別しないことがある。)が突出している。接続管9は、基体3と一体的に形成されている。なお、冷却媒体は、例えば水である。
【0035】
流入用接続管9Aは、プラズマ発生体1とは別の装置に設けられた、冷却媒体を供給可能な供給用流動管50Aと接続可能であり、流出用接続管9Bは、プラズマ発生体1とは別の装置に設けられた、冷却媒体を排出可能な排出用流動管50B(以下、単に「流動管50」といい、供給用流動管50Aと排出用流動管50Bとを区別しないことがある。)と接続可能である。接続管9は、例えば、流動管50に嵌合挿入されることにより流動管50と接続される。接続管9の断面形状は適宜な形状でよく、例えば、円形、矩形である。図1では、断面円形の場合を例示している。
【0036】
第3の面S3には、後述する温度検出素子19(図2参照)からの電気信号を出力するための第1センサ用端子11A及び第2センサ用端子11B(以下、単に「センサ用端子11」といい、これらを区別しないことがある。)が露出している。センサ用端子11は、例えば平板状の金属により構成され、第3の面S3や第4の面S4に沿って配置されている。
【0037】
第3の面S3には、後述するヒータ21(図2参照)に電力を供給するための第1ヒータ用端子13A及び第2のヒータ用端子13B(以下、単に「ヒータ用端子13」といい、これらを区別しないことがある。)が露出している。ヒータ用端子13は、例えば平板状の金属により構成され、第3の面S3や第4の面S4に沿って配置されている。
【0038】
図2は、図1(a)のII−II線における断面を示す図である。
【0039】
基体3の内部には、放電空間5において放電を行うための第1電極15A、第2電極15B、第3電極15C及び第4電極15D(以下、単に「電極15」といい、これらを区別しないことがある。)と、基体3内部に冷却媒体を流すための流路17と、基体3内部の温度を検出するための温度検出素子19と、基体3を加熱するためのヒータ21とが設けられている。
【0040】
電極15は、いわゆるコンデンサ型電極により構成されている。すなわち、電極15は、概ね平板状に形成され、放電空間5を挟んで対向配置される。そして、放電空間5を挟んで対向配置された2つの電極15の電位差により、その挟まれた放電空間5において放電が行われ、プラズマが発生する。放電は、例えば、1対の電極15に比較的周波数の高い交流電圧を印加することにより行われる、いわゆる高周波放電である。印加される交流電圧の周波数は、例えば、10MHz〜100MHzである。電極15は例えば、タングステンやモリブデン、白金、金、パラジウム、銀、銅などの金属により構成されている。
【0041】
複数の電極15は、複数の放電空間5の配列方向において複数の放電空間5に対して交互に配置されている。従って、2つの放電空間5に挟まれた電極15は、一方の放電空間5において放電を行う電極として機能するとともに、他方の放電空間5において放電を行う電極としても機能する。
【0042】
具体的には、第1電極15A、第1放電空間5A、第2電極15B、第2放電空間5B、第3電極15C、第3放電空間5C、第4電極15Cの順に配置されている。そして、第1放電空間5Aでは、第1電極15A及び第2電極15Bにより放電が行われ、第2放電空間5Bでは、第2電極15B及び第3電極15Cにより放電が行われ、第3放電空間5Cでは、第3電極15C及び第4電極15Dにより放電が行われる。2つの放電空間5に挟まれた電極15は、例えば、2つの放電空間5の中央に配置されている。複数の電極15は、例えば、等間隔で配置されている。
【0043】
複数の電極15は、その配列方向において一つ置きに互いに接続され、2組の電極グループが構成されている。すなわち、第1電極15Aと第3電極15Cとが互いに接続されて第1電極グループ23Aが構成され、第2電極15Bと第4電極15Dとが互いに接続されて第2電極グループ23B(以下、両者を区別せずに、単に「電極グループ23」ということがある。)が構成されている。第1電極グループ23Aは第1電極用端子7Aに接続され、第2電極グループ23Bは第2電極用端子7Bに接続されている。従って、第1電極用端子7A及び第2電極用端子7Bに交流電圧を印加することにより、互いに対向する一対の電極15間に電圧が印加される。
【0044】
各電極グループ23において、電極15同士を接続するとともに、各電極15を電極用端子7に接続する電極用導電路25は、例えば、断面円形に形成され、電極15に直交する方向に延びて電極15同士を接続する直交部25aと、その直交部25aから電極15と平行な方向に延びて電極用端子7に接続される水平部25bとを有している。なお、電極用端子7が省略され、水平部25bが基体3から露出されてもよい。
【0045】
電極15は、基体3に埋設されている。すなわち、互いに対向する面、その背面及び側面が基体3により被覆されている。なお、高周波放電では、一方の電極15から他方の電極15に向かった電子が、他方の電極15を被覆している誘電体(基体3)に衝突する前に、電界の極性が逆転される。すなわち、電極15が誘電体により被覆された場合でも放電が維持される。
【0046】
流路17は、流入用接続管9Aから流出用接続管9Bまで延びている。流路17は、例えば、複数の電極15に対応して、各電極15に沿って延びる電極冷却部17aを複数有している。電極冷却部17aは、例えば、電極15の放電空間5が配置されている側の面に沿って延びている。換言すれば、電極冷却部17aは、電極15と、放電空間5との間において延びている。電極冷却部17aは、例えば、電極15の略全面に亘って蛇行して延びている。複数の電極冷却部17aは、放電空間5や電極15の外周側において電極15に対して直交する方向に延びる連通部17b(図3参照)により、端部同士が互いに連通している。流路17は、例えば、流入用接続管9Aから流出用接続管9Bまで一定の断面積で延びている。
【0047】
流路17は、基体3に形成された溝や穴部に直接流体が流動するような構造に限らず、基体3に管状の部材を埋設することによって形成してもよい。
【0048】
温度検出素子19は、例えば、抵抗体により構成されている。温度検出素子19は、基体3に埋設されたセンサ用導電路27を介してセンサ用端子11に接続されている。センサ用端子11に電圧を印加し、温度検出素子19の温度変化に応じた抵抗値の変化を測定することにより、温度検出素子19の周囲の温度を検出することができる。温度検出素子19は、基体3の適宜な位置、例えば、電極15と放電空間5との間に埋設されている。
【0049】
ヒータ21は、例えば、不図示の電熱線21a(図2では一部のみ示す。なお、図2でヒータ21を示す矩形は、電熱線21aの配置範囲を概念的に示すものである。)を含んで構成されている。電熱線21aは、基体3に埋設されたヒータ用導電路29を介してヒータ用端子13に接続されている。従って、ヒータ用端子13に電圧を印加することによりヒータ21の周囲を加熱するこができる。電熱線21aは、基体3の適宜な位置に、適宜な形状で埋設されている。例えば、電熱線21aは、中央寄りの電極15と放電空間5との間に埋設され、蛇行して延びたり、渦巻状に延びるなどして電極15に沿う平面に広がっている。
【0050】
以上の構成を有するプラズマ発生体1の基体3は、例えば、セラミックグリーンシート等の誘電層(絶縁層)を積層して焼成することにより形成される。すなわち、誘電層の積層体により形成されている。電極15、温度検出素子19、電熱線21a、電極用導電路25、センサ用導電路27、ヒータ用導電路29等の導電体は、例えば、焼成前の誘電層に導電ペーストが配置され、積層された誘電層と共に焼成されることにより、基体3に埋設、固定されて形成される。放電空間5や流路17は、焼成前の誘電層に穴部が設けられることにより形成される。
【0051】
基体3を構成する誘電体は、例えば、アルミナセラミックス、ジルコニアセラミックス、コージェライトセラミックス、窒化ケイ素セラミックス、窒化アルミニウムセラミックス、炭化ケイ素セラミックス、イットリアセラミックス、サファイアセラミックス等が用いられる。
【0052】
放電により発生した熱を外部に放熱するという観点からは、熱伝導性の高い窒化ケイ素セラミックスや窒化アルミニウムセラミックスを用いるのがよい。また、基体3の破損を防止するという観点からは、高強度の炭化ケイ素セラミックスを用いるのがよい。
【0053】
好適には、基体3を構成する誘電体は、放電空間5に露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高い方がよい。この構成により、放電空間5内で発生したプラズマによって基体3がエッチングされるのを有効に防止できる。すなわち、放電空間5に露出した誘電体の表面は、非常に結合力の高い共有結合で結合した結晶相の割合を高めることによって、プラズマによるエッチングに対して抵抗力を有することとなる。
【0054】
より好ましくは、基体3を構成する誘電体の放電空間5に露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率の90〜100%がよい。この構成により、放電空間5に露出した表面のプラズマ対する耐久性を向上できるとともに、基体3の熱膨張率を低減して熱応力が生じるのを有効に防止できる。
【0055】
このような結晶相の割合を高めるためには、誘電体の材料としてコージェライトセラミックスやアルミナセラミックス、ジルコニアセラミックスを用い、原料としての焼結助剤などの添加物の含有量や焼成条件を調整することにより、所望のものとすることができる。
【0056】
より好適には、上記誘電体は、少なくとも放電空間5に露出した部位の主成分がコージェライトセラミックスであるのがよい。コージェライトセラミックスは結晶性のセラミックスであり、ガラス相をほとんど形成しないので、プラズマによるエッチングに対して非常に抵抗力の高いものとなる。また、コージェライトは線熱膨張係数が約2ppm/℃程度であり、プラズマ発生時の熱による基体3の熱膨張を低減して、応力が生じるのを有効に防止できる。
【0057】
このような結晶相の割合は、SEM等による表面状態観察により面積比率を求めることができる。また、結晶性の判断については、X線回折を用いることにより分析できる。
【0058】
なお、本願においては、誘電層の穴部は、誘電層を貫通しないもの(凹部)と、誘電層を貫通するもの(孔部)とを含むものとする。また、穴部は、深さ方向に平面視して縦横比が等しいもの(例えば円形や矩形)と、長尺状のもの(以下、「溝部」ということがある。)とを含むものとする。溝部は、誘電層を貫通しないもの(以下、「凹溝」ということがある。凹部の一種である。)と、貫通するもの(以下、「スリット」ということがある。孔部の一種である。)との双方を含むものとする。
【0059】
図3は、上述のようにプラズマ発生体1が形成されることを、プラズマ発生体1の一部を例にとって説明する概念図である。図3では、基体3のうち、第5の面S5側の第1部分3a(図2参照)のみを例示している。また、図3では、図2と同様に、基体3を図1のII−II線において分断して示している。なお、図3は、基体3の構成を分かりやすく示すために、流路17を図2よりも大きく示すなどしている。このため、図2に対して流路17等の形状や位置が若干異なっている。
【0060】
図3に示すように、基体3の第1部分3aは、6枚の第1誘電層31A〜第6誘電層31F(以下、単に「誘電層31」といい、これらを区別しないことがある。)の積層体により構成されている。なお、誘電層31を6枚としたのは例示であり、誘電層31の枚数は適宜に設定してよい。また、本願では、第5誘電層31Eのように、2枚に分かれているものも、積層位置が同一であれば、同一の誘電層として説明する。
【0061】
複数の誘電層31は、例えば、互いに同等の広さ、厚さ、形状を有している。なお、複数の誘電層31は、互いに同一の広さ、厚さ、形状でなくてもよい。ただし、複数の誘電層31を互いに同一の広さ、厚さ、形状とすれば、製造コストが縮小される。
【0062】
誘電層31は、例えば、アルミナセラミックスであり、例えば、SiO、Al、MgO、ZnO、Bなどから成るガラス成分とアルミナ粒子とを含んで形成される。積層後の誘電層31は、例えば900°C〜1700°Cの還元雰囲気で焼成される。
【0063】
放電空間5は、複数の誘電層31のうち少なくとも1枚の誘電層31に穴部が形成されることにより形成される複数の誘電層31間の隙間を含んで構成される。例えば、放電空間5Aは、第4誘電層31Dの第5誘電層31E側の面に設けられた凹部33Dと、第5誘電層31Eに設けられた孔部34と、第6誘電層31Fの第5誘電層31E側の面に設けられた凹部33Fとが互いに連通されて形成された、第4誘電層31Dと第6誘電層31Fとの隙間により構成されている。なお、本願では、孔部34のように、一の誘電層(第5誘電層31E)を構成する2の分割層31E−1、31E−2の間の隙間(孔部34)も、一の誘電層に設けられた孔部に含まれるものとする。
【0064】
なお、凹部33Dや凹部33Fを省略して孔部34のみで放電空間5Aを構成するなど、一以上の誘電層に形成された孔部のみで放電空間5を構成してもよいし、第5誘電層31Eを、第4誘電層31D側の面に凹部を有する誘電層とし、当該第5誘電層31Eの凹部と第4誘電層31Dの凹部33Dとを連結して放電空間5を構成するなど、2つの凹部のみで放電空間5を構成してもよいし、第5誘電層31Eを凹部や孔部の無い誘電層とし、第4誘電層31Dの凹部33Dのみで放電空間5を構成するなど、一の凹部のみで放電空間5を構成してもよい。誘電層31間の隙間と、誘電層31の最下層又は最上層に設けられた孔部とを連通するなど、誘電層31間の隙間以外の部分を含んで放電空間5を構成してもよい。
【0065】
電極15は、例えば、誘電層31に積層された導電性ペーストが、積層された複数の誘電層31と共に焼成されることにより形成される。例えば、電極15Aは、電極15Aとなる導電ペーストが、第2誘電層31Bと、第3誘電層31Cとの間に配置されて焼成されることにより形成される。電極15Aの厚さが大きいときには、図3において例示するように、電極15Aとなる導電ペーストを配置するための凹部33を、第2誘電層31B及び第3誘電層31Cのうち少なくとも一方の誘電層31の対向面に形成してもよい。あるいは、第2誘電層31Bに電極15Aとなる導電ペーストを配置するための孔部を設け、第1誘電層31Aと第3誘電層31Cとの間に電極15Aとなる導電ペーストを配置するなど、一以上の誘電層31に設けられた孔部に電極15Aとなる導電ペーストを配置してもよい。
【0066】
電極用導電路25、センサ用導電路27及びヒータ用導電路29は、誘電層31を貫通する部分が、誘電層31に形成された孔部(ビア孔)に導電ペーストが充填され、積層された複数の誘電層31と共に焼成されることにより形成される。すなわち、ビア導体により形成される。また、これら導電路は、誘電層31に沿う部分が、誘電層31に導電ペーストが積層され、積層された複数の誘電層31と共に焼成されることにより形成される。なお、導電ペーストを誘電層31に積層する際には、導電ペーストを配置するための溝部等が誘電層31に設けられてもよい。図3では、導電ペーストの配置位置として、電極用導電路25の直交部25aとなる導電ペーストが充填される、第3誘電層31Cに形成された孔部37C、第4誘電層31Dに形成された孔部37D、第5誘電層31Eに形成された孔部37E、第4誘電層31Fに形成された孔部37Fを例示している。各孔部37C〜37Fに充填されたビア導体は、焼成されて互いに接続され、一本の導電体になる。
【0067】
温度検出素子19を構成する抵抗体、ヒータ21を構成する電熱線21aも、電極15、電極用導電路25、センサ用導電路27及びヒータ用導電路29と同様に、焼成前の誘電層31に導電ペーストが配置されることにより形成される。また、これらを構成する導電ペーストを配置するための穴部が必要に応じて適宜に焼成前の誘電層31に設けられる。
【0068】
電極用端子7、センサ用端子11、ヒータ用端子13は、焼成された基体3に金属板が取り付けられて構成されてもよいし、上記の電極用導電路25、センサ用導電路27及びヒータ用導電路29等と同様に、焼成前の誘電層31の側面に導電ペーストが配置され、誘電層31が焼成されることにより構成されてもよい。また、これらを構成する導電ペーストを配置するための穴部が必要に応じて適宜に焼成前の誘電層31に設けられてもよい。
【0069】
流路17は、複数の誘電層31のうち少なくとも1枚の誘電層31に穴部が形成されることにより形成される複数の誘電層31間の隙間を含んで形成される。例えば、電極冷却部17aは、第3誘電層31Cの第4誘電層31D側の面に凹溝39Cが形成されることにより形成された、第3誘電層31Cと第4誘電層31Dとの隙間により構成されている。また、例えば、連通部17bの一部は、第4誘電層31Dに形成された孔部41D、第5誘電層31Eに形成された孔部41E、第6誘電層31Fに形成された孔部41Fが互いに連通することにより形成された、第3誘電層31Cと、第6誘電層31Fよりも下層の誘電層31との隙間により構成されている。
【0070】
なお、第4誘電層31D側の第3誘電層31C側の面に、凹溝39Cと同一位置に凹溝を形成して、その凹溝と凹溝39Cとで電極冷却部17aを形成するなど、対向する凹溝同士を連結して電極冷却部17aを構成してもよいし、放電空間5Aを形成する第5誘電層31Eのように、一以上の誘電層31にスリットを形成し、その誘電層31を他の誘電層で挟みこむことにより、電極冷却部17aを構成してもよい。誘電層31間の隙間と、誘電層31の最下層又は最上層に設けられた孔部とを連通するなど、誘電層31間の隙間以外の部分を含んで流路17を構成してもよい。
【0071】
流入用接続管9Aは、例えば、誘電層31と同一の材質により構成されている。そして、焼成前の積層された誘電層31の側方に所定の圧力で当接された状態で誘電層31と共に焼成されることにより、基体3と一体的に形成される。流出用接続管9Bの形成方法も同様である。
【0072】
以上の第1の実施形態によれば、プラズマ発生体1は、放電空間5を有し、一体的に形成された基体3(誘電体)と、基体3に固定され、放電により放電空間5内でプラズマを発生可能な電極15とを備えていることから、電極15から放電空間5までの電気経路や放電空間5を形成する部分に界面が存在せず、部材間の界面部分に各部材間の熱膨張の差による熱応力の集中が抑制され、耐久性が向上する。
【0073】
特に、プラズマ発生体1が、電極15として、放電空間5を挟んで互いに対向配置され、基体3に埋設された一対の電極を備えたものである場合には、電極間に界面が存在せず、熱応力集中の抑制による耐久性向上の効果が一層期待される。
【0074】
放電空間5は、所定方向に沿って複数設けられ、プラズマ発生体1は、電極15として、所定方向において、複数の放電空間5と交互に配置された複数の電極15を備えているから、2つの放電空間5に挟まれた一の電極15を、一方の放電空間5において放電を行う電極として機能させるとともに、他方の放電空間5において放電を行う電極としても機能させ、プラズマ発生体1を小型化しつつ、複数の放電空間5で大量にプラズマを発生させることができる。
【0075】
複数の電極15は、一つ置きに互いに接続されていることから、複数の電極15に電圧を印加するための電極用端子7を複数の電極15で共通化することができ、小型化や部品点数の削減が図られる。
【0076】
基体3にヒータ21が設けられていることから、放電開始時などにおいて迅速にプラズマ発生体1をプラズマ発生に適した温度に上昇させることができる。しかも、ヒータ21は、放電空間5を形成するとともに電極15を保持している基体3に設けられているから、基体3の高機能化が図られ、プラズマ発生体1全体として小型化が図られる。
【0077】
基体3に温度検出素子19が設けられていることから、プラズマ発生体1の温度を検出し、プラズマ発生体1の温度をプラズマ発生に適した温度に制御したり、プラズマ発生体1の異常を検出することができる。しかも、温度検出素子19は、放電空間5を形成するとともに電極15を保持している基体3に設けられているから、基体3の高機能化が図られ、プラズマ発生体1全体として小型化が図られる。
【0078】
基体3は、積層された複数の誘電層31が焼成されて形成され、放電空間5は、少なくとも一の誘電層31に穴部が設けられることにより形成された前記複数の誘電層31間の隙間を含んで構成されているから、放電空間5を有する基体3の形成が容易である。また、電極15や電極用導電路25等の導電体の配置を積層前の誘電層31に対して行うことにより、これら導電体の基体3への配置、固定の容易化も図られる。
【0079】
プラズマ発生体1は、放電により放電空間5にプラズマを発生させる電極15と、電極15が固定され、電極15に沿って延びる流路17を有し、一体的に形成された誘電体としての基体3とを備えるから、電極15を保持する基体3に流路17が設けられて基体3の高機能化が図られ、かつ、基体3が一体的に形成されて部品点数が削減され、プラズマ発生体1全体として小型化が図られる。
【0080】
放電空間5は、基体3に形成されているから、基体3の一層の高機能化が図られる。しかも、上述のように、電極15から放電空間5までの電気経路や放電空間5を形成する部分に界面が存在せず、熱応力の集中が抑制され、耐久性が向上する。
【0081】
電極15は、基体3に埋設され、流路17は、放電空間5と電極15との間に配置されていることから、電極15の周囲のうち、一般的に高温になり易い放電空間5側を効率的に冷却することが可能である。
【0082】
電極15として、放電空間5を挟んで互いに対向配置され、基体3に埋設された一対の電極15を備え、流路17は、一対の電極15の双方に沿って設けられている場合には、上述のように電極間に界面が存在せず、熱応力集中の抑制による耐久性向上が期待されるとともに、それぞれの電極15を十分に冷却することができる。
【0083】
放電空間5は、所定方向に沿って複数設けられ、電極15として、所定方向において、複数の放電空間5と交互に配置された複数の電極15を備え、流路17は、複数の電極15それぞれに沿って延びていることから、上述のように、一の電極15を2つの放電空間5の放電に使用でき、プラズマ発生体1を小型化しつつ、複数の放電空間5で大量にプラズマを発生させることができることに加え、電極15の冷却効果は維持されつつ電極15の少数化に伴って流路17も小数化されることになり、プラズマ発生体1の小型化が一層図られる。
【0084】
冷却媒体を供給可能な供給用流動管50Aと接続可能な流入用接続管9Aや冷却媒体を排出可能な排出用流動管50Bと接続可能な流出用接続管9Bが基体3に設けられていることから、基体3の高機能化が一層図られ、プラズマ発生体1又はプラズマ発生体1が取り付けられる装置の小型化が図られる。
【0085】
接続管9は基体3と一体的に形成されていることから、部品点数の増加が抑えられ、プラズマ発生体1全体としての小型化が容易化される。
【0086】
基体3は、積層された複数の誘電層31が焼成されて形成され、流路17は、少なくとも一の誘電層31に設けられた穴部により形成された複数の誘電層31間の隙間を含んで形成されているから、各誘電層31に適宜な形状の穴部を設けることにより、簡単に任意の形状の流路を形成することができる。
【0087】
電極15は、積層された誘電層31と共に焼成されることにより基体3に固定された導体により形成されていることから、電極15を基体3の任意の位置に固定することが容易である。例えば、電極15を基体3に埋設することも容易である。
【0088】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る反応装置100の構造的な構成を示す概念図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
反応装置100は、第1の実施形態のプラズマ発生体1を備え、プラズマ発生体1により被処理流体を処理して排出する装置として構成されている。被処理流体は、例えば、自動車の内燃機関の排気ガスであり、放電空間5における化学変化によりNOxが分解される。また、例えば、被処理流体は、冷蔵庫やエアコンに冷却媒体として使用されたフロンであり、放電空間5における化学変化によりフロンが分解される。なお、以下では、反応装置100のうち、プラズマ発生体1以外の部分を、反応装置本体部101ということがある。
【0090】
反応装置本体部101は、被処理流体を供給する流体源103と、流体源103からプラズマ発生体1に被処理流体を導く供給管105(供給部の一例)と、プラズマ発生体1により処理された被処理流体を排出する排出管107と、被処理流体の流動を制御するための被処理流体用ポンプ109と、冷却媒体を供給する冷媒源111と、冷媒源111からプラズマ発生体1に冷却媒体を導く供給用流動管50A(冷却部の一例)と、プラズマ発生体1から冷媒源111に冷却媒体を導く排出用流動管50Bと、冷却媒体の流動を制御するための冷却媒体用ポンプ113(冷却部の一例)とを備えている。
【0091】
流体源103は、被処理流体としての排気ガスを排出する自動車の内燃機関等、被処理流体を生成するものである。あるいは、流体源103は、使用済みの冷蔵庫やエアコンの冷却媒体を保持したタンク等、被処理流体を保持するものである。
【0092】
供給管105は、一端側が、流体源103の被処理流体を生成又は保持する空間に連通し、他端側が、プラズマ発生体1の放電空間5に連通している。供給管105のプラズマ発生体1側は、放電空間5の数に対応して第1分岐部105aA、第2分岐部105aB、第3分岐部105aC(以下、単に「分岐部105a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部105aA〜第3分岐部105aCは、それぞれ第1放電空間5A〜第3放電空間5Cに連通している。
【0093】
排出管107は、一端側が、プラズマ発生体1の放電空間5に、供給管105とは反対側から連通し、他端側が、大気に開放され、又は、処理後の被処理流体を保持若しくは処理後の被処理流体に別の処理を施す不図示の空間に連通している。排出管107のプラズマ発生体1側は、放電空間5の数に対応して第1分岐部107aA、第2分岐部107aB、第3分岐部107aC(以下、単に「分岐部107a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部107aA〜第3分岐部107aCは、それぞれ第1放電空間5A〜第3放電空間5Cに連通している。なお、排出管107は、省略されてもよい。例えば、処理後の被処理流体が放電空間5から大気へ直接的に排出されてもよい。
【0094】
供給管105及び排出管107は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。供給管105及び排出管107は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。分岐部105a及び分岐部107aと、放電空間5との接続は、例えば、分岐部105aや分岐部107aの端部を基体3の第2の面S2や第1の面S1に当接させて、接着剤や螺合部材などの適宜な固定部材により分岐部105aや分岐部107aと基体3とを固定することにより行われる。なお、分岐部105aや分岐部107aを放電空間5に嵌合挿入したり、接続管9のように、突出した環状部分を放電空間5の端部に基体3と一体的に形成し、その突出部分を分岐部105aや分岐部107aに嵌合挿入することにより行われてもよい。
【0095】
被処理流体用ポンプ109は、供給管105及び排出管107の少なくともいずれかに設けられている。図4では、供給管105に設けられた場合を例示している。なお、流体源103が内燃機関である場合など、流体源103の動力により被処理流体が流動される場合には、被処理流体用ポンプ109は省略されてもよい。また、被処理流体用ポンプ109は、プラズマ発生体1に設けることも可能である。被処理流体用ポンプ109は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0096】
冷媒源111は、例えば、熱交換器を含んで構成され、排出用流動管50Bからの冷却媒体の温度を熱交換器により降下させて供給用流動管50Aに供給する。なお、冷媒源111は、冷却媒体を供給することができればよく、排出用流動管50Bからの冷却媒体を受け入れて冷却媒体を循環させるものでなくてもよい。すなわち、排出用流動管50Bからの冷却媒体は、冷媒源111とは異なる場所へ排出されてよい。例えば、冷却媒体として水道水が利用されるような場合に、排出用流動管50Bからの水は、冷媒源111としての水源とは異なる場所へ排出されてよい。逆に、冷却媒体が循環される構成である場合には、冷媒源111は省略されてもよい。
【0097】
供給用流動管50Aは、一端が冷媒源111に連通するとともに、他端が、上述のように、流入用接続管9Aを介してプラズマ発生体1の流路17に連通している。排出用流動管50Bは、一端が、上述のように、流出用接続管9Bを介してプラズマ発生体1の流路17に連通するとともに、他端が冷媒源111に連通している。流動管50は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。流動管50は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0098】
冷却媒体用ポンプ113は、供給用流動管50A及び排出用流動管50Bの少なくともいずれかに設けられている。図4では、供給用流動管50Aに設けられた場合を例示している。なお、冷媒源111が高位置にあるタンクであり、重力により冷却媒体を流動させることができるなど、適宜に冷却媒体を流動させる動力が得られる場合には、冷却媒体用ポンプ113は省略されてもよい。また、冷却媒体用ポンプ113は、プラズマ発生体1に設けることも可能である。冷却媒体用ポンプ113は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0099】
図5は、反応装置100の電気系の構成を示すブロック図である。
【0100】
反応装置本体部101は、電極用端子7、センサ用端子11、ヒータ用端子13に接続される装置側電極用端子141、装置側センサ用端子143、装置側ヒータ用端子145を備えている。プラズマ発生体1は、これら端子を介して反応装置本体部101から電力が供給されて駆動制御される。具体的には、以下のとおりである。
【0101】
電源部121は、例えば、バッテリを含んで構成され、バッテリからの直流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。あるいは、商用周波数の交流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。電源部121の電力は、制御部123、放電制御部125、温度検出部127、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109、冷却媒体用ポンプ113に供給される。
【0102】
放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力に変換し、その変換後の電力を装置側電極用端子141及び電極用端子7を介して電極15に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。電極15では、放電制御部125により印加された電圧に応じた量の放電が行われる。
【0103】
温度検出部127は、例えば、温度検出素子19が温度変化により抵抗値が変化する抵抗体により構成されている場合、電源部121から供給される電力を適宜な電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側センサ用端子143及びセンサ用端子11を介して温度検出素子19に供給する。そして、温度検出素子19は、温度検出素子19の抵抗値を検出し、その検出した抵抗値に応じた信号を制御部123に出力する。温度検出素子19は、検出した抵抗値に基づいて温度検出素子19の温度を算出し、その算出値に応じた信号を制御部123に出力してもよい。
【0104】
ヒータ駆動部129は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側ヒータ用電極145及びヒータ用電極13を介してヒータ21に供給する。ヒータ駆動部129は、例えば、整流回路や変圧器等の電源回路を含んで構成されている。ヒータ21では、ヒータ駆動部129により印加された電圧に応じた量の発熱が行われる。
【0105】
被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113はそれぞれ、例えば、特に図示しないが、ポンプの駆動源としてのモータと、当該モータを駆動するモータドライバとを含んで構成されており、モータドライバは、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力又は直流電力に変換してモータに印加する。モータは、印加された電圧に応じた回転数で回転し、ひいては、印加された電圧に応じた力が被処理流体や冷却媒体に加えられる。
【0106】
入力部131は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じた信号を制御部123に出力する。例えば、入力部131は、反応装置100の駆動開始操作、駆動停止操作、温度設定や流量制御に係る各種のパラメータの設定操作を受け付け、操作に応じた信号を出力する。入力部131は、例えば、各種スイッチを含んだ制御パネルやキーボードにより構成されている。
【0107】
制御部123は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を備えたコンピュータにより構成されている。制御部123は、温度検出部127や入力部131からの信号に基づいて、放電制御部125、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113に制御信号を出力する。
【0108】
例えば、制御部123は、入力部131から反応装置100の駆動開始操作に応じた信号が入力された場合には、電極15への電力の供給を開始するように放電制御部125に制御信号を出力し、入力部131から反応装置100の駆動停止操作に応じた信号が入力された場合には、電極15への電力の供給を停止するように放電制御部125に制御信号を出力する。
【0109】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、プラズマ発生体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、電極15へ供給する電力を、通常運転時に供給する電力よりも増加させるように、放電制御部125に制御信号を出力し、プラズマ発生体1が目標温度に到達した場合には、電極15へ供給する電力を通常運転時に供給する電力に維持するように、放電制御部125に制御信号を出力する。
【0110】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、プラズマ発生体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、ヒータ21へ電力を供給し、又は、ヒータ21へ供給する電力を増加させるように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。そして、プラズマ発生体1が目標温度に到達した場合には、ヒータ21へ供給する電力を減少させ、又は、ヒータ21への電力の供給を停止するように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。
【0111】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、プラズマ発生体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度、あるいは、プラズマ発生体1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の目標温度とを比較し、検出された温度が目標温度よりも高い場合には冷却媒体の流速を高く、低い場合には冷却媒体の流速を低くするように、冷却媒体用ポンプ113へ制御信号を出力する。
【0112】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、プラズマ発生体1が効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、被処理流体の流速を低く、達したと判定した場合は、被処理流体の流速を高くするように、被処理流体用ポンプ109へ制御信号を出力する。
【0113】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、プラズマ発生体1や反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の温度範囲とを比較し、検出された温度が設定された温度範囲を超えた場合には、不図示の表示装置やスピーカ等の報知部に、異常の発生を報知するように制御信号を出力する。
【0114】
以上の第2の実施形態によれば、反応装置100は、第1の実施形態のプラズマ発生体1と、放電空間5に被処理流体を供給する供給管105と、放電空間5でプラズマ発生を行なって被処理流体を化学変化させた反応流体を排出するための排出管107とを備えているから、第1の実施形態と同様に、プラズマ発生体1の耐久性の向上やプラズマ発生体1の小型化の効果が得られ、ひいては、反応装置100の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
【0115】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光源装置200の構成を示す断面図である。
なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0116】
光源装置200は、第1の実施形態と同様の構成のプラズマ発生体1′を備え、プラズマ発生体1′により発生したプラズマを利用して発光する光源装置として構成されている。光源装置200は、例えば、蛍光灯、水銀ランプ、ナトリウムランプとして構成されている。なお、以下では、光源装置200のうち、プラズマ発生体1′以外の部分を、光源装置本体部201ということがある。
【0117】
第3の実施形態のプラズマ発生体1′は、複数の電極15が、基体3′の外部に設けられた電極用導電路207により互いに接続されている点で、第1の実施形態のプラズマ発生体1と相違する。なお、電極用導電路207は、プラズマ発生体1′に設けられていてもよいし、光源装置本体部201に設けられていてもよい。第1の実施形態のプラズマ発生体1が第3の実施形態に用いられてもよい。
【0118】
また、第1の実施形態では、基体3の表面の反射率については特に言及しなかったが、第3の実施形態の基体3′は、放電空間5を形成する面、若しくは、基体3′の外周面(図1の第1〜第6の面S1〜S6)の少なくとも一部、又は、これら双方を含む基体3′の表面全体が鏡面加工されており、反射率が比較的高くされている。例えば、反射率は50%以上が好ましい。このような基体3′を構成する誘電体の材料としては、白色系のものがよく、例えば、アルミナセラミックスやジルコニアセラミックス、コージェライトセラミックス、イットリアセラミックスが挙げられる。特に、プラズマ発生体1′が紫外光や近紫外光を発生する場合、アルミナセラミックスやジルコニアセラミックス、コージェライトセラミックス、イットリアセラミックスは、紫外光や近紫外光の反射率が高いとともに、紫外光や近紫外光に対して劣化することも抑制できる。
【0119】
好適には、基体3′を構成する誘電体は、放電空間5に露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高い方がよい。この構成により、放電空間5内で発生したプラズマによって基体3′がエッチングされるのを有効に防止できる。すなわち、放電空間5に露出した誘電体の表面は、非常に結合力の高い共有結合で結合した結晶相の割合を高めることによって、プラズマによるエッチングに対して抵抗力を有することとなる。よって、放電空間にエッチングされたセラミックの微粉が飛散するのを有効に防止でき、その結果、光源の波長が均一な単一光を安定して得ることができる。
【0120】
なお、プラズマ発生体1′の他の構成は、プラズマ発生体1と同様である。図1では放電空間5を3層とし、図6では放電空間5を4層としているが、これらは、いずれも説明の便宜上の例示に過ぎない。
【0121】
光源装置本体部201は、プラズマ発生体1′を収容するとともに、プラズマ発生体1′により発せられる光を放出可能な透光部209aを有する筐体209を備えている。透光部109aは、筐体209の一部に設けられ、光源装置200の光は所定方向に放出される。すなわち、光源装置200は、指向性を有する光源として構成されている。ただし、光源装置200は、筐体209の大部分又は全面に亘って透光部209aが設けられ、指向性を有しない光源として構成されてもよい。
【0122】
指向性を有するように形成された筐体209は、プラズマ発生体1′を収容し、遮光性を有する気密容器203と、気密容器203の開口部203aを塞ぐ透光部材205とを備えている。すなわち、気密容器203と、透光部材205とにより、筐体209全体が構成され、開口部203aと透光部材205により透光部209aが構成されている。
【0123】
筐体209は、密閉空間SPを形成するように構成されている。密閉空間SPには、プラズマが生成されるガスが封入されている。密閉空間SPに封入されるガスは、例えば、光源装置200が蛍光灯であれば、水銀粒を含む、200〜300Pa程度のアルゴンの希薄ガスであり、光源装置200が水銀ランプであれば、水銀蒸気であり、光源装置200がナトリウムランプであれば、ネオンやアルゴンガスが混入された0.5Pa程度のナトリウム蒸気である。
【0124】
プラズマ発生体1′は、密閉空間SPに放電空間5の開口方向が透光部209aに向くように配置されている。気密容器203は、例えば、絶縁性の適宜な材料により構成されている。例えば、セラミックにより構成されている。透光部材205は、例えば、透光性及び絶縁性を有する適宜な材料により構成されている。例えばガラスにより構成されている。なお、光源装置200が蛍光灯である場合には、透光部材205には蛍光塗料が塗布されている。
【0125】
筐体209の内部には、光を反射可能な反射部211が設けられている。反射部211は、例えば、セラミックからなる気密容器203の内面を鏡面加工することにより、形成されている。あるいは、気密容器203の内面に鏡を配置するなど、筐体209の内部の適宜な位置に反射部材を設けることにより形成されている。反射部209bの反射率は、例えば50%以上である。
【0126】
なお、光源装置本体部201は、第2の実施形態の反応装置本体部101と同様に、図4に示した、プラズマ発生体1′に冷却媒体の供給等を行う冷媒源111、流動管50、冷却媒体用ポンプ113を備えていてもよい。また、光源装置本体部201の電気系の構成は、図5に示した第2の実施形態の反応装置本体部101の電気系の構成に対して、被処理流体用ポンプ109が不要な以外は、同様である。
【0127】
以上の構成を有する光源装置200では、電極用導電路207に交流電力が供給されてプラズマ発生体1の放電空間5でプラズマが発生すると、励起された原子が光を発生し、その光が透光部209aから出射する。光源装置200は、例えば、一般的な屋内照明あるいは屋外照明として利用されてもよいし、露光装置の光源として利用されてもよい。
【0128】
以上の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様のプラズマ発生体1′と、該プラズマ発生体を収容するとともに、放電空間5におけるプラズマ発生により発せられる光を放出するための透光部209aを有する筐体209とを備えているから、第1の実施形態と同様に、プラズマ発生体1′の耐久性の向上やプラズマ発生体1′の小型化の効果が得られ、ひいては、光源装置200の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
【0129】
また、基体3′が一部材として形成され、界面がないので、光が界面に進入して光強度が低下することも抑制できる。
【0130】
筐体209内に前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光を反射する反射部211が設けられていることから、筐体209の内側面のうち透光部209a以外の面に入射する光を反射して、透光部209aからより高い光量で光を出射することができる。
【0131】
また、基体3′も反射部として機能していることから、放電空間5において生じた光が放電空間5を形成する面で吸収されることを抑制し、放電空間5から効率よく光を出射することができ、また、筐体209内の光が基体3′の外形を形成する面に吸収されることを抑制し、透光部209aからより高い光量で光を出射することができる。
【0132】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施してよい。
【0133】
プラズマ発生体は、電極に電圧を印加して放電空間における放電によりプラズマを発生させるものであればよく、いわゆる高周波放電によりプラズマを発生させるものに限定されない。例えば、対向する電極に直流電圧を印加して放電を行う直流放電によりプラズマを発生させるものであってもよいし、電極に比較的低周波の交流電圧(例えば、50Hz〜100kHzの交流電圧)を印加する低周波放電によりプラズマを発生させるものであってもよいし、周波数が非常に高い交流電圧(例えば、1GHz以上の交流電圧)を電極に印加するマイクロ波放電によりプラズマを発生させるものであってもよい。
【0134】
電極は、互いに対向する一対の電極を構成するもの、いわゆるコンデンサ形式のものに限定されず、コイル形式のものであってもよい。電極は、放電空間の外部に配置されるものに限定されず、放電空間の内部に配置されるものであってもよい。電極は基体に埋設されるものに限定されず、基体から露出するものであってもよい。基体が誘電層の積層体により形成される場合、電極は誘電層に平行に設けられるものに限定されず、誘電層に対して適宜な位置に設けられてよい。図7及び図8に変形例を例示する。
【0135】
図7(a)は、基体301に形成された放電空間303の内部に、一対の電極305が設けられたプラズマ発生体300を示す側面図である。基体301は、例えば、第1の実施形態と同様に、複数の誘電層が積層されて構成される。電極305は、例えば、誘電層のうち放電空間303を形成する面(第1の実施形態でいえば、第4誘電層31Dの凹部33Dの底面、第6誘電層31Fの凹部33Fの底面)に導電ペーストが配置され、積層した誘電層が焼成されることにより、形成される。
【0136】
図7(b)は、基体311に形成された放電空間313の外部に、立体的なコイル状の電極315が設けられたプラズマ発生体310を、基体311を透視して示す斜視図である。基体311は、例えば、第1の実施形態と同様に、複数の誘電層が積層されて構成される。電極315のうち、誘電層に平行な平行部315aは、例えば、第1の実施形態の電極15と同様に、誘電層の互いに重ね合わされる面に導電ペーストが配置され、積層した誘電層が焼成されることにより、形成される。電極315のうち、誘電層を貫通する貫通部315bは、例えば、第1の実施形態の電極用導電路25の直交部25aと同様に、誘電層に形成された孔部に導電ペーストが充填され、積層した誘電層が焼成されることにより、形成される。
【0137】
図7(c)は、基体321に形成された放電空間323の内部に、立体的なコイル状の電極325が設けられたプラズマ発生体320を、基体321を透視して示す斜視図である。基体321は、例えば、第1の実施形態と同様に、複数の誘電層が積層されて構成される。電極325は、例えば、誘電層のうち放電空間325を形成する面(第1の実施形態でいえば、第4誘電層31Dの凹部33Dの底面及び側面、第5絶縁層31Eの分割層31E−1、31E−2の対向面、第6誘電層31Fの凹部33Fの底面及び側面)に導電ペーストが配置され、積層した誘電層が焼成されることにより、形成される。
【0138】
図8(a)は、基体331に形成された放電空間333の内部に、平面的なコイル状の電極335が設けられたプラズマ発生体330を、基体331を透視して示す斜視図である。基体331は、例えば、第1の実施形態と同様に、複数の誘電層が積層されて構成される。電極335は、誘電層のうち放電空間335を形成する面(第1の実施形態でいえば、第4誘電層31Dの凹部33Dの底面)に導電ペーストが配置され、積層した誘電層が焼成されることにより、形成される。
【0139】
図8(b)は、図7(a)と同様に、基体341に形成された放電空間343の内部に、対向する一対の電極345が設けられたプラズマ発生体340を示す側面図である。基体331は、例えば、第1の実施形態と同様に、第1誘電層347A、第2誘電層347B(以下、単に「誘電層347」といい、これらを区別しないことがある。)が積層されて構成されている。電極341は、誘電層347に対して直交するように設けられている。すなわち、電極341は、誘電層347に平行に設けられていない。電極341は、例えば、誘電層のうち放電空間335を形成する面に導電ペーストが配置され、積層した誘電層が焼成されることにより、形成される。
【0140】
放電空間の形状、大きさは適宜に設定されてよく、直方体状に限定されない。例えば円柱形状であってもよい。放電空間は一つであってもよい。放電空間が複数の場合、形状、大きさ、間隔は互いに同一でなくてもよい。例えば、放熱が困難な位置側の放電空間同士の間隔を、他の位置の放電空間同士の間隔よりも大きくしてもよい。また、複数の放電空間と交互に電極が設けられる場合、複数の電極間の間隔は均等でなくてよいし、電極と放電空間との間隔も均等でなくてよい。
【0141】
プラズマ発生体の基体に形成された流路は、適宜な形状としてよい。例えば、流路は、分岐していてもよい。例えば、第1の実施形態において、流入用接続管9Aから延びた流路17が複数の電極冷却部17aに分岐して、その後、電極冷却部17aを通過後に合流して流出用接続管9Bまで延びるようにしてもよい。換言すれば、第1の実施形態においては複数の電極冷却部17aが直列に接続されたのに対し、複数の電極冷却部17aが並列に接続されるように流路17を分岐させてもよい。この場合、複数の電極を均一に冷却できる。
【0142】
また、流路は、平面的に延びていてもよいし、立体的に延びていてもよい。流路は、蛇行するものに限定されず、渦巻状に延びてもよい。流路は、基体内部で循環していてもよい。換言すれば、基体外部に連通していなくてもよい。流路は、実施形態のように1つに限定されず、適宜な数だけ設けてよい。
【0143】
図9(a)は、流路の変形例を示す平面図である。流路352は、電極351に沿って蛇行して延びている。流路352は、電極351の中央部に位置する流路中央部352aの断面積が、電極351の外周部に位置する流路外周部352bの断面積よりも大きくなるように形成されている。従って、高熱化しやすい電極351の中央部を重点的に冷却し、電極351全体の冷却を効率的に行うことができる。また、電極351は中央に電力が集中し易いところ、冷却媒体の誘電率が基体3の誘電率よりも低く、流路352が放電空間と電極351との間において延びていれば、電極351を被覆している誘電体の中央側の誘電率を外周側よりも低くして、電圧を均一化させ、放電を好適に行うことができる。なお、一例として、冷却媒体として利用可能な水の比誘電率は80程度であり、基体(誘電体)の材料として利用可能なセラミックは、水の比誘電率よりも低い比誘電率のものから比誘電率が1万程度のものまで存在する。
【0144】
図9(b)は、流路の他の変形例を示す平面図である。流路362は、電極361に沿って蛇行して延びている。流路362の断面積は一定である。流路362は、電極361の中央部に位置する流路中央部362a同士の間隔が、電極361の外周部に位置する流路外周部362b同士の間隔よりも小さくなるように形成されている。従って、図9(a)の変形例と同様の効果が得られる。
【0145】
なお、図9(a)及び図9(b)は組み合わされてもよい。図9(a)及び図9(b)に示した変形例においても、電極は平面状のものに限定されない。例えば、図7(b)に示した立体的なコイル状のものであっても、図7(b)の紙面上方側から平面視したときに、流路のうち電極の中央部に位置する部分と電極の外周部に位置する部分との間で、断面積や流路間隔に上記の関係が成立すればよい。
【0146】
図9(c)は、流路の更に他の変形例、具体的には、蛇行していない流路を示す平面図である。流路372は、電極371を囲むようにコイル状に延びている。このような流路372において、図9(a)や図9(b)に示したように、電極371の中央部に位置する流路中央部362a同士の間隔が、電極371の外周部に位置する流路外周部362b同士の間隔よりも小さくなるように形成されたり、流路中央部372aの断面積が、流路外周部372bの断面積よりも大きくなるように形成されてもよい。
【0147】
流路を流れる流体は、冷却媒体に限定されない。例えば、比較的高温の流体を流路に流し、プラズマ発生体を放電に適した温度まで迅速に昇温させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ発生体の外観斜視図。
【図2】図1のII−II線における断面を示す図。
【図3】図1のプラズマ発生体の形成方法を説明する図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る反応装置の構造的な構成を示す概念図。
【図5】図4の反応装置の電気系の構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る光源装置の構成を示す断面図。
【図7】プラズマ発生体の電極の変形例を示す図。
【図8】プラズマ発生体の電極の他の変形例を示す図。
【図9】プラズマ発生体の流路の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0149】
1…プラズマ発生体、3…基体(誘電体)、5…放電空間、15…電極、17…流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間にプラズマを発生可能な電極と、
前記電極が固定され、前記電極に沿って延びる流路を有した誘電体と
を備えることを特徴とするプラズマ発生体。
【請求項2】
前記誘電体は、前記放電空間を有し、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生体。
【請求項3】
前記電極は、前記誘電体に埋設され、
前記流路は、前記放電空間と前記電極との間に配置されている
ことを特徴とする請求項2記載のプラズマ発生体。
【請求項4】
前記電極として、前記放電空間を挟んで互いに対向配置され、前記誘電体に埋設された一対の電極を備え、
前記流路は、前記一対の電極それぞれに沿って延びている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のプラズマ発生体。
【請求項5】
前記放電空間は、所定方向に沿って複数設けられ、
前記電極として、前記所定方向において、前記複数の放電空間と交互に配置された複数の電極を備え、
前記流路は、前記複数の電極それぞれに沿って延びている
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ発生体。
【請求項6】
前記流体を供給可能な流動管又は前記流体を排出可能な流動管と接続可能で、前記流路に連通する接続管が前記誘電体に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のプラズマ発生体。
【請求項7】
前記接続管は前記誘電体と一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ発生体。
【請求項8】
前記流路は平面視して前記電極の中央部に位置する部分の断面積が前記電極の外周部に位置する部分の断面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のプラズマ発生体。
【請求項9】
前記流路は平面視して前記電極の中央部に位置する部分同士の間隔が前記電極の外周部に位置する部分同士の間隔よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のプラズマ発生体。
【請求項10】
前記誘電体は、前記放電空間に露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高いことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のプラズマ発生体。
【請求項11】
前記誘電体は、少なくとも前記放電空間に露出した部位の主成分がコージェライトセラミックスであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のプラズマ発生体。
【請求項12】
前記誘電体にヒータが形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のプラズマ発生体。
【請求項13】
前記誘電体に温度検出素子が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のプラズマ発生体。
【請求項14】
前記誘電体は、積層された複数の誘電層が焼成されて形成され、
前記流路は、前記誘電層に穴部が設けられることにより形成された前記複数の誘電層間の隙間を含んで形成されている
請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載のプラズマ発生体。
【請求項15】
前記電極は、前記誘電層に配置された導電ペーストが前記積層された複数の誘電層と共に焼成されて形成されたものである
請求項14記載のプラズマ発生体。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載のプラズマ発生体と、
前記放電空間に被処理流体を供給可能な供給部と、
前記放電空間でプラズマを発生させて前記被処理流体を化学変化させるように前記電極に電圧を印加可能な電極制御部と、
前記流路に冷却媒体を流動させることが可能な冷却部と
を具備することを特徴とする反応装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載のプラズマ発生体と、
該プラズマ発生体を収容するとともに、前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光を放出可能な透光部を有する筐体と、
前記流路に冷却媒体を流動させることが可能な冷却部と
を具備することを特徴とする光源装置。
【請求項18】
前記筐体内に前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光を反射可能な反射部が設けられている
ことを特徴とする請求項17記載の光源装置。
【請求項19】
前記誘電体は前記放電空間におけるプラズマ発生により発せられる光の反射率が50%以上である
ことを特徴とする請求項17または請求項18記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−117533(P2008−117533A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296753(P2006−296753)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】