説明

プリント回路板及び情報処理装置

【課題】環境温度が急に変化した場合等にも伝送エラーが発生しないプリント回路板を提供する。
【解決手段】プリント回路板1のプリント配線板を、伝送路20の近傍に、キャパシタンス測定用の測定パターン25が形成されているものとすると共に、プリント回路板1のプリント配線板上に、測定パターン25によるキャパシタンスの測定結果に基づき、良好な信号伝送が行えるように、送信回路21及び/又は受信回路22の送信タイミング、受信タイミング等を制御する監視回路10を搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路板と、プリント回路板を備えた情報処理装置とに、関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、情報処理装置(コンピュータ、コピー機等)には、複数の伝送路が各種導電層の各所に形成されたプリント配線板上に複数の電子部品を取り付けたプリント回路板が、用いられている。
【0003】
そのようなプリント回路板としては、電子部品間で授受される信号の周波数、電圧が異なる様々なものが存在しているのであるが、電子部品間で授受させる信号の周波数が高く、電圧が低いほど、伝送路を伝送することによる信号波形の歪みの影響が大きくなる。結果として、伝送エラーが発生しやすくなる。そのため、比較的に高周波数、低電圧の信号が電子部品間で授受されるプリント回路板の中には、伝送路の送信側や受信側に、所定内容の波形整形を行う等化回路(イコライザ)を設けたものが存在している。
【0004】
また、電子部品間で信号を正しく授受できるマージン(電圧マージン、タイミングマージン)は、プリント配線板の環境温度に応じて変化する。そのため、伝送路の受信側に、波形整形特性(実行する波形整形の内容)を調整可能な等化回路を設け、当該等化回路の波形整形特性を環境温度に応じて調整することも、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−159256号公報
【特許文献2】特開2000−199681号公報
【特許文献3】特開2005−303607号公報
【特許文献4】特許第4023165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
環境温度に応じて波形整形特性が調整される等化回路を設けたプリント回路板では、所定内容の波形整形を行う等化回路を設けたプリント回路板よりも、伝送エラーが発生し難いことになる。
【0007】
ただし、各伝送路の伝送時における信号の透過損失、伝搬遅延時間は、実際には、プリント配線板の,各伝送路が設けられてる部分の温度等によって定まる値である。そして、プリント配線板の各部の温度は、環境温度と等しくはならない(環境温度の変化よりも遅れて変化する)。また、プリント配線板の各部の温度は、環境温度が一定であっても、起動時等(電子部品が発熱を開始した場合、電子部品の発熱量が増えた/減った場合)には、急激に変化する。
【0008】
従って、環境温度に応じて波形整形特性が調整される等化回路を備えた上記プリント回路板では、環境温度が急に変化した場合や、プリント回路板(情報処理装置)の起動時等に、等化回路に対して誤った制御が行われ、その結果として伝送エラーが発生してしまう可能性があることになる。また、回路基板の材料が吸湿することで、各伝送路の伝送時における信号の透過損失、伝搬遅延時間は変化する。環境温度を一定にしても気象変動などにより環境湿度が変化することがある。この場合、環境温度に応じて等化回路を制御する方法では、吸湿による透過損失、伝搬遅延時間の変化を検出することができず、その結果
として伝送エラーが発生してしまう可能性があることになる。
【0009】
そこで、開示の技術の課題は、環境温度が急に変化した場合や起動時等にも伝送エラーが発生しないプリント回路板を提供することにある。
【0010】
また、開示の技術の他の課題は、環境温度が急に変化した場合や起動時等にも、その内部のプリント回路板にて伝送エラーが発生しない情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、開示の技術の一態様のプリント回路板は、プリント配線板上に複数の回路を実装したプリント回路板において、前記プリント配線板に形成されている伝送路、及び、当該伝送路を介して信号を授受する送信回路及び受信回路とを含む信号伝送回路であって、前記伝送路の信号伝搬特性が所定の範囲内にある場合には、前記送信回路及び/又は前記受信回路に対する制御により、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で動作させることが可能な信号伝送回路と、前記プリント配線板の前記伝送路が形成されている導電層に、前記伝送路と隣接するように形成された、キャパシタンスを測定するための測定パターンと、前記プリント配線板上に設けられた制御回路であって、前記測定パターンを用いてキャパシタンスを測定し、その測定結果に基づき、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で前記信号伝送回路が動作するように、前記送信回路及び/又は前記受信回路を制御する制御回路とを、備える。
【0012】
また、開示の技術の一態様の情報処理装置は、“プリント配線板上に複数の回路を実装したプリント回路板であって、前記プリント配線板に形成されている伝送路、及び、当該伝送路を介して信号を授受する送信回路及び受信回路とを含み、前記伝送路の信号伝搬特性が所定の範囲内にある場合には、前記送信回路及び/又は前記受信回路に対する制御により、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で動作させることが可能な信号伝送回路と、前記プリント配線板の前記伝送路が形成されている導電層に、前記伝送路と隣接するように形成された、キャパシタンスを測定するための測定パターンとを有するプリント回路板”と、“前記測定パターンによるキャパシタンスの測定結果に基づき、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で前記信号伝送回路が動作するように、前記送信回路及び/又は前記受信回路を制御する制御手段”とを備える。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を採用しておけば、環境温度が急に変化した場合や起動時等にも伝送エラーが発生しないプリント回路板、環境温度が急に変化した場合や起動時等にも、その内部のプリント回路板にて伝送エラーが発生しない情報処理装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るプリント回路板の概略構成図。
【図2】測定パターンの形成位置の説明図。
【図3】透過損失情報の説明図。
【図4】伝搬遅延時間情報の説明図。
【図5】状態制御処理の流れ図。
【図6】状態監視処理の流れ図。
【図7】状態把握処理による状態の把握単位(区画)の説明図。
【図8】状態把握処理の内容の説明図。
【図9】第2実施形態に係るプリント回路板の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明者らが開発した2種のプリント回路板(以下、第1、第2実施形態に係るプ
リント回路板1、2と表記する)を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
《第1実施形態》
第1実施形態に係るプリント回路板1は、コンピュータのマザーボードとして開発したものである。
【0017】
図1に模式的に示してあるように、第1実施形態に係るプリント回路板1は、監視回路10、伝送路20、送信回路21、受信回路22及び測定パターン25を備えている。
【0018】
送信回路21は、或るデジタル処理を実行するために、プリント回路板1のプリント配線板(図示略)上に設けられている,信号を送信する回路(IC等)である。この送信回路21は、信号の送信タイミングや送信する信号の電圧を、外部からの指示(後述する監視回路10/検出回路12からの制御信号)に従って変更する機能を有している。
【0019】
受信回路22は、送信回路21からの信号を受信する回路である。この受信回路22も、送信回路21と同様に、信号の受信タイミングや受信する信号の電圧(信号を受信したと見なす電圧)を調整可能な、プリント配線板上に設けられた回路となっている。
【0020】
伝送路20は、プリント回路板1のプリント配線板の或る導体層に形成されている伝送路(銅配線)である。図示は省略してあるが、第1実施形態に係るプリント回路板1は、この伝送路20と上記した送信回路21及び受信回路22とからなる回路(以下、信号伝送回路と表記する)を複数個備えたものとなっている。
【0021】
測定パターン25は、伝送路20毎(信号伝送回路毎)に設けられているキャパシタンス測定用のパターン(本実施形態では、櫛歯状パターン)である。各伝送路20用の測定パターン25は、図2に模式的に示したように、対応する伝送路20が形成されているプリント配線板の導体層に、当該伝送路20と隣接するように形成されている。
【0022】
監視回路10(図1)は、プリント回路板1の環境温度が急に変化した場合や起動時等にも伝送エラーが発生しないように、各信号伝送回路内の送信回路21及び/又は受信回路22を制御する回路である。また、監視回路10は、プリント回路板1の状態を監視し、プリント回路板1の状態が異常となった場合には、その旨を示すデジタル情報である異常通知を出力する回路ともなっている。
【0023】
より具体的には、監視回路10は、測定回路11、不揮発性記憶部12bを有する検出回路12、及び、帰還回路13により構成されている。
【0024】
測定回路11は、検出回路12の制御下、プリント回路板1内の各測定パターン25を用いて各測定パターン25が設けられている部分のキャパシタンスを測定する回路である。帰還回路13は、検出回路12から指示された内容の制御信号を、各信号伝送回路の送信回路21及び/又は受信回路22に対して出力する回路である。
【0025】
検出回路12は、起動されると(プリント回路板1を組み込んだコンピュータが起動されると)、状態制御処理及び状態監視処理を開始する回路である。なお、本実施形態に係るプリント回路板1は、この検出回路12を、プリント回路板1上のCPU、不揮発性メモリ及びRAMを利用して実現したものとなっている。
【0026】
検出回路12が実行する状態制御処理、状態監視処理は、いずれも、不揮発性記憶部12b上に記憶された情報を参照する処理となっている。そのため、各処理の詳細を説明する前に、不揮発性記憶部12bに記憶されている情報の種類/内容を説明しておくことに
する。
【0027】
検出回路12の不揮発性記憶部12bには、透過損失情報と、伝搬遅延時間情報と、各測定パターン25についてのキャパシタンス遷移パターン情報とが、記憶されている。
【0028】
透過損失情報は、それを参照することにより、或る(任意の)測定パターン25によるキャパシタンスの測定結果から、その測定パターン25に隣接している伝送路20の透過損失を推定出来る情報である。また、伝搬遅延時間情報は、それを参照することにより、或る測定パターン25によるキャパシタンスの測定結果から、その測定パターン25に隣接している伝送路20の伝搬遅延時間を推定出来る情報である。
【0029】
そのような透過損失情報、伝搬遅延時間情報は、さまざまな手法により用意することが出来るが、プリント回路板1は、以下の手法で透過損失情報及び伝搬遅延時間情報を用意したものとなっている。
【0030】
プリント回路板1の開発時には、プリント回路板1のプリント配線板を簡略化したものに相当するプリント配線板が製造されている。すなわち、各部の構成材料がプリント回路板1のプリント配線板と等しく、透過損失及び伝搬遅延時間を測定するための伝送路(伝送路20相当のもの)と、キャパシタンス測定用パターン(測定パターン25相当のもの)とを備えたリント配線板が、製造されている。
【0031】
また、当該プリント配線板の周囲環境を或る環境(以下、実験環境と表記する)に長時間維持した後、当該プリント配線板に形成されている伝送路の透過損失及び伝搬遅延時間を測定すると共に当該プリント配線板に形成されているキャパシタンス測定用のパターンを用いて当該パターンが形成されている部分のキャパシタンスを測定することが、温度や湿度が異なる複数の実験環境のそれぞれについて、行われている。
【0032】
そして、第1実施形態に係る透過損失情報は、図3に示したように、上記実験における各測定結果(図3の○)に基づき用意した情報(図3における点線相当の情報)となっている。また、伝搬遅延時間情報も、図4に示したように、上記実験における各測定定結果(図4の○)に基づき用意した情報となっている。
【0033】
不揮発性記憶部12b(図1)内の各測定パターン25についてのキャパシタンス遷移パターン情報は、各測定パターン25によるキャパシタンスの測定結果が、通常(プリント回路板1の各部に異常がない場合に)、プリント回路板1を組み込んだコンピュータの起動後にどのように時間変化するかを示す情報である。詳細は後述するが、このキャパシタンス遷移パターン情報は、不揮発性記憶部12に、予め(プリント回路板1の実際の運用開始前に)記憶しておかないことも可能な情報となっている。
【0034】
検出回路12が実行する状態制御処理は、上記した透過損失情報及び伝搬遅延時間情報を参照して行われる、図5に示した手順の処理である。
【0035】
すなわち、起動された(プリント回路板1を組み込んだコンピュータが起動された)ため、この状態制御処理を開始した検出回路12は、まず、測定回路11を制御することより、各信号伝送回路に関するキャパシタンスを測定して記憶する処理(ステップS101)を行う。なお、各信号伝送回路に関するキャパシタンスとは、各信号伝送回路の伝送路20近傍の,測定パターン25が設けられている部分のキャパシタンス(当該測定パターン25により測定されるキャパシタンス)のことである。
【0036】
次いで、検出回路12は、所定時間の経過を待機する(ステップS102)。そして、
検出回路12は、所定時間が経過した場合には、測定回路11を制御することより、各信号伝送回路に関するキャパシタンスを測定・記憶する処理(ステップS103)を行う。このステップS103の処理は、検出回路12内の測定結果数が所定数を超えないように、かつ、検出回路12内に最新の測定結果群が残るように、測定結果を記憶する処理となっている。
【0037】
その後、検出回路12は、信号伝送回路毎に、今回のキャパシタンスの測定結果と前回のキャパシタンスの測定結果とを比較することにより、キャパシタンスが規定値以上変化した信号伝送回路が存在するか否かを判断する(ステップS104)。
【0038】
そのような信号伝送回路(以下、要調整信号伝送回路と表記する)が存在しなかった場合(ステップS104;NO)、検出回路12は、ステップS102からの処理を再び開始する。
【0039】
一方、要調整信号伝送回路が幾つか存在していた場合(ステップS104;YES)、検出回路12は、透過損失情報及び伝搬遅延時間情報を参照して、各要調整信号伝送回路内の送信回路21及び/又は受信回路22を、良好な信号伝送が行えるように制御する処理(ステップS105)を行う。
【0040】
すなわち、検出回路12は、キャパシタンスが規定値以上大きくなった要調整信号伝送回路については、その要調整信号伝送回路内の送信回路21を、送信タイミングがより早く、より大きな電圧の信号を送信する状態(図3、図4参照)に制御する処理、その要調整信号伝送回路内の受信回路22を、受信タイミングがより遅く、より小さな電圧の信号を受信する状態に制御する処理、その要調整信号伝送回路内の送信回路21及び受信回路22の双方を制御する処理のいずれか(実際の状況に応じたもの)を行う。また、検出回路12は、キャパシタンスが規定値以上小さくなった要調整信号伝送回路については、その要調整信号伝送回路内の送信回路21を、送信タイミングがより遅く、より小さな電圧の信号を送信する状態に制御する処理、その要調整信号伝送回路内の受信回路22を、受信タイミングがより早く、より大きな電圧の信号を受信する状態に制御する処理、その要調整信号伝送回路内の送信回路21及び受信回路22の双方を制御する処理のいずれかを行う。
【0041】
そして、ステップS105の処理を終えた検出回路12は、ステップS102からの処理を再び開始する。
【0042】
検出回路12が実行する状態監視処理は、上記したキャパシタンス遷移パターン情報を参照して行われる、図6に示した手順の処理である。
【0043】
すなわち、起動されたため、この状態監視処理を開始した検出回路12は、まず、規定時間が経過するのを待機する(ステップS201)。
【0044】
次いで、検出回路12は、状態制御処理により得られているキャパシタンスの測定結果群、不揮発性記憶部12b上の各キャパシタンス遷移パターン情報、起動後の経過時間に基づき、プリント回路板1の各区画の状態を把握(判定)する状態把握処理(ステップS202)を行う。なお、プリント回路板1の区画とは、図7に模式的にしたように、プリント配線板の各測定パターン25を中心とした部分と、その上に配置されている回路群(図示略)からなる部分のことである。各区画の大きさが同じである必要はない。
【0045】
この状態把握処理は、基本的には、図8に模式的に示したように、或る区画内の測定パターン25によるキャパシタンスの測定結果が、対応するキャパシタンス遷移パターン情
報が示している標準パターン通りに遷移(変化)しない状態が一定時間以上継続したときに、当該区画の状態が異常状態になったと判定する処理である。ただし、状態把握処理は、或る区画に関するキャパシタンスが急激に変化した場合には、上記一定時間が経過していなくても、当該区画の状態が異常状態になったと判定する処理となっている。
【0046】
状態把握処理(図6:ステップS202)を終えた検出回路12は、その状態把握処理にて異常状態になっている判定した区画がなかった場合(ステップS203;NO)には、ステップS201からの処理を再び開始する。
【0047】
一方、状態把握処理にて異常状態になっていると判定した区画があった場合(ステップS203;YES)、検出回路12は、異常状態となっていると判定した各区画の識別情報や各区画にて発生している異常現象の内容を示す情報を含む異常通知を出力する(ステップS204)。また、検出回路12は、全区画の状態が、キャパシタンスが大き過ぎることを原因とした異常状態であった場合には、このステップS204において、吸湿によりプリント回路板1(のプリント配線板)の寿命が近づいた旨の情報も含む異常通知を出力する。
【0048】
なお、本実施形態に係る検出回路12が実際に出力する異常通知は、プリント回路板1が組み込まれているコンピュータのディスプレイ上に、異常状態となっている各区画の識別情報や各区画にて発生している異常現象の内容を示す情報等が示された警告ウィンドウが表示されることになる情報(コマンド群)である。
【0049】
そして、ステップS204の処理を終えた検出回路12は、ステップS201からの処理を再び開始する。
【0050】
最後に、不揮発性記憶部12bにキャパシタンス遷移パターン情報が記憶されていなかった場合の検出回路12の動作を説明しておくことにする。
【0051】
検出回路12は、実際には、上記状態監視処理(図6)を開始する前に、各信号伝送回路に関する有効なキャパシタンス遷移パターン情報が存在している(不揮発性記憶部12bに記憶されている)か否かを判断する回路として構成されている。なお、有効なキャパシタンス遷移パターン情報とは、キャパシタンスが安定するまでキャパシタンスが測定されている情報(図8参照。)のことである。
【0052】
そして、検出回路12は、有効なキャパシタンス遷移パターン情報が存在していなかった場合には、状態監視処理を開始することなく、状態制御処理により各信号伝送回路について測定されたキャパシタンスを、各信号伝送回路に関するキャパシタンス遷移パターン情報の要素として不揮発性記憶部12bに記憶していく処理を開始する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、プリント回路板1は、常に(環境温度が急激に変化した場合や、起動によりプリント回路板1の各部の温度が上昇し始めた場合にも)、伝送路20の透過損失及び伝搬遅延時間と強く相関する,伝送路20近傍の部分のキャパシタンスの測定結果に基づき、信号伝送が良好に行えるように、送信回路21及び/又は受信回路22の動作条件が変更される構成を有している。
【0054】
従って、このプリント回路板1では、環境温度が急に変化した場合や起動時等にも、伝送エラーが発生しないことになる。
【0055】
また、プリント回路板1は、各区画の状態をキャパシタンスの測定結果から把握して、異常な区画があった場合には、その旨を管理者等に通知する(警告ウィンドウをディスプ
レイ上に表示する)コンピュータを実現できるものとなっている。従って、プリント回路板1は、実際に不具合が生ずる前に、修理、交換等を行えるプリント回路板となっていることにもなる。
【0056】
《第2実施形態》
以下、第1実施形態に係るプリント回路板1と異なる部分を中心に、第2実施形態に係るプリント回路板1の構成、機能を説明する。
【0057】
図9に、第2実施形態に係るプリント回路板2の概略構成を示す。
このプリント回路板2が備える送信回路21b、受信回路22bは、それぞれ、送信回路21、受信回路22から、送信/受信タイミング等の変更(調整)機能を取り除いたものに相当する回路である。
【0058】
送信回路21bと伝送路20との間、伝送路20と送信回路22bとの間に設けられている等化回路23、24は、波形整形を行うための,実行する波形整形の内容を調整可能な回路である。
【0059】
プリント回路板2が備える監視回路10は、プリント回路板1が備える監視回路10と本質的には同機能、同構成の回路である。ただし、プリント回路板2内の監視回路10(検出回路12)は、図から明らかなように、伝送路20近傍の部分のキャパシタンスの測定結果に基づき、信号伝送が良好に行えるように、等化回路23及び/又は等化回路24の動作条件(実行する波形整形の内容)を制御する回路となっている。
【0060】
要するに、このプリント回路板2は、送信回路21相当のものが“送信回路21b+等化回路23”によって実現され、受信回路22相当のものが“等化回路24+受信回路22b”によって実現されたものとなっている。
【0061】
従って、このプリント回路板2も、プリント回路板1と同様に、環境温度が急に変化した場合や起動時等にも伝送エラーが発生しないプリント回路板となっていることになる。
【0062】
《変形形態》
上記した各実施形態に係るプリント回路板1、2は、各種の変形を行うことが出来る。例えば、第1実施形態に係るプリント回路板1を、全て又は一部の送信回路21が、送信タイミング等の調整が行えない回路となっているものや、全て又は一部の受信回路22が、受信タイミング等の調整が行えない回路となっているものに変形することが出来る。また、第2実施形態に係るプリント回路板2を、一部又は全ての伝送路20の送信側又は受信側のみに、等化回路(23又は24)が設けられているものに変形することも出来る。
【0063】
監視回路10の一部(例えば、検出回路12)を、プリント回路板1、2外の回路(プリント回路板1、2を組み込む情報処理装置側に設けられている回路)とすることも出来る。監視回路10を、キャパシタンス遷移パターン情報を保持せず、各区画の状態を、各区画に関するキャパシタンスの大きさを比較することにより判定する回路に変形することも出来る。
【0064】
また、プリント回路板1、2を、各区画の状態をキャパシタンスの測定結果から把握して、異常な区画があった場合には、その旨を示す情報を出力する機能のみを有するもの(伝送エラーの発生防止機能を有さないもの)に変形することも出来る。
【符号の説明】
【0065】
1、2 プリント回路板
10 監視回路
11 測定回路
12 検出回路
12b 不揮発性記憶部
13 帰還回路
20 伝送路
21、21b 送信回路
22、22b 受信回路
23、24 等化回路
25 測定パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板上に複数の回路を実装したプリント回路板において、
前記プリント配線板に形成されている伝送路、及び、当該伝送路を介して信号を授受する送信回路及び受信回路とを含む信号伝送回路であって、前記伝送路の信号伝搬特性が所定の範囲内にある場合には、前記送信回路及び/又は前記受信回路に対する制御により、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で動作させることが可能な信号伝送回路と、
前記プリント配線板の前記伝送路が形成されている導電層に、前記伝送路と隣接するように形成された、キャパシタンスを測定するための測定パターンと、
前記プリント配線板上に設けられた制御回路であって、前記測定パターンを用いてキャパシタンスを測定し、その測定結果に基づき、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で前記信号伝送回路が動作するように、前記送信回路及び/又は前記受信回路を制御する制御回路と
を備えることを特徴とするプリント回路板。
【請求項2】
前記監視回路が、
前記測定パターンによるキャパシタンスの測定結果に基づき、自プリント回路板の状態が異常状態となるのを監視し、自プリント回路板の状態が異常状態となった場合には、その旨を示す情報を出力する機能を有する回路である
ことを特徴とする請求項1記載のプリント回路板。
【請求項3】
プリント配線板上に複数の回路を実装したプリント回路板であって、前記プリント配線板に形成されている伝送路、及び、当該伝送路を介して信号を授受する送信回路及び受信回路とを含み、前記伝送路の信号伝搬特性が所定の範囲内にある場合には、前記送信回路及び/又は前記受信回路に対する制御により、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で動作させることが可能な信号伝送回路と、前記プリント配線板の前記伝送路が形成されている導電層に、前記伝送路と隣接するように形成された、キャパシタンスを測定するための測定パターンとを有するプリント回路板と、
前記測定パターンによるキャパシタンスの測定結果に基づき、前記受信回路によって正確に信号が受信できる状態で前記信号伝送回路が動作するように、前記送信回路及び/又は前記受信回路を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
前記プリント回路板のプリント配線板上に
前記測定パターンによるキャパシタンスの測定結果に基づき、自プリント回路板の状態が異常状態となるのを監視し、自プリント回路板の状態が異常状態となった場合には、その旨を示す情報を出力する機能を有する監視回路が設けられており、
前記プリント回路板の前記監視回路から、自プリント回路板の状態が異常状態となった旨を示す情報が出力された場合に、その旨を自装置の管理者に通知するための警告情報を出力する警告情報出力手段を備える
ことを特徴とする請求3記載の情報処理装置。
【請求項5】
プリント配線板上に複数の回路を実装したプリント回路板において、
前記プリント配線板に設けられた、キャパシタンスを測定するための複数の測定パターンと、
前記プリント配線板上に設けられた状態検出回路であって、前記複数の測定パターンのそれぞれを用いてキャパシタンスを測定し、それらの測定結果に基づき、自プリント回路板の状態が異常状態となるのを監視して、自プリント回路板の状態が異常状態となった場合に、その旨を示す情報を出力する状態監視回路と
を備えることを特徴とするプリント回路板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−97153(P2011−97153A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246477(P2009−246477)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】