説明

プリント基板の部分はんだ付け方法

【課題】プリント基板の必要箇所だけにフラックスを塗布し、溶融はんだを付着させることができる部分はんだ付け方法と部分はんだ付け装置を提供する。
【解決手段】プリント基板を走行させる搬送装置の下方にはフラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽が設置されており、プリント基板のはんだ付けの必要箇所に対応した噴霧ノズルや加熱部、噴流ノズルが一定間隔で設置されている。そしてプリント基板をプッシャーにより一定距離だけ移動させることにより、はんだ付けの必要箇所が必ず噴霧ノズル、加熱部、噴流ノズルと同一位置となり、不要個所にフラックスや溶融はんだは付着しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の所定の箇所だけに溶融したはんだを付着させること
によりはんだ付けする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプリント基板のはんだ付けは、自動はんだ付け装置で行っている。自動はんだ付け装置とは、フラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽等の処理装置が設置されており、これらの処理装置の上方にはプリント基板を搬送する一対のチェーンが設置されたものである。自動はんだ付け装置における一対のチェーンは、フラクサー設置位置方向から噴流はんだ槽設置位置方向に走行しており、該チェーンに取り付けられた爪でプリント基板を挟持してプリント基板を搬送するようになっている。この自動はんだ付け装置でプリント基板のはんだ付けを行う場合、プリント基板の裏面全面にフラクサーでフラックス塗布、プリヒーターで裏面全体の予備加熱、そして噴流はんだ槽で裏面全面に溶融はんだを接触させてはんだ付け部にはんだを付着させる。
【0003】
ところで最近のプリント基板は、図6に示すようにプリント基板Pの裏面に多数のはんだ付け部H…が集中的に密集して存在するようになってきた。これはプリント基板の表面に搭載する電子部品がPGAやデュアルパッケージのように一個の電子部品に多数のリードが設置していたり、コネクターのように多数のジャックと導通する電極が取り付けられていたりするからである。また最近のプリント基板は、実装密度を高めるために、図6に示すようにプリント基板Pの裏面に表面実装部品DやコネクターC等を搭載することがある。従って、最近のプリント基板は、多数のはんだ付け部H…がはんだ付け群Gとなり、裏面に表面実装部品DやコネクターC等が搭載されているものが多くなっている。
【0004】
裏面に表面実装部品やコネクター等が搭載されたプリント基板を一般のプリント基板のはんだ付けに使用する自動はんだ付け装置ではんだ付けを行うと、表面実装部品やコネクターに不都合が起きてしまう。つまり自動はんだ付け装置では、裏面全面にフラックス塗布を行い、裏面全面を予備加熱し、そして裏面全面に溶融はんだを付着させるため、溶融はんだやフラックスが不必要箇所に付着したり、裏面に搭載された表面実装部品が高温となった溶融はんだと接触して機能劣化や熱損傷を起こしたり、また裏面に取付けられたコネクターはジャックの挿入孔にフラックスや溶融はんだが侵入してコネクターとして全く使用不能になったりしてしまう。そこで従来よりプリント基板の必要箇所だけに溶融はんだを接触させるとともに、不要箇所には熱影響を及ぼすことがなくはんだ付けが行えるという所謂「部分はんだ付け」が行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、プリント基板に対して部分はんだ付けを行う場合、フラクサーでのフラックス塗布、プリヒーターでの予備加熱、噴流はんだ槽での溶融はんだの付着は、自動化されたはんだ付け装置を使用せず、作業者がプリント基板を別々に置かれた処理装置で行っていた。なぜならば自動化されたはんだ付け装置では、フラクサーの塗布ノズルや噴流はんだ槽の噴流ノズルにプリント基板のはんだ付け群を一致させて、これらノズル上に直接載置したり、或いは使用状態によってノズルから少し離して静止したりするという微妙な調整が非常に難しいからである。
【0006】
しかしながら、従来の部分はんだ付けのように作業者がプリント基板を手で持って各処理装置で処理することは生産性が悪いばかりでなく、フラックス塗布や溶融はんだの付着がはんだ付け群からずれるという精度の悪いものであった。本発明は、所定の箇所に必ずフラックスが塗布され、その所定の箇所に溶融はんだが必ず付着するという部分はんだ付け方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、チェーン搬送は所定の箇所での静止はできるが、フラクサーの塗布ノズルや噴流はんだ槽の噴流ノズルに載置したり近づけて静止したりすることはできない。そこで本発明者らは、プリント基板を一定距離だけ移動させることができる手段を用いればプリント基板の必要箇所だけにフラックスや溶融はんだを付着させることができることに着目して本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、レール上のプリント基板をプッシャーで摺動走行させてフラクサー上で一定時間停止し、この停止中にプリント基板がフラクサーの塗布ノズルに載置または近づくようにしてプリント基板の所定の箇所にフラックス塗布を行い、次に該プリント基板をプッシャーでプリヒーター上まで摺動走行させてプリヒーター上で一定時間停止し、この停止中にプリント基板の所定の箇所またはプリント基板全体をプリヒーターで予備加熱し、その後該プリント基板をプッシャーで噴流はんだ槽上まで摺動走行させて噴流はんだ槽上で一定時間停止し、この停止中にプリント基板を噴流はんだ槽の噴流ノズルに載置または近づけてプリント基板の所定の箇所に溶融はんだの付着を行うことを特徴とするプリント基板の部分はんだ付け方法である。
【0009】
また別の本発明は、プリント基板の所定の箇所と一致したフラクサーの塗布ノズルと、前記フラックス塗布部を乾燥させるプリヒーターの加熱部と、プリント基板の所定の箇所と一致した噴流はんだ槽の噴流ノズルとが同一位置となるようにフラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽等の処理装置が設置されており、これらの処理装置上にはプリント基板を摺動走行させるレールが設置されているとともに、さらにレールの上方にはフラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽上にあるプリント基板を次工程の処理装置の上方に移動させることができるプッシャーが複数設置されていることを特徴とするプリント基板の部分はんだ付け装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によればプリント基板をプッシャーで一定距離だけ移動させることができるため、一定間隔で設置されたフラクサーの噴霧ノズル、プリヒーターの吹き出し開口、噴流はんだ槽の噴流ノズルをプリント基板の所定のはんだ付け群に完全に一致させることができ、フラックスや溶融はんだがプリント基板の不要個所に付着して不都合を起こすことが決してない。さらに本発明では、プリント基板を自動的にフラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽の所定に位置に自動的に移動させてはんだ付け処理を行うことができることから生産性が良好になるという従来にない優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明でプリント基板の必要箇所だけにフラクサーでフラックス塗布する場合、フラクサーとしてはスプレーフラクサーや発砲フラクサーを使用し、プリント基板の必要箇所と同一形状の塗布ノズルを用いる。このときプリント基板は塗布ノズル上に載置してもよく、或いは塗布ノズルから少し離してもよい。
【0012】
また必要箇所にフラックスを塗布した後、プリヒーターでフラックスの乾燥や予備加熱を行うが、このときプリヒーターとしては熱風吹き出しヒーターや赤外線ヒーターを用いる。フラックスの塗布箇所だけを加熱するのであれば、加熱部として所定の箇所に吹き出し開口を設置した熱風吹き出しヒーターを用い、プリント基板全体を加熱するのであれば赤外線ヒーターや吹き出し開口のない熱風吹き出しヒーターを用いる。
【0013】
そして必要箇所だけに溶融はんだを付着させるときは、プリント基板を噴流はんだ槽の噴流ノズル上に載置、或いはプリント基板を噴流ノズルから少し離して静止させる。プリント基板に噴流ノズルで溶融はんだを付着させるときには、噴流はんだ槽上の搬送装置を降下させてプリント基板を噴流ノズルから少し間隔をあけて静止したり、或いはプリント基板を噴流ノズル上に載置したりしてから噴流ノズルから溶融はんだを噴流してプリント基板に溶融はんだを付着させる。
【0014】
本発明のプリント基板の部分はんだ付け装置(以下、部分はんだ付け装置という)は、所定の箇所にフラックスを塗布するフラクサーの塗布ノズルと、該フラックス塗布部を予備加熱するプリヒーターの吹き付けノズルと、該予備加熱部に溶融はんだを付着させる噴流はんだ槽の噴流ノズルとを一定間隔にして設置する。しかしながら、プリヒーターに吹き付けノズルを使用せずプリント基板全体を加熱する場合は、塗布ノズルと噴流ノズルの中心に必要箇所を充分に加熱できる加熱部を設置するようにし、この加熱部もフラクサーの塗布ノズルと噴流はんだ槽の噴流ノズルの間隔を一定にする。
【0015】
本発明に使用する搬送装置としては、レールや把持装置等がある。レールはプリント基板を摺動走行させ、把持装置はプリント基板を一対の爪で把持して走行させる。
【0016】
(実施例)
以下図面に基づいて本発明の部分はんだ付け装置について説明する。図1は本発明の部分はんだ付け装置の正面図、図2は図1のA-A線断面図である。
【0017】
本発明の部分はんだ付け装置には、フラクサー1、プリヒーター2、噴流はんだ槽3が設置されている。フラクサー1には所定箇所にフラックスを塗布する塗布ノズル4、5が設置されており、プリヒーター2には所定箇所を予備加熱する吹き出し開口6、7が設置されており、そして噴流はんだ槽には所定箇所に溶融はんだを付着させる噴流ノズル8、9が設置されている。プリント基板の所定箇所に処理を行う塗布ノズル4と吹き出し開口6と噴流ノズル8は一定間隔Wで同一位置となっている。もちろん他の所定の塗布ノズル5と吹き出し開口7と噴流ノズル9も一定間隔で同一位置となっている。またフラクサー1は昇降装置10で昇降可能となっている。
【0018】
フラクサー1とプリヒーター2の上には一対のレール11、11が設置されており、噴流はんだ槽3の上にも一対のレール12、12が設置されている。これらのレールは段状となっており、相対向するレールの下段13上をプリント基板Pが摺動走行するようになっている。レール12はフレーム14に摺動自在に取付けられた吊設棒15で上下動可能に吊設されている。
【0019】
またレール11、12の上方にはプッシャー16が設置されているが、該プッシャーの下端はレールの下段13よりも少し下方に位置している。プッシャー16は上部が走行杆17に回動自在に取付けられており、それよりも少し下部となるところが回動杆18に回動自在に取付けられている。また走行杆17にはエアーシリンダー19が固定されており、該エアーシリンダーのピストンは最端のプッシャー16に回動杆18とともに回動自在に取付けられている。走行杆17はフレーム14に取付けられた図示しない走行装置により所定距離だけ往復動(矢印X)するようになっており、またプッシャー16はエアーシリンダー19により矢印Yのように回動して下端を上方に上げることができる。このとき全てのプッシャーは上部が走行杆17と、そして下部が回動杆18と回動自在に取付けられているため、エアーシリンダー19のピストンロッドの出入により回動して下端が上下動する。
【0020】
レール11の手前には進入コンベア20が、そしてレール12の前方には退出りコンベア21が設置されている。
【0021】
次に上記構成からなる部分はんだ付け装置を用いた本発明のプリント基板のはんだ付け方法について説明する。図3〜5は本発明のはんだ付け方法における各工程の説明図である。
【0022】
先ずプリント基板P1を進入コンベア20で所定の位置まで搬送し、そこで進入コンベアを止める。すると走行杆17は、図3の1中最左のプッシャー16が下端を上げた状態で進入コンベア20上のプリント基板P1の後部の位置と略同一位置まで移動する(図3の(1))。ここでプッシャー16は回動して下端がプリント基板P1の後部に当接する(図3の(2))。その後、走行杆17が矢印X方向に走行し、最左のプッシャー16がプリント基板P1をフラクサー1上まで移動させる。
このときプリント基板P1は、それぞれのはんだ付け群がそれらに対応した噴霧ノズルと同一位置となるようにして停止する。プリント基板P1がフラクサー上の所定の位置で停止したならば、フラクサー1は昇降装置10により上昇し、噴霧ノズルがプリント基板に接してフラックス塗布が行われる(図3の(3))。
【0023】
次に同様にして進入コンベア20の所定の位置までプリント基板P2が搬送され、最左のプッシャー16が下端を上げた状態でプリント基板P2の上方まで移動し、また該プッシャーと隣接したプッシャー16はフラクサー1の上方に移動する(図4の(4))。そしてそれぞれのプッシャーの下端が下がって進入コンベア20上のプリント基板P2の後部と、フラクサー1上のプリント基板P1の後部に当接する(図4の(5))。その後、走行杆17が矢印X方向に走行し、プリント基板P2をフラクサー1の所定の位置に、またプリント基板P1をプリヒーター2の所定の位置に移動させる。そこでフラクサー1が上昇してプリント基板P2にフラックス塗布を行うと同時に、プリヒーター2の開口から熱風が吹き出てプリント基板P1の予備加熱を行う(図4の(6))。
【0024】
さらに同様にして進入コンベア20の所定の位置までプリント基板P3が搬送され、最左のプッシャー16が下端を上げた状態でプリント基板P3の上方まで移動し、また他のプッシャー16、16はフラクサー1や噴流はんだ槽3の上方に移動する(図5の(7))。そしてそれぞれのプッシャーの下端が下がって進入コンベア20上のプリント基板P3の後部と、フラクサー1上のプリント基板P2の後部と、プリヒーター上のプリント基板P1に当接する(図5の(8))。その後、走行杆17が矢印X方向に走行し、プリント基板P3をフラクサー1の所定の位置に、またプリント基板P2をプリヒーター2の所定の位置に、そしてプリント基板P1を噴流はんだ槽3の所定の位置に移動させる。そこでフラクサー1が上昇してプリント基板P3にフラックス塗布を行い、プリヒーター2の開口から熱風が吹き出てプリント基板P2の予備加熱を行い、噴流はんだ槽の所定の位置に移動したプリント基板P1は、レール12の降下により噴流ノズルから少しの隙間をおいて静止した後、噴流はんだ槽の噴流ノズルから噴流する溶融はんだで必要箇所に溶融はんだが付着する(図5の(9))。
【0025】
このようにして多数のプリント基板がフラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽上に順次プッシャーで送られ、それぞれフラックス塗布、予備加熱、溶融はんだの付着が行われ、最後に退出コンベア21に乗り移って図示しない冷却装置で冷却されてはんだ付けが終了する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の部分はんだ付け装置の正面図
【図2】図1のA-A線断面図
【図3】本発明のはんだ付け方法においてフラクサーでフラックスを塗布する説明図
【図4】本発明のはんだ付け方法においてプリヒーターで予備加熱する説明図
【図5】本発明のはんだ付け方法において噴流はんだ槽で溶融はんだを付着させる説明図
【図6】プリント基板のはんだ付け部の説明図
【符号の説明】
【0027】
1 フラクサー
2 プリヒーター
3 噴流はんだ槽
4 噴霧ノズル
6 吹き付けノズル
8 噴流ノズル
11 レール
16 プッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板をプッシャーで摺動走行させてフラクサー上で一定時間停止し、この停止中にプリント基板をフラクサーの塗布ノズルに載置または近づけてプリント基板の所定の箇所にフラックス塗布を行い、次に該プリント基板をプッシャーでプリヒーター上まで摺動走行させてプリヒーター上で一定時間停止し、この停止中にプリント基板の所定の箇所またはプリント基板全体をプリヒーターで予備加熱し、その後該プリント基板をプッシャーで噴流はんだ槽上まで摺動走行させて噴流はんだ槽上で一定時間停止し、この停止中にプリント基板を噴流はんだ槽の噴流ノズルに載置または近づけてプリント基板の所定の箇所に溶融はんだの付着を行うことを特徴とするプリント基板の部分はんだ付け方法。
【請求項2】
前記プリント基板の部分はんだ付け方法は、プリント基板の所定の箇所と一致したフラクサーの塗布ノズルと、前記フラックス塗布部を乾燥させるプリヒーターの加熱部と、プリント基板の所定の箇所と一致した噴流はんだ槽の噴流ノズルとが同一位置となるようにフラクサー、プリヒーター、噴流はんだ槽等の処理装置が設置されており、これらの処理装置上にはプリント基板を摺動走行させる搬送装置が設置されているとともに、さらに搬送装置の上方にはプリント基板を次工程の処理装置の上に移動さることができるプッシャーが複数設置されているプリント基板の部分はんだ付け装置を用いることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の部分はんだ付け方法。
【請求項3】
前記、請求項2に記載のプリント基板の部分はんだ付け装置は、プッシャーが回動自在となっているプリント基板の部分はんだ付け装置を用いることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の部分はんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−150344(P2007−150344A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14828(P2007−14828)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【分割の表示】特願2001−384362(P2001−384362)の分割
【原出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【出願人】(598172158)千住システムテクノロジー株式会社 (7)
【Fターム(参考)】