説明

プリント基板用銅張板およびその製造方法

【課題】本発明は、高周波対応のプリント基板に必須な、低誘電率、低誘電損失、耐熱性を維持した上で、厚さが薄く、表面平滑性が良好で、かつ、寸法安定性に優れたプリント基板用銅張板を得ることができ、また、樹脂含浸工程を不要とする銅箔との直接貼りあわせによる安価なプリント基板用銅張板の製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質シートの少なくとも一面に銅箔を貼り合せてなるプリント基板用銅張板において、該多孔質シートがフッ素樹脂パルプ(A)ならびにポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(B1)およびそのパルプ(B2)を主成分とし、かつ各成分比率が重量比で下記の関係を有することを特徴とする。
A/(B1+B2)=20/80〜90/10
B1/B2=30/70〜70/30

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さが薄く、表面平滑性が良好で、かつ、寸法安定性に優れたプリント基板用銅張板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波対応のプリント基板用銅張板として、低誘電率および低誘電損失のものが要求されフッ素樹脂銅張板等が用いられている。例えば、フッ素樹脂銅張板としては、ガラスクロスにフッ素樹脂ディスパージョンを含浸した後に、焼成して得たシートを、銅箔と真空加熱プレスによって貼り合せ、フッ素樹脂銅張板を得ている。しかし、該フッ素樹脂銅張板では、ガラスクロスの縦糸と横糸とのクロス部分(網目)が模様として表面に現れ、そのガラスクロスの網目によって銅張板の表面平滑性が悪くなっている。銅張板の表面平滑性が悪くなると、プリント基板のファイン配線パターン化に対応できない問題が生じてくる。また、ガラスクロスは、厚さが薄くなるとハンドリング性が悪くなるため、銅箔に貼り合せる従来のシートは厚くせざるを得ず、結果として銅張板も薄いものができにくいという問題があった。また、従来技術による製造方法では、樹脂の含浸工程を要するので、プリント基板用銅張板を安価に供給することができない問題を有するものであった。
【0003】
この問題を解決するために、ガラス繊維を用いてフッ素樹脂繊維との混抄シートを作製し、該混抄シートと銅箔を積層したプリント基板用銅張板が提案されている。しかし、該混抄シートは厚さの均一性が不十分であること、また、熱膨張率が大きいことにより、結果として、該混抄シートと銅箔と積層した銅張板も、プリント基板用としての表面平滑性および寸法安定性に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特許第3590784号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の技術における上記の問題点を改善することを目的として成されたものであって、その目的は、高周波対応のプリント基板に必須な、低誘電率、低誘電損失、耐熱性を維持した上で、厚さが薄く、表面平滑性が良好で、かつ、寸法安定性に優れたプリント基板用銅張板と、樹脂含浸工程を不要とする安価なプリント基板用銅張板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記問題点を解決するために種々検討した結果、 銅張板表面に平滑性を備え、かつ、銅張板の寸法安定性を確保するために、フッ素樹脂パルプとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維およびそのパルプを主原料とする多孔質シートと銅箔とを貼り合せることによって解決できることを見出した。
【0006】
本発明は具体的には以下のとおりである。
本発明のプリント基板用銅張板は、多孔質シートの少なくとも一面に銅箔を貼り合せてなるプリント基板用銅張板において、該多孔質シートがフッ素樹脂パルプ(A)ならびにポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(以下、PBOと称す)繊維(B1)およびそのパルプ(B2)を主成分とし、かつ各成分比率が重量比で下記の関係を有することを特徴とする(請求項1)。
A/(B1+B2)=20/80〜90/10
B1/B2=30/70〜70/30
【0007】
前記フッ素樹脂パルプおよびPBOパルプのろ水度が750ml以下であることが好ましく(請求項2)、また、前記フッ素樹脂パルプがポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい(請求項3)。
【0008】
本発明のプリント基板用銅張板の製造方法は、フッ素樹脂パルプとPBO繊維およびそのパルプを混合したスラリーを湿式抄紙法によりシート化する工程、該シートを焼成して多孔質シートを得る工程、及び該多孔質シートと銅箔とを真空加熱プレスによって貼り合せる工程とからなることを特徴とする(請求項4)。また、本発明のプリント基板用銅張板の製造方法の別の方法は、前記真空加熱プレスによって貼り合せる工程を、加熱加圧ロール処理によって貼り合せる工程に置き換えた工程とからなることを特徴とする(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプリント基板用銅張板は、多孔質シートの少なくとも一面に銅箔を貼り合せてなるプリント基板用銅張板において、該多孔質シートがフッ素樹脂パルプ(A)ならびにポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(以下、PBOと称す)繊維(B1)およびそのパルプ(B2)を主成分とし、かつ各成分比率が重量比で下記の関係を有することを特徴とする。
A/(B1+B2)=20/80〜90/10
B1/B2=30/70〜70/30
従って、低誘電率、低誘電損失、耐熱性を維持した上で、厚さが薄く、表面平滑性が良好で、かつ、寸法安定性に優れた、高周波対応のプリント基板用銅張板としての提供が可能となる。また、別の効果として、本発明のプリント基板用銅張板の製造方法は、真空加熱プレスあるいは加熱加圧ロール処理によって、該多孔質シートと銅箔とを直接貼り合せるため、樹脂含浸工程が不要である。従って、安価なプリント基板の製造方法の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に於いて用いられるフッ素樹脂パルプは、下記のフッ素樹脂繊維をフィブリル化したものである。該フッ素樹脂繊維としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体などの含フッ素樹脂よりなる繊維が使用できる。本発明では、これらの繊維の中で低誘電率性、低誘電正接性、耐熱性の観点からポリテトラフルオロエチレンよりなるフッ素樹脂繊維が最も好ましい。しかし、プリント基板用銅張板の用途に応じて上記フッ素樹脂繊維を1種類或いは複数種類混合して、フィブリル化しパルプとして使用することもできる。
【0011】
本発明を構成するフッ素樹脂パルプは、前述のとおりフッ素樹脂繊維をフィブリル化してパルプ状態にすることによって得られる。フィブリル化することにより、これをPBO繊維およびそのパルプと混合した場合、 各繊維およびパルプどおしがより均一に分散することができる。すなわち、パルプ状態は、繊維より細かい枝が多数分かれた状態をしており、その細かい枝繊維と他の繊維あるいはパルプが緻密に絡み合い、多孔質シート全体で見た場合、より均一に各繊維およびそのパルプが混合分散された状態となる。
【0012】
本発明において、PBO繊維およびそのパルプは、多孔質シートの骨材としての役割を有し、プリント基板用銅張板の熱的寸法安定性を確保するために抄紙原料中に配合する。PBO繊維は、分解温度650℃、誘電率3.0、その他耐熱性、耐薬品性、強度等に優れた高分子繊維である。また、PBO繊維およびそのパルプは温度が上がると収縮するため、フッ素樹脂パルプと混抄して多孔質シートにした場合には、PBO繊維およびそのパルプの熱収縮によって、フッ素樹脂パルプの熱膨張を抑制し、結果としてプリント基板用銅張板全体の寸法変化率を低くすることができる。
【0013】
このようなPBO繊維としては、例えば、特開平8−41728号公報などにも記載されているように、現在市販されているスーパー繊維の代表であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の2倍以上の強度と弾性率(270GPs)を持ち、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維より優れた耐熱性(分解温度650℃)、低吸湿性(0.6%)、低誘電性(誘電率3.0/誘電正接0.001)、負の熱膨張係数(−6ppm/℃)等の特性を併せ持つ次世代のスーパー繊維として期待されている繊維である。また、このPBO繊維は、ポリベンザゾール重合体のポリリン酸溶液から製造され、その紡糸方法については、例えば、米国特許5296185号明細書、米国特許5294390号明細書に開示されており、水洗乾燥方法については、WO94/04726号に開示され、熱処理方法については、米国特許5296185号明細書に開示されている。具体的には、例えば、東洋紡績株式会社の商品名「ZYLON」が好適に用いられる。
【0014】
また、PBOパルプは、PBO繊維をフィブリル化したものである。該パルプの役割は、PBO繊維と混合することにより、スラリーにする際の分散性も改良され、混抄して得られた多孔質シート内でも均一に分散できる。さらに、多孔質シート化工程でのシート強度の確保や多孔質の孔径調整をする役割も持ち、かつ多孔質シートの厚さ方向の寸法変化率の低減にも役立つ。また、フィブリル化により繊維径が細くなり、シートの薄葉化も可能となる。
【0015】
フッ素樹脂パルプおよびPBOパルプを作製するためのフィブリル化手段としては、一般的な叩解機であるボールミル、ビーター、ランペルミル、PFIミル、SDR(シングルディスクリファイナー)、DDR(ダブルディスクリファイナー)その他のリファイナー等を使用してパルプ化することができる。また、パルプ化に関しては上記方法に特に限定されない。
【0016】
フッ素樹脂パルプ(A)とPBO繊維(B1)およびそのパルプ(B2)の配合比率は、重量比で下記関係を有することが必要である。
A/(B1+B2)=20/80〜90/10
フッ素樹脂パルプ(A)が90%を越えて多いと、骨材としてプリント基板用銅張板の寸法安定性を保つ役割を担うことができなくなる。また、フッ素樹脂パルプが20%より少ない場合、多孔質シートと銅箔との真空加熱プレスあるいは加熱加圧ロールによって貼り合せる工程において、溶融したフッ素樹脂で多孔質を十分に埋め込むことができず、プリント基板用銅張板の内部に空隙が残ることになる。
【0017】
また、PBO繊維(B1)とそのパルプ(B2)の配合比率は、重量比で下記関係を有することが必要である。
B1/B2=30/70〜70/30
PBO繊維の配合量が30%より少ない場合、寸法安定性を確保する為の骨材としての役割が弱くなってしまい、プリント基板用銅張板の寸法安定性が確保できなくなる。PBO繊維の量が70%より多くなると、強度が小さくなり、多孔質シートやプリント基板用銅張板の製造工程中に破断したりして、支障をきたす。また、パルプ状の細い繊維の量が少なくなるので、シートの薄葉化への効果が小さくなる。
【0018】
本発明を構成する多孔質シートは、フッ素樹脂パルプ(A)ならびにPBO繊維(B1)およびそのパルプ(B2)を主成分とする。この場合の主成分とは、上記[A+B1+B2]が多孔質シート中に固形分重量で50%以上、好ましくは70%以上を占めていることを言う。
本発明を構成する多孔質シートは、上記A、B1およびB2の諸成分以外に下記を配合することも可能である。
【0019】
本発明を構成する多孔質シートには、銅張り板の熱的寸法安定性のためには抄紙原料中に、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミニウムシリケート繊維などの無機繊維を配合する。好ましい配合量は多孔質シートの総量に対して30重量%以下である。無機繊維の配合量が30重量%を超えて多いと多孔質シートの強度が低下する。また無機繊維の種類はガラス繊維が好ましい。
【0020】
さらに本発明の多孔質シートにおいては、必要に応じて無機微粒子を含有させる。無機微粒子としては、二酸化チタン系セラミック、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸鉛系セラミック、チタン酸ストロンチウム系セラミック、チタン酸カルシウム系セラミック、チタン酸ビスマス系セラミック、チタン酸マグネシウム系セラミック、ジルコン酸鉛系セラミックなどを挙げることができる。これらは、単独または2種類以上を混合してもよい。なお、前記セラミック、例えば二酸化チタン系セラミックとは、組成的には二酸化チタンのみを含む系、または二酸化チタンに他の少量の添加物を含む系で、主成分である二酸化チタンの結晶構造が保持されているものである。他の系のセラミックもこれと同様である。
【0021】
無機微粒子としては粒子径は、約50μm以下のものを用いることができるが、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.1〜15μmの範囲のものである。これは無機微粒子の粒子径が上記範囲より大きいと多孔質シートに均一に混合することが困難になる。逆に上記範囲より小さいと凝集し難く、取り扱い性が悪化し、また湿式抄造する場合に無機微粒子が抜けてしまい、多孔質シートに残らなくなる。
【0022】
無機微粒子の種類および多孔質シートへの配合量は、具体的には、プリント基板で求められる特性によって決定される。例えば光触媒能が要求される場合は二酸化チタン系セラミックが使用される。また、高誘電率が要求される場合はチタン酸ストロンチウム系セラミックが使用される。無機微粒子の好ましい配合量は多孔質シートの総量に対して70重量%以下である。無機微粒子の配合量が70重量%を越えると多孔質シートの強度が弱くなったり、抄紙工程での歩留まりが低下したり、多孔質シートの表面から脱落し易くなる。以上のように、多孔質シートより作製されるプリント基板の要求特性に応じて、添加される無機微粒子の種類と添加量が決定される。
【0023】
フッ素樹脂パルプおよびPBOパルプのフィブリル化の程度は、シート強度、シート 厚さ、多孔質シートの孔径などの関係で決定される。製造工程中により強いシート強度を必要とし、さらに多孔質シートの孔径が小さく、緻密なシートを必要とする場合には、フィブリル化の程度を進めたパルプを使用することが好ましい。また、シートおよび最終的なプリント基板用銅張板の厚さを薄くしたい場合には、フィブリル化の過程で、各繊維の繊維径をより細くしたパルプを使用することが好ましい。
【0024】
なお、本発明では、パルプのフィブリル化の程度を表す指標として、一般的な天然パルプの指標として用いられるろ水度を用いて表す。ろ水度とは、パルプの水切れの程度を表す指標(数値)であり、繊維の叩解の度合いを示す。ろ水度が小さいほど、水切れが悪いことを示し、フィブリル化の度合いが高い、すなわち、パルプ化が進んでいることを示す。本発明のパルプのろ水度の試験方法はJIS P 8121に規定されているカナダ゛標準ろ水度試験方法を採用する。
【0025】
上記フッ素樹脂パルプおよびPBOパルプとしては、カナダ標準型ろ水度測定によるろ水度が750ml以下が好ましく、650ml以下であることがより好ましい。ろ水度が750mlより大きい場合、パルプを使用する利点としての、繊維の均一分散性、繊維径を細くすることによるシートの薄葉化、製造工程中にシート強度を向上させる等の効果が得られにくい。
【0026】
本発明に用いるフッ素樹脂パルプとPBO繊維およびそのパルプを主原料とする多孔質シートの製造方法としては、原料繊維およびパルプの分散均一性を確保するために、湿式抄紙方法によって作製する。すなわち、規定量のフッ素樹脂パルプとPBO繊維およびそのパルプを水中で攪拌し、混合し、好ましくは固形分濃度が0.5%以下になるように濃度調整されたスラリーを、長網式、短網式、円網式、傾斜式などの湿式抄紙機に適用し、連続したワイヤーメッシュ状の脱水パートで脱水して、多筒式やヤンキー式ドライヤー等の乾燥パートを通して、多孔質予備シートを得る。
【0027】
その後、フッ素樹脂の融点近い温度あるいは融点以上の高温で加熱(焼成)を行い、フッ素樹脂パルプを溶融させ、パルプ間を融着させて多孔質シートを得る。焼成工程において、熱ロールを通すこともできる。この場合、ロール間に圧力をかけることにより、シートの表面性が平滑になり、厚さも均等になり、パルプ間の融着が強固になりシート強度の向上にもつながる。
本発明においては、通常の製紙に用いられる各種紙力増強剤、分散剤、消泡剤、合成粘剤、や顔料等の添加剤を配合することができる。
【0028】
このようにして得られた多孔質シートを銅箔と貼りあわせる工程として、真空加熱プレス機を用いたり、加熱加圧ロール処理等がある。例えば、真空加熱プレス機を用いる場合には、フッ素樹脂パルプとPBO繊維およびそのパルプを主成分とする多孔質シートの少なくとも一面、すなわち両面あるいは片面に銅箔を配置し、フッ素樹脂の融点以上の温度で真空プレスによる加熱加圧処理を行う。例えば、フッ素樹脂としてポリテトラフルオロエチレン(融点327℃)を用いる場合は、温度380℃、圧力1MPaで90分間などの真空プレスによる加熱加圧処理を行うことによって、一体成形したプリント基板用銅張板を得ることができる。他のフッ素樹脂を用いた場合もこれに準じて実施できる。
【0029】
本発明で使用する銅箔としては特に限定されるものではなく、一般的な電解銅箔、圧延銅箔が用いられる。最近の高周波対応のプリント基板としては、表面粗さが抑えられた圧延銅箔が好適に用いられており、本発明のプリント基板用銅張板も同様に圧延銅箔を好適に用いる。圧延銅箔は粗面側の粗さが電解銅箔より抑えられているために、銅張板として銅密着力に問題が生じる場合がある。しかし、本発明の多孔質シートを用いる限りにおいては、多孔質シートと銅箔との貼りあわせの真空加熱プレスや加熱加圧ロール処理によって、シートの多孔質部分がうまく銅箔粗面部分と重なり合い、銅箔粗面部分に溶融したフッ素樹脂が流れ込み、銅箔との密着性が向上する。
【0030】
以下、さらに本発明の実施例を以って説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFE)繊維(東レ社製、商品名:トヨフロン、繊維長3mm)よりフィブリル化したろ水度640mlのフッ素樹脂パルプ30重量%とPBO繊維(東洋紡績社製、商品名:ザイロン、繊維長3mm)18重量%とそのPBO繊維よりフィブリル化したろ水度630mlのPBOパルプ52重量%を水に分散させ、この水分散液を所定量採取し、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて多孔質予備シートを得た。この多孔質予備シートをPTFEの融点以上の温度である380℃で3分間熱処理して、パルプ間の交点を熱融着させて多孔質シートを得た。該多孔質シートの両面に厚さ18μmの圧延銅箔を配置し、380℃、かつ圧力1MPaの条件にて90分間、真空プレスによる加熱加圧処理を行い、一体成形した本発明のプリント基板用両面銅張板を作製した。
【0032】
(実施例2〜9および比較例1〜7)
PTFEパルプ、PBO繊維、PBOパルプ、PTFE繊維、ガラス繊維の配合比率を表1記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして本発明および比較用のプリント基板用両面銅張板を作製した。
【0033】
(実施例10)
実施例8と同様にして多孔質シートを得た後、該多孔質シートの両面に厚さ18μmの圧延銅箔を配置し、該シートを温度450℃、線圧500Kg/cmの加熱加圧ロールを通すことで、一体成形した本発明のプリント基板用両面銅張板を作製した。
【0034】
本発明において、実施例および比較例で得られた銅張板の評価として、寸法変化率、誘電特性(誘電率および誘電正接)、銅箔密着力の測定はJIS C 6481に準じて行った。
また、抄紙時のシート強度および各工程に耐えうる強度を○、×、△の3段階で評価した。表面の平滑性に関しては、銅箔表面より目視で観察し、銅箔表面の凹凸の有無により○、×にて評価した。
得られた結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果、次の諸点が確認された。実施例1〜10、比較例1および比較例6を対比してみると、PTFEパルプに対してPBO繊維およびPBOパルプの配合量が増加すると銅張板の寸法変化が抑えられることが明らかとなった。そして、比較例1および比較例6の寸法変化率では、本願特許の目的を達成することはできない。比較例2では、PTFEパルプが少ないため、銅箔との一体成形による銅張板において、フッ素樹脂が多孔質を埋めきることができず、空隙が残る銅張板となった。比較例3では、PBOパルプ量が少なく、多孔質シート作成工程の際に強度が低く、多孔質シートを得ることができなかった。比較例4では、骨材の主役割となるPBO繊維の量が少なく、寸法変化率を低くする役割をあまり果たしていない結果となった。比較例5では、PTFEパルプを用いていないため、PBO繊維およびPBOパルプとの混合分散性が悪く、均一な多孔質シートが得られなかった。比較例7では、PBO繊維とPBOパルプが配合されていなく、ガラス繊維が多孔質シート表面に多数存在するので、銅箔との一体成形において、フッ素樹脂と銅箔の間に多数のガラス繊維が介在し、銅張板にした時に銅箔表面の平滑性を損なう結果となった。また、実施例8と実施例10から、加熱加圧ロール処理での銅箔との一体成形においても、真空加熱プレスと同様の特性が得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シートの少なくとも一面に銅箔を貼り合せてなるプリント基板用銅張板において、該多孔質シートがフッ素樹脂パルプ(A)ならびにポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(B1)およびそのパルプ(B2)を主成分とし、かつ各成分比率が重量比で下記の関係を有することを特徴とするプリント基板用銅張板。
A/(B1+B2)=20/80〜90/10
B1/B2=30/70〜70/30
【請求項2】
前記フッ素樹脂パルプおよびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールパルプのろ水度が750ml以下であることを特徴とする請求項1記載のプリント基板用銅張板。
【請求項3】
前記フッ素樹脂パルプがポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1、2記載のプリント基板用銅張板。
【請求項4】
フッ素樹脂パルプとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維およびパルプを混合したスラリーを湿式抄紙法によりシート化する工程、該シートを焼成して多孔質シートを得る工程、及び該多孔質シートと銅箔とを真空加熱プレスによって貼り合せる工程とからなることを特徴とするプリント基板用銅張板の製造方法。
【請求項5】
フッ素樹脂パルプとポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維およびパルプを混合したスラリーを湿式抄紙法によりシート化する工程、該シートを焼成して多孔質シートを得る工程、及び該多孔質シートと銅箔とを加熱加圧ロール処理によって貼り合せる工程とからなることを特徴とするプリント基板用銅張板の製造方法。

【公開番号】特開2006−229028(P2006−229028A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42033(P2005−42033)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】