説明

プリント基板

【課題】回路ブロックの浸水時に、回路ブロックに水が到達する前に電源からの電力供給が停止されるプリント基板を提供する。
【解決手段】本発明のプリント基板1は、板状の基材8に、回路ブロック2と、少なくとも1つのグランドパターン3、5と、短絡用導電パターン4と、電力を供給する供給用電源パターン6と、が設けられている。回路ブロック2は、表面層上に配置されている。供給用電源パターン6は、電力供給を遮断可能な電力遮断手段7を備えている。基材8の表面層上で、回路ブロック2の周囲は、グランドパターン3、5と、グランドパターン3、5に電気的に接続されていない短絡用導電パターン4とによって囲まれている。供給用電源パターン6は回路ブロック2に接続されており、表面層上を延びる部分と、短絡用導電パターン4には接続されてグランドパターン3、5には接続されないように、基材8の表面層以外の層を延びる部分と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路ブロックが設けられたプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やデジタルカメラなどの電子機器は、ユーザから防水機能の付加が求められている。このような電子機器に防水機能を持たせるために、電子機器の筐体を構成する部品を少なくなるようにして水の浸入可能な部分を減らしたり、充電用端子部などにはパッキンを設けたりしている。
【0003】
しかしながら、筐体を構成する部品を減らしたり、パッキンを設けたりしても、電子機器の防水機能が維持され続けるわけではない。筐体に傷が付いたり、パッキンが老朽化したりすることで、筐体の内部が浸水し、筐体内部のプリント基板が水に濡れてしまう場合がある。この場合、プリント基板の集積回路などからなる回路ブロックが短絡して故障し、異常な発熱が生じる可能性があり、この発熱によりプリント基板の発火を引き起こす場合がある。
【0004】
そこで、プリント基板が浸水したときに回路ブロックへの電力供給を停止させる方法がある(例えば特許文献1)。電力供給用配線とグランド配線が接続された回路ブロックにおいて、電力供給用配線の周りの一部に銅箔からなる導電パターンを電力供給用配線に近接するが接触しない状態に設け、導電パターンを回路ブロックに接続されているグランド配線と接続する。このようにすることで、プリント基板が浸水すると、電力供給用配線と導電パターンとが水を介して短絡し、電流が回路ブロックを流れることなくグランドに逃げるために、回路ブロックには電力が供給されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−45654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の方法は、回路ブロックにつながる電力供給用配線と導電パターンとが短絡する場合には効果を発揮するが、導電パターンを設けていない部分から水が浸入すると、電力が供給されている状態の回路ブロックに水が直接接してしまい、回路ブロックの短絡による故障や回路ブロックの異常発熱を防止することができない。
【0007】
本発明の目的は、プリント基板の回路ブロックに水が浸入するときに生じる、回路ブロックの異常発熱を防止することは困難である、といった課題を解決する、プリント基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリント基板は、板状の基材に、回路ブロックと、少なくとも1つのグランドパターンと、短絡用導電パターンと、回路ブロックに電力を供給する供給用電源パターンと、が設けられている。回路ブロックは、板状の基材の表面層上に配置され、供給用電源パターンは、電力供給を遮断可能な電力遮断手段を備えている。表面層上で、回路ブロックの周囲は、グランドパターンと、グランドパターンに電気的に接続されていない短絡用導電パターンとによって囲まれている。供給用電源パターンは回路ブロックに接続されており、表面層上を延びる部分と、短絡用導電パターンには接続されてグランドパターンには接続されないように、板状の基材の表面層以外の層を延びる部分と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路ブロックの浸水時には回路ブロックに水が到達する前に電源からの電力供給が停止されるため、回路ブロックの異常発熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るプリント基板の要部の概略図であり、(a)は上面の概略図、(b)は(a)のAA断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0012】
図1は、本発明に係るプリント基板の要部の概略図であり、(a)は上面の概略図、(b)は(a)のAA断面の概略図である。
【0013】
本発明のプリント基板1は、携帯電話機やデジタルカメラなどの電子機器に用いられるプリント基板である。プリント基板1の板状の基材8の表面層には、集積回路などならなる回路ブロック2が設けられている。また、表面層には、銅箔などからなる、第1のGND(グランド)パターン3、短絡用導電パターン4、および第2のGND(グランド)パターン5の3つのパターンが設けられている。第1のGNDパターン3は回路ブロック2の全周を囲んで配置されている。短絡用導電パターン4は、第1のGNDパターン3の外周の全てを囲んで配置されている。第2のGNDパターン5は、短絡用導電パターン4の外周の全てを囲んで配置されている。
【0014】
第2のグランドパターンの外側には、回路ブロック2に電力を供給するための不図示の電源が設けられている。この不図示の電源と回路ブロック2とは、銅箔などからなる供給用電源パターン6によってつながっている。供給用電源パターン6は、回路ブロック2に接続されており、基材8の表面層上を延びる部分と、短絡用電源パターン4には接続されて第1および第2のグランドパターン3、5には接続されないように、基材8の内層を延びる部分とで構成されている。なお、供給用電源パターン6の基材8の内層を延びる部分は、基材8の内層ではなく、裏面層に設けてもよい。
【0015】
また、供給用電源パターン6には、電力の供給を遮断するための電力遮断手段である電流測定および遮断回路(以降「遮断回路」と称する)7が設けられている。遮断回路7において不図示の電源から回路ブロック2へ流れる電流を測定し、予め設定された閾値以上の電流を検出した場合、遮断回路7によって不図示の電源からの電力供給が遮断されるようになっている。
【0016】
次に、プリント基板1が浸水したときの回路ブロック2の異常発熱を防止する方法について説明する。
【0017】
プリント基板1が浸水すると、回路ブロック2に水が達する前に、回路ブロック2を囲んでいる第2のGNDパターン5、短絡用導電パターン4、第1のGNDパターン3の順番に水が浸入してくる。すると、短絡用導電パターン4と第2のGNDパターン5の間、または短絡用導電パターン4と第1のGNDパターン3の間が浸水してきた水により短絡する。短絡が生じると、供給用電源パターン6に短絡電流が流れることになる。供給用電源パターン6を流れる電流を測定している遮断回路7は、短絡電流が流れることによって予め設定された閾値以上の電流を検出するため、不図示の電源からの電力供給を遮断する。
【0018】
このようにすることで、プリント基板1が浸水したときに、水が回路ブロック2に達する前に、不図示の電源から回路ブロック2への電力供給が遮断される。そのため、水が回路ブロック2に達しても、回路ブロック2には電力が供給されていないので、回路ブロック2で異常発熱は生じない。
【0019】
また、本発明のプリント基板1では、回路ブロック2の周囲を、回路ブロック2には電気的に接続されておらず、短絡用の回路となる、第1のGNDパターン3、短絡用導電パターン4、および第2のGNDパターン5で囲んでいる。そのため、回路ブロック2の周囲の一部だけではなく全周に渡って、水が回路ブロック2に達する前に、回路ブロック2への電力供給を遮断できる。
【0020】
上記の実施形態の説明では、供給用電源パターン6に電力遮断手段として遮断回路7を設けていたが、遮断回路7の代わりにヒューズを用いてもよい。ヒューズを用いた場合は、短絡による短絡電流が生じることでヒューズ自体が溶断するため、不図示の電源から回路ブロック2への電力供給が遮断される。
【0021】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、プリント基板1に設けるGNDパターンは1つでも構わず、その他様々な変形例が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 プリント基板
2 回路ブロック
3 第1のGNDパターン
4 短絡用導電パターン
5 第2のGNDパターン
6 供給用電源パターン
7 遮断回路
8 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材に、回路ブロックと、少なくとも1つのグランドパターンと、短絡用導電パターンと、前記回路ブロックに電力を供給する供給用電源パターンと、が設けられたプリント基板であって、
前記回路ブロックは、前記板状の基材の表面層上に配置され、
前記供給用電源パターンは、電力供給を遮断可能な電力遮断手段を備えており、
前記表面層上で、前記回路ブロックの周囲は、前記グランドパターンと、前記グランドパターンに電気的に接続されていない前記短絡用導電パターンとによって囲まれており、
前記供給用電源パターンは前記回路ブロックに接続されており、前記表面層上を延びる部分と、前記短絡用導電パターンには接続されて前記グランドパターンには接続されないように、前記板状の基材の前記表面層以外の層を延びる部分と、を含んでいる、プリント基板。
【請求項2】
前記表面層以外の層は、前記板状の基材の内層または裏面である、請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記回路ブロックの周囲は、2つの前記グランドパターンと、2つの前記グランドパターンに挟まれた前記短絡用導電パターンとで囲まれている、請求項1または2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記回路ブロックの外側の全周に渡って前記短絡用導電パターンと前記グランドパターンとが設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記電力遮断手段は、短絡電流を検知すると前記回路ブロックへの電力供給を遮断する遮断回路である、請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記電力遮断手段はヒューズである、請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項7】
前記回路ブロックは、少なくとも集積回路を含んでいる、請求項1から6のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のプリント基板を備えた、電子機器。
【請求項9】
プリント基板の板状の基材の表面層上に配置された回路ブロックの周囲を、少なくとも1つのグランドパターンと、前記グランドパターンに電気的に接続されていない短絡用導電パターンとで囲むステップと、
電力供給を遮断可能な電力遮断手段を備えている供給用電源パターンであって、前記回路ブロックに接続されており、前記表面層上を延びる部分と、前記短絡用導電パターンには接続されて前記グランドパターンには接続されないように前記板状の基材の前記表面層以外の層を通る部分とを含む供給用電源パターンを形成するステップと、を有し、
前記プリント基板の浸水時には、前記グランドパターンと前記短絡用導電パターンとを、当該両パターンの間に侵入してきた水で短絡させることによって、予め設定した閾値以上の電流を前記供給用電源パターンに流して前記電力遮断手段を作動させて、前記供給用電源パターンから前記回路ブロックへの電力供給を遮断する、回路ブロックの異常発熱防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−129353(P2012−129353A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279260(P2010−279260)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】