説明

プリント配線基板の改造方法および改造済プリント配線基板

【課題】プリント配線基板の製造不良の救済や設計変更に容易に対応することができる改造方法を提供する。
【解決手段】プリント配線基板40上の部品搭載用パッド12の内、接続先を変更すべき改造対象パッド12a、12bをパッド径よりも大きい径でパッドごと除去し、所定の深さの穴18を形成する〔(b)、(b’)〕。樹脂19を穴18の途中の深さまで充填し、部品搭載用パッド部6、7とワイヤ接続部8、9とを有し、それらの間が配線により接続されているリペアシート10の部品搭載用パッド部6、7を樹脂19上に固着する〔(c)、(c’)〕。その後、LSIの半田ボールを部品搭載用パッド12、部品搭載用パッド部6、7上にボンディングし、ワイヤをワイヤ接続部8、9に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の改造方法とそれにより改造された改造済プリント配線基板に関し、特に半導体装置等の高性能な電気部品搭載用に使用されるプリント配線基板の改造方法および改造済プリント配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等に代表される電気機器の多くは、プリント配線基板を用いて構成されている。このプリント配線基板に搭載される部品に大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)等の半導体装置がある。半導体装置の集積度の向上に伴って、それらを搭載するプリント配線基板に対する高密度化の要求は益々高まっている。さらに電気機器の高機能化の進展により、プリント配線基板の仕様が複雑化し、回路設計や製造プロセス設計の難易度が高くなってきている。このような状況の下、プリント配線基板の製造不良の救済や設計変更に容易に対応することができるプリント配線基板の改造方法が求められている。
【0003】
従来のプリント配線基板の改造方法としては、プリント配線基板上の素子実装用パッド上に補修用パッドを貼り付ける手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。図8(a)、(b)は、特許文献1にて開示された改造方法を説明する斜視図と断面図である。絶縁体118の表面に導体層107を形成した補修用パッド106を使用する。この補修用パッド106は、ワイヤボンディング部109と素子実装用パッド部110とを有するものであって、表面に導体層107を形成したポリイミド絶縁フィルムに打ち抜き加工を施すことにより製造される。まず、プリント配線基板103上の改造対象の素子実装用パッド104上に補修用パッド106を貼り付ける。その後、LSI101の入出力ピン102を、補修用パッド106の貼り付けられていない素子実装用パッド104と補修用パッド106の素子実装用パッド部110とに接合する。これによって、改造対象の入出力ピンはヴィア119を介して接続される内層配線105と切り離される。次いで、補修用パッド106のワイヤボンディング部109と中継パッド(図示なし)とをワイヤ108により布線する。
【0004】
また、他の改造手段としてプリント配線基板に開けた穴に通すリード部を有するリペアコンタクトを用いる方法も提案されている(例えば特許文献2参照)。図9は、特許文献2にて開示された改造方法を説明する断面図と上面図である。プリント配線基板204のスルーホールをスルーホールランドの直径より大きな径のドリルでドリリングし、このドリリングで開けられた穴に樹脂210を充填する。この樹脂をスルーホールの径より小さな径のドリルでドリリングし、リペアコンタクト201のリード部203を通す穴211を開ける〔図9(a)、(b)〕。この穴にリペアコンタクト201のリード部203を挿入してプリント配線基板204の裏面から突出させ、接着剤212等によってリード部203を樹脂210に固着し、リペアコンタクト201のバンプ部202をプリント配線基板204上に固着する〔図9(c)、(d)〕。こうして組み立てたリペアコンタクトのプリント配線基板の裏面から突出したリード部の先端にワイヤ214を半田付けすることでLSI213の入出力ピン215の接続先を内層配線208からワイヤ214の接続先へと変更することができる〔図9(e)、(f)〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−95593号公報
【特許文献2】特開平10−70370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示されたものにおいては、LSIの入出力ピンが接続されるべきプリント配線基板上の素子実装用パッド上に補修用パッドが貼り付けられるため、補修用パッド表面の基板からの高さが、周辺の他のパッドよりも高くなり、この部分だけ半田付け条件が異なってくる。LSIの入出力ピンの長さや半田量の調整といった新たな対策が必要になり、良品のプリント配線基板と同等な半田付けプロセスの適用ができなくなる問題がある。さらに近年は、LSIパッケージの入出力端子はピンではなく、半田ボールが多用されており、基板表面とLSIパッケージ裏面間の隙間が非常に小さくなり、素子実装用パッド高さの違いが半田付け信頼性に与える影響が極めて大きくなってきている。こうした状況下で補修用パッド表面の基板からの高さが、周辺の他のパッドよりも高くなることは大きな問題である。
【0007】
また、特許文献2にて開示されたものにおいては、プリント配線基板上の素子実装用パッドを内層配線から電気的に切り離すために、素子実装用パッドに隣接し、素子実装用パッドと表面層を介して電気的に接続されるスルーホール部をドリルで除去する際、スルーホール周辺に位置する切り離す目的外の内層配線を破壊してしまう可能性がある。特に通常ベタパターンで形成されるグランドや電源のパターンには、大きな穴があいてしまい、電源、信号の品質の悪化が問題となる。また、信号配線断線の危険性が高いという問題もある。さらに、この従来技術は、L型のリペアコンタクトを用いて、素子実装用パッドに隣接した、素子実装用パッドと表面層を介して電気的に接続するスルーホール部がある構造にのみ対応できるもので、素子実装用パッドから直接ビアホールを介して内層配線と接続するような仕様のプリント配線基板には対応できない問題がある。またリペアコンタクトを取り付けるために2度のドリル加工を必要とし、改造するための工程が多い問題もある。さらにリペアコンタクトの介在は信号配線の特性インピーダンスを乱す要因となり、高速信号用配線の信号品質を悪化させる問題もある。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、第1に、補修されたパッドが他のパッドと高さを含め同等の状態となるようにすることであり、第2に、プリント配線基板に損傷を与える可能性の低い改造方法を提供することであり、第3に、パッドとプリント配線基板の内層配線との接続経路の如何によらず実施できるプリント配線基板の改造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、本発明によれば、電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の部品搭載用パッドを内層から電気的に切り離して接続先を変更するプリント配線基板の改造方法であって、前記部品搭載用パッドを除去して前記部品搭載用パッドの形成領域にパッド径よりも大きい径の所定の深さの穴を形成する第1の工程と、前記穴の下部一部を樹脂にて充填する第2の工程と、電気部品搭載用パッドとこれに電気的に接続されたワイヤ接続部とを有するリペアシートの電気部品搭載用パッド部を前記穴内に固着する第3の工程と、前記リペアシートの取り付けられたプリント配線基板上に電気部品を搭載する第4の工程と、前記リペアシートの前記ワイヤ接続部に改造用ワイヤを接続する第5の工程と、を有することを特徴とするプリント配線基板の改造方法、が提供される。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の部品搭載用パッドを内層から電気的に切り離して接続先を変更するプリント配線基板の改造方法であって、前記部品搭載用パッドを除去して前記部品搭載用パッドの形成領域にパッド径よりも大きい径の所定の深さの穴を形成する第1の工程と、前記穴の下部一部を樹脂にて充填する第2の工程と、電気部品搭載用パッドの周囲を絶縁フィルムにて囲んでなる電気部品搭載用パッド部を有するリペアシートを前記穴内に固着する第3の工程と、前記リペアシートの取り付けられたプリント配線基板上に電気部品を搭載する第4の工程と、を有することを特徴とするプリント配線基板の改造方法、が提供される。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の複数の部品搭載用パッドの内の1ないし複数の部品搭載用パッドの形成領域が、そのパッドより大きい径の所定の深さの穴によって除去されており、当該穴の下部の一部は樹脂にて充填されており、当該穴の前記樹脂上には、電気部品搭載用パッド部と該電気部品搭載用パッド部の電気部品搭載用パッドに電気的に接続されたワイヤ接続部とを有するリペアシートの電気部品搭載用パッド部が固着され、電気部品の端子が前記リペアシートの電気部品搭載用パッドとプリント配線基板の除去されなかった部品搭載用パッドとに接続され、前記リペアシートの前記ワイヤ接続部に改造用ワイヤが接続されていることを特徴とする改造済プリント配線基板、が提供される。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の複数の部品搭載用パッドの内の1ないし複数の部品搭載用パッドの形成領域が、そのパッドより大きい径の所定の深さの穴によって除去されており、当該穴の下部の一部は樹脂にて充填されており、当該穴の前記樹脂上には、電気部品搭載用パッドの周囲を絶縁フィルムにて包囲してなるリペアシートが固着され、電気部品の端子が前記リペアシートの電気部品搭載用パッドとプリント配線基板の除去されなかった部品搭載用パッドとに接続されていることを特徴とする改造済プリント配線基板、が提供される。
【発明の効果】
【0012】
第1に、改造対象の電気部品搭載用パッドの基板からの高さ、形状、サイズを、周辺の他のパッドと同等に構成することができ、改造後のプリント配線基板においても良品のプリント配線基板と同等な半田付けプロセスを適用することができ、信頼性の高いボンディングを行なうことが可能になる。
第2に、改造対象の電気部品搭載用パッドと内層配線との接続を電気的に切り離す際に、改造対象である電気部品搭載用パッド周辺配下のプリント配線基板の内層配線を破壊することがなく、良好な品質のプリント配線基板への改造が可能になる。
第3に、改造対象の電気部品搭載用パッドが、表面層と隣接するスルーホールを介して内層配線と電気的に接続される態様や、搭載用パッドから直接内層配線と電気的に接続する態様のいずれにも対応してプリント配線基板の改造を行なうことができる。
第4に、信号配線の特性インピーダンスを制御できるリペアシートを使ってプリント配線基板の改造を行うことができるため、高速信号の信号品質を劣化させない改造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例1で使用するリペアシートの上面図と断面図。
【図2A】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例1を示す断面図と上面図(その1)。
【図2B】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例1を示す断面図と上面図(その2)。
【図3】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例2で使用するリペアシートの上面図と断面図。
【図4A】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例2を示す断面図と上面図(その1)。
【図4B】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例2を示す断面図と上面図(その2)。
【図5】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例3で使用するリペアシートの上面図。
【図6A】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例3を示す断面図と上面図(その1)。
【図6B】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例3を示す断面図と上面図(その2)。
【図7A】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例4を示す断面図と上面図(その1)。
【図7B】本発明のプリント配線基板の改造方法の実施例4を示す断面図と上面図(その2)。
【図8】一従来技術のプリント配線基板の改造方法を示す斜視図と断面図。
【図9】他の従来技術のプリント配線基板の改造方法を示す断面図と上面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるプリント配線基板の改造方法は次の三つの工程を有する。
(a)穴開け工程
(b)樹脂充填工程
(c)リペアシート固着工程
本発明において、第1の工程で開ける穴の深さと、第2の工程において充填される樹脂の膜厚と、第3の工程で樹脂上に固着されるリペアシートの部品搭載用パッドの厚さは、固着されたリペアシートの補修パッドの表面高さが、プリント配線基板上の除去されなかった部品搭載パッドの表面高さとほぼ一致するように調整される。
【0015】
(a)穴開け工程:
変更すべきLSIなどの電気部品の入出力端子(例えば、半田ボールからなる)に対応するプリント配線基板上の部品搭載パッドの形成領域に、部品搭載用パッドの径より大きい径の所定の深さの穴を開け、改造対象の部品搭載用パッドを除去する。このとき形成する穴は、最も浅い内層配線の上面に至らない深さとすることが望ましい。少なくとも、最も浅い内層配線を貫通することのないようになされる。穴開けは、反応性ガスエッチングのような化学的エッチング法、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチングなどの物理・化学的エッチング法やイオンミリング、レーザ加工などの物理的加工法を用いて行なうことができる。あるいは、機械的なドリリングで穴開けしてもよい。
【0016】
(b)樹脂充填工程:
第2の工程では、第1の工程で開けた穴に、途中の深さまで樹脂が詰まるように樹脂を充填する。樹脂の材料は、半田リフロー工程の温度に耐えうるものの中から適宜選択することができ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドなどを採用することができる。樹脂充填は、ディスペンサを用いたポッティング法で行なうことができる。あるいは、円板状に加工された樹脂(プリプレグであってもよい)を穴にはめ込むようにしてもよい。
【0017】
(c)リペアシート固着工程:
第3の工程では、第2の工程で充填した樹脂の上に、リペアシートの電気部品搭載用パッド部を搭載し固着する。この電気部品搭載用パッド部は、金属製の補修パッドの周囲を樹脂製の絶縁シートで囲んだ構成を有するものである。電気部品搭載用パッド部の固着は、先に穴に充填された樹脂を用いて行なうこともできるが、別途接着剤を用いて固着するようにしてもよい。後者の方法による場合には、第2の工程において予め樹脂の硬化が行なわれる。リペアシートは、少なくとも1個の電気部品搭載用パッド部を有し、他にワイヤ接続部を持つ場合もある。ワイヤ接続部を持つ場合は、その個数は、電気部品搭載用パッド部の個数と同数となり、それぞれのワイヤ接続部は、対応する電気部品搭載用パッド部と絶縁シートに形成された配線により電気的に接続される。形成される配線が複数の場合、配線部の構成は絶縁シートで分離された多層配線構造となる。配線部が2層または3層の多層配線である場合、一方の配線または中央の配線をグランド配線とし、他の配線を信号配線として、マイクロストリップ構造に構成することもできる。1個のリペアシートに具備されるワイヤ接続部と電気部品搭載用パッド部の個数は、特に限定はないが、2、3個ずつ以下が望ましい。
リペアシートがワイヤ接続部と配線部を持つ場合、これらのワイヤ接続部と配線部は、続くボンディング工程で邪魔となることのないように、プリント配線基板上に接着剤など用いて固着される。このようにして、プリント配線基板の改造を行なった後、LSIなどの電気部品の実装を行ない、リペアシートにワイヤ接続部が形成されている場合には、そのワイヤ接続部とプリント配線基板上の所定の接続点との間をワイヤを用いて接続する。
【実施例1】
【0018】
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1で用いるリペアシート10の上面図と断面図である。リペアシート10は、絶縁シート1と、その内部に形成された導体層から構成されている。一端に二つの部品搭載用パッド部6、7を備え、他端に二つのワイヤ接続部8、9を備える。部品搭載用パッド部とワイヤ接続部は、それぞれ導体層の一部と絶縁シート1の一部とを含むが、この内部品搭載用パッド部6、7についてより詳しく説明すると、これらは、補修パッド4、5とそれの周囲を囲む絶縁シートを含んでいる。部品搭載用パッド部とワイヤ接続部は、絶縁シート1内の導体層(配線)を介して電気的に接続されている。本実施例では、部品搭載用パッド部6の補修パッド4は、信号配線2を介してワイヤ接続部8の導体層と接続され、部品搭載用パッド部7の補修パッド5は、グランド配線3を介してワイヤ接続部9の導体層と接続されている。つまり、部品搭載用パッド部6とワイヤ接続部8は信号配線用で、部品搭載用パッド部7とワイヤ接続部9はグランド配線用である。信号配線2とグランド配線3は、多層構造で絶縁シート内において、マイクロストリップライン構造をとっており、信号配線の配線幅と、信号配線層とグランド配線の層間の距離を制御することで、信号配線の特性インピーダンスを制御することが可能である。2箇所の部品搭載用パッド部の間隔は、改造対象部品の搭載用パッドピッチに合わせてある。また、部品搭載用パッド部6、7の導体層露出部である補修パッド4、5の形状とサイズは、改造対象パッドの周辺の部品搭載用パッドと同等に形成されている。また、本実施例のリペアシート10は、部品搭載用パッド部6、7が単層導体層で形成されており、絶縁シート内で配線が重なり合う箇所から多層配線構造となっている。部品搭載用パッド部6、7とワイヤ接続部8、9間の長さは、本リペアシートの補修パッド4、5上に電気部品が搭載された状態で、ワイヤ接続部8、9が電気部品より外側に出るように構成される。
【0019】
図2A(a)〜図2B(e)は、本発明の実施例1によるプリント配線基板の改造方法の各工程を示す断面図であり、また、図2A、図2Bの(a’)〜(e’)は、それぞれ(a)〜(e)の各工程に対応する上面図である。
図2A(a)、(a’)に改造対象のプリント配線基板40を示す。プリント配線基板40は、多層構造で、上層からグランド層13、信号層14、信号層15、電源層16を備え、基板表面はソルダーレジスト層11で被覆され、基板表面のソルダーレジスト層に規則的配置で開けられた開口部には部品搭載用パッド12が形成されている。部品搭載用パッド12の内、12a、12bは改造対象パッドである。改造対象パッド12aは、信号接続用であって、スルーホール17を介して内層の信号層14に電気的に接続されている。一方、改造対象パッド12bはグランド接続用であって、ビアホール(図示なし)を介してグランド層13と接続されている。
改造対象のプリント配線基板40は、図2A(b)、(b’)に示されるように、改造対象パッド12a、12bの形成領域に所定の深さの穴18が開けられる。穴18の径はパッド12a、12bの径より大きく、そのため、改造対象パッド12a、12bは完全に除去される。穴の深さは、最上層の配線層、本実施例においてはグランド層13の上面に到達しない深さとする。
【0020】
続いて、図2A(c)、(c’)に示すように、先の工程で形成した穴18に樹脂19を注入し、穴18の底面に露出しているスルーホール上部を封止し、穴18と内層配線との電気的接続を切り離す。このとき樹脂19の表面は、プリント配線基板の表面より低く、穴18の一部が樹脂19により充填された状態である。次いで、図1に示すリペアシート10をプリント配線基板上に配置し、リペアシート10の部品搭載用パッド部6、7を穴18内に挿入し固着する。部品搭載用パッド部6、7の固着は、樹脂19によって行なうこともできるが、別途接着剤を用いて固着してもよい。このとき、部品搭載用パッド部6、7の補修パッド4、5の表面高さが、周辺の部品搭載用パッドのそれと同等になるように調整される。また、リペアシート10の他の部分を周辺の部品搭載用パッド上を覆うことのないよう接着剤等を用いてプリント配線基板上に固着する。
【0021】
次に、図2B(d)、(d’)に示すように、上記の工程で改造されたプリント配線基板上に電気部品50を搭載する。電気部品50は、入出力端子に半田ボール50aを備えるボールグリッドアレイ(BGA)タイプの電気部品である。BGAタイプの電気部品50は、部品搭載時に半田量や部品搭載用パッドの開口部サイズ等をシビアに制御する必要があり、搭載条件出しには注意を要するが、本実施例により改造されたプリント配線基板の補修パッドは、サイズ、形状、プリント配線基板からの高さ等、周辺の部品搭載用パッドと同等であり、良品のプリント配線基板と同様な製造プロセスの使用が可能である。
【0022】
最後に、図2B(e)、(e’)に示すように、リペアシート10のワイヤ接続部に同軸ケーブル60を半田付けする。同軸ケーブル60の芯線60aは、信号線接続用のワイヤ接続部8に、また同軸ケーブルのグランドシールド部に接続されているドレイン線60bは、グランド接続用のワイヤ接続部9に、半田21を用いて接続される。なお、同軸ケーブル60の他端は、プリント配線基板40の図外接続箇所に接続される。
以上の改造方法を用いることによって、プリント配線基板の内層配線を傷つけることのない、また高速信号の伝送性を犠牲にすることのない高品質の改造が行え、プリント配線基板の製造不良や設計変更に有効に対応することができる。これによりプリント配線基板の歩留まり向上、コスト低減も可能になる。
【実施例2】
【0023】
図3(a)、(b)は、本発明の実施例2で用いるリペアシート20の上面図と断面図である。リペアシート20は、絶縁シート1と、その内部に形成された導体層から構成されており、一端に部品搭載用パッド部24を、他端にワイヤ接続部25を備える。部品搭載用パッド部24とワイヤ接続部25は、それぞれ導体層の一部と絶縁シート1の一部とを含むが、この内部品搭載用パッド部24は、補修パッド23とそれの周囲を囲む絶縁シートの部分を含んでいる。本実施例で用いるリペアシート20において、部品搭載用パッド部24の補修パッド23は、配線22を介してワイヤ接続部25の導体層と接続されている。本実施例で用いられるリペアシート20は、実施例1で示したようなリペアシート10内での配線の特性インピーダンスを制御する必要が無い信号を扱うパッドを対象とした改造時に用いるものである。
【0024】
図4A(a)〜図4B(e)は、本発明の実施例2によるプリント配線基板の改造方法の各工程を示す断面図であり、また、図4A、図4Bの(a’)〜(e’)は、それぞれ(a)〜(e)の各工程に対応する上面図である。図4A、図4Bにおいて、図2A、図2Bの部分と同等のものには同一の参照番号を付し、重複する説明は適宜省略する。図4A(a)、(a’)、(b)、(b’)に示されるように、本実施例2において、改造対象パッドは、改造対象パッド12aの一つだけであり、プリント配線基板40に開けられる穴18も一つだけである。穴開け工程の後、図4A(c)、(c’)に示すように、穴18内に樹脂19を注入し、図3に示すリペアシート20を取り付ける。その後、電気部品50を搭載し〔図4B(d)、(d’)〕、図4B(e)、(e’)に示すように、ケーブル70の芯線70aを、リペアシート20のワイヤ接続部25に半田21にて接続する。本実施例においては、リペアシート20は単線であり、半田付けされるワイヤもケーブル70の単芯の芯線である。ケーブル70の他端は、プリント配線基板40の図外接続部に接続される。本実施例により、高周波特性を求めない信号を扱うパッドの接続の改造を容易に行うことができる。
【実施例3】
【0025】
図5(a)、(b)は、本発明の実施例3で用いるリペアシート30の上面図と断面図である。本実施例で用いるリペアシート30は、部品搭載用パッド部27のみから構成される。そして、部品搭載用パッド部27は、補修パッド26とそれの周囲を囲む絶縁シート1から構成される。本実施例のリペアシート30は、改造対象パッド部において、搭載部品の入出力端子とプリント配線基板との電気的接続を遮断するためのものである。
【0026】
図6A(a)〜図6B(d)は、本発明の実施例1によるプリント配線基板の改造方法の各工程を示す断面図であり、また、図6A、図6Bの(a’)〜(d’)は、それぞれ(a)〜(d)の各工程に対応する上面図である。図6A、図6Bにおいて、図2A、図2Bの部分と同等のものには同一の参照番号を付し、重複する説明は適宜省略する。図6A(a)、(a’)に示されるように、本実施例3において、改造対象パッドは、改造対象パッド12aの一つだけであり、その改造対象パッド12aは、スルーホール17を介して内層の電源層16に接続されている。本実施例は、搭載される電気部品の該当する入出力端子とプリント配線基板の電源層との電気的接続を切断する事例に係る。そのため、図6A(b)、(b’)に示す工程で、改造対象パッド部12aをパッド径よりも大きい径でパッドごと除去し、所定の深さの穴18を形成する。続いて、図6A(c)、(c’)に示すように、樹脂19を充填しリペアシート30を取り付け、さらに図6B(d)、(d’)に示すように、電気部品50を搭載する。本実施例によれば、電気部品の構造を変更することなく、搭載電気部品における所定の入出力端子の電気的接続を切断する改造を容易に行なうことができる。
【実施例4】
【0027】
図7A(a)〜図7B(e)は、本発明の実施例4によるプリント配線基板の改造方法の各工程を示す断面図であり、また、図7A、図7Bの(a’)〜(e’)は、それぞれ(a)〜(e)の各工程に対応する上面図である。図7A、図7Bにおいて、図2A、図2Bの部分と同等のものには同一の参照番号を付し、重複する説明は適宜省略する。本実施例で用いるリペアシートは、図1に示される実施例1で用いたリペアシート10と同様のものである。本実施例4が、図2A、図2Bで説明した実施例1と異なる点は、プリント配線基板に形成される部品搭載用パッド12が、表面層の引き出し配線28と隣接するスルーホール17を介して内層配線(13〜16)と接続される形態をとっていることである。ここで、改造対象パッド12a、12bは、それぞれ信号層14、グランド層13に接続されている〔図7A(a)、(a’)〕。これらの改造対象パッドの形成領域には穴18が開けられるが、穴の底にスルーホールやビアホールが露出されることはない。改造対象パッドと内層配線との電気的接続の切断部は、穴18の側面に露出する引き出し配線28の断面である〔図7A(b)、(b’)〕。図7A(c)、(c’)以降の工程は、実施例1の場合と同様である。本実施例によれば、改造対象の電気部品搭載用パッドが、表面層の引き出し配線と隣接するスルーホールを介して内層配線に接続される態様を採っている場合であっても改造を容易に行うことができる。
なお、以上の実施例では改造対象の搭載用パッドが2箇所までの場合について説明したが、改造対象の搭載用パッドはそれ以上の場合でも、本発明の改造方法、構造は適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 絶縁シート
2 信号配線
3 グランド配線
4、5、23、26 補修パッド
6、7、24、27 部品搭載用パッド部
8、9、25 ワイヤ接続部
10、20、30 リペアシート
11 ソルダーレジスト層
12 部品搭載用パッド
12a、12b 改造対象パッド
13 グランド層
14、15 信号層
16 電源層
17 スルーホール
18 穴
19 樹脂
21 半田
22 配線
28 引き出し配線
40 プリント配線基板
50 電気部品
50a 半田ボール
60 同軸ケーブル
60a、70a 芯線
60b ドレイン線
70 ケーブル
101 LSI
102 入出力ピン
103 プリント配線基板
104 素子実装用パッド
105 内層配線
106 補修用パッド
107 導体層
108 ワイヤ
109 ワイヤボンディング部
110 素子実装用パッド部
118 絶縁体
119 ヴィア
201 リペアコンタクト
202 バンプ部
203 リード部
204 プリント配線基板
208 内層配線
210 樹脂
211 穴
212 接着剤
213 LSI
214 ワイヤ
215 入出力ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の部品搭載用パッドを内層から電気的に切り離して接続先を変更するプリント配線基板の改造方法であって、前記部品搭載用パッドを除去して前記部品搭載用パッドの形成領域にパッド径よりも大きい径の所定の深さの穴を形成する第1の工程と、前記穴の下部一部を樹脂にて充填する第2の工程と、電気部品搭載用パッドとこれに電気的に接続されたワイヤ接続部とを有するリペアシートの電気部品搭載用パッド部を前記穴内に固着する第3の工程と、前記リペアシートの取り付けられたプリント配線基板上に電気部品を搭載する第4の工程と、前記リペアシートの前記ワイヤ接続部に改造用ワイヤを接続する第5の工程と、を有することを特徴とするプリント配線基板の改造方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、前記リペアシートの一部をプリント配線基板の表面に固着することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項3】
前記リペアシートは、絶縁フィルムと1ないし複数層の導電層とを有するものであって、前記電気部品搭載用パッド部は、前記穴の径と概略等しい外径の前記絶縁フィルムの部分が電気部品搭載用パッドの周囲を囲んだものであることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項4】
前記リペアシートは、複数の電気部品搭載用パッド部と、各電気部品搭載用パッド部のパッドがそれぞれ接続される複数のワイヤ接続部とを備え、前記電気部品搭載用パッド部のパッドと前記ワイヤ接続部間を接続する配線は、絶縁フィルムに多層配線構造に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項5】
前記リペアシートは、2個の電気部品搭載用パッド部と、各電気部品搭載用パッド部のパッドがそれぞれ接続される2個のワイヤ接続部とを備え、前記電気部品搭載用パッド部のパッドと前記ワイヤ接続部間を接続する配線は、絶縁フィルムに多層配線構造に形成されてマイクロストリップ線路を構成していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項6】
電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の部品搭載用パッドを内層から電気的に切り離して接続先を変更するプリント配線基板の改造方法であって、前記部品搭載用パッドを除去して前記部品搭載用パッドの形成領域にパッド径よりも大きい径の所定の深さの穴を形成する第1の工程と、前記穴の下部一部を樹脂にて充填する第2の工程と、電気部品搭載用パッドの周囲を絶縁フィルムにて囲んでなる電気部品搭載用パッド部を有するリペアシートを前記穴内に固着する第3の工程と、前記リペアシートの取り付けられたプリント配線基板上に電気部品を搭載する第4の工程と、を有することを特徴とするプリント配線基板の改造方法。
【請求項7】
前記穴の深さと該穴に充填される前記樹脂の厚さは、前記電気部品搭載用パッド部のパッドの高さが、前記第1の工程で除去されなかった電気部品の入出力端子に対応する部品搭載用パッドの高さと概略等しくなるようになされることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項8】
前記穴を形成する手段として、ドリリング、レーザービーム加工法、イオンミリングまたは物理・化学的エッチング法のいずれかを用いることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項9】
前記第1の工程において形成する穴の深さは、当該プリント配線基板の最も浅い内層配線の下面より浅いことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のプリント配線基板の改造方法。
【請求項10】
電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の複数の部品搭載用パッドの内の1ないし複数の部品搭載用パッドの形成領域が、そのパッドより大きい径の所定の深さの穴によって除去されており、当該穴の下部の一部は樹脂にて充填されており、当該穴の前記樹脂上には、電気部品搭載用パッド部と該電気部品搭載用パッド部の電気部品搭載用パッドに電気的に接続されたワイヤ接続部とを有するリペアシートの電気部品搭載用パッド部が固着され、電気部品の端子が前記リペアシートの電気部品搭載用パッドとプリント配線基板の除去されなかった部品搭載用パッドとに接続され、前記リペアシートの前記ワイヤ接続部に改造用ワイヤが接続されていることを特徴とする改造済プリント配線基板。
【請求項11】
電気部品の入出力端子に対応するプリント配線基板上の複数の部品搭載用パッドの内の1ないし複数の部品搭載用パッドの形成領域が、そのパッドより大きい径の所定の深さの穴によって除去されており、当該穴の下部の一部は樹脂にて充填されており、当該穴の前記樹脂上には、電気部品搭載用パッドの周囲を絶縁フィルムにて包囲してなるリペアシートが固着され、電気部品の端子が前記リペアシートの電気部品搭載用パッドとプリント配線基板の除去されなかった部品搭載用パッドとに接続されていることを特徴とする改造済プリント配線基板。
【請求項12】
プリント配線基板上の複数の部品搭載用パッドの内の穴の形成されていない領域に存在する前記部品搭載用パッドの高さは、前記電気部品搭載用パッドの高さと概略等しいことを特徴とする請求項10または11に記載の改造済プリント配線基板。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−219364(P2010−219364A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65487(P2009−65487)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】