説明

プリント配線基板の製造方法およびプリント配線基板

【課題】ビアホールおよび配線溝の内壁とシード層との密着性に優れ、製造の歩留まりがよく、また、信頼性が高いプリント配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のプリント配線基板の製造方法は、(a)基板上に形成された下層配線パターンを被覆する層間絶縁層を形成する工程と、(b)該層間絶縁層に、該下層配線パターンに達するビアホールを形成する工程と、(c)該層間絶縁層上に、該ビアホール上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部を有する永久レジスト層を形成する工程と、(d)特定金属化合物を含有する基材を特定の条件において加熱して該金属化合物を昇華させ、少なくとも該ビアホールおよび開口部の内壁にシード層を形成する工程と、(e)該ビアホールおよび開口部に導体を充填して、該シード層上に導体層を形成する工程と、(f)該永久レジスト層が露出するまで該導体層表面を平坦に研磨し、該開口部に充填された導体を独立した配線パターンとする工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含むプリント配線基板の製造方法、および該方法で製造することができるプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線基板に形成される配線は、より一層微細化および複雑化する傾向にあり、高精度な配線形成技術が求められている。また、各種部品の小型化および高性能化に伴い、プリント配線基板の多層化が促進されている。このような多層配線基板においては、各層に形成されている配線パターンの他に、積層された各層の配線パターン間を接続する配線(ビアプラグ)も形成されるので、多層配線基板の配線形成には特に高精度の技術が要求される。
【0003】
配線パターンを形成する技術としては、Cu(銅)のエッチングを必要としないダマシンが主流となってきており、例えば、デュアルダマシンが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。デュアルダマシンとは、(1)下層配線パターンおよび上層配線パターンの電気的接続を確立するビアホールと、上層配線パターンを形成する配線溝とを同時にまたは逐次に形成し、(2)ビアホールおよび配線溝の内壁にシード層を形成し、(3)導体(例えば、Cuなど)の堆積、化学機械研磨(CMP)をそれぞれ1回行い、配線パターンとビアプラグとを同時に形成する手法である。そして、これらの工程を必要な層数となるまで繰り返すことで、多層配線基板を製造することができる。
【0004】
上記のデュアルダマシンプロセスにおいては、Cuなどの導体を堆積させるために、絶縁基板の表面にシード層を形成する必要があるが、シード層の形成には、従来、メッキ法または真空蒸着法もしくはスパッタ法などの物理的方法が採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
例えば、メッキ法の一種である無電解メッキ法では、(1)先ず、脱脂およびコンディショニングといった前処理により各層間に形成される絶縁層(層間絶縁層)表面の洗浄および親水化処理を行った後、(2)(ア)キャタライジング処理およびアクセラレーティング処理、または(イ)センシタイジング処理およびアクチベーティング処理を行い、層間絶縁層表面に触媒を付着させた後、(3)上記基板を無電解メッキ液に浸漬することにより、シード層として利用可能な金属膜を形成する。また、真空蒸着法またはスパッタ法などの物理的方法では、雰囲気を真空にしてシード層を形成する。
【0006】
しかしながら、上記の方法でシード層を形成するには、非常に多くの工程および時間を必要とする、あるいは高真空状態を必要とするため高コストであるという問題がある。
また、上記の方法で形成されるシード層は、ビアホールおよび配線溝の内壁との密着性が充分ではないため、プリント配線基板の製造の歩留まりが悪く、また、信頼性に欠けるという問題がある。
【0007】
ここで、特許文献4には、絶縁体である基体が有するトレンチ内に、メッキ法により金属、例えば銅を埋め込む際のシード層になるとともに、絶縁体との密着性に優れた膜を簡易に形成する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2000−332111号公報
【特許文献2】特開2006−049804号公報
【特許文献3】特開2006−032462号公報
【特許文献4】特開2006−328526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デュアルダマシンプロセスを用いたプリント配線基板の製造において、ビアホールおよび配線溝の内壁に同時にシード層を形成する必要があるため、シード層と層間絶縁層および配線溝(開口部)を有する永久レジスト層との密着性がより一層求められている。
【0009】
しかしながら、特許文献4に記載のシード層形成方法を、デュアルダマシン構造を有するプリント配線基板に適用した場合、シード層と層間絶縁層および永久レジスト層との密着性が充分ではなく、これらの層からシード層が剥離するという問題がある。また、特許文献4に記載のシード層形成方法では、ビアホール内壁および配線溝内壁の双方に均一にシード層を形成することは困難である。
【0010】
本発明は、デュアルダマシンプロセスを用いた、ビアホールおよび配線溝の内壁とシード層との密着性に優れ、製造の歩留まりがよく、しかも信頼性に優れたプリント配線基板の製造方法を提供することを目的としている。また、本発明は、前記特性を有するプリント配線基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の条件においてシード層を形成することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[4]に関する。
【0012】
[1](a)基板上に形成された下層配線パターンを被覆する層間絶縁層を形成する工程と、(b)該層間絶縁層に、該下層配線パターンに達するビアホールを形成する工程と、(c)該層間絶縁層上に、該ビアホール上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部を有する永久レジスト層を形成する工程と、(d)コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を含有する基材を加熱して該金属化合物を昇華させ、少なくとも該ビアホールおよび開口部の内壁にシード層を形成する工程と、(e)該ビアホールおよび開口部に導体を充填して、該シード層上に導体層を形成する工程と、(f)該永久レジスト層が露出するまで該導体層表面を平坦に研磨し、該開口部に充填された導体を独立した配線パターンとする工程とを含み、かつ前記工程(d)において、前記シード層が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて100mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度を50〜110℃とし、前記シード層が形成される基板の設定温度を23〜120℃とすることを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【0013】
[2]前記工程(d)において、前記シード層が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて10mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度を100〜110℃とすることを特徴とする前記[1]に記載のプリント配線基板の製造方法。
【0014】
[3]前記工程(c)と工程(d)との間に、前記層間絶縁層および永久レジスト層の表面ならびにビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁表面を粗化する工程を含むことを特徴とする前記[1]または[2]に記載のプリント配線基板の製造方法。
【0015】
[4]基板上に形成された下層配線パターンと、該下層配線パターンを被覆する層間絶縁層と、該層間絶縁層の上面から該下層配線パターンに達するビアホールと、該層間絶縁層上に形成された、該ビアホール上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開
口部を有する永久レジスト層と、コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を含有する基材を加熱して該金属化合物を昇華させることにより、該ビアホールおよび開口部の内壁に形成されたシード層と、該ビアホールに充填された導体からなるビアプラグと、該開口部に充填された導体からなる配線パターンとを有し、前記シード層が、前記シード層が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて100mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度が50〜110℃、前記シード層が形成される基板の設定温度が23〜120℃なる条件で該基材を加熱して形成され、かつ導体が充填されている該開口部以外の部分はシード層が研磨されて永久レジスト層の表面が露出していることを特徴とするプリント配線基板。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリント配線基板の製造方法によれば、ビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁に金属が侵入して、ビアホールの内壁および永久レジスト層が有する開口部の内壁に緻密な金属昇華物層からなるシード層が形成される。
【0017】
このため、本発明の製造方法により得られるプリント配線基板は、シード層が非常に緻密に形成されており、ビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁とシード層との密着性が非常に高い。従って、本発明のプリント配線基板が有するビアプラグおよび配線パターンは、基板に対して非常に高い密着性を有している。
【0018】
しかも、ビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁に形成されているシード層は、特定の金属を昇華させた金属昇華物層であるので、該金属昇華物層を形成するに際して高真空装置などを必要とせず、常圧・不活性ガス雰囲気下において形成することが可能である。このため、本発明のプリント配線基板は、大掛かりな減圧蒸着装置などの高価な装置を必要とせず、非常に効率よく、安価に製造することができる。
【0019】
すなわち、本発明のプリント配線基板の製造方法によれば、ビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁とシード層との密着性に優れ、製造の歩留まりがよく、しかも信頼性に優れたプリント配線基板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のデュアルダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含むプリント配線基板の製造方法およびプリント配線基板について、必要に応じて図1および図2を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
[プリント配線基板の製造方法]
本発明のプリント配線基板の製造方法は、以下の工程(a)〜(f)を含む。
(a)基板上に形成された下層配線パターンを被覆する層間絶縁層を形成する工程、
(b)該層間絶縁層に、該下層配線パターンに達するビアホールを形成する工程、
(c)該層間絶縁層上に、該ビアホール上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部を有する永久レジスト層を形成する工程、
(d)コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を含有する基材を特定の条件において加熱して該金属化合物を昇華させ、少なくとも該ビアホールおよび開口部の内壁にシード層を形成する工程、
(e)該ビアホールおよび開口部に導体を充填して、該シード層上に導体層を形成する工程、
(f)該永久レジスト層が露出するまで該導体層表面を平坦に研磨し、該開口部に充填された導体を独立した配線パターンとする工程。
また、本発明のプリント配線基板の製造方法は、以下の工程(i)〜(iii)を任意工程として含んでいてもよい。
(i)工程(b)と工程(c)との間、および/または工程(c)と工程(d)との間に、工程(b)で下層配線パターン上に残留した樹脂スミアを、デスミア液などを用いて除去するデスミア工程、
(ii)工程(b)と工程(c)との間に、上記層間絶縁層の表面を粗化する第1の粗化処理工程、
(iii)工程(c)と工程(d)との間に、上記層間絶縁層および永久レジスト層の表面ならびにビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁表面を粗化する第2の粗化処理工程。
【0022】
以下、本発明のプリント配線基板の製造方法について、その配線形成工程を示す図1を参照しながら説明する。本発明では、以下に記述するようにデュアルダマシンプロセスを用いて配線パターンを形成する。
【0023】
〔工程(a)〕
工程(a)では(図1(0)、(a)参照)、基板10上に形成された下層配線パターン30を被覆するように全面に、層間絶縁層40を形成する。下層配線パターン30は、通常はCu(銅)などの導電性金属から形成されている。
【0024】
層間絶縁層40を形成する材料としては、低誘電率を有している材料が好ましく、例えば、SiO2などの無機酸化物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂などの熱
硬化性樹脂が挙げられる。また、この層間絶縁層40を形成する材料としては、前記の材料の他に、紫外線などの光照射によって硬化する性質を有する、エポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系などの感光性樹脂を用いてもよい。
【0025】
〔工程(b)〕
工程(b)は、下層配線パターン30に達するビアホール50を形成する工程である。具体的には工程(b)は(図1(b)参照)、下層配線パターン30上に形成された層間絶縁層40に、例えば、高圧水銀灯、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザ
ーなどを用いて、下層配線パターン30に達するビアホール50を形成する。
【0026】
また、工程(a)で形成した層間絶縁層40が上記感光性樹脂からなる場合には、通常のフォトリソグラフィープロセスにより、ビアホール50を形成してもよい。
ビアホール50の形状および大きさは特に限定されないが、ビアホール50の開口幅は、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは5〜50μmである。また、ビアホール50のアスペクト比(ビアホール50の深さをビアホール50の開口幅で徐した値)は、通常は0.1以上、好ましくは0.1〜50、より好ましくは1〜25である。ビアホール50の開口幅およびアスペクト比が前記範囲にあると、後述するシード層80を効率よく形成することができる。
【0027】
なお、工程(b)では、ビアホール50内の下層配線パターン30上には、レーザーによる穴あけ処理、またはフォトリソグラフィープロセスにより残渣として生じた樹脂片(樹脂スミア)が残留していることがある。前記樹脂スミアは、次に説明するデスミア処理(工程(i))によって取り除くことが好ましい。
【0028】
〔工程(i)〕
工程(i)では(不図示)、工程(b)で下層配線パターン30上に残渣として生じた樹脂スミアを、デスミア液を使用したウェット処理により除去する。
【0029】
具体的には、あらかじめ上記樹脂スミアを溶剤を用いて膨潤させ、上記デスミア液としてN−メチルピロリドン溶液あるいはアルカリ過マンガン酸塩溶液(過マンガン酸ナトリウムまたは過マンガン酸カリウムを含む溶液)を使用し、該デスミア液で溶解除去する。これによって、下層配線パターン30の表面が清浄化され、後の工程(d)で形成されるシード層80と下層配線パターン30との密着性を高めることができる。
【0030】
なお、工程(i)ではデスミア液を使用したウェット処理によりデスミアを行っているが、例えば、プラズマを用いたドライエッチング処理によりデスミアを行ってもよい。
また、この工程で実施されるデスミア処理は、後述する永久レジスト層70を形成する工程(c)とシード層80を形成する工程(d)との間に実施してもよい。
【0031】
〔工程(ii)〕
工程(ii)では(不図示)、層間絶縁層40と続く工程(c)で形成される永久レジスト層70との密着性を高めるために、層間絶縁層40の表面を粗化する。前記表面の粗化は、通常は工程(i)と同様のウェット処理またはドライエッチング処理により行われる。なお、工程(i)を設けた場合には、工程(ii)は工程(i)に続けて実施することが好ましい。
【0032】
上記ウェット処理としては、酸、アルカリ、層間絶縁層40または永久レジスト層70を形成する材料に対して溶解性を示す有機溶剤などを用いて、層間絶縁層40の表面に凹凸を形成する方法が挙げられる。
【0033】
また、上記ドライエッチング処理としては、減圧雰囲気中でプラズマガスを発生させて層間絶縁層40の表面に凹凸を形成する方法が挙げられる。
上記のようにして粗化処理することにより、層間絶縁層40の表面が粗化処理されることは勿論、層間絶縁層40に形成されたビアホール50の内壁表面も同様に粗化処理される。なお、本発明において、上記で例示した方法とは異なる方法で粗化処理を行うことによっても同等の作用効果が奏される。
【0034】
工程(ii)を設けることにより、層間絶縁層40と永久レジスト層70との密着性が高まり、プリント配線基板の信頼性が向上する。さらに、層間絶縁層40に形成されたビアホール50の内壁表面の状態を、後述する金属が緊密に堆積するのに非常に適した状態に調節することができる。
【0035】
〔工程(c)〕
工程(c)では(図1(c)参照)、層間絶縁層40上に、ビアホール50上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部60を有する永久レジスト層70を形成する。
【0036】
永久レジスト層70を形成する際には、例えば感光性絶縁樹脂組成物が用いられる。前記感光性絶縁樹脂組成物としては、通常のプリント配線基板の製造において用いられる感光性絶縁樹脂組成物であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、ポリイミド系などの樹脂組成物が挙げられる。特に、前記感光性絶縁樹脂組成物として、特開2002−139835号公報に開示されている(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、(B)分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を含有する化合物、(C)架橋微粒子、(D)光感応性酸発生剤、および(E)溶剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。また、前記感光性絶縁樹脂組成物は、液状であるいは貼着性を有するドライフィルムのようなフィルム状で用いてもよい。
【0037】
具体的には、ビアホール50の内部を含めて全面に感光性絶縁樹脂組成物を塗布(液状の場合)、またはラミネート(フィルム状の場合)して「感光性レジスト層」を形成し、ビアホール50の上方に位置する所要の配線パターンの形状に従うようにパターニングされたマスク(図示せず)を用いて露光および現像(レジストのパターニング)を行うことで、該配線パターンの形状に応じた開口部60を有する永久レジスト層70を形成する。また、露光後・現像前、あるいは現像後に加熱を行うことが好ましい。
【0038】
上記のようにして形成された永久レジスト層70が有する開口部60によって、配線パターンが形成される「配線溝」が規定される。このような感光性レジスト層は、一般的に露光表面においてかなり微細で正確なパターニングが可能であるため、仮に感光性レジスト層の厚さを薄くしても(すなわち、開口部60の深さを小さくしても)、充分に微細で正確な配線パターン100を形成することができる。すなわち、配線パターン100の微細化を実現することができる。
【0039】
〔工程(iii)〕
工程(iii)では(不図示)、層間絶縁層40および永久レジスト層70と、続く工程(d)で形成されるシード層80との密着性を高めるために、層間絶縁層40および永久レジスト層70の表面ならびにビアホール50および永久レジスト層70が有する開口部60の内壁表面を粗化する。工程(iii)における前記表面の粗化は、通常は工程(i)と同様のウェット処理またはドライエッチング処理により行われる。このように粗化処理することにより、後述する金属が緻密に堆積するのに適した状態に前記表面を調節することができる。
【0040】
上記のようにして工程(ii)または工程(iii)により粗化処理することにより、被処理面に対する材料の密着状態または金属の密着状態が著しく向上する。例えば、粗化処理された面に対して金属を析出させると、粗化処理された面に形成された凹凸の深部にまで金属が侵入して粗化処理面を完全に覆い尽くすとともに、凹凸の深部にまで侵入した金属が析出面に対してアンカー効果を奏するので、粗化処理面に対する金属の密着性が高く、例えば碁盤目試験では、通常は100/100の結果が得られる。
【0041】
なお、工程(iii)は、層間絶縁層40および永久レジスト層70と続く工程(d)で形成されるシード層80との密着性を向上させるために適宜行う工程であり、製造の歩留まりを考慮して、工程(iii)を省略してもよい。
【0042】
〔工程(d)〕
工程(d)では(図1(d)参照)、コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物(以下、「特定金属化合物」ともいう)を含有する基材を後述する条件において加熱して該特定金属化合物を昇華させ、生成した気体をビアホール50および開口部60の内壁に接触させて、少なくとも該内壁にシード層80を形成する。
【0043】
このように昇華した特定金属化合物は、上述の工程を経て得られた基板(以下、本工程(d)において「配線基板」ともいう)が有するビアホール50および開口部60の内壁などの所定部分と接触・分解して金属に変換され、金属膜からなるシード層80が形成される。ここで、下層配線パターン30表面のデスミア処理を実施した場合は、シード層80と下層配線パターン30との電気的な接続信頼性をより好ましく確保することができる。特に、デュアルダマシンプロセスにおいて、シード層80を形成することが困難なビアホール50の内壁にも、本工程(d)の特定の条件を採用することにより、ビアホール50の内壁との密着性に優れるシード層80を形成することができる。
【0044】
上記コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物としては、昇華性のあるコバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物であれば特に制限されないが、CO配位子およびπ配位の配位子から選択される少なくとも1種の配位子を有する化合物が好ましい。このようなコバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物としては、特開2006−328526号公報に記載の化合物を好ましく使用することができる(詳細については後述する)。
これらの中では、昇華性のあるコバルト化合物が好ましく、CO配位子およびπ配位の配位子から選択される少なくとも1種の配位子を有するコバルト化合物がより好ましい。
【0045】
<特定金属化合物を含有する基材>
特定金属化合物を含有する基材は特に限定されないが、例えば、粉状または塊状の特定金属化合物、特定金属化合物を含む金属膜が副基板上に形成された金属昇華用基体などを使用することができる。
【0046】
≪金属昇華用基体≫
以下、金属昇華用基体について説明する。前記金属昇華用基体は、副基板と該副基板上に形成された特定金属化合物を含む金属膜とを有する。前記副基板は、前記金属膜を塗布法により形成でき、特定金属化合物を昇華させるための加熱に耐えうる基板であれば特に限定されない。また、前記金属膜の厚さは、目的とするシード層80の厚さにより適宜に調整することができるが、例えば、溶媒除去後の厚さに換算して、通常は10nm〜10μm、好ましくは100nm〜5μmの範囲に設定される。
【0047】
上記金属膜を副基板上に形成する方法としては、特定金属化合物および溶媒を含有する組成物を副基板上に塗布し、次いで該溶媒を除去することにより行うことができる。
上記組成物中における特定金属化合物の含有量は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%である。特定金属化合物および溶媒を含有する組成物は、さらに必要に応じて、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤およびポリマーを含有してもよい。
【0048】
特定金属化合物としてコバルト化合物を用いる場合、好ましい溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0049】
例えば、上記脂肪族炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンが挙げられ、上記脂環族炭化水素としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられ、上記芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられ、上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールが挙げられ、上記エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、p−ジオキサンが挙げられ、上記ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトンが挙げられ、上記ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロメタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンが挙げられる。これらの溶媒の中では、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素およびアルコールが好ましく、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンおよびイソプロパノールが特に好ましい。
【0050】
特定金属化合物としてルテニウム化合物を用いる場合、好ましい溶媒はアルコールおよ
びケトンであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0051】
特定金属化合物としてタングステン化合物を用いる場合、好ましい溶媒はアルコールおよびハロゲン化炭化水素であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、塩化メチレン、クロロメタン、テトラクロロエタンが挙げられる。
【0052】
なお、上記の溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記組成物を副基板上に塗布する際には、適宜の方法を利用することができる。ここで採用することができる塗布法の具体例としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、カーテンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、インクジェット法、印刷法が挙げられる。
【0053】
上記組成物を副基板上に塗布して塗布膜を形成した後、次いで、溶媒が除去される。前記塗布膜から溶媒を除去するには、塗布後の副基板を、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜50℃の温度で、好ましくは0.1〜60分、より好ましくは1〜20分乾燥することにより、溶媒を効率よく除去することができる。
上記塗布および溶媒除去を実施する際の雰囲気は特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの雰囲気下に実施することが好ましい。
【0054】
<昇華条件>
本発明においては、特定金属化合物を含有する基材を加熱して該特定金属化合物を昇華させ、生成した気体をビアホール50および開口部60の内壁に接触させて、少なくとも該内壁にシード層80を形成する際に、以下の条件(1)〜(3)が採用される。
【0055】
(1)シード層80が形成される配線基板と特定金属化合物を含有する基材との離間距離が、0を超えて100mm以内、好ましくは0を超えて10mm以内、特に好ましくは0を超えて2mm以内となるよう該基材を設置する。本発明においては、配線基板のうちシード層80が形成される部分と、特定金属化合物を含有する基材とを対向して配置することがより好ましい。
【0056】
なお、本発明においてシード層80が形成される配線基板と特定金属化合物を含有する基材との離間距離は、配線基板のうちシード層80が形成される部分と該基材との距離であり、該基材として金属昇華用基体を用いる場合には配線基板のうちシード層80が形成される部分と該基体が有する金属膜との距離である。
【0057】
(2)特定金属化合物を含有する基材の設定温度は、50〜110℃、好ましくは100〜110℃である。特定金属化合物を含有する基材の設定温度が前記範囲にあると、該特定金属化合物を効率よく昇華させることができ、良好なシード層80を配線基板上に形成することができる。
【0058】
特定金属化合物は、例えば、熱線を照射することにより昇華させることができる。前記熱線の熱源としては、例えば、ヒーター、赤外線ランプ、赤外線レーザー、半導体レーザー、太陽光などを使用することができる他、後述するように加熱された配線基板からの輻射熱であってもよい。また、特定金属化合物を含有する基材のうち、特定部分のみを加熱するために、パターンを有するマスクを介して熱線を照射してもよい。
【0059】
上記熱線の温度は、特定金属化合物が昇華しうる温度とするべきであり、使用される特
定金属化合物の種類によって適宜に設定されるが、一般には特定金属化合物を含有する基材の表面到達温度が上記温度範囲となるように設定される。
【0060】
(3)シード層80が形成される配線基板の設定温度は、23〜120℃、好ましくは80〜120℃である。ここで、シード層80が形成される配線基板の設定温度は、特定金属化合物が分解しうる温度以上であればよく、使用する金属化合物の種類に応じて前記温度範囲において適宜に設定される。
【0061】
(4)シード層80を配線基板上に形成する際の雰囲気としては、常圧かつ不活性ガス雰囲気下または真空下とすることが好ましく、常圧かつ不活性ガス雰囲気下とすることがより好ましい。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンが挙げられる。このように本発明では、常圧かつ不活性ガス雰囲気下で金属昇華物層からなるシード層を形成することができるので大掛かりな装置を必要としない。
【0062】
本工程においては、上記のようにして配線基板の所定部分にシード層80が形成される。シード層80の厚さは、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは5〜100nmである。シード層80は、メッキ法などによりビアホール50や開口部60に導体を充填する際のシード層となるとともに、導体に含まれる金属原子の層間絶縁層40へのマイグレーションを防止するバリア層の役割をも果たす。また、上記金属昇華物層からなるシード層80は、層間絶縁層40との密着性にも優れる。
以下、本発明で用いられる上述の金属化合物(コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物)について、詳細に説明する。
【0063】
<コバルト化合物>
上記コバルト化合物としては、昇華性のあるコバルト化合物であれば特に制限されないが、CO配位子およびπ配位の配位子から選択される少なくとも1種の配位子を有するコバルト化合物が好ましい。このようなコバルト化合物としては、例えば下記式(1)〜(5)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
1cCo(CO)de・・・(1)
ここで、L1は(CH3nCp(ここで、Cpはη5−シクロペンタジエニル基であり、nは0〜5の整数である)で表される基、インデニル基、または1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ブタジエン、ノルボルナジエンおよびη3−アリル基から選択される配位子であり、Yはハロゲン原子
、水素原子、メチル基またはエチル基であり、cは1または2であり、dは0、1、2または4であり、eは0または2であり、c+d+eは2、3、4または5である。ただし、cが2のときは、L1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0065】
2fCo2(CO)gh・・・(2)
ここで、L2の定義は上記式(1)における(CH3nCpと同じであるか、または1,
3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、η3−アリル基、ノルボルナジ
エンおよびシクロオクテンから選択される配位子であり、Rはハロゲン原子、PhC:::
CPh(ここで、:::は三重結合を意味する)、CCH3、CH3、CH2、CH、CF2
たはCPhであり、fは0、1、2または4であり、gは1、2、4、6または8であり、hは0、1または2であり、f+g+hは4、5、6、7または8である。
【0066】
Co3(CO)9CZ・・・(3)
ここで、Zはハロゲン原子である。
Co3(CO)12・・・(4)
Co4(CO)12・・・(5)
【0067】
上記式(1)で表される錯体としては、例えば、シクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジフルオライド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジクロライド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジブロマイド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)カルボニルコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルコバルト、メチルシクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジフルオライド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジクロライド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジブロマイド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)コバルト、ビス(メチルシクロペンタジエニル)カルボニルコバルト、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルコバルト、テトラメチルシクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジフルオライド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジクロライド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジブロマイド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)コバルト、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)カルボニルコバルト、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルコバルト、
1,5−シクロオクタジエンジカルボニルコバルト、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジフルオライド、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジクロライド、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジブロマイド、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、ビス(1,5−シクロオクタジエン)カルボニルコバルト、
【0068】
1,3−シクロオクタジエンジカルボニルコバルト、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジフルオライド、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジクロライド、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジブロマイド、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(1,3−シクロオクタジエン)コバルト、ビス(1,3−シクロオクタジエン)カルボニルコバルト、
インデニルジカルボニルコバルト、インデニルカルボニルコバルトジフルオライド、インデニルカルボニルコバルトジクロライド、インデニルカルボニルコバルトジブロマイド、インデニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(インデニル)コバルト、ビス(インデニル)カルボニルコバルト、
η3−アリルトリカルボニルコバルト、η3−アリルカルボニルコバルトジフルオライド、η3−アリルカルボニルコバルトジクロライド、η3−アリルカルボニルコバルトジブロマイド、η3−アリルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(η3−アリル)カルボニルコバルト、
シクロペンタジエニル(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、シクロペンタジエニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)コバルト、テトラメチルシクロペンタジエニル(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、シクロペンタジエニル(メチルシクロペンタジエニル)コバルト、メチルシクロペンタジエニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)コバルト、メチルシクロペンタジエニル(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、シクロペンタジエニル(1,3−シクロオクタジエン)コバルト、テトラメチルシクロペンタジエニル(1,3−シクロオクタジエン)コバルト、メチルシクロペンタジエニル(1,3−シクロオクタジエン)コバルト、シクロペンタジエニル(シクロオクタテトラエニル)コバルト、シクロペンタジエニル(1,3−ブタジエン)コバルト、シクロペンタジエニル(ノルボルナジエン)コバルト、テトラカルボニルコバルトハイドライド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジハイドライド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジハイドライド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジハイドライド、メチルテトラカルボニルコバルト、エチルテトラカルボニルコバルトが挙
げられる。
【0069】
上記式(2)で表される錯体としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルジコバルト、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルジコバルト、オクタカルボニルジコバルト、(ノルボルネン)ヘキサカルボニルジコバルト、シクロオクチンヘキサカルボニルジコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジカルボニルジコバルト、テトラ(η3−アリル)ジコバルトジヨーダイド、ビス(1,3−シク
ロヘキサジエニル)テトラカルボニルジコバルト、ビス(ノルボルネン)テトラカルボニルジコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルジコバルト、および下記式(i)〜(v)で表される錯体が挙げられる。
【0070】
【化1】

上記式(3)で表される錯体としては、例えば下記式(vi)で表される錯体が挙げられる。
【0071】
【化2】

これらの中では、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト、ビス(テトラシクロペンタジエニル)コバルト、ビス(1,3−シクロオクタジエン)コバルト、ビス(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、ビス(インデニル)コバルト、シクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、メチルシクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、テトラメチルシクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、(1,3−シクロオクタジエン)ジカルボニルコバルト、(1,5−シクロオクタジエン)ジカルボニルコバルト、インデニルジカルボニルコバルト、η3−アリルトリカルボニルコバルト、シクロペンタジエニル(1,3
−シクロオクタジエン)コバルト、シクロペンタジエニル(1,5−シクロオクタジエン
)コバルト、シクロペンタジエニル(インデニル)コバルト、インデニル(1,3−シクロオクタジエン)コバルト、インデニル(1,5−シクロオクタジエン)コバルト、オクタカルボニルジコバルトが好ましい。また、これらのコバルト化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
<ルテニウム化合物>
上記ルテニウム化合物としては、昇華性のあるルテニウム化合物であれば特に制限されないが、CO配位子およびπ配位の配位子から選択される少なくとも1種の配位子を有するルテニウム化合物が好ましい。このようなルテニウム化合物としては、例えば下記式(6)〜(10)で表される化合物が挙げられる。
【0073】
【化3】

ここで、X1およびX2は、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基または下記式(6)−1
【0074】
【化4】

(ここで、R1、R2およびR3は、互いに独立に、炭素数1〜10の炭化水素基である)
で表される基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、トリフルオロメチル基または該式(6)−1で表される基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基、トリメ
チルシリル基、トリエチルシリル基またはトリn−ブトキシシリル基である。ただし、X1およびX2が共に水素原子であることはない。なお、上記式(6)において、X1または
2を有するシクロペンタジエニル基はη5−配位をしていると理解される。
【0075】
Ru(OCOR43・・・(7)
ここで、R4は炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、好まし
くは炭素数1〜8のアルキル基またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基またはトリフルオロメチル基である。また、複数存在するR4は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0076】
YRu(CO)3・・・(8)
ここで、Yはシクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプタジエニル基、シクロオクタジエニル基、ブタジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基、好ましくはシクロペンタジエニル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基、1,3−シクロオクタジエニル基、1,4−シクロオクタジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基、より好ましくはシクロペ
ンタジエニル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基、さらに好ましくはシクロペンタジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基である。
【0077】
YRuHnm・・・(9)
ここで、Yの定義は上記式(8)におけるYと同じであり、Lはカルボニル基、メチル基またはエテニル基、好ましくはカルボニル基またはメチル基、より好ましくはカルボニル基であり、nは1〜4の整数であり、mは0〜2の整数である。但しn+m=3または4であり、mが2のときはLは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0078】
上記式(8)および(9)において、シクロペンタジエニル基はη5−配位をしている
と理解され、Yのその他の基は非共役四電子配位をしていると理解される。
Rul(CO)o・・・(10)
ここでlは1〜9の整数であり、oは1〜50の整数である。
【0079】
上記式(6)〜(10)で表されるルテニウム化合物の中では、上記式(6)、(8)、(9)および(10)で表される化合物が好ましい。このようなルテニウム化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、1,4−シクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム、1,3−シクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム、1,4−シクロヘキサジエニルトリカルボニルルテニウム、1,3−シクロヘキサジエニルトリカルボニルルテニウム、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム、シクロペンタジエニルルテニウムテトラヒドリド、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルルテニウムテトラヒドリド、シクロペンタジエニルカルボニルルテニウムジヒドリド、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルカルボニルルテニウムジヒドリド、トリルテニウムドデカカルボニル、ルテニウムヘキサカルボニル、ルテニウムテトラカルボニル、ジルテニウムデカカルボニル、テトラルテニウムヘキサデカカルボニルが挙げられる。これらのルテニウム化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
<タングステン化合物>
上記タングステン化合物としては、昇華性のあるタングステン化合物であれば特に制限されないが、CO配位子およびπ配位の配位子から選択される少なくとも1種の配位子を有するタングステン化合物が好ましい。このようなタングステン化合物としては、例えば下記式(11)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
W(RCN)n(CO)6-n ・・・(11)
ここで、Rは炭素数1〜10の炭化水素基または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基であり、nは0〜6、好ましくは0〜4、より好ましくは0〜3の整数である。ただし、nが2〜6の整数のとき、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0082】
上記式(11)におけるRは炭素数1〜10の炭化水素基または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基または炭素数1〜6のハロゲン化炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基または炭素数1〜6のハロアルキル基である。
【0083】
このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフロロメチル基、1,1,1−トリフロロエチル基、トリクロロロメチル基、1,1,1−トリクロ
ロエチル基が挙げられる。
【0084】
上記タングステン化合物は、D. P. Tate, W. R. Knipple And J. M. Augl, Inorganic.
Chem., Vol. 1, No. 2 (1962) 433、W. Strohmeir and G. Schonauer, Chem. Ber., Vol. 94, (1961) 1346に記載された方法に準じて合成される。
【0085】
上記式(11)で表されるタングステン化合物としては、例えば、ヘキサ(アセトニトリル)タングステン、ペンタ(アセトニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(アセトニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(アセトニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(アセトニトリル)テトラカルボニルタングステン、(アセトニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(プロピオニトリル)タングステン、ペンタ(プロピオニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(プロピオニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(プロピオニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(プロピオニトリル)テトラカルボニルタングステン、(プロピオニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(ブチロニトリル)タングステン、ペンタ(ブチロニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(ブチロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(ブチロニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(ブチロニトリル)テトラカルボニルタングステン、(ブチロニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(イソブチロニトリル)タングステン、ペンタ(イソブチロニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(イソブチロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(イソブチロニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(イソブチロニトリル)テトラカルボニルタングステン、(イソブチロニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(バレロニトリル)タングステン、ペンタ(バレロニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(バレロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(バレロニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(バレロニトリル)テトラカルボニルタングステン、(バレロニトリル)ペンタカルボニルタングステン、ヘキサ(バレロニトリル)タングステン、ペンタ(バレロニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(バレロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(バレロニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(バレロニトリル)テトラカルボニルタングステン、(バレロニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(トリメチルアセトニトリル)タングステン、ペンタ(トリメチルアセトニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(トリメチルアセトニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(トリメチルアセトニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(トリメチルアセトニトリル)テトラカルボニルタングステン、(トリメチルアセトニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(ベンゾニトリル)タングステン、ペンタ(ベンゾニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(ベンゾニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(ベンゾニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(ベンゾニトリル)テトラカルボニルタングステン、(ベンゾニトリル)ペンタカルボニルタングステン、
ヘキサ(トリクロロアセトニトリル)タングステン、ペンタ(トリクロロアセトニトリル)カルボニルタングステン、テトラ(トリクロロアセトニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(トリクロロアセトニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(トリクロロアセトニトリル)テトラカルボニルタングステン、(トリクロロアセトニトリル)ペンタカルボニルタングステン、ヘキサカルボニルタングステンが挙げられる。
【0086】
これらの中では、テトラ(アセトニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(アセトニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(アセトニトリル)テトラカルボニルタングステン、テトラ(プロピオニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(プロピオニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(プロピオニトリル)テトラカルボニルタングステ
ン、テトラ(バレロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(バレロニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(バレロニトリル)テトラカルボニルタングステン、テトラ(トリメチルアセトニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(トリメチルアセトニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(トリメチルアセトニトリル)テトラカルボニルタングステン、ヘキサカルボニルタングステンが好ましく、
テトラ(アセトニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(アセトニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(アセトニトリル)テトラカルボニルタングステン、トリ(プロピオニトリル)トリカルボニルタングステン、テトラ(バレロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(バレロニトリル)トリカルボニルタングステン、ジ(バレロニトリル)テトラカルボニルタングステン、ヘキサカルボニルタングステンがさらに好ましく、
トリ(アセトニトリル)トリカルボニルタングステン、トリ(プロピオニトリル)トリカルボニルタングステン、テトラ(バレロニトリル)ジカルボニルタングステン、トリ(バレロニトリル)トリカルボニルタングステン、ヘキサカルボニルタングステンが特に好ましい。また、これらのタングステン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
〔工程(e)〕
工程(e)では(図1(e)参照)、シード層80を給電層として、ビアホール50および開口部60に導体を充填して、シード層80上に導体層90を形成する。前記導体としては、通常はCuが用いられる。また、ビアホール50および開口部60に導体を充填する方法としては、通常のプリント配線基板の製造において用いられる方法であれば特に限定されず、例えば、電解メッキ、無電解メッキ、CVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。
【0088】
電解メッキの具体例としては、パルスメッキと直流メッキとを組み合わせて電解メッキを行う方法が挙げられる。具体的には、ビアホール50の部分に導体が充填されるまではパルスメッキを行い、その後、直流メッキにより開口部60に導体を充填する。
【0089】
パルスメッキは、フォワード方向(つまり、導体が析出する方向)の電流密度が0.5〜10A/dm2 、メッキ時間が0.1msec〜1secであり、リバース方向(つまり、導体を溶かす方向)の電流密度が0.1〜10A/dm2 、メッキ時間が0.1〜100msecの条件下で行うことが好ましい。また、直流メッキは、電流密度が0.5〜5A/dm2、メッキ時間が10〜1800sec の条件下で行うことが好ましい。
【0090】
上記条件によれば、厚さ方向が深いビアホール50に選択的にパルスメッキにより導体を充填した後、直流メッキを施すようにしているので、配線パターンが形成されない部分(すなわち、永久レジスト層70上)のメッキ厚さを薄くすることができる。これは、工程(f)で行う研磨処理の均一性および生産性の向上に大いに寄与する。
なお、工程(e)が終了した段階では、電解メッキなどによる導体の堆積処理が行われているに過ぎないので、図1(e)のように導体層90の表面は平坦とはなっていない。
【0091】
〔工程(f)〕
工程(f)では(図1(f)参照)、永久レジスト層70が露出するまで、導体層90表面を平坦に研磨し、開口部60に充填された導体を独立した配線パターンとする。導体層90表面を研磨する方法としては、バフ研磨、ベルト研磨などの機械研磨法;化学研磨法;化学機械研磨(CMP)法などを用いることができる。これらの中では、研磨処理に要する時間を考慮すると、機械研磨法が好適である。
【0092】
バフ研磨は、研磨材を埋め込んだバフロール(不織布)を回転させ、冷却水で対象物表面(本発明においては、導体層90表面)およびバフを湿潤させながら、バフを対象物表
面に押し当てて研磨する方法である。例えば、#300と#600との2種類のバフロールを用いて、1mの長さのライン上で1m/minの速度で水平搬送される研磨対象物に対し研磨を行い(つまり、1タクトが60sec)、これを4〜6回程度繰り返す。
【0093】
ベルト研磨は、バフ研磨と同様に冷却水で対象物表面および研磨ベルト(研磨材を埋め込んだもの)を湿潤させ、回転するローラ上で研磨ベルトを搬送させながら対象物表面に押し当てて研磨する方法である。
【0094】
また、バフ研磨、ベルト研磨などの機械研磨法とエッチング液を用いた化学研磨法とを組み合わせた方法を用いてもよい。例えば、上記のバフ研磨(1タクトが60sec)を2回繰り返した後、硫酸/過酸化水素系エッチング液(エッチングレートが1〜5μm/min、好適には2μm/minである)を用いたスプレーエッチングにより、120sec程度、研磨対象物を化学研磨する。前記方法もまた、化学機械研磨(CMP)法と比べて、研磨処理に要する時間の点で有利である。
【0095】
以上の工程により、所要の形状にパターニングされた永久レジスト層70の開口部60(配線溝)とその下方のビアホール50を埋め込むようにして導体層90(配線パターン100およびビアプラグ110)が形成される。
【0096】
さらに、必要に応じて上記の配線形成工程を所要の配線パターン数となるまで繰り返し、その両面に、最外層の配線パターンの所要の箇所に配置されたパッド部が露出するようにそれぞれソルダーレジスト層などの保護層を形成し、さらに、該保護層から露出しているパッド部に適宜表面処理を施した後、必要に応じてパッド部にはんだバンプなどの外部接続端子を形成することで、多層配線基板を製造することができる。
【0097】
[プリント配線基板]
本発明のプリント配線基板は、基板10上に形成された下層配線パターン30と、該下層配線パターン30を被覆する層間絶縁層40と、該層間絶縁層40の上面から該下層配線パターン30に到達するビアホール50と、該層間絶縁層40上に形成された、該ビアホール50上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部60を有する永久レジスト層70と、コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を含有する基材を加熱して該金属化合物を昇華させることにより、該ビアホール50および開口部60の内壁に形成されたシード層80と、該ビアホール50に充填された導体からなるビアプラグ110と、該開口部60に充填された導体からなる配線パターン100とを有し、
前記シード層80が、前記シード層80が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて100mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度が50〜110℃、前記シード層80が形成される基板の設定温度が23〜120℃なる条件で該基材を加熱して形成され、かつ導体が充填されている該開口部60以外の部分はシード層80が研磨されて永久レジスト層70の表面が露出していることを特徴とする。
【0098】
また、上記内壁表面が、コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を昇華させて得られる金属が緊密に堆積するように粗化されていてもよい。
【0099】
上述の構成を有する本発明のプリント配線基板は、上述のプリント配線基板の製造方法に従って製造することができる。このような本発明のプリント配線基板には、層間絶縁層40に形成されたビアホール50に銅などの導体からなるビアプラグ110が形成され、永久レジスト層70が有する開口部60も導体からなる配線パターン100が形成されて
いる。
【0100】
しかも、層間絶縁層40に形成されたビアホール50および永久レジスト層70が有する開口部60の内壁表面は、任意工程である粗化処理が実施された後に、特定の緻密な金属昇華物層からなるシード層80で被覆されているので、ビアプラグ110および配線パターン100と、シード層80とが強固に一体化している。
【0101】
従って、本発明のプリント配線基板においては、層間絶縁層40、永久レジスト層70、シード層80、配線パターン100およびビアプラグ110などが層間剥離することがほとんどなく、極めて高い導通信頼性を有している。
【実施例】
【0102】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明のプリント配線基板の製造方法についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(a)厚さ32μmの銅箔からなる下層配線パターン30が形成された基板10上に、下層配線パターン30の全面を被覆するように、厚さ25μmの層間絶縁層40を形成した。なお、層間絶縁層40を形成する材料としては、商品名「ABF」(味の素(株)製)を用いた。
(b)次いで、エキシマレーザーを用いて、層間絶縁層40に開口幅100μmの、下層配線パターン30に達するビアホール50を形成した。
(i)(ii)次いで、このようにして形成されたビアホール50を有する層間絶縁層40に対して、N−メチルピロリドンを用いてデスミア処理を施し、さらに過マンガン酸ナトリウム水溶液を用いて表面を切削し、粗化処理を施した。
【0103】
(c)次いで、層間絶縁層40上に、感光性絶縁樹脂組成物(商品名「JSR ELPAC WPR−1201」、JSR(株)製)を塗布および乾燥して感光性レジスト層を形成し、該レジスト層を所望のパターンに露光および現像して、厚さ10μmの永久レジスト層70を形成した。このようにして形成された永久レジスト層70が有する開口部60は、永久レジスト層70の下方に形成された層間絶縁層40が有するビアホール50と連通して、最下層の下層配線パターン30にまで達する貫通孔を構成している。
(d)次いで、特定金属化合物を含有する基材として固体状(粉末状)のコバルト化合物Co2(CO)8を用いて、これを加熱して該コバルト化合物を昇華させ、生成した気体をビアホール50および開口部60の内壁に接触させて、厚さ約100nmのシード層80を形成した。
なお、加熱および昇華は、常圧・窒素ガス雰囲気下、ホットプレート(IUCHI社製)を120℃に設定し、該ホットプレートからの輻射熱を利用して上記(c)で得られた配線基板および特定金属化合物を含有する基材を加熱し、以下の(1)〜(3)の条件のもと、特定金属化合物を昇華させた(図2参照)。ここで、シード層80の形成には、所要時間にして30分以内、工程数にして1工程のみを必要とした。
【0104】
(1)上記(c)で得られた配線基板と特定金属化合物を含有する基材との離間距離:5mm(対向配置)、(2)特定金属化合物を含有する基材の設定温度:110℃、(3)上記(c)で得られた配線基板の設定温度:120℃。
(e)次いで、シード層80を給電層として、電解Cuメッキによりビアホール50および開口部60にCuからなる導体を充填し、シード層80上に導体層90を形成した。
(f)次いで、過剰に堆積したCuメッキからなる導電層90を化学機械研磨(CMP)法により研磨し、シード層80を露出させた。さらに研磨を続けて永久レジスト層70表面のシード層80を研磨除去して、永久レジスト層70の表面を露出させることにより、永久レジスト層70が有する開口部60に充填されたCuからなる導体と、隣接する開
口部60に充填されたCuからなる導体との間に永久レジスト層70を介在させ、隣接するそれぞれの配線パターン100を電気的に独立させて、プリント配線基板を製造した。
【0105】
〔評価〕
永久レジスト層70とシード層80との密着力を評価するために90度ピール試験を行った。測定結果を表1に示す。なお、測定は上記で得られたプリント配線基板と同等の結果を示す以下の90度ピール試験用基板を用いた。これは、測定を単純化するためのものである。
【0106】
平坦な基板上に感光性絶縁樹脂組成物(商品名「JSR ELPAC WPR−1201」、JSR(株)製)を塗布および乾燥して厚さ10μmの感光性レジスト層を形成した。次いで、前記レジスト層の全面を露光して硬化させ、厚さ10μmの永久レジスト層70を形成した。
【0107】
次いで、金属化合物を含有する基材として固体状(粉末状)のコバルト化合物Co2
CO)8を用いて、上記(d)と同様にこれを加熱して該コバルト化合物を昇華させ、永
久レジスト層70上に厚さ約100nmのシード層80を形成した。
【0108】
得られたシード層80の表面に1cm間隔の切り込みを形成し、端面からピールテスターでシード層80を剥離することにより、シード層80のピール強度(JIS C6481)を測定した。このピール強度は、シード層80を10cm引き剥がした中での最頻値である。
【0109】
[実施例2]
実施例1において、工程(c)と工程(d)との間で、さらにO2(100mL/分、
200W/60秒)によるドライエッチング処理(工程(iii))を実施したこと以外は実施例1と同様にして、プリント配線基板(90度ピール試験用基板を含む。以下同じ。)を製造し評価を行った。シード層80の形成には、所要時間にして30分以内、工程数にして1工程のみを必要とした。評価結果を表1に示す。
【0110】
[比較例1]
実施例2において、無電解Cuメッキによりシード層80を形成したこと以外は実施例2と同様にして、プリント配線基板を製造し評価を行った。シード層80の形成には、所要時間にして2時間以上、工程数にして14工程を必要とした。評価結果を表1に示す。
【0111】
[比較例2]
実施例1において、無電解Cuメッキによりシード層80を形成したこと以外は実施例1と同様にして、プリント配線基板を製造し評価を行った。シード層80の形成には、所要時間にして2時間以上、工程数にして14工程を必要とした。評価結果を表1に示す。
【0112】
[比較例3]
実施例2において、無電解Coメッキによりシード層80を形成したこと以外は実施例2と同様にして、プリント配線基板を製造し評価を行った。シード層80の形成には、所要時間にして2時間以上、工程数にして14工程を必要とした。評価結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

90度ピール試験の結果から、コバルト化合物Co2(CO)8を昇華させて得られた金属昇華物層からなるシード層を有する、実施例1〜2で得られたプリント配線基板は、無電解メッキ法により得られたシード層を有する比較例1〜3で得られたプリント配線基板と比べて、永久レジスト層が有する開口部の内壁とシード層との密着性に優れていることがわかる。さらに、ドライエッチング処理による表面粗化工程(iii)を設けた実施例2は、実施例1に比べて、永久レジスト層が有する開口部の内壁とシード層との密着性がより向上していることがわかる。
【0114】
さらに、実施例1〜2において、シード層を形成するに際して必要とする時間および工程数は、比較例1〜3に比べて極めて少なく、本発明のプリント配線基板の製造方法が、製造時間およびコストの面からも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のプリント配線基板の製造方法によれば、層間絶縁層に形成されたビアホール内壁および永久レジスト層が有する開口部内壁に、緻密な金属昇華物層からなるシード層が形成され、該シード層を介して導体金属が充填される。
【0116】
このため、配線パターンおよびビアホールに形成されたビアプラグが、シード層を介して下層配線パターン、層間絶縁層および永久レジスト層と強固に一体化されているので、非常に信頼性の高いプリント配線基板を製造することができる。
【0117】
また、本発明のプリント配線基板の製造方法は、無電解メッキあるいは高減圧装置を必要とするものではないので、その製造工程数を減らすことができる。このため、安価で信頼性の高いプリント配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、本発明のプリント配線基板の製造方法における、各配線形成工程を示す図(0)、(a)〜(f)である。
【図2】図2は、実施例のシード層形成工程において、コバルト化合物Co2(CO)8を昇華させるために用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
【0119】
10・・・基板
20・・・導体
30・・・下層配線パターン
40・・・層間絶縁層
50・・・ビアホール
60・・・開口部
70・・・永久レジスト層
80・・・シード層
90・・・導体層
100・・・配線パターン
110・・・ビアプラグ
120・・・金属化合物を含有する基材(粉末状のコバルト化合物)
130・・・ガラス
140・・・ホットプレート
150・・・不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に形成された下層配線パターンを被覆する層間絶縁層を形成する工程と、
(b)該層間絶縁層に、該下層配線パターンに達するビアホールを形成する工程と、
(c)該層間絶縁層上に、該ビアホール上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部を有する永久レジスト層を形成する工程と、
(d)コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を含有する基材を加熱して該金属化合物を昇華させ、少なくとも該ビアホールおよび開口部の内壁にシード層を形成する工程と、
(e)該ビアホールおよび開口部に導体を充填して、該シード層上に導体層を形成する工程と、
(f)該永久レジスト層が露出するまで該導体層表面を平坦に研磨し、該開口部に充填された導体を独立した配線パターンとする工程と
を含み、かつ
前記工程(d)において、前記シード層が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて100mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度を50〜110℃とし、前記シード層が形成される基板の設定温度を23〜120℃とすること
を特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記工程(d)において、前記シード層が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて10mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度を100〜110℃とすることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)と工程(d)との間に、前記層間絶縁層および永久レジスト層の表面ならびにビアホールおよび永久レジスト層が有する開口部の内壁表面を粗化する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
基板上に形成された下層配線パターンと、
該下層配線パターンを被覆する層間絶縁層と、
該層間絶縁層の上面から該下層配線パターンに達するビアホールと、
該層間絶縁層上に形成された、該ビアホール上方に位置し、かつ所要の配線パターンの形状に従う開口部を有する永久レジスト層と、
コバルト化合物、ルテニウム化合物およびタングステン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を含有する基材を加熱して該金属化合物を昇華させることにより、該ビアホールおよび開口部の内壁に形成されたシード層と、
該ビアホールに充填された導体からなるビアプラグと、
該開口部に充填された導体からなる配線パターンとを有し、
前記シード層が、前記シード層が形成される基板と前記金属化合物を含有する基材との離間距離が0を超えて100mm以内となるよう該基材を設置し、前記金属化合物を含有する基材の設定温度が50〜110℃、前記シード層が形成される基板の設定温度が23〜120℃なる条件で該基材を加熱して形成され、かつ
導体が充填されている該開口部以外の部分はシード層が研磨されて永久レジスト層の表面が露出していることを特徴とするプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−114193(P2010−114193A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284216(P2008−284216)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】