説明

プリント配線板の製造方法およびプリント配線板

【課題】3層,5層…と言った奇数層構成のプリント配線板を製造するにあたって、反りが生じないようにする。
【解決手段】少なくとも3層の回路配線を有するプリント配線板を製造するにあたって、内層回路配線形成用基板として、基材110の両面にそれぞれ第1銅箔層120,130を有するコア基板100を用い、コア基板100の一方の面に配線形成処理を施して第1銅箔層からなる所定の内層回路配線120aを形成するとともに、エッチング処理にてコア基板100の他方の面の全面から第1銅箔層130を除去したうえで、コア基板100の両面にそれぞれプリプレグ層141,142を介して外層回路配線形成用の第2銅箔層150,160を積層し、各第2銅箔層150,160に配線形成処理を施して外層回路配線150a,160aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3層に代表される奇数層構成の薄板プリント配線板の製造方法およびそれによって製造されたプリント配線板に関し、さらに詳しく言えば、奇数層構成特有の問題とされていた基板の反りを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器、特に携帯型電子機器等の分野では、近年ますます薄型化の要求が厳しくなっており、これに伴って電子機器に搭載されるプリント配線板にもミクロンオーダーでの薄型化が求められている。
【0003】
この要望に応える方法の一つとして、例えば4層構成のプリント配線板を1層減らして3層構成とすることが行われている。1層減らすことにより、例えば20μm程度の薄型化がはかれる。
【0004】
特許文献1には、3層構成のプリント配線板の製造方法の一例が記載されており、これについて、図4(a)〜(e)により説明する。
【0005】
まず、図4(a)に示すように、コア基板10として、基材11の両面に銅箔層12,13を有する両面銅張り積層基板を用いる。
【0006】
次に、図4(b)に示すように、コア基板10の両面に図示しない感光性フィルムを貼り付け、回路を形成する一方の銅箔層13のみに内層回路配線形成用のパターンを焼き付け、エッチングして内層回路配線13aを形成する。他方の銅箔層12は、外層回路配線形成用としてベタパターンのまま残す。
【0007】
両面を所定の薬剤にて黒化処理,黒化還元処理またはブラウン処理等の粗面化処理したのち、図4(c)に示すように、内層回路配線13aを形成した面側に、絶縁層としてのプリプレグ層14を介して外層回路配線形成用の銅箔層15を積層しプレスして、図4(d)に示す3層のプリント配線板20を作製する。
【0008】
そして、銅箔層12の粗化処理面を洗い流したのち、図4(e)に示すように、適宜穴明け,めっきして、銅箔層12,15にそれぞれ外層回路配線12a,15aを形成し、その後にソルダレジスト層等を形成して、3層のプリント配線板20の実基板を得る。
【0009】
【特許文献1】特開2002−261441号公報(段落〔0002〕参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の従来技術では、両面銅張り積層基板からなるコア基板10の片面側(内層回路配線形成面側)のみに、プリプレグ層14を介して外層回路配線形成用の銅箔層15を積層プレスするようにしているため、次のような問題が生ずる。
【0011】
すなわち、コア基板10の基材11とプリプレグ層14とでは、積層プレス時の基材収縮量(発生内部応力)に差がある。そのため、図5に示すように、プリント配線板20に反りが発生することがある。この反りは、後工程での内部応力の解放時にも現れる。
【0012】
この種の基板の反りは、製造工程間での搬送や取り扱い上のトラブルを引き起こす原因になるばかりでなく、部品実装位置がずれたりすると、自動機での部品実装時に誤実装を招きかねない。
【0013】
なお、この反りは、上記のようにして3層プリント配線板を製造するかぎり、3層プリント配線板の両面にさらにプリプレグ層を介して銅箔層を積層プレス(ビルドアップ)して、5層以上とする奇数層プリント配線板についても同様に発生する。
【0014】
したがって、本発明の課題は、3層,5層…と言った奇数層構成のプリント配線板を製造するにあたって、反りが生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも3層の回路配線を有するプリント配線板を製造するにあたって、内層回路配線形成用基板として、基材の両面にそれぞれ第1銅箔層を有するコア基板を用い、上記コア基板の一方の面に配線形成処理を施して上記第1銅箔層からなる所定の内層回路配線を形成するとともに、エッチング処理にて上記コア基板の他方の面のほぼ全面から上記第1銅箔層を除去したうえで、上記コア基板の両面にそれぞれプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第2銅箔層を積層し、上記各第2銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成することを特徴としている。
【0016】
上記内層回路配線形成用基板として、基材の一方の面に第1銅箔層を有する片面銅張り積層基板からなるコア基板を用いてもよく、この場合には、上記コア基板の一方の面に配線形成処理を施して上記第1銅箔層からなる所定の内層回路配線を形成したうえで、上記コア基板の両面にそれぞれプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第2銅箔層を積層し、上記各第2銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成する。
【0017】
本発明には、上記各第2銅箔層よりなる外層回路配線を内層回路配線として、その各内層回路配線の上にさらにプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第3銅箔層を積層し、上記第3銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成する、少なくとも5層構成のプリント配線板の製造方法も含まれる。
【0018】
上記プリプレグ層に代えて、ビルドアップ用の絶縁樹脂が用いられてもよい。また、本発明には、上記したプリント配線板の製造方法により製造された奇数層構成のプリント配線板も含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内層回路配線形成用基板として、基材の両面にそれぞれ第1銅箔層を有する両面銅張り積層基板からなるコア基板を用い、コア基板の一方の面に配線形成処理を施して第1銅箔層からなる所定の内層回路配線を形成するとともに、エッチング処理にてコア基板の他方の面のほぼ全面から第1銅箔層を除去するか、もしくは最初からコア基板として片面銅張り積層基板を用いてその第1銅箔層に配線形成処理を施して第1銅箔層からなる所定の内層回路配線を形成したうえで、コア基板の両面にそれぞれプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第2銅箔層を積層し、各第2銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成するようにしたことにより、コア基板の両面にプリプレグ層と銅箔層とを含む同一構成の層が対称的に積層されることになるため、積層プレス時、およびその後工程での内部応力の解放に伴う基板の反りを最小限にとどめることができる。すなわち、コア基板の両面側における内部応力の均等化がはかれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1(a)〜(e)は本発明によるプリント配線板の製造方法を工程順に説明するための模式図、図2は本発明の製造に用いられる各部材を分離して示す断面図、図3は本発明により製造された最終製品形態の一例を示す拡大断面図である。
【0021】
例えば、3層のプリント配線板を製造するにあたって、本発明では、まず図1(a)に示すように、コア基板100として、基材110の両面に銅箔層(第1銅箔層)120,130を有する両面銅張り積層基板を用いる。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、コア基板100の一方の銅箔層120に配線形成処理を施して内層回路配線120aを形成し、他方の銅箔層130についてはエッチング処理によりその全面を除去して片面基板101とする。
【0023】
なお、コア基板100として、片面銅張り積層基板を用い、その銅箔層に配線形成処理を施して内層回路配線120aを形成してもよい。配線形成処理には、例えば写真蝕刻技術(フォトリソグラフィ)を適用できる。
【0024】
次に、片面基板101の両面を所定の薬剤にて黒化処理等の粗面化処理したのち、図1(c)に示すように、片面基板101の両面に、それぞれ絶縁層としてのプリプレグ層141,142を介して外層回路配線形成用の銅箔層(第2銅箔層)150,160を積層しプレスして、図1(d)に示す3層のプリント配線板102を作製する。
【0025】
そして、必要に応じて、各銅箔層150,160をハーフエッチングして層厚をより薄くしたのち、図1(e)に示すように、適宜穴明け,めっきして、銅箔層150,160にそれぞれ配線形成処理を施して外層回路配線150a,160aを形成し、その後にソルダレジスト層等を形成して、3層のプリント配線板102の実基板を得る。
【0026】
このように、本発明によれば、コア基板100(片面基板101)の両面に、プリプレグ層141,142と銅箔層150,160とを含む同一構成の層が対称的に積層されることになるため、積層プレス時、およびその後工程での内部応力の解放に伴う基板の反りを最小限にとどめることができる。
【0027】
なお、銅箔層150,160にそれぞれ配線形成処理を施して外層回路配線150a,160aを形成したのち、外層回路配線150a,160aを内層回路配線として、それらの上にそれぞれプリプレグ層を介してさらに銅箔層を積層してプレスすることにより、5層構成のプリント配線板を得ることができる。
【0028】
同様にしてさらに、プリプレグ層を介して銅箔層を積層してプレスすることにより、7層,9層と言った奇数層構成のプリント配線板を得ることができる。また、上記実施形態では、プリプレグ層141,142を用いているが、これに代えてビルドアップ用の絶縁樹脂を用いてもよい。
【実施例】
【0029】
次に、図2,図3により、上記の3層プリント配線板102を製造するにあたって実際に用いられる各部材および最終製品形態の実寸法の一例について説明する。
【0030】
コア基板100は、松下電工社製のコア材R−F775(ポリイミド系フレキ材)で、基材110の厚さは25μm、銅箔層120,130の各厚さは18μmで、片側の銅箔層130を除去したのちの厚さは25+18=43μm。
【0031】
プリプレグ層141,142は、松下電工社製のプリプレグR−1551Mで、厚さは40μmもしくは30μmのいずれか一方または双方を使用。
【0032】
銅箔層150,160には12μm厚のものを用いたが、積層プレス後にハーフエッチングして7μm厚(5μm削減)とし、外層回路配線150a,160aの形成後に20μm厚の銅めっきを形成した。したがって、銅箔層150,160の厚さは7+20=27μm。
【0033】
図3に示すように、最終製品形態では外層回路配線150a,160a上に20μm厚のソルダレジスト層171,172を形成した。
【0034】
したがって、プリプレグ層141,142の厚さをそれぞれ40μmとした場合における3層プリント配線板102の総厚は、図3の上から順に20+27+40+43+40+27+20=217μm、
プリプレグ層141,142の厚さをそれぞれ30μmとした場合における総厚は、217−20=197μm、
一方のプリプレグ層141を40μmとし、他方のプリプレグ層142を30μmとした場合における総厚は、217−10=207μmとなる。
【0035】
本発明の製造工程は、コア基板として両面銅張り積層基板を用い、その両面に内層回路配線形成したのち、コア基板の両面にそれぞれプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の銅箔層を積層してプレスする4層プリント配線基板と同様の工程を辿るが、コア基板の片面の銅箔層の全てがエッチングにて除去されているため、実質3層構成となり、コア基板の片面の銅箔層がない分、薄くすることができる。
【0036】
また、図3を参照して、内層回路配線120aと一方の外層回路配線160aとの間のレーザビアは、スキップビア構造なるため、メッキを必要とするIVHを不要とすることができる。
【0037】
なお、図1(b)に示す工程で、コア基板100の他方の銅箔層130を除去する際、コア基板100の捨て板部(製品外)には銅箔が残されてもよいし、また、当該配線板の外縁やごく一部分に銅箔が残されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるプリント配線板の製造方法を工程順に説明するための模式図。
【図2】本発明において製造に用いられる各部材を分離して示す断面図。
【図3】本発明により製造された最終製品形態の一例を示す拡大断面図。
【図4】従来の3層プリント配線板の製造工程を示す模式図。
【図5】従来例で作製された3層プリント配線板の問題点を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0039】
100 コア基板
110 基材
120,130 第1銅箔層
120a 内層回路配線
141,142 プリプレグ層
150,160 第2銅箔層
150a,160a 外層回路配線
171,172 ソルダレジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層の回路配線を有するプリント配線板を製造するにあたって、内層回路配線形成用基板として、基材の両面にそれぞれ第1銅箔層を有するコア基板を用い、
上記コア基板の一方の面に配線形成処理を施して上記第1銅箔層からなる所定の内層回路配線を形成するとともに、エッチング処理にて上記コア基板の他方の面のほぼ全面から上記第1銅箔層を除去したうえで、
上記コア基板の両面にそれぞれプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第2銅箔層を積層し、上記各第2銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
少なくとも3層の回路配線を有するプリント配線板を製造するにあたって、内層回路配線形成用基板として、基材の一方の面に第1銅箔層を有する片面銅張り積層基板からなるコア基板を用い、
上記コア基板の一方の面に配線形成処理を施して上記第1銅箔層からなる所定の内層回路配線を形成したうえで、
上記コア基板の両面にそれぞれプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第2銅箔層を積層し、上記各第2銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
上記各第2銅箔層よりなる外層回路配線を内層回路配線として、その各内層回路配線の上にさらにプリプレグ層を介して外層回路配線形成用の第3銅箔層を積層し、上記第3銅箔層に配線形成処理を施して外層回路配線を形成して少なくとも5層構成とする請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
上記プリプレグ層に代えて、ビルドアップ用の絶縁樹脂を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法により製造された奇数層構成のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−56373(P2010−56373A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221036(P2008−221036)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】