説明

プリンヌクレオシド及びマンガンを含有する組成物並びにその使用

本発明は、1種又は複数のプリンヌクレオシド(例えば、アデノシン又はウリジンなど)及び抗酸化物質(例えば、マンガンなど)を含む組成物とタンパク質とを接触させることによってタンパク質の機能を保存する方法を包含する。さらに、本発明は、1種又は複数のプリンヌクレオシド(例えば、アデノシン又はウリジンなど)及び抗酸化物質(例えば、マンガンなど)を含む組成物の医薬有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、放射線被曝の副作用を治療及び/又は予防する方法並びに放射線治療の副作用を予防する方法を包含する。組成物はD.ラジオデュランス抽出物を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本出願は、米国特許仮出願第60/935,494号明細書(2007年8月16日に出願)の優先権を主張し、その全体を援用する。
【0002】
[政府支援]
本発明は、米国エネルギー省、科学局、生物環境修復研究所(BER)、環境修復科学プログラムからの助成DE−FG02−04ER63918及び空軍科学研究局からの助成FA9559−07−1−0128によって資金提供された研究から一部なされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
[発明の背景]
極めて放射線耐性なデイノコックス科は、電離放射線(IR)(10kGy)、紫外線(UV)(1kJ/m)及び乾燥(数年)への急性曝露に対して生き延びることができ、慢性IR(60Gy/時)の下で増殖できる、20種を越える様々な種から成り立つ。特に、デイノコックス・ラジオデュランスは、哺乳類細胞にとって細胞毒性で致命的な線量の1000倍を超えるγ線への曝露に対して生き延びることができる、極めて電離放射線(IR)耐性な細菌である。
【0004】
例えば、D.ラジオデュランスなどの極めて耐性な細菌については、高線量のIR後の生存、照射中にタンパク質が酸化から保護されていることに起因するとされてきており、その結果、酵素修復システムが、細胞タンパク質がカルボニル化に高い感受性である感受性細菌中よりも回復の間はるかに効率的に生き残り、機能するようになる。サイエンス誌に公表された報告において(Dalyらの(2004年)、Accumulation of Mn(II)in Deinococcus radiodurans facilitates gamma−radiation resistance、Science 306:925〜1084頁)、細胞内マンガン(II)は、電離放射線への曝露の間、DNAではなく、タンパク質を保護することによって放射線耐性の促進に関与しており、PLoS Biologyに公表された第2の報告において(Dalyらの(2007年)、Protein oxidation implicated as the primary determinant of bacterial radioresistance、PLoS Biology 5(4)e92)、放射線耐性は、非酵素的機構を介した照射中のタンパク質保護と正に相関していた。
【0005】
D.ラジオデュランスと異なり、ほとんどのタンパク質は放射線耐性ではない。同様に、真核生物、原核生物又は哺乳動物(例えば、ヒト)であるかにかかわらず、ほとんどの細胞はまた、放射線耐性ではない。したがって、放射線への曝露は、タンパク質の構造及び/又は機能に相当な損傷を与える。例えば、電離放射線は、多くの様々な種の動物及び人体のほぼすべての部分における癌を誘導(発症)させることが明らかである。
【0006】
ヒトにおいて、著しい放射線への過剰曝露は、「放射線宿酔」又は「クリーピングドーズ」とも呼ばれる放射能中毒に至らしめる。用語は通常、短期間に大用量の放射線によって生じた急性障害を指すために使用されるが、これはまた、低レベルの放射線に長期間曝露されても起こる。「放射線宿酔」の臨床上の名前は、CDCよって記載されるように、急性放射線症候群である。慢性放射線症候群は存在するが、非常に稀である。これは、初期のラジウム源製造現場及び初期のソビエト核計画における労働者の間で観察された。短い曝露は急性放射線症候群に至らしめ、慢性放射線症候群は、持続的な高レベルの曝露を要する。
【0007】
ヒトは通常、電子機器及び携帯電話からの放射線、並びに自然バックグラウンド放射線を含む、放射線を日常生活において浴びている。例えば、原子力発電所の労働者又は軍隊の隊員など、放射性元素に非常に接近している個人は、特に、高線量の放射線を浴びる可能性がある。さらに、放射線は、X線などの診断検査及び癌の治療のための放射線治療に使用される。
【0008】
現在、ヒトを治療するために適切な放射線防護剤は非常に少なく、存在するものは(例えば、アミホスチン)、細胞毒性で、深刻な副作用(例えば、意識消失、頻呼吸又は不規則呼吸、そう痒、吐き気及び嘔吐)を有する。
【0009】
放射線の大量な曝露を考えると、非毒性で、タンパク質の機能を保護し、特にヒトへの使用に適している放射線防護剤が非常に必要とされている。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有する組成物を用いた放射線防護の方法を提供する。これらの方法は、放射線の損傷効果からインビトロ及びインビボでタンパク質を保護するのに適している。
【0011】
本発明の1つの実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物の医薬有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象における放射線被曝の副作用を治療及び/又は予防する方法である。方法は、多くの種類の放射線への曝露の副作用を治療及び/又は予防するのに適している。1つの実施形態において、放射線は、紫外線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線からなる群から選択される。プリンヌクレオシドは、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物であってよい。抗酸化物質は、マンガン、MnCl、リン酸マンガン及びビタミンE及び/又はそれらの混合物であってよい。本発明の1つの実施形態において、抗酸化物質は、リン酸マンガンである。別の実施形態において、抗酸化物質は、リン酸が別に添加されるMnClである。代わりの実施形態において、組成物は、アミノ酸、好ましくは、アラニン、バリン及び/又はロイシンの任意の1種をさらに含む。組成物は、D.ラジオデュランス抽出物であってもよい。別の実施形態において、組成物は、放射線治療の1種又は複数の副作用を予防する。組成物は約1mMから約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを含有してもよい。組成物はまた、約1mMから約12.5mMのマンガンを含有してもよい。
【0012】
本発明の別の実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物とタンパク質を接触させることを含む、タンパク質の機能を保護する方法である。1種又は複数のプリンヌクレオシドは、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物であってよい。1つの実施形態において、プリンヌクレオシドはアデノシン及び/又はウリジンである。別の実施形態において、組成物は、約1から約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを含有する。抗酸化物質は、マンガン、MnCl、リン酸マンガン及びビタミンEであってもよい。本発明の1つの実施形態において、抗酸化物質は、リン酸マンガンである。別の実施形態において、抗酸化物質は、別にリン酸塩を添加されるMnClである。1つの実施形態において、組成物は、約0.01mMから約12.5mMの抗酸化物質(例えば、マンガンなど)を含有する。別の実施形態において、組成物は、アデノシン、ウリジン、ロイシン、アデニン及びマンガンを含有する。さらに別の実施形態において、組成物は、約1から約15mMのアデノシン及び約1mMから約12.5mMのMnClを含有する。組成物はまた、アミノ酸、例えば、ロイシン、バリン及びアラニンなどを含有してもよい。乾燥の間、又はタンパク質が放射線(例えば、紫外線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線など)に曝露されているとき、方法は、タンパク質(例えば、酵素など)の機能を保存する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物とタンパク質を接触させることを含む、タンパク質を保存する方法である。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含むD.ラジオデュランス抽出物の医薬有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象における放射線被曝の副作用を治療及び/又は予防する方法である。方法は、様々な源からの放射線被曝を処置するのに適している。1つの実施形態において、放射線は、紫外線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線である。1種又は複数のプリンヌクレオシドは、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物であってもよい。1種又は複数の酸化物質は、マンガン、MnCl、リン酸マンガン及びビタミンEであってもよい。本発明の1つの実施形態において、抗酸化物質は、リン酸マンガンである。別の実施形態において、抗酸化物質は、リン酸塩が別に添加されるMnClである。D.ラジオデュランス抽出物はまた、アミノ酸、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン又はそれらの混合物を含有してもよい。1つの実施形態において、方法は、放射線治療の1種又は複数の副作用を予防する。D.ラジオデュランス抽出物は、約1mMから約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを含有してもよい。抽出物はまた、約1mMから約12.5mMのマンガンを含有してもよい。
【0015】
D.ラジオデュランス抽出物は、D.ラジオデュランス培養物を遠心分離によって採取し、D.ラジオデュランス培養物を放置してD.ラジオデュランス溶解物を産生し、D.ラジオデュランス溶解物を洗浄し、上清溶液を産生するのに十分な時間と条件下でD.ラジオデュランス溶解物を遠心分離し、3キロダルトン未満のフィルターに上清溶液を通して、約15から45分間上清溶液を煮沸することによって生成され得る。抽出物は、ブタンに可溶であり、煮沸耐性で無細胞である。
【0016】
前述の概要、並びに以下の発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されよう。本発明を例証する目的で、本発明の実施形態を図面に示す。しかし、本発明は、示された、正確な構成、実施例及び手段に限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】D.ラジオデュランス限外濾過液中の化合物が、タンパク質を保護するが、シュードノマス・プチダ(PP)、大腸菌(EC)及びサーマス・サーモフィラス(TT)からの限外濾過液中の化合物は保護しないことを示す図である。タンパク質を含まない、限外濾過されたD.ラジオデュランス(DR)細胞抽出物は、電離放射線(IR)誘発のタンパク質酸化をインビトロで防ぐが、放射線感受性の細菌であるシュードモナス・プチダ(PP)、大腸菌(EC)及びサーマス・サーモフィラス(TT)からの抽出物は、防がなかった。精製された大腸菌タンパク質を、照射中に、PP、EC、TT又はDRの限外濾過された抽出物の中でインキュベートし、タンパク質カルボニル試験にかけた。クーマシー染色したポリアクリルアミド変性ゲル;カルボニルウエスタンブロット法、タンパク質の酸化及び保護を明らかにする(信号なし)。
【図2】アデノシン及びウリジンが、γ線誘発のタンパク質破損及びカルボニル化(酸化)を防ぐことを示す図である。アデノシン及びウリジンは、電離放射線(IR)誘発のタンパク質酸化をインビトロで防ぐ。精製された大腸菌タンパク質を指示薬剤でインキュベートした。クーマシー染色したポリアクリルアミド変性ゲル;カルボニルウエスタンブロット法、タンパク質の酸化(黒)及び保護(信号なし)を明らかにする。例えば、大腸菌タンパク質をリン酸カリウム緩衝液(PPB 25mM)+15mMのアデノシン(Ad)中で照射したとき、リン酸カリウム緩衝液単独と比較して、照射の間、タンパク質は酸化から大いに保護された。
【図3】アデノシン及びマンガン含有組成物、即ち、D.ラジオデュランスに基づく放射線防護組成物の放射線防護特性を示す図である。I−DNAを用いて指示された処理及びインキュベーションした後、制限酵素BamHIの放射後機能性。例えば、リン酸カリウム緩衝液(PPB)25mM+アデノシン(Ad)3mM+MnCl 1mM中でBamHIに放射した場合、17,500Gyに曝露後、酵素は機能を保つが、リン酸カリウム緩衝液単独、アデノシン単独又はMnCl単独中でインキュベーションした場合、機能を保つことはない。
【図4】確立した放射線防護化合物と比較して、ヒトT細胞のD.ラジオデュランスタンパク質を含まない細胞抽出物による放射線防護を示す図である。8Gy(0.6Gy/mm)に曝露する24時間前に、D.ラジオデュランス抽出物(4倍濃縮された、100μl/ml)、アミホスチン(200μg/ml)又は5−AED(10mg/ml)をヒトジャーカットT細胞に添加した。放射から24(図4A)、48(図4B)及び72時間(図4C)後の細胞の生存率をトリパンブルー色素排除法によって測定した。P<0.05対Veh、DRE及びDRE+IR、スチューデントt検定によって測定した。CON:非放射、IR:γ線、VEH:媒体として水、DRE:D.ラジオデュランス抽出物、AMF:アミホスチン、5−AED:5−アンドロステンジオール。
【図5】インビボ乾燥誘発の酸化タンパク質損傷を示す図である。乾燥の6日後、指示された菌株からタンパク質を単離した。20mgのサンプルをポリアクリルアミー変性ゲル電気泳動にかけ、クーマシーブルーで染色した(図5A)。二重非染色ゲルはカルボニル基の試験を受けた。略語:O=酸化タンパク質標準、S=タンパク質サイズ標準。デイノコックス種は、ボールド体である:R1(型−菌株);1A1;1A6;3B1;5A4(表面分離株)及び7b−1。非デイノコックス種:4A4メチロバクテリウム;4A6、チェラトコックス、So、S.オネイデンシス。図5Cは、細胞内Mn/Fe収縮、10%IR生存(D10)及び乾燥の1、2、及び3週間(w)後の生存について対応する値が表になっていることを示す。図5Dは、D.ラジオデュランスタンパク質を含まない細胞抽出物によって、乾燥誘発の不活性化から制限酵素のインビトロ防護を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般的な説明
本発明者らは、D.ラジオデュランスのラジオ耐性を研究し、放射線防護特性を示す、超精製された、タンパク質を含まない、細胞抽出物を調製した。したがって、本発明は、D.ラジオデュランス細胞を含まない抽出物の放射線防護成分の発見とそのような成分を含有する人工組成物に一部基づく。
【0019】
特に、出願人は、D.ラジオデュランスの超精製され、タンパク質を含まない細胞抽出物が、γ線に曝露されたタンパク質を極めて放射線防護することを示した。アデノシン及びウリジンは、D.ラジオデュランスに蓄積されるが、これらのヌクレオシドは、放射線感受性細菌では検出不能であった。インビトロで、>10,000Gyの線量で、ヌクレオシドがタンパク質を大いに保護し、電離放射線(IR)誘発のタンパク質のカルボニル化を防ぎ、Mn(II)の存在下で機能酵素を保存することが示された。アデノシン、マンガン及びリン酸塩の放射線防護組成物が、開発された。驚くべきことに、D.ラジオデュランス抽出物は、他の確立した放射線防護化合物よりもはるかに強い、培養されたヒトT細胞の強力な放射線防護剤であることが示された。
【0020】
本発明は、合成放射線防護組成物又はD.ラジオデュランス由来の放射線防護組成物、及び放射線損傷からタンパク質及び/又は細胞を保護するためこれらの組成物を使用する方法を提供する。これらの組成物は、組成物並びにヒトなどの対象における放射線損傷を防ぐのに有用である。特に、本発明は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有する放射線防護組成物を提供する。放射線防護組成物は、ロイシン、アラニン及び/又はバリンをさらに含有してもよい。ロイシンは、Mn(II)の存在下で過酸化水素の除去に強く関係し、ウリジン及びアデノシンを含むより大きな細胞内錯体の成分であってもよい。インビトロでの強力な証拠は、アデノシン及びマンガンの間の相乗効果を示す。アデノシン及びマンガンの化学量論は、アポトーシス試験のために最適化し得る。
【0021】
出願人は、アデノシン単独及びMn(II)単独は、哺乳動物の細胞株にインビボで放射線防護であることを示した。
【0022】
特定の理論にまったくこだわらないが、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)及び抗酸化物質(例えば、マンガン)を含む組成物が、タンパク質の活性部位を保護することによって放射線保護剤として機能すると考えられている。プリンヌクレオシド、例えば、アデノシン(及び場合により、ウリジンとともに)は、細胞内の蓄積に放射線防護効果を介在し、放射線誘発のタンパク質酸化を阻害し、Mn(II)の存在下で酵素機能を保存する。アデノシンは、タンパク質を保護し、したがって、ROSのサブセットを除去すると考えられている。
【0023】
さらに、特定の理論にまったくこだわらないが、好気性又は嫌気性の照射条件下で、スーパーオキシドは容易に細胞膜を通過しないので、照射中に、スーパーオキシドは細胞に蓄積し得ると考えられている。スーパーオキシドはDNAと反応しないが、スーパーオキシドは、曝露された2Fe−2S又は4Fe−4Sクラスターで酵素を損傷し、不活性化し、Fe(II)を放出する。細胞中の鉄が有する問題は、鉄が非結合及び「遊離」である場合、鉄が過酸化水素の存在下でフェントン反応を引き起こし、ヒドロキシラジカルを発生させることである。したがって、ヒドロキシラジカルの発生のせいだけでなく、Fe依存酵素からFeが失われると、それらが機能する生化学的経路の障害に至るので、結合Fe(II)を遊離させる条件は、非常に危険である。本出願の方法は、これらの危険な条件に対して最適に保護する。
【0024】
特に別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等である、任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載されている。
【0025】
本明細書に使用する場合、特に明確に指示がない限り、「1つ(a又はan)」は少なくとも1つを意味する。用語「約」は、特に指示がない限り、該用語によりその値の上下に最大10%変更される値を指す。例えば、用語「約5%(w/w)」は、4.5%(w/w)から5.5%(w/w)までの範囲を意味する。
【0026】
タンパク質の機能を保存する方法
本発明は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物とタンパク質を接触させることによってタンパク質の機能を保存する方法を提供する。本発明の1つの実施形態は、例えば、γ線などの放射線の極限条件にタンパク質を曝露する場合、タンパク質の機能を保存する方法である。本発明の別の実施形態において、方法は、乾燥の間タンパク質の機能を保存する。
【0027】
タンパク質の機能を保存する方法は、10kGyを越える線量、例えば17.5kGyなど、高線量の放射線にタンパク質を曝露する場合、放射線防護を提供する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む、細胞培養中のタンパク質の機能を保護する方法を提供する。細胞培養は、原核生物又は真核生物のものであってよい。1つの実施形態において、細胞培養は、哺乳動物のものである。
【0029】
任意のプリンヌクレオシドが組成物に使用されてもよい。適切なプリンヌクレオシドとしては、限定するわけではないが、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、プリンヌクレオシドは、アデノシン又はウリジンである。1つの実施形態において、組成物は、アデノシンを含有する。本発明の他の実施形態において、組成物は、ウリジンを含有する。組成物中のプリンヌクレオシドの量は、その使用に応じて変化する。当業者は、適切な量を決定することができる。本発明のいくつかの実施形態において、プリンヌクレオシドの量は、約0.01mMから約15mMまで、約0.1mMから約1mMまで、約1mMから約10mMまで、約1mMから約15mMまでの範囲である。1つの実施形態において、1種又は複数のプリンヌクレオシドの濃度は、約1mMから約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを構成する。
【0030】
様々な抗酸化物質が組成物に使用できる。適切な抗酸化物質には、マンガン、ビタミンE及びリン酸マンガンが挙げられる。本発明の1つの実施形態において、抗酸化物質はマンガンである。別の実施形態において、抗酸化物質はMnClである。さらに別の実施形態において、抗酸化物質はビタミンEである。組成物中の抗酸化物質の量は、その使用に応じて変化する。当業者は、適切な量を決定することができる。1つの実施形態において、組成物は、約0.01mMから約15mMの抗酸化物質を含有する。別の実施形態において、組成物は、約0.01mMから約12.5mMを含有する。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、肝要な抗酸化物質はリン酸マンガンであり、リン酸マンガンは、ほぼミリモル濃度で提供されてもよい。別の実施形態において、抗酸化物質は、MnClであり、リン酸塩は別に添加される。組成物中の抗酸化物質の量は、その使用に応じて変化する。当業者は、適切な量を決定することができる。1つの実施形態において、組成物は、約0.01mMから約15mMのマンガン(Mn(II))イオン及び1mMから約25mMのリン酸緩衝液を含有する。
【0032】
組成物は、細胞保護特性を示す1種又は複数のアミノ酸をさらに含有してもよい。本発明の1つの実施形態において、組成物は、ロイシン、バリン及びアラニンからなる群から選択される少なくとも1種又は複数のアミノ酸をさらに含有する。別の実施形態において、アミノ酸はロイシンである。代わりの実施形態において、アミノ酸はグリシンである。
【0033】
1つの実施形態において、組成物は、アデノシン、ウリジン、ロイシン、アデニン及びマンガンを含む。代わりの実施形態において、組成物は、約1から約15mMのアデノシン及び約1から約12.5mMのMnClを含む。別の実施形態において、組成物は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有するD.ラジオデュランス抽出物を含む。
【0034】
任意のタンパク質の機能は、本発明の方法を使用することによって保存され得る。本発明の好ましい実施形態において、タンパク質は酵素である。本開示の方法は特に、紫外線放射及び加齢に関係するタンパク質の酸化を防ぐことに有用である。さらに、方法はまた乾燥の間タンパク質の機能性を保存し、よって、乾燥して保管される、乾燥血液製品及び酵素に基づく薬物の有効期間を延ばすのに役立つ。
【0035】
本発明の方法は、放射線に曝露されている間、タンパク質の機能(例えば、酵素活性など)を最適に保存する。本発明の1つの実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物とタンパク質(例えば、酵素など)を接触させることを含む、保存方法である。
【0036】
本発明の別の実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物と燃料電池の成分を接触させることを含む、微生物燃料電池及び酵素駆動燃料電池の耐久性及び寿命を増加する方法である。
【0037】
本方法は、限定するわけではないが、Fe−S錯体(代謝酵素など)を有するタンパク質を含む、多くのタンパク質の機能、及びレドックス活性(4Fe−4S)クラスターに依存する酵素修復機能を保存するのに適していてもよい。例となるタンパク質には、活性酸素種(ROS)の生成に関係するタンパク質群、生合成の必要性を減少させ、ROSの生成を抑制することもある輸送タンパク質前駆体、ROSに対して防御するタンパク質、損傷した分子(非DNA)及びレドックス調節並びにMn及びFe依存システムの修復に関与するタンパク質が挙げられる。他の例となるタンパク質は、Ghosalらの(2005)、FEMS Microbiology Reviews 29:361〜375頁に記載され、その開示の全体が本明細書に援用される。
【0038】
放射線被曝の作用を治療又は予防する方法
本発明はまた、放射線被曝の作用を治療又は予防する方法を提供する。方法は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む治療剤で放射線被曝の作用を治療又は予防することを含む。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、放射線被曝は、UV曝露によるものである。本発明の別の実施形態において、放射線被曝は、電離放射線によるものである。本発明の別の実施形態において、放射線被曝は慢性である。
【0040】
本明細書に使用する場合、用語「治療剤」は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物並びに、他の薬学的に許容できる成分、例えば、薬学的に許容できる担体などを含有する製剤を包含するものとする。
【0041】
本明細書に使用する場合、用語「放射線被曝」は、損傷を引き起こすのに十分な線量及び期間で任意の放射線に曝露されることを意味するものとする。放射線被曝としては、限定するわけではないが、紫外線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線に対する曝露が挙げられる。
【0042】
1つの実施形態において、本発明は、放射線治療の副作用を治療又は予防する方法を提供する。本明細書に使用する場合、用語「放射線治療」は、癌細胞を殺す及び腫瘍を縮小させるために特定のタイプのエネルギー(例えば、電離放射線など)を使用することを指すものとする。用語「放射線治療」は、限定するわけではないが、外部放射線療法(例えば、術中放射線療法及び予防的頭蓋照射(PC)など)、内部放射線療法(例えば、間質放射線療法、腔内放射線治療又は管腔内放射線治療など)、全身放射線治療、定位的放射線治療(又は定位手術的照射)、3次元(3−D)原体照射法、強度変調放射線治療(IMRT)を含む、すべてのタイプの放射線治療を含む。さらに、用語「放射線治療」はまた、限定するわけではないが、X線、γ線、粒子線、陽子ビーム治療及び高エネルギー光子線を含む、様々な放射線源を用いた放射線治療を包含する。放射線治療は、固形腫瘍(例えば、脳、胸部、頚部、喉頭、肺、すい臓、前立腺、皮膚、脊椎、胃、子宮又は軟組織肉腫の癌など)を含む、様々な癌の治療に使用される。放射線治療はまた、白血病及びリンパ腫(例えば、それぞれ、血液形成細胞の癌及びリンパ系の癌)並びに皮膚、頚部及び甲状腺の癌を治療するために使用される。
【0043】
本明細書に使用する場合、用語「放射線治療の副作用」は、放射線治療を受ける対象が経験する任意の副作用を指すものとする。このような副作用としては、限定するわけではないが、疲労感及び皮膚反応、貧血、打撲又は出血のリスクの増加、生殖能力の低下、口の乾燥、食欲及び体重の低下、脱毛などが挙げられる。
【0044】
「治療が必要な対象」は、生死にかかわる可能性のある、又は動物の健康を害する又は寿命を縮める、細菌感染症を有する動物である。動物は、魚、鳥又は哺乳動物であってもよい。例となる哺乳動物には、ヒト、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ及びネコ)及び例えば動物園にいる展示動物が挙げられる。好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0045】
本明細書に使用する場合、用語「治療する」、「治療」及び「治療(療法)」は、治癒的な治療、予防のための治療及び予防的治療を指す。
【0046】
本明細書に使用する場合、特に他に記載しない限り、組成物という用語は、限定するわけではないが、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有する医薬組成物及び栄養価の高い組成物を包含することを意味する。組成物はまた、1種又は複数の「賦形剤」を含有してもよく、賦形剤は、薬理活性又は、疾患の診断、治癒、軽減、治療若しくは予防における又は人体の構造又は任意の機能に影響を与える他の直接作用を持たない「不活性成分」又は「化合物」である。
【0047】
「薬学的に許容できる」成分は、過度に有害な副作用(例えば、毒性反応、刺激反応及びアレルギー反応など)なく、ヒト、動物及び/又は植物に使用するのに適しているものであり、適当な便益/危険比に相応している。
【0048】
治療剤は任意のプリンヌクレオシドを含有してもよい。適切なプリンヌクレオシドには、限定するわけではないが、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、プリンヌクレオシドは、アデノシン又はウリジンである。1つの実施形態において、治療剤はアデノシンを含有する。本発明の他の実施形態において、治療剤はウリジンを含有する。
【0049】
治療剤は、様々な適切な抗酸化物質を含有してもよい。適切な抗酸化物質には、限定するわけではないが、マンガン、ビタミンE及びリン酸マンガンが挙げられる。本発明の1つの実施形態において、抗酸化物質はマンガンである。別の実施形態において、抗酸化物質はMnClである。さらに別の実施形態において、抗酸化物質はビタミンEである。
【0050】
本発明の1つの実施形態において、肝要な抗酸化物質は、ほぼミリモル濃度で提供できるリン酸マンガンである。別の実施形態において、抗酸化物質は、リン酸塩が別に添加される、MnClである。組成物中の抗酸化物質の量は、その使用に応じて変化する。当業者は適切な量を決定することができる。1つの実施形態において、組成物は、約0.01mMから約15mMのマンガン(Mn(II))イオン及び1mMから約25mMのリン酸緩衝液を含有する。
【0051】
治療剤中のプリンヌクレオシド及び抗酸化物質の量は変化する。対象、放射線被曝の期間、放射線被曝の量など、様々な因子に応じて、当業者は適切な量を決定することができる。本発明のいくつかの実施形態において、プリンヌクレオシドの量は、約0.01mMから約15mMまで、約0.1mMから約1mMまで、約1mMから約10mMまで、約1mMから約15mMまでの範囲である。1つの実施形態において、1種又は複数のプリンヌクレオシドの濃度は、約1mMから約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを含む。別の実施形態において、抗酸化物質の量は、約0.01mMから約15mMまでの範囲である。別の実施形態において、治療剤は、約0.01mMから約12.5mMを含有する。
【0052】
治療剤は、細胞保護特性を示す1種又は複数のアミノ酸をさらに含有してもよい。本発明の1つの実施形態において、治療剤は、ロイシン、バリン及びアラニンからなる群から選択される少なくとも1種又は複数のアミノ酸をさらに含有する。別の実施形態において、アミノ酸はロイシンである。別の実施形態において、アミノ酸はグリシンである。
【0053】
1つの実施形態において、治療剤は、アデノシン、ウリジン、ロイシン、アデニン及びマンガンを含む。代わりの実施形態において、治療剤は、約1mMから約15mMのアデノシン及び約1mMから約12.5mMのMnClを含む。別の実施形態において、治療剤は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有するD.ラジオデュランス抽出物を含む。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態において、治療剤は、1種又は複数のプリンヌクレオシド(例えば、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物など)、1種又は複数の抗酸化物質(例えば、マンガン、ビタミンEなど)、及び場合により、ロイシン、バリン及びアラニンからなる群から選択される1種又は複数のアミノ酸を含む、ヒトへの使用に適している組成物である。1つの実施形態において、ヒトへの使用に適している組成物は、アデノシン及びマンガンを含む。
【0055】
本発明の代わりの実施形態において、治療剤は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有するD.ラジオデュランス抽出物である。
【0056】
放射線被曝の作用を治療又は予防する方法は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む治療剤をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0057】
1つの実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質含むD.ラジオデュランス抽出物をそれを必要とする対象に投与することを含む、放射線治療の副作用を予防する方法である。
【0058】
本発明の別の実施形態は、1種又は複数のプリンヌクレオシド、抗酸化物質及び場合により、アラニン、バリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、放射線治療の副作用を予防する方法である。好ましくは、1種又は複数のプリンヌクレオシドは、アデノシン及び/又はウリジンであり、約1mMから約15mM量のアデノシン及び/又はウリジンで存在してもよい。1種又は複数のプリンヌクレオシドはまた、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。抗酸化物質は、マンガン(例えば、約1mMから約12.5mMの)であってもよい。1つの実施形態において、抗酸化物質はMnClである。別の実施形態において、抗酸化物質はビタミンEである。別の実施形態において、組成物は、アデノシン、ウリジン、ロイシン、アデニン及びマンガンを含む。
【0059】
本出願の方法は特に有利である。確立した放射線防護剤(例えば、アミホスチンなど)と比較して、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質(例えば、アデノシン、ウリジン及びMn)を含む組成物は、比較的非毒性である。
【0060】
本発明の方法は、偶然に又は意図的に電離放射線に曝露した軍人及び市民の曝露前及び後の治療に特に適している。
【0061】
発明はまた、放射線の著しい慢性レベル、例えば、原子力発電所において、長期間の宇宙飛行の間又は、国際宇宙ステーションにおいて曝露された個人に予防的に使用されてもよい。
【0062】
「安全で有効な量」は、本発明の方法で使用した場合、相応な損益比で比例して、過度に有害な副作用(毒性反応、刺激反応又はアレルギー反応など)なく、所望の治療反応を得るのに十分な成分の量を言う。「治療に有効な量」とは、所望の治療反応を得るのに有効な成分の量、例えば、細菌性細胞分裂の速度を遅くするため、又は、細菌性細胞分裂を停止させるため、又は細菌の死をもたらすか若しくは細菌の個数増加の速度を遅らせるために有効な量を意味する。特に安全で有効な量又は治療に有効な量は、治療される特定の条件、対象の身体条件、治療される対象のタイプ、治療の期間、併用する治療の性質(もしあれば)及び使用される特殊な製剤及び化合物又はその誘導体の構造などの因子で変化する。
【0063】
適用の方法には、限定するわけではないが、直接、間接、担体及び特殊な方法又は方法の任意の組合せが含まれる。ファージの直接適用は、鼻腔用スプレー、点鼻薬、鼻軟膏、鼻洗浄液、鼻注入液、鼻充填剤、気管支スプレー及び吸入器、又は間接的に、咽喉ドロップの使用を介して、又は、口内洗浄液又はうがい薬の使用を介して、又は、鼻孔、鼻梁又は顔に適用される軟膏の使用を介して、又はこれらの及び類似の適用方法の任意の組合せによるものであってもよい。ファージが投与されてもよい形態には、限定するわけではないが、ドロップ、トローチ、キャンディー、注入物質、チューインガム、錠剤、粉末、スプレー、液体、軟膏及びアエロゾルが挙げられる。
【0064】
治療剤はまた、担体である鼻腔用スプレーに入れてもよい。鼻腔用スプレーは、長く作用するか、又は持続放出型のスプレーであり、当技術に公知の方法によって製造することができる。治療剤が、肺を含む気管支管へとさらに届くことができるように、吸入剤を使用してもよい。
【0065】
治療剤は、これらの物質に液体形態で、又は唾液などの体液に触れるとすぐに可溶化するように、凍結乾燥状態で添加されてもよい。酵素はまた、ミセル又はリポソームに存在してもよい。
【0066】
これらの方法は、任意の哺乳動物種、例えば、限定するわけではないが、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ及びウシを含む家畜などに使用されてもよいが、好ましい組成物の使用は、ヒトに対してである。
【0067】
組成物の有効量率又は量は、組成物が治療的に又は予防的に使用されるか、レシピエントが放射線に曝露される期間、放射線のタイプ、サイズ及び個人の体重などに一部依存する。組成物の使用期間もまた、使用が予防目的であるかどうか(使用は毎時、毎日又は毎週、短期間であってもよい)、又は使用が治療目的であるかどうか(数時間、数日又は数週間及び/又は毎日、又は1日の間に一定時間ごとに使用を続けることができるように、組成物の使用はより集中的な計画が必要となり得る)に依存する。使用される任意の剤形は、最短の時間で最小の数のユニットを提供する。ファージの有効量又は用量を提供すると思われているファージの活性ユニットの濃度は、鼻道及び口道の水分又は湿気のある環境における体液の約100ユニット/mlから約100,000ユニット/mlの範囲にあってもよく、約100ユニット/mlから約10,000ユニット/mlの範囲にある可能性もある。より具体的には、放射線の曝露時間は、活性放射線防護組成物の所望の濃度ユニット/mlに影響を与えることもある。「長期」又は「遅延」放出担体として分類される担体(例えば、特定の鼻腔用スプレー又はドロップ)は、より長い期間、ml当たりの濃度が低い組成物を有する又は提供することができるが、一方、「短期」又は「高速」放出担体(例えば、うがい薬など)は、短期間であるが、ml当たり濃度が高い組成物を有する又は提供することができることに留意されるべきである。さらに、特定の組成物の治療に有効な量は、対象に関連の因子を十分に考慮して、当業者によって決定できることが理解されよう。
【0068】
好ましい有効量の選択は、当業者に知られているいくつかの因子を考慮して、当業者によって決定できる(例えば、臨床試験を介して)。このような因子には、治療される又は予防される疾患、関連の症状、患者の体重、患者の免疫状態及び、投与される医薬組成物の精度を反映する当業者により知られる他の因子が挙げられる。
【0069】
製剤に使用される正確な用量はまた、投与経路に依存し、医師の判断と各患者の状況にしたがって決定される。有効量は、インビトロ又は動物モデル試験システムからもたらされた用量反応曲線から推定されてもよい。
【0070】
放射線被曝の作用を予防的に及び治療的に治療及び/又は予防するために、プリンヌクレオシド及び抗酸化物質を含む組成物はまた、直接、間接、担体及び特別な手段又は手段の任意の組合せにより適用されてもよい。ファージの直接適用は、鼻腔用スプレー、点鼻薬、鼻軟膏、鼻洗浄液、鼻注入液、鼻充填剤、気管支スプレー及び吸入器、又は間接的に、咽喉ドロップの使用を介して、又は、口内洗浄液又はうがい薬の使用を介して、又は、鼻孔、鼻梁又は顔に適用される軟膏の使用を介して、又はこれらの及び類似の適用方法の任意の組合せによるものであってもよい。ファージが投与されてもよい形態には、限定するわけではないが、ドロップ、トローチ、キャンディー、注入物質、チューインガム、錠剤、粉末、スプレー、液体、軟膏及びアエロゾルが挙げられる。炭疽病の治療的治療のため、気管支スプレー及びアエロゾルが最も効果的であり、これらの担体として、又は組成物を供給する手段として、ファージが気管支管及び肺に到達することを可能にする。
【0071】
本発明の組成物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮又は口腔経路を介して投与され得る。例えば、薬剤は、微量注入を介して損傷部位に局所的に投与することができる。或いは、又は同時に、投与は口腔経路によりされてもよい。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康及び体重、もしあれば、併用する治療の種類、治療の頻度及び所望の効果の性質に依存する。
【0072】
本発明の1つの実施形態において、方法は、薬学的に許容できる担体で治療剤を投与することを含む。適切な担体及びそれらの製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、2005年、Mack Publishing Co.に記載されている。典型的には、薬学的に許容できる塩の適切な量は、製剤を等張にするために、製剤に使用される。薬学的に許容できる担体の例には、液体、例えば、生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5から約8まで、より好ましくは約7から約7.5までである。製剤はまた、凍結乾燥粉末を含んでもよい。さらに担体は、徐放性調剤、例えば固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このようなマトリックスは、造形品、例えばフィルム、リポソーム又は微粒子の形態で存在する。特定の担体は、例えば、炎症性サイトカイン阻害剤を投与する投与経路及び濃度により好ましくは依存していてもよいことが、当業者には明らかである。
【0073】
方法は、タンパク質損傷による細胞損傷の数多くのレドックス関連形態に対して治療法を最適に提供し、傷の治癒を容易にする。
【0074】
D.ラジオデュランス抽出物を調製する方法
本発明の1つの実施形態は、放射線防護特性を示す、D.ラジオデュランスの細胞を含まない抽出物を調製する方法である。1つの実施形態において、方法は、例えば、遠心分離によりD.ラジオデュランスを採取し、D.ラジオデュランス培養を溶解して溶解物を作成し、D.ラジオデュランス溶解物を洗浄した後、上清溶液を作成するのに十分な時間と条件下で溶解物を遠心分離にかけるステップを有する。遠心分離後、上清溶液を、マイクロフィルター、好ましくは、3キロダルトンのマイクロフィルターに通して、適切な時間の期間煮沸する。1つの実施形態において、上清溶液は濾過の後約15から約45分間煮沸する。得たD.ラジオデュランス抽出物は、1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含有し、ブタノールに可溶で、煮沸に耐性があり、細胞を含まない。
【0075】
1つの実施形態において、抽出物は、アデノシン及びマンガンを含有する。別の実施形態において、抽出物は、アデノシン及び/又はウリジンマンガンを含有する。細胞抽出物はまた、ロイシン、アラニン及び/又はバリンをさらに含有してもよい。1つの実施形態において、D.ラジオデュランス抽出物は、少なくともアデノシン、ウリジン、ロイシン、アデニン及びマンガンを含有する。
【0076】
さらなる記載がなくても、当業者であれば、先の記載と以下の例証的実施例を用いて、本発明を作成し、利用して、特許請求の範囲の方法を実行できると考えられる。したがって、以下の実施例は、特に、本発明の好ましい実施形態を指摘し、いかなる方法においても開示の残りの部分を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0077】
実施例1
D.ラジオデュランス由来のタンパク質を含まない抽出物の調製。D.ラジオデュランス(ATTC BAA−816)をTGYでOD600 0.9に培養し、遠心分離によって採取し、フレンチプレス処理によって溶解した。細胞を洗浄し、次いで、2回蒸留した脱イオン滅菌水(dHO)に溶解した。溶解の前に、細胞密度をdHOで調整して、約50%の細胞内濃度を表わす溶解物を得た。粗細胞抽出物を20時間175,000×gで遠心分離にかけた。上清溶液を<3キロダルトンのマイクロコン遠心濾過機(Millrpore、USA)に通して、30分間煮沸した。クーマシー(Bradford)タンパク質試験を使用して、超精製された抽出物にタンパク質が実質的に存在しないことを確認し、抽出物を等分に小分けして−80℃で保管した。
【0078】
実施例2
D.ラジオデュランス由来のタンパク質を含まない抽出物の分析。D.ラジオデュランス抽出物をTOF MS及びクロマトグラフィーを用いて分析した。これらの技法を用いて、抽出物が、限定するわけではないが、ロイシン、アデニン、ウリジン及びアデノシンを含む、様々な化合物を含有することがわかった。先の分析は、これらの抽出物がまたマンガンを含有することを示した。アミノ酸、ロイシン、アラニン及びバリンが、放射線感受性細菌(データ示さず)と比較して、D.ラジオデュランス及びD.ゲオテルマリスで非常に高い。
【0079】
実施例3
哺乳動物細胞における放射線防護効果。ATCC(hFOB)からのヒト胎児骨芽1.19細胞株のアポトーシスをフローサイトメトリー試験を用いて、死及びアポトーシスマーカー(アネキシンV及びヨウ化プロピジウムPI)によって測定した。つまり、hFOB細胞を、10%ウシ胎児血清を有するDMEM−F12、2.5mMのL−グルタミン及び1%の抗生物質中で最高密集度まで培養した後、実験群をアデノシン(10mM)又はMnCl(0.25m)M又はアデノシン及びMnClでIR前3時間から開始して6日間処理した。アポトーシス細胞死をアネキシンV及びPIでフローサイトメトリーによってIRの後6日で染色して、測定した。hFOB細胞もまた、IR後クローン生存試験のため接種した(1×103/ウェル、6−ウェルプレート)。コロニーを10日後に数えた。試験の結果を以下の表1に示す。
【0080】
試験のため、アデノシン+/−0.25mMのMn(II)を放射の3時間前に添加した。細胞を放射後6日でフローサイトメトリーによって試験した。アネキシンV複合体は、フローサイトメトリーを用いて、アポトーシス過程の間早期に生じる細胞表面の変化を同定することができた。アポトーシス過程の初期、ホスファチジルセリンは、細胞表面上で曝露されるようになる。固定されていない細胞中のヨウ化プロピジウム(PI)は、アポトーシス及び壊死を色素排除法に基づいて正確に識別する。壊死細胞は細胞膜の統合性をそれらの死1つで早期に失うが、アポトーシス細胞は損傷した細胞膜を有することもある。
【0081】
【表1】

【0082】
様々な特別な材料、手順及び実施例を参照することにより、本発明を本明細書に記載し、例証してきたが、本発明は、その目的のために選択された材料及び手順の特定の組合せに制限されるものではないことが理解される。このような詳細の多くの変更は、当業者によって理解されようが、示唆され得る。明細書及び実施例は、単なる例と見なし、本発明の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲により示されることを意図している。本出願で言及したすべての参照文献、特許及び特許出願は、その全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物の医薬有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象において放射線被曝の副作用を治療及び/又は予防する方法。
【請求項2】
前記放射線が、紫外線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種又は複数のプリンヌクレオシドが、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1種又は複数の抗酸化物質が、マンガン、MnCl及びリン酸マンガンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、アラニン、バリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、D.ラジオデュランス抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線治療の1つ又は複数の副作用を予防する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1種又は複数のプリンヌクレオシドの濃度が、約1から約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1種又は複数の抗酸化物質の濃度が、約1から約12.5mMのマンガンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含む組成物とタンパク質を接触させることを含む、タンパク質を保存する方法。
【請求項11】
1種又は複数のプリンヌクレオシド及び1種又は複数の抗酸化物質を含むD.ラジオデュランス抽出物の医薬有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象において放射線被曝の副作用を治療及び/又は予防する方法。
【請求項12】
前記放射線が、紫外線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1種又は複数のプリンヌクレオシドが、アデノシン、ウリジン、β−プソイドウリジン、イノシン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記1種又は複数の抗酸化物質が、マンガン、MnCl及びリン酸マンガンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記D.ラジオデュランス抽出物が、アラニン、バリン及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
放射線治療の1つ又は複数の副作用を予防する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記1種又は複数のプリンヌクレオシドの濃度が、約1から約15mMのアデノシン及び/又はウリジンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記1種又は複数の抗酸化物質の濃度が、約1から約12.5mMのマンガンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
D.ラジオデュランス培養を遠心分離によって採取するステップ;
D.ラジオデュランス培養を溶解してD.ラジオデュランス溶解物を作成するステップ;
D.ラジオデュランス溶解物を洗浄するステップ;
上清溶液を作成するのに十分な時間及び条件下でD.ラジオデュランス溶解物を遠心分離するステップ;
3キロダルトン未満のフィルターに上清溶液を通すステップ;及び
上清溶液を約15から約45分間煮沸するステップ
を含む方法によって、前記D.ラジオデュランス抽出物が生成され、
当該抽出物は、ブタノールに可溶で、煮沸に耐性であり、細胞を含まない、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−536794(P2010−536794A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521222(P2010−521222)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/073479
【国際公開番号】WO2009/045655
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(501051125)ザ ヘンリー エム. ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドヴァンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド (9)
【出願人】(305056858)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (15)
【Fターム(参考)】