説明

プルケネティア属に属する植物の抽出物およびその化粧用使用

本発明は、トウダイグサ科に属する植物(好ましくはプルケネティア属に属する植物)の抽出物の化粧用使用に関する。また本発明は、トウダイグサ科に属する植物(好ましくはプルケネティア属に属する植物)から抽出しうるタンパク質もしくはタンパク質混合物の化粧用使用に関する。さらに本発明は、医薬として使用するための該抽出物または該タンパク質もしくは該タンパク質混合物に関する。さらに本発明は、化学的または酵素的に、例えば、架橋、グラフト化または加水分解によって修飾した該抽出物または該タンパク質もしくは該タンパク質混合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウダイグサ科に属する植物(好ましくはプルケネティア属に属する植物)の抽出物の化粧用使用に関する。また本発明は、トウダイグサ科に属する植物(好ましくはプルケネティア属に属する植物)から抽出しうるタンパク質もしくはタンパク質混合物の化粧用使用に関する。さらに本発明は、医薬として使用するための該抽出物または該タンパク質もしくは該タンパク質混合物に関する。さらに本発明は、化学的または酵素的に、例えば、架橋、グラフト化または加水分解によって修飾した該抽出物または該タンパク質もしくは該タンパク質混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
仏国特許出願公開FR-A-2701847は、医薬使用、特に皮膚または化粧用使用のための組成物であって、活性成分として、単独でまたは少なくとも1つの他の活性成分と組合せて、アルブミンを含有するタンパク質部分を導入した組成物を開示している。この発明の組成物は、アルブミンが植物起源のものであり、それが組成物中に、pH4〜7において非塩性水相中に天然状態の可溶性タンパク質の形態で存在し、該可溶性タンパク質の含量が、タンパク質分画の少なくとも25%(乾燥重量で)であることを特徴とする。アルブミンは、豆科、油性、穀物種子の中から選択される種子から得られる。
【0003】
仏国特許出願公開FR-A-2761264、国際特許出願公開WO98/42305、欧州特許出願公開EP-A-0973495および欧州特許出願No.01967142.9は、同様の対象に関する。
【0004】
引き締め効果のための化粧品において植物タンパク質(例えばアルブミン)を使用するのが、当分野の情勢である。
即時の皮膚引き締め効果を有する活性成分を得るための方法あるいは皮膚引き締め効果を与えるのに有用な化粧品組成物を開示する当分野の情勢を示す文献が存在する。
【0005】
国際特許出願公開WO02/28360は、即時の皮膚引き締め効果を有する活性成分を得るための方法であって、以下の工程を含んでなることを特徴とする方法を開示している:水相中に穀物圧搾ケーキを50〜500g/Lの量で溶解し;酵素の存在下に酸pHおよび40〜80℃の温度で穏やかな酵素加水分解を行い;可溶性および不溶性の相を分離し;媒体を不活性化して酵素反応を遮断し;保持されたタンパク質を重合開始剤の添加によって重合させ;重合したタンパク質を分離する。
【0006】
国際特許出願公開WO2003/063816は、皮膚引き締め効果を与えるのに有用な個人用の局所ケア組成物であって、加水分解タンパク質、部分的加水分解タンパク質およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質ならびに少なくとも1つの有機粉末を、皮膚学的に許容しうる担体(この担体はエマルジョンの形態にある)中に含んでなる組成物を開示している。
【0007】
欧州特許出願公開EP-A-1038519は、引き締め剤として有用な組成物および皮膚老化の徴候を低減または除去する方法を開示している。この方法は、ポリシロキサン部分および非シリコーン有機鎖からなる部分を含む少なくとも1つのグラフト化シリコーンポリマー(これら2つの部分の一方はポリマーの主鎖を構成し、他方は該主鎖にグラフト化している)を含んでなる組成物を、皮膚に適用することからなる。
【0008】
米国特許第6284233号は、抗しわ性の化粧または皮膚組成物であって、生理学的に許容しうる媒体中に、少なくとも1つのポリマー(水蒸気に対して透過性である皮膜を形成することができ、108〜1010N/m2の範囲内のヤング率を有し、水中7%の濃度で適用して続いて乾燥した後に、温度30℃および相対湿度40%において1%より高い単離角質層の収縮を生じる)、および末端ヒドロキシル官能基を有する樹状ポリエステルポリマーを含んでなる皮膜形成ポリマー系の分散物を含んでなる組成物を開示している。
【0009】
米国特許第5879684号は、引き締め処置のための皮膚張りつめ水性ゲルであって、水、分散させた微細粒状の植物起源の張りつめまたは緊張剤、ポリマーゲル化剤、液体炭化水素分散助剤および非イオン性界面活性剤からなるゲルを開示している。
【0010】
日本特許出願公開JP-A-10-007518は、皮膚引き締め効果を示す皮膚ローションを開示している。この皮膚ローションは、マメ科(Leguminosae)植物としてLupinus albus L.の種子からの抽出物およびLamiacea科植物としてThymus vulgaris L.からの抽出物を、活性成分として含有する。このLupinus albus L.中に含まれる高度に重合したタンパク質は、皮膚引き締め効果を示し、皮膚上に皮膜を形成することによって皮膚表面を滑らかにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、化粧品および/または医療用途に有用な新規物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
トウダイグサ科(Euphorbiaceae)に属する植物の抽出物、特にプルケネティア(Plukenetia)属に属する植物の抽出物、好ましくは植物プルケネティア・ボルビリス(Plukenetia volubilis)の種子の抽出物は、比較的低分子量のタンパク質を含有し、これを試験して、ヒト皮膚に対して引き締め効果を示すことがわかった。その主タンパク質は、引き締めタンパク質として参考にされる動物アルブミン(60,000Da)に近い分子量を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る抽出物の一部は、同じタンパク質濃度で、「グリシン・ソヤ(ダイズ)タンパク質」(INCI名称)[Laboratoires Serobiologiques (LS)、Division de Cognis Franceから購入可能な活性成分]と同じ引き締め活性を示す。
本発明に係る抽出物の一部は、ヒト皮膚に対して、引き締め効果および表面付着効果および保湿効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
プルケネティア・ボルビリス・エル(Plukenetia volubilis L.)は、「インカ・ピーナツ(Inca peanut)」または「インカ・インチ(Inca Inchi)」または「サシャ・インチェ(Sacha Inche)」とも称される南アメリカのアンデス地方の高地熱帯雨林に自生する植物である。その土地固有の「インカ・ピーナツ」という名称にもかかわらず、それは、本来のピーナツ(Arachis hypogea L.、Fabaceae科)と同じ植物科に属さず、トウダイグサ科に属する。それはワインとして成長し、房を有する四球形果実を生じ、これは、堅い褐色種子被覆および白色子葉を有する1個の種子を含む。
【0015】
現在まで栽培作物ではないが、野生から集めた種子は、アンデス地方のChancas Indiansおよび他の原住部族の食事の構成成分になっている。それは、ローストして、粉にして、そしてトウモロコシ粉およびコショウと混合して食されている。この植物の種子は、その油およびタンパク質含量が高いために価値があり、ローストした種子が、単独でまたはトウモロコシ粉およびコショウと混合して食されている。現在、ペルーでは、食用油の抽出のためならびに良好な栄養的価値を有するタンパク質に富む残存ケーキ(これはウシの飼育に使用される)のために、栽培が奨励されているようである。
【0016】
プルケネティア・ボルビリス油は、皮膚を回復させ、皮膚に若さを与えるための特別のクリームを調製するために、Mayorunas、Chayuhuitas、Campas、Huitotas、Shipibas、YaguasおよびBorasの女性によって穀物粉と混合されている。
【0017】
プルケネティア・ボルビリスの種子仁は、油に富んでいる(35〜60%)。この油は、高含量の不飽和脂肪酸(約37%のリノール酸および50%のα-リノレン酸であり、高い栄養的価値を有する)を特徴とする。
【0018】
この仁は、高含量のタンパク質(27〜31%)を含み、これはダイズのタンパク質含量(28%)に近い。脱脂した種子粉のタンパク質含量は53%に達する[HAMAKER B.R.、VALLES C.、GILMAN R.、HARDMEIER R.M、CLARK D.ら、「インカ・ピーナツ(Plukenetia volubilis L.)のアミノ酸および脂肪酸プロフィール」、Cereal Chem.、1992、Vol.69(4)、p.461-463]。
【0019】
プルケネティア仁の中身について、当分野の現状では、ごくわずかの情報しか利用することができない。最近の研究により、アルブミン分画は、全種子タンパク質のかなりの部分を占める単一の貯蔵タンパク質から主に構成されていることが示された[SATHE S.K.、HAMAKER B.R.、SZE-TAO K.W.、VENKATACHALAM M.、「インカ・ピーナツ(Plukenetia volubilis L.)からの新規な水溶性タンパク質の単離、精製、および生化学的特性化」、J.Agric.Food Chem.、2002、Vol.50(17)、p.4906-4908]。
【0020】
このタンパク質が、抽出と、その後のイオン交換クロマトグラフィーによる精製によって単離された。著者は、このインカ・ピーナツからの水溶性アルブミン(IPA=Inca Peanut Albuminと称される)が、脱脂した種子粉末の重量の約25重量%になることを示した。IPAは、2つのグリコシル化ポリペプチド(それぞれの分子量は32800および34800Daである)から構成される3S型の二量体貯蔵タンパク質である。これは、FAO/WHO推奨のアミノ酸パターンと比較して、全ての必須アミノ酸を十分な量で含有する塩基性タンパク質(等電点が約9.4)である
【0021】
以下のパラグラフに、本発明の態様または好ましい態様を記載する。
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を、活性成分として、単独で、あるいは皮膚、脣、毛髪または爪に局所使用するための化粧品または皮膚化粧品組成物の製造のためのさらなる活性成分と組合せて使用する。
・本発明の1つの態様において、本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物は、部分的または完全に脱脂した全種子または仁(仁は被覆を除いた種子である)から得られる。
【0022】
・本発明の1つの態様において、本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物の活性成分の含量を、クロマトグラフィー(例えば、ゲル透過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィー)によって、または膜分離(例えば、限外濾過、透析または逆浸透)によって、または沈殿(溶媒、塩、温度)によって増加させることができる。これらの方法は、精製工程の例である。即ち、本発明によれば、用語「精製」は、これらの方法を含むが、これらの方法に限定されない。
【0023】
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を、例えば、架橋、グラフト化または加水分解(酵素加水分解は、プロテアーゼまたはグリコシダーゼまたはリパーゼを用いて行うことができる)によって、化学的または酵素的に修飾することができる。これらの方法は、修飾工程の例である。即ち、本発明によれば、用語「修飾」は、これらの方法を含むが、これらの方法に限定されない。
【0024】
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、皮膚、脣、毛髪または爪の全般的コンディションを改善することができる。
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、機械的拘束に対する皮膚の強さ、より具体的には角質層の強さを改善することができる。
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、好ましくはヒト皮膚に抗しわまたは抗老化効果をもたらすことができる。
【0025】
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、好ましくはヒト皮膚に抗炎症効果をもたらすことができる。
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、好ましくはヒト皮膚または脣に保湿効果をもたらすことができる。
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、抗プロテアーゼ効果をもたらすことができる。
【0026】
・本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物を使用して、ヒト皮膚、脣または毛髪にコンディショニング効果をもたらすことができる。
・本発明の1つの態様において、本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物は、平均分子量60000Da(±5000Da)を有する。
・本発明の1つの態様において、本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物は、平均分子量30000Da(±5000Da)を有する。
【0027】
本発明に係る抽出物または本発明に係るタンパク質もしくはタンパク質混合物のあらゆる処理(精製または修飾など)を、抽出物を得るために溶媒で抽出される植物材料(例えば種子)の存在下または不存在下に行うことができる。
【0028】
本発明に係る抽出物中のタンパク質の濃度を、当分野で既知の全ての方法(これらの方法は「精製」の態様である)によって、例えば、膜濾過法(例えば限外濾過)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、吸着、疎水性)、塩析沈殿、pH修飾、溶媒沈殿、超音波、グリコシダーゼ酵素の使用によって改善することができる。
【0029】
タンパク質および/または抽出物を、その天然の形態で(例えば実施例に記載したように)、または修飾した形態で使用することができる。以下に挙げる方法は、「修飾」の態様である:化学的または酵素的な加水分解、架橋(例えば、化学的または酵素的な架橋)、脂質または糖による修飾。
【0030】
多くの抽出物および/またはタンパク質に期待することができる性質には、以下に挙げるヒト皮膚に対する効果が含まれる:引き締め効果、抗しわ効果、保湿効果、表面付着効果(塩基性の等電点による)および皮膚細胞代謝の刺激(最終的な抗老化効果のため)。
【0031】
本発明に係る抽出物および同一植物の油の組合せは、保湿、栄養補給、再生活性のための二重美容液などの化粧品および/または皮膚用製品にとって興味深い。
【実施例】
【0032】
%は重量%を意味する。
I:プルケネティア・ボルビリス種子の抽出物の調製
実施例1
原料は、プルケネティア・ボルビリスの全種子からなる。褐色の種子被覆を手で取り除いて、白色の仁を得た。次いでこの仁を粉砕し、粉末をヘキサンで抽出して、脱脂した仁粉末を得た。
- 反応器に、100gの脱脂した仁粉末ケーキを入れた。
- 1L(リットル)の蒸留水を加えた。
- 溶液のpHを、振盪下に4N NaOHで7.0に調整した。
- 抽出を、pH7.0にて室温で2時間、振盪下に行った。
- 遠心を、5000gで15分間行った。
- 上清を集め、次いで0.45μmまでを濾過して、白色の抽出物を得た。
- この抽出物を最後に凍結乾燥した(または噴霧乾燥することもできる)。
【0033】
実施例2
原料は、実施例1のものとは異なり、仁(種子被覆を除去)からのプルケネティア・ボルビリス油の常温抽出(圧搾による)によって得られたケーキからなる。このケーキを、ヘキサンで脱脂して、残存する油を除去した。
- 反応器に、200gの脱脂ケーキ粉末を入れた。
- 2Lの蒸留水を加えた。
- 次いで、抽出を実施例1のように行った。
【0034】
2つの抽出物の特性を、以下の表に挙げる。
【表1】

【0035】
抽出物中に存在するタンパク質の分子量を、ゲル電気泳動によって測定した。
非還元条件下でのSDS-PAGEは、約60,000Daおよび30,000Daの分子量に対応する2つの主タンパク質バンドを示す。
電気泳動を還元条件下(メルカプトエタノールによりジスルフィド結合を切断する)で行うと、30,000Daのバンドだけが残る。このことは、60,000Daのバンドが、ジスルフィド結合により結合した約30,000Daの2つのサブユニットから構成される二量体タンパク質であることを意味する。また、イオン交換により60,000Daタンパク質に富む抽出物で行った等電点電気泳動は、このタンパク質の等電点が塩基性(9付近)であることを示した(このバンドは、当技術分野において記載されるIPAに確実に対応する)。
【0036】
II:生体外での引き締め効果
原理
原理は、皮膚表面に平行に適用した小さな正弦(シヌソイド)力に反応した皮膚移動を測定することである(ヒト皮膚の試料)。検討するパラメーターは動的バネ率(DSR)(力/移動の比)である。このDSRは、力を移動で割った比である。評価は常に相対的に行われるので、力と移動の単位は、この場合には重要ではない。この比は、各分毎に連続的に算出され、結果は、時間0(=処理前)を対照としてDSR変化の割合(%)として表される。単位は、g/mmまたはN/mなどであってよい。この比は、電気信号に基づいて算出され、力と移動はmVである。評価は相対的に行われ、DSRは%で算出されるので、単位は重要ではない。適当な活性成分での処理による皮膚の軟化はDSRの減少によって表され、一方、皮膚の引き締めまたは堅固化はDSRの増大に反映される。
【0037】
方法の詳細
皮膚をガラス製の顕微鏡スライドに乗せる。この乗せた皮膚を、制御した湿度(相対湿度、RH)および温度Tの大気中で2時間平衡化する(T=20℃、RH=33%)。機械的特性を、5つの条件下で試験する:
1.未処理の対照;
2.プラシーボ:Sepigel 1% [Sepigel 305、Seppic社から購入可能:ポリアクリルアミド(および)イソパラフィン(および)laureth-7]で処理した皮膚;
3.プラシーボ中0.75重量%の実施例2のプルケネティア抽出物(これは、タンパク質含量に基づいて4.7g/Lのタンパク質を意味する)で処理した皮膚;
4.プラシーボ中1.5重量%の実施例2のプルケネティア抽出物(これは、タンパク質含量に基づいて9.4g/Lのタンパク質を意味する)で処理した皮膚;
5.プラシーボ中10%に希釈したCognis社の活性成分[INCI名称:グリシン・ソヤ(ダイズ)タンパク質](これは、タンパク質含量に基づいて4.7〜5g/Lのタンパク質を意味する)で処理した皮膚。
【0038】
結果を、180分後のDSRパラメーターの展開として表す。
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
0.75%のプルケネティア抽出物(〜5g/Lのタンパク質)の引き締め効果は、プラシーボおよび対照に対して有意であり、5g/L タンパク質のLS活性成分[INCI名称:グリシン・ソヤ(ダイズ)タンパク質]と同等に有効であった。1.5%のプルケネティア抽出物において、用量効果のある活性が観察された。
【0041】
III:生体内での引き締め効果
生体内での引き締め効果を、角膜スピノメーター(corneospinometer)により評価した。この装置は、微細ねじれ下の角質層の挙動の評価を可能にする。皮膚の角度変形を、小さい針(0.8mmの針直径)からなるプローブによって皮膚表面に適用した機械的トルクに応じて測定した。接触領域は0.2mmより少なく、評価を角質層に限定した。特別の技術が、皮膚をプローブの軸において接触させるまで針を下げるのを可能にし、従って、針の重量だけを皮膚に適用し、寄生的な摩擦を減少させた。この装置はコイルを含み、これが2つの機能を有する。第1に、それは針に周期的トルクをかける。第2に、それは針の角度位置を測定する。
【0042】
結果を、機械的トルク(一定の正弦振幅)と皮膚の角度変形(変動する)との間の比である動的バネ率(DSR)で表す。
DSRの増大は、角質層に対する引き締め効果に対応する。
【0043】
方法/試験条件
1人のボランティア
・前腕内側面;
・面積:3×3cm2
・適用量:3mg/cm2
・平均して50回の測定;
・結果を、T0に対して10分時点でのDSR増大率(%)として表す。
・皮膚を以下の生成物で処理した:
・プラシーボ:水中20%のEmulgade CM[INCI名称:イソノナン酸セテアリル(および)Ceteareth-20(および)セテアリルアルコール(および)ステアリン酸グリセリル(および)グリセリン(および)Ceteareth-12(および)パルミチン酸セチル];
・Emulgade CM中10重量%の濃度のLS活性成分[INCI名称:グリシン・ソヤ(ダイズ)タンパク質](4.5〜5g/Lのタンパク質)。
【0044】
実施例1および2のプルケネティア抽出物を、100g/L(w/v)の濃度で水に可溶化し、この溶液を0.8μmにおいて濾過した。
次いで、溶液をEmulgade CMで希釈して、0.8(w/v)%の最終抽出物濃度を得た(これは、4.7〜5.4g/Lのタンパク質を意味する)。
【表4】

【0045】
水中20%のEmulgade CM中で0.8(w/v)%(即ち4.5〜5.4g/Lのタンパク質)のプルケネティア・ボルビリスの両抽出物は、T0と比較したときの10分時点でのDSRの増大によって示されるように、即座の引き締め効果を示した。同じタンパク質濃度範囲において、プルケネティア抽出物は、LS活性成分[INCI名称:グリシン・ソヤ(ダイズ)タンパク質]とほぼ同じ引き締め効果を示した。
【0046】
IV:スブチリシンAを用いるプルケネティア・ボルビリス種子からの加水分解物の調製
実施例3
この実施例において使用した酵素は、NOVO社から市販されているスブチリシンAである(Alcalase 2.4 L)。出発物質は、プルケネティア・ボルビリス仁から油を常温圧搾抽出した後に得られるケーキである(残留油13.5%)。このケーキを製粉してケーキ粉末を得た。実験を以下のように行った。
・反応器に、75gのケーキ粉末を入れた。
・750mlの蒸留水を加えた。
・均一化の後に、混合物のpHを、振盪下に水酸化ナトリウムで8.2に調整した。
・混合物を55℃まで加熱した。
・混合物に、1.9mlの酵素(ケーキ粉末のタンパク質含量を基準に5%)を加えた。
・pH=8.0〜8.2および55℃で2時間加水分解した。
・pHを7.0に調整し、混合物を90℃で10分間加熱することによって酵素を不活性化した。
・室温まで冷却し、5000gで遠心した。
・上清を集め、次いで0.45μmまでを濾過した。
・最後に、加水分解物を噴霧乾燥して、17gの粉末を得た[噴霧乾燥の収率=80%;タンパク質含量66%(窒素測定に基づく)]。
【0047】
V:パパイヤ由来のプロテアーゼを用いるプルケネティア・ボルビリス種子からの加水分解物の調製
この一連の試験において使用した酵素は、BIOZYM社から市販されているパパイヤ由来のプロテアーゼ混合物である。
【0048】
実施例4
出発物質は、実施例1のものと同じである。実験を以下のように行った。
・反応器に、75gのケーキ粉末を入れた。
・750mlの蒸留水を加えた。
・均一化の後に、混合物のpHを、振盪下に水酸化ナトリウムで7.5に調整した。
・混合物を50℃まで加熱した。
・混合物に、6gの酵素粉末(ケーキ粉末のタンパク質含量を基準に15%)を加えた。
・pH7.5および50℃で2時間加水分解した。
・混合物を90℃で10分間加熱することによって酵素を不活性化した。
・室温まで冷却し、5000gで遠心した。
・上清を集め、次いで、0.22μmまでを濾過した。
・最後に、加水分解物を噴霧乾燥して、13gの粉末を得た[噴霧乾燥の収率=62%;タンパク質含量61%]。
【0049】
実施例5
出発物質は、プルケネティア・ボルビリス仁から油を常温圧搾抽出した後に得られるケーキを、さらにヘキサンで脱脂して得た脱脂仁粉末である(残留油<0.3%)。実験を以下のように行った。
・反応器に、40gの脱脂仁粉末を入れた。
・360mlの蒸留水を加えた。
・均一化の後に、混合物のpHを、振盪下に硫酸で5.5に調整した。
・混合物を50℃まで加熱した。
・混合物に、2.18gの酵素粉末(脱脂仁粉末のタンパク質含量を基準に8%)を加えた。
・pH5.5および50℃で4時間加水分解した。
・混合物を90℃で10分間加熱することによって酵素を不活性化した。
・室温まで冷却した。
・5000gで遠心し、次いで上清を集め、0.22μmまでを濾過した。
・最後に、加水分解物を凍結乾燥して、6.5gの粉末を得た(窒素測定に基づいてタンパク質含量50%)。
【0050】
VI:培養中のヒト線維芽細胞に対する再生および回復効果
実施した試験の目的
この試験の目的は、インビトロ培養したヒト線維芽細胞に対する抽出物の回復および再生活性を評価することであった。
【0051】
使用した方法
再生および増殖因子様活性を評価するために、ヒト線維芽細胞において増殖効果試験を行った。再生および回復活性を評価するために、ヒト線維芽細胞において生存効果試験を行った。以下のパラメーターを記録することによって、細胞数および細胞生存性を測定した。
・Hoechst 33258と呼ばれる蛍光プローブを用いてDNAレベルを評価した[DESAULNIERS D.、LEINGARTNER K.、ZACHAREWSKI T.およびFOSTER W.G.:「MCF7-E3細胞増殖アッセイの最適化ならびに環境汚染物質および工業化学物質の作用」:Toxic.In vitro、1998、Vol.12(4)、p.409-422]。
・ATPまたはアデノシン三リン酸は、エネルギーに富み、主にミトコンドリアから産生される化合物である。細胞は、細胞骨格、イオンチャンネル、栄養取り込み、および多くの他の生物学的過程を制御する多数の酵素の活性のためにATPを必要とする[VASSEUR P.、AERTS C.:「Appreciation de la cytotoxicite par la mesure de l'ATP」、J.Francais Hydrol.、1981、Vol.9、p.149-156]。
【0052】
・タンパク質レベルを、Bradfordの方法に従って評価した[BRADFORD M.M.「タンパク質-染料結合の原理を用いてマイクログラム量のタンパク質を定量するための迅速かつ高感度の方法」:Anal.Biochem、1976、Vol.72、p.248-254]。
・グルタチオン(GSH)は、酸化的ストレスまたはある種の汚染物質(水銀や鉛など)から細胞を保護するために、細胞により産生されるペプチドである。還元形態のGSHに関係する3個のアミノ酸は、ATPを利用する特異的な細胞質酵素によって結合される。このGSHを、Hissinの方法によって評価した[HISSIN P.J.、HILF R.「組織中の酸化および還元されたグルタチオンを測定するための蛍光測定法」:Anal.Biochem.、1976、Vol.74、p.214-226]。
【0053】
結果を、標準範囲に対して算出し、次いで対照(生成物を含まない細胞培養培地)に対する割合(%)で算出し、最後に、通常は1回または2回のアッセイ(三重に行う)の平均として表した。
結果(%/対照)
【表5】

これらのデータ(表5)は、パパイン加水分解したプルケネティア・ボルビリス抽出物が、細胞増殖を改善し、皮膚再生を刺激して皮膚老化を遅延させる良好な能力を与えたことを示す。
【0054】
【表6】

これらのデータ(表6)は、加水分解したプルケネティア・ボルビリス抽出物が、細胞タンパク質合成およびエネルギー放出を刺激したことを示す。さらに、これらの抽出物は、グルタチオンの割合を増大させ、従って、酸化的ストレスおよび汚染物質と闘う細胞の能力を増強した。
加水分解したプルケネティア・ボルビリス抽出物は、皮膚細胞の代謝を刺激し、老化した皮膚を若返らせる良好な候補となる。さらに、これらは、酸化的ストレスおよび汚染物質に対処する皮膚細胞の能力を改善する。
【0055】
VII:毛髪に対する表面付着効果
実施した試験の目的
この試験の目的は、漂白およびパーマネントウェーブによってダメージを受けたヒト毛髪に対する表面付着効果を評価することであった。生成物の表面付着性(substantivity)は、ケラチンに吸着されそれに付着し、そして水濯ぎに耐える能力であると定義することができる。毛髪上に吸着される表面付着生成物の量を、2つの異なる条件下、即ち、高温(50℃)および高イオン濃度(0.5M NaCl)の条件下での脱着後に、フルオレスカミン(fluorescamine)(第1アミンの存在)との反応によって評価する[MINTZ GR、REINHART GM、LENT B:「コラーゲン加水分解物の分子量と毛髪に対するペプチドの表面付着性(substantivity)の間の関係」、J.Soc.Cosmet.Chem.、1991、Vol.42、p.35-44]。
【0056】
使用した方法
A:ダメージを受けた毛髪房の調製(漂白し、パーマをかけた)
12個の毛髪の房(1g)を、30℃において中性pHの5%過酸化水素と30分間接触させ、次いで注意深く洗浄した。続いて、これら毛髪房を、還元剤(5%のチオグリコール酸ナトリウム)中に20分間浸漬し、水で濯ぎ、次いで中和溶液(3%過酸化水素)中に10分間浸漬した。最後に、漂白し、パーマをかけた毛髪を、5%ラウリル硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、次いで濯ぎ、45℃のオーブン中で乾燥した。
【0057】
B:毛髪房へのタンパク質/ペプチドの吸着および除去
吸着:各房を、25℃において、プルケネティア・ボルビリス抽出物の溶液(0.75%)または蒸留水(10ml)中に浸漬した。次いで、房を暖かい流水で洗浄して、特異的に結合していないタンパク質を除去した。
毛髪に吸着された抽出物の脱着:結合したタンパク質/ペプチドの脱着を、以下の2つの連続工程で行った:
1:各房を、水浴の蒸留水(10ml)中に、50℃で2時間置いた(=熱浸漬);
2:次いで、各房を、0.5M NaCl溶液(10ml)中、25℃で16時間浸漬した(=高塩浸漬)。
【0058】
C:ペプチドの量測定
脱着したタンパク質/ペプチドの量測定を、抽出液(熱および高塩浸漬)中で行った。NH2基の存在を、フルオレスカミンとの反応後に測定した。相対的な蛍光を測定した。励起および発光波長を、それぞれ390nmおよび480nmにセットした。毛髪からのプルケネティア・ボルビリス抽出物の脱着量を、同一条件で行った標準較正に従って決定した。
【0059】
結果
【表7】

【0060】
プルケネティア・ボルビリス抽出物の表面付着性は、処理した毛髪からのタンパク質/ペプチド物質の脱着の増大によって特徴付けられる(9.8±0.5mg/g毛髪と比較して、17.8±0.4mg/g毛髪および19.5±0.5mg/g毛髪)。この増大は、実施例1に従って調製した抽出物については+87%であり、実施例2に従って調製した抽出物については+105%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウダイグサ科に属する植物(好ましくはプルケネティア属に属する植物)の抽出物の化粧用使用。
【請求項2】
トウダイグサ科に属する植物(好ましくはプルケネティア属に属する植物)から抽出しうるタンパク質もしくはタンパク質混合物の化粧用使用。
【請求項3】
ヒト皮膚またはヒト毛髪の化粧処置のための請求項1または2に記載の化粧用使用。
【請求項4】
ヒト皮膚を引き締めるため、ヒト皮膚に抗老化効果をもたらすため、または、ヒト毛髪またはヒト皮膚に表面付着効果をもたらすための請求項3に記載の化粧用使用。
【請求項5】
植物が植物プルケネティア・ボルビリスである請求項1〜4のいずれかに記載の化粧用使用。
【請求項6】
抽出物が該植物の種子の抽出物である請求項1、3、4または5のいずれかに記載の化粧用使用、または、タンパク質もしくはタンパク質混合物が該植物の種子から抽出しうるものである請求項2に記載の化粧用使用。
【請求項7】
抽出物が該植物の種子の仁(好ましくは脱脂した種子の仁)の抽出物である請求項1、3、4または5のいずれかに記載の化粧用使用、または、タンパク質もしくはタンパク質混合物が該植物の種子の仁(好ましくは脱脂した種子の仁)から抽出しうるものである請求項2に記載の化粧用使用。
【請求項8】
抽出物が、
(a)植物または種子または仁を、1〜6個の炭素原子を含むアルコール、1〜6個の炭素原子を含むカルボン酸と1〜6個の炭素原子を含むアルコールのエステル、1〜6個の炭素原子を含むケトン、ヘキサン、2〜6個の炭素原子を含むグリコール、水およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒で抽出して、抽出物と溶媒を含む混合物を得る工程、および
(b)このようにして得た混合物から溶媒を除去する工程、
を含む方法によって得られるものである請求項1または3〜7のいずれかに記載の化粧用使用、または、
タンパク質もしくはタンパク質混合物が、(a)および(b)を含む方法によって抽出されるものである請求項2に記載の化粧用使用。
【請求項9】
方法が、
(c)抽出物またはタンパク質もしくはタンパク質混合物を、溶媒の除去前または溶媒の除去後に、精製および修飾からなる群から選択される処理にかける工程、
をさらに含む請求項8に記載の化粧用使用。
【請求項10】
溶媒が水である請求項8または9に記載の化粧用使用。
【請求項11】
抽出物またはタンパク質もしくはタンパク質混合物を、本発明に係る植物の油(好ましくは該植物の種子の油、より好ましくは該植物の種子の仁の油)と一緒に、またはそれと組合せて使用する請求項1〜10のいずれかに記載の化粧用使用。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1〜11のいずれかに記載の抽出物またはタンパク質もしくはタンパク質混合物。
【請求項13】
炎症の治療のための医薬を製造するための、請求項1〜11のいずれかに記載の抽出物またはタンパク質もしくはタンパク質混合物の使用。
【請求項14】
処理が修飾である請求項9に記載の方法によって得られる抽出物またはタンパク質もしくはタンパク質混合物。

【公表番号】特表2008−518987(P2008−518987A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539501(P2007−539501)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011454
【国際公開番号】WO2006/048158
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】