説明

プレキャストコンクリート部材とその製造方法

【課題】PC部材の表面の仕上げバリエーションの展開を容易にする。
【解決手段】コンクリートの表面に、押型10により模様付けされているPC部材及びその製造方法として、型枠1内に打設されたコンクリートの表面に、そのコンクリートの半硬化状態において押型10で模様付けし、その後に、そのコンクリートを硬化させることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート部材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャストコンクリート部材(以下PC部材という)の表面仕上げは、そのPC部材の打設表面を、金コテ又は刷毛により仕上げるか、或いは、レリーフ版による仕上げである。
【0003】
また、現場打コンクリート部材における表面仕上げも上記と同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の表面仕上げにおいては、金コテ、刷毛引き、レリーフ版によるため、表面の模様等の仕上げのバリエーションが乏しい問題がある。
【0005】
そこで本発明は、部材の表面(使用状態において人から見られる面)の仕上げのバリエーションを拡大できるPC部材とその製造方法を提供するものである。
【0006】
また、現場打ちコンクリートにおける壁面等の垂直面の仕上げ施工は困難であることから、この表面仕上げのバリエーションも乏しかった。そこで、本発明を、例えばPC壁板に適用することにより、現場打コンクリートの壁では施工が困難な模様も容易に得られるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、コンクリート主体部の表面に、押型により凹凸状の模様が付されていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材である。
【0008】
請求項2記載の発明は、型枠内に打設されたコンクリートの表面に、そのコンクリートの半硬化状態において押型で凹凸状の模様を付し、その後に、そのコンクリートを硬化させることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記請求項2記載の発明において、前記の押型による模様付けの前工程として、コンクリートの表面に着色材を散布又は塗布することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記請求項3記載の発明において、前記着色材を散布又は塗布した後に、この着色材の表面に離型材を散布又は塗布することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記請求項2又は3又は4記載の発明において、前記押型は、所定の大きさの板状で、その裏面に凹凸状の型部を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレキャストコンクリート部材において、その表面(打設面)の凹凸の仕上げ模様を、押型によって形成できるため、その模様付けが容易であるとともに、その押型の型形状を種々用意することにより、コンクリート表面の仕上げバリエーションの展開が容易となる。
【0013】
更に、前記のプレキャストコンクリート部材を、プレキャストコンクリート壁版(PC壁版)とし、このPC壁版の表面に前記のように押型で凹凸の模様を付して、このPC壁版を現場に起立設置することにより、前記の模様が付された垂直面を有する壁板となる。そのため、この壁板の模様付けが現場打コンクリートと比べて容易となり、かつ、その壁面仕上げのバリエーションの展開が容易となる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、更に、着色材により、仕上げのバリエーションを拡げることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、更に、押型による模様付け後に押型を脱型する際に、コンクリートや着色材が押型に付着して剥がれることを防止し、押型の良好な脱型が行える。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、更に、押型を、作業しやすく、取扱い、蔵置が容易な大きさにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造方法の実施例を示す工程図。
【図2】本発明により製造されたPC部材(壁版)を示す斜視図。
【図3】本発明の製造方法に使用する押型の表面側から見た斜視図。
【図4】図3の裏面側から見た斜視図。
【図5】図3におけるZ−Z線断面図。
【図6】本発明における型押し時の押型の配置例を示す説明図。
【図7】同じく他の配置例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明のPC部材の製造方法の実施例を示すもので、例えばPC壁版等のPC版の製造方法の実施例を示す。
【0019】
先ず、図1(a)に示すように、工場内において設置されたPC版用の型枠1内に生コンクリート2を打設する。
【0020】
次に、前記のように打設された生コンクリート2の表面(打設面)3を図1(b)に示すように、ならし板4等によりならして不陸を無くす。
【0021】
この不陸を無くした後、所定時間が経過した後のコンクリートの半硬化状態において次の工程に移る。この所定の時間とは、打設されたコンクリートの表面上に作業者が乗っても、その作業者の足がコンクリート内へ沈み込まないが、後工程において、押型10を押圧した場合には、その押型10の型部12が沈み込んで模様付けができる硬さ(半硬化状態)になる時間である。
【0022】
次に、前記生コンクリート2の表面3上に、図1(c)に示すように、粉末状の着色材(ベースカラー)5を、例えば編目を有するふるい6により散布する。該着色材5は、所望の色粉(例えば赤に着色する場合は酸化鉄)を主とし、これにコンクリートと反応して表面を硬化させる成分(例えば硅酸ナトリウム)等を混合したものである。この着色材5は、着色したい色に合せて所望の色粉を用いるものであり、また、2種類以上の色粉を混合したり、更に、表面3上において部分的に色を変えるようにしてもよい。なお、この着色材5の代りに、液状の着色材を用いて、これを塗布してもよい。
【0023】
次に、図1(d)に示すように、木ごて7により、前記着色材5をすり込み、該着色材5と前記生コンクリート2とをなじませる。
【0024】
次に、図1(e)に示すように、前記着色材5上に粉末状の離型材(リリースパウダー)8を、例えば編目を有するふるい9により散布する。該離型材8は、例えば炭酸カルシウムを主原料とする微粉末状のもので、後述する押型10をコンクリート上へ押圧して模様を成形した後にこれを脱型する際に、コンクリート2や着色材5が押型10に付着して剥れることなく、その押型10を容易に脱型できるようにするものである。
【0025】
次に、図1(f)に示すように、前記着色材5、離型材8を有する半硬化状態のコンクリートの表面3A(以下この表面をコンクリート表面3Aという)に押型10により凹凸状の模様付けを行う。
【0026】
この押型10による模様付けについて図3乃至図5により説明する。
図3は押型10を表面側から見た斜視図、図4は、図3の押型10を表裏反転して、押型10の裏面側から見た斜視図、図5は、図3におけるZ−Z線拡大断面図である。
【0027】
押型10は、使用時の表面11a側が平滑面の板状の基板部11と、該基板部11の裏面から一体に突出した型部12とからなり、これらが、硬質ゴムにより一体に形成されている。なお、この硬質のゴムは、該押型10が腰をもって撓むことができ、かつ、型部12が、前記コンクリート表面3A内に圧入できる硬さに設定されている。前記型部12は、コンクリートの表面に形成する模様(図柄)に合せて所望の模様に形成するものであるが、図の実施例では、コンクリート表面3Aに、レンガ模様(タイル模様)を形成する場合の例を示した。
【0028】
このレンガ模様の場合は、図4に示すように、型部12を、横目地模様を形成する横突型12aを複数平行に配置し、縦目地模様を形成する複数の縦突型12bを、前記横突型12a間に千鳥状に配置して構成している。前記各突型12a,12bは板状に形成されている。
【0029】
また、1個の押型10の全体の大きさ、厚み、型部12の突出寸法は所望に設定するが、図の実施例では、押型10の全体の大きさを、横幅約900mm、縦幅約400mmに設定し、全体の厚みを約10〜20mmに設定し、型部12の突出寸法、すなわち、凹部12cの深さを約9mmに設定した。
【0030】
前記の構成により、裏面側に凹凸状の型部12が形成され、全体として板状の押型10となっている。
【0031】
また、前記型部12は、この押型10を複数個、横方向(図4のX−X方向)と縦方向(図4のY−Y方向)に連接配置することにより、レンガ(タイル)模様が連続して形成される形状になっている。すなわち、押型10の横方向(X−X方向)の一端側において、半丁分欠けた切欠部12eと、半丁分突出した部分12fが交互に形成され、また、押型10の他端側において、前記半丁分欠けた切欠部12eの列は半丁分突出した部分12fとし、前記半丁分突出した部分12fの列は半丁分欠けた切欠部12eに形成されている。更に、押型10の縦方向(Y−Y方向)の一端例と他端側は、横方向に半丁分ずれている。
【0032】
前記押型10の表面側には、図3及び図5に示すように取手13が2個固設されている。該取手13は、布片や樹脂片などの可撓性を有する部材で形成され、不使用時には、複数の押型10を重ねて蔵置できるようになっている。
【0033】
そして、前記の押型10を複数個用意して、次のような作業により、コンクリート表面3Aに凹凸の模様を形成する。
【0034】
先ず、前記の押型10を、例えば、前記型枠1における隅部において、型部12を下向きにしてコンクリート表面3A上に載置する。この配置の位置を例えば図6においてAとする。
【0035】
そして、作業者が前記Aの位置の押型10に乗る。これにより、作業者の体重による荷重によって押型10が下降し、その型部12がコンクリート表面3Aより内部へ図1(f)に示すように入り込んで型押しされ、この型部12により溝(目地)16aが形成され、この溝16aによる模様がコンクリート表面3Aに形成される。図の例では凹凸のレンガ模様が形成される。
【0036】
次に、前記の作業者がAの位置の押型10上に乗った状態で、別の押型10を、図6におけるBの位置のコンクリート表面3A上に、前記Aの位置の押型10と柄合せ(模様合せ)した状態で載置する。次に作業者がBの位置の押型10上に乗り移り、前記Aの位置の押型10を取手13を持ってコンクリート表面3Aより脱型し、この押型10を図6におけるCの位置のコンクリート表面3A上に、前記Bの位置の押型10と柄合せした状態で載置する。次に、作業者がCの位置の押型10上に乗り移り、前記Bの位置の押型10を取手13を持ってコンクリート表面3Aより脱型し、この押型10を図6におけるDの位置のコンクリート表面3A上に、前記Cの位置の押型10と柄合せした状態で載置する。次に、作業者はDの位置の押型Dに乗り移る。
【0037】
前記のように、各位置に載置した各押型10上に作業者が乗ることにより、その作業者の荷重によって、前記と同様に各型部12がコンクリート表面3Aに入り込み、その型部12によって連続した凹凸のレンガ模様が形成される。
【0038】
なお、前記図6の実施例では、押型10を2枚用いて、これを4ヶ所に配置する例であるが、PC部材の大きさにより、この配置回数を多くしても少なくしてもよい。
【0039】
また、図7に示すように、先ず、2枚の押型10をコンクリート表面3A上に、実線で示す位置E,Eに連接状態に配置し、これらに作業者が乗って、別の2枚の押型10を鎖線に示す位置F,Fのコンクリート表面3A上に模様合せして配置し、その後、作業者がF,Fの位置の押型10上に乗り移ってもよい。
【0040】
上記の型押し成形後、最後の押型10を脱型する。前記の押型10の脱型時には、前記のようにコンクリート表面の最上面に離型材8を有するため、押型10が、これにコンクリート2や着色材5が付着することなく容易に脱型できる。この押型10の脱型後の状態を図1(g)に示す。また、この養生により硬化したコンクリート主体部を2Aとする。そして、その後、そのPC部材を養生し、所定の硬さまで硬化させる。
【0041】
次に、前記の硬化したコンクリート2Aを型枠1から脱型し、そのコンクリートを更に養生硬化した後に、そのコンクリート表面3Aを、図1(h)に示すように洗浄機14で水洗い清掃する。
【0042】
そして、最後に、塗付器15等により、所望の被覆剤をコンクリート表面3A上に塗付けて仕上げる。
【0043】
以上により、図2に示すような、表面に、押型により凹凸状の模様、すなわち、縦横の溝16aが形成された破れ目地状のレンガ模様(タイル模様)のPC壁版(PC部材)16が製造される。
【0044】
そして、前記のPC壁版16を現場へ搬送して、これを壁として構築することにより、表面に、凹凸面からなる破れ目地状のレンガ模様(タイル模様)が施された壁が形成される。
【0045】
なお、前記実施例は、PC壁版に適用した例であるが、現場で模様を施すことが困難な面を有する部材、例えば、下面を有するひさし部材などを、前記本発明のPC部材とすることにより、下面への模様付けも容易に行える。
【0046】
前記実施例はPC部材に、レンガ(タイル)の破れ目地状の模様を付する例であるが、いも目地模様やその他の所望の模様の型部を有する押型を用いて前記のようにPC部材に凹凸の模様付けをしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 型枠
2 コンクリート
2A コンクリート主体部
3,3A 表面
5 着色材
8 離型材
10 押型
12 型部
16 PC部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート主体部の表面に、押型により凹凸状に模様が付されていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
型枠内に打設されたコンクリートの表面に、そのコンクリートの半硬化状態において押型で凹凸状の模様を付し、その後に、そのコンクリートを硬化させることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項3】
前記の押型による模様付けの前工程として、コンクリートの表面に着色材を散布又は塗布することを特徴とする請求項2記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項4】
前記着色材を散布又は塗布した後に、この着色材の表面に離型材を散布又は塗布することを特徴とする請求項3記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項5】
前記押型は、所定の大きさの板状で、その裏面に凹凸状の型部を有することを特徴とする請求項2又は3又は4記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−31525(P2011−31525A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180853(P2009−180853)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000241474)トヨタT&S建設株式会社 (52)
【Fターム(参考)】