説明

プレハブ式建築物のパネル連結手段

【課題】従来、隣接パネルの連結を各種パネルの外面に露出・突出して取付けた連結金具で行っていたため、該連結金具が建築中及び建築後使用時に邪魔になり、体裁が悪く、また、露出しているため錆、腐蝕を生じ易く耐久性に欠ける課題があった。
【解決手段】隣接パネル1a、1bの一方のパネル1aに埋込ナット5を埋設すると共に他方のパネル1bにナットケース6とスリーブ8を埋設し、連結ボルト7とナット12若しくは袋ナット13を別設し、前記連結ボルト7の一方端ねじ7aをパッキング材14を貫通して埋込ナット5に螺合し、他方端ねじ7bをスリーブ8に挿通してナットケース6内に突出し、ナットケース6内で他方端ねじ1bにナット12若しくは袋ナット13を螺合緊締して、隣接パネル1a、1bをパッキング材14を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたプレハブ式建築物のパネル連結手段によって課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレハブ式建築物、例えば、プレハブ式の冷凍・冷蔵庫、冷凍・冷蔵倉庫、各種倉庫、クリーンルーム、オフィイス、住宅、作業場、その他の建築物を、主として長方形板状の壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネル等の各種パネルを連結して建築するにつき、本発明パネル連結手段をもって隣接した各種パネルをパッキング材を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたことを特徴とする、プレハブ式建築物のパネル連結手段に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような各種のプレハブ式建築物を各種パネルを連結して建築する場合、隣接した各種パネルの外面(庫内側若しくは庫外側)に露出して各種の連結金具を固着すると共に該金具をボルト・ナットその他の手段で連結してパネル相互を圧接衝合した状態で強固一体的に連結して行っていた。
【0003】
然るところ、上記のように各種パネルの外面(庫内側若しくは庫外側)に備えた従来の連結手段は、パネルの外面に突出しているため建築中及び建築後使用時に邪魔になり、体裁が悪く、また、露出しているため錆、腐蝕を生じ易く耐久性に欠ける課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の各種パネルの外面(庫内側若しくは庫外側)に備えた従来の連結手段と異なり、連結手段を全てパネルの内部(肉厚部内)に内蔵して外部に露出しないように備えたことを特徴とするプレハブ式建築物のパネル連結手段を提供して、従来の課題を解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、
パネルを使用してプレハブ式建築物を建築するにつき、隣接パネルの側辺を強固一体的に連結して、該プレハブ式建築物の壁、床、天井、屋根を構成するのに用いるパネル連結手段であり、
【0007】
隣接パネルの一方のパネルの側辺部の肉厚部内に埋込ナットを埋設すると共に他方のパネルの側辺部の肉厚部内に、前面開口のカップの側面に連結ボルトの挿通孔をあけ開口部に蓋を着脱自在に取付けたナットケースを、前記挿通孔とパネル側辺間に連結ボルトを挿通するスリーブを介在し開口部をパネル内面(庫内側)に開口した状態で埋設して、前記埋込ナット、スリーブ、及びナットケースの挿通孔を同一軸線上に備え、
【0008】
また、両端にねじを切った連結ボルトとナット若しくは袋ナットを別設し、
【0009】
前記連結ボルトの一方端ねじを隣接パネル間に介在したパッキング材を貫通して前記埋込ナットに螺合すると共に、他方端ねじを前記スリーブに挿通し前記挿通孔からナットケース内に突出し、該ねじに別設のナット若しくは袋ナットを螺合緊締して、隣接パネルをパッキング材を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたものである、プレハブ式建築物のパネル連結手段によって課題を解決したものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
パネルはプレハブ式建築物の壁、床、天井、屋根を構成する壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネルであって、長方形の側枠材の表裏両面に薄い鉄板を張設し、前記側枠材と表裏鉄板で囲った中空部内に硬質発泡ポリウレタンの充填材を充填硬化して設けたものであり、
【0011】
隣接した前記パネルの一方のパネルの側辺部の肉厚部内に埋込ナットを埋設すると共に他方のパネルの側辺部の肉厚部内に、前面開口のカップの側面に連結ボルトの挿通孔をあけ開口部に蓋を着脱自在に取付けたナットケースを、前記挿通孔とパネル側辺間に連結ボルトを挿通するスリーブを介在し開口部をパネル内面に開口した状態で埋設して、前記埋込ナット、スリーブ、及びナットケースの挿通孔を同一軸線上に備え、
【0012】
また、両端にねじを切った連結ボルトとナット若しくは袋ナットを別設し、
【0013】
前記連結ボルトの一方端ねじを一方のパネルの側枠材及び隣接パネル間に介在するパッキング材を貫通して、前記埋込ナットに螺合し、他方端ねじを他方のパネルの前記スリーブに挿通し前記ナットケースの挿通孔からナットケース内に突出し、該ナットケース内で前記ねじに別設のナット若しくは袋ナットを螺合緊締したのち、該ナットケース内に合成樹脂の充填材を注入充填すると共に開口部に蓋をして、隣接パネルをパッキング材を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたことを特徴とする、請求項1記載のプレハブ式建築物のパネル連結手段によって課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
隣接パネルの一方のパネルの側辺部の肉厚部内に埋込ナットを埋設すると共に他方のパネルの側辺部の肉厚部内にナットケースとスリーブを埋設し、
連結ボルトの一方端ねじを一方のパネルの埋込ナットに螺合すると共に他方端ねじをスリーブに挿通してナットケース内に突出し、ナットケース内でナット若しくは袋ナットを螺合緊締して、隣接パネルを圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたので、
連結手段が全てパネルの肉厚部内に内装された状態となって、全くパネルの外面に露出、突出せず、よって、従来と異なり、建築中(パネル連結等)及び建築後使用時に作業等の邪魔になることが無く、外観、体裁が良く、また、露出している部分が無く、密封された状態であるため錆、腐蝕を生じ難く耐久性に優れる等の効果がある。
【0015】
連結後、ナットケース内に断熱性等の合成樹脂充填材を注入充填すると共に開口部に蓋をすることによって、ナットケース内空間がパネルの断熱性を損なう恐れがなく、体裁が良い特徴があり、また、充填材がナット若しくは袋ナットの緩み止めになる利点がある。
なお、前記充填材は必要に応じて、容易に外部に掻き出すことができる。
【0016】
両端にねじを切った連結ボルトとナット若しくは袋ナットを別設するようにしたので、隣接パネルの連結作業時に、その作業手順に対応して、例えば、
1.予め、連結ボルトの一方端ねじを一方のパネルの埋込ナットに螺合してから、他方端ねじをスリーブに挿通してナットケース内に突出し、ナットケース内でナットを螺合緊締して、隣接パネルを連結する、
2.予め、他方端ねじをスリーブに挿通してナットケース内に突出し、ナットケース内で袋ナットを螺合しておき、ついで、一方端ねじの先端を一方のパネルの埋込ナットのねじ孔につき合わせ、ついで、袋ナットを回転し連結ボルトを回転して埋込ナットに螺合緊締して、隣接パネルを連結する、
等の作業手段を選択的に行なうことが可能であるため、隣接パネルの連結を効率的に行い得る優れた特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、隣接パネル(庫内側の一部を表示)に実施した状態を示す説明正面図である。
【図2】図2は、図1のA-A線断面矢視図である。
【図3】図3は、埋込ナットの一部切断正面図、平面図、及び左側面図である。
【図4】図4は、ナットケースの正面図である。
【図5】図5は、図4のB-B線断面矢視図である。
【図6】図6の、(イ)は連結ボルトの正面図、(ロ)はナット及びワッシャーの正面図、(ハ)は袋ナット及びワッシャーの正面図である。
【図7】図7は、蓋の正面図である。
【図8】図8は、蓋のC-C線断面矢視図である。
【図9】図9は、予め連結ボルトの一方端ねじを埋込ナットに螺合してから隣接パネルを連結する場合の、連結前の説明図である。
【図10】図10は、図9の連結後の説明図である。
【図11】図11は、予め他方端ねじをスリーブに挿通してナットケース内に突出し、ナットケース内で袋ナットを螺合してから隣接パネルを連結する場合の、連結前の説明図である。
【図12】図12は、図11の連結後の説明図である。
【図13】図13は、角部の隣接パネルを連結した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
隣接した前記パネルの一方のパネルの側辺部の肉厚部内に埋込ナットを埋設すると共に他方のパネルの側辺部の肉厚部内に、前面開口のカップの側面に連結ボルトの挿通孔をあけ開口部に蓋を着脱自在に取付けたナットケースを、前記挿通孔とパネル側辺間に連結ボルトを挿通するスリーブを介在し開口部をパネル内面に開口した状態で埋設して、前記埋込ナット、スリーブ、及びナットケースの挿通孔を同一軸線上に備え、また、両端にねじを切った連結ボルトとナット若しくは袋ナットを別設して備えた、プレハブ式建築物のパネル連結手段。
【実施例1】
【0019】
パネル1はプレハブ式建築物の壁、床、天井、屋根を構成する壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネル等であって、長方形の側枠材2の表裏両面に薄い鉄板3を張設し、前記側枠材2と表裏鉄板3、3で囲った中空部内に硬質発泡ポリウレタンの充填材4を充填硬化して設けたものであり、
【0020】
隣接した前記パネル1a、1bの一方のパネル1aの側辺部の肉厚部内に埋込ナット5を埋設すると共に他方のパネル1bの側辺部の肉厚部内に、前面開口のカップの側面に連結ボルト7の挿通孔9をあけ開口部10に蓋11を着脱自在に取付けたナットケース6を、前記挿通孔9とパネル側辺間に連結ボルト7を挿通するスリーブ8を介在し開口部10をパネル1b内面(庫内側)に開口した状態で埋設して、前記埋込ナット5、スリーブ8、及びナットケース6の挿通孔9を同一軸線上に備え、
【0021】
また、両端にねじを切った連結ボルト7とナット12若しくは袋ナット13を別設し、
【0022】
前記連結ボルト7の一方端ねじ7aを一方のパネル1aの側枠材2及び隣接パネル1a、1b間に介在するパッキング材14を貫通して、前記埋込ナット5に螺合し、他方端ねじ7bを他方のパネル1bの前記スリーブ8に挿通し前記ナットケース6の挿通孔9からナットケース6内に突出し、該ナットケース6内で前記ねじ1bに別設のナット12若しくは袋ナット13を螺合緊締したのち、該ナットケース6内に断熱性合成樹脂等の充填材15を注入充填すると共に開口部10に蓋11をして、隣接パネル1a、1bをパッキング材14を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたプレハブ式建築物のパネル連結手段である。
【0023】
例えば、連結した隣接パネル1a、1bを分離する場合は、該ナットケース6内に充填した断熱性合成樹脂等の充填材15を外部に掻き出し、ナット12若しくは袋ナット13を取外して行うものである。
【0024】
隣接パネル1a、1bの連結作業は、例えば、
(1).予め、連結ボルト7の一方端ねじ7aを一方のパネル1aの埋込ナット5に螺合してから、他方端ねじ7bをスリーブ8に挿通してナットケース6内に突出し、ナットケース6内でナット12を螺合緊締して連結する、
(2).予め、他方端ねじ7bをスリーブ8に挿通してナットケース6内に突出し、ナットケース6内で袋ナット13を螺合しておき、ついで、一方端ねじ7aの先端を一方のパネル1aの埋込ナット5のねじ孔につき合わせ、ついで、袋ナット13を回転し連結ボルト7を回転して埋込ナット5に螺合緊締して連結する、等そのときどきに適した作業手順で行なうようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、予め、パネルに埋込ナット、スリーブ、ナットケースを埋設して備えると共に連結ボルト、ナット、袋ナットを用意するだけで、各種プレハブ式建築物の各種パネルの連結手段として汎用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 パネル
1a 一方パネル
1b 他方パネル
2 側枠材
3 鉄板
4 充填材(パネル用)
5 埋込ナット
6 ナットケース
7 連結ボルト
7a 一方端ねじ
7b 他方端ねじ
8 スリーブ
9 挿通孔
10 開口部
11 蓋
12 ナット
13 袋ナット
14 パッキング材
15 充填材(ナットケース用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを使用してプレハブ式建築物を建築するにつき、
隣接パネルの側辺を強固一体的に連結して、該プレハブ式建築物の壁、床、天井、屋根を構成するのに用いるパネル連結手段であり、
隣接パネルの一方のパネルの側辺部の肉厚部内に埋込ナットを埋設すると共に他方のパネルの側辺部の肉厚部内に、前面開口のカップの側面に連結ボルトの挿通孔をあけ開口部に蓋を着脱自在に取付けたナットケースを、前記挿通孔とパネル側辺間に連結ボルトを挿通するスリーブを介在し開口部をパネル内面に開口した状態で埋設して、前記埋込ナット、スリーブ、及びナットケースの挿通孔を同一軸線上に備え、
両端にねじを切った連結ボルトとナット若しくは袋ナットを別設し、
前記連結ボルトの一方端ねじを隣接パネル間に介在したパッキング材を貫通して前記埋込ナットに螺合すると共に、他方端ねじを前記スリーブに挿通し前記挿通孔からナットケース内に突出し、該ねじに別設のナット若しくは袋ナットを螺合緊締して、隣接パネルをパッキング材を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたものである、
プレハブ式建築物のパネル連結手段。
【請求項2】
パネルはプレハブ式建築物の壁、床、天井、屋根を構成する壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネルであって、長方形の側枠材の表裏両面に薄い鉄板を張設し、前記側枠材と表裏鉄板で囲った中空部内に硬質発泡ポリウレタンの充填材を充填硬化して設けたものであり、
隣接した前記パネルの一方のパネルの側辺部の肉厚部内に埋込ナットを埋設すると共に他方のパネルの側辺部の肉厚部内に、前面開口のカップの側面に連結ボルトの挿通孔をあけ開口部に蓋を着脱自在に取付けたナットケースを、前記挿通孔とパネル側辺間に連結ボルトを挿通するスリーブを介在し開口部をパネル内面に開口した状態で埋設して、前記埋込ナット、スリーブ、及びナットケースの挿通孔を同一軸線上に備え、
両端にねじを切った連結ボルトとナット若しくは袋ナットを別設し、
前記連結ボルトの一方端ねじを一方のパネルの側枠材及び隣接パネル間に介在するパッキング材を貫通して、前記埋込ナットに螺合し、他方端ねじを他方のパネルの前記スリーブに挿通し前記ナットケースの挿通孔からナットケース内に突出し、該ナットケース内で前記ねじに別設のナット若しくは袋ナットを螺合緊締したのち、該ナットケース内に合成樹脂の充填材を注入充填すると共に開口部に蓋をして、隣接パネルをパッキング材を介し圧接衝合した状態で強固一体的に連結するように備えたことを特徴とする、
請求項1記載のプレハブ式建築物のパネル連結手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−196434(P2010−196434A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45664(P2009−45664)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(598145381)ビーエスドアー 株式会社 (6)
【Fターム(参考)】