説明

プロジェクタ、端末及び画像通信システム

【課題】被映写領域の全面に映写される通信信号担持光が重畳された画像を介して、不特定多数の端末との間で高速な双方向通信を可能とする。
【解決手段】被映写領域20上で光画像ビームBを走査させて画像を映写するプロジェクタ12であって、画像信号を出力する画像信号生成部と、通信信号を出力する通信信号生成部34と、画像信号を通信信号で強度変調して、変調済画像信号を出力する変調部42と、変調済画像信号で駆動されて、画像信号に対応する画像信号担持光と、通信信号に対応する通信信号担持光とを含む光画像信号IBを発生する光画像信号発生部と、光画像信号を光画像ビームに変換する光画像ビーム発生部54と、被映写領域から反射された通信信号担持光を受信した端末から送信される、通信信号担持光の通信信号に対する応答情報を受信するプロジェクタ側受信部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信信号担持光を画像に重畳して映写するプロジェクタ、映写された通信信号担持光を受信する端末、及び、このプロジェクタと1個以上の端末とで構成される画像通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン上に投影された画像に対して操作を行うことで、画像の送信元(例えばパソコン等)を制御する機器が知られている。
【0003】
例えば、スクリーン上に映写されたパソコン画面の座標を記憶し、かつ、このパソコンと無線通信で接続されたレーザポインタ付き端末を用いる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置によれば、端末のレーザポインタが、いわばマウスとして機能し、スクリーン上でパソコンの制御を行うことができる。
【0004】
また、感圧センサを設けたスクリーンに画像を投影する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、スクリーンに対してタッチペン等で図形を入力し、この図形を感圧センサにより検知して、スクリーン上の画像を更新する。
【0005】
また、データ通信機能と画像を映写するプロジェクタの両機能を併せ持つ画像表示装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、対象物を表示する画像を投影するとともに撮影し、撮影した画像を画像処理することにより対象物を認識する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。この技術によれば、認識した対象物に関する追加情報を付加して、投影される画像を更新する。
【0007】
また、データ通信を行うLEDと、画像を表示するLEDを一枚の展示パネル上に配置した通信システムが知られている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2004−128916号公報
【特許文献2】米国特許4371893号明細書
【特許文献3】特開2000−174707号公報
【特許文献4】特開2001−211372号公報
【特許文献5】特開2005−236667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された技術は、レーザポインタの高機能化を目的としており、画像中の特定領域に対して不特定多数の観客がアクセスすることができない。
【0009】
また、特許文献2に記載された技術では、タッチペンの操作者とスクリーンとが近接しているために、多数の観客が画像に対してアクセスすることができない。
【0010】
また、特許文献3に記載された技術では、データ通信と画像映写とを同時に行うことができない。
【0011】
また、特許文献4に記載された技術では、画像処理等が行われるために、高速な通信を行うことができない。
【0012】
更に、特許文献5に記載された技術では、消費電力を低減するために、2次元的に配置されたLEDアレイの一部を通信に用いる。したがって、展示パネルの全面を使って画像を表示することができない。
【0013】
したがって、(1)不特定多数の端末との間で双方向通信が可能であり、(2)通信速度が高速であり、(3)画像映写とデータ通信とを同時に行うことができ、及び(4)被映写領域の全面に画像を映写できる技術が望まれていた。
【0014】
よって、この発明の第1の目的は、被映写領域の全面に映写される、通信信号担持光が重畳された画像を介して、不特定多数の端末との間で高速な双方向通信が可能であるプロジェクタを提供することにある。
【0015】
また、この発明の第2の目的は、上述のプロジェクタとの間で双方向通信が可能な端末を提供することにある。
【0016】
更に、この発明の第3の目的は、上述のプロジェクタ及び端末からなる画像通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の第1の要旨によれば、被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するための第1のプロジェクタが提供される。この発明の第1のプロジェクタは、画像信号生成部と、通信信号生成部と、変調部と、光画像信号発生部と、光画像ビーム発生部と、プロジェクタ側受信部とを備える。
【0018】
画像信号生成部は画像信号を出力する。通信信号生成部は通信信号を出力する。変調部は、画像信号の信号強度を通信信号の信号強度で変調して、変調済画像信号を出力する。
【0019】
光画像信号発生部は、変調済画像信号で駆動されて、画像信号に対応する光成分としての画像信号担持光と、通信信号に対応する光変調成分としての通信信号担持光とを含む光画像信号を発生する。
【0020】
光画像ビーム発生部は、光画像信号を光画像ビームに変換する。
【0021】
プロジェクタ側受信部は、被映写領域から反射された通信信号担持光を受信した端末から送信される、通信信号担持光の通信信号に対する応答情報を受信する。
【0022】
このように構成することにより、第1のプロジェクタは、被映写領域上に、画像信号が通信信号で変調された変調済画像信号に対応する光画像ビームを映写することができる。つまり、被映写領域に画像とともに通信信号担持光を映写することができる。また、第1のプロジェクタはプロジェクタ側受信部を備えている。これらの結果、端末は、被映写領域に映写された画像からの反射光を介して通信信号担持光を受信し、受信した情報に基づいてプロジェクタに応答情報を送信することができる。つまり、プロジェクタと端末との間で双方向通信を行うことができる。
【0023】
なお、ここで、端末からの「応答情報」とは、無線通信や光通信等にかかわりなく、端末からプロジェクタ側受信部に対して、情報を送信することを意味する。
【0024】
上述の第1のプロジェクタの実施に当たり、画像信号生成部が、画像信号とともに副画像信号を発生する被変調画像信号選択部を更に備え、副画像信号で駆動されて、副画像信号を副光画像信号に変換する副光画像信号発生部を備え、光画像ビーム発生部が、光画像信号と副光画像信号とを合成した光画像ビームを発生してもよい。
【0025】
このように構成することにより、波長が異なる光画像信号と副光画像信号とを、光画像ビーム発生部で合成することができる。その結果、光画像信号及び副光画像信号を光の三原色の赤(R)、緑(G)及び青(B)にそれぞれ対応させることにより、第1のプロジェクタは、カラー画像を通信信号担持光とともに被映写領域に映写することができる。
【0026】
したがって、この場合において、光画像信号発生部及び副光画像信号発生部のそれぞれは、可視光を発生する1個以上のLEDを備え、LEDの合計個数は3個以上であり、3個以上のLEDには、光の三原色のそれぞれに対応する波長の可視光を発生するLEDが少なくとも含まれていることが好ましい。
【0027】
このように構成することにより、第1のプロジェクタは、フルカラー画像を通信信号担持光とともに被映写領域に映写することができる。
【0028】
この発明の第2の要旨によれば、被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するための第2のプロジェクタが提供される。この発明の第2のプロジェクタは、画像信号生成部と、通信信号生成部と、光画像信号発生部と、光通信信号発生部と、光画像ビーム発生部と、プロジェクタ側受信部とを備える。
【0029】
画像信号生成部は画像信号を出力する。通信信号生成部は通信信号を出力する。光画像信号発生部は、画像信号を画像信号担持光に変換して光画像信号として出力する。
【0030】
光通信信号発生部は、通信信号を光画像信号の波長帯域以外の波長の通信信号担持光に変換して光通信信号として出力する。
【0031】
光画像ビーム発生部は、光画像信号と光通信信号とを合成した前記光画像ビームを発生する。
【0032】
プロジェクタ側受信部は、被映写領域から反射された通信信号担持光を受信した端末から送信される通信信号担持光の、通信信号に対する応答情報を受信する。
【0033】
このように構成することにより、第2のプロジェクタは、被映写領域上に、画像信号担持光と通信信号担持光とを含む光画像ビームを映写することができる。つまり、被映写領域に画像とともに通信信号担持光を映写することができる。また、第2のプロジェクタはプロジェクタ側受信部を備えている。これらの結果、プロジェクタと端末との間で双方向通信を行うことができる。
【0034】
上述の第2のプロジェクタの実施に当たり、通信信号担持光が赤外光であってもよい。また、光通信信号発生部が、赤外光を放射するLEDを備えていてもよい。
【0035】
このように通信信号担持光として、非可視光である赤外光を用いることにより、画像信号担持光を構成する光(例えばRGB)の波長数にかかわりなく、通信信号担持光の波長数を増やすことができる。その結果、通信チャネル数を増やすことができる。
【0036】
上述の第1及び第2のプロジェクタにおいて、被映写領域が、いわゆる映写用のスクリーンであってもよい。
【0037】
このように構成することにより、画像信号担持光に通信信号担持光が部分的に重畳された画像を、スクリーンに表示させることができる。
【0038】
上述の第1及び第2のプロジェクタにおいて、被映写領域に複数の走査線が走査されており、この走査線の走査方向に関して被映写領域をi等分(iは2以上の整数。)する長さを有し、及び、走査線の走査方向に直交する方向に関してi本以上の走査線を含む長さを有する情報区画領域で、被映写領域が区切られていることが好ましい。そして、この情報区画領域が、通信信号担持光が画像を介して送信する情報の単位となっていてもよい。
【0039】
このように構成することにより、プロジェクタが送信する情報を、1個の情報区画領域内で完結させることができる。またこの構成によれば、情報区画領域を走査線の走査方向に関してi個設け、及び、個々の情報区画領域にi本以上の走査線を含ませることができる。これにより、走査線の走査方向に沿って並ぶ、i個の情報区画領域のそれぞれに、確実に1個以上の走査点を存在させることができる。
【0040】
ここで、「走査点」とは、走査線上における光画像ビームの収束点を示す。また、個々の情報区画領域で通信信号担持光が送信する情報量の最大値を、情報区画領域に含まれる走査線数と、1本の光画像ビームが1個の情報区画領域を走査するのに要する時間と、通信信号担持光の通信速度とを乗じた量とすることができる。
【0041】
この場合において、被映写領域に映写される画像は、1個以上の情報区画領域が配置され、かつ被映写領域上で移動可能かつ大きさが可変である画像区画領域を含んでいてもよい。ここで、上述の画像は、この画像区画領域をj個(jは1以上の整数)同時に含むことが好ましい。更に、これらの画像区画領域の各々において、1個の画像区画領域を構成する全ての情報区画領域からは、等しい情報を担持した通信信号担持光が送信されることが好ましい。
【0042】
このように構成することにより、被映写領域上にj個の異なる画像区画領域を映写することができる。更に、画像区画領域ごとに異なる情報を送信することができる。
【0043】
上述の第1及び第2のプロジェクタにおいて、プロジェクタ側受信部が受信した端末からの応答情報に応じた処理を行うプロジェクタ側処理部が更に設けられていることが好ましい。
【0044】
このように構成することにより、第1及び第2のプロジェクタは、端末からの応答情報に対応した処理を行うことができる。
【0045】
上述の第1及び第2のプロジェクタにおいて、プロジェクタ側受信部は、無線通信で行われる端末からの応答情報を受信する受信機であってもよい。
【0046】
このように構成することにより、プロジェクタは、端末からの応答情報を無線通信で受信することができる。
【0047】
上述の第1及び第2のプロジェクタにおいて、プロジェクタ側受信部は、光通信で行われる端末からの応答情報を受信する光受信機であり、光受信機が、被映写領域の背後に配置されていてもよい。
【0048】
このように構成することにより、プロジェクタは、端末からの応答情報を光通信で受信することができる。
【0049】
また、この発明の第3の要旨によれば、下記の構成を備える、上述のプロジェクタから送信される通信信号担持光を受信する端末が提供される。この端末は、好ましくは、望遠光学系と、端末側受信部と、端末側処理部と、送信部とを備える。
【0050】
望遠光学系は、通信信号担持光を受信すべき情報区画領域を含む画像の一部領域を拡大して表示する。
【0051】
端末側受信部は、情報区画領域から送信される通信信号担持光を受信する。
【0052】
端末側処理部は、受信した通信信号担持光に含まれる情報を処理する。
【0053】
送信部は、処理された情報が、プロジェクタに対する応答要求を含む場合に、応答要求に応じた応答情報をプロジェクタに向けて送信する。
【0054】
このように構成することにより、端末は、望遠光学系で拡大された情報区画領域から送信される通信信号担持光を受信することができる。そして、端末側処理部において、受信した通信信号担持光が担持する情報に応じた処理を行うことができる。更に、この情報にプロジェクタに対する応答要求が含まれる場合には、送信部からプロジェクタに向けて応答情報を送信することができる。
【0055】
上述の端末において、端末は、端末側処理部により処理された情報が、端末に対する情報表示要求を含む場合に、情報表示要求に応じて、情報を表示するディスプレイを備えていてもよい。
【0056】
このように構成することにより、通信信号担持光により送信された情報を、端末のディスプレイに表示させることができる。
【0057】
上述の端末において、端末は、端末側処理部により処理された情報が、端末に対する情報発音要求を含む場合に、情報発音要求に応じて、情報を発音する発音装置を備えていてもよい。
【0058】
このように構成することにより、通信信号担持光により送信された情報を、端末の発音装置から発音させることができる。
【0059】
また、この発明の第4の要旨によれば、下記の構成を備える画像通信システムが提供される。この画像通信システムは、被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するための上述した第1のプロジェクタと、この第1のプロジェクタから送信される通信信号担持光を受信する1個以上の端末とを含む。
【0060】
プロジェクタは、画像信号生成部と、通信信号生成部と、変調部と、光画像信号発生部と、光画像ビーム発生部と、プロジェクタ側受信部とを備える。
【0061】
画像信号生成部は画像信号を出力する。通信信号生成部は通信信号を出力する。変調部は、画像信号を通信信号で変調して、変調済画像信号を出力する。
【0062】
光画像信号発生部は、変調済画像信号で駆動されて、画像信号に対応する光成分としての画像信号担持光と、通信信号に対応する光変調成分としての通信信号担持光とを含む光画像信号を発生する。
【0063】
光画像ビーム発生部は、光画像信号を光画像ビームに変換する。
【0064】
プロジェクタ側受信部は、被映写領域から反射された通信信号担持光を受信した端末から送信される、通信信号担持光の通信信号に対する応答情報を受信する。
【0065】
端末は、望遠光学系と、端末側受信部と、端末側処理部と、送信部とを備えている。
【0066】
望遠光学系は、通信信号担持光を受信すべき画像の一部領域を拡大して表示する。
【0067】
端末側受信部は、画像の一部領域から送信される通信信号担持光を受信する。
【0068】
端末側処理部は、受信した通信信号担持光に含まれる情報を処理する。
【0069】
送信部は、処理された情報が、プロジェクタに対する応答要求を含む場合に、応答要求に応じた応答情報をプロジェクタに向けて送信する。
【0070】
また、この発明の第5の要旨によれば、下記の構成を備える画像通信システムが提供される。この画像通信システムは、被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するためのプロジェクタと、プロジェクタから送信される通信信号担持光を受信する1個以上の端末とを含む。
【0071】
プロジェクタは、画像信号生成部と、通信信号生成部と、光画像信号発生部と、光通信信号発生部と、光画像ビーム発生部と、プロジェクタ側受信部とを備える。
【0072】
画像信号生成部は画像信号を出力する。通信信号生成部は通信信号を出力する。光画像信号発生部は、画像信号を画像信号担持光に変換して光画像信号として出力する。光通信信号発生部は、通信信号を光画像信号の波長帯域以外の波長の通信信号担持光に変換して光通信信号として出力する。
【0073】
光画像ビーム発生部は、光画像信号と光通信信号とを合成した前記光画像ビームを発生する。
【0074】
プロジェクタ側受信部は、被映写領域から反射された通信信号担持光を受信した端末から送信される、通信信号担持光の通信信号に対する応答情報を受信する。
【0075】
端末は、望遠光学系と、端末側受信部と、端末側処理部と、送信部とを備えている。
【0076】
望遠光学系は、通信信号担持光を受信すべき画像の一部領域を拡大して表示する。
【0077】
端末側受信部は、画像の一部領域から送信される通信信号担持光を受信する。
【0078】
端末側処理部は、受信した通信信号担持光に含まれる情報を処理する。
【0079】
送信部は、処理された情報が、プロジェクタに対する応答要求を含む場合に、応答要求に応じた応答情報をプロジェクタに向けて送信する。
【発明の効果】
【0080】
この発明の第1及び第2のプロジェクタは、上述のように構成されている。したがって、第1及び第2のプロジェクタは、いずれも被映写領域の全面に映写される通信信号担持光が重畳された画像を介して、不特定多数の端末との間で高速な双方向通信が可能である。
【0081】
また、上述のプロジェクタとの間で双方向通信が可能な端末が得られる。
【0082】
更に、上述のプロジェクタ及び端末からなり、不特定多数の端末との間で、映写された画像を介して高速な双方向通信を行うことができる画像通信システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示したものにすぎない。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。したがって、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。
【0084】
(実施の形態1)
(1)画像通信システムの概略構成
図1を参照して、実施の形態1の画像通信システムの構成及び動作の概略について説明する。図1は、画像通信システムの構成を概略的に示す模式図である。なお、この発明の理解を助けるために、画像通信システムにより映画が映写されているものとして説明を行う。また、画像通信システムを構成する個別の構成要素については後述する。
【0085】
図1に示す画像通信システム10は、プロジェクタ12と端末14を備えている。この例では、端末14として第1及び第2端末14a及び14bを設けている。
【0086】
プロジェクタ12は、プロジェクタ本体16と、プロジェクタ側受信部18とを備えている。
【0087】
プロジェクタ本体16は、スクリーン20の走査線数をk本(kは1以上の整数)とするとき、k個の発光部及びk個の走査部を備えている。なお、発光部及び走査部の詳細については後述する。
【0088】
プロジェクタ本体16からは、画像信号担持光IB及び通信信号担持光SBの両信号を含む光画像ビームBが、被映写領域としてのスクリーン20に向けて映写されるとともに、スクリーン20上で走査されて、スクリーン20上に画像が映出される。
【0089】
ここで、画像信号担持光IBは、スクリーン20上に画像を映写するための光信号である。また、通信信号担持光SBは、当該画像を介して端末14a,14bに対して情報を送信するための光信号である。これにより、被映写領域としてのスクリーン20には、通信信号担持光SBを含んだ画像が映写される。
【0090】
プロジェクタ側受信部18は、スクリーン20の背後に設けられた光受信機である。プロジェクタ側受信部18は、スクリーンの全面積にわたって、2次元状に配列された受光素子からなる。プロジェクタ側受信部18は、端末14a及び14bからの応答情報である応答光信号TSを受信する機能を有する。
【0091】
なお、プロジェクタ本体16とプロジェクタ側受信部18とは、ケーブル22により接続されている。このケーブル22を経て、プロジェクタ側受信部18が受信した応答光信号TSはプロジェクタ本体16に伝送される。
【0092】
スクリーン20は、矩形平面状の映写幕である。スクリーン20は、光画像ビームBを反射させるが、応答光信号TSを透過させる膜として構成されている。スクリーン20上で上述した光画像ビームBが走査されることで、通信信号担持光SBを含んだ画像が映写される。スクリーン20とプロジェクタ側受信部18との間には、端末14a及び14bから送信される応答光信号TSを透過するためのフィルタ15が設けられている。
【0093】
図1に示す例では、スクリーン20上には、2個の画像区画領域F及びFが映写されている。画像区画領域Fは、小さな矩形状の複数の情報区画領域IU,IU,・・・に区画されている。同様に、画像区画領域Fも、小さな矩形状の複数の情報区画領域IU,IU,・・・に区画されている。各情報区画領域は、画像の変化の最小単位領域であって、形状及び大きさは同一であるとする。つまり、画像区画領域F及びFは、プロジェクタ本体16の制御下で、情報区画領域IU及びIUを移動の最小単位として、それぞれ、スクリーン20上を任意に移動可能である。また、画像区画領域F及びFは、プロジェクタ本体16の制御下で、情報区画領域IU及びIUを変形の最小単位として、それぞれ、その大きさ及び形状を変更可能である。
【0094】
映画の例で言えば、これらの画像区画領域F及びFのそれぞれは、例えば2人の人物が映写されている領域に設定されているとする。つまり、スクリーン20上で人物の各々が占有する領域に画像区画領域F及びFが設定されているとする。そして、画像区画領域F及びFは、スクリーン20上での人物の移動や大きさの変化などに応じて、それぞれの平面形状及び大きさが自在に変化する。
【0095】
画像区画領域F及びFには、画像信号担持光IB及びIBとともに通信信号担持光SB及びSBがそれぞれ映写されている。詳しくは後述するが、通信信号担持光SB及びSBに含まれる情報は、情報区画領域IU及びIUを単位としている。すなわち、通信信号担持光SBと情報区画領域IUとが対応し、及び通信信号担持光SBと情報区画領域IUとが対応している。つまり、通信信号担持光SB及びSBは、個々の画像区画領域F及びFの表示範囲内で同じ情報を担持している。このことは、情報区画領域IU及びIUから送信される通信信号担持光SB及びSBに含まれる情報は、同一の画像区画領域F及びF内であれば、情報区画領域の場所によらず同一であることを意味する。なお、これら画像区画領域及び情報区画領域については後述する。
【0096】
ここで、通信信号担持光SB及びSBが、プロジェクタ12に対する応答要求を含んでいる場合を考える。これは、通信信号担持光SB及びSBが担持する情報の中に、観客に対する設問等が含まれている場合に相当する。
【0097】
映画の例で言えば、通信信号担持光SB及びSBからもたらされる情報が、いずれも、例えば、“人物のプロフィール”、及び“人物の好き嫌いを問う設問”(応答要求)を含んでいるものとする。
【0098】
端末14は、望遠光学系、端末側受信部、端末側処理部及び送信部を備えている。なお、これらの各部の詳細については後述する。なお、図1では端末14が2個のみ描かれているが、端末14の個数は2個には限定されない。映画の例で言えば、端末14は、不特定多数の映画の観客が、それぞれ1台ずつ保持していてもよい。
【0099】
上映中に観客が、端末14を、情報を取得したい画像区画領域F又はFに向けると、端末14は、スクリーン20上に映写された画像から送信される通信信号担持光SBを受信する。すなわち、通信信号担持光SB又はSBは、スクリーン20で反射されて端末側受信部に受信される。
【0100】
端末14により受信された通信信号担持光SB又はSBは、端末側処理部で情報処理され、担持された情報が取り出される。そして、端末14のディスプレイ等の出力装置に、通信信号担持光SB又はSBの情報の内容が表示される。
【0101】
映画の例で言えば、観客が端末14を画像区画領域F又はFに向けることにより、端末14は、画像区画領域F又はFで反射された通信信号担持光SB又はSBを受信する。そして、端末14のディスプレイに“人物のプロフィール”及び“設問”が表示される。
【0102】
観客は、端末14に設けられた入力装置を操作することにより、上述の応答要求に応じた応答をプロジェクタ12に対して送信する。すなわち、入力装置からの入力は、端末側処理部を経て送信部から応答光信号TSとして出射される。ここで、応答光信号TSは、例えば、肉眼では検知できない赤外光とするのが好適である。
【0103】
この応答光信号TSは、フィルタ15を透過し、スクリーン20の背後に設けられたプロジェクタ側受信部18で受信される。なお、スクリーン20とプロジェクタ側受信部18との間には、赤外光のみを透過するフィルタ15が設けられているので、スクリーン20上の画像からの光と、応答光信号TSとは干渉しない。プロジェクタ側受信部18で受信された応答光信号TSは、ケーブル22を経てプロジェクタ本体16に転送される。
【0104】
映画の例で言えば、不特定多数の観客は、端末14に設けられた、例えば押しボタン等の入力装置を操作して、上述の設問に対する回答して「好き」又は「嫌い」のどちらかを入力する。入力された“好き嫌い情報”は、応答光信号TSとして送信部からプロジェクタ側受信部18に向けて送信される。この“好き嫌い情報”は、プロジェクタ本体16で集計される。
【0105】
(2)プロジェクタ
次に、図2〜図7を参照して、画像通信システム10を構成するプロジェクタ12について説明する。
【0106】
まず、図2を参照して、プロジェクタ12の全体構成について説明する。図2は、プロジェクタ12の機能ブロック図である。
【0107】
上述のように、プロジェクタ12は、プロジェクタ本体16とプロジェクタ側受信部18とを備えている。
【0108】
プロジェクタ本体16は、プロジェクタ側処理部としてのメインコントローラ30、k個の発光部31〜31、及びk個の走査部28〜28を備えている。ここで、発光部31〜31及び走査部28〜28は、スクリーン20の走査線数(k本)と等しい個数設けられている。
【0109】
発光部31〜31はそれぞれ等しい構成を有している。同様に、走査部28〜28もそれぞれ等しい構成を有している。したがって、以下の説明では、一組の発光部31及び走査部28を代表として抜き出して説明する。
【0110】
プロジェクタ側処理部は、メインコントローラ30として構成されている。メインコントローラ30は、画像信号生成部を構成する画像メモリ32と、通信信号生成部34と、同期信号出力部36と、情報処理部38と、これら画像メモリ32、通信信号生成部34、同期信号出力部36及び情報処理部38を制御する制御部39とを備えている。なお、情報処理部38及び制御部39は、中央演算処理装置(CPU)で構成されている。
【0111】
画像メモリ32には、あらかじめ撮影して得られた画像用電気信号がデジタル信号の形態で記憶されている。より詳細には、画像用電気信号は、光の三原色ごとに対応する電気信号、つまり、赤色画像信号(以下、「R信号」と称する。)、緑色画像信号(以下、「G信号」と称する。)及び青色画像信号(以下、「B信号」と称する。)として画像メモリ32に格納されている。これらR,G及びBの各信号は、それぞれスクリーン20に映写される画像の情報を担持している。また、これら各信号のうちR信号の画像信号は、画像信号担持光IBのソース信号としての役割を果たす信号である。
【0112】
通信信号生成部34には、その内部メモリ34aに画像信号に重畳されるべき通信信号がデジタル信号で記憶されている。つまり、通信信号は、通信信号担持光SBのソース信号である。この通信信号は、事前の編集により、画像信号担持光IB用の画像信号と対応するようにあらかじめ準備されている。つまり、図1の例で言えば、画像区画領域F及びFに対応づけられた通信信号(通信信号担持光SB及びSBのソース信号)が、前もって通信信号生成部34の内部メモリ34aに記憶されている。
【0113】
同期信号出力部36は、画像信号と通信信号とを重ね合わせるタイミング、LEDの駆動タイミング、及びミラー60の駆動タイミングを制御する同期信号を出力する。
【0114】
情報処理部38は、端末14からプロジェクタ側受信部18に向けて送信される応答光信号TSの処理を行う。
【0115】
発光部31は、画像信号生成部を構成する被変調画像信号選択部40と、変調部42と、光画像信号発生部としてのR−LED50Rと、副光画像信号発生部としてのG−LED50G及びB−LED50Bと、光画像ビーム発生部としての投影光学系54とを備える。このように、発光部31は、光の三原色に対応する光を放射するLED(R−LED50R,G−LED50G及びB−LED50B)を備えている。
【0116】
被変調画像信号選択部40には、画像メモリ32から読出されたデジタル信号の画像用電気信号が、D/A変換部41aでアナログ信号に変換されて入力される。被変調画像信号選択部40は、画像用電気信号を、それぞれアナログ信号の画像信号と副画像信号とに分離する。
【0117】
より詳細には、被変調画像信号選択部40は、R,G及びB信号の中から、通信信号で変調されるべきアナログ画像用電気信号、すなわち被変調画像信号を選択する。ここで、この被変調画像信号をR信号とし、このR信号を画像信号と称し、及び、変調を受けないG信号及びB信号を副画像信号と称する。
【0118】
そして、被変調画像信号選択部40は、画像信号としてのR信号を変調部42に、並びに副画像信号としてのG信号及びB信号をG−LED50G及びB−LED50Bにそれぞれ出力する。
【0119】
変調部42は、被変調画像信号選択部40とR−LED50Rとの間に介在されている。変調部42には、被変調画像信号選択部40からのR信号、及び、通信信号生成部34からの通信信号の両者が入力される。なお、通信信号生成部34からの通信信号は、D/A変換部41bでアナログ信号に変換されて、変調部42へと入力される。
【0120】
変調部42は、同期信号出力部36から出力される同期信号にタイミングを合わせて、R信号の信号強度を通信信号の信号強度で強度変調する。以降、通信信号で変調されたR信号を「変調R信号」と称する。この変調R信号が変調済画像信号に対応する。このようにして生成された変調R信号は、R−LED50Rに向けて出力される。このような手順で、通信信号の信号強度がR信号の信号強度へと重畳される。
【0121】
R−LED50Rは、赤色の光を発生するLEDであり、光画像信号発生部として機能する。R−LED50Rは、同期信号出力部36から出力される同期信号にタイミングを合わせて、変調R信号で駆動される。
【0122】
R−LED50Rは、変調R信号で駆動されることにより画像信号に対応する光成分としての画像信号担持光IBと、通信信号に対応する光変調成分としての通信信号担持光SBとを含む光画像信号IBを発生する。
【0123】
そして、R−LED50Rは、この光画像信号IBを投影光学系54に向けて照射する。なお、光画像信号IBの詳細については、図5において後述する。
【0124】
G−LED50G及びB−LED50Bは、それぞれ、緑色及び青色の光を発生するLEDである。G−LED50G及びB−LED50Bは、副光画像信号発生部として機能する。
【0125】
G−LED50Gは、同期信号出力部36から出力される同期信号にタイミングを合わせて、副画像信号としてのG信号で駆動されて、G信号を副光画像信号IBに変換する。G−LED50Gで発生された副光画像信号IBは、投影光学系54に向けて照射される。
【0126】
B−LED50Bは、同期信号出力部36から出力される同期信号にタイミングを合わせて、副画像信号としてのB信号で駆動されて、B信号を副光画像信号IBに変換する。G−LED50Bで発生された副光画像信号IBは、投影光学系54に向けて照射される。
【0127】
投影光学系54は、R−LED50Rから照射された光画像信号IBと、G−LED50Gから照射された副光画像信号IBと、B−LED50Bから照射された副光画像信号IBとをカラー合成して1本の光画像ビームBとした上で、走査部28のミラー60に向けて照射する。なお、投影光学系54の詳細については後述する。
【0128】
走査部28は、ミラー60を備えている。ミラー60は、同期信号出力部36から出力される同期信号にタイミングを合わせて、不図示のアクチュエータにより駆動される。ミラー60は、MEMS(Micro Electrical Mechanical System)技術を用いて作成されている。ミラー60は、アクチュエータの運動により回転振動し、投影光学系54から照射された光画像ビームBを、スクリーン20上で走査させる。
【0129】
プロジェクタ側受信部18は、フォトダイオードを2次元のアレイ状に配置したものである。プロジェクタ側受信部18で受信された、不特定多数の端末14a,14b,・・・からの応答光信号TSは、ケーブル22を経てメインコントローラ30の情報処理部38へと出力される。
【0130】
<発光部及び走査部>
次に、図3及び図4を参照して、発光部31及び走査部28について説明する。図3は、発光部31及び走査部28の構成を概略的に示す模式図である。
【0131】
まず、図3を参照して、発光部31及び走査部28の概略的な配置状態について説明する。
【0132】
k個の発光部31〜31は、基部62に一直線状に配列されている。発光部31〜31は、光画像ビームB〜Bをそれぞれ照射する。
【0133】
走査部28〜28は、発光部31〜31に対して一対一の関係で、それぞれ設けられている。より詳細には、走査部28〜28は、発光部31〜31の光照射口に対向して、それぞれ配置されている。また、走査部28〜28の各々には、同期信号にしたがい回転振動されるミラー60〜60が一つずつ設けられている。
【0134】
その結果、走査部28〜28のミラー60〜60は、発光部31〜31のそれぞれから照射される光画像ビームB〜Bを、発光部31〜31が並んだ方向に対して直交する方向に沿って反射し、かつ走査する。
【0135】
走査部28〜28で反射かつ走査された光画像ビームB〜Bは、スクリーン20に映写され、スクリーン20上でk本の走査線L〜Lを形作る。
【0136】
続いて、図4を参照して、個々の発光部31の構成、より詳細には投影光学系54について説明する。図4は、個々の投影光学系54の構成を概略的に示す模式図である。
【0137】
投影光学系54は、ダイクロックプリズム64と、投影レンズ66とを備える。
【0138】
R−LED50Rから照射された光画像信号IB、並びに、G−LED50G及びB−LED50Bから照射された副光画像信号IB及びIBは、従来周知のダイクロックプリズム64に入射され、各色が合成された光画像ビームBとなる。ダイクロックプリズム64から出射された光画像ビームBは、投影レンズ66に入射し、スクリーン20上において1点で交わるように収束される。この1点が、スクリーン20上で、個々の走査線L〜Lにおける走査点Pとなる。投影レンズ66から出射された光画像ビームBは、ミラー60で反射され、スクリーン20に向かって伝播する。
【0139】
<通信信号担持光>
次に、図5を参照して、光画像信号IBについて説明する。図5は、光画像信号IBの強度の時間変化を表す模式図である。図5は、横軸が時間(任意単位)を表し、及び縦軸が光画像信号IBの光強度(任意単位)をそれぞれ表している。
【0140】
光画像信号IBは、変調R信号(変調済画像信号)でR−LED50Rを駆動することにより得られるものである。
【0141】
その結果、図5に示すように、光画像信号IBは、画像信号に対応する光成分としての画像信号担持光IBと、通信信号に対応する光変調成分としての通信信号担持光SBとを含んでいる。
【0142】
より詳細には、光画像信号IBは、比較的周波数が低い映像用の赤色光である画像信号担持光IBに、通信信号としてのパルス列を含む、周波数の高い通信信号担持光SBが強度加算された時間波形を有する。いわば、光画像信号IBは、赤色の画像信号を担持した画像信号担持光IBを、パルス列としての通信信号で部分的に強度変調した光信号となっている。
【0143】
光画像信号IBの光源は、高速で動作可能なLED(R−LED50R)であるので、通信信号担持光SBの通信速度は、数十Mbit/秒となる。
【0144】
ところで、20Hz以上の変調速度で変調されている可視光は、肉眼には、ちらつきがない一様な光として感知されることが知られている。したがって、上述の通信速度(数十Mbit/秒)で変調された光画像信号IBにおいて、通信信号担持光SBのパルスは、肉眼では検知されない。
【0145】
<情報区画領域と画像区画領域>
次に図6を参照して、スクリーン20上に映写される画像の構成について説明する。図6は、画像区画領域及び情報区画領域の説明に供するスクリーン20の模式図である。
【0146】
図6は、画像が表示されている状態のスクリーン20の全面を示している。スクリーン20に表示される画像は、1個以上の画像区画領域Fを含んでいる。
【0147】
図6の場合には、画像は、例えば、2個の画像区画領域F及びFを含んでいる(図中、実線で囲まれた領域)とする。これらの画像区画領域F及びFにはそれぞれ異なる画像情報(例えば、風景やニュース等)が表示されているものとする。
【0148】
また、スクリーン20は、互いに同形な矩形状であり、かつ互いに重複することのない複数の情報区画領域IUで区画されている(図中、破線で区画された領域)。図6においては、スクリーン20は、8行11列に配置された情報区画領域IUで区画されている。なお、スクリーン20の1列に含まれる情報区画領域IUの行数NC(=8行)と、個々の情報区画領域IUに含まれる走査線L〜Lの本数NL(=8本)との間には所定の関係が存在する。この関係については後述する。
【0149】
なお、図においては、情報区画領域IUを明確にするために、隣接する情報区画領域IUの境界を破線で区切って示している。しかし、この破線は、図面上で情報区画領域IUを明示するための便宜的なものであり、実際のスクリーン20には、このような破線は存在しないことに留意いただきたい。
【0150】
画像区画領域Fは、1個以上の情報区画領域IUが連続することにより形成されている。図6の場合には、画像区画領域Fは、互いに隣接する12個の画像区画領域IUを含んでいる。また、画像区画領域Fは、互いに隣接する4個の画像区画領域IUを含んでいる。
【0151】
情報区画領域IUは、通信信号担持光SBが、画像を介して送信する情報の単位となっている。つまり、通信信号担持光SBが送信する情報は、1個の情報区画領域IU内で完結する。換言すれば、通信信号担持光SBは、複数の情報区画領域IUに跨った情報を送信することはない。
【0152】
また、1個の画像区画領域Fが複数の情報区画領域IUから構成される場合、画像区画領域F内における位置によらず、全ての情報区画領域IUからは同じ情報が送信されている。
【0153】
つまり、画像区画領域F(F)を構成する12個(4個)の画像区画領域IU(IU)のそれぞれからは、同じ情報を含む同一の通信信号担持光SB(SB)が送信されている。
【0154】
<走査点の走査方法>
次に、図7を参照して、スクリーン20上における走査点の走査方法について説明する。図7は、走査点の走査方法の説明に供する図であり、1列分の情報区画領域IUC1〜IUC8を表したスクリーン20の一部拡大模式図である。なお、本図では、理解の容易さを考慮して、個々の情報区画領域を実線で区切って示してある。
【0155】
上述のように、1列中には、8個の情報区画領域IUC1〜IUC8が含まれている(NC=8)。以下、情報区画領域IUC1〜IUC8から構成される列をCと称する。
【0156】
列C中には、発光部31から照射された光画像ビームBが走査部28により走査されることで形成された走査線L〜Lが8本存在している(NL=8)。走査線L〜Lは、列Cの延在する方向に平行に伸びている。また、走査方向に直交する方向において、走査線L〜Lの間隔は等しい。走査線L〜Lの本数(8本)と、列Cを構成する情報区画領域IUC1〜IUC8の個数(8個)とは等しい数とされている(NL=NC)。
【0157】
走査線L〜Lには、それぞれ1個ずつ走査点P〜Pが存在している。走査点P〜Pは、ミラー60で反射された光画像ビームBのスクリーン20上での収束点である。個々の走査点P〜Pは、互いに等しい移動速度で、情報区画領域IUC1からIUC8に向かって、つまり図面下から上に向かって走査される。
【0158】
同期信号出力部36(図2)は、情報区画領域IUC1〜IUC8のそれぞれには、1個ずつ走査点P〜Pが存在するように、ミラー60(図2)を制御する。
【0159】
より詳細には、矩形状の情報区画領域IUCn(nは1〜8の整数)の各々について、矩形の左下隅を原点としたXY直交座標系を設定したときに、走査点P(pは1〜8の整数)の情報区画領域IUCn内での位置座標は、n及びpの値によらず等しい。また、上述のように、走査点Pの移動速度はそれぞれ等しい。
【0160】
これらの結果、走査点Pが情報区画領域IUCnの上端から出て行くと同時に、走査点Pp−1が情報区画領域IUCnの下端から入ってくる。すなわち、情報区画領域IUC1〜IUC8のそれぞれには、常にP〜Pの中から選ばれた1個の走査点が含まれる。
【0161】
ところで、走査点P〜Pのそれぞれを構成する光画像ビームBには、通信信号担持光SBが含まれている。よって、情報区画領域IUC1〜IUC8のそれぞれからは、時間的に途切れることなく情報が端末14に向けて送信される。
【0162】
<情報区画領域から送信される最大情報量>
次に、図7を参照して、個々の情報区画領域IUC1〜IUC8から送信される情報量について説明する。
【0163】
任意の1個の情報区画領域、例えばIUC3に注目する。そして、個々の走査点P〜Pが情報区画領域IUC3を横切るのに要する時間をT(秒)とし、及び、個々の走査点P〜Pの通信速度、すなわち、通信信号担持光SBの通信速度をV(bit/秒)とする。
【0164】
このとき、1個の走査点P〜Pが、情報区画領域IUC3から端末14に向けて送信することができる情報量Qは、下記(1)式で与えられる。
【0165】
Q(bit)=T×V・・・(1)
ところで、情報区画領域IUC3内では、走査点P〜Pが途切れることなく、例えばP→P→P→P→P→P→P→P→P→P→・・・・の順序で走査される。
【0166】
よって、走査点P(mは1〜7の整数)が担持する情報に引き続く情報を走査点Pm+1に担持させるようにすれば、情報区画領域IUC3から端末14に向けて送信される情報量を上述のQに比較して大きくすることができる。
【0167】
ここで、情報区画領域IUC3から端末14に向けて送信される情報量の最大値をQmaxとすると、Qmaxは下記(2)式で与えられる。
【0168】
max=Q×N・・・(2)
ここで、NはIUC3に含まれる総走査線数を示す。
【0169】
(3)端末
次に、図8を参照して、画像通信システム10を構成する端末14について詳細に説明する。図8は、1個の端末14の機能ブロック図である。
【0170】
まず、図8を参照して、端末14の全体構成について説明する。
【0171】
端末14は、スクリーン20に映写される画像を視聴する観客が使用するものであるので、観客が操作しやすい大きさ及び形状とする。具体的には、端末14は、例えば、観客が片手で操作可能なテレビ用リモコン程度の大きさとする。
【0172】
上述のように、端末14は、望遠光学系68と、端末側受信部70と、端末側処理部72と、送信部74と、出力装置76と、入力装置78とを備えている。
【0173】
望遠光学系68は、スクリーン20上の1個の情報区画領域IU(図6)に対応する画像(以下、「情報区画領域画像」と称する。)を拡大するためのものである。望遠光学系68は、従来周知のレンズ群から構成される。望遠光学系68により拡大された情報区画領域画像は、光スプリッタ80に入力される。
【0174】
端末側受信部70は、光スプリッタ80と、光信号受光器82と、ハイパスフィルタ84と、受信機86とを備えている。
【0175】
光スプリッタ80は、望遠光学系68が拡大した情報区画領域画像を光信号受光器82及び出力装置76の両者に分岐する。
【0176】
光信号受光器82は、光スプリッタ80で分岐された一方の情報区画領域画像の中から、通信信号担持光SBを担持した光画像信号IBを受光して、電気信号へと変換する。光信号受光器82としては、従来周知のフォトダイオード等を用いることができる。より詳細には、ここで説明する例では、光信号受光器82は、赤色の光のみを透過する波長選択フィルタ(不図示)を備えており、この波長選択フィルタを透過した光(光画像信号IB)のみを受光し、光電変換する。
【0177】
ハイパスフィルタ84は、光信号受光器82で光電変換された電気信号から、通信信号を選択して取り出す。つまり、ハイパスフィルタ84は、画像信号IB(図5)に比べて周波数が高い通信信号SB(図5)のみを通過させる濾波器である。光信号受光器82から入力された電気信号は、ハイパスフィルタ84を通過することにより、通信信号へと変換される。
【0178】
受信機86は、ハイパスフィルタ84で濾波された通信信号を受信する。そして、この通信信号を端末側処理部72に向けて出力する。
【0179】
端末側処理部72は、受信機86から入力される通信信号に基づいて、送信部74、出力装置76及び入力装置78の制御を行う。具体的には、端末側処理部72は、中央演算処理装置(CPU)で構成される制御部88を備えている。
【0180】
制御部88は、受信機86から入力される通信信号を読み取り、読み取った情報に基づき、送信部74、出力装置76及び入力装置78を制御する。
【0181】
より具体的には、通信信号に含まれる情報に、情報表示要求が含まれている場合には、制御部88は、出力装置76を制御して、ディスプレイ102に通信信号が担持する情報を表示する。
【0182】
また、通信信号に含まれる情報に、情報発音要求が含まれている場合には、制御部88は、出力装置76を制御して、発音装置104に通信信号が担持する情報を発音させる。
【0183】
更に、通信信号に含まれる情報に、プロジェクタ12への応答要求が含まれている場合には、制御部88は、出力装置76を制御して、この端末14を所持している観客に対して、入力装置78からの入力を促すメッセージを表示する。また、制御部88は、入力装置78から行われる観客の入力(以下、「観客入力」と称する。)を受け付ける。そして、制御部88は、送信部74を制御して、入力装置78からの観客入力を光信号に変換させて、端末14からの応答情報としての応答光信号TSをプロジェクタ側受信部18(図1)に向けて送信させる。
【0184】
送信部74は、入力装置78を介して行われる観客入力を光信号に変換して、端末14からの応答情報としてプロジェクタ12、つまりプロジェクタ側受信部18に向けて送信する。詳細には、送信部74は、応答入力回路90と、応答用LED駆動回路92と、応答用LED94とを備えている。
【0185】
応答入力回路90は、制御部88経由で、入力装置78から観客入力を受け付ける。応答用LED駆動回路92は、観客入力に基づいて、応答用LED94を駆動させる。応答用LED94は、例えば、赤外線を発光するLEDとして構成される。応答用LED94は、観客入力を端末14からの応答情報としての応答光信号TSをプロジェクタ側受信部18に向けて送信する。
【0186】
出力装置76は、CCD(Charge Coupled Device)96と、通信信号除去器98と、画像処理部100と、ディスプレイ102と、発音装置104とを備えている。
【0187】
CCD96は、光スプリッタ80で分岐された他方の情報区画領域画像を受光して電気信号へと変換する。通信信号除去器98は、CCD96から入力された電気信号から、画像信号を選択して取り出す。つまり、通信信号除去器98は、通信信号に比べて周波数が低い画像信号を通過させる濾波器である。
【0188】
画像処理部100は、制御部88の制御下で、ディスプレイ102に表示させる画像を選択する。画像処理部100は、中央演算処理装置(CPU)で構成されている。つまり、通信信号に含まれる情報に情報表示要求が含まれる場合には、画像処理部100は、通信信号が担持する情報をディスプレイ102に表示させる。それ以外の場合には、画像処理部100は、現在選択されている情報区画領域画像をディスプレイ102に表示させる。
【0189】
発音装置104は、例えば、スピーカ等を備えており、通信信号に含まれる情報に情報発音要求が含まれる場合に、制御部88の制御下で、通信信号の内容を発音する。
【0190】
入力装置78は、例えば、端末14に作り付けられた、文字数字その他の記号を含む押しボタン等である。入力装置78は、通常の状態では不活性であるが、通信信号に含まれる情報に応答要求が含まれる場合には、制御部88により活性化され、観客入力を受け付ける。
【0191】
(4)効果
以下、この実施の形態の画像通信システム10、プロジェクタ12及び端末14の奏する効果について説明する。
【0192】
<効果1>
この発明の画像通信システム10は、不特定多数の端末14とプロジェクタ12との間で双方向通信を行うことが可能である。
【0193】
<効果2>
この発明の画像通信システム10及びプロジェクタ12は、通信信号担持光SBを送信するための光源として、変調速度の速いLED(R−LED50R)を用いている。したがって、プロジェクタ12から端末14への通信速度が数十Mbit/秒程度の高速通信を行うことができる。
【0194】
<効果3>
この発明の画像通信システム10及び端末14は、端末14からプロジェクタ12への応答情報の送信に当たって、応答用LED94から送信される応答光信号TSを用いている。その結果、“端末14→プロジェクタ12”への通信速度を、“プロジェクタ12→端末14”の通信速度と同程度にまで高めることができる。
【0195】
<効果4>
図5に示すように、この発明の画像通信システム10では、光画像信号IBに、画像信号担持光IBと通信信号担持光SBとが同時に含まれている。よって、プロジェクタ12は、スクリーン20上に画像を映写すると同時に、端末14への情報の送信を行うことができる。
【0196】
また、プロジェクタ12には、常に受信可能状態にあるプロジェクタ側受信部18が設けられている。よって、画像が表示されている最中であっても、端末14は、プロジェクタ側受信部18に対して応答情報を送信することができる。
【0197】
<効果5>
この発明の画像通信システム10及びプロジェクタ12では、プロジェクタ12がスクリーン20の全面に画像を映写できる。
【0198】
<効果6>
この発明の画像通信システム10及びプロジェクタ12は、光画像信号IBが、画像信号担持光IBと通信信号担持光SBとを同時に含んでいる。つまり、通信信号担持光SBを送信するために専用のLEDを別途設ける必要がない。
【0199】
その結果、プロジェクタ12の発光部31に設けるLED(50R,50G及び50B)の個数を、フルカラー画像を形成するために必要最低限な個数である3個(光の三原色に対応)に抑えることができる。その結果、プロジェクタ12のコストダウンが達成される。
【0200】
<効果7>
この発明の画像通信システム10及びプロジェクタ12では、スクリーン20を構成する情報区画領域IUの行数(8行)と、1個の情報区画領域IUに含まれる走査線数(8本)とを等しくしている。
【0201】
その結果、ミラー60の回転振動のタイミングを適当に調整することにより、個々の情報区画領域IUに時間的に途切れることなく、1個の走査点を存在させることができる。つまり、時間的に途切れることなく、情報区画領域IUから通信信号担持光SBを送信することができる。
【0202】
<効果8>
この発明の画像通信システム10及びプロジェクタ12では、個々の情報区画領域IUにおいて、隣接する走査線に属する走査点から送信される情報を連続させることにより、個々の情報区画領域IUから端末14に向けて送信される情報の最大値を上述の(2)式にまで大きくすることができる。
【0203】
その結果、プロジェクタ12は、大容量の情報を端末14に向けて送信することができる。
【0204】
<効果9>
この発明の画像通信システム10では、スクリーン20に映写される画像区画領域Fが、1個以上の情報区画領域IUにより構成されている。更に1個の画像区画領域Fに含まれる情報区画領域IUのそれぞれからは、同じ情報が送信されている。したがって、端末14を画像区画領域Fに向けること、すなわち、端末14の望遠光学系68で画像区画領域F中の任意の1個の情報区画領域IUを拡大することにより、端末14は、通信信号担持光SBを受信することができる。つまり、通信信号担持光SBの受信を簡単な操作で実現できる。
【0205】
(5)設計条件及び変形例
以下、この実施の形態の画像通信システム10、プロジェクタ12及び端末14の設計条件及び変形例について説明する。
【0206】
<設計条件1>
この実施の形態では、スクリーン20上に2個の画像区画領域F及びF(又は、F及びF)が映写されている場合を説明した。しかし、スクリーン20上に映写する画像区画領域は、2個には限定されない。画像区画領域は、1個以上かつスクリーン20を構成する情報区画領域IUの総数以下の個数とすることができる。
【0207】
<設計条件2>
この実施の形態では、スクリーン20を8行11列の情報区画領域IUで区画した場合を説明した。しかし、情報区画領域IUの個数は、8行11列には限定されない。スクリーン20は、設計に応じた任意好適な個数の情報区画領域に区画することができる。ただし、個々の情報区画領域IUは、1本以上の走査線を含むことが必要である。
【0208】
<設計条件3>
この実施の形態では、被映写領域として平面状のスクリーン20を用いた場合を説明した。しかし、被映写領域は、平面状のスクリーン20には限定されない。例えば、湾曲面状のスクリーンを用いてもよい。
【0209】
また、例えば、実際の風景に似せて模型の建物等を配置したジオラマを被映写領域としてもよい。この場合、プロジェクタからジオラマに向けて通信信号担持光SBを含む光画像ビームを走査し、模型等から反射された光画像ビームを端末で受信すればよい。
【0210】
また、地球を周回する人工衛星をプロジェクタとし、被映写領域としての地上を、通信信号担持光SBを含む光画像ビームで走査してもよい。そして、地上の目標物から反射される光画像ビームを、地上の端末で受信してもよい。
【0211】
<設計条件4>
この実施の形態では、赤色光としての光画像信号IBに、通信信号担持光SBが含まれている場合を説明した。しかし、通信信号担持光SBは、G−LED50Gから照射される緑色光やB−LED50Bから照射される青色光に重畳してもよい。
【0212】
<設計条件5>
この実施の形態では、プロジェクタ12から端末14に向けて送信される通信信号担持光SBが、1チャネルのみの場合を説明した。しかし、通信信号担持光SBは1チャネルに限定されない。例えば、G−LED50Gから照射される緑色光に第2通信信号担持光を重畳し、及びB−LED50Bから照射される青色光に第3通信信号担持光をそれぞれ重畳してもよい。このようにすることにより、通信信号担持光のチャネル数を増やすことができる。
【0213】
<設計条件6>
この実施の形態では、1次元状に配列された発光部31〜31を用い、これらの発光部31〜31から照射された光画像ビームB〜Bを走査部28〜28で直線状に走査する場合について説明した。
【0214】
しかし、発光部は、1次元状に配列されている必要はなく、点状の1個の発光部から出射する光画像ビームを、2個のミラーで2次元的に走査してもよい。この構成によれば、実用上許容できる大きさの通信速度を確保しつつ、発光部の個数を1個にまで減少させることができる。その結果、プロジェクタ12を小型かつ低コストにすることができる。
【0215】
<設計条件7>
この実施の形態では、画像区画領域FとFとが重複しないことを暗黙の前提としていた。これは、各画像区画領域F,Fから送信される通信信号担持光SBとSBとの混信を防ぐためである。
【0216】
しかし、混信を防ぐ適当な対策を講じれば、複数の画像区画領域同士を重複して映写してもよい。ここで、混信防止の対策としては、OCDMA(光符号分割多元接続:Optical Code Division Multiple Access)方式や、FDM(周波数分割多重:Frequency Division Multiplexing)方式を用いて、1つの波長の通信信号担持光SBに複数の通信チャネルを割り当てることが考えられる。
【0217】
<設計条件8>
この実施の形態では、端末14の出力装置76が電子装置で構成される場合について説明した。しかし出力装置76としては光学式ファインダーを用いてもよい。
【0218】
<設計条件9>
この実施の形態では、1個の情報区画領域IUに含まれる走査線数NL(8本)と、スクリーン20の一列に存在する情報区画領域IUの数NC(8行)とを等しくした場合を説明した。
【0219】
しかし、1個の情報区画領域IUに含まれる走査線数NLは、NCの自然数倍であれば特に制限はない。つまり、NL=NC×r(rは自然数)であってもよい。
【0220】
以下、図9を参照して、NL=NC×rの場合の好適な走査方法について説明する。
【0221】
図9(A)は、ある時刻において、スクリーン20の1列Cを、走査点とともに描いた模式図である。この図においては、情報区画領域IUに含まれる走査線数NLと、スクリーンの一列Cに存在する情報区画領域数NCとが等しい場合、つまり、<走査点の走査方法>で説明したと同様の場合を示している。
【0222】
ここでは、各情報区画領域IU〜IUに4本の走査線L〜Lが含まれており、かつ、1列Cには、4個の情報区画領域IU〜IUが含まれているとする。
【0223】
図9(A)に示すように、この走査方法では、隣接した走査点P,Ps+1(ただし、sは1〜3の整数)が、情報区画領域IU(ただし、uは1〜4の整数)の上下の境界上に存在する瞬間があった。
【0224】
この場合には、情報区画領域IU内に実質的に走査点が存在しない状態が生じてしまう(以下、走査点非存在状態と称する。)。その結果、端末14が受信する通信信号担持光SBの光量が、一瞬ではあるが不足することがあった。
【0225】
図9(B)は、ある時刻において、スクリーン20の1列C’を、走査点とともに描いた模式図である。この図においては、情報区画領域IU’に含まれる走査線数NLが、スクリーン20の一列C’に存在する情報区画領域数NCの2倍となっている場合、つまり、r=2の場合を示している。
【0226】
ここでは、各情報区画領域IU’〜IU’に8本の走査線L〜Lが含まれており、かつ、1列C’には、4個の情報区画領域IU’〜IU’が含まれているとする。
【0227】
そして、走査線L(ただし、wは1〜4の整数)に属する走査点Pと、走査線Lw+4に属する走査点Pw+4との走査タイミングをずらしてある。このようにすれば、情報区画領域IU’に走査点非存在状態が生じることを防ぐことができる。その結果、情報区画領域IU’内に確実に1個以上の走査点を存在させることができる。
【0228】
<設計条件10>
この実施の形態では、発光部31が光の三原色に対応する光を放射するLED(R−LED50R,G−LED50G及びB−LED50B)を備えた場合について説明した。しかし、発光部31が備える、画像信号担持光IB用のLEDは、三色に限定されない。例えば、光の三原色(RGB)に加えて、白色のLED等を追加してもよい。
【0229】
<変形例1>
図10に画像通信システム10の変形例を示す。この変形例に係る画像通信システム110では、プロジェクタ112として背面映写型プロジェクタを用い、端末114からプロジェクタ112への通信に電波を用いている。
【0230】
すなわち、プロジェクタ本体116は、プロジェクタ112の内部に収納されており、プロジェクタ本体116から照射される光画像ビームを反射ミラー122で反射させて、裏面側からスクリーン120に映写する。また、プロジェクタ本体116には、端末114からの無線通信を受信する受信機が設けられている。
【0231】
この画像通信システム110によれば、“端末→プロジェクタ”の通信速度を実用上許容できる大きさに保ちつつ、プロジェクタ112から端末114に向けて画像を介した双方向通信を達成できる。
【0232】
(実施の形態2)
以下、図11を参照して、実施の形態2のプロジェクタについて説明する。図11に示すように、プロジェクタ150は、通信信号発生部としてのIR−LED152を備えている点を除いてプロジェクタ12と、ほぼ同様に構成されている。したがって、以下の説明では、プロジェクタ12との相違点を主に説明する。
【0233】
プロジェクタ150は、光通信信号として、光画像信号とは別波長の光(赤外光)を使用している点がプロジェクタ12と異なっている。
【0234】
プロジェクタ150は、光通信信号発生部としてのIR−LED152と、光画像信号発生部としてのR−LED154R、G−LED50G及びB−LED50Bを備えている。
【0235】
IR−LED152は、赤外光を発生するLEDであり、メインコントローラ30の通信信号生成部34にD/A変換部41bを介して接続されている。IR−LED152は、同期信号出力部36から出力される同期信号にタイミングを合わせて、通信信号生成部34の内部メモリ34aから入力される通信信号で駆動される。
【0236】
これによりIR−LED152は、通信信号を担持した通信信号担持光に変換され、光通信信号SBとして投影光学系156に向けて出射される。
【0237】
つまり、プロジェクタ150では、光通信信号SBとして光画像信号IB、IB及びIBの波長帯域以外の波長の光(赤外光)を用いている。
【0238】
R−LED154Rは、R−LED50R同様に赤色光を発生するLEDである。プロジェクタ150には、変調部42が設けられていないので、R−LED154Rは、画像メモリ32に直接接続されている。
【0239】
その結果、R−LED154Rは、画像メモリ32から出力された後にD/A変換部41aでアナログ信号に変換された画像信号としてのR信号で駆動されて、画像信号担持光のみを含む光画像信号IBを発生する。そして、R−LED50Rは、この光画像信号IBを投影光学系156に向けて照射する。
【0240】
G−LED50G及びB−LED50Bは、実施の形態1とほぼ同様であり、それぞれ、画像メモリ32から出力された後にD/A変換部41aでアナログ信号に変換された画像信号としてのG信号及びB信号で駆動されて、画像信号担持光としての光画像信号IB及びIBを発生し、投影光学系156に向けて照射する。
【0241】
光画像ビーム発生部としての投影光学系156は、光画像信号IB、IB及びIBと光通信信号SB(赤外光)とをカラー合成して1本の光画像ビームBとした上で、走査部28のミラー60に向けて照射する。
【0242】
このように、実施の形態2のプロジェクタ150によっても画像信号担持光と通信信号担持光とを含む光画像ビームBをスクリーン20に映写することができる。
【0243】
また実施の形態2では、光通信信号SBとして目に見えない赤外光を用いている。よって、光通信信号SBを構成する赤外光の波長数を増やすことにより、光画像信号IB、IB及びIBを構成する波長数(3波長:光の三原色)に制限されることなく、通信チャネル数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】実施の形態1の画像通信システムの概略を示す模式図である。
【図2】実施の形態1のプロジェクタの機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1の発光部及び走査部の構成を概略的に示す模式図である。
【図4】実施の形態1の投影光学系の構成を概略的に示す模式図である。
【図5】実施の形態1において、光画像信号の強度の時間変化を表す模式図である。
【図6】実施の形態1における画像区画領域及び情報区画領域の説明に供するスクリーンの模式図である。
【図7】実施の形態1における走査点の走査方法の説明に供する図であり、1列分の情報区画領域を表したスクリーンの一部拡大模式図である。
【図8】実施の形態1における1個の端末の機能ブロック図である。
【図9】(A)及び(B)は、実施の形態1における画像通信システムの設計条件の説明に供する図である。
【図10】実施の形態1における画像通信システムの変形例の説明に供する図である。
【図11】実施の形態2のプロジェクタの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0245】
10,110 画像通信システム
12,112,150 プロジェクタ
14,114 端末
15 フィルタ
16,116 プロジェクタ本体
18 プロジェクタ側受信部
20,120 スクリーン
28 走査部
30 メインコントローラ
31 発光部
32 画像メモリ
34 通信信号生成部
34a 内部メモリ
36 同期信号出力部
38 情報処理部
39 制御部
40 被変調画像信号選択部
41a,41b D/A変換部
42 変調部
50R,154R R−LED
50G G−LED
50B B−LED
54,156 投影光学系(光画像ビーム発生部)
60 ミラー
62 基部
64 ダイクロックプリズム
66 投影レンズ
68 望遠光学系
70 端末側受信部
72 端末側処理部
74 送信部
76 出力装置
78 入力装置
80 光スプリッタ
82 光信号受光器
84 ハイパスフィルタ
86 受信機
88 制御部
90 応答入力回路
92 応答用LED駆動回路
94 応答用LED
96 CCD
98 通信信号除去器
100 画像処理部
102 ディスプレイ
104 発音装置
122 反射ミラー
152 IR−LED
IB 画像信号担持光
IB 光画像信号
IB,IB 副光画像信号
B 光画像ビーム
SB 通信信号担持光
F 画像区画領域
IU 情報区画領域
TS 応答光信号
C 列
L 走査線
P 走査点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するためのプロジェクタであって、
画像信号を出力する画像信号生成部と、
通信信号を出力する通信信号生成部と、
前記画像信号を前記通信信号で変調して、変調済画像信号を出力する変調部と、
該変調済画像信号で駆動されて、前記画像信号に対応する光成分としての画像信号担持光と、前記通信信号に対応する光変調成分としての通信信号担持光とを含む光画像信号を発生する光画像信号発生部と、
該光画像信号を前記光画像ビームに変換する光画像ビーム発生部と、
前記被映写領域から反射された前記通信信号担持光を受信した端末から送信される該通信信号担持光の、前記通信信号に対する応答情報を受信するプロジェクタ側受信部とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記画像信号生成部が、前記画像信号とともに副画像信号を発生する被変調画像信号選択部を更に備え、
前記副画像信号で駆動されて、該副画像信号を副光画像信号に変換する副光画像信号発生部を備え、
前記光画像ビーム発生部が、前記光画像信号と前記副光画像信号とを合成した光画像ビームを発生することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記光画像信号発生部及び前記副光画像信号発生部のそれぞれは、可視光を発生する1個以上のLEDを備え、該LEDの合計個数は3個以上であり、
3個以上の該LEDには、光の三原色のそれぞれに対応する波長の可視光を発生するLEDが少なくとも含まれていることを特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するためのプロジェクタであって、
画像信号を出力する画像信号生成部と、
通信信号を出力する通信信号生成部と、
前記画像信号を画像信号担持光に変換して光画像信号として出力する光画像信号発生部と、
前記通信信号を前記光画像信号の波長帯域以外の波長の通信信号担持光に変換して光通信信号として出力する光通信信号発生部と、
前記光画像信号と前記光通信信号とを合成した前記光画像ビームを発生する光画像ビーム発生部と、
前記被映写領域から反射された前記通信信号担持光を受信した端末から送信される該通信信号担持光の、前記通信信号に対する応答情報を受信するプロジェクタ側受信部とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
前記通信信号担持光が赤外光であることを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記光通信信号発生部が、赤外光を放射するLEDを備えていることを特徴とする請求項5に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記被映写領域が、スクリーンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
前記被映写領域に複数の走査線が走査されており、
該走査線の走査方向に関して前記被映写領域をi等分(iは2以上の整数。)する長さを有し、及び、該走査線の走査方向に直交する方向に関してi本以上の前記走査線を含む長さを有する情報区画領域で、前記被映写領域が区切られており、
該情報区画領域が、前記通信信号担持光が前記画像を介して送信する情報の単位となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項9】
前記被映写領域に映写される前記画像は、1個以上の前記情報区画領域が配置され、かつ前記被映写領域上で移動可能かつ大きさが可変である画像区画領域をj個(jは1以上の整数)同時に含み、
個々の該画像区画領域において、1個の当該画像区画領域を構成する全ての前記情報区画領域からは、同じ情報を担持した前記通信信号担持光が送信されることを特徴とする請求項8に記載のプロジェクタ。
【請求項10】
前記プロジェクタ側受信部が、受信した前記端末からの前記応答情報に応じた処理を行うプロジェクタ側処理部を更に備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項11】
前記プロジェクタ側受信部が、無線通信で行われる前記端末からの前記応答情報を受信する受信機であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項12】
前記プロジェクタ側受信部が、光通信で行われる前記端末からの前記応答情報を受信する光受信機であり、該光受信機が、前記被映写領域の背後に配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項13】
請求項9に記載のプロジェクタから送信される前記通信信号担持光を受信する前記端末であって、
前記通信信号担持光を受信すべき前記情報区画領域を含む前記画像の一部領域を拡大して表示する望遠光学系と、
当該情報区画領域から送信される当該通信信号担持光を受信する端末側受信部と、
受信した該通信信号担持光に含まれる情報を処理する端末側処理部と、
処理された前記情報が、前記プロジェクタに対する応答要求を含む場合に、該応答要求に応じた前記応答情報を前記プロジェクタに向けて送信する送信部と
を備えることを特徴とする端末。
【請求項14】
前記端末側処理部により処理された前記情報が、前記端末に対する情報表示要求を含む場合に、該情報表示要求に応じて、当該情報を表示するディスプレイを備えていることを特徴とする請求項13に記載の端末。
【請求項15】
前記端末側処理部により処理された前記情報が、前記端末に対する情報発音要求を含む場合に、該情報発音要求に応じて、当該情報を発音する発音装置を備えていることを特徴とする請求項13又は14に記載の端末。
【請求項16】
被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するためのプロジェクタと、該プロジェクタから送信される通信信号担持光を受信する1個以上の端末とを含む画像通信システムであって、
前記プロジェクタは、
画像信号を出力する画像信号生成部と、
通信信号を出力する通信信号生成部と、
前記画像信号を前記通信信号で変調して、変調済画像信号を出力する変調部と、
該変調済画像信号で駆動されて、前記画像信号に対応する光成分としての画像信号担持光と、前記通信信号に対応する光変調成分としての通信信号担持光とを含む光画像信号を発生する光画像信号発生部と、
該光画像信号を前記光画像ビームに変換する光画像ビーム発生部と、
前記被映写領域から反射された前記通信信号担持光を受信した端末から送信される該通信信号担持光の、前記通信信号に対する応答情報を受信するプロジェクタ側受信部とを備え、及び、
前記端末は、前記通信信号担持光を受信すべき前記画像の一部領域を拡大して表示する望遠光学系と、
当該画像の一部領域から送信される当該通信信号担持光を受信する端末側受信部と、
受信した該通信信号担持光に含まれる情報を処理する端末側処理部と、
処理された前記情報が、前記プロジェクタに対する応答要求を含む場合に、該応答要求に応じた前記応答情報を前記プロジェクタに向けて送信する送信部とを備えることを特徴とする画像通信システム。
【請求項17】
被映写領域上で光画像ビームを直線走査させて画像を映写するためのプロジェクタと、該プロジェクタから送信される通信信号担持光を受信する1個以上の端末とを含む画像通信システムであって、
前記プロジェクタは、
画像信号を出力する画像信号生成部と、
通信信号を出力する通信信号生成部と、
前記画像信号を画像信号担持光に変換して光画像信号として出力する光画像信号発生部と、
前記通信信号を前記光画像信号の波長帯域以外の波長の通信信号担持光に変換して光通信信号として出力する光通信信号発生部と、
前記光画像信号と前記光通信信号とを合成した前記光画像ビームを発生する光画像ビーム発生部と、
前記被映写領域から反射された前記通信信号担持光を受信した端末から送信される該通信信号担持光の、前記通信信号に対する応答情報を受信するプロジェクタ側受信部とを備え、及び、
前記端末は、前記通信信号担持光を受信すべき前記画像の一部領域を拡大して表示する望遠光学系と、
当該画像の一部領域から送信される当該通信信号担持光を受信する端末側受信部と、
受信した該通信信号担持光に含まれる情報を処理する端末側処理部と、
処理された前記情報が、前記プロジェクタに対する応答要求を含む場合に、該応答要求に応じた前記応答情報を前記プロジェクタに向けて送信する送信部とを備えることを特徴とする画像通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−66994(P2008−66994A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241873(P2006−241873)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】