説明

プロジェクター及びその制御方法

【課題】光源装置の輝度を、視認性が良好となるような輝度に調整可能なプロジェクター及びその制御方法を提供する。
【解決手段】制御部20は、光源制御部28に指示をして光源輝度を最小輝度に設定させるとともに、画像処理部24に指示をして文字列を含んだテスト画像を投写させる。そして、投写面Sに投写されたテスト画像を撮像部26に撮像させた後、文字認識部20aで撮像画像を解析し、撮像したテスト画像に含まれる文字列を認識する。文字認識部20aがテスト画像に含まれる文字列を正しく認識できた場合には、光源輝度の調整が完了する。一方、正しく認識できなかった場合には、制御部20は、光源制御部28に指示をして光源輝度を1段階だけ高く(明るく)させ、再びテスト画像の撮像と文字列の認識を行わせる。そして、文字列を正しく認識できるか、或いは光源輝度が最大輝度に達するまで繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置から射出された光を変調して投写するプロジェクター及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源装置から射出された光を変調して投写するプロジェクターは、投写される画像の視認性を高めるために、光源装置の輝度が調整可能であることが望ましい。例えば、周囲が明るい状況で画像を視認するためには、光源装置の輝度を高くする必要がある。一方、周囲が暗い状況では、輝度を低下させたほうが見やすくなる場合が多い。特許文献1には、周囲の明るさに応じて光源装置の輝度を自動的に調整するプロジェクター(映像投写装置)が提案されている。このプロジェクターでは、ユーザーが自ら輝度を調整する必要がないため利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−162791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のプロジェクターは、周囲の明るさに応じた電圧を光源装置に印加するものであるため、光源装置の特性にばらつきがあったり、光源装置に経時変化が生じていたりすると、適切な輝度にならずに、十分な視認性が得られない場合がある。また、ユーザーが画質(明るさやコントラスト等)を調整できるプロジェクターでは、画質の調整状況によっても視認性が変化するため、周囲の明るさのみに応じた輝度調整では、良好な視認性を得ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、光源装置から射出された光を変調して投写するプロジェクターであって、所定のテスト画像を記憶する記憶部と、前記テスト画像を投写面に投写する画像投写部と、前記投写面に投写された前記テスト画像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された前記テスト画像の内容を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて、前記光源装置の輝度を調整する輝度調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このプロジェクターによれば、投写されたテスト画像の内容を認識部が認識し、その認識結果に基づいて、輝度調整部が光源装置の輝度を調整する。このため、光源装置の輝度を、画像の内容を認識しやすい輝度、即ち視認性が良好となるような輝度に調整することが容易になる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記輝度調整部は、前記光源装置の輝度を変化させながら、前記撮像部による撮像と、前記認識部による認識を繰り返し、前記認識部の認識結果に基づいて前記光源装置の輝度を設定するようにしてもよい。
【0009】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記プロジェクターの投写状態を調整する投写状態調整部をさらに備え、前記輝度調整部は、前記投写状態調整部が前記投写状態を調整した後で、前記光源装置の輝度を調整するようにしてもよい。
【0010】
[適用例4]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記テスト画像は、文字を含んで構成され、前記認識部は、前記文字を認識するようにしてもよい。
【0011】
[適用例5]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記テスト画像は、ユーザーに対するメッセージを兼ねた文字列を含んでおり、前記認識部は、前記文字列を認識するようにしてもよい。
【0012】
[適用例6]本適用例に係るプロジェクターの制御方法は、光源装置から射出された光を変調して投写するプロジェクターの制御方法であって、所定のテスト画像を投写面に投写する投写ステップと、前記投写面に投写された前記テスト画像を撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップで撮像された前記テスト画像の内容を認識する認識ステップと、前記認識ステップでの認識結果に基づいて、前記光源装置の輝度を調整する調整ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
このプロジェクターの制御方法によれば、投写されたテスト画像の内容を認識し、その認識結果に基づいて光源装置の輝度を調整するため、光源装置の輝度を、画像の内容を認識しやすい輝度、即ち視認性が良好となるような輝度に調整することが容易になる。
【0014】
また、上述したプロジェクター及びその制御方法がプロジェクターに備えられたコンピューターを用いて構築されている場合には、上記形態及び上記適用例は、その機能を実現するためのプログラム、或いは当該プログラムを前記コンピューターで読み取り可能に記録した記録媒体等の態様で構成することも可能である。記録媒体としては、フレキシブルディスクやハードディスク、CDやDVD等の光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性の半導体メモリーを搭載したメモリーカードやUSBメモリー、プロジェクターの内部記憶装置(RAMやROM等の半導体メモリー)等、前記コンピューターが読み取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プロジェクターの概略構成を示すブロック図。
【図2】光源輝度を調整する際に投写されるテスト画像を示す図。
【図3】電源オン状態に移行した際のプロジェクターの動作を説明するフローチャート。
【図4】光源輝度の調整を行うためのサブルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光源装置から射出された光を変調して、外部から入力される画像情報に基づく画像(以降、「入力画像」という。)を形成し、この画像をスクリーンやホワイトボード等の投写面に投写する。また、本実施形態のプロジェクターは、画像の投写状態(フォーカス状態やズーム状態等)を、プロジェクターの設置状況等に応じて適切な状態に調整する投写状態調整機能を備えるとともに、光源装置の輝度(光源輝度)を適切な状態に調整する輝度調整機能を備えている。
【0017】
図1は、本実施形態のプロジェクターの概略構成を示すブロック図であり、図2は、光源輝度を調整する際に投写されるテスト画像を示す図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、画像投写部10、制御部20、記憶部21、入力操作部22、画像情報入力部23、画像処理部24、液晶駆動部25、撮像部26、レンズ駆動部27、光源制御部28等を備えている。
【0018】
画像投写部10は、光源装置11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12B、投写光学系としての投写レンズ13等で構成されている。画像投写部10は、表示部に相当するものであり、光源装置11から射出された光を液晶ライトバルブ12R,12G,12Bで変調して画像(画像光)を形成し、この画像を投写レンズ13から拡大投写して、投写面S等に表示する。
【0019】
光源装置11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を液晶ライトバルブ12R,12G,12B側に反射するリフレクター11bとを含んで構成されている。光源装置11から射出された光は、図示しないインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R,12G,12Bに入射する。
【0020】
液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ12R,12G,12Bには、マトリクス状に配列された複数の画素が形成されており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。そして、液晶駆動部25の駆動により、入力される画像情報に応じた駆動電圧が各画素に印加されると、各画素は、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源装置11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像光が色光毎に形成される。形成された各色の画像光は、図示しない色合成光学系によって画素毎に合成されてカラー画像となった後、投写レンズ13から拡大投写される。なお、この投写レンズ13は、複数のレンズ群を備えて構成され、フォーカス状態を調整するためのフォーカス調整機構(図示せず)、及びズーム状態を調整するためのズーム調整機構(図示せず)を備えている。
【0021】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)や、各種データ等の一時記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等を備えており、記憶部21に記憶されている制御プログラムに従ってCPUが動作することによりプロジェクター1の動作を統括制御する。つまり、制御部20は、記憶部21とともにコンピューターとして機能する。
【0022】
記憶部21は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリー、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)等の不揮発性のメモリーにより構成されている。記憶部21には、プロジェクター1の動作を制御するための制御プログラムや、プロジェクター1の動作条件等を規定する各種データ等が記憶されている。
【0023】
入力操作部22は、ユーザーの入力操作を受け付けるものであり、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。入力操作部22が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを切り替えるための電源キー、各種設定用のメニュー画像を表示させるメニューキー等がある。ユーザーが入力操作部22の各種操作キーを操作すると、入力操作部22は、この入力操作を受け付けて、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、入力操作部22として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、図示しないリモコン信号受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0024】
画像情報入力部23には、パーソナルコンピューターや各種映像再生装置等、図示しない外部の画像出力装置から画像情報が入力される。そして、画像情報入力部23は、入力された画像情報を画像処理部24に出力する。
【0025】
画像処理部24は、画像情報入力部23から入力される画像情報を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの各画素の階調を表す画像情報に変換する。ここで、変換された画像情報は、R,G,Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素から射出する光の強弱(階調)が規定される。また、画像処理部24は、制御部20の指示に基づき、変換した画像情報に対して、明るさやコントラスト等を調整するための画質調整処理や、投写面Sに対して斜め方向から画像を投写する場合に生じる台形歪を補正するための台形歪補正処理等を必要に応じて行い、処理後の画像情報を液晶駆動部25に出力する。
【0026】
液晶駆動部25が、画像処理部24から入力される画像情報に従って液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを駆動すると、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、画像情報に応じた画像(入力画像)を形成し、この入力画像が投写レンズ13から投写される。
【0027】
ここで、プロジェクター1は、入力画像以外にも、投写状態や光源輝度等を調整するためのテスト画像を投写することが可能になっている。記憶部21には、複数のテスト画像の画像データが記憶されており、制御部20がこの中の1つの画像データを読み出して画像処理部24に出力すると、画像処理部24は、画像情報入力部23から入力される画像情報の内容に拘わらず、制御部20から入力される画像データに基づく画像情報を生成して液晶駆動部25に出力する。これにより、画像投写部10からテスト画像が投写される。このように、画像処理部24は、入力画像を投写する状態と、テスト画像を投写する状態とを制御部20の指示に応じて切り替えることができる。なお、本実施形態では、フォーカス状態の調整を行う際には、ストライプ模様のテスト画像(図示せず)が用いられ、ズーム状態の調整や台形歪の補正を行う際には、白色無地のテスト画像(図示せず)が用いられる。また、光源輝度の調整を行う際には、図2に示すように、複数の文字等からなる文字列Cを含んだテスト画像TPが用いられる。なお、記憶部21には、文字列Cに対応するテキストデータ、即ち文字列Cを構成する各文字の文字コードを連ねたテキストデータも記憶されている。
【0028】
撮像部26は、プロジェクター1の前方(画像の投写方向)を撮像するものであり、CCD(Charge Coupled Device)センサー、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等からなる撮像素子(図示せず)と、撮像素子の前方に配置される撮像レンズ(図示せず)とを含んで構成されている。撮像部26は、制御部20の指示に基づいて、投写面Sに投写された画像(投写画像)を含む範囲を撮像し、撮像結果として、撮像した画像(撮像画像)を表す画像データ(以降、「撮像データ」という。)を生成する。撮像部26で生成された撮像データは、制御部20に出力される。制御部20は、プロジェクター1がテスト画像を投写している状態で撮像部26に撮像を行わせ、この撮像結果に基づいて、投写状態の調整や光源輝度の調整を行う。
【0029】
レンズ駆動部27は、制御部20の指示に基づいて、投写レンズ13のフォーカス調整機構及びズーム調整機構を駆動する。そして、各レンズ群の光軸方向の位置関係を変化させ、フォーカス状態の調整(フォーカス調整)及びズーム状態の調整(ズーム調整)を行う。
【0030】
光源制御部28は、制御部20の指示に基づいて光源装置11の点灯を制御する。具体的には、光源制御部28は、光源装置11に所定の電力を供給することにより光源装置11を点灯させるとともに、電力の供給を停止して光源装置11を消灯させることができる。また、光源制御部28は、制御部20の指示に基づいて光源装置11に供給する電力を制御することにより、光源装置11の輝度(明るさ)を調整することが可能であり、本実施形態では、最も明るい「最大輝度」から最も暗い「最小輝度」までの間で複数段階に調整することができる。
【0031】
本実施形態の制御部20には、文字認識部20aが含まれている。文字認識部20aは、撮像画像、即ち撮像部26から入力される撮像データに基づく画像を解析し、撮像画像に含まれる文字を認識する。ここで、文字の認識には、OCR(Optical Character Recognition)に用いられているような一般的な文字認識技術を適用することができる。例えば、文字認識部20aは、入力される撮像データに基づいて撮像画像の濃淡の分布を解析することにより、文字列であると推定される部位(文字列部)を撮像画像の中から抽出し、さらに濃淡の連結性に基づいてこの部位を1文字ずつの複数の部位に分割する。その後、文字認識部20aは、分割後の各部位の濃淡のパターン(形状)と、予め登録されている文字のパターンとを比較することにより、各部位の文字を特定(認識)する。そして、認識した各文字の文字コードを連ねたテキストデータを生成する。
【0032】
次に、プロジェクター1の動作について説明する。
プロジェクター1に商用電源が供給されると、制御部20は、制御プログラムに従った動作を開始する。商用電源が供給された直後には、プロジェクター1は、スタンバイ状態(「電源オフ状態」ともいう。)であり、制御部20は、入力操作部22の電源キーに対する操作を監視する。そして、電源キーがユーザーにより操作されると、プロジェクター1は、電源オン状態に移行する。
【0033】
図3は、電源オン状態に移行した際のプロジェクター1の動作を説明するフローチャートである。プロジェクター1が電源オン状態に移行すると、プロジェクター1の制御部20は、図3に示すフローに従って動作する。
図3に示すように、まず、制御部20は、画像の投写を開始させるための各種初期化処理を実行し(ステップS101)、次いで、光源制御部28に指示をして光源装置11を点灯させる(ステップS102)。これにより、画像投写部10からの画像の投写が可能となる。
【0034】
その後、制御部20は、投写状態調整機能により、画像の投写状態(本実施形態では、フォーカス状態、ズーム状態、及び台形歪による画像の変形状態)を調整(補正)するための処理を行う(ステップS103)。具体的には、制御部20は、画像処理部24に指示をして、投写状態を調整するためのテスト画像を画像投写部10から投写させるとともに、投写されたテスト画像を撮像部26に撮像させる。そして、その撮像データ(撮像画像)を解析し、投写された画像が適切な投写状態となるようにレンズ駆動部27を制御するとともに、画像処理部24に台形歪を補正させる。
【0035】
例えば、フォーカス状態の調整を行う場合には、制御部20は、画像処理部24に指示をして、白黒のストライプ模様の画像をテスト画像として投写させるとともに、レンズ駆動部27の駆動によってフォーカス状態を少しずつ変化させながら、投写されているテスト画像を撮像部26に撮像させる。そして、制御部20は、フォーカス状態が変化する度に、撮像画像に含まれる周波数成分を解析し、高周波数成分が最大となるフォーカス状態を適切なフォーカス状態(合焦状態)として検出する。その後、制御部20は、レンズ駆動部27にフォーカス調整機構を駆動させて、検出された合焦状態を再現する。なお、高周波数成分が最大となるフォーカス状態を合焦状態とする代わりに、白色の領域と黒色の領域の輝度差(コントラスト)が最大となるフォーカス状態を合焦状態として検出するようにしてもよい。
【0036】
また、ズーム状態の調整及び台形歪の補正を行う場合には、制御部20は、画像処理部24に指示をして、全白画像をテスト画像として投写させ、このテスト画像を撮像部26に撮像させる。そして、制御部20は、撮像部26から入力される撮像データに基づいて撮像画像の解析(例えば、輪郭検出等)を行い、撮像画像内における投写画像の形状と、投写面Sの縁取り(スクリーン枠)の形状とを認識する。そして、制御部20は、これらの形状に基づいて、投写画像が矩形に表示されるように画像処理部24に台形歪補正処理を行わせるとともに、レンズ駆動部27にズーム調整機構を駆動させ、投写画像がスクリーン枠内にできるだけ大きく表示されるようにズーム状態を調整する。
【0037】
投写状態の調整を終えると、制御部20は、後述するフロー(サブルーチン)に従って、光源装置11の光源輝度を調整するための処理を行う(ステップS104)。
【0038】
図4は、光源輝度の調整を行うためのサブルーチンを説明するフローチャートである。
図4に示すように、ステップS201では、制御部20は、光源制御部28に指示をして、光源輝度を最小輝度に設定させる。そして、ステップS202では、制御部20は、画像処理部24に指示をして、光源輝度を調整するためのテスト画像、即ち文字列Cを含んだテスト画像TP(図2参照)を投写させる。
【0039】
ステップS203では、制御部20は、撮像部26に指示をして、投写面Sに投写されたテスト画像TPを撮像させる。これにより、文字列Cを含んだテスト画像TPが撮像部26によって撮像され、その撮像データが制御部20に出力される。
【0040】
ステップS204では、制御部20の文字認識部20aは、入力された撮像データに基づいて撮像画像を解析し、撮像したテスト画像TPに含まれる文字列Cを認識する。
【0041】
ステップS205では、制御部20は、文字認識部20aがテスト画像TPに含まれる文字列Cを正しく認識できたか否かを判断する。具体的には、文字認識部20aが生成したテキストデータと、記憶部21に記憶されているテキストデータとを比較して、両者が一致するか否かを判断する。そして、正しく認識できた場合、即ち認識が成功した場合には、光源輝度の調整が完了し、メインフロー(図3参照)に復帰する。一方、正しく認識できなかった場合、即ち認識が失敗した場合にはステップS206に移行する。
【0042】
テスト画像TPに含まれる文字列Cを正しく認識できずにステップS206に移行した場合には、制御部20は、光源制御部28に指示をして、光源輝度を1段階だけ高く(明るく)させる。
【0043】
ステップS207では、制御部20は、光源輝度が最大輝度に達したか否かを判断する。そして、最大輝度に達した場合には、光源輝度の調整を終了し、メインフロー(図3参照)に復帰する。一方、まだ最大輝度に達していない場合には、ステップS203に戻り、上記の動作を繰り返す。
【0044】
このように、制御部20は、光源装置11の輝度を最小輝度から最大輝度まで1段階ずつ高くしていきながら、文字認識部20aがテスト画像TPに含まれる文字列Cを正しく認識できるまで、撮像部26によるテスト画像TPの撮像と、文字認識部20aによる文字列Cの認識を繰り返す。言い換えれば、制御部20は、光源輝度を変化させながら、テスト画像TPの撮像と文字列Cの認識を繰り返し、文字認識部20aが文字列Cを正しく認識できたときの輝度、即ち文字認識部20aの認識結果が失敗から成功に切り替わったときの輝度に光源輝度を設定する。また、文字列Cが最後まで正しく認識できなかった場合には、制御部20は、光源輝度を最大輝度に設定する。
【0045】
図3に戻って、光源輝度の設定(調整)を終えると、制御部20は、画像処理部24に指示をして、画像情報入力部23に入力される画像情報に基づく画像(入力画像)の投写を開始させ(ステップS105)、フローを終了する。この結果、画像投写部10から入力画像が投写され、投写面Sに表示される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、投写面Sに投写されたテスト画像TPの内容(文字列C)を文字認識部20aが認識し、その認識結果に基づいて、制御部20が光源装置11の輝度を調整する。このため、光源装置11の輝度を、画像の内容を認識しやすい輝度、即ち視認性が良好となるような輝度に調整することが容易になる。
【0047】
なお、本実施形態では、文字認識部20aが認識部に相当する。また、光源輝度の調整を行う際の制御部20が輝度調整部に相当し、投写状態の調整を行う際の制御部20が投写状態調整部に相当する。また、テスト画像TPを投写するステップS202が投写ステップに相当し、投写されたテスト画像TPを撮像するステップS203が撮像ステップに相当する。また、テスト画像TPに含まれる文字列Cを認識するステップS204が認識ステップに相当し、認識ステップでの認識結果に基づいて光源輝度を調整するステップS205〜S207が調整ステップに相当する。
【0048】
(変形例)
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0049】
上記実施形態では、光源輝度を調整する際に、文字認識部20aが文字列Cを正しく認識できるまで、或いは最大輝度に達するまで、光源輝度を最小輝度から1段階ずつ高くしているが、この態様に限定されない。例えば、初めに光源輝度を最大輝度に設定し、文字認識部20aが文字列Cを正しく認識できなくなるまで、或いは最小輝度に達するまで、光源輝度を1段階ずつ低く(暗く)していくようにしてもよい。この場合には、文字認識部20aが文字列Cを正しく認識できなくなった輝度よりも1段階高い輝度に設定すればよい。ここで、最大輝度でも文字列Cを正しく認識できなかった場合には、最大輝度に設定し、最小輝度でも文字列Cを正しく認識できた場合には、最小輝度に設定すればよい。
【0050】
上記実施形態において、テスト画像TPには、複数の文字等からなる文字列Cが含まれているが、1文字のみが表記されたテスト画像TPを採用してもよい。また、テスト画像TPに含まれる文字列Cは、図2に示した例のように、意味のない文字の羅列に限定されない。例えば、「ただいま調整中です。」や「少しお待ちください。」のように、ユーザーに対するメッセージを兼ねた文字列Cを投写して、文字認識部20aがこの文字列Cを認識するようにすれば、ユーザーに違和感を与えずに済む。
【0051】
上記実施形態では、光源輝度を調整するためのテスト画像TPに文字列Cが含まれており、この文字列Cを認識した結果に基づいて光源輝度を調整する態様を示したが、この態様に限定されない。例えば、多角形等の図形を含んだテスト画像TPを用いて、この図形を認識させる態様としてもよい。また、文字や図形を認識させるとともに、これらの色を認識させるようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、プロジェクター1は、設置状況等に応じて適切な投写状態に調整する投写状態調整機能を備えており、この投写状態調整機能によって投写状態の調整を行った後で光源輝度の調整を行うようにしているが、投写状態調整機能は必須の構成ではない。例えば、ユーザーが手動で投写状態を調整した後で、ユーザーの入力操作等をトリガーにして光源輝度の調整を開始するようにしてもよい。また、上記実施形態の投写状態調整機能は、投写レンズ13のフォーカス状態と、ズーム状態と、台形歪による画像の変形状態とを調整(補正)可能になっているが、これらのすべてが調整可能である必要はなく、いずれか1つ又は2つであってもよい。
【0053】
上記実施形態において、文字認識部20aが常に同一の条件で文字認識を行うためには、撮像画像内において文字列Cが常に同一の大きさであることが望ましい。このためには、投写レンズ13のズーム状態や投写面Sまでの距離等に応じて、投写するテスト画像TPのサイズを変化(拡大又は縮小)させればよい。或いは、撮像データに基づいて、撮像画像内における投写画像のサイズを計測し、この計測結果に基づいて、投写するテスト画像TPのサイズを変化させてもよい。また、撮像部26の撮像レンズにズーム調整機能を備えるようにして、文字列Cを常に一定の大きさで撮像できるようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、光変調装置として3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いた3板式のプロジェクター1について説明したが、これに限定されない。例えば、各画素の中にそれぞれR光、G光、B光を透過可能なサブ画素を含んだ1つの液晶ライトバルブによって画像を形成する態様とすることも可能である。
【0055】
上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いているが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源装置11から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【0056】
上記実施形態では、光源装置11は、放電型の光源ランプ11aによって構成されているが、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源やレーザー光源等の固体光源、或いはその他の光源に適用することもできる。
【0057】
上記実施形態では、外部の画像出力装置から入力される画像情報に基づく画像(入力画像)を投写するプロジェクター1を示したが、この態様に限定されない。例えば、DVD(Digital Versatile Disc)やBlu−ray Disc(登録商標)等の記録媒体に記録されている画像情報を再生可能な画像再生部を一体的に備え、この画像再生部によって再生された画像情報に基づく画像(再生画像)を投写するプロジェクター1であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…プロジェクター、10…画像投写部、11…光源装置、11a…光源ランプ、11b…リフレクター、12R,12G,12B…液晶ライトバルブ、13…投写レンズ、20…制御部、20a…文字認識部、21…記憶部、22…入力操作部、23…画像情報入力部、24…画像処理部、25…液晶駆動部、26…撮像部、27…レンズ駆動部、28…光源制御部、TP…テスト画像、C…文字列、S…投写面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置から射出された光を変調して投写するプロジェクターであって、
所定のテスト画像を記憶する記憶部と、
前記テスト画像を投写面に投写する画像投写部と、
前記投写面に投写された前記テスト画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記テスト画像の内容を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記光源装置の輝度を調整する輝度調整部と、
を備えたことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記輝度調整部は、前記光源装置の輝度を変化させながら、前記撮像部による撮像と、前記認識部による認識を繰り返し、前記認識部の認識結果に基づいて前記光源装置の輝度を設定することを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクターであって、
前記プロジェクターの投写状態を調整する投写状態調整部をさらに備え、
前記輝度調整部は、前記投写状態調整部が前記投写状態を調整した後で、前記光源装置の輝度を調整することを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロジェクターであって、
前記テスト画像は、文字を含んで構成され、
前記認識部は、前記文字を認識することを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターであって、
前記テスト画像は、ユーザーに対するメッセージを兼ねた文字列を含んでおり、
前記認識部は、前記文字列を認識することを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
光源装置から射出された光を変調して投写するプロジェクターの制御方法であって、
所定のテスト画像を投写面に投写する投写ステップと、
前記投写面に投写された前記テスト画像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで撮像された前記テスト画像の内容を認識する認識ステップと、
前記認識ステップでの認識結果に基づいて、前記光源装置の輝度を調整する調整ステップと、
を備えたことを特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203516(P2011−203516A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71030(P2010−71030)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】