説明

プロジェクタ

【課題】良好に調光可能なプロジェクタを提供する。
【解決手段】本発明のプロジェクタは、波長域が異なる複数種の色光を射出する照明光学系10と、各々が複数種の色光の各々に対応して設けられ、色光を変調する複数の光変調手段20a〜20cと、複数の光変調手段20a〜20cの各々によって変調された色光を合成する色合成手段30と、色合成手段30から射出された光の光束を遮って配置され、色合成手段30の光軸に対して傾斜した光学軸を有する位相差板60と、位相差板60をその面方向と略直交する軸回りに回転させる回転手段と、位相差板60から射出された光をその偏光状態に応じて反射又は透過させて分離する偏光ビームスプリッタと、偏光ビームスプリッタ60によって分離された光のうちの一方を投射する投射手段50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、展示会や学会、会議等のプレゼンテーションに、あるいはホームシアター等にプロジェクタ(投射型表示装置)がよく用いられている。このようなプロジェクタにあっては、直視型表示装置よりも大画面化が容易であり、投射画像の品質向上のためにダイナミックレンジを広くする技術が期待されている。
【0003】
一般に、プロジェクタは、光源や光源光を変調する光変調手段(例えば液晶ライトバルブ)、変調後の光を投射する投射レンズ等を備えている。また、通常はフルカラー表示が可能になっており、白色光源にダイクロイックミラー等の色分離手段を組み合わせた照明系等によって、RGB等の複数種の色光を供給するようになっている。光変調手段は色光ごとに設けられており、各光変調手段に変調された光をクロスダイクロイックプリズム等の色合成手段によって合成し、この合成光を投射することによりフルカラー表示の投射画像が得られるようになっている。
【0004】
プロジェクタは、直視型表示装置よりも光源光の光量が格段に大きくなっている。このような光源にあっては、光源光を安定に供給する観点から、電圧変化によって光源を制御し光量を調整することは好ましくないと考えられる。そこで、光源とは別に光量を調整する調光手段を設けることにより、ダイナミックレンジを広くする技術が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1の技術では、光強度を均一化するフライアイインテグレータを構成する2つのレンズの間に、ここを通る光の一部を遮光する遮光板を配置している。光の進行方向に対する遮光板の傾きを変化させることにより、光の進行方向に直交する断面での遮光板の投影面積が変化し、遮光する光量が変化する。すなわち、遮光板の傾きによって、フライアイインテクレータから射出される光の光量を制御することが可能になっている。
【0006】
特許文献1の技術を用いる場合には、遮光板の面に平行な軸周りに遮光板を回転させるので慣性モーメントが大きくなり、遮光板の傾きを高速に制御することが困難である。また、遮光板の運動に伴って風きり音(騒音)を生じるおそれや、光の一部を遮光するので光強度を均一化する機能が低下して明るさのムラを生じるおそれもある。
【0007】
特許文献2の技術では、光源と液晶ライトバルブとの間に、光の進行方向と平行な軸を中心に回転する円板状の位相差板を配置している。光源からの光は、位相差板の回転角に応じて偏光軸が回転する。偏光軸が回転した光は、その回転角に応じて液晶ライトバルブの偏光板に吸収される。すなわち、位相差板の回転角によって、液晶ライトバルブから射出される光の光量を制御することが可能になっている。
【0008】
特許文献2の技術を用いると、位相差板の面に直交する軸を中心に回転させるので、特許文献1よりも慣性モーメントが小さくなり、調光を高速に行うことができる。また、風きり音や明るさムラを生じることも防止されると考えられる。
【特許文献1】特開2004−69966号公報
【特許文献2】特開2001−100699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の技術を用いる場合でも、以下のような不都合を生じることがある。特許文献2の技術において、位相差板を通った光は、その偏光方向が変化してダイクロイックミラーに入射する。ダイクロイックミラーは、白色光を色光に分離するものであるから波長に対して感度が高くなっており、その光学特性が入射光の偏光状態に応じて変化することがある。すると、所望のカラーバランスに色光が分離されなくなり、色光が変調され合成された後、投射されると投射画像のカラーバランスが所望のものと異なってしまう。
【0010】
また、分離された色光は、その偏光状態に応じて液晶ライトバルブの偏光板に吸収されるので、射出される光の光量を小さくするほど偏光板はエネルギーを吸収して発熱する。したがって、調光するにつれて偏光板が熱劣化してしまい、プロジェクタが短寿命化してしまう。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、良好に調光可能とされたプロジェクタを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプロジェクタは、波長域が異なる複数種の色光を射出する照明光学系と、各々が前記複数種の色光の各々に対応して設けられ、該色光を変調する複数の光変調手段と、前記複数の光変調手段の各々によって変調された色光を合成する色合成手段と、前記色合成手段から射出された光の光束を遮って配置され、前記色合成手段の光軸に対して傾斜した光学軸を有する位相差板と、前記位相差板をその面方向と略直交する軸回りに回転させる回転手段と、前記位相差板から射出された光をその偏光状態に応じて反射又は透過させて分離する偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタによって分離された光のうちの一方を投射する投射手段と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
回転手段によって位相差板を回転させると、色合成手段から射出された光の位相差板に対する入射面と位相差板の光学軸とがなす角度が、位相差板の回転角に応じて変化する。すると、位相差板に入射した光は、入射面と位相差板の光学軸とがなす角度に応じて偏光状態が変化し、変化後の偏光状態に応じて偏光ビームスプリッタによって分離される。分離された光のうち一方が投射手段によって投射されるので、位相差板の回転角を制御することにより投射される光の光量を制御することができる。
なお、ここで言う色合成手段の光軸とは、色合成手段から偏光ビームスプリッタに向けて射出される光束の中心軸のことである。また、色合成手段の光軸と位相差板の光学軸とがなす角度αは、前記光軸と平行な単位ベクトルと前記光学軸に平行な単位ベクトルの内積cosαから求められる。色合成手段の光軸に対して傾斜した光学軸とは、色合成手段の光軸に対して(−1<cosα<1)を満たす角度αをなす光学軸のことである。
【0014】
位相差板をその面方向に略直交する軸回りに回転させると、面方向に沿う軸回りに回転させる場合よりも、慣性モーメントが小さくなる。したがって、面方向に沿う軸回りに回転させる場合よりも、位相差板の回転角の制御が容易化されるとともに高速化され、光量を良好に制御することができる。よって、ダイナミックレンジが広くなり、高品質な投射画像が得られるプロジェクタとなる。
【0015】
偏光ビームスプリッタは、位相差板から射出された光をその偏光状態に応じて反射又は透過させて分離するので、入射光をほとんど吸収しない。したがって、吸収又は透過によって入射光を分離する偏光板を用いる場合に比べ吸収した光エネルギーによる熱劣化が格段に低減される。よって、調光に偏光板を用いたものよりもプロジェクタの長寿命化が図られる。
【0016】
また、前記色合成手段の光軸と前記位相差板の光学軸とがなす角度が、略90°になっていることが好ましい。
このようにすれば、色合成手段から射出された光の位相差板における反射率が最も低くなるので、光の利用効率が高くなる。
【0017】
また、前記複数の光変調手段と前記色合成手段と前記位相差板と前記回転手段とからなるグループを複数備えていることが好ましい。
このようにすれば、偏光ビームスプリッタによって、第1のグループ側から投射手段に入射する光の光量を調整することができ、かつ第2のグループ側から投射手段に入射する光の光量を調整することもできる。したがって、第1のグループ側及び第2のグループ側の各々においてダイナミックレンジを広くすることができる。
【0018】
また、第1のグループ側から偏光ビームスプリッタに入射して分離された光の一方と、第2のグループ側から偏光ビームスプリッタに入射して分離された光の一方とが、投射手段によって投射されるので、投射画像を高品質にすることができる。例えば、第1のグループ側による画像全体と第2のグループによる画像全体とが重なり合うように投射すれば輝度の最大値が高くなり、しかも調光により最小値が低くなるので、ダイナミックレンジが格段に広くなる。また、例えば第1のグループによる画像と第2のグループによる画像とが並ぶように投射すれば、画素数が多くなるので高解像度となる。以上のように、前記の構成によれば格段に高品質な投射画像が得られるプロジェクタとなる。
【0019】
また、偏光ビームスプリッタは、調光手段の一部として機能するとともに、第1のグループから射出された光と第2のグループから射出された光とを合成する手段としても機能する。したがって、これらの機能を独立した部品に分担させる場合よりも、プロジェクタの構成の簡略化が図られる。
【0020】
前記回転手段が、前記複数の光変調手段に供給される画像信号に基づいて制御されていることが好ましい。
このようにすれば、偏光ビームスプリッタによって分離される光の光量が画像信号に基づいて制御される。したがって、投射画像を画像信号に適した明るさにすることが可能になり、良好な投射画像が得られるプロジェクタになる。
【0021】
前記位相差板が、前記色合成手段と前記投射手段との間の前記色合成手段から射出される光束の断面全体を遮って設けられていることが好ましい。
このようにすれば、光束の断面において均一に光の偏光状態を制御することができ、光束の断面の一部のみを遮っている場合に比べて、射出される光の明るさムラを無くすことができる。
【0022】
前記照明光学系が、光源と、前記光源から射出された光のうち所定の波長帯域の色光を分離し、前記複数種の色光を形成する色分離手段を有している構成としてもよい。
ダイクロイックミラー等の色分離手段の光学特性は、光の波長に対して高感度になっている。例えば、色分離手段の前段において光の偏光状態を変化させて調光すると、波長帯域光を分離する分離能が変化するおそれがある。
本発明では位相差板が色分離手段よりも後段に配置されているので、位相差板が色分離手段の分離能に影響を与えることがなくなり、色分離手段によって所望の波長帯域光を分離することができる。また、偏光ビームスプリッタは、光学特性の波長依存性が色分離手段よりも格段に低いので、入射光のカラーバランスを変化させることなくこれを分離することができる。以上のように、所望のカラーバランスの光を投射することができので、高品質の投射画像が得られるプロジェクタとなる。
【0023】
また、前記位相差板が円板状になっており、前記回転手段は前記位相差板をその中心軸回りに回転させるようになっていることが好ましい。
このようにすれば、円板状の中心軸回りの慣性モーメントは他の軸回りの慣性モーメントよりも小さいので、小さなトルクで位相差板を回転させることができる。したがって、回転手段の機構の簡略化や、位相差板の制御の高速化・高精度化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、構造の特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造はその寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせて示す場合がある。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のプロジェクタ1の概略構成を示す模式図である。プロジェクタ1は、本発明を3板式の液晶ライトバルブ型プロジェクタに適用した例である。図1に示すように、プロジェクタ1は、照明光学系10、液晶ライトバルブ(光変調手段)20a〜20c、クロスダイクロイックプリズム(色合成手段)30、偏光ビームスプリッタ40、投射レンズ(投射手段)50、1/2波長板(位相差板)60を備えている。位相差板60には、回転手段(後述する)が設けられている。
【0026】
本実施形態の照明光学系10は、光源11、光源11の後段に順に配置されたフライアイレンズアレイ12、偏光変換素子13、ダイクロイックミラー14a、14b等から構成されている。光源11は、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の白色ランプ11aと、白色ランプ11aの光を反射させて前方に射出するリフレクタ11bとから構成されている。
【0027】
フライアイレンズアレイ12は、光源11から射出された光の光強度の分布を均一化するものである。これにより、被照明領域である液晶ライトバルブ20a〜20cにおいて照度分布が均一化される。
偏光変換素子13は、その詳細な構造を図示しないものの、偏光ビームスプリッタアレイ(PBSアレイ)及び1/2波長板アレイを有している。フライアイレンズアレイ12からPBSアレイに入射した光のうち、所定の偏光方向の偏光がPBSアレイ内の偏光分離膜(PBS膜)を透過するとともに、それ以外の偏光方向の偏光がPBSアレイ内のPBS膜で反射する。反射した偏光は、1/2波長板アレイによって偏光方向が前記所定の偏光方向に変化して射出される。このように偏光変換素子13は、光源光の光量を損なうことなく光源光の偏光方向を一方向に揃えるようになっている。
【0028】
ダイクロイックミラー14a、14bは、例えばガラス表面に誘電体多層膜を積層したものである。これにより、所定の波長帯域の色光が選択的に反射し、それ以外の波長帯域の色光が透過するようになっている。例えば、光源11から射出された光源光のうち、赤色光Laがダイクロイックミラー14aを透過するとともに、緑色光Lb及び青色光Lcがダイクロイックミラー14aで反射する。また、ダイクロイックミラー14aで反射した緑色光Lb及び青色光Lcのうち、青色光Lcがダイクロイックミラー14bを透過し、緑色光Lbがダイクロイックミラー14bで反射する。
【0029】
ダイクロイックミラー14aを透過した赤色光Laは、反射ミラー15aで反射し平行化レンズ18aを経て赤色光用の液晶ライトバルブ20aに入射する。ダイクロイックミラー14aで反射した緑色光Lbは、平行化レンズ18bを経て緑色光用の液晶ライトバルブ20bに入射する。ダイクロイックミラー14bを透過した青色光Lcは、リレー光学系17を経て青色光用の液晶ライトバルブ20cに入射する。リレー系17は、ダイクロイックミラー14b側から順に配置されたリレーレンズ16a、反射ミラー15b、リレーレンズ16b、反射ミラー15c、リレーレンズ16c等からなっている。リレーレンズ16cは、平行化レンズとしても機能する。
【0030】
液晶ライトバルブ20a〜20cの各々は、透過型液晶セル22と、その入射側・射出側にそれぞれ設けられた偏光板21、23とから構成されている。透過型液晶セル22は、例えばアクティブマトリクス型のものであり一対の電極間に挟持された液晶層を有している。また、液晶ライトバルブ20a〜20cは、画像信号を供給する信号源(後述する)に電気的に接続されている。信号源から画像信号が供給されると、前記電極間に電圧が印加され、この印加電圧に応じて液晶分子の方位角が制御される。これにより、光を変調することが可能になっている。各液晶ライトバルブ20a〜20cで変調された赤色光La、緑色光Lb、青色光Lcは、クロスダイクロイックプリズム30に入射するようになっている。
【0031】
クロスダイクロイックプリズム30は、三角柱プリズムが貼り合わされた構造となっており、その内面に赤色光Laが反射し緑色光Lbが透過するミラー面と、青色光Lbが反射し緑色光が透過するミラー面とが互いに直交して形成されている。赤色光La、緑色光Lb、青色光Lcは、これらのミラー面で選択的に反射あるいは透過して同じ側に射出される。これにより、3つの色光が重ね合わされて合成光Lとなる。
【0032】
なお、複数の液晶ライトバルブの各々に入射する色光の偏光方向を揃える場合と、異ならせる場合とがある。互いに偏光方向を異ならせると、色光の減衰特性等を改善すること等ができる。このような理由により本実施形態では、液晶ライトバルブ20bから射出された緑色光Lbが偏光ビームスプリッタ40の入射面に対してP偏光になっており、液晶ライトバルブ20a、20cの各々から射出された赤色光La、青色光LcがS偏光になっている。このような場合には、複数の光変調手段の各々から射出された色光の偏光方向を揃える必要がある。ここでは、クロスダイクロイックプリズム30と偏光ビームスプリッタ40との間に、偏光調整手段35が設けられている。なお、以下の説明で、偏光ビームスプリッタ40の入射面に対するP偏光、S偏光を単にP偏光、S偏光と称する場合がある。
【0033】
偏光調整手段35は、その詳細な構造を図示しないものの、狭帯域偏光回転フィルムと1/2波長板とから構成されている。狭帯域偏光回転フィルムは、これに入射した光のうち、所定の波長帯域光の偏光方向を回転させるものである。ここでは、緑色光Lbに対応する波長帯域光の偏光方向をP偏光からS偏光に変化させるようになっている。これにより、赤色光La、緑色光Lb、青色光Lcは、いずれもS偏光になって1/2波長板に入射し、いずれもP偏光になって1/2波長板から射出される。
【0034】
本実施形態では、位相差板として円板状の1/2波長板60を採用している。1/2波長板60は、その円形の面に沿う方向の光学軸を有しており、この面が色合成手段の光軸と直交するように配置されている。この面は、色合成手段から射出される光束の断面よりも大きくなっており、この断面全体を遮るようになっている。本実施形態の回転手段は、1/2波長板60を支持する支持部材と、1/2波長板60を回転させるステッピングモータ等のモータとからなっている。この支持部材は、色合成手段から射出される光束の外側に張り出した周縁部において1/2波長板60を支持しており、この光束を遮らないようになっている。また、1/2波長板60の面方向に直交する方向の併進運動を規制するとともに、1/2波長板60の面方向と直交する軸周りの回転運動を妨げないようになっている。前記モータは、ステッピングモータ等から構成されており、その回転角がモータ駆動回路(後述する)によって制御可能になっている。このモータは、1/2波長板60をその中心軸周りに所定角度だけ回転させることができるようになっている。中心軸とは、円形の面の中心を通りこの面に直交する軸のことである。
【0035】
このような1/2波長板60に入射した光は、その偏光軸と1/2波長板60の光学軸とがなす角度をθ(度)とすると、偏光軸が2θ(度)回転して1/2波長板60から射出される。例えば、P偏光がθ=0°の状態で1/2波長板60に入射すると、偏光軸が回転することなくP偏光のまま射出される。また、P偏光がθ=45°の状態で1/2波長板60に入射すると、偏光軸が90°回転してS偏光となり射出される。前記のように1/2波長板60の回転角はモータ駆動回路によって制御可能になっているので、1/2波長板60から射出される光の偏光方向も制御可能になっている。1/2波長板60から射出された光は、偏光ビームスプリッタ40に入射するようになっている。
【0036】
本実施形態では、偏光ビームスプリッタ40として偏光ビームスプリッタプリズム(PBSプリズム)を用いている。偏光ビームスプリッタ40は、第1方向に振動する第1偏光(例えばP偏光)を略全透過させるとともに、これと異なる第2方向の偏光(例えばS偏光)を略全反射させるようになっている。すなわち、P偏光が、1/2波長板60に入射しその偏光方向が2θ(度)だけ回転した後、偏光ビームスプリッタ40に入射すると、1/2波長板60に入射する前のcos2θ倍程度のP偏光が偏光ビームスプリッタ40を透過する。ここでは、偏光ビームスプリッタ40を透過した光Ldが投射レンズ50に入射し、投射レンズ50によってスクリーン(被投射面)70に拡大投射されるようになっている。また、1/2波長板60に入射する前のsin2θ倍程度のS偏光が、偏光ビームスプリッタ40で反射する。反射した光Leは、図示略の光吸収体等に吸収されこれに設けられた放熱板等から熱エネルギーとして散逸される。投射される光Ldは、偏光ビームスプリッタ40を透過した光の振幅に応じた光量になっている。理論上は、θ=0°の場合には光量が100%となり、θ=45°の場合には光量が0%となる。このように、1/2波長板の回転角によって、投射画像を示す光の光量を制御することが可能になっている。
【0037】
次に、図2を参照しつつ、液晶ライトバルブ20a〜20cに画像信号を供給する信号源、及び1/2波長板60を回転させる回転手段について説明する。図2は、信号源及び回転手段の概略構成を示す模式図である。図2に示すように、信号源90は、画像解析回路91、演算装置92、ゲイン調整回路93、及びモータ駆動回路94を有している。モータ駆動回路94は、モータ81と電気的に接続されている。
【0038】
画像解析回路91は、外部から入力された画像信号を解析して、明るさの調整量を判定するようになっている。画像信号は、PC等で生成されたデジタル形式のものやアナログ形式のものをA/Dコンバータ等でデジタル形式に変換したもの等である。例えば、対象となるフレームに含まれる画素データに基づいて、明るさの基準値を決定し、これに投射画像における最大の明るさに合わせるように調整量を決定する。明るさの基準値の決定方法としては、例えば対象となるフレームに含まれている画素データのうち、明るさが最大の階調数を基準とする方法や、階調数ごとの出現数分布において代表値(例えば最大値、最小値等)の階調数から一定の割合の出現数(例えば90%)を含む範囲を設定しその端の値を基準とする方法、さらに画像を複数の領域に分割し所定の領域に重み付けをして階調数ごとの出現数分布を評価する方法等が挙げられる。
【0039】
このようにして決定された明るさの調整量は、演算装置92によって適宜処理されてゲイン調整回路93に伝達される。ゲイン調整回路93は、この調整量に基づいて伸長処理やエッジ強調処理、ノイズフィルタ処理等の各種画像処理を行って、画像信号を加工するようになっている。加工された画像信号は、液晶ライトバルブ20a〜20cに供給される。
【0040】
また、この明るさの調整量は、演算装置92によって適宜処理された後にモータ駆動回路94にも伝達される。モータ駆動回路94は、明るさの調整量から算出される量だけモータ80を駆動し、モータ80が1/2波長板60をその中心軸周りに所定角度だけ回転させるようになっている。円板における中心軸周りの慣性モーメントは、他の軸周りよりも小さいので、小さなトルクで1/2波長板60の回転角を制御することができる。これにより、モータ80の機構の簡略化や回転角の制御の高速化が図られる。また、1/2波長板60の回転によって、雰囲気ガス(例えば空気)等がほとんど流動しないので、風きり音等の騒音を生じることがない。
【0041】
演算装置92は、例えばCPU等であり、画像解析回路91やゲイン調整回路93、モータ駆動回路93を機能させる上で必要となる演算を行うようになっている。これらの回路は、必要に応じてデータを演算装置92に送り、演算装置92から演算結果を受け取るようになっている。
【0042】
第1実施形態のプロジェクタ1にあっては、クロスダイクロイックプリズム30によって合成された光の偏光状態を1/2波長板60の回転角に応じて変化させることが可能になっている。そして、変化後の偏光状態に応じて偏光ビームスプリッタ40によって分離することによって、調光することが可能になっている。したがって、光源11とダイクロイックミラー14a、14bとの間に調光手段が不要となり、この調光手段によってダイクロイックミラー14a、14bの分解能が正常に機能しなくなることが防止される。よって、所定の波長帯域の色光を変調し合成した後、調光し投射することができ、高品質な投射画像が得られるプロジェクタ1となっている。
【0043】
また、1/2波長板60によって偏光状態が変化された光は、偏光ビームスプリッタ40にほとんど吸収されないので、光を吸収する偏光板によって光を分離し調光する調光手段に比べ光の吸収による偏光ビームスプリッタ40の熱劣化がなくなる。したがって、偏光板を用いた調光手段を備えたものよりも、長寿命のプロジェクタ1となっている。
【0044】
なお、第1実施形態では、偏光ビームスプリッタ40を透過した光を投射しているが、偏光ビームスプリッタ40で反射した光を投射させる構成を採用してもよい。例えば、S偏光を射出する偏光変換素子、あるいはS偏光を射出する偏光調整素子等を採用し、液晶ライトバルブから1/2波長板60に入射する光をS偏光に揃えておく。これにより、偏光ビームスプリッタ40で反射した光の光量は、P偏光に揃えておいた場合に偏光ビームスプリッタ40を透過する光の光量(前記所望の光量)と同程度になる。
また、液晶ライトバルブから1/2波長板60に入射する光をP偏光に揃えておき、1/2波長板60の回転角を前記第1実施形態の場合と45度ずらすことによっても、反射側において所望の光量とすることができる。
このように反射光を所望の光量とし、これを投射するように反射側に投射レンズを配置すればよい。
また、位相差板60としては、1/2波長板の他にも1/4波長板やその他の位相差を付与するものであってもよいし、これらを複数枚数用いたものであってもよい。
【0045】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のプロジェクタについて説明する。本実施形態のプロジェクタが前記第1実施形態と異なる点は、6板式の液晶ライトバルブ型プロジェクタとなっている点である。
【0046】
図3は、第2実施形態のプロジェクタ2の概略構成を示す模式図である。プロジェクタ2は、P側エンジン(第1のグループ)とS側エンジン(第2のグループ)とを備えている。図3に示すように、P側エンジンは照明光学系110、液晶ライトバルブ120a〜120c、クロスダイクロイックプリズム130、1/2波長板160、及び1/2波長板160を回転させる回転手段(図示略)からなっている。S側エンジンは、照明光学系210、液晶ライトバルブ220a〜220c、クロスダイクロイックプリズム230、1/2波長板260、及び1/2波長板260を回転させる回転手段(図示略)からなっている。前記回転手段はいずれも、第1実施形態と同様のものである。
【0047】
また、P側エンジン、S側エンジンのそれぞれと電気的に接続された信号源が設けられている。信号源は、第1実施形態と同様のものである(図2参照)。なお、P側エンジンとS側エンジンとで共通の信号源を用いる構成や、P側エンジンとS側エンジンとで独立した信号源を用いる構成、あるいは信号源の一部のみを共通とする構成等を採用することができる。
【0048】
前記P側エンジンは、第1実施形態と同様の構成となっている。すなわち、光供給手段110は、白色光を複数の波長帯域光に分離し、赤色光L1a、緑色光L1b、青色光L1cを互いに独立して供給するようになっている。複数種の色光L1a、L1b、L1cの各々は、対応する液晶ライトバルブ120a〜120cに入射し、変調される。変調された光は、ダイクロイックプリズム130によって合成されて合成光となる。合成光は、偏光方向を揃えられてP偏光となり、その偏光状態が1/2波長板160によって変化して偏光ビームスプリッタ40に入射する。入射した光は、その偏光状態に応じて偏光ビームスプリッタ40で分離され、分離された透過光が投射レンズ50によって投射される。このようにP側エンジンから投射される光の光量を調整することが可能になっている。
【0049】
前記S側エンジンは、P側エンジンと同様の構成となっているが、クロスダイクロイックプリズム230から射出された合成光LがS偏光となって、1/2波長板260に入射する点で異なる。1/2波長板260に入射した光は、偏光状態が変化して偏光ビームスプリッタ40に入射し、変化後の偏光状態に応じて偏光ビームスプリッタ40で分離され、分離された反射光が投射レンズ50によって投射される。このようにS側エンジンから投射される光の光量を調整することが可能になっている。
【0050】
以上のような第2実施形態のプロジェクタ2においては、P側エンジンから射出される光とS側エンジンから射出される光とをともに調光することが可能になっている。また、P側エンジンから偏光ビームスプリッタ40に入射して分離された透過光と、S側エンジンから偏光ビームスプリッタに入射して分離された反射光とが、偏光ビームスプリッタ40によって合成され、合成光が投射されるようになっている。
【0051】
例えば、P側エンジンによる画像全体とS側エンジンによる画像全体とが重なり合うように投射すれば輝度の最大値が高くなり、しかも調光によって輝度の最小値が低くなるので、ダイナミックレンジが格段に広くなる。また、例えばP側エンジンによる画像とS側エンジンによる画像とが並ぶように投射すれば、画素数が多くなるので高解像度となる。以上のように、前記の構成によれば格段に高品質な投射画像が得られるプロジェクタとなる。
【0052】
なお、第2実施形態のプロジェクタ2は、第1のグループと第2のグループとで独立した照明光学系を備えているが、共通の照明光学系を採用することもできる。例えば、1つの光源からの光源光をフライアイレンズアレイで均一化した後、偏光ビームスプリッタ等でP偏光とS偏光とに分離し、P偏光を第1のグループの液晶ライトバルブに供給し、S偏光を第2のグループの液晶ライトバルブに供給するようにしてもよい。この場合には、偏光変換素子が不要となる。
【0053】
また、P側エンジン(第1のグループ)では1/2波長板160にP偏光が入射し、S側エンジン(第2のグループ)では1/2波長板260にS偏光が入射するようになっているが、いずれのグループにおいても1/2波長板に同じ偏光方向の偏光を入射させる構成としてもよい。例えば、第1のグループ、第2グループのいずれにおいても1/2波長板にP偏光を入射させ、第2グループにおける1/2波長板の回転角を第1グループと45度ずらすようにすればよい。また、S偏光を用いる場合には、第1グループにおける1/2波長板の回転角を第1グループと45度ずらすようにすればよい。このようにすれば、第1のグループと第2のグループとで構成が同じになるので、プロジェクタの製造効率を高めることができる。
【0054】
なお、上述の実施形態では、光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の白色ランプを用いた例を示したが、LEDやレーザ等の固体光源を使用しても良い。固体光源であれば、各色光を射出することが可能であるため、色分離手段は不要とすることもできる。
【0055】
また、位相差板としては、その光学軸がクロスダイクロイックプリズムの光軸に対して傾斜していればよい。例えば、円板状の位相差板であって、その中心軸に直交する面に対して傾斜した光学軸を有しているものを用いてもよいし、前記第1実施形態と同様の位相差板を、その中心軸をクロスダイクロイックプリズムの光軸に対して傾斜させて配置してもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、液晶ライトバルブとして透過型のライトバルブを用いた例を示したが、反射型のライトバルブを用いることも可能である。その場合には、反射型のライトバルブを用いるのに適した光学系に適宜変更される。
さらに、上述の実施形態では、偏光ビームスプリッタとして、偏光ビームスプリッタプリズムを用いた例を示したが、ワイヤグリッド等の偏光ビームスプリッタをもいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態のプロジェクタの概略構成を示す模式図である。
【図2】位置調整を行う仕組みを示す説明図である。
【図3】第2実施形態のプロジェクタ2の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1、2・・・プロジェクタ、10、110、210・・・照明光学系、20a〜20c、120a〜120c、220a〜220c・・・液晶ライトバルブ(光変調手段)、30、130、230・・・クロスダイクロイックプリズム(色合成手段)、40・・・偏光ビームスプリッタ(光分離手段、偏光分離手段)、50・・・投射レンズ(投射手段)、60・・・1/2波長板(位相差版)、81・・・モータ、90・・・信号源、91、画像解析回路、92・・・演算装置、93・・・ゲイン調整回路、94・・・モータ駆動回路、La、L1a、L2a・・・赤色光(色光)、Lb、L1b、L2b・・・緑色光(色光)、Lc、L1c、L2c・・・青色光(色光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長域が異なる複数種の色光を射出する照明光学系と、
各々が前記複数種の色光の各々に対応して設けられ、該色光を変調する複数の光変調手段と、
前記複数の光変調手段の各々によって変調された色光を合成する色合成手段と、
前記色合成手段から射出された光の光束を遮って配置され、前記色合成手段の光軸に対して傾斜した光学軸を有する位相差板と、
前記位相差板をその面方向と略直交する軸回りに回転させる回転手段と、
前記位相差板から射出された光をその偏光状態に応じて反射又は透過させて分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタによって分離された光のうちの一方を投射する投射手段と、を備えていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記色合成手段の光軸と前記位相差板の光学軸とがなす角度が、略90°になっていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記複数の光変調手段と前記色合成手段と前記位相差板と前記回転手段とを有するグループを複数備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記回転手段が、前記複数の光変調手段に供給される画像信号に基づいて制御されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記位相差板が、前記色合成手段と前記投射手段との間の前記色合成手段から射出される光束の断面全体を遮って設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記照明光学系が、光源と、前記光源から射出された光のうち所定の波長帯域の色光を分離し、前記複数種の色光を形成する色分離手段を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロジェクタ
【請求項7】
前記位相差板が円板状になっており、前記回転手段は前記位相差板をその中心軸回りに回転させるようになっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−237091(P2009−237091A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81068(P2008−81068)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】