説明

プロテインキナーゼCK2活性に関連する障害の治療方法

本発明は、CK2の強力で選択的な阻害剤である式(I)の化合物を用いた、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する障害の治療方法または改善方法、およびそのような化合物の薬学的組成物を提供し、式中、Z5、R6B、R6D、R8、n、R9およびpは本明細書においてさらに記載するとおりに定義される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月17日提出の米国特許仮出願第61/170,468号;2009年9月4日提出の米国特許仮出願第61/240,165号;2009年9月14日提出の米国特許仮出願第61/242,227号;および2010年1月22日提出の米国特許仮出願第61/297,669号からの優先権を主張する。これらの出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、PCT/US2007/077464、PCT/US2008/074820、PCT/US2009/035609、および米国特許仮出願第61/143,282号に関連している。これらの出願の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
技術分野
本発明は、部分的には、細胞増殖の阻害、およびセリン-トレオニンプロテインキナーゼ活性の調節を含むが、それらに限定されるわけではない、特定の生物活性を有する分子に関する。本発明の分子は特にプロテインキナーゼCK2(カゼインキナーゼII、またはCK2)活性を調節し、したがって、過剰の、望まれない、または異常なCK2活性によって特徴付けられる障害の治療のために有用である。本発明は、部分的には、疼痛、癌および炎症状態、ならびに特定の感染障害の治療などの、CK2の望まれない活性に関連する障害、およびCK2の阻害が治療上有用である状態の治療または改善のための、そのような分子の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
背景
プロテインキナーゼCK2(以前はカゼインキナーゼIIと呼ばれ、本明細書においては「CK2」と呼ぶ)は、遍在性で、高度に保存されたタンパク質セリン/トレオニンキナーゼである。ホロ酵素は典型的には2つの触媒(アルファおよび/またはアルファ')サブユニットおよび2つの調節(ベータ)サブユニットからなる4量体複合体で見いだされる。CK2はいくつかの生理的標的を有し、細胞の生存力の維持を含む細胞機能の複雑な系に関与している。正常な細胞におけるCK2のレベルは厳密に調節されており、細胞成長および増殖において役割を果たすと長らく考えられてきた。特定の型の癌を治療するために有用なCK2の阻害剤は、PCT/US2007/077464(特許文献1)、PCT/US2008/074820(特許文献2)、およびPCT/US2009/035609(特許文献3)に記載されている。
【0005】
CK2が広く行きわたっていること、および重要であることはいずれも、その配列の進化分析と同様、これが進化段階における古来の酵素であることを示唆しており;その長命は、なぜCK2がそれほど多くの生化学的プロセスにおいて重要となったのか、なぜ宿主由来のCK2が感染性病原体(例えば、ウイルス、原生動物)によってそれらの生存および生活環生化学系の不可欠な部分として取り込まれてきたかを説明しているのかもしれない。これらの同じ特徴は、なぜCK2の阻害剤が本明細書において論じる様々な医学的治療において有用であると考えられるのかを説明している。Guerra & Issinger, Curr. Med. Chem., 2008, 15:1870-1886(非特許文献1)によって概要が記載されているとおり、CK2は多くの生物学的プロセスにおいて中心的であるため、本明細書に記載の化合物を含む、CK2の阻害剤は、様々な疾患および障害の治療において有用であるはずである。
【0006】
癌細胞はCK2の上昇を示し、最近の証拠から、CK2が調節タンパク質をカスパーゼによる分解から保護することにより、細胞においてアポトーシスの強力な抑制を発揮することが示唆される。CK2の抗アポトーシス機能は、形質転換および腫瘍形成に関与するその能力に貢献している可能性がある。特に、CK2は急性および慢性骨髄性白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫に関連していることが明らかにされている。加えて、CK2活性の増強が結腸、直腸および乳房の固形腫瘍、肺および頭頸部(SCCHN)の扁平上皮癌、肺、結腸、直腸、腎臓、乳房、および前立腺の腺癌において観察されている。低分子によるCK2の阻害は膵臓癌細胞、および肝細胞癌細胞(HegG2、Hep3、HeLa癌細胞株)のアポトーシスを誘導することが報告されており;CK2阻害剤はRMS(横紋筋肉腫)腫瘍をTRAILにより誘導されるアポトーシスに向けて劇的に増感させる。したがって、CK2の阻害剤は単独で、またはTRAILもしくはTRAIL受容体のリガンドとの組み合わせで、小児に最もよく見られる軟部組織肉腫であるRMSを治療するのに有用であろう。加えて、CK2の上昇は新生物の攻撃性に高度に相関することが明らかにされており、したがって本発明のCK2阻害剤による治療は良性病変が悪性のものに進行する傾向、または悪性病変が転移する傾向を低下させるはずである。
【0007】
突然変異が調節制御の欠損を引き起こす構造変化に関連することが多い、他のキナーゼおよびシグナル伝達経路とは異なり、CK2活性レベルの上昇は、活性レベルに影響をおよぼす変化によってではなく、活性タンパク質のアップレギュレーションまたは過剰発現によって一般に引き起こされるようである。GuerraおよびIssingerは、活性レベルはmRNAレベルとあまり相関していないため、これは凝集による調節によるとの仮説を立てている。CK2の過剰な活性は、SCCHN腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍などを含む多くの癌において示されている。同上。
【0008】
結腸直腸癌におけるCK2活性の上昇は、悪性度の増大に相関することが示された。CK2の異常な発現および活性は、乳癌細胞におけるNF-カッパBの核レベルの上昇を促進すると報告されている。CK2活性は急性転化中のAMLおよびCML患者において顕著に高まり、CK2の阻害剤がこれらの状態において特に有効であることを示している。多発性骨髄腫細胞の生存はCK2の高い活性に頼っていることが明らかにされており、CK2の阻害剤はMM細胞に対して細胞毒性であった。同様に、CK2阻害剤はマウスp190リンパ腫細胞の成長を阻害した。そのBcr/Ablとの相互作用はBcr/Abl発現細胞の増殖において重要な役割を果たすことが報告されており、CK2の阻害剤がBcr/Abl陽性白血病の治療において有用でありうることを示している。CK2の阻害剤はマウスにおける皮膚乳頭腫の進行、前立腺癌および乳癌異種移植片を阻害し、前立腺プロモーターを発現するトランスジェニックマウスの生存を延長することが明らかにされている。同上。
【0009】
様々な非癌性疾患プロセスにおけるCK2の役割が最近研究されている。Guerra & Issinger, Curr. Med. Chem., 2008, 15:1870-1886参照。増えつつある証拠から、CK2は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびグアム-パーキンソン認知症、染色体18欠失症候群、進行性核上麻痺、クッフス病、またはピック病などのまれな神経変性障害を含む、中枢神経系の重大な疾患に関与していることが示されている。タウタンパク質の選択的CK2仲介性リン酸化はアルツハイマーの進行性神経変性に関与していることが示唆されている。加えて、最近の試験から、CK2は記憶障害および脳虚血において役割を果たしていることが示唆され、後者の影響は明らかにPI3K生存経路に対するCK2の調節効果によって仲介されている。
【0010】
CK2は、炎症性障害、例えば、急性または慢性の炎症性疼痛、糸球体腎炎、および、例えば、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼蒼、関節リウマチ、および若年性関節炎を含む自己免疫疾患の調節に関与していることも明らかにされている。これはセロトニン5-HT3受容体チャネルの機能をプラスに調節し、2型ヘムオキシゲナーゼを活性化し、神経型一酸化窒素シンターゼの活性を増強する。選択的CK2阻害剤は、疼痛試験前に脊髄組織に投与した場合、マウスの疼痛反応を強力に低減すると報告された。これはRA患者の関節液からの分泌型IIAホスホリパーゼA2をリン酸化し、若年性関節炎患者の関節液中に見いだされる炎症誘発性分子であるDEK(核DNA結合タンパク質)の分泌を調節する。したがって、CK2の阻害は、本明細書において記載するものなどの炎症性の病状の進行を制御すると予想され、本明細書において開示する阻害剤は動物モデルの疼痛を有効に治療することが明らかにされている。
【0011】
プロテインキナーゼCK2は、例えば、アテローム性動脈硬化症、層せん断応力(laminar shear stress)、および低酸素症などの血管系の障害において役割を果たすことも明らかにされている。CK2は、心筋細胞肥大、インスリンシグナル伝達障害および骨組織ミネラル化などの、骨格筋および骨組織の障害において役割を果たすことも明らかにされている。1つの試験で、CK2の阻害剤は、培養細胞において成長因子によって誘導される血管形成を減速させる際に有効であった。さらに、網膜症モデルにおいて、オクトレオチド(ソマトスタチン類縁体)と組み合わせてのCK2阻害剤は、新生血管房状分岐を低減し;したがって本明細書において記載するCK2阻害剤は、ソマトスタチン類縁体との組み合わせで、網膜症を治療するために有効であろう。
【0012】
CK2は、GSK、トロポニンおよびミオシン軽鎖をリン酸化することが明らかにされており;したがって、これは骨格筋および骨組織の生理において重要で、筋肉組織に影響をおよぼす疾患に関連している。
【0013】
証拠から、CK2は、例えば、テイレリア-パルバ(Theileria parva)、トリパノソーマ-クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバン-リーシュマニア(Leishmania donovani)、ヘルペトモナス-ムスカルム-ムスカルム(Herpetomonas muscarum muscarum)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、トリパノソーマ-ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、トキソプラズマ-ゴンヂ(Toxoplasma gondii)およびマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)などの原生動物寄生虫の発生および生活環調節にも関与していることが示唆される。多くの試験により、宿主細胞の侵入に不可欠の、原生動物寄生虫の細胞運動の調節におけるCK2の役割が確認されている。CK2の活性化またはCK2の過剰な活性は、ドノバン-リーシュマニア、ヘルペトモナス-ムスカルム-ムスカルム、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ-ブルーセイ、トキソプラズマ-ゴンヂおよびマンソン住血吸虫に感染した宿主において起こることが明らかにされている。事実、CK2の阻害はT.クルージによる感染を阻止することが明らかにされている。
【0014】
CK2は、1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、および単純ヘルペスウイルス、ならびに他のウイルス型(例えば、エプスタイン-バー、ヒトサイトメガロウイルス、C型およびB型肝炎ウイルス、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、および水痘帯状疱疹ウイルス)に関連するウイルスタンパク質と相互作用し、かつ/またはこれらをリン酸化することも明らかにされている。CK2は、インビトロおよびインビボでHIV-1逆転写酵素およびプロテアーゼをリン酸化および活性化し、HIVのモデルであるサル-ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)の病原性を促進する。CK2はHIV-2 Nefもリン酸化し、Vpuタンパク質をリン酸化し、循環中のCD4+ T細胞の急速な消失を引き起こす。したがって、CK2の阻害剤はHIV感染のモデルの病原性作用を低減することができる。CK2は単純ヘルペスウイルスおよび多くの他のウイルスにおける多くのタンパク質もリン酸化し、いくつかの証拠から、ウイルスがCK2をそれらの本質的な生活環タンパク質のリン酸化酵素として採用したことが示唆される。例えば、CK2は、HPVに感染した細胞においてアップレギュレートされるウイルス腫瘍性タンパク質であるE7を、E7機能が最適な時点で、すなわち、これがG1期からS期への細胞周期進行を刺激する時点で、リン酸化すると報告されている。HPVは、子宮頸癌を含むいくつかの疾患の原因である。ウイルス腫瘍性タンパク質E6およびE7は、HPV感染細胞における形質転換した表現型の誘導を主に担っていると考えられる。したがって、CK2は、E7のリン酸化を遮断することにより、HPV感染の病原性作用を低減するために有効でありうる。
【0015】
CK2は、概日時計の温度補償の重要な調節物質として機能することも明らかにされている。発現を制御することにより、CK2のレベルが、CK2低次形態遺伝子では損なわれていることが判明した時計タンパク質FREQUENCY(FRQ)のリン酸化を通じて、補償の形を決定することが示された。対照的に、時計機能に関係があるとされている他のキナーゼおよびホスファターゼは、温度補償においてはたいした役割は果たしていない。Mehra et al., Cell, 2009, 137(4):749-60(非特許文献2)参照。
【0016】
CK2は、それが影響をおよぼす多様な生物学的プロセスにおいて特殊で、他の点においてもほとんどのキナーゼと異なる:CK2は恒常的に活性であり、ATPまたはGTPを利用することができ、ほとんどの腫瘍および急速に増殖中の組織において高くなっている。CK2は、ほとんどのキナーゼと区別しうる特殊な構造的特徴も有しており、その阻害剤はCK2に対して非常に特異的になりうるが、しかしながら多くのキナーゼ阻害剤は複数のキナーゼに影響をおよぼして、非特異的作用の可能性、または個々の対象間の変異性を高めている。これらの理由すべてにより、CK2は薬物開発における特に興味深い標的であり、本発明は過剰、異常、または望まれないレベルのCK2活性によって仲介される、またはこれに関連する、様々な異なる疾患および障害を治療する際に有用である、非常に有効なCK2の阻害剤を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】PCT/US2007/077464
【特許文献2】PCT/US2008/074820
【特許文献3】PCT/US2009/035609
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Guerra & Issinger, Curr. Med. Chem., 2008, 15:1870-1886
【非特許文献2】Mehra et al., Cell, 2009, 137(4):749-60
【発明の概要】
【0019】
発明の開示
本発明は、部分的には、細胞増殖の阻害、血管形成の阻害、およびプロテインキナーゼ活性の調節を含むが、それらに限定されるわけではない、特定の生物活性を有する化合物を提供する。これらの分子はカゼインキナーゼ2(CK2)活性を調節し、したがって、例えば、ATPからタンパク質またはペプチド基質へのガンマリン酸転移の阻害、血管形成の阻害、細胞増殖の阻害および細胞アポトーシスの誘導を含むが、それらに限定されるわけではない、生物機能に影響をおよぼす。本発明は、部分的には、新規化合物、およびその類縁体の調製方法、ならびにこれらの化合物の使用方法も提供する。同様に、前述の分子と薬学的に許容される賦形剤または希釈剤とを含む薬学的組成物、ならびにそのような化合物および組成物を使用する方法も提供される。本発明は、前述の分子を、他の治療薬を含む他の材料との組み合わせで含む組成物も提供する。
【0020】
一つの局面において、本発明は、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する、固形腫瘍以外の障害、またはCK2の阻害が治療上有益である状態を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0021】
もう一つの局面において、本発明は、固形腫瘍以外の、過剰の、または望まれないCK2活性に関連する障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、前述の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供し、

ここで、前記障害は神経変性障害、炎症性障害、疼痛、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択される。
【0022】
さらなる局面において、本発明は、被験者のそのような障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている該被験者に、前述の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性を阻害するのに有効な量で投与する段階を含む方法を提供する:


【0023】
さらなる局面において、本発明は、固形腫瘍、特に進行した固形腫瘍を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、本明細書においてさらに記載する、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する:


【0024】
さらにもう一つの局面において、本発明は、それを必要としている被験者の概日リズム障害を治療、改善または予防する方法であって、該被験者に、本明細書においてさらに記載する、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する:


【0025】
さらにもう一つの局面において、本発明は、温度補償および/または概日リズムを調節する方法であって、そのような調節を必要としている被験者に、本明細書においてさらに記載する、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する:


【0026】
いくつかの態様において、式Iの化合物は式II、III、IV、VもしくはVI、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの構造を有する:


式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6AおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6AおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;かつ
pは0から4である。
【0027】
特許請求する方法において特に有用な化合物には、式VIaの化合物およびその薬学的に許容される塩が含まれる:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【0028】
式VIaの化合物の好ましい態様において、R6BはHまたは-NH-シクロプロピルであり;かつR9はCl、CF3、またはC≡CHである。Z5は好ましくはCHであり、その場合R6Bは好ましくはHである。Z5がNである場合、R6BはHまたは-NHR'でありうる。式VIaの化合物には、以下に記載する化合物K、化合物(1)および化合物(2)が含まれる。式VIaの化合物の遊離カルボン酸のエステル、特にメチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、および2-メトキシエチルエステルも含まれる。
【0029】
特定の好ましい態様において、式Iの化合物は以下の式を有する化合物(化合物K)、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルである:


【0030】
他の好ましい態様において、式Iの化合物は以下の式を有する化合物(化合物1または化合物2)、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルである:


【0031】
本発明は、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、以下の式を有する化合物(化合物K)、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する:


【0032】
いくつかのそのような態様において、治療または改善される障害は固形腫瘍以外の障害である。他の態様において、障害は固形腫瘍、特に進行した固形腫瘍である。
【0033】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と混合して含む薬学的組成物の有効量を投与する段階を含む。いくつかのそのような態様において、薬学的組成物は式II、III、IV、VまたはVIの化合物を含む。他のそのような態様において、薬学的組成物は、化合物K、化合物(1)または化合物(2)などの、式VIaの化合物を含む。
【0034】
いくつかの態様において、化合物K、化合物(1)または化合物(2)などの化合物または化合物を含む薬学的組成物を、化合物の有効量を含む固体剤形または液体組成物のいずれかで経口投与する。または、化合物または薬学的組成物を注射により投与してもよい。有効量は通常の方法によって決定することができるが、典型的には1から200mg/kgの間である。経口剤形は、約25mgもしくは50mgもしくは100mgの化合物を含む固定用量で、または化合物の重量調節用量で投与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】qRT-PCR(8時間)(A)およびELISA(24時間)(B)を用いて、化合物Kが前立腺癌細胞においてIL-8産生の抑制を引き起こすことを示す図である。
【図2】疼痛軽減を提供する化合物を特定し、その化合物が抗炎症活性を有するかどうかを識別するために設計したホルマリン誘導性疼痛反応試験における、化合物Kの効果を示す図である。これは、化合物Kが疼痛反応を低減するのに有効であることを示し、化合物Kが抗炎症活性を有することを示している。各グラフの第一の縦の棒は化合物なしの対照であり;第二の棒は30mg/kgの化合物Kであり;第三の縦の棒は100mg/kgの化合物Kであり;最後の濃い棒は200mg/kgの化合物Kである。*および**の印は統計学的に有意なしりごみ(flinching)の減少を示す。化合物Kによる処置後の最初の9分間の第I相では減少は統計学的に有意ではなかった(A)が、第II相では3つの試験群のうち2つで統計学的に有意な効果が見られた(B)。
【図3】疼痛軽減を提供する化合物を特定し、その化合物が抗炎症活性を有するかどうかを識別するために設計したホルマリン誘導性疼痛反応試験における、化合物(1)の効果を示す図である。これは、化合物(1)が疼痛反応を低減するのに有効であることを示し、化合物(1)が抗炎症活性を有することを示している。各グラフの第一の縦の棒は化合物なしの対照であり;第二の棒は30mg/kgの化合物(1)であり;第三の縦の棒は100mg/kgの化合物(1)であり;最後の濃い棒は200mg/kgの化合物(1)である。*および**の印は統計学的に有意なしりごみの減少を示す。化合物(1)による処置後の最初の9分間の第I相では減少は統計学的に有意ではなかった(A)が、第II相では3つの試験群のうち2つで統計学的に有意な効果が見られた(B)。
【図4A】実施例5のコホート1〜3の、第1日目における血漿中の化合物Kの血漿濃度平均特性を示す図である。
【図4B】実施例5のコホート1〜3の、第21日目における血漿中の化合物Kの血漿濃度平均特性を示す図である。
【図5A】化合物2で処理した新鮮ヒトPBMC中の8つのCCR5指向性HIV-1臨床分離株におけるHIV-1 93TH073 Clade E複製の阻害を示す図である。
【図5B】AZTで処理した新鮮ヒトPBMC中の8つのCCR5指向性HIV-1臨床分離株におけるHIV-1 93TH073 Clade E複製の阻害を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、CK2を阻害し、様々な有益な治療効果を発揮する化合物に関し、様々な障害の治療のために非常に強力なCK2阻害剤を使用する方法を提供する。
【0037】
本発明は、以下の本発明の好ましい態様の詳細な説明および本明細書に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。本明細書において具体的に定義していないかぎり、本明細書において用いられる用語は関連する技術分野において公知の従来の意味が与えられることが理解されるべきである。
【0038】
式I、II、III、IV、V、およびVIの化合物はCK2の阻害剤であり;化合物K、化合物(1)および化合物(2)は本発明の目的のためのCK2阻害剤の好ましい例である。これらの化合物は、細胞増殖の阻害およびプロテインキナーゼ活性の調節を含むが、それらに限定されるわけではない、生物活性を発揮する。これらの式の化合物はプロテインキナーゼCK2活性を調節することができ、理論に縛られることなく、それらのCK2阻害は、異常、過剰、または望まれないレベルのCK2活性に関連する、本明細書に記載の様々な障害を治療する能力を提供すると考えられる。したがって、そのような化合物は、当業者であれば多数の適用において用いることができる。例えば、本明細書に記載の化合物は、(i)プロテインキナーゼ活性(例えば、CK2活性)の調節、(ii)細胞増殖の調節、(iii)アポトーシスの調節、(iv)白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および固形腫瘍などの細胞増殖関連障害の治療、ならびに(v)神経変性障害、炎症性障害、血管系の障害、骨格筋または骨組織の障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、および疼痛の治療を含むが、それらに限定されるわけではない、用途が見いだされうる。
【0039】
本明細書において用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、特に記載がないかぎり、複数の言及を含む。
【0040】
本明細書において用いられる「被験者」なる用語は、ヒトまたは動物被験者を意味する。好ましい態様において、被験者はヒトである。
【0041】
特定の疾患または障害に関して「治療する」、「治療すること」または「治療」なる用語は、疾患もしくは障害の予防、ならびに/または疾患もしくは障害の症状および/もしくは病状を減少、改善、軽減、もしくは除去することを意味する。
【0042】
「治療上有効な量」または「有効量」なる用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって探究されている、細胞、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発する薬物または医用薬剤の量を意味することが意図される。
【0043】
本明細書に記載の候補分子または化合物は薬学的製剤または薬剤中で治療上有効な量であってよく、これは例えば、疾患または状態の症状を改善、軽減、減少、または除去することにつながる、所望の生物効果を導きうる量である。これらの用語は、細胞増殖速度を低下もしくは停止する(例えば、腫瘍成長を減速または停止する)、または増殖中の癌細胞の数を減少させる(例えば、腫瘍の一部または全部を除去する)ことも意味しうる。これらの用語は、微生物に感染した系(すなわち、細胞、組織、または被験者)における微生物の力価を低下させる、微生物伝播の速度を低下させる、微生物感染に関連する症状の数もしくは症状の影響を低減する、および/または微生物の検出可能な量を系から除去することにも適用可能である。微生物の例にはウイルス、原生動物、細菌および真菌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0044】
本明細書において用いられる「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」なる用語は、直鎖、分枝鎖および環式一価ヒドロカルビルラジカル、ならびにその組み合わせを含み、これらは無置換の場合にはCおよびHのみを含む。例には、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニルなどが含まれる。そのような基それぞれの炭素原子の総数は時には本明細書に記載され、例えば、基が最大10個までの炭素原子を含みうる場合、それは1-10CまたはC1-C10またはC1-10と表すことができる。例えば、ヘテロアルキル基のようにヘテロ原子(典型的にはN、OおよびS)が炭素原子と置き換え可能である場合、基を記載する数は、例えば、C1-C6と書かれていても、基の炭素原子の数プラス記載している環または鎖の骨格における炭素原子に置き換わるものとして含まれるそのようなヘテロ原子の数の合計を表す。
【0045】
典型的に、本発明のアルキル、アルケニルおよびアルキニル置換基は1-10C(アルキル)または2-10C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。好ましくは、これらは1-8C(アルキル)または2-8C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。時には、これらは1-4C(アルキル)または2-4C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。1つの基は複数の型の多重結合、または複数の多重結合を含むことができ;そのような基は、それらが少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む場合、「アルケニル」なる用語の定義の範囲内に含まれ、それらが少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む場合、「アルキニル」なる用語の定義の範囲内に含まれる。
【0046】
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基はしばしば、そのような置換が化学的に意味がある程度に置換されていてもよい。典型的な置換基には、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR、=NR、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、C≡CR、COOR、CONR2、OOCR、COR、およびNO2が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、ここでRはそれぞれ独立に、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C6-C10アリール、またはC5-C10ヘテロアリールであり、かつRはそれぞれハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、C≡CR'、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2で置換されていてもよく、ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリールまたはC5-C10ヘテロアリールである。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基はC1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリールまたはC5-C10ヘテロアリールで置換されていてもよく、これらはそれぞれ特定の基に適した置換基で置換されていてもよい。
【0047】
「アセチレン」置換基は、置換されていてもよく、かつ式-C≡C-Raの、2-10Cアルキニル基であり、ここでRaはHまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつRa基はそれぞれハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;かつここで2つのR'は連結されて、N、OおよびSから選択される最大3個までのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができる。いくつかの態様において、-C≡C-RaのRaはHまたはMeである。
【0048】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」などは、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニルおよびアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」なる用語は骨格残基内に1〜3個のO、SもしくはNヘテロ原子またはその組み合わせを含む基を意味し;したがって対応するアルキル、アルケニル、またはアルキニル基の少なくとも1つの炭素原子が規定のヘテロ原子の1つで置き換えられてヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル基を形成する。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基のヘテロ型の典型的かつ好ましいサイズは一般に、対応するヒドロカルビル基と同じであり、ヘテロ型に存在しうる置換基はヒドロカルビル基について前述したものと同じである。化学的安定性の理由から、特に記載がないかぎり、そのような基は、ニトロまたはスルホニル基のようにNまたはS上にオキソ基が存在する場合を除いて、3個以上の隣接ヘテロ原子を含まないことも理解される。
【0049】
本明細書において用いられる「アルキル」はシクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル基を含むが、「シクロアルキル」なる用語は本明細書において、環炭素原子により連結されている非芳香族炭素環基を記載するために用いてもよく、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを通じて分子に連結されている非芳香族炭素環基を記載するために用いてもよい。同様に、「ヘテロシクリル」は、環構成員として少なくとも1つのヘテロ原子を含み、かつ環原子により分子に連結されていて、環原子はCまたはNであってもよい、非芳香族環式基を記載するために用いてもよく;「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを通じて別の分子に連結されている、そのような基を記載するために用いてもよい。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキル基に適したサイズおよび置換基は、アルキル基について前述したものと同じである。本明細書において用いられるこれらの用語は、環が芳香族でないかぎり、1または2つの二重結合を含む環も含む。
【0050】
本明細書において用いられる「アシル」は、カルボニル炭素原子の2つの利用可能な原子価の位置の1つに結合したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルラジカルを含む基を含み、ヘテロアシルは、カルボニル炭素以外の少なくとも1つの炭素がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子で置き換えられている、対応する基を意味する。したがって、ヘテロアシルには、例えば、-C(=O)ORおよび-C(=O)NR2ならびに-C(=O)-ヘテロアリールが含まれる。
【0051】
アシルおよびヘテロアシル基は任意の基または分子に結合し、それらに対してカルボニル炭素原子の空の原子価を通じて結合している。典型的には、これらはホルミル、アセチル、ピバロイル、およびベンゾイルを含むC1-C8アシル基、ならびにメトキシアセチル、エトキシカルボニル、および4-ピリジノイルを含むC2-C8ヘテロアシル基である。アシルまたはヘテロアシル基を含むヒドロカルビル基、アリール基、およびそのような基のヘテロ型は、アシルまたはヘテロアシル基の対応する成分それぞれに一般に適した置換基として本明細書に記載の置換基で置換することができる。
【0052】
「芳香族」部分または「アリール」部分とは、芳香族性の周知の特徴を有する単環式または縮合二環式部分を意味し;例にはフェニルおよびナフチルが含まれる。同様に、「ヘテロ芳香族」および「ヘテロアリール」とは、環構成員としてO、SおよびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む、そのような単環式または縮合二環式環系を意味する。ヘテロ原子を含む場合、5員環ならびに6員環で芳香族性が得られる。典型的ヘテロ芳香族系には、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、およびイミダゾリルなどの単環式C5-C6芳香族基、ならびにこれらの単環式基の1つをフェニル環または任意のヘテロ芳香族単環式基と縮合させて、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピラジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルなどのC8-C10二環式基を形成することにより得られる縮合二環式部分が含まれる。環系における電子分布に関して芳香族性の特徴を有する任意の単環式または縮合環二環式系がこの定義に含まれる。この定義は、少なくとも分子の残りに直接結合している環が芳香族性の特徴を有する、二環式の基も含む。典型的には、環系は5〜12個の環構成員原子を含む。好ましくは、単環式ヘテロアリールは5〜6個の環構成員を含み、二環式ヘテロアリールは8〜10個の環構成員を含む。
【0053】
アリールおよびヘテロアリール部分は、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C5-C12アリール、C1-C8アシル、およびこれらのヘテロ型を含む様々な置換基で置換されていてもよく、これらはそれぞれそれ自体さらに置換されることができ;アリールおよびヘテロアリール部分の他の置換基には、ハロ、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、C≡CR、COOR、CONR2、OOCR、COR、およびNO2が含まれ、ここでRはそれぞれ独立に、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、またはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、かつRはそれぞれアルキル基について前述したとおりに置換されていてもよい。アリールまたはヘテロアリール基上の置換基は当然のことながら、そのような置換基のそれぞれの型または置換基のそれぞれの成分に適していると本明細書において記載される基でさらに置換されていてもよい。したがって、例えば、アリールアルキル置換基はアリール部分においてアリール基に典型的と本明細書において記載される置換基で置換されていてもよく、またアルキル基においてアルキル基に典型的または適していると本明細書において記載される置換基でさらに置換されていてもよい。
【0054】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」とは、置換または無置換、飽和または不飽和、環式または非環式リンカーを含む、アルキレンなどの連結基を通じてそれらの結合点に結合している芳香環およびヘテロ芳香環系を意味する。典型的には、リンカーはC1-C8アルキルまたはそのヘテロ型である。これらのリンカーはカルボニル基を含んでいてもよく、したがってそれらがアシルまたはヘテロアシル部分として置換基を提供できるようにする。アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基におけるアリールまたはヘテロアリール環は、アリール基について前述したものと同じ置換基で置換されていてもよい。好ましくは、アリールアルキル基は、アリール基について上で定義した基で置換されていてもよいフェニル環および無置換または1もしくは2つのC1-C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基で置換されているC1-C4アルキレンを含み、ここでアルキルまたはヘテロアリール基は任意に環化してシクロプロパン、ジオキソラン、またはオキサシクロペンタンなどの環を形成することができる。同様に、ヘテロアリールアルキル基は、好ましくは、アリール基において典型的な置換基として前述した基で置換されていてもよいC5-C6単環式ヘテロアリール基、および無置換または1もしくは2つのC1-C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基で置換されているC1-C4アルキレンを含むか、あるいは置換されていてもよいフェニル環またはC5-C6単環式ヘテロアリール、および無置換または1もしくは2つのC1-C4アルキルもしくはヘテロアルキル基で置換されているC1-C4ヘテロアルキレンを含み、ここでアルキルまたはヘテロアルキル基は任意に環化してシクロプロパン、ジオキソラン、またはオキサシクロペンタンなどの環を形成することができる。
【0055】
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基が置換されていてもよいと記載される場合、置換基は基のアルキルもしくはヘテロアルキル部分またはアリールもしくはヘテロアリール部分のいずれにあってもよい。アルキルまたはヘテロアルキル部分に任意に存在する置換基は一般にアルキル基について前述したものと同じであり;アリールまたはヘテロアリール部分に任意に存在する置換基は一般にアリール基について前述したものと同じである。
【0056】
本明細書において用いられる「アリールアルキル」基は、無置換である場合はヒドロカルビル基であり、環およびアルキレンまたは同様のリンカーにおける炭素原子の総数で記載する。したがって、ベンジル基はC7-アリールアルキル基であり、フェニルエチルはC8-アリールアルキルである。
【0057】
本明細書において用いられる「ヘテロアリールアルキル」とは、連結基を通じて結合されているアリール基を含む部分を意味し、アリール部分の少なくとも1つの環原子または連結基の1つの原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である点で「アリールアルキル」とは異なる。ヘテロアリールアルキル基は本明細書において、組み合わされた環およびリンカーにおける原子の総数に従って記載し、これらにはヘテロアルキルリンカーを通じて連結されているアリール基;アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを通じて連結されているヘテロアリール基;およびヘテロアルキル基を通じて連結されているヘテロアリール基が含まれる。したがって、例えば、C7-ヘテロアリールアルキルにはピリジルメチル、フェノキシ、およびN-ピロリルメトキシが含まれる。
【0058】
本明細書において用いられる「アルキレン」とは、二価のヒドロカルビル基を意味し;これは二価であるため、2つの他の基を一緒に連結することができる。典型的には、これは-(CH2)n-を意味し、ここでnは1〜8であり、好ましくはnは1〜4であるが、記載されている場合には、アルキレンは他の基で置換されていてもよく、かつ他の長さであってもよく、空の原子価は鎖の反対の末端である必要はない。したがって、-CH(Me)-および-C(Me)2-もアルキレンと呼んでもよく、同様にシクロプロパン-1,1-ジイルなどの環式基もアルキレンと呼ぶことができる。アルキレン基が置換されている場合、置換基には本明細書に記載のアルキル基に典型的に存在するものが含まれる。
【0059】
一般に、置換基に含まれる任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、またはアリールもしくはアリールアルキル基あるいはこれらの基の1つの任意のヘテロ型はそれ自体追加の置換基で置換されていてもよい。これらの置換基の性質は、置換基が特に記載されていない場合、最初の置換基それ自体に関して列挙されたものと同様である。したがって、例えば、R7の態様がアルキルである場合、このアルキルはR7の態様として挙げられた残りの置換基で置換されていてもよく、ここでこれは化学的意味をなし、かつこれはアルキル自体について提供されるサイズの限界を崩すことはなく;例えば、アルキルまたはアルケニルによって置換されているアルキルはこれらの態様の炭素原子の上限を単純に拡大することになり、含まれない。しかし、アリール、アミノ、アルコキシ、=Oなどで置換されているアルキルは、本発明の範囲内に含まれることになり、これらの置換基の原子は記載しているアルキル、アルケニルなどの基を記載するのに用いる数に算入されない。置換基の数が示されていない場合、そのようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、またはアリール基はそれぞれ、その利用可能な原子価に従い、いくつかの置換基によって置換されていてもよく;特に、例えば、任意のこれらの基はその利用可能な原子価のいずれか、またはすべてでフッ素原子によって置換されていてもよい。
【0060】
本明細書において用いられる「ヘテロ型」とは、アルキル、アリール、またはアシルなどの基の誘導体を意味し、ここで指定の炭素環基の少なくとも1つの炭素原子はN、OおよびSから選択されるヘテロ原子で置き換えられている。したがって、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、およびアリールアルキルのヘテロ型はそれぞれヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアシル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルである。オキソ基がNまたはSに結合してニトロまたはスルホニル基を形成する場合を除いて、2つより多くのN、OまたはS原子が通常、逐次連結されることはないことが理解される。
【0061】
本明細書において用いられる「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。フルオロおよびクロロがしばしば好ましい。
【0062】
本明細書において用いられる「アミノ」とは、NH2を意味するが、アミノが「置換されている」または「置換されていてもよい」と記載される場合、この用語はNR'R''を含み、ここでR'およびR''はそれぞれ独立に、Hであるか、あるいはアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、もしくはアリールアルキル基またはこれらの基の1つのヘテロ型であり、かつアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、もしくはアリールアルキル基またはこれらの基の1つのヘテロ型はそれぞれ対応する基に適していると本明細書において記載される置換基で置換されていてもよい。この用語は、R'およびR''が一緒に連結されて、飽和、不飽和もしくは芳香族であってもよく、環構成員としてN、OおよびSから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、かつアルキル基に適していると記載される置換基で置換されていてもよい3〜8員環を形成するか、またはNR'R''が芳香族基である場合、これはヘテロアリール基に典型的と記載される置換基で置換されていてもよい型も含む。
【0063】
本明細書において用いられる「炭素環」なる用語は、環内に炭素原子だけを含む環式化合物を意味し、その一方で「複素環」はヘテロ原子を含む環式化合物を意味する。炭素環および複素環構造は、単環式、二環式または多環式環系を有する化合物を含む。
【0064】
本明細書において用いられる「ヘテロ原子」なる用語は、窒素、酸素または硫黄などの、炭素または水素ではない任意の原子を意味する。
【0065】
複素環の実例には、テトラヒドロフラン、1,3ジオキソラン、2,3ジヒドロフラン、ピラン、テトラヒドロピラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1,3-ジヒドロイソベンゾフラン、イソキサゾール、4,5ジヒドロイソキサゾール、ピペリジン、ピロリジン、ピロリジン-2-オン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、オクタヒドロピロロ[3,4b]ピリジン、ピペラジン、ピラジン、モルホリン、チオモルホリン、イミダゾール、イミダゾリジン-2,4-ジオン、1,3-ジヒドロベンズイミダゾル-2-オン、インドール、チアゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾール、チオフェン、テトラヒドロチオフェン1,1-ジオキシド、ジアゼピン、トリアゾール、グアニジン、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3,4,4a,9,9aヘキサヒドロ1Hβカルボリン、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ラクトン、アジリジン、アゼチジン、ピペリジン、ラクタムが含まれるが、それらに限定されるわけではなく、ヘテロアリールも含みうる。ヘテロアリールの他の実例には、フラン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、イミダゾール、ベンズイミダゾールおよびトリアゾールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0066】
本明細書において用いられる「無機置換基」なる用語は、炭素を含まない、または水素以外の元素に結合した炭素(例えば、元素炭素、一酸化炭素、二酸化炭素、およびカーボネート)を含む置換基を意味する。無機置換基の例には、ニトロ、ハロゲン、アジド、シアノ、スルホニル、スルフィニル、スルホネート、ホスフェートなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0067】
本明細書において用いられる「極性置換基」なる用語は、電気双極子、および任意に双極子モーメントを有する任意の置換基を意味する(例えば、不斉極性置換基は双極子モーメントを有し、対称極性置換基は双極子モーメントを持たない)。極性置換基には、水素結合を受容または供与する置換基、および生理的pHレベルの水溶液中で少なくとも部分的な正または負電荷を有する基が含まれる。特定の態様において、極性置換基はもう1つの化学部分との非共有水素結合において電子を受容または供与しうるものである。特定の態様において、極性置換基はカルボキシ、カルボキシの生物学的等価体または約7から8のpHで主にアニオンとして存在する他の酸由来部分から選択される。他の極性置換基には、OHまたはNH、エーテル酸素、アミン窒素、酸化硫黄または窒素、カルボニル、ニトリル、および芳香族または非芳香族のいずれかにかかわらず窒素含有または酸素含有複素環を含む基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、R8で表される極性置換基はカルボキシレートまたはカルボキシレートの生物学的等価体である。
【0068】
本明細書において用いられる「カルボキシレートの生物学的等価体」または「カルボキシの生物学的等価体」とは、生理学的pHで実質的な程度まで負に荷電していると予想される部分を意味する。特定の態様において、カルボキシレートの生物学的等価体は下記からなる群より選択される部分、ならびにその塩およびプロドラッグであり、

式中、R7はそれぞれ独立に、HまたはC1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10ヘテロアルキル、C3-8炭素環、および追加の置換されていてもよい炭素環もしくは複素環に任意に縮合しているC3-8複素環からなる群より選択される置換されていてもよいメンバーであるか;またはR7は置換されていてもよいC3-8炭素環もしくはC3-8複素環で置換されているC1-10アルキル、C2-10アルケニル、もしくはC2-10ヘテロアルキルである。
【0069】
特定の態様において、極性置換基はカルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、テトラゾール、トリアゾール、カルボキシメタンスルホンアミド、オキサジアゾール、オキソチアジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、アミノチアゾールおよびヒドロキシチアゾールからなる群より選択される。
【0070】
いくつかの態様において、存在する少なくとも1つのR8はカルボン酸またはその塩、もしくはエステルもしくは生物学的等価体である。特定の態様において、存在する少なくとも1つのR8はカルボン酸含有置換基またはその塩、エステルもしくは生物学的等価体である。後者の態様において、R8置換基は、カルボン酸(またはその塩、エステルもしくは生物学的等価体)に連結されているC1-C10アルキルまたはC1-C10アルケニルであってもよい。
【0071】
一つの局面において、本発明は、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、もしくはVIの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する:


【0072】
特に、式VIaの化合物は、本発明の方法において興味が持たれる:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【0073】
式VIaの化合物の好ましい態様において、R6BはHまたは-NH-シクロプロピルであり;かつR9はCl、CF3、またはC≡CHである。Z5は好ましくはCHであり、その場合R6Bは好ましくはHである。Z5がNである場合、R6BはHまたは-NHR'でありうる。式VIaの化合物には、以下に記載する化合物K、化合物(1)および化合物(2)が含まれる。式VIaの化合物の遊離カルボン酸のエステル、特にメチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、および2-メトキシエチルエステルも含まれる。
【0074】
いくつかのそのような態様において、障害は神経変性障害、炎症性障害、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、進行した固形腫瘍を含む固形腫瘍、またはキャッスルマン病である。
【0075】
もう一つの局面において、本発明は、被験者の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている該被験者に、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、もしくはVIの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供し、ここで障害は神経変性障害、炎症性障害、疼痛、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、進行した固形腫瘍を含む固形腫瘍、またはキャッスルマン病からなる群より選択される。
【0076】
もう一つの局面において、本発明は、被験者の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている該被験者に、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、もしくはVIの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性を阻害するのに有効な量で投与する段階を含む方法を提供する。
【0077】
いくつかのそのような態様において、障害は神経変性障害、炎症性障害、疼痛、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、進行した固形腫瘍を含む固形腫瘍、またはキャッスルマン病である。
【0078】
特定の態様において、本明細書に記載の方法によって治療または改善される障害は神経変性障害である。いくつかのそのような態様において、神経変性障害はアルツハイマー病、パーキンソン病、記憶障害、脳虚血、グアム-パーキンソン認知症、染色体18欠失症候群、進行性核上麻痺、クッフス病、またはピック病である。
【0079】
他の態様において、本明細書に記載の方法によって治療または改善される障害は炎症性障害である。時には、炎症性障害は糸球体腎炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼蒼、関節リウマチ、または若年性関節炎である。いくつかの態様において、マウスモデルはCK2が侵害受容シグナル伝達を調節し、脊髄に注入するとマウスの疼痛反応を低減することを示しているため、化合物を用いて炎症性疼痛を軽減する。
【0080】
本発明の化合物は、ホルマリン誘導性疼痛モデルにおいて、炎症に関連する疼痛の治療のために有効であることが示された。特に、試験した化合物は、Hunskaar, et al.("The formalin test in mice: Dissociation between inflammatory and non-inflammatory pain," Pain 30. 103-14 (1987).)によって記載されたホルマリン誘導法による試験の第二相において活性であった。Hunskaarは、二相試験を記載し、マウスの足へのホルマリン注射に対する反応を観察している。ホルマリン注射後の最初の数分間における疼痛反応の低減は、抗炎症活性を欠く中枢作用性の鎮痛薬、例えば、モルヒネに特徴的な、一般的な抗侵害受容反応を示す。抗炎症薬として作用するナプロキセンおよびステロイドなどの化合物は、この試験では後の相にのみ影響をおよぼす。本発明の化合物はこの試験では抗炎症薬として挙動し、したがって本明細書に開示する化合物は、急性または慢性の炎症性疼痛、および1時間以上の期間にわたって持続する疼痛(持続性疼痛)を含む疼痛を治療するために有用である。これらはこの試験の両方の相ではなく第二相において作用するため、抗炎症活性を有することが示され、炎症ならびに炎症に関連する疼痛を治療するために有用である。
【0081】
CK2は、アテローム性動脈硬化症の病因において役割を果たすことも明らかにされており、層せん断応力の流れを維持することによりアテローム発生を予防しうる。CK2は血管新生において役割を果たし、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の低酸素による活性化を仲介することが明らかにされている。CK2は、例えば、心筋細胞肥大、心不全、インスリンシグナル伝達障害およびインスリン抵抗性、低リン酸血症および不十分な骨基質ミネラル化を含む骨格筋および骨組織に関連する疾患にも関与している。
【0082】
したがって、一つの局面において、本発明は、これらの状態それぞれの治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に、本明細書に記載の式I〜VIまたはVIaの化合物などの、CK2阻害剤の有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0083】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法によって治療または改善される障害は、血管系の障害である。いくつかのそのような態様において、血管系の障害はアテローム性動脈硬化症、層せん断応力または低酸素症である。
【0084】
本発明は、部分的には、被験者の免疫応答を調節する方法、および被験者の異常な免疫応答に関連する状態の治療方法にも関する。したがって、本明細書における化合物が免疫応答を調節するかどうかを判定する方法であって、系と免疫応答または免疫応答に関連するシグナルを調節(例えば、阻害)するために有効な量の本明細書に記載の化合物とを接触させる段階を含む方法が提供される。免疫調節活性に関連するシグナルには、例えば、T細胞増殖の刺激、例えば、インターロイキン、インターフェロン-γおよびTNFを含むサイトカインの抑制または誘導が含まれる。免疫調節活性を評価する方法は当技術分野において公知である。
【0085】
被験者の異常な免疫応答に関連する状態の治療方法であって、本明細書に記載の化合物をそれを必要としている被験者に、前記状態を治療するのに有効な量で投与する段階を含む方法も提供される。異常な免疫応答によって特徴付けられる状態には、臓器移植拒絶、喘息;関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性紅斑性狼蒼、強皮症、多発性筋炎、混合結合組織疾患(MCTD)、クローン病、および潰瘍性結腸炎を含む自己免疫障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、免疫応答を、本明細書における化合物を、mTOR経路メンバーまたは関連経路(例えば、mTOR、PI3キナーゼ、AKT)のメンバーの生物活性を調節(例えば、阻害)する分子との組み合わせで投与することによって調節してもよい。特定の態様において、mTOR経路メンバーまたは関連経路のメンバーの生物活性を調節する分子はラパマイシンである。特定の態様において、本明細書に記載の化合物を、例えば、ラパマイシンなどの、mTOR経路メンバーまたは関連経路のメンバーの生物活性を調節する分子との組み合わせで含む組成物が、本明細書において提供される。
【0086】
他の態様において、本明細書に記載の方法によって治療または改善される障害は、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害である。これらの状態には、アテローム性動脈硬化症、層せん断応力、および低酸素症ならびに関連する状態が含まれる。いくつかのそのような態様において、本発明の方法によって治療する障害は心筋細胞肥大、インスリンシグナル伝達障害または骨組織ミネラル化である。
【0087】
さらに他の態様において、本明細書に記載の方法によって治療または改善される障害は、原生動物寄生虫症である。原生動物による感染は、感染宿主におけるIL-8レベルのほとんど即時の増大を引き起こすことが明らかにされている。現在、式VIaの化合物による治療はIL-8の分泌を抑制することが明らかにされている。図1参照。前述のそのような病原体の生活環におけるCK2阻害剤の関与に加えて、IL-8発現の抑制は寄生性病原体に関連する局所傷害を改善する際に役立ちうる。したがって、本発明の化合物は、特にテイレリア-パルバ;トキソプラズマ-ゴンヂ、トリパノソーマ-クルージ(シャーガス病)、ドノバン-リーシュマニア、ヘルペトモナス-ムスカルム-ムスカルム、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ-ブルーセイ、およびマンソン住血吸虫による寄生虫症の治療のために有用である。
【0088】
さらなる態様において、治療または改善される障害はウイルス性疾患である。いくつかのそのような態様において、ウイルス性疾患は1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、ヒトパピローマウイルス、エプスタイン-バーウイルスまたは単純ヘルペスウイルスである。他の態様において、ウイルス障害はヒトパピローマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、C型もしくはB型肝炎、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、または水痘帯状疱疹ウイルスである。
【0089】
さらに他の態様において、記載の方法によって治療または改善される障害は白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、ALL、およびBcr/Abl陽性白血病)、リンパ腫、または多発性骨髄腫である。他の態様において、障害は固形腫瘍である。いくつかの態様において、固形腫瘍は進行した固形腫瘍である。時には、固形腫瘍は扁平上皮癌、または結腸、直腸、腎臓、乳房もしくは前立腺の腺癌である。他の態様において、化合物を用いて膵臓癌、肝細胞癌、神経芽細胞腫、または横紋筋肉腫腫瘍(RMS)を治療する。RMSの治療のために、化合物をTRAIL受容体リガンドとの組み合わせで用いることができる。他の態様において、障害はカステルマン病である。
【0090】
本発明は、それを必要としている被験者の概日リズム障害を治療、改善または予防する方法であって、該被験者に、本明細書に記載の式I〜VIまたはVIaの化合物などの、CK2阻害剤の治療上有効な量を投与する段階を含む方法も提供する。いくつかの態様において、概日リズム障害は、時差ぼけ、交替勤務性睡眠障害、ならびに、例えば、睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相前進症候群、および非24時間睡眠覚醒障害を含む睡眠障害から選択される。他の態様において、概日リズム障害は冬期うつ病または季節性情動障害である。
【0091】
本発明はさらに、温度補償および/または概日リズムを調節する方法であって、そのような調節を必要としている被験者に、本明細書に記載の式I〜VIまたはVIaの化合物などの、CK2阻害剤の治療上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書において特定する化合物は、概日時計をリセットするのに有用である。化合物を用いて、時差ぼけを治療もしくは予防する、または交替勤務労働者の時計をリセットするのを促進する、あるいは、例えば、睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相前進症候群、および非24時間睡眠覚醒障害を含む睡眠障害を治療、改善または予防することができる。加えて、化合物を用いて、リズム性、すなわち、視交差上核(SCN)内の細胞からの出力の協調調節を改善することができる。リズム性の崩壊は高齢者でよく見られ、睡眠能力に影響をおよぼす。本明細書に記載の化合物を用いて、ニューロンを一般相(common phase)に到達させる、または個々のニューロンを一般相に直接リセットするためのニューロン間の相互作用を改善することができる。化合物を用いて、冬期うつ病または季節性情動障害などの概日リズム障害を軽減することもできる。
【0093】
本明細書に記載の方法の特定の好ましい態様において、式(I)の化合物は化合物K、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルである:


【0094】
化合物KはCK2の非常に強力かつ選択的な阻害剤である。CK2に対するそのIC50は約2nMである。約145の一連のキナーゼに対するその活性について試験し、見られた最も高い活性(最も低いIC50)はCK2に対してであった。化合物Kが最大の活性を示した他のキナーゼを、以下の表(表1)に示す。他のキナーゼに対し、IC50はCK2よりも高く、したがって化合物KはCK2に対して選択的である。
【0095】
【表1】

【0096】
他の好ましい態様において、式Iの化合物は化合物1または化合物2の式を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルである:


【0097】
化合物1はCK2の阻害について6nMのIC50を示した。化合物2はCK2の阻害について約9nMのIC50を示した。
【0098】
本明細書に記載の方法の好ましい態様において、被験者はヒトである。典型的には、被験者は本明細書に記載の状態の1つまたは複数に対して治療が必要であると診断された者であり;本発明の方法は治療に適した被験者を特定する段階を任意に含む。この方法はさらに、被験者、または治療する障害に冒されている組織などの、被験者からの適当な組織におけるCK2のレベルを定量する段階を任意に含む。いくつかの態様において、本明細書において開示する治療方法の進行または有効性を、被験者、または障害に冒されている組織におけるCK2またはCK2活性のレベルが本発明の化合物での治療によって低減されるかどうかを判定することによりモニターすることができる。
【0099】
製剤および投与
本発明の組成物および方法は典型的にはヒト患者の治療において用いることになるが、これらは類似または同等の疾患を治療するために獣医学において用いてもよい。例えば、本組成物を用いて、霊長類および家畜化された哺乳動物を含むが、それらに限定されるわけではない、哺乳動物を治療してもよい。例えば、本組成物を用いて、草食動物を治療してもよい。本発明の組成物は薬物の1つまたは複数の幾何および光学異性体を含み、ここで各薬物は異性体のラセミ混合物または1つもしくは複数の精製された異性体である。
【0100】
本発明において用いるのに適した薬学的組成物には、活性成分が所期の目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物が含まれる。有効量の決定は、特に本明細書において提供する詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0101】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として存在してもよい。本発明はそのような塩を含む。「薬学的に許容される塩」なる用語は、本明細書に記載の化合物上に見いだされる特定の置換基部分に応じて、比較的非毒性の酸または塩基と調製される活性化合物の塩を含むことが意図される。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、そのような化合物の中性型を、ニートまたは適当な不活性溶媒中のいずれかの所望の塩基の十分な量と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩、または類似の塩などの塩基付加塩が含まれる。いくつかの態様において、化合物K、(1)または(2)などの化合物をナトリウム塩として投与し、固体剤形または液体剤形のいずれで投与してもよい。
【0102】
本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、そのような化合物の中性型を、ニートまたは適当な不活性溶媒中のいずれかの所望の酸の十分な量と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸から誘導されるもの、ならびに比較的非毒性の有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などから誘導される塩が含まれる。アルギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)。本発明の特定の具体的化合物は、化合物を塩基または酸付加塩のいずれかに変換可能とする塩基性および酸性官能基の両方を含む。
【0103】
適用可能な塩形態の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩またはラセミ混合物を含むその混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩およびグルタミン酸などのアミノ酸の塩が含まれる。これらの塩は当業者には公知の方法によって調製しうる。
【0104】
化合物の中性型は、塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を通常の様式で単離することにより、都合よく再生される。化合物の親形態は、極性溶媒中での溶解度などの、特定の物理的特性において様々な塩形態とは異なる。
【0105】
本発明における薬学的に許容されるエステルとは、非毒性のエステル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはペンチルエステルなどのアルキルエステルを意味し、そのうちエチルまたはメチルエステルが好ましい。しかし、所望であれば、フェニル-C1-5アルキルなどの他のエステルも利用できる。特定の化合物のエステル誘導体は、温血動物の血流中に吸収されると、薬物形態を放出するような様式に切断され、改善された治療的有効性を薬物に提供しうる、プロドラッグとして作用しうる。
【0106】
本発明の特定の化合物は固体として単離され、非溶媒和形態ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の特定の化合物は、多結晶形態またはアモルファス形態で存在してもよい。一般に、すべての物理的形態は、本発明により企図される使用について等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0107】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学またはキラル中心)または二重結合を有し;絶対立体化学に関して、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体、(R)-もしくは(S)-、またはアミノ酸については(D)-もしくは(L)-と定義しうる立体異性体、および個々の異性体は本発明の範囲内に含まれる。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびに鏡像異性体混合物およびジアステレオマー混合物は本発明の範囲内である。本発明の化合物は、当技術分野において合成および/または単離するには不安定すぎることが公知のものは含まない。本発明は、ラセミ体および光学的に純粋な型の化合物を含むことが意図される。光学活性な(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体を、キラルシントンもしくはキラル試薬を用いて調製してもよく、または通常の技術を用いて分割してもよい。本明細書に記載の化合物がオレフィン結合または他の幾何学的不斉中心を含む場合、特に記載がないかぎり、化合物はEおよびZ幾何異性体の両方を含むことが意図される。
【0108】
本明細書において用いられる「互変異性体」なる用語は、平衡状態で存在し、一方の異性体から別の異性体に容易に変換される、複数の構造異性体の1つを意味する。当業者には、本発明の特定の化合物が互変異性体で存在してもよく、化合物のそのような互変異性体はすべて本発明の範囲内であることが明らかであろう。
【0109】
特に記載がないかぎり、本明細書において示す構造は、1つまたは複数の同位体を多く含む原子が存在するという点でのみ異なる化合物を含むことも意図される。例えば、水素が重水素もしくはトリチウムで置き換えられている、または炭素が13C-もしくは14C-を多く含む炭素で置き換えられている以外は、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。本発明の化合物は、そのような化合物を構成する原子の1つまたは複数で、非天然の比率の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、化合物を、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識してもよい。本発明の化合物のすべての同位体変種は、放射性であるかないかに関わらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を起こして本発明の化合物を提供する化合物である。加えて、プロドラッグは、エクスビボ環境において、化学的または生化学的方法により本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、経皮パッチレザバー中に適当な酵素または化学試薬とともに置いた場合、本発明の化合物にゆっくりと変換されうる。
【0111】
本発明の化合物の記載は、当業者には公知の化学結合の原理によって限定される。したがって、基がいくつかの置換基の1つまたは複数で置換されうる場合、そのような置換は化学結合の原理に従い、本質的に不安定であることはなく、かつ/または水性、中性、およびいくつかの公知の生理的条件などの、周囲条件下で不安定である可能性が当業者に公知である化合物を与えるように選択される。例えば、当業者には公知の化学結合の原理に従って、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを分子の残りに環ヘテロ原子を介して結合し、それにより本質的に不安定な化合物を回避する。
【0112】
治療薬として用いる場合、本明細書に記載の化合物は生理的に許容される担体と共に投与されることが多い。生理的に許容される担体は、化合物を加えてそれを溶解することができるか、または他の様式でその投与を促進する製剤である。生理的に許容される担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝液、または生理的緩衝食塩水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0113】
本発明の化合物を薬学的組成物として製剤化することができる。次いで、そのような薬学的組成物を、望まれる場合には通常の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤、および媒体を含む用量単位製剤で、経口、非経口、吸入噴霧により、直腸、または局所投与することができる。局所投与は、経皮パッチまたはイオン浸透装置などの経皮投与の使用も含む。本明細書において用いられる非経口なる用語には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技術が含まれる。薬物の製剤は、例えば、Hoover, John E., REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Mack Publishing Co., Easton, Pa.;1975において議論されている。薬物製剤の他の例は、Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980において見いだすことができる。
【0114】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁剤を、適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用い、公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、滅菌注射用液剤または懸濁剤でもありうる。用いることができる許容される媒体および溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油が溶媒または懸濁媒として通常用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製において用いられる。ジメチルアセトアミド、イオン性および非イオン性洗剤を含む界面活性剤、ポリエチレングリコールを用いることができる。前述のものなどの溶媒および湿潤剤の混合物も有用である。
【0115】
薬物と、通常の温度では固体であるが、直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する、カカオ脂、合成モノ、ジまたはトリグリセリド、脂肪酸およびポリエチレングリコールなどの適当な非刺激性賦形剤とを混合することにより、薬物の直腸投与用の坐剤を調製することができる。
【0116】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれうる。そのような固体剤形において、本発明の化合物を通常は指定の投与経路に適した1つまたは複数の補助剤と組み合わせる。経口投与する場合、本発明の化合物をラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ならびに/またはポリビニルアルコールと混合し、次いで都合よく投与するために錠剤化またはカプセル化することができる。そのようなカプセル剤または錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散剤で提供しうるような、制御放出製剤を含むことができる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はクエン酸ナトリウム、炭酸または炭酸水素マグネシウムまたはカルシウムなどの緩衝化剤を含むこともできる。錠剤および丸剤はさらに腸溶コーティングをして調製することもできる。
【0117】
治療目的のために、非経口投与用の製剤は水性または非水性の等張滅菌注射用液剤または懸濁剤の剤形でありうる。これらの液剤および懸濁剤を、経口投与用の製剤において用いるために言及した担体または希釈剤の1つまたは複数を有する滅菌散剤または顆粒剤から調製することができる。本発明の化合物を水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または様々な緩衝液に溶解することができる。他の補助剤および投与様式は薬学の技術分野において詳細かつ広範に公知である。
【0118】
いくつかの態様において、化合物またはそのナトリウム塩を、不活性担体と混合した固体錠剤または丸剤の剤形で投与し;他の態様において、化合物またはそのナトリウム塩を、リン酸緩衝化食塩水などの液体媒質に溶解または懸濁し、溶解性を少量のPEG-300などのポリエチレングリコールを加えることによって促進する。これらの製剤を経口投与することができ、または液体製剤を調製し、注射によって送達することもできる。いくつかの態様において、化合物K、または化合物(1)、もしくは化合物(2)などの本発明の化合物を、PEG含有緩衝化溶液中で製剤化する。
【0119】
いくつかの態様において、化合物K、化合物(1)または化合物(2)などの化合物または化合物を含む薬学的組成物を、当該化合物の有効量を含む固体剤形または液体組成物のいずれかで経口投与する。または、これを注射により投与してもよい。有効量は通常の方法で決定することができるが、典型的には1から200mg/kgの間である。経口剤形を、約25mgもしくは50mgもしくは100mgの化合物を含む固定用量で、または化合物の重量調節用量で投与してもよい。
【0120】
経口投与用の液体剤形には、水などの当技術分野において一般に用いられる不活性希釈剤を含む、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれうる。そのような組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、ならびに甘味料、矯味矯臭剤、および香料などの補助剤を含むこともできる。
【0121】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療する哺乳動物宿主および特定の投与様式に応じて変動する。有効量は通常の方法で決定することができるが、典型的には1から200mg/kgの間である。経口剤形を、約25mgもしくは50mgもしくは100mgの化合物を含む固定用量で、または30mg/kgもしくは60mg/kg、もしくは100〜200mg/kgなどの、化合物の重量調節用量で投与してもよい。用量を任意の適当な頻度で投与してもよいが、いくつかの態様において、化合物の血漿半減期ゆえに、方法は1日に1回または1日に2回のいずれかの投与を含む。投与は治療医の判断で任意の適当な期間続けてもよいが、いくつかの態様において、本発明の化合物を1日に1回または2回、約1週間または約2週間投与することになる。
【0122】
本発明の化合物を単独または抗癌剤との組み合わせで用いる投与法は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療する状態の重症度;投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに用いる特定の化合物またはその塩もしくはエステルを含む、様々な因子に従って選択する。これらの因子の考察は、本発明の治療方法または併用療法を必要としている人に投与する、治療上有効な量を決定する目的のために、通常の技術を有する臨床医の範囲内である。
【0123】
本発明の化合物および方法のために、様々な投与経路を用いることができるが、いくつかの態様において、この方法は経口投与のために化合物Kまたはその塩を用いて本明細書に記載の状態の1つまたは複数を治療する。化合物Kはマウス、ラットおよびイヌでの試験において、充填ゼラチンカプセル剤の剤形で経口投与した場合に、良好な経口バイオアベイラビリティ(約20〜50%)を示す。これは、この一連の試験被験者全体で約5から12時間の間の半減期、およびインビボでの比較的低い排出速度を示し、したがって、その全般的経口バイオアベイラビリティは良好である。薬物動態特性および半減期情報に基づき、いくつかの態様において、有効な血漿レベルを提供するために、化合物Kを1日に2回経口投与する。特に慢性状態のためには、経口投与が好ましい。経口投与のための典型的用量は、1日に約5〜500mg/kgである。
【0124】
実施例3によって示されるとおり、本発明の化合物を経口で用いて疼痛を低減することができる。疼痛の治療のために、化合物を経口または注射法により投与することができる。持続性疼痛の治療のために、化合物を1日に1回もしくは2回、または1日に3回以上、経口投与してもよく;いくつかの態様において、本発明の化合物を1日に1回または2回、約1〜500mg/kg、好ましくは10〜300mg/kgの体重で規準化した1日用量で投与する。各用量は、いくつかの態様においては1日に1回10〜300mg/kgで、またはいくつかの態様においては1日に2回約10〜200mg/kgの用量で投与することができる。1日2回の用量を投与する場合、これらは少なくとも4時間あけて、好ましくは少なくとも約8時間あけて投与することが多い。
【0125】
いくつかの態様において、疼痛の治療方法は、被験者の体重に対して規準化するよりも、特定の錠剤またはカプセル剤のサイズなどの固定用量を用いる。そのような態様において、各用量は10から500mgの間であってよく、20から30mgの間であることが多い。
【0126】
疼痛の治療のための経口投与は、固体製剤、または液体製剤を用いることができる。液体製剤は液剤または懸濁剤でありうる。固体および液体製剤はいずれも、1つもしくは複数の担体および/または薬学的に許容される賦形剤を用いて、本明細書に記載のとおりに製剤化することができる。
【0127】
いくつかの態様のために、筋肉内または静脈内などの注射による化合物Kの送達が好ましいこともある。注射した場合、化合物Kの半減期は約5〜12時間で、これは経口送達と実質的に同じである。注射は経口バイオアベイラビリティを低下させる吸収障壁を迂回するため、注射送達(IV)のための用量は経口用量の約半分でありうる。注射による送達のために、1日に1〜25mg/kgなどのより低い用量を用いて同様の薬物血漿レベルを達成しうる。
【0128】
治療的組み合わせ
本発明の化合物を単独または別の治療薬との組み合わせで用いてもよい。本発明は、癌、炎症および免疫障害などの状態の治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に該障害を治療するのに有用な治療薬の治療上有効な量を投与し、かつ同じ被験者に本発明の調節剤の治療上有効な量を投与することによる方法を提供する。CK2調節剤は、CK2タンパク質の生物活性を阻害または増強する物質であり、以後「調節剤」と一般に呼ぶ。
【0129】
式Iの化合物は例示的「調節剤」である。治療薬および調節剤は、別々の薬学的組成物として、または1つの薬学的組成物中に混合してのいずれかで、一緒に投与してもよい。治療薬および調節剤は、異なる回数および異なる頻度を含め、別々に投与してもよい。調節剤は経口、静脈内、筋肉内、鼻内などの任意の公知の経路によって投与してもよく;かつ治療薬も任意の通常の経路によって投与してもよい。多くの態様において、調節剤および治療薬の少なくとも1つおよび任意に両方を経口投与してもよい。好ましくは、調節剤はCK2阻害剤であり、本明細書に記載の治療効果を提供する。
【0130】
特定の態様において、前述の「調節剤」は、特定の四重鎖構造を形成しうるDNAの領域に結合することにより作用しうる治療薬と組み合わせて用いてもよい。そのような態様において、治療薬はそれら自体で抗癌活性を有するが、それらの活性は調節剤との組み合わせで用いる場合に増強される。この相乗効果により、治療薬をより低い用量で投与する一方で、少なくとも1つの所望の効果の同等またはより高いレベルを得ることが可能となる。
【0131】
投与するこれらの材料それぞれの量は、投与経路、被験者の状態、被験者に投与されている他の治療、および他のパラメーターによって変動することになる。本発明の治療薬は、当然のことながら、複数の所望の効果を引き起こすことがあり;治療薬との組み合わせで用いる調節剤の量は、これらの所望の効果の1つまたは複数を高める量であるべきである。調節剤は治療薬の所望の効果を増強するのに有効な量で投与するべきである。量は、本明細書において用いられるとおり、治療薬単独の所望の効果の少なくとも1つを少なくとも約25%高める場合、「治療薬の所望の効果を増強するのに有効」である。好ましくは、これは治療薬の所望の効果を少なくとも50%または少なくとも100%高める(すなわち、治療薬の有効な活性を倍加する)量である。いくつかの態様において、これは治療薬の所望の効果を少なくとも200%高める量である。
【0132】
治療薬の所望の効果を高める調節剤の量を、細胞増殖検定などのインビトロでの方法を用いて決定してもよい。本発明の治療薬は、癌などの過剰増殖障害に対抗するのに有用であり、したがってこれらは細胞増殖を低減する。したがって、例えば、調節剤の適当な量は治療薬の抗増殖効果を細胞増殖検定で調べて少なくとも25%増強するのに必要な量でありうる。
【0133】
本発明において用いる調節剤は、それと共に用いる治療薬によって生じる少なくとも1つの所望の効果を増強しえ、したがって本発明の組み合わせは、単なる相加効果ではなく、相乗効果を提供する。調節剤自体、時には、同じ型の状態を治療するのに有用であり、したがってそのような検定においていくらかの直接効果を有することもある。その事象において、「所望の効果を高めるのに有効な量」は、2つの材料を別々に投与した場合に予想される単純な相加効果というよりも、治療薬の効果の調節剤による増強に起因する治療薬の活性の相乗的増強でなければならない。多くの場合に、調節剤は、治療する被験者またはインビトロ検定においていかなる明白な効果も有するとは予想されない量(濃度)で用いることができ、したがって組み合わせから得られる効果の増大は相乗効果に直接起因している。
【0134】
動物またはヒト被験者への投与のために、本明細書に記載の式I、II、III、IV、VまたはVIの化合物などの調節剤の適当な用量は、典型的には約0.01〜15mg/kg、および約0.1〜10mg/kgの間である。用量レベルは状態の性質、薬物の有効性、患者の状態、医師の判断、ならびに投与の頻度および様式に依存するが、そのようなパラメーターの最適化は当業者の通常のレベルの範囲内である。
【0135】
調節剤は癌を治療するために単独で活性でありうる。前述の併用療法のために、治療薬との組み合わせで用いる場合、調節剤の用量はしばしば、同じ状態または被験者を治療するために調節剤を単独で用いる場合に必要とされる用量の2分の1から10分の1となる。治療薬との組み合わせで用いるための調節剤の適当な量の決定は、当技術分野において公知の方法によって容易にもとめられる。
【0136】
本発明の化合物および組成物を、癌の治療中の患者に典型的に投与される抗癌剤または緩和剤などの他の薬剤との組み合わせで用いてもよい。そのような「抗癌剤」には、例えば、従来の化学療法剤、ならびに分子標的指向治療薬、生物学的療法剤、および放射線療法剤が含まれる。
【0137】
本発明の化合物または組成物を抗癌剤または別の治療薬との組み合わせで用いる場合、本発明は、例えば、同時、時間をずらした、または交互治療を提供する。したがって、本発明の化合物を、同じ薬学的組成物中で、抗癌剤または追加の治療薬と同時に投与してもよく;本発明の化合物を、別の薬学的組成物中で、他の薬剤と同時に投与してもよく;例えば、数秒、数分、数時間、数日、または数週間の時間差で、本発明の化合物を他の薬剤の前に投与してもよく、または他の薬剤を本発明の化合物の前に投与してもよい。
【0138】
時間をずらした治療の例において、本発明の化合物による治療クールを投与し、続いて別の治療薬による治療クールを投与してもよく、または逆の順の治療を用いてもよく、かつ各成分を含む複数の一連の治療を用いてもよい。本発明の特定の例において、1つの成分、例えば、本発明の化合物または他の治療薬を、他の成分、またはその派生的生成物が哺乳動物の血流中に残っている間に、哺乳動物に投与する。例えば、式(I)〜(VI)の化合物を、他の薬剤もしくはその派生的生成物が血流中に残っている間に投与してもよく、または他の治療薬を、式(I)〜(VI)の化合物もしくはその派生物が血流中に残っている間に投与してもよい。他の例において、第二の成分を第一の成分、またはその派生物のすべて、または大部分が哺乳動物の血流から排出された後に投与する。
【0139】
本発明の化合物および追加の治療薬を同じ剤形で投与してもよく、例えば、両方を静脈内液剤として投与し、またはこれらを異なる剤形で投与してもよく、例えば、1つの化合物を局所投与し、他の化合物を経口投与してもよい。当業者であれば、関与する薬物および癌の特定の特徴に基づき、どの薬剤の組み合わせが有用であるかを識別することができるであろう。
【0140】
本発明の化合物と組み合わせての治療方法にとって有用な追加の治療薬には、以下の型の薬剤および阻害剤が含まれる。
【0141】
本発明の化合物との組み合わせで有用な抗癌剤には、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの微小管阻害剤;白金配位錯体;ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、およびトリアゼンなどのアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生物質;エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤;プリンおよびピリミジン類縁体ならびに葉酸代謝拮抗化合物などの代謝拮抗物質;カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;ホルモンおよびホルモン類縁体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体チロシンキナーゼ血管形成阻害剤;免疫療法剤;アポトーシス促進剤;および細胞周期シグナル伝達阻害剤などを含むが、それらに限定されるわけではない、当業者には公知のクラスのいずれかから選択される薬剤が含まれうる。
【0142】
微小管阻害剤または有糸分裂阻害剤は、典型的には細胞周期のM期すなわち分裂期における腫瘍細胞の微小管に対して活性な、発生期特異的薬剤である。微小管阻害剤の例には、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0143】
天然原料由来のジテルペノイドは、細胞周期のG2/M期に作用すると考えられる、発生期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のp-チューブリンサブユニットに結合することにより、このタンパク質を安定化すると考えられる。次いで、タンパク質の分解が阻害され、有糸分裂が停止した後、細胞死が起こると考えられる。
【0144】
ジテルペノイドの例には、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルなどのタキサンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。パクリタキセルは、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)から単離された天然ジテルペノイド製品で、注射用液剤TAXOL(登録商標)として市販されている。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針状葉から抽出した天然の前駆体、10-デアセチル-バッカチンIIIを用いて調製した、適量のパクリタキセルの半合成誘導体である。ドセタキセルは、TAXOTERE(登録商標)として注射用液剤で市販されている。
【0145】
ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ由来の発生期特異的抗新生物薬である。チューブリンに特異的に結合することにより細胞周期のM期(有糸分裂)に作用すると考えられるビンカアルカロイド。したがって、結合したチューブリン分子は微小管へと重合することができない。有糸分裂は中期に停止し、続いて細胞死が起こると考えられる。ビンカアルカロイドの例には、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ビンブラスチン、すなわちビンカロイコブラスチン硫酸塩は、VELBAN(登録商標)として注射用液剤で市販されている。ビンクリスチン、すなわち22-オキソビンカロイコブラスチン硫酸塩は、ONCOVIN(登録商標)として注射用液剤で市販されている。ビノレルビンはビノレルビン酒石酸塩(NABELBINE(登録商標))の注射用液剤として市販されており、半合成ビンカアルカロイド誘導体である。
【0146】
白金配位錯体は非発生期特異的抗癌剤であり、DNAと相互作用性である。白金錯体は腫瘍細胞に侵入し、アクア化を起こし、DNAと鎖内および鎖間架橋を形成して、腫瘍に対する有害な生物作用を引き起こす。白金を基にする配位錯体には、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、および(SP-4-3)-(シス)-アミンジクロロ-[2-メチルピリジン]白金(II)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。シスプラチン、すなわちシス-ジアミンジクロロ白金は、PLANTINOL(登録商標)として注射用液剤で市販されている。カルボプラチン、すなわちジアミン[1,1-シクロブタン-ジカルボキシレート(2-)-0,0']白金は、PARAPLATIN(登録商標)として注射用液剤で市販されている。
【0147】
アルキル化剤は一般には非発生期特異的薬剤であり、典型的には強力な求電子剤である。典型的に、アルキル化剤は、アルキル化により、DNA分子のリン酸、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシル、およびイミダゾール基などの求核部分を通じてDNAへの共有結合を形成する。そのようなアルキル化は核酸機能を崩壊させ、細胞死を引き起こす。アルキル化剤の例には、ブスルファンなどのアルキルスルホネート;アルトレタミンおよびチオテパなどのエチレンイミンおよびメチルメラミン誘導体;クロランブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メルファラン、およびウラムスチンなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、ロムスチン、およびストレプトゾシンなどのニトロソ尿素;ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾラミド、およびテモゾロミドなどのトリアゼンおよびイミダゾテトラジンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。シクロホスファミド、すなわち2-[ビス(2-クロロエチル)-アミノ]テトラヒドロ-2H-1,3,2-オキサザホスホリン2-オキシド一水和物は、CYTOXAN(登録商標)として注射用液剤または錠剤で市販されている。メルファラン、すなわち4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-L-フェニルアラニンは、ALKERAN(登録商標)として注射用液剤または錠剤で市販されている。クロランブシル、すなわち4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-ベンゼンブタン酸は、LEUKERAN(登録商標)錠として市販されている。ブスルファン、すなわち1,4-ブタンジオールジメタンスルホネートは、MYLERAN(登録商標)錠として市販されている。カルムスチン、すなわち1,3-[ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ尿素は、BiCNU(登録商標)として凍結乾燥材料の単一バイアルで市販されている。5-(3,3-ジメチル-1-トリアゼノ)-イミダゾール-4-カルボキサミドは、DTIC-Dome(登録商標)として材料の単一バイアルで市販されている。
【0148】
抗腫瘍抗生物質は、非発生期特異的薬剤であり、DNAと結合またはその間に介在すると考えられる。これは安定なDNA複合体を生じるか、または鎖の切断を引き起こす可能性があり、これは通常の核酸の機能を崩壊させて、細胞死を引き起こす。抗腫瘍抗生物質の例には、ダウノルビシン(リポソーム性ダウノルビシンを含む)、ドキソルビシン(リポソーム性ドキソルビシンを含む)、エピルビシン、イダルビシン、およびバルルビシンなどのアントラサイクリン;ブレオマイシン、アクチノマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ポルフィロマイシンなどのストレプトマイセス関連薬剤;ならびにミトキサントロンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アクチノマイシンDとしても公知のダクチノマイシンは、COSMEGEN(登録商標)として注射用剤形で市販されている。ダウノルビシン、すなわち(8S-シス-)-8-アセチル-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-a-L-リキソヘキソピラノノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン塩酸塩は、DAUNOXOME(登録商標)としてリポソーム性注射用剤形で、またはCERUBIDINE(登録商標)として注射剤で市販されている。ドキソルビシン、すなわち(8S,10S)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソヘキソピラノノシル)オキシ]-8-グリコロイル,7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン塩酸塩は、RUBEX(登録商標)またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として注射用剤形で市販されている。ブレオマイシン、すなわちストレプトマイセス・ベルチシルス(streptomyces veriticil/us)の菌株から単離された細胞毒性糖ペプチド抗生物質の混合物は、BLENOXANE(登録商標)として市販されている。
【0149】
トポイソメラーゼII阻害剤には、マンドレーク由来の発生期特異的抗新生物薬であるエピポドフィロトキシンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。エピポドフィロトキシンは典型的には、トポイソメラーゼIIおよびDNAと三元複合体を形成することによって細胞周期のS期およびG2期にある細胞に影響をおよぼし、DNA鎖の切断を引き起こす。鎖の切断が蓄積し、それに続いて細胞死が起こる。エピポドフィロトキシンの例には、エトポシド、テニポシド、およびアムサクリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。エトポシド、すなわち4'-デメチル-エピポドフィロトキシン9[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド]は、VePESID(登録商標)として注射用液剤またはカプセル剤で市販されており、VP-16として一般に公知である。テニポシド、すなわち4'-デメチル-エピポドフィロトキシン9[4,6-O-(R)-テニリデン-β-D-グルコピラノシド]は、VUMON(登録商標)として注射用液剤で市販されており、VM-26として一般に公知である。
【0150】
代謝拮抗物質新生物薬は、典型的にはDNA合成を阻害することにより、またはプリンもしくはピリミジン塩基合成を阻害し、それによりDNA合成を制限することにより、細胞周期のS期(DNA合成)に作用する、発生期特異的抗新生物薬である。したがって、S期は進行せず、続いて細胞死が起こる。代謝拮抗物質には、フルダラビン、クラドリビン、クロロデオキシアデノシン、クロファラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビンおよびチオグアニンなどのプリン類縁体;フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、シタラビン、アザシチジン、エダトレキセート、フロキシウリジン、およびトロキサシタビンなどのピリミジン類縁体;メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、およびトリメトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬が含まれる。シタラビン、すなわち4-アミノ-1-p-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミジノンは、CYTOSAR-U(登録商標)として市販されており、Ara-Cとして一般に公知である。メルカプトプリン、すなわち1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-チオン一水和物は、PURINETHOL(登録商標)として市販されている。チオグアニン、すなわち2-アミノ-1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-チオンは、TABLOID(登録商標)として市販されている。ゲムシタビン、すなわち2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン一塩酸塩(p-異性体)は、GEMZAR(登録商標)として市販されている。
【0151】
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むトポイソメラーゼI阻害剤。トポイソメラーゼI阻害剤の例には、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン、ベロテカンならびに米国特許第6,063,923号;第5,342,947号;第5,559,235号;第5,491,237号および1997年11月24日提出の係属中の米国特許出願第08/977,217号に記載の、7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-カンプトテシンの様々な光学型(すなわち、(R)、(S)または(R,S))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。イリノテカンHCl、すなわち(4S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-9-[(4-ピペリジノピペリジノ)-カルボニルオキシ]-1H-ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン塩酸塩は、注射用液剤CAMPTOSAR(登録商標)として市販されている。イリノテカンは、その活性代謝物8N-38と共に、トポイソメラーゼI-DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体である。トポテカンHCl、すなわち(S)-10-[(ジメチルアミノ)メチル]-4-エチル-4,9-ジヒドロキシ-1H-ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14-(4H,12H)-ジオン一塩酸塩は、注射用液剤HYCAMTIN(登録商標)として市販されている。
【0152】
ホルモンおよびホルモン類縁体は、ホルモンと癌の成長および/または成長の欠如との間に関係がある癌を治療するために有用な化合物である。癌治療において有用なホルモンおよびホルモン類縁体の例には、フルオキシメステロンおよびテストラクトンなどのアンドロゲン;ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、およびニルタミドなどの抗アンドロゲン;アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、フォルメスタン、ボラゾール、およびレトロゾールなどのアロマターゼ阻害剤;デキサメタゾン、プレドニゾン、およびプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;ジエチルスチルベストロールなどのエストロゲン;フルベストラント、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフィン、ドロロキシフェン、およびヨードキシフェン、ならびに米国特許第5,681,835号、第5,877,219号、および第6,207,716号に記載のものなどの選択的エストロゲン受容体調節物質(SERMS)などの抗エストロゲン;フィナステリドおよびデュタステリドなどの5α-レダクターゼ;黄体形成ホルモン(leutinizing hormone)(LH)および/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激する、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびその類縁体、例えば、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、およびトリプトレリンなどのLHRHアゴニストおよびアンタゴニスト;酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ならびにレボチロキシンおよびリオチロキシンなどの甲状腺ホルモンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0153】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞増殖または分化などの細胞内変化を誘発する化学プロセスを遮断または阻害する阻害剤である。本発明において有用なシグナル伝達阻害剤には、例えば、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断薬、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスホチジルイノシトール-3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達、およびRas癌遺伝子の阻害剤が含まれる。
【0154】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞成長の調節に関与する様々なタンパク質における特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。そのようなタンパク質チロシンキナーゼは、受容体または非受容体キナーゼとして広く分類することができる。受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは細胞成長の調節に関与し、成長因子受容体と呼ばれることもある。
【0155】
これらのキナーゼの多くの、例えば、過剰発現または突然変異による、不適当または無制御の活性化は、無制御の細胞成長をきたすことが明らかにされている。したがって、そのようなキナーゼの異常な活性は、悪性組織成長に関連づけられてきた。したがって、そのようなキナーゼの阻害は癌の治療方法を提供しうるであろう。
【0156】
成長因子受容体には、例えば、表皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮成長因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様および表皮成長因子ホモロジードメインを有するチロシンキナーゼ(TIE-2)、インスリン成長因子-I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB、およびTrkC)、エフリン(eph)受容体、およびRET癌原遺伝子が含まれる。
【0157】
成長受容体のいくつかの阻害剤が開発中であり、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。成長因子受容体および成長因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(6):803-818;Shawver et al., Drug Discov. Today (1997), 2(2):50-63;およびLofts, F. J. et al., "Growth factor receptors as targets", New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, ed. Workman, Paul and Kerr, David, CRC press 1994, Londonに記載されている。受容体チロシンキナーゼ阻害剤の具体例には、スニチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、およびイマチニブが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0158】
成長因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼと呼ぶ。抗癌剤の標的であるか、または標的となる可能性がある、本発明において有用な非受容体チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(局所接着キナーゼ)、ブルトンチロシンキナーゼ、およびBcr-Ablが含まれる。そのような非受容体キナーゼおよび非受容体チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., J. Hematotherapy & Stem Cell Res. (1999) 8(5): 465 - 80;およびBolen, J.B., Brugge, J.S., Annual Review of Immunology. (1997) 15: 371-404に記載されている。
【0159】
SH2/SH3ドメイン遮断薬は、PI3-K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas-GAPを含む、様々な酵素およびアダプタータンパク質におけるSH2またはSH3ドメイン結合を分断する薬剤である。抗癌薬の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E., J. Pharmacol. Toxicol. Methods. (1995), 34(3): 125-32において論じられている。Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(MEK)、および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断薬を含む、MAPキナーゼカスケード遮断薬;ならびにPKC(アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、ミュー、ラムダ、イオタ、ゼータ)の遮断薬を含むプロテインキナーゼCファミリーメンバー遮断薬を含む、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバー、およびTGFベータ受容体キナーゼ。そのようなセリン/トレオニンキナーゼおよびその阻害剤は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., J. Biochemistry. (1999) 126 (5): 799-803;Brodt, P, Samani, A, & Navab, R, Biochem. Pharmacol. (2000) 60:1101-1107;Massague, J., Weis-Garcia, F., Cancer Surv. (1996) 27:41-64;Philip, P.A, and Harris, AL, Cancer Treat. Res. (1995) 78: 3-27;Lackey, K. et al. Bioorg. Med. Chem. Letters, (2000) 10(3): 223-226;米国特許第6,268,391号;およびMartinez-Iacaci, I., et al., Int. J. Cancer (2000), 88(1):44-52に記載されている。PI3-キナーゼ、ATM、DNA-PK、およびKuの遮断薬を含むホスホチジルイノシトール-3キナーゼファミリーメンバーの阻害剤も本発明において有用である。そのようなキナーゼについては、Abraham, RT. Current Opin. Immunol. (1996), 8(3): 412-8;Canman, C.E., Lim, D.S., Oncogene (1998) 17(25): 3301-8;Jackson, S.P., Int. J. Biochem. Cell Biol. (1997) 29(7):935-8;およびZhong, H. et al., Cancer Res. (2000) 60(6):1541-5に論じられている。また、ホスホリパーゼC遮断薬およびミオイノシトール類縁体などのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤も本発明において有用である。そのようなシグナル阻害剤は、Powis, G., and Kozikowski A, (1994) NEW MOLECULAR TARGETS FOR CANCER CHEMOTHERAPY, ed., Paul Workman and David Kerr, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0160】
シグナル伝達経路阻害剤のもう一つの群はRas癌遺伝子の阻害剤である。そのような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル-ゲラニルトランスフェラーゼ、およびCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が含まれる。そのような阻害剤は、野生型突然変異rasを含む細胞においてras活性を遮断し、それにより抗増殖剤として作用することが明らかにされている。ras癌遺伝子阻害については、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, SI, Matar, P., J. Biomed. Sci. (2000) 7(4): 292-8;Ashby, M.N., Curr. Opin. Lipidol. (1998) 9(2): 99 -102;およびOliff, A., Biochim. Biophys. Acta, (1999) 1423(3):C19-30に論じられている。
【0161】
前述のとおり、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストもシグナル伝達阻害剤として役立ちうる。この群のシグナル伝達経路阻害剤は、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインへのヒト化抗体の使用を含む。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al., Cancer Treat. Rev., (2000) 26(4): 269-286参照);Herceptin(登録商標) erbB2抗体(Stern, DF, Breast cancer Res. (2000) 2(3):176-183参照);および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al., Cancer Res. (2000) 60(18):5117-24参照)。
【0162】
非受容体キナーゼ血管形成阻害剤を本発明において用いてもよい。血管形成関連VEGFRおよびTIE2の阻害剤についてはシグナル伝達阻害剤に関して前述している(どちらの受容体も受容体チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害剤は血管形成、主にVEGF発現を阻害することが明らかにされているため、一般に血管形成はerbB2/EGFRシグナル伝達に関連している。したがって、erbB2/EGFR阻害剤と血管形成の阻害剤との組み合わせは意味がある。したがって、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤を本発明のEGFR/erbB2阻害剤との組み合わせで用いてもよい。例えば、VEGFR(受容体チロシンキナーゼ)を認識しないが、リガンドに結合する、抗VEGF抗体;血管形成を阻害するインテグリン(アルファvベータ3)の低分子阻害剤;エンドスタチンおよびアンギオスタチン(非RTK)も開示したerbファミリー阻害剤と組み合わせで有用であることが判明するであろう。(Bruns, CJ et al., Cancer Res. (2000), 60(11): 2926-2935;Schreiber AB, Winkler ME, & Derynck R., Science (1986) 232(4755):1250-53;Yen L. et al., Oncogene (2000) 19(31): 3460-9参照)。
【0163】
免疫療法において使用される薬物も、式(I)〜(V)の化合物との組み合わせで有用でありうる。erbB2またはEGFRに対して免疫応答を生じるためのいくつかの免疫学的戦略がある。これらの戦略は一般に腫瘍ワクチンの分野に属する。免疫学的アプローチの有効性は、低分子阻害剤を用いたerbB2/EGFRシグナル伝達経路の阻害と組み合わせることにより著しく増大しうる。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチに関する議論は、Reilly RT, et al., Cancer Res. (2000) 60(13):3569-76;およびChen Y, et al., Cancer Res. (1998) 58(9):1965-71に記載されている。
【0164】
アポトーシス促進レジメンにおいて用いる薬剤(例えば、bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)を、本発明の組合せにおいて用いてもよい。Bcl-2ファミリーに属するタンパク質はアポトーシスを遮断する。したがって、bcl-2のアップレギュレーションは化学療法抵抗性と関連づけられている。研究により表皮成長因子(EGF)がbcl-2ファミリーの抗アポトーシス性のメンバーを刺激することが明らかにされている。したがって、腫瘍においてbcl-2の発現をダウンレギュレーションするように設計された戦略は、臨床上の有益性を示し、現在Genta's G3139 bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチドとして第II/III相試験をおこなっている。bcl-2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を用いるそのようなアポトーシス促進戦略については、Water JS, et al., J. Clin. Oncol. (2000) 18(9): 1812-23;およびKitada S, et al., Antisense Res. Dev. (1994) 4(2):71-9に論じられている。
【0165】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるプロテインキナーゼのファミリーおよびそれらのサイクリンと呼ばれるタンパク質のファミリーとの相互作用は、真核細胞周期の進行を制御する。異なるサイクリン/CDK複合体の協調した活性化および不活性化が細胞周期の正常な進行にとって必要である。いくつかの細胞周期シグナル伝達の阻害剤が開発中である。例えば、CDK2、CDK4、およびCDK6を含むサイクリン依存性キナーゼならびにその阻害剤の例が、例えば、RosaniaGR & Chang Y-T., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-30に記載されている。
【0166】
他の分子標的指向薬剤には、免疫抑制性マクロライド抗生物質、ラパマイシンなどのFKBP結合剤;レチノイドおよびレキシノイド、例えば、アダパレン、ベキサロテン、トランス-レチノイン酸、9-シスレチノイン酸、およびN-(4ヒドロキシフェニル)レチンアミドなどの、遺伝子療法剤、アンチセンス療法剤、および遺伝子発現調節物質;アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン、リツキシマブ、およびトラスツズマブなどのモノクローナル抗体を含む表現型指向療法剤;ゲムツズマブオゾガマイシンなどの免疫毒素、131-トシツモマブなどの放射性免疫複合体;ならびに癌ワクチンが含まれる。
【0167】
その他の薬剤には、アルトレタミン、三酸化ヒ素、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レバミゾール、ミトタン、オクトレオチド、プロカルバジン、スラミン、サリドマイド、メトキサレンおよびポルフィマーナトリウムなどの光線力学化合物、ならびにボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤が含まれる。
【0168】
生物学的療法剤には、インターフェロン-u2aおよびインターフェロン-u2bなどのインターフェロン、ならびにアルデスロイキン、デニロイキンジフチトクス、およびオプレルベキンなどのインターロイキンが含まれる。
【0169】
癌細胞に対して作用することが意図されるこれらの抗癌剤に加えて、アルミホスチン(armifostine)、デクスラゾンキサン(dexrazonxane)、およびメスナなどの細胞保護剤、パルミドロネート(parmidronate )およびゾレドロン酸などのホスホネート、ならびにエポエチン、ダルベオペチン(darbeopetin)、フィルグラスチム、PEG-フィルグラスチム、およびサルグラモスチムなどの刺激因子を含む、保護的または補助的薬剤の使用を含む併用療法も構想される。
【0170】
本発明の化合物の合成法
本発明の化合物は、国際特許出願PCT/US2007/077464に開示される方法を含む、当技術分野において公知の方法によって合成することができる。代表的な合成法を以下に示す。
【0171】
プロセス1
エタノール(100mL)中の3-ブロモ-4-ピリジンカルボン酸(3.0g、14.9mmol)を濃硫酸(5mL)で処理した。

【0172】
混合物を還流させ、その時点ですべてが溶液中に移行した。12時間還流した後、LCMSにより反応完了が示された。反応混合物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで元の体積の3分の1まで濃縮した。次いで、混合物を250mLの酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。ロータリーエバポレーターで濃縮して、3.25gのエチルエステルを帯黄色油状物で得、これは続く化学変換のために十分な純度であった。LCMS (ESI) 216.2 (M+1)+

【0173】
3-ブロモ-4-ピリジンカルボン酸エチル 1.15g、5.0mmol)、2-アミノ-4-メトキシカルボニル-フェニルボロン酸(1.04g、4.5mmol)、酢酸ナトリウム(1.64g、20mmol)、塩化1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)(ジクロロメタンとの複合体)(182mg、0.25mmol)およびジメチルホルムアミド(7.5mL)をフラスコ内で混合した。フラスコの排気および窒素充填を2回行い、撹拌しながら125℃で12時間、またはLCMSによりいかなる出発原料も存在しないことが示されるまで加熱した。混合物を室温まで冷却し、水(100mL)を加えて、褐色沈澱を生じた。沈澱をろ過して、637mgの5-オキソ-5,6-ジヒドロベンゾ[c][2,6]ナフチリジン-8-カルボン酸メチルを得た。LCMS (ESI) 255.4 (M+1)+

【0174】
5-オキソ-5,6-ジヒドロベンゾ[c][2,6]ナフチリジン-8-カルボン酸メチル(200mg、0.787mmol)をオキシ塩化リン(1mL)と混合し、加熱還流した。2時間後、LCMSによりいかなる出発原料も存在しないことが示された。揮発性物質を減圧下で除去した。残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、5-クロロベンゾ[c][2,6]ナフチリジン-8-カルボン酸メチル(140mg)を帯灰色固体で得た。LCMS (ESI) 273.3 (M+1)+

【0175】
5-クロロベンゾ[c][2,6]ナフチリジン-8-カルボン酸メチル(20mg、0.074mmol)をマイクロ波チューブ内でアニリン(60mg、0.65mmol)およびN-メチルピロリジノン(0.2mL)と混合して、混合物を120℃で10分間加熱し、この時点でLCMSによりいかなる出発原料も存在しないことから反応完了が示された。次いで、混合物をHPLCで精製して、エステル(22mg)を得、またはこれを6N水酸化ナトリウムで処理して酸(19mg)を得ることができた。


【0176】
5-クロロベンゾ[c][2,6]ナフチリジン-8-カルボン酸メチル(232mg、0.853mmol)をフラスコ内でメタ-クロロアニリン(217mg、1.71mmol)およびN-メチルピロリジノン(1mL)と混合し、混合物を80℃で2時間加熱し、この時点でLCMSによりいかなる出発原料も存在しないことから反応完了が示された。混合物をCH2Cl2に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。この材料をフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、EtOAc/ヘキサン1:1から9:1の勾配)で精製して、エステルを得た。この材料をメタノールおよび6N NaOH水溶液に溶解し、混合物を50℃で30分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。残渣を酢酸/THF/メタノールからヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を用いて粉砕した。ろ過し、乾燥して、147mgの5-(3-クロロフェニルアミノ)ベンゾ[c][2,6]ナフチリジン-8-カルボン酸を得た。

【0177】
プロセス2

5-ブロモピリミジン-4-カルボン酸(米国特許第4,110,450号に記載の手順に従って調製)(1.0当量、6.14g、30.2mmol)をCH2Cl2(100mL)に懸濁した。塩化オキサリル(1.1当量、2.9ml、33.0mmol)を加え、続いて2滴のDMFを加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣をMeOH(50mL)に溶解し、加熱した。MeOHを減圧下で蒸発させた後、化合物をCH2Cl2に溶解し、あらかじめ充填したシリカゲルカラムに加えた。材料をヘキサン中20%酢酸エチルで溶出した。溶媒を蒸発させて、5-ブロモピリミジン-4-カルボン酸メチルを淡橙色結晶性固体で得た(2.54g、収率39%)。

【0178】
プロセス3

酢酸ナトリウム(4.0当量、1.92g、23.41mmol)および塩化1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)(ジクロロメタンとの複合体)(0.05当量、214mg、0.29mmol)を、無水DMF(10mL)中の5-ブロモピリミジン-4-カルボン酸メチル(1.0当量、1.27g、5.85mmol)、および2-アミノ-4-(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸塩酸塩(1.0当量、1.35g、5.85mmol)の混合物に加えた。混合物を窒素雰囲気下、120℃で18時間撹拌した。水および食塩水を加え、得られた固体不純物をろ去した。この材料をCH2Cl2(4×)で抽出し、合わせた抽出物をNa2SO4で乾燥した。CH2Cl2を蒸発させた後、残渣を減圧下で加熱することにより、残存するDMFを蒸発させた。得られた固体をCH2Cl2中で粉砕し、ろ過し、乾燥して、5-オキソ-5,6-ジヒドロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルをベージュ固体で得た(127mg、収率8.5%)。

【0179】
プロセス4

バイアル中、5-オキソ-5,6-ジヒドロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(1.0当量、151mg、0.59mmol)をトルエン(1mL)中、DIEA(1.5当量、155ul、0.89mmol)およびPOCl3(5当量、270ul、3.0mmol)と混合した。混合物を120℃で1時間撹拌し、室温まで冷却した。氷および水を加えた後、化合物をCH2Cl2(4×)で抽出した。溶液をNa2SO4でろ過し、セライトのパッドを通してろ過した。揮発性物質を蒸発させた後、材料を酢酸エチルおよびへキサンの混合物中で粉砕し、ろ過し、乾燥して、5-クロロピリミド[4,5-C]キノリン-8-カルボン酸メチルを淡褐色飛散性固体で得た(115mg、収率71%)。

【0180】
プロセス5

NMP(0.1mL)中で5-クロロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(10mg)を3,5-ジフルオロアニリン(100mg)と混合した。混合物をマイクロ波により120℃で10分間加熱した。水を加え、材料をCH2Cl2で抽出した。溶媒を除去した。酢酸エチルおよびヘキサンの混合物中で粉砕し、ろ過して、5-(3,5-ジフルオロフェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルを得た。この材料をTHFおよびMeOHの1:1混合物(2ml)に懸濁し、水酸化リチウムの5N水溶液を加えた。混合物を室温で5時間激しく撹拌した。水および6N塩酸を加えて、予想される材料の沈澱を誘導した。固体をろ過し、水で洗浄し、乾燥し、MeOHに懸濁した。ろ過し、乾燥して、5-(3,5-ジフルオロフェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸を黄色固体で得た(4mg、収率31%)。

【0181】
プロセス6

5-(3-エチニルフェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸を、同じ方法を用い、5-クロロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルおよび3-エチニルアニリンから出発して調製した。

【0182】
プロセス7

5-ブロモ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-カルボン酸メチルを、5-ブロモピリミジン-4-カルボン酸メチルの調製のためにプロセス2で用いた手順に従って調製した。

【0183】
プロセス8

5-ブロモ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(1.0当量、661mg、2.52mmol)をCH2Cl2(10mL)に溶解し、メタ-クロロ過安息香酸(m-cpba、純度77%等級、2.5当量、1.42g、6.34mmol)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。得られた懸濁液に無水THF(10mL)、メチルアミン塩酸塩(10当量、1.7g、25.18mmol)およびDIEA(10当量、4.3ml、24.69mmol)を加え、混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を減圧下で除去した後、CH2Cl2および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。二相をデカンテーションし、CH2Cl2抽出をさらに2回行った。合わせた抽出物をNa2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させた。シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中20〜30%酢酸エチル)で精製して、5-ブロモ-2-(メチルアミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチルをオフホワイト固体で得た(461mg、収率75%)。LCMS (ES):純度>95%、m/z 246 [M]+、248 [M+2]+
【0184】
プロセス9

酢酸ナトリウム(3.0当量、240mg、2.93mmol)および塩化1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)(ジクロロメタンとの複合体)(0.05当量、36mg、0.049mmol)を、無水DMF(2mL)中の5-ブロモ-2-(メチルアミノ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(1.0当量、240mg、0.975mmol)、および2-アミノ-4-(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸塩酸塩(1.0当量、226mg、0.98mmol)の混合物に加えた。混合物をマイクロ波加熱下、120℃で10分間撹拌した。水を加えて予想される化合物の沈澱を誘導し、これをろ過し、乾燥して、3-(メチルアミノ)-5-オキソ-5,6-ジヒドロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(57mg、収率21%)を得た。LCMS (ES):純度>80%、m/z 285 [M+1]+
【0185】
プロセス10

3-(メチルアミノ)-5-(フェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸を、プロセス3および4に記載の方法を用い、3-(メチルアミノ)-5-オキソ-5,6-ジヒドロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルから出発して調製した。最終生成物をフラッシュクロマトグラフィで精製し、黄色固体で単離した(0.35mg)。LCMS (ES):純度>95%、m/z 346 [M+1]+
【0186】
プロセス11

マイクロ波容器内で、5-ブロモ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-カルボン酸メチル(1.0当量、274mg、1.18mmol)、2-アミノ-4-(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸塩酸塩(1.2当量、329mg、1.42mmol)、および酢酸ナトリウム(3.0当量、291mg、3.55mmol)を無水DMF(2mL)中で混合した。溶液中に窒素ガスを10分間通気することにより混合物を脱気し、反応混合物をマイクロ波により120℃で30分間加熱した。冷却後、予想される材料がNMPから析出した。固体をろ過し、水に懸濁し、ろ過し、乾燥した。材料をAcOEt中で粉砕し、ろ過して、黄色固体を得た。同じ量の材料を用いて同じ手順を9回繰り返し、3-(メチルチオ)-5-オキソ-5,6-ジヒドロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(283mg、収率10%)を得た。

【0187】
プロセス12

3-(メチルチオ)-5-オキソ-5,6-ジヒドロピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(1.0当量、279mg、0.926mmol)をトルエン(2mL)中に懸濁した。POCl3(2mL)およびDIEA(0.5mL)を加え、混合物を120℃で5時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、CH2Cl2を加えた。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶液をセライトのパッドを通してろ過し、溶媒を減圧下で除去した。材料をヘキサンおよびAcOEt中で粉砕し、ろ過し、乾燥して、5-クロロ-3-(メチルチオ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルをベージュ固体で得た(184mg、収率63%)。LCMS (ES):純度>95%、m/z 320 [M+1]+、322 [M+3]+
【0188】
プロセス13

5-クロロ-3-(メチルチオ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(1.0当量、182mg、0.57mmol)をNMP(1ml)中のアニリン(0.5mL)と混合した。混合物をマイクロ波により120℃で10分間加熱した。水を加え、得られた固体をろ過し、乾燥した。化合物をEtOAcおよびへキサン中で粉砕し、ろ過して、3-(メチルチオ)-5-(フェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルを黄色固体で得た。LCMS (ES):純度>95%、m/z 377 [M+1]+。この材料をCH2Cl2(4ml)に懸濁し、メタ-クロロ過安息香酸(純度77%、2.5当量、165mg、0.737mmol)を少しずつ加えた。1時間後、さらなる量(100mg)のmcpbaを加え、混合物を1.5時間撹拌した。さらにCH2Cl2を加えた後、有機相を水(4×)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶液をシリカゲルのパッドを通してろ過し、MeOH/CH2Cl2混合物で溶出した。溶媒を蒸発させた後、3-(メチルスルホニル)-5-(フェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルを黄色固体で単離した(166mg、収率72%)。

【0189】
プロセス14

密封バイアル中で、3-(メチルスルホニル)-5-(フェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチル(1.0当量、62mg、0.152mmol)をDMF(1ml)中のメチルアミン塩酸塩(100mg)、DIEA(260ul)と混合した。混合物を60℃で40分間撹拌した。水を加えて3-(メチルアミノ)-5-(フェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸メチルの沈澱を誘導し、これをろ過して単離した。この材料をTHF、MeOHおよび水の1:1:1混合物(4mL)に懸濁し、LiOH(200mg)存在下、60℃で1.5時間激しく撹拌した。水HCl水溶液を加え、pH=1とした。固体をろ過し、乾燥し、AcOEt/ヘキサン中で粉砕して、3-(メチルアミノ)-5-(フェニルアミノ)ピリミド[4,5-c]キノリン-8-カルボン酸を黄色固体で得た(40mg、収率74%)。LCMS (ES):純度>95%、m/z 346 [M+1]+
【0190】
シクロプロピルアミンなどの他のアミンをメチルアミンの代わりに用い、3-(トリフルオロメチル)アニリンなどの置換アニリンをアニリンの代わりに用いて、本明細書に記載の式(2)の化合物などの化合物を得ることもできる。化合物(2)の合成は、予想されるLC-MSによって特徴付けられる生成物を生じた。
【0191】
以下の実施例は本発明を例示するために示すが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0192】
薬物動態特性の評価
薬物の薬物動態特性を、3つの種で、化合物Kを図表に示した用量で静脈内(IV)ボーラスまたは経口(PO)投与した後に調べた。血液試料をあらかじめ決めた時点で採取し、血漿を分離した。血漿を、投与後5、15および30分、ならびに1、2、4、8および24時間の時点で採取した血液試料から分離した。
【0193】
薬物レベルを以下に記載するLC/MS/MS法により定量化した。薬物動態ノンコンパートメント解析を静脈内投与に適用した。線形台形公式を用いてAUC(0-24)を計算した。終末t1/2およびC0をそれぞれ最後の3つおよび最初の3つのデータ点を用いて計算した。
【0194】
生物分析を、Quattro Micro LC/MS/MS装置を用い、内部標準(IS)によるMRM検出モードで実施した。簡単に言うと、15μLの血漿試料を、120μLのアセトニトリルによるタンパク質沈降を用いて分析用に調製した。上清を96穴プレートに移し、Phenomenex Polar-RP HPLCカラムを用いてLC-MS/MS分析にかけた。移動相は10mM NH4HCO3水溶液(溶液A)および10mM NH4HCO3メタノール溶液(溶液B)であった。カラムを最初に25%溶液Bと、続いて100%溶液Bで5分間平衡化した。この方法のダイナミックレンジは1から10,000ng/mLであった。分析物の定量を、生物分析試料リストによる2点ブラケット検量線でのバッチモードで行った。

aすべてのIV試験は媒体として25mMリン酸ナトリウム緩衝液を用いた。
b齧歯類の経口投与は媒体として25mMリン酸緩衝液を用いた。
cイヌの経口投与は充填カプセル剤を用いた。
dこれらの試験は異なるロットの化合物Kを用いた。
【0195】
実施例1
化合物1の薬物動態パラメーター
実施例1と類似の方法を用いて、化合物1の薬物動態挙動をマウスで評価した。結果の概要を以下の表に示す(表2)。
【0196】
【表2】

【0197】
実施例2
持続性疼痛のマウスモデルにおける疼痛の阻害
化合物Kおよび化合物(1)を、ホルマリン誘導持続性疼痛を用いた疼痛軽減モデルにおいて試験した。Hunskaar, et al., "The formalin test in mice: Dissociation between inflammatory and noninflammatory pain," Pain, vol. 30, 103-114 (1987);Saddi, et al., "The formalin test in the mouse: a parametric analysis of scoring properties", Pain, vol. 89, 53-63 (2000)参照。これらの試験をICRマウスで、国際疼痛研究学会(International Association for the Study of Pain)により確立された指標に従って実施した。本発明の化合物を、約pH8の水溶液中約3〜20mg/mLの溶液として用いた。いくつかの場合には、化合物は溶液から一部沈澱し、したがって懸濁液として投与した。持続性疼痛を、食塩溶液中2%ホルマリン10マイクロリットルを左後足の背面に注射することにより誘導した。試験動物を少なくとも40分間モニターし、その間、5分ごとに起きるしりごみの数を観察して記録した。動物12匹のコホートを、試験した各化合物の各用量レベルに用いた。疼痛反応の観察は「盲検」的に行い、これは観察者がどの動物がどの処置を受けたかを知らなかったことを意味していた。結果の統計分析をPrism(商標)5.0で、各化合物と媒体について一元配置の分散分析(ANOVA)を用いて行い;有意性のレベルをP<0.05に設定した。
【0198】
化合物を、ホルマリン注射の1時間前に、30、100、および200mg/kgの1回投与で経口投与した。疼痛反応をしりごみの頻度で測定した。注射後の最初の9分間の相において、いずれの化合物もしりごみの率に影響をおよぼさなかった。しかし、注射後の10〜40分間の相においては、いずれの化合物もホルマリン誘導性のしりごみを有意に低減した。化合物Kは30および200mg/kg用量で有効であり、化合物(1)は100および200mg/kg用量で有効であった。モルヒネの1回投与(3mg/kg、皮下注射)を陽性対照とし、試験のいずれの相でもホルマリン誘導性のしりごみを低減した。
【0199】
実施例3
抗痛覚過敏モデルにおける化合物の試験
Hargreaves, et al. (Hargreaves, et al., "A new and sensitive method for measuring thermal nociception in cutaneous hyperalgesia", Pain, vol. 32, 77-88 (1988))によって記載のとおり、温熱性痛覚過敏を誘導するためにCFA(完全フロイントアジュバント、0.05%w/vマイコバクテリウム-ブチリカム(mycobacterium Butyricum))を用いて、化合物Kおよび化合物(1)の有効性を炎症性疼痛モデルにおいて試験した。ICRマウスを前述のとおりに用い、各化合物の各用量を少なくとも12匹の試験動物で試験した。疼痛反応の観察を盲検的に行った。結果の統計分析をPrism(商標)5.0で、各化合物と媒体について一元配置の分散分析(ANOVA)を用いて行い;有意性のレベルをP<0.05に設定した。いずれの化合物も溶液から沈澱し、したがって化合物の溶解性を促進するためにボルテックスにかけ、温めた後、懸濁液として投与した。いずれの化合物も、これらの用量でCFA誘導性の温熱性痛覚過敏に対し統計学的に有意な効果を示さなかった。陽性対照としてのナプロキセン(50mg/kg)の1回腹腔内投与は、ナプロキセン投与の1、2、および4時間後にCFA誘導性の温熱性痛覚過敏を有意に逆転した。
【0200】
化合物を25、75または150mg/kgの用量で1日2回(BID)4日間投与した。第4日に、試験被験者にCFA(20マイクロリットル)の1回注射を、左後足の足底表面に皮下投与した。CFAを、イソフルラン麻酔下で、各試験被験者の左後足の足底表面に皮下注射した。注射部位の炎症を、試験前に約24時間発生させた。第5日に、温熱反応を化合物による処置前に測定し、CFA処置の1、2、および4時間後に再度測定した。Hargreaves法による温熱刺激に反応しての逃避潜時を測定した。ナプロキセンを陽性対照として用いた。
【0201】
実施例5
化合物Kによる第I相臨床試験

化合物Kは、前臨床の広い治療ウィンドウで、異種移植腫瘍成長の抑制において単剤効力を示した。第I相試験を行って、化合物Kの最大耐容量(MTD)および用量制限毒性(DLT)をもとめ、薬物動態(PK)を特徴づけ、かつ薬力学的効果を試験した。
【0202】
手順:
進行性疾患に併発する進行した固形腫瘍、キャッスルマン病もしくは多発性骨髄腫を有するか、または利用可能な標準的治療法がない、1回90、160、300、460、700および1000mgの連続用量コホートの適格患者に化合物Kを投与する。経口用量を1日2回、連続21日間、4週間周期で投与する。治療を、同意している患者で、化合物Kに対する不耐性の徴候が観察されるまで、または疾患進行の証拠が得られるまで続ける。RECISTによる反応を2周期が終わるごとに判定する。薬物動態解析および薬力学的生物マーカー評価(具体的には、p21およびAktの全体およびリン酸化型)のために、連続の血液および血漿試料を、周期1の最初および最後の投与日(すなわち、第1日および第21日)に採取する。
【0203】
投与の経路およびスケジュール:
コホート1〜3の患者に経口カプセル剤を1日2回(BID)投与した。コホート1には90mgの化合物KをBID投与した。コホート2には160mgの化合物KをBID投与した。コホート3には300mgの化合物KをBID投与した。
【0204】
結果の概要:
13名の固形腫瘍患者(4つの別の用量コホートから、コホートごとに3〜4名)に化合物Kを経口投与した。これらの用量はよく耐容され、等級3以上の薬物関連の有意な有害事象は報告されなかった。
【0205】
薬物動態解析
化合物Kは、用量コホート間でPKパラメーターの一般的な直線性を示し、定常状態での終末半減期は約25時間であった。
【0206】
化合物Kの血漿濃度を第1日(図4A)および第21日(図4B)の1回目の投与後に定量した。用量関連の血漿曝露が観察された。蓄積は見られなかった。
【0207】
結論:
化合物Kは薬物関連毒性を示さず、用量比例薬物動態を有する。用量制限毒性(DLT)も観察されず、最大耐容量(MTD)はこの第I相試験では規定されていない。計画した用量漸増コホートへのさらなる登録が進行中である。
【0208】
実施例6
抗ウイルス検定におけるCK2阻害剤
潜伏感染検定:
HIV-1に潜伏感染している組織球白血病細胞株U937をTNFαで処理して、試験化合物存在下でのウイルス発現を誘導する。抗ウイルス活性を、72時間インキュベートした後の逆転写酵素の低減として判定する。
【0209】
PBMC検定:
複数の供与者(PMAおよびIL-2刺激)からの新鮮ヒトPBMCを用いての、HIV-1単離株(CXCR4指向性HIV-1サブタイプBおよびCCR5指向性HIV-1サブタイプ)の急性感染。7日間インキュベートした後の逆転写酵素の低減として判定した抗ウイルス活性。
【0210】
データ解析:
IC50(ウイルス複製の50%阻害)
TC50(50%の宿主細胞への細胞毒性)
TI=TC/IC;治療指数値(TI)または抗ウイルス指数(AI)とも呼ぶ
【0211】
U1潜伏感染検定におけるCK2阻害剤
化合物K、化合物1および化合物2をU1潜伏感染検定で試験した。HIV-1に潜伏感染している組織球白血病細胞株U937をTNFαで処理して、試験化合物存在下でのウイルス発現を誘導した。抗ウイルス活性を、72時間インキュベートした後の逆転写酵素の低減として判定した。HIV転写開始の阻害剤であるテマクラジンを検定の陽性対照として用いた。
【0212】
化合物Kおよび化合物1はウイルス産生の有意な阻害を示さなかった。
【0213】
化合物2は、細胞への化合物の効果に関連すると考えられる、明らかな二相性効果を示した。化合物2は中間濃度でウイルス産生を阻害した。化合物2は高濃度ではU1細胞からのウイルス産生を増強するようであった(例えば、ウイルス転写に対する刺激効果の可能性)。
【0214】
データを表3に示す。
【0215】
【表3】

【0216】
PBMC検定におけるCK2阻害剤:
化合物K、化合物1および化合物2をPBMC検定で試験した。抗ウイルス活性を、7日間インキュベートした後の逆転写酵素の低減として判定した。ヌクレオシド類縁体逆転写酵素阻害剤であるAZTを検定の陽性対照として用いた。
【0217】
化合物Kおよび化合物1はウイルス産生の有意な阻害を示さなかった。
【0218】
化合物2は中間濃度でウイルス産生を阻害した。データを表4に示す。92HT599はCXCR4指向性HIV-1サブタイプBウイルスである。91US005はCCR5指向性HIV-1サブタイプBウイルスである。
【0219】
【表4】

【0220】
新鮮ヒトPBMCにおけるCCR5指向性HIV-1臨床単離株
化合物2を新鮮ヒトPBMCにおける8つのCCR5指向性HIV-1臨床単離株に対して試験した。化合物2はCCR5指向性HIV-1に感染したPBMCにおいて用量依存的様式でウイルス産生を阻害した。化合物2はPBMCにおいて最小限の細胞毒性を有し、好ましい治療指数を示した。AZTを検定の陽性対照として用いた。
【0221】
データを、化合物2については図5(A)に、AZTについては図5(B)に示す。
【0222】
実施例7
代表的態様
A1. プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する、固形腫瘍以外の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0223】
A2. プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する、固形腫瘍以外の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、下記の式を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:


【0224】
A3. 前記障害が神経変性障害、炎症性障害、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫である、態様A1またはA2の方法。
【0225】
A4. 前記障害が神経変性障害である、態様A1またはA2の方法。
【0226】
A5. 前記神経変性障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、グアム-パーキンソン認知症、染色体18欠失症候群、進行性核上麻痺、クッフス病、ピック病、記憶障害、または脳虚血である、態様A4の方法。
【0227】
A6. 前記障害が炎症性障害である、態様A1またはA2の方法。
【0228】
A7. 前記炎症性障害が炎症性疼痛、糸球体腎炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼蒼、関節リウマチ、または若年性関節炎である、態様A6の方法。
【0229】
A8. 前記障害が血管系の障害である、態様A1またはA2の方法。
【0230】
A9. 前記血管系の障害がアテローム性動脈硬化症、層せん断応力、または低酸素症である、態様A1またはA2の方法。
【0231】
A10. 前記障害が骨格筋または骨組織の病態生理学的障害である、態様A1またはA2の方法。
【0232】
A11. 前記骨格筋または骨組織の病態生理学的障害が心筋細胞肥大、インスリンシグナル伝達障害または骨組織ミネラル化である、態様A10の方法。
【0233】
A12. 前記障害が原生動物寄生虫症である、態様A1またはA2の方法。
【0234】
A13. 前記障害がウイルス性疾患である、態様A1またはA2の方法。
【0235】
A14. 前記ウイルス性疾患が1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、ヒトパピローマウイルス、または単純ヘルペスウイルスである、態様A13の方法。
【0236】
A15. 前記障害が白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫である、態様A1またはA2の方法。
【0237】
A16. 前記被験者がヒトである、態様請求項のいずれか一つの方法。
【0238】
A17. 被験者の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている該被験者に、下記の式を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含み、

ここで該障害は神経変性障害、炎症性障害、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択される、方法。
【0239】
A18. 被験者の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている該被験者に、下記の式を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを、プロテインキナーゼCK2の望まれない活性を阻害するのに有効な量で投与する段階を含む、方法:


【0240】
A19. 該障害が神経変性障害、炎症性障害、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択される、態様A18の方法。
【0241】
A20. 疼痛の治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0242】
A21. 化合物が式VIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、態様A20の方法:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【0243】
A22. 化合物が下記からなる群、ならびにその薬学的に許容される塩および/またはエステルより選択される、態様A20またはA21の方法:


【0244】
A23. 前記疼痛が急性または慢性の炎症性疼痛である、態様A20、A21またはA22の方法。
【0245】
A24. ウイルス性疾患の治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0246】
A25. 化合物が式VIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、態様A24の方法:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【0247】
A26. 化合物が下記からなる群、ならびにその薬学的に許容される塩および/またはエステルより選択される、態様A24またはA25の方法:


【0248】
A27. ウイルス性疾患が1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、および水痘帯状疱疹ウイルスからなる群より選択される、態様A24、A25またはA26の方法。
【0249】
A28. 進行した固形腫瘍の治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0250】
A29. それを必要としている被験者の概日リズム障害を治療、改善または予防する方法であって、該被験者に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0251】
A30. 概日リズム障害が時差ぼけ、交替勤務性睡眠障害、睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相前進症候群、および非24時間睡眠覚醒障害から選択される、態様A29の方法。
【0252】
A31. 温度補償および/または概日リズムを調節する方法であって、そのような調節を必要としている被験者に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【0253】
A32. 化合物が式VIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、態様A28、A29、A30、またはA31のいずれか一つの方法:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【0254】
A33. 化合物が下記からなる群、ならびにその薬学的に許容される塩および/またはエステルより選択される、態様A28、A29、A30、A31またはA32のいずれか一つの方法:


【0255】
前述の実施例および態様は本発明を例示するために提供しており、その範囲を限定または規定するものではない。これらの実施例の適当な変形および変更は、本明細書におけるこれらの実施例および記載を考慮すれば当業者には明らかになると考えられ、本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインキナーゼCK2の望まれない活性に関連する、固形腫瘍以外の障害を治療または改善する方法であって、そのような治療または改善を必要としている被験者に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【請求項2】
化合物が式VIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の方法:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【請求項3】
前記障害が神経変性障害、炎症性障害、血管系の障害、骨格筋または骨組織の病態生理学的障害、原生動物寄生虫症、ウイルス性疾患、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記障害が神経変性障害である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記神経変性障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、グアム-パーキンソン認知症、染色体18欠失症候群、進行性核上麻痺、クッフス病、ピック病、記憶障害、または脳虚血である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記障害が炎症性障害である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記炎症性障害が炎症性疼痛、糸球体腎炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼蒼、関節リウマチ、または若年性関節炎である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記障害が血管系の障害である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記血管系の障害がアテローム性動脈硬化症、層せん断応力(laminar shear stress)、または低酸素症である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記障害が骨格筋または骨組織の病態生理学的障害である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記骨格筋または骨組織の病態生理学的障害が心筋細胞肥大、インスリンシグナル伝達障害または骨組織ミネラル化である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記障害が原生動物寄生虫症である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記障害がウイルス性疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルス性疾患が1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、および水痘帯状疱疹ウイルスからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記障害が白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
疼痛の治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【請求項17】
化合物が式VIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項16記載の方法:

式中、R6BはHまたは-NHR'であってよく、ここでR'はC1-C5ヒドロカルビル基、好ましくはC1-C3アルキルまたはC3-C5シクロアルキルであり;Z5はCHまたはNであり;かつR9はハロ、CF3、またはC≡CR''であり、ここでR''はHまたはMeである。
【請求項18】
前記疼痛が急性または慢性の炎症性疼痛である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
進行した固形腫瘍の治療方法であって、そのような治療を必要としている被験者に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【請求項20】
それを必要としている被験者の概日リズム障害を治療、改善または予防する方法であって、該被験者に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。
【請求項21】
概日リズム障害が時差ぼけ、交替勤務性睡眠障害、睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相前進症候群、および非24時間睡眠覚醒障害から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
温度補償および/または概日リズムを調節する方法であって、そのような調節を必要としている被験者に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの治療上有効な量を投与する段階を含む、方法:

式中、Z5はNまたはCR6Aであり;
R6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、Hまたは置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、
あるいはR6A、R6B、R6DおよびR8はそれぞれ独立に、ハロ、CF3、CFN、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシの生物学的等価体、CONR2、OOCR、COR、またはNO2であり、
R9はそれぞれ独立に、置換されていてもよいC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C12ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキル基であるか、または
R9はそれぞれ独立に、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR2、OOCR、COR、もしくはNO2であり、
ここでRはそれぞれ独立に、HまたはC1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、もしくはC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは連結して、1つまたは複数のN、OまたはSを任意に含む、3〜8員環を形成することができ;
かつ各R基、および2つのR基を連結することによって形成される各環は、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OOCR'、COR'、およびNO2から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立に、H、C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C2-C6ヘテロアシル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-12アリールアルキル、またはC6-12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1-C4アルキル、C1-C4ヘテロアルキル、C1-C6アシル、C1-C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで2つのR'は連結して、N、OおよびSから選択される最大3つまでのヘテロ原子を任意に含む3〜7員環を形成することができ;
nは0から4であり;かつ
pは0から4である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−524076(P2012−524076A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505989(P2012−505989)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031520
【国際公開番号】WO2010/121225
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(505377119)サイリーン ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (17)
【Fターム(参考)】