説明

プロパン及びイソブタンのアンモ酸化又は酸化方法

飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物のアンモ酸化又は酸化方法で、性能調節剤と、未使用の複合酸化物触媒又は使用済の複合酸化物触媒と、未使用と使用後の複合酸化物触媒とを混合して触媒混合物を形成する工程と、触媒混合物の存在下、炭化水素を酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程とを有する。性能調節剤は、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、モリブデン化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、飽和又は不飽和炭化水素をアンモ酸化又は酸化させ、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法に関するものである。さらに詳細には、本発明は、プロパンからアクリロニトリル及びイソブタンからメタクリロニトリルへの気相変換(アンモ酸化による)、或いは、プロパンからアクリル酸及びイソブタンからメタクリル酸への気相変換(酸化による)の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロパンからアクリロニトリル及びイソブタンからメタクリロニトリルへの変換(アンモ酸化反応による)及び/又はプロパンからアクリル酸(酸化反応による)への変換には、混合金属酸化物触媒(mixed metal oxide catalysts)が用いられてきた。当該分野で公知の技術として数多くの特許及び特許出願があり、例えば、牛窪等に付与された米国特許第5,750,760号、駒田等に付与された米国特許第6,036,880号、駒田等に付与された米国特許第6,043,186号、日名子等に付与された米国特許第6,143,916号、井上等に付与された米国特許第6,514,902号、駒田等による米国特許出願2003/0088118A1、Gaffney等による米国特許出願2004/0063990A1及び旭化成株式会社によるPCT特許出願WO2004/108278A1が挙げられる。
プロパン酸化用のMo-V-O含有混合金属酸化物触媒には、金属イソプロポキシド溶液の初期含浸(incipient impregnation)により、酸化ニオブ、酸化テルル及び酸化アンチモン等の酸化物促進剤が混合されている。含浸後、触媒の乾燥及び焼成が行われる。
混合金属酸化物触媒にテルルを気相蒸着させて表面改質を行うことにより、触媒性能が向上したことが報告されている。更に、酸素を使った改質後処理により向上が見られた。
【0003】
モリブデン、テルル、バナジウム及びニオブを含む複合酸化物触媒には、触媒活性剤としてテルル化合物、さらに任意でモリブデン化合物が添加されている。この触媒活性剤は、触媒活性を維持するために調製(on-stream)後しばらくしてから反応器に投入する。
テルル化合物及び/又はモリブデン化合物は、モリブデン、バナジウム、ニオブ及びアンチモンを含有する触媒の使用後に補填化合物(compensative compound)として添加している。さらに一般に、モリブデン含有触媒を用いた反応器にモリブデン化合物を添加することは公知である。
プロパンからアクリロニトリル及びイソブタンからメタクリロニトリルへの変換(アンモ酸化反応による)、及び/又は、プロパンからアクリル酸及びイソブタンからメタクリル酸への変換(酸化反応による)に効果的なモリブデン、バナジウム、アンチモン及び他の成分を含む触媒に関する技術は進歩してきたが、市場で生き残るには更なる改良が触媒には必要である。一般に、このような反応に用いられる従来からの触媒系は、所望の生成物の収量が概して低いという問題がある。
より高い収量で有用な生成物を調製できる方法が望まれる。また、反応条件下での安定性の向上、及び/又は、反応装置内での耐温度変化の向上がみられる触媒が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施態様の1つは、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物をアンモ酸化又は酸化させて、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法を提供するものであり、該方法は、モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する未使用の混合金属酸化物触媒と、モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する使用済の混合金属酸化物触媒と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、モリブデン化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤(performance modifier)とを含む、触媒混合物を提供し、該触媒混合物の存在下、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程を有する。特定の実施態様では、触媒混合物が2種以上の性能調節剤化合物を含む。
【0005】
また、本発明は、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物をアンモ酸化させて不飽和ニトリルを生成する方法を含み、該方法は、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤と、未使用の混合金属酸化物触媒と、使用済の混合金属酸化物触媒とを含む触媒混合物を提供する工程であって、該工程中、前記未使用の触媒と使用済の触媒とが、それぞれ独立して式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される工程と、前記飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、前記触媒混合物の存在下でアンモニア及び酸素含有ガスと接触させる工程とを有する。
本発明の実施態様の1つは、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物をアンモ酸化又は酸化させ、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法を提供するものであり、該方法が、モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する混合金属酸化物触媒と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤との物理的混合物を含む触媒混合物を提供し、該触媒混合物の存在下、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程とを有する。
【0006】
また、本発明には、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物をアンモ酸化又は酸化させ、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法が含まれるが、該方法が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む触媒組成物と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤とを混合して触媒混合物を形成する工程と、該触媒混合物の存在下、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程とを有する。
【0007】
本発明の実施態様の1つは、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物をアンモ酸化させ、不飽和ニトリルを生成する方法に関するもので、該方法が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びそれらの混合物から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む触媒組成物と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤とを混合して触媒混合物を形成する工程と、該触媒混合物の存在下、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物を、アンモニア及び酸素含有ガスに接触させる工程とを有する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、飽和又は不飽和炭化水素の(アンモ)酸化方法、及び、該方法に使用できる触媒組成物に関する。この方法は、プロパンからアクリロニトリル及びイソブタンからメタクリロニトリルへのアンモ酸化、及び/又は、プロパンからアクリル酸及びイソブタンからメタクリル酸への変換(酸化反応による)に効果的である。
1つ又はそれ以上の実施態様では、飽和もしくは不飽和炭化水素又は飽和及び不飽和炭化水素の混合物のアンモ酸化を含む方法であって、性能調節剤と未使用の複合酸化物触媒組成物と使用済の複合酸化物触媒組成物とを混合して触媒混合物を形成し、該触媒混合物の存在下で炭化水素をアンモニア及び酸素含有ガスと接触させる工程を有する方法により、不飽和ニトリルを調製する。
本発明は、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物をアンモ酸化又は酸化させて、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法を提供するものであり、該方法は、モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する未使用の混合金属酸化物触媒と、モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する使用済の混合金属酸化物触媒と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤とを含む、触媒混合物を提供し、該触媒混合物の存在下、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程を有する。
【0009】
実施態様として、触媒調節剤は、硝酸アルミニウム、アルミナ、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13、酸化ヒ素(III)、酸化ヒ素(V)、砒酸、酸化ホウ素、ホウ酸、硝酸セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、シュウ酸セリウム(III)水和物、酸化セリウム(IV)、酸化ゲルマニウム(IV)、酸化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、酒石酸リチウム、シュウ酸アンモニウムニオブ、シュウ酸ニオブ 酸化ニオブ、五酸化リン、リン酸アンモニウム、二酸化セレン、酸化タンタル(V)、テルル酸、二酸化テルル、三酸化テルル、ルチル型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)、チタンイソプロポキシド、TiO(シュウ酸塩)、三酸化タングステン、シュウ酸バナジル、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、硝酸ジルコニル、ジルコニア及びこれらの混合物からなる群から選択される。
さらに実施態様の1つとして、未使用と使用済の混合金属酸化物触媒全量におけるモリブデン1モルに対して、少なくとも0.01モルの性能調節剤が触媒混合物に含まれる。本発明の別の実施態様は、未使用の混合金属酸化物触媒と性能調節剤とを湿式含浸により混合する工程を有する。本発明の態様として、未使用の複合酸化物触媒と使用済の複合酸化物触媒のいずれか一方又は両方は、水熱合成ではない方法を用いて調製される。更に、本発明は、未使用の複合酸化物触媒と使用済の複合酸化物触媒と性能調節剤とを物理的に混合する工程を有することもでき、この工程は、未使用の複合酸化物触媒組成物と性能調節剤とを予備混合する工程を更に有する。さらには、本発明は、前記触媒混合物を加熱又は焼成する工程を有することができる。
【0010】
実施態様の1つでは、未使用の触媒組成物が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びそれらの混合物から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む。
実施態様の1つでは、使用済の触媒組成物が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びそれらの混合物から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む。
【0011】
また、本発明は、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物をアンモ酸化又は酸化させて、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法を提供するものであり、該方法は、モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する乾燥混合金属酸化物触媒と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤とを物理的に混合して触媒混合物を形成し、該触媒混合物の存在下、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程を有する。
本発明の性能調節剤は、硝酸アルミニウム、アルミナ、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13、酸化ヒ素(III)、酸化ヒ素(V)、砒酸、酸化ホウ素、ホウ酸、硝酸セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、シュウ酸セリウム(III)水和物、酸化セリウム(IV)、酸化ゲルマニウム(IV)、酸化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、酒石酸リチウム、塩化ネオジム(III)、酸化ネオジム(III)、ネオジム(III)イソプロポキシド、酢酸ネオジム(III)水和物、シュウ酸アンモニウムニオブ、シュウ酸ニオブ 酸化ニオブ、五酸化リン、リン酸アンモニウム、二酸化セレン、酸化タンタル(V)、ルチル型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)、チタンイソプロポキシド、TiO(シュウ酸塩)、三酸化タングステン、シュウ酸バナジル、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、硝酸ジルコニル、ジルコニア及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
実施態様の1つとして、前記混合金属酸化物触媒は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、タングステン、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、リチウム及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含む。混合金属酸化物触媒と性能調節剤のうちの1つ以上は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合物からなる群から選択される担体を有する。また、混合金属酸化物触媒中のモリブデン1モルに対し、少なくともおよそ0.01モルの性能調節剤が触媒混合物に含まれる。本発明の態様の1つとして、物理的混合工程には、焼成した混合金属酸化物触媒と性能調節剤とを混合する工程が含まれる。
実施態様の1つでは、混合金属酸化物触媒が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む。
実施態様の1つとして、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物のアンモ酸化は、その接触工程において、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、触媒混合物の存在下、アンモニア及び酸素含有ガスに接触させる工程を有する。
本発明の態様の1つは、乾燥混合金属酸化物触媒が水熱合成方法以外で調製される。
さらに、本発明の実施態様の1つは物理的混合工程を有し、該工程が、非焼成又は部分焼成した乾燥混合金属酸化物触媒と性能調節剤とを混合して混合物を形成する工程と、更に該混合物を焼成する工程とを有する。
【0013】
性能調節剤
性能調節剤は、触媒を反応器に導入する前に触媒と混合してもよい。1つ以上の実施態様では、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、モリブデン化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物及びジルコニウム化合物からなる群から選択される化合物又は化合物の混合物である。1つ以上の実施態様では、性能調節剤が不活性担体に担持されていてもよく、不活性担体としてはシリカ、チタニア、ジルコニア又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アルミニウム化合物の例としては、硝酸アルミニウム及びアルミナ(Al2O3)が挙げられる。アンチモン化合物の例としては、酸化アンチモン、シュウ酸アンチモン、酒石酸アンチモンが挙げられる。具体例としては、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)及び酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン(Sb2O4)及びSb6O13が挙げられる。ヒ素化合物の例としては、酸化ヒ素(III)、酸化ヒ素(V)及びヒ酸が挙げられる。ホウ素化合物の例としては、酸化ホウ素及びホウ酸が挙げられる。
セリウム化合物の例としては、硝酸セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、シュウ酸セリウム(III)水和物及び酸化セリウム(IV)が挙げられる。ゲルマニウム化合物の例としては、酸化ゲルマニウム(IV)が挙げられる。リチウム化合物の例としては、水酸化リチウム、酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウムが挙げられる。
【0014】
モリブデン化合物の例としては、酸化モリブデン(VI)(MoO3)、七モリブデン酸アンモニウム及びモリブデン酸が挙げられる。ネオジム化合物の例としては、塩化ネオジム(III)、酸化ネオジム(III)、ネオジム(III)イソプロポキシド及び酢酸ネオジム(III)水和物が挙げられる。ニオブ化合物の例としては、シュウ酸アンモニウムニオブ、シュウ酸ニオブ及び酸化ニオブが挙げられる。
リン化合物の例としては、五酸化リン及びリン酸アンモニウムが挙げられる。セレン化合物の例としては、二酸化セレンが挙げられる。タンタル化合物の例としては、酸化タンタル(V)が挙げられる。テルル化合物の例としては、テルル酸、二酸化テルル、三酸化テルルが挙げられる。
チタン化合物の例としては、ルチル型及び/又はアナターゼ型二酸化チタン(TiO2)、チタンイソプロポキシド、TiO(シュウ酸塩)が挙げられる。二酸化チタンは、Degussa P-25、トロノックスA-K-1及びトロノックス8602(以前はA-K-350と称す)として入手可能である。タングステン化合物の例としては、三酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸アンモニウムが挙げられる。バナジウム化合物の例としては、シュウ酸バナジル、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、メタバナジン酸アンモニウム、酸化バナジウム(V)が挙げられる。ジルコニウム化合物の例としては、硝酸ジルコニル及びジルコニア (ZrO2)が挙げられる。
【0015】
1つ以上の実施態様では、二種以上の性能調節剤化合物が用いられる。これらの性能調節剤化合物は同時又は順次に触媒混合物に添加することができる。性能調節剤化合物は予備混合してもよいし、又は、触媒混合物に個々に添加してもよい。
実施態様の1つによると、性能調節剤は、複合酸化物触媒と物理的に混合して触媒性能を向上させる固体である。性能調節剤は、本発明の方法に使用する前に、熱処理或いは例えば、粉砕、篩分け及び/又は加圧等をはじめとした機械的処理を行ってもよい。
別の実施態様においては、複合酸化物触媒組成物を性能調節剤で含浸するのに使用できる溶液又はスラリーの中に、性能調節剤を導入してもよい。
性能調節剤の触媒混合物への添加量は、特に限定されない。実施態様の1つによると、性能調節剤の量は、未使用と使用済の混合金属酸化物触媒全量におけるモリブデン1モルに対する性能調節剤のモル数で表わすことができる。1つ以上の実施態様では、触媒混合物はモリブデン1モルに対して性能調節剤を少なくとも0.01モル含有する。これらの実施態様又は他の実施態様において、未使用と使用済の混合金属酸化物触媒全量におけるモリブデン1モルに対して、およそ1.0モルまでの性能調節剤が触媒混合物に含まれる。実施態様の1つは、モリブデン1モルに対して、約0.01モルから約1.0モルの性能調節剤が触媒混合物に含まれる。別の実施態様では、未使用と使用済の複合酸化物触媒全量におけるモリブデン1モルに対して、約0.011モルから約0.5モル、さらに別の実施態様では約0.012モルから約0.2モルの性能調節剤が触媒混合物に含まれる。
また、性能調節剤はさらにモリブデン化合物を含有する。性能調節剤には、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13、酸化ゲルマニウム(IV)、テルル酸、水酸化リチウム、酸化セリウム(IV)又はこれらの混合物を含んでもよい。
実施態様の1つは、性能調節剤が、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13又はこれらの混合物を含む。 また、性能調節剤がさらにテルル化合物を含んでもよい。
実施態様の1つとして、性能調節剤、未使用の混合金属酸化物触媒及び使用済の混合金属酸化物触媒のうちの1つ以上が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合物からなる群から選択される担体を有する。
【0016】
複合酸化物触媒組成物
本発明のすぐれた方法は、未使用及び使用済の、アンモ酸化及び酸化用複合酸化物触媒組成物の多くに適用される。本願明細書で用いられている未使用の触媒とは、反応器の供給流(feedstream)にまだのせられていない触媒を指す。本願明細書で用いられている使用済の触媒とは、反応器の供給流にのせられている触媒を指す。実施態様によっては、未使用触媒及び使用済の触媒の初期組成が同一である場合と、未使用触媒及び使用済の触媒の初期組成が異なる場合とがある。後述の複合酸化物触媒組成物についての説明及びその調製についての説明は、本発明の未使用触媒及び使用済の触媒組成物の両方にあてはまる。
実施態様の1つとして、複合酸化物触媒組成物はモリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルのいずれか一方又は両方を含む。1つ又はそれより多くの実施態様では、複合酸化物触媒が、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含む。ある実施態様では、触媒混合物が、タングステン、テルル、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい。本願明細書で使用の「〜群から選択される少なくとも1種の元素」又は「〜群から選択される少なくとも1種のランタニド」とは、本願明細書の範囲において、列挙されている元素又はランタン系列元素の2種以上の混合物がそれぞれ含まれる。
【0017】
実施態様の1つは、未使用の複合酸化物触媒と使用済の複合酸化物触媒の一方又は両方が、モリブデン、バナジウム、アンチモン及びニオブを含有し、下記式でそれぞれ定義することができる。
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、
LはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、
0.1 ≦ a ≦ 1.0、
0.01 ≦ b ≦ 1.0、
0.001 ≦ c ≦ 0.25、
0 ≦ d ≦ 0.6、
0 ≦ e ≦ 1であり、
nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数条件を満たすのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす。)
触媒組成物がアンモ酸化に用いられている実施態様の1つ又はそれより多くでは、XがW、Te、Ti、Ge、Sn、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択されとよい。他の実施態様では、XがW、Te、Ti、Sn、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択されとよい。前記式で説明した触媒組成物の他の実施態様では、XはW、Te、Ti、Li又はSnのうちの1つである。前記式で説明した触媒組成物の他の実施態様では、XはWである。
【0018】
触媒組成物がアンモ酸化に用いられている1つ以上の実施態様では、LがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択されるとよい。前記式で説明した触媒組成物の他の実施態様では、LがPr、LがNd、LがSm、LがEu、LがGd、LがTb、LがDy、LがHo、LがEr、LがTm、LがYb及びLがLuである。前記式で説明した触媒組成物の他の実施態様では、LがNd、Ce又はPrのいずれか一つである。
前記式で説明した触媒組成物の他の実施態様では、a、b、c及びdがそれぞれ独立して以下の範囲にある。0.1 ≦ a、0.2 < a、a < 0.3、a < 0.4、a < 0.8、a ≦ 1.0、0.01 ≦ b、0.05 < b、0.1 < b、b < 0.3、b < 0.6、b ≦ 1.0、0.001 ≦ c、0.01 < c、0.02 < c、0.03 < c、0.04 < c、c < 0.05、c < 0.1、c < 0.15、c < 0.2、c ≦ 0.25、0 ≦ d、0.001 < d、0.002 < d、0.003 < d、0.004 < d、d < 0.006、d < 0.01、d < 0.02、d < 0.05、d < 0.1、d ≦ 0.2、0 ≦ e、0.001 < e、e < 0.006、e < 0.01、e < 0.02、e < 0.04、e < 0.1、e ≦ 1。
本発明の触媒は担持触媒であってもなくてもよい(即ち、触媒が担体を有してもよいし、或いはバルク触媒であってもよい)。好適な担体はシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合物である。しかしながら、ジルコニア又はチタニアを担体として使用する場合は、ジルコニウム又はチタンに対するモリブデンの比率は前記式中に示した値よりも大きくなる。たとえば、Mo:Zr又はTiの比はおよそ1:1から1:10である。一般に、担体は触媒のバインダーの役目を果たし、結果的に触媒がより強固で摩耗しにくくなる。業務用には、活性相(即ち、前記の触媒酸化物の複合体)と担体とを適宜合体させることにより、触媒として許容できる活性と硬さ(摩耗耐性)を得るのに役立つ。活性相の量が増えれば、触媒の硬度は減少する。担体は、担持する触媒の10〜90質量%である。多くの場合、担体は担持触媒の40〜60質量%である。本発明の実施態様の1つとして、担持触媒の約10質量%という少量の担体でもよい。本発明の実施態様の1つとして、担持触媒の約30質量%という少量の担体でもよい。本発明の別の実施態様として、担持触媒の約70質量%といった担体でもよい。
【0019】
混合金属酸化物触媒の調製
本発明で使用する触媒の製造方法は重要ではない。水熱合成法や水熱合成法ではない方法等の当該分野で公知のいずれの方法も用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
1つ以上の実施態様として、混合金属酸化物触媒は本願明細書に記載の水熱合成法により調製することができる。水熱合成法は、Gaffney等の米国特許出願2003/0004379、「New Synthesis Route for Mo-V-Nb-Te mixed oxides catalyst for propane ammoxidation(プロパンのアンモ酸化のためのMo-V-Nb-Te系複合酸化物触媒の新規な合成方法)」渡辺等、Applied Catalysis A:General, 194-195、479-485頁(2000)、及び「Selective Oxidation of Light Alkanes over hydrothermally synthesized Mo-V-M-O (M=Al, Ga, Bi, Sb and Te) oxide catalysts(水熱合成されたMo-V-M-O (M=Al, Ga, Bi, Sb及びTe)酸化物触媒での軽質アルカン類の選択的酸化)」上田等、Applied Catalysis A:General, 200、135-145頁に開示されており、これらは引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。
一般に、本願明細書記載の触媒組成物は水熱合成で調製することができ、水熱合成において、ソース化合物(即ち、混合金属酸化物触媒組成物の1種以上の金属を含有及び/又は提供する化合物)を水溶液中で混合して反応媒体を形成し、この反応媒体を密封反応器内で圧力と温度を上げて混合金属酸化物を形成するのに十分な時間反応させる。実施態様の1つは、水熱合成を充分な時間をかけて継続し、反応媒体中に存在する有機化合物、例えば、触媒調製時に使用される溶媒又は添加された有機化合物等と、触媒組成物の混合金属酸化物成分を供給するソース化合物を完全に反応させる。
密封反応器中、100℃より高い温度かつ周囲圧力よりも高い圧力でソース化合物の反応を行う。実施態様の1つとして、ソース化合物の密閉反応器内での反応は、少なくとも約125℃、別の実施態様では少なくとも約150℃、さらに別の実施態様では少なくとも約175℃の温度で行う。実施態様の1つによると、ソース化合物の密閉反応器内での反応は、少なくとも約25psig、別の実施態様では少なくとも約50psig、更に別の実施態様では少なくとも約100psigの圧力で行う。1つ以上の実施態様では約300psigまでの圧力下でソース化合物を密閉反応器内で反応させる。反応器に過度の圧力がかからないようにするため、及び/又は、反応圧力を調整するために、密閉反応器に圧力制御装置を取り付けてもよい。
【0020】
反応工程中にソース化合物を混合することを含むプロトコルによって、ソース化合物の反応を行ってもよい。詳細な混合メカニズムは特に重要ではなく、例えば、いずれかの効果的な方法で反応の最中に成分を混合すること(例えば撹拌する)が挙げられる。このような方法の例としては、反応成分を収容する反応器を振とう、混転、振動させることにより、反応器の内容物を撹拌することが挙げられる。また、少なくとも一部が反応器内に位置する撹拌部材と、撹拌部材と反応器との間に相対的な運動を付与するための、撹拌部材又は反応器に連結した駆動力とを用いて撹拌することが例として挙げられる。撹拌部材は、軸駆動型及び/又は軸支持型の撹拌部材が挙げられる。駆動力は直接撹拌部材に連結されていても、間接的に連結(例えば、磁気結合を介して)されていてもよい。通常、混合が充分であると、反応媒体の成分間での効率的な反応が見込まれ、混合を行わない反応と比べると、より均一な反応媒体(結果的にはより均一な混合金属酸化物前駆体)が形成される。その結果、出発物質がより効率的に消費され、生成物の混合金属酸化物はより均一になる。また、反応工程中に反応媒体を混合することにより、生成物である混合金属酸化物を反応容器の側面上ではなく、溶液状で形成することができる。このことにより、遠心分離、デカンテーション又は濾過などで生成された混合金属酸化物をより簡単に回収、分離することができ、反応容器の側面から生成物の大部分を回収する必要がなくなる。更に有利なことは、反応器の壁面から粒子成長が起こる場合には粒子の露出面の成長に限定されるが、混合金属酸化物を溶液状に形成することで、粒子のすべての面での粒子成長が見込まれる。
【0021】
通常、反応容器中の上部空き高を確保することが望ましい。上部空き高の量は、容器のデザイン、又は、反応混合物を撹拌する場合は使用する撹拌方法次第で決めることができる。例えば、オーバーヘッド撹拌方式による反応容器は50%の上部空き高を確保するとよい。一般に、上部空き高は周囲空気で満たされているので、相当量の酸素が反応系に供給される。或いは、公知であるが、反応物に供給するO2等の他の気体又はArもしくはN2等の不活性ガスで上部空き高を満たすこともできる。上部空き高の量やそこにおさまる気体は、当該分野で公知であるように、所望の反応によって決められる。
密閉された反応器内でのソース化合物の反応は、初期pH値をおよそ4以下で行うことができる。水熱合成の過程で反応混合物のpHは変化し、反応混合物の最終pH値が初期pH値より高くなる場合、低くなる場合がある。1つ以上の実施態様によると、およそpH3.5以下で密閉した反応容器内でソース化合物を反応させる。pH値およそ3.0以下、およそ2.5以下、およそ2.0以下、およそ1.5以下、およそ1.0以下、およそ0.5以下、又は、およそ0以下にして密閉反応容器内で成分を反応させることもできる。1つ以上の実施態様ではpH値は約0.5〜約4、他の実施態様では約0〜約4、さらに別の実施態様では約0.5〜約3.5である。実施態様によっては、pH値は約0.7〜約3.3、さらには約1〜約3である。このpH値は、反応混合物に酸又は塩基を加えて調整することができる。
【0022】
ソース化合物は、密閉反応容器内で前記の反応条件(例えば反応温度、反応圧力、pH値、撹拌等をはじめとして前述のとおり)のもと、混合金属酸化物を形成するのに十分な時間をかけて反応させる。1つ以上の実施態様によると、こうして形成された混合金属酸化物は、前述のような必要な元素を含む固溶体を含有し、少なくともその一部には、プロパン又はイソブタンの有効かつ選択的酸化及び/又はアンモ酸化触媒に必要とされる結晶構造が含まれる。厳密な反応時間は狭く限定されず、例えば、少なくとも約3時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約30時間、少なくとも約36時間、少なくとも約42時間、少なくとも約48時間、少なくとも約54時間、少なくとも約60時間、少なくとも約66時間、少なくとも約72時間が挙げられる。反応時間は3日より長いこともあり、例えば、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、又は少なくとも約1カ月ということもある。
触媒の合成に使用される金属成分を含有及び供給するソース化合物(本願明細書中、「ソース」と呼ぶこともある)は、金属塩の水溶液として反応容器に準備してもよい。ソース化合物によっては、固体として、又は、水性媒体中に分散した固体粒子を含有するスラリーとして反応容器に準備してもよい。固体として、又は非水性溶媒もしくは他の非水性媒体中に分散した固体粒子を含有するスラリーとして反応容器に準備することができるソース化合物もある。
本願明細書に記載の触媒を合成するためのソース化合物の例としては、以下のものが挙げられる。リチウムソース化合物としては、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、硝酸リチウム等が挙げられる。バナジウムソース化合物の例としては、硫酸バナジル、メタバナジン酸アンモニウム、酸化バナジウム(V)等が挙げられる。アンチモンソ−ス化合物の例としては、酸化アンチモン(III)、酢酸アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、硫酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)等が挙げられる。ニオブソース化合物の例としては、シュウ酸ニオブ、シュウ酸アンモニウムニオブ、酸化ニオブ、ニオブエトキシド、ニオブ酸等が挙げられる。
【0023】
タングステンソースとしては、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸、三酸化タングステン等が挙げられる。テルルソースの例としては、テルル酸、二酸化テルル、三酸化テルル、メチルテルロール及びジメチルテルロール等の有機テルル化合物等が挙げられる。
チタンソースとしては、ルチル型及び/又はアナターゼ型二酸化チタン(TiO2)、チタンイソプロポキシド、TiO(シュウ酸塩)、TiO(アセチルアセトン酸塩)2、及び、Tyzor 131等のチタンアルコキシド錯体等が挙げられる。二酸化チタンは、Degussa P-25, トロノックスA-K-1及びトロノックス8602(以前はA-K-350と称す)として入手可能である。スズのソース化合物としては、酢酸スズ(II)等が挙げられる。ゲルマニウムのソース化合物としては、酸化ゲルマニウム(IV)等が挙げられる。ジルコニウムのソースとしては、硝酸ジルコニル及び酸化ジルコニウム(IV)が挙げられる。ハフニウムのソースは、塩化ハフニウム(IV)、酸化ハフニウム(IV)等が挙げられる。
【0024】
ランタンソースとしては、塩化ランタン(III)、酸化ランタン(III)、酢酸ランタン(III )水和物等が挙げられる。セリウムソースとしては、塩化セリウム(III)、酸化セリウム(III)、セリウム(III)イソプロポキシド、酢酸セリウム(III)水和物が挙げられる。プラセオジムソースとしては、塩化プラセオジム(III)、酸化プラセオジム(III、IV)、プラセオジム(III)イソプロポキシド、酢酸プラセオジム(III)水和物等が挙げられる。ネオジウムソースとしては、塩化ネオジウム(III)、酸化ネオジウム(III)、ネオジウム(III)イソプロポキシド、酢酸ネオジウム(III)水和物等が挙げられる。サマリウムソースとしては、塩化サマリウム(III)、酸化サマリウム(III)、サマリウム(III)イソプロポキシド、酢酸サマリウム(III)水和物等が挙げられる。ユーロピウムソースとしては、塩化ユーロピウム(III)、酸化ユーロピウム(III)、酢酸ユーロピウム(III)水和物等が挙げられる。ガドリニウムソースとしては、塩化ガドリニウム(III)、酸化ガドリニウム(III)、酢酸ガドリニウム(III)水和物等が挙げられる。テルビウムソースとしては、塩化テルビウム(III)、酸化テルビウム(III)、酢酸テルビウム(III)水和物等が挙げられる。ジスプロシウムソースとしては、塩化ジスプロシウム(III)、酸化ジスプロシウム(III)、ジスプロシウム(III)イソプロポキシド、酢酸ジスプロシウム(III)水和物等が挙げられる。ホルミウムソースとしては、塩化ホルミウム(III)、酸化ホルミウム(III)、酢酸ホルミウム(III)水和物等が挙げられる。エルビウムソースとしては、塩化エルビウム(III)、酸化エルビウム(III)、エルビウム(III)イソプロポキシド、酢酸エルビウム(III)水和物等が挙げられる。ツリウムソースとしては、塩化ツリウム(III)、酸化ツリウム(III)、酢酸ツリウム(III)水和物等が挙げられる。イッテルビウムのソースとしては、塩化イッテルビウム(III)、酸化イッテルビウム(III)、イッテルビウム(III)イソプロポキシド、酢酸イッテルビウム(III)水和物等が挙げられる。ルテチウムのソースとしては、塩化ルテチウム(III)、酸化ルテチウム(III)、酢酸ルテチウム(III)水和物等が挙げられる。上記に挙げた金属の硝酸塩もソース化合物として使用することができる。
【0025】
反応媒体中の水性溶媒の量は、個々の混合金属酸化物を形成するために混合したソース化合物の溶解性によって異なる。水性溶媒の量は、少なくとも反応物のスラリー(固体と液体の混合物で撹拌可能)とするのに十分な量でなければならない。一般に、混合金属酸化物の水熱合成は、反応容器の上部空き高を残しておく。
反応工程に引き続き、触媒調製方法の更なる工程としてワークアップ(work-up)工程を有してもよく、例えば、混合金属酸化物を含む反応媒体を冷却する工程(例えば、およそ周囲温度まで冷却)、混合金属酸化物を含む固体粒子状物質を液体から分離させる工程(例えば、遠心分離及び/又は上澄み液のデカンテーション或いは濾過による)、分離した固体粒子状物質を洗浄する工程(例えば、蒸留水又は脱イオン水を使用)、前記分離工程や洗浄工程をさらに1回以上繰り返す工程、最終分離工程を実行する工程等が挙げられる。実施態様の1つによると、ワークアップ工程には、回転式蒸発、スプレー乾燥、凍結乾燥、又は液体を除去する同様な方法などで反応媒体を乾燥する工程が含まれる。
ワークアップ工程終了後、洗浄及び分離した混合金属酸化物を乾燥させてもよい。混合金属酸化物の乾燥は、周囲条件下(例えば、温度約25℃、大気圧)及び/又はオーブン内で例えば約40〜約150℃の範囲の温度で、別の実施態様では約120℃で、約5〜約15時間の乾燥時間で、また、実施態様によっては約12時間の乾燥時間で行うことができる。乾燥は雰囲気を調整して行うことも、調整せずに行うこともでき、乾燥雰囲気は不活性ガス、酸化ガス、還元ガス又は空気であってもよい。
【0026】
実施態様の1つ以上で、混合金属酸化物触媒を本願明細書記載の水熱合成方法以外で調製することができる。水熱合成以外の方法も、駒田悟及び庄司定雄の米国特許出願2006/0235238、加藤高明及び福島聡史のWO2006/019078に開示されており、これらは引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。
水熱合成以外の方法の1つは、一般に以下の通りである。モリブデンソース化合物、バナジウムソース化合物、アンチモンソース化合物、任意で他のソース化合物、過酸化水素、シリカゾル等の担体ゾルを加熱撹拌しながら混合して第1の水溶液/スラリーを調製する。ニオブソース化合物、任意のジカルボン酸、任意の他のソース化合物を加熱撹拌しながら混合して第2の水溶液/スラリーを調製する。第1及び第2の水溶液/スラリーを混合して、第3の水溶液/スラリーを形成する。析出物及び/又は沈殿した固体を取り除き、水性混合物を乾燥して乾燥混合金属酸化物触媒を形成する。様々なワークアップ工程ならびに様々な乾燥及び/又は焼成方法を用いることができる。
実施態様の1つによると、水熱合成以外の方法の1つはさらに具体的には以下の通りであり、第1の水溶液/スラリーを(A)とし、第2の水溶液/スラリーを(B)とする。七モリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化二アンチモンを水に添加し、この混合物を少なくとも50℃に加熱し、水性混合物(A)を得る。混合物を撹拌しながら加熱することが好ましい。約70℃から水性混合物の通常の沸点の範囲の温度に水性混合物を加熱することが好ましい。還流凝縮器を有した装置を使って還流下で加熱を行うとよい。還流下で加熱する場合、この沸点は通常約101〜102℃である。加熱した温度を約0.5時間以上保つ。加熱温度が約80〜約100℃の場合、加熱時間は通常約1〜約5時間である。加熱温度が比較的低い場合(例えば、約50℃より低い)、さらに長い加熱時間が必要である。
【0027】
任意であるが、過酸化水素及び/又は担体物質のゾル(シリカゾル等)を前記加熱後に水性混合物(A)に添加してもよい。過酸化水素を水性混合物(A)に添加する場合、過酸化水素:アンチモンとして表わされるアンチモン化合物のモル比(H2O2/Sbモル比)が約0.01〜約20、さらに別の実施態様では約0.5〜約3、また別の実施態様では約1〜約2.5となるような過酸化水素の量とするとよい。過酸化水素添加後、水性混合物(A)は約30〜約70℃で約30分〜約2時間撹拌するとよい。
1つ以上の実施態様では、水溶液/スラリー(B)の調製は、水とニオブソース化合物、任意のジカルボン酸及び/又は他のソース化合物を加熱撹拌しながら混合することによるもので、これにより、予備的ニオブ含有水溶液又はニオブ化合物の一部が懸濁したニオブ含有水性混合物が得られる。その後、この予備的ニオブ含有水溶液又はニオブ含有水性混合物を冷却するが、ジカルボン酸が添加されている場合は、その一部が析出することがある。析出したジカルボン酸を予備的ニオブ含有水溶液から取り除いた後、又は、析出したジカルボン酸と懸濁しているニオブ化合物とをニオブ含有水性混合物から取り除いた後に冷却工程を行うとよい。これにより、ニオブ含有水性液体(B)が得られる。
ある実施態様では、ニオブ化合物(例えばニオブ酸)を水に加え、得られた混合物を約50〜約100℃の範囲の温度に加熱することによって水性液体(B)が得られる。ニオブ酸がニオブソース化合物の場合、ジカルボン酸も添加するとよい。少量のアンモニア水の添加でニオブ化合物の溶解を促進することができる。
【0028】
好適なジカルボン酸の例としてはシュウ酸が挙げられる。実施態様の1つでは、ニオブ酸とシュウ酸とを水に加え、得られた混合物を加熱撹拌して水性液体(B)を得る。一般に、ジカルボン酸:ニオブで表わされるニオブ化合物のモル比は、約1〜約4、実施態様によっては約2〜約4の範囲である。
他の実施態様によると、ニオブソース化合物として、シュウ酸水素ニオブ又はシュウ酸アンモニウムニオブが挙げられる。シュウ酸水素ニオブ又はシュウ酸アンモニウムニオブのいずれかをニオブ化合物として使用する場合は、ジカルボン酸は不要である。
一般に、ニオブソース化合物は、固体又は混合物又は適当な媒体による分散体の形態で添加することができる。ニオブ酸をニオブ化合物として使用する場合、製造中にニオブ酸を汚染する可能性がある酸性不純物を除去する目的で、使用前にニオブ酸をアンモニア水溶液及び/又は水で洗浄するとよい。ニオブ化合物としては、新たに調製したニオブ化合物を使うことが好ましい。しかしながら、長期保存等によりわずかに変性した(例えば脱水などによる)ニオブ化合物の使用も可能である。
予備的ニオブ含有水溶液又は水性混合物におけるニオブ化合物(ニオブとして表わされる)の濃度は、1つ以上の実施態様において、溶液又は混合物1kgに対して約0.2〜約0.8mol/kgが維持される。1つ以上の実施態様において、ジカルボン酸は、ジカルボン酸:ニオブで表わされるニオブ化合物のモル比が約2〜約6となる量で使用する。ジカルボン酸過剰で使用すると、多量のニオブ化合物をジカルボン酸水溶液に溶解させることができるが、得られた予備的ニオブ含有水溶液又は混合物を冷却すると析出するジカルボン酸の量が多くなりすぎることがあり、ジカルボン酸の利用率が低下する。一方、ジカルボン酸の使用量が足りないと、多量のニオブ化合物が水溶液又は混合物中で溶解されずに懸濁したまま残留し、引き続き水性混合物から取り除くことになる場合があり、ニオブ化合物の使用率の低下を招く。
【0029】
冷却はいずれの好適な方法を使用してもよい。例えば、単に氷浴で冷却することもできる。
析出したジカルボン酸(又は析出したジカルボン酸及び分散したニオブ化合物)は、例えば、デカンテーション又は濾過等の従来の方法によって容易に除去できる。
得られたニオブ含有水溶液のジカルボン酸:ニオブのモル比が約2〜約6の範囲にない場合、ニオブ化合物又はジカルボン酸のいずれかを水性液体(B)に添加して溶液のジカルボン酸:ニオブモル比が上記の範囲内におさまるようにする。しかしながら、通常、ニオブ化合物の濃度、ジカルボン酸:ニオブ化合物の比、上記の予備的ニオブ含有水溶液又は水性混合物の冷却温度を適切に調整することにより、ジカルボン酸:ニオブのモル比が約2〜約4の範囲にある水性液体(B)を調製することができるので、前記のような処理は不要である。
水性液体(B)はさらに追加成分を含んでもよい。1つ以上の実施態様において、水性液体(B)はさらに過酸化水素(H2O2))を含んでもよい。これらの実施態様又はこれ以外の実施態様で、水性液体(B)は、1種以上のアンチモン化合物(例えば、三酸化二アンチモン)、チタン化合物(例えば、二酸化チタン(ルチル型とアナターゼ型との混合物でもよい)、セリウム化合物(例えば、酢酸セリウム)をさらに含んでいてもよい。1つの実施態様によると、過酸化水素の量は、過酸化水素:ニオブとして表わされるニオブ化合物のモル比(H2O2/Nb)が約0.5〜約20、別の実施態様では約1〜約20となるような量である。特定の実施態様では、アンチモンで表わされるアンチモン化合物:ニオブで表わされるニオブ化合物のモル比(Sb/Nbモル比)が約5より大きくならないように、ある実施態様では、約0.01〜約2となるように、アンチモン化合物を少なくとも一部の水性液体(B)と過酸化水素と混合する。
【0030】
水性混合物(A)と水性液体(B)とを適当な比率で一緒に混合し、水溶液/スラリーを形成する。比(a):(b)は触媒の所望の組成による。水性混合物中の固形物の量は通常、約10質量%より上である。実施態様の1つでは、混合物の全質量を基準にすると、水性混合物中の固形物の量が約10〜60質量%、別の実施態様では約15〜55質量%、さらに別の実施態様によると、混合物中の固形物の量は約20〜約50質量%である。
1つ以上の実施態様において、シリカ担持触媒を所望の場合、水溶液/スラリーにシリカのソース化合物(即ち、シリカゾル又はヒュームドシリカ)が含まれるように調製する。シリカのソース化合物の量は、得られる触媒におけるシリカ担体の所望の量に応じて適宜調整すればよい。
水溶液/スラリーを乾燥して液体部分の除去ができる。乾燥は、噴霧乾燥又は蒸発乾燥などの従来からの方法により行うことができる。微細な球形の乾燥固形物が得られることから、噴霧乾燥は特に有用である。噴霧乾燥は遠心分離により行うことができる。
水溶液/スラリーを乾燥して液体部分を除去することができる。乾燥は、噴霧乾燥又は蒸発乾燥などの従来からの方法により行うことができる。微細な球形の乾燥固形物が得られることから、噴霧乾燥は特に有用である。噴霧乾燥は遠心分離、二相流ノズル法又は高圧ノズル法により行うことができる。乾燥の熱源としては、蒸気で加熱しておいた空気、電気ヒーター等の使用が好ましい。噴霧乾燥器の乾燥部入り口における温度が約150〜約300℃であると好適である。
【0031】
水熱方法で形成したか否かにかかわらず、この時点で乾燥したものを乾燥混合金属酸化物触媒と呼ぶ。「乾燥している」及び「乾燥した」という用語は、幾分かの水分が残っていてもよいが、ほとんどの液体分が取り除かれた固形物の状態を説明するものと解釈される。そのため、特に記載のない限り、「乾燥している」及び「乾燥した」という用語は、実質的に乾燥していると解釈される。本明細書の目的では、「乾燥混合金属酸化物触媒」という用語は、乾燥混合金属酸化物触媒に後述の焼成や粉砕をはじめとする任意の更なる処理が施されるあいだも、この物質を指し続けるものである。さらに、「乾燥混合金属酸化物触媒」という用語は、反応器内で用いられた触媒を指すことになる。そこで、乾燥混合金属酸化物触媒は、焼成してもしなくてもよく、粉砕、粗砕、ペレット成形、押出を行ってもよく、或いは、成形、造形を行ってもよく、未使用の触媒であっても使用済の触媒であってもよい。
本願明細書で既に記載したように、乾燥混合金属酸化物触媒をさらに処理してもよい。このような処理として、例えば、様々な処理雰囲気のもとで行う焼成(酸化条件又は還元条件下で加熱処理することをはじめとする)が挙げられる。このような処理の前、及び/又は、このような処理の最中に断続的に乾燥混合金属酸化物を粗砕又は粉砕してもよい。実施態様の1つによると、例えば乾燥混合金属酸化物を粗砕した後に焼成してもよい。
焼成は、不活性雰囲気、還元雰囲気又は酸化雰囲気中で行うことができる。実施態様の1つとして、焼成の少なくとも一部を実質的に酸素を含まない窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中(例えば不活性ガス流の下で)で行う。1つ以上の実施態様において、焼成条件としては、温度約200〜約700℃、他の実施態様では約400〜約650℃が挙げられる。
【0032】
1つ以上の実施態様では、乾燥混合金属酸化物触媒の加熱温度を約400℃未満から約550℃、約550℃から約700℃に連続的又は断続的に上昇させる。ある実施態様においては、多段焼成を用いてもよい。この実施態様では、乾燥混合金属酸化物触媒を少なくとも約200℃という比較的低い温度で部分焼成した後、より高い温度(少なくとも約400℃)に前記範囲内で1回以上上昇させて焼成を行ってもよい。
処理済み(例えば焼成済み)の混合金属酸化物は、さらに機械的な処理を行ってもよく、例えば、粉砕、篩分け、加圧により混合金属酸化物を本発明の方法で使用するための最終形態にしてもよい。
他の実施態様では、焼成又は他の熱処理の前に触媒を最終形態に形成してもよい。例えば、固定床触媒の調製においては、一般に触媒前駆体スラリーを高温で加熱して乾燥を行ってから、所望の固定床触媒のサイズと形状に形成(例えば、押出、ペレット成形等)し、その後焼成を行う。同様に、流動床触媒の調製においては、触媒前駆体スラリーを噴霧乾燥して粒径が約10〜約200マイクロメートルの微小回転楕円体の触媒粒子とした後、焼成を行う。前記方法における変形はこの分野の当業者であればわかるであろう。
焼成は、回転炉、流動床窯等を使って行うことができる。1つ以上の実施態様によると、非静止状態で焼成することにより、不均一な焼成(得られた触媒の物性の劣化及び/又は破損又は割れを誘発)が起きないようにする。
焼成の条件は、形成された触媒の比表面積が約5〜約35m2/gとなるようにあらかじめ設定する。得られた触媒が1つ以上の結晶相を有するように焼成の条件をあらかじめ設定することが好ましい。
【0033】
物理的混合物の形成方法
触媒混合物は、未使用の触媒組成物と使用済の触媒組成物と性能調節剤とを、物理的混合、湿式含浸又はこれらの技術を組み合わせて混合することにより調製される。1種以上の成分を予備混合してもよい。添加の順番は重要ではない。ある実施態様では、性能調節剤と未使用の触媒とを予備混合しておき、その後、使用済の触媒と混合する。未使用の触媒組成物の調製工程の様々な段階で、性能調節剤を添加してもよい。しかしながら、ある実施態様によると、未使用触媒組成物の最終形態に性能調節剤を添加した場合に性能の向上がみられる。
実施態様の1つによると、性能調節剤と使用済の触媒とを予備混合した後、未使用の触媒と混合してもよい。実施態様の1つによると、性能調節剤は固体で、性能調節剤と触媒組成物とを混合する前に、性能調節剤を微粉化しておいてもよい。別の実施態様では、性能調節剤の粒径はより粗く、触媒の粒径程度である。
1つ以上の実施態様では、使用済の触媒組成物と未使用の触媒組成物のいずれか一方又は両方に、湿式含浸法で性能調節剤を添加してもよい。ある実施態様では、性能調節剤と未使用の複合酸化物触媒と使用されている複合酸化物触媒との物理的混合物に熱処理又は焼成を施してもよい。
ある実施態様によると、2種以上の性能調節剤化合物を使用する場合、性能調節剤化合物は触媒混合物に別々に添加するか、或いは、予備混合をして調節剤混合物を形成してもよい。この調節剤混合物を、物理的混合又は含浸によって複合酸化物触媒組成物と混合してもよい。
【0034】
アンモ酸化反応及び酸化反応によるプロパン及びイソブタンの変換
本発明は、プロパンをアクリロニトリルに変換する方法及びイソブタンをメタクリロニトリルに変換する方法を提供する。当該方法は、本願明細書前記に記載のように性能調節剤と未使用の複合酸化物触媒組成物と使用済の複合酸化物触媒組成物との混合物を調製する工程と、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルの形成に効果的な反応条件のもと、触媒混合物をプロパン又はイソブタンと酸素の存在下(例えば、代表例として空気のような酸素含有ガスを含む供給流の反応ゾーンに送り込む)及びアンモニアの存在下で接触させる工程が含まれる。この反応には、プロパン又はイソブタン、空気などの酸素含有ガス、及びアンモニアが供給流に含まれる。1つ以上の実施態様において、プロパン又はイソブタン:酸素のモル比は約0.125〜約5、別の実施態様では約0.25〜約4.5、さらに別の実施態様では約0.35〜約4である。1つ以上の実施態様によると、プロパン又はイソブタン:アンモニアのモル比は、約0.3〜約4、別の実施態様では約0.5〜約3である。供給流には、アクリロニトリル又はメタクリロニトリル生成物(例えば、再循環ストリームから、又は多段反応器の前段から)及び/又は蒸気をはじめとする1種以上の追加の供給成分を含むことができる。例えば、供給流全体量に対して質量比で約5〜約30%、或いは、供給流中のプロパン又はイソブタンの量に対するモル比で約5〜約30%の追加の供給成分を供給流に含有してもよい。実施態様の1つによると、本願記載のプロパンからアクリロニトリルへのアンモ酸化方法は、回収後の未反応供給材料の再利用をしないで操作するワンス-スルー(once-through)方法である。
【0035】
また、プロパンからアクリル酸及びイソブタンからメタクリル酸への変換も、気相流反応器(gas-phase flow reactor)に前記触媒1種以上を提供し、アクリル酸の形成に効果的な反応条件のもと、酸素の存在下(例えば、代表例として空気のような酸素含有ガスを含む供給流の反応ゾーンに送り込む)、触媒をプロパンと接触させることにより行う。この反応のための供給流には、好ましくは、プロパン又はイソブタン:酸素が約0.15〜約5、さらに好ましくは約0.25〜約2で含まれるとよい。さらに供給流は、アクリル酸又はメタクリル酸生成物(例えば、再循環ストリームから、又は多段反応器の前段から)及び/又は蒸気をはじめとする1種以上の追加の供給成分を含むことができる。例えば、供給流全体量に対して質量比で約5〜約30%、或いは、供給流中のプロパン又はイソブタンの量に対するモル比で約5〜約30%の追加の供給成分を供給流に含有してもよい。
気相流反応器の具体的な設計は限定されない。すなわち、気相流反応器は固定床反応器でも流動床反応器でも、それとは別のタイプの反応器でもよい。反応器は単一の反応容器でもよいし、或いは、多段反応系の反応容器でもよい。1つ以上の実施態様において、反応器には反応体供給流を反応容器の反応ゾーンに供給するための1個以上の供給入口と、触媒混合物を有する反応ゾーンと、反応生成物と未反応であった反応体を排出するための出口とを有する。
【0036】
反応条件については、プロパンからアクリロニトリル又はアクリル酸への変換、或いは、イソブタンからメタクリロニトリル又はメタクリル酸へのそれぞれの変換に、或いは、イソブタンからメタクリロニトリルへの変換に有効となるように調整すればよい。一般に、反応条件としては、温度約300〜約550℃、実施態様によっては約325〜約500℃、別の実施態様では約350〜約450℃、さらに別の実施態様では約430〜約520℃である。反応ゾーンの圧力は、約0〜約200psig、実施態様によっては約0〜約100psig、さらに別の実施態様では約0〜約50psigの範囲に調整すればよい。
通常、気相流反応器の反応ゾーンを通過するプロパン又はイソブテン含有供給流の流量は、例えば、1時間当たりの触媒のグラム重量に対するプロパン又はイソブタンのグラム重量として表わす場合、約0.02〜約5、ある実施態様では約0.05〜約1、他の実施態様では約0.1〜約0.5の範囲となる重量空間速度(WHSV)に調整するとよい。
得られたアクリロニトリル及び/又はアクリル酸、或いは、メタクリロニトリル及び/又はメタクリル酸生成物は、所望であれば他の副生物及び/又は未反応物からこの分野で公知の方法により単離することができる。アンモ酸化における副生物としては、COx(二酸化炭素+一酸化炭素)、シアン化水素(HCN)及びアセトニトリル又はシアン化メチル(CH3CN)が挙げられる。また、反応装置の流出液には、未反応酸素(O2)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)、ヘリウム(He)及び連行触媒粒子が含まれる。
【0037】
具体的な実施態様
本発明を説明する目的で、様々な触媒混合物サンプルを調製した後、同様な反応条件のもとで評価を行った。下記に挙げた組成は、触媒混合物の調製において添加したすべての金属を基にした表示組成である。金属によっては触媒調製中に失われてしまったり完全に反応しないものもあるので、最終的に出来上がった触媒混合物の実際の組成は下記に示す表示組成とわずかに異なることもある。
本願明細書に記載した方法により、未使用触媒を最終的な形態に調製した。未使用触媒の一部を使用済の触媒と触媒調節剤と合わせて、機械的混合器を用いて乾燥状態で混合した。
直径1インチ(2.54cm)の容量40ccの流動床反応器で、触媒の評価を行った。反応器に
約20〜約45gの粒状触媒又は触媒混合物を装填した。約0.04〜約0.15WWH(即ち、プロパン質量/触媒質量/時)の流量でプロパンを反応器に送りこんだ。アンモニア:プロパンの比が約1〜約1.5となるような流量でアンモニアを反応器に供給した。反応器内の圧力は約2〜約15psigに保った。反応温度は約420〜約460℃の範囲とした。
比較例1:表示組成がMoV0.21Sb0.24Nb0.09Oxで、シリカ担体を45質量%含む触媒を調製した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1−1:比較例1の使用済み触媒と、表示組成MoV0.21Sb0.24Nb0.09Oxの未使用触媒とを2/3:1/3の割合で混合し、さらに基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対してアンチモン(Sb)が0.1モルとなるようにSb2O3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2:比較例1と同じ表示組成の触媒を調製した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2−1:比較例2の使用済の触媒と、表示組成MoV0.21Sb0.24Nb0.09Oxの未使用触媒とを2/3:1/3の割合で混合し、さらに基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対してモリブデン(Mo)が0.02モルとなるようにMoO3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2−2:実施例2−1の使用済の触媒と、表示組成MoV0.21Sb0.24Nb0.09Oxの未使用触媒とを2/3:1/3の割合で混合し、さらに基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対してSbが0.1モルとなるようにSb2O3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
比較例3:表示組成がMoV0.21Sb0.24Nb0.09Oxで、シリカ担体を45質量%含む触媒を調製した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−1:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.05モルのSb2O3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−2:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.1モルのSb2O3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−3:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.2モルのSb2O3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−4:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.02モルのTiO2を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−5:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.02モルのH6TeO6を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−6:比較例3の触媒と、モリブデン1モルに対して0.1モルのSb2O3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。長時間にわたる製造時間の後の触媒性能を表2にまとめた。
実施例3−7:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.05モルのH3BO3を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−8:比較例3の触媒と、モリブデン1モルに対して0.1モルのSb2O4を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−9:比較例3の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.05モルの(NH4)2HPO4を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3−10:比較例3の触媒と、モリブデン1モルに対して0.04モルのLiOHを混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
比較例4:表示組成がMoV0.3Sb0.2Nb0.08Ti0.1Ce0.005Oxで、シリカ担体を45質量%含む触媒を調製した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例4−1:比較例4の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.025モルのGeO2を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例4−2:比較例4の触媒と、基本となる触媒組成物中のモリブデン1モルに対して0.025モルのCeO2を混合した。容量40ccの流動床反応器で触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
上記の説明と実施態様は本発明を実践するための代表的なものであるが、この分野の当業者が本明細書を鑑みれば、様々な代替え、変更、変形は明らかであろう。したがって、こうした代替え、変更、変形は、添付の請求の範囲に包含、該当することを意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物をアンモ酸化又は酸化させて、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法であって、
前記方法は、
モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する未使用の混合金属酸化物触媒と、
モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する使用済の混合金属酸化物触媒と、
アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、テルル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤とを含む触媒混合物を提供する工程と、
前記触媒混合物の存在下、前記飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程とを有する方法。
【請求項2】
前記触媒調節剤が、硝酸アルミニウム、アルミナ、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13、酸化ヒ素(III)、酸化ヒ素(V)、砒酸、酸化ホウ素、ホウ酸、硝酸セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、シュウ酸セリウム(III)水和物、酸化セリウム(IV)、酸化ゲルマニウム(IV)、酸化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、酒石酸リチウム、シュウ酸アンモニウムニオブ、シュウ酸ニオブ、酸化ニオブ、五酸化リン、リン酸アンモニウム、二酸化セレン、酸化タンタル(V)、テルル酸、二酸化テルル、三酸化テルル、ルチル型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)、チタンイソプロポキシド、TiO(シュウ酸塩)、三酸化タングステン、シュウ酸バナジル、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、硝酸ジルコニル、ジルコニア及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記性能調節剤、前記未使用の混合金属酸化物触媒及び前記使用済の混合金属酸化物触媒のうちの1つ以上が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合物からなる群から選択される担体を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記触媒混合物が、前記未使用混合金属酸化物触媒と前記使用済の混合金属酸化物触媒の全量におけるモリブデン1モルに対して、少なくとも0.01モルの前記性能調節剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記性能調節剤が更にモリブデン化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記未使用の混合金属酸化物触媒及び前記使用済の混合金属酸化物触媒のどちらか一方又は両方が、水熱合成以外の方法で調製されている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記未使用の触媒組成物が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記使用済の触媒組成物が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記性能調節剤が、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13、酸化ゲルマニウム(IV)、テルル酸、水酸化リチウム又は酸化セリウム(IV)或いはこれらの混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記提供する工程が、前記未使用の複合酸化物触媒と、前記使用済の複合酸化物触媒と、前記性能調節剤とを物理的に混合する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記提供する工程が、前記未使用の複合酸化物触媒と前記性能調節剤とを予備混合する工程を更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記提供する工程が、未使用の複合酸化物触媒と性能調節剤とを湿式含浸により混合する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記提供する工程が、前記触媒混合物を加熱又は焼成する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物をアンモ酸化又は酸化させて、不飽和ニトリル又は不飽和有機酸を生成する方法であって、前記方法は、
モリブデンとバナジウムとニオブと、アンチモン及びテルルからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含有する乾燥混合金属酸化物触媒と、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、ホウ素化合物、セリウム化合物、ゲルマニウム化合物、リチウム化合物、ネオジム化合物、ニオブ化合物、リン化合物、セレン化合物、タンタル化合物、チタン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される性能調節剤とを物理的に混合して触媒混合物を形成する工程と、
前記触媒混合物の存在下、前記飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、酸素含有ガス又は酸素含有ガス及びアンモニアに接触させる工程を有する方法。
【請求項15】
前記性能調節剤が、硝酸アルミニウム、アルミナ、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13、酸化ヒ素(III)、酸化ヒ素(V)、砒酸、酸化ホウ素、ホウ酸、硝酸セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、シュウ酸セリウム(III)水和物、酸化セリウム(IV)、酸化ゲルマニウム(IV)、酸化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、酒石酸リチウム、塩化ネオジム(III)、酸化ネオジム(III)、ネオジム(III)イソプロポキシド、酢酸ネオジム(III)水和物、シュウ酸アンモニウムニオブ、シュウ酸ニオブ 酸化ニオブ、五酸化リン、リン酸アンモニウム、二酸化セレン、酸化タンタル(V)、ルチル型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)、チタンイソプロポキシド、TiO(シュウ酸塩)、三酸化タングステン、シュウ酸バナジル、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、硝酸ジルコニル、ジルコニア及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記混合金属酸化物触媒が、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、タングステン、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、リチウム及びハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記混合金属酸化物触媒と前記性能調節剤のうちの1つ以上が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合物からなる群から選択される担体を有する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記触媒混合物が、前記混合金属酸化物触媒中のモリブデン1モルに対し、少なくとも約0.01モルの性能調節剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記物理的混合工程が、焼成した混合金属酸化物触媒と性能調節剤とを混合する工程を含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記混合金属酸化物触媒が、下記式:
Mo1VaSbbNbcXdLeOn
(式中、XはW、Te、Ti、Sn、Ge、Zr、Hf、Li及びこれらの混合物からなる群から選択され、LはCe、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物からなる群から選択され、0.1 ≦ a ≦ 1.0、0.01 ≦ b ≦ 1.0、0.001 ≦ c ≦ 0.25、0 ≦ d ≦ 0.6、0 ≦ e ≦ 1、nは複合酸化物中に存在する他のすべての元素の価数を満足するのに必要な酸素原子の数であるが、複合酸化物中の他の元素の1つ以上が、その最高酸化状態よりも低い酸化状態で存在しうることが条件で、a、b、c、d及びeは、1モルのMoに対応するそれぞれの元素のモル比を表わす)で定義される複合酸化物を含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記性能調節剤が、酸化アンチモン(III)、シュウ酸アンチモン(III)、酒石酸アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、四酸化アンチモン、Sb6O13又はこれらの混合物を含む、請求項14記載の方法。
【請求項22】
前記性能調節剤が更にテルル化合物を含む、請求項14記載の方法。
【請求項23】
飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物の前記アンモ酸化は、前記接触工程が、前記飽和炭化水素、不飽和炭化水素、又は飽和炭化水素と不飽和炭化水素との混合物を、前記触媒混合物の存在下、アンモニア及び酸素含有ガスに接触させる工程を有する、請求項14記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥混合金属酸化物触媒が水熱合成方法以外で調製される、請求項14記載の方法。
【請求項25】
前記物理的混合工程が、非焼成又は部分焼成した乾燥混合金属酸化物触媒と性能調節剤とを混合して混合物を形成する工程を含み、更に前記混合物を焼成する工程を含む、請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2011−500564(P2011−500564A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528872(P2010−528872)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/011551
【国際公開番号】WO2009/048553
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(509230757)イネオス ユーエスエイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (13)
【Fターム(参考)】