説明

プロピレンオキシドの製造用触媒及びそれを用いたプロピレンオキシドの製造方法

【課題】酸素分子を酸化剤として用いて、触媒が変質・分解することなく,反応後の触媒は分離・再利用しやすく、工業的に有用なプロピレンオキシドを高められた収率で得ることのできる新規な固体触媒および該触媒を用いた工業的に有利なプロピレンオキシドの製造方法を提供する。
【解決手段】(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物をメソ多孔体に固定化した固体触媒。この触媒を用いて、好ましくはメタノール溶媒の中で、プロピレンを分子状酸素含有ガスと接触・酸化させてプロピレンオキシドを得る。反応後の触媒は濾過により簡単に回収できる。回収した触媒は再びプロピレンの酸化に用いる際に、劣化を伴うことなく高収率でプロピレンオキシドを合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンオキシド樹脂の原料並びに有機化学薬品の中間体として工業上極めて重要な化学製品であるプロピレンオキシドを製造する際に用いられる触媒に関する。更に詳しくは、酸素分子を用い、プロピレンの酸化によりプロピレンオキシドを製造する際に用いられる新規な触媒系およびこのものを用いたプロピレンオキシドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンからのプロピレンオキシドの製造は、プロピレンクロロヒドリンを経由する方法、および有機過酸化物を用いて酸化する方法が工業化されている。クロロヒドリン法は環境汚染をもたらし,過酸化水素や有機過酸化物が高価であると共に、過酸化物の危険性や、反応後の有機副生成物の有効利用など、問題点がある。
このような問題点を克服するために、環境面や経済性を考慮すると安価且つクリーンな酸素分子によるプロピレンの直接酸化法が切望されている。
【0003】
前記のような観点から、新しい触媒系によるプロピレンからプロピレンオキシドを合成する方法の開発に多くの研究が向けられてきた。酸素を用いるプロピレンの酸化方法が提案された(特許文献1、非特許文献1)が、プロピレンオキシド収率は高々0.1%以下である。またTi/SiO2等の触媒存在下、酸素と光を用いる方法においてすら、5%程度のプロピレンオキシド収率にとどまっていた(非特許文献2)。エチレンのエポキシ化用の銀触媒はプロピレンの直接酸化に用いると,10%程度の転化率と30%程度のプロピレンオキシドへの選択率を示した(非特許文献3)。
【0004】
一方、本発明者らは、先にプロピレンの分子状酸素による酸化によりプロピレンオキシドを製造する際に用いられる触媒として、金属過酸化物と貴金属化合物を併用したプロピレンオキシド製造用触媒を提案した(非特許文献4)。この方法によれば40%程度の転化率で80%程度のプロピレンオキシドへの選択率を得ることができる。
【0005】
しかし,かかる触媒系は、酸化反応系中で金属過酸化物がメタノールなどの溶媒に溶解するため、反応後、反応液から金属過酸化物を分離し、循環使用するに当たっては、蒸留装置等の高価な装置を用いて金属酸化物を回収することが必要となり、また場合によっては該蒸留操作により金属酸化物や生成物が分解変質する恐れがあるため、連続法による工業的なプロピレンオキシドの製造方法には不向きであるといった問題点があった。
【0006】
欧州特許公開0640598 A1 (1995);
【特許文献1】欧州特許公開0640598 A1号公報 (1995);
【非特許文献1】渡辺、上松、辰巳、第82回触媒討論会、4D312(1998,p.93)
【非特許文献2】H.Yoshida, C.Murata, and T.Hattori,Chem.Commun., 1551-1552(1999
【非特許文献3】A. Palermo, A. Husain, M.S. Tikhov, R.M. Lambert, J.Catal. 207, 331-340 (2002)
【非特許文献4】Y. Liu, K.Murata, and M. Inaba, Chem.Commun.,582-583(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酸素分子を酸化剤として用いて、触媒が変質・分解することなく,反応後の触媒は分離・再利用しやすく、工業的に有用なプロピレンオキシドを高められた収率で得ることのできる新規な固体触媒および該触媒を用いた工業的に有利なプロピレンオキシドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、貴金属化合物と金属過酸化物をメソ多孔体に固定化した複合触媒をプロピレンの酸化触媒として用いると、生成物と触媒の分離が極めて簡便になることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)プロピレンの酸化によりプロピレンオキシドを製造する際に用いられる触媒であって、(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物をメソ多孔体に固定化させたことを特徴とするプロピレンオキシドの製造用触媒。
(2)(i)金属過酸化物が下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする上記(1)に記載のプロピレンオキシドの製造用触媒。
・[M2-(μ-O)2-] (1)
(式中、Aは対カチオン、Mは周期律表第V族及び第VI族から選ばれた少なくとも一種の元素、mは1〜16の整数、xは1〜32の整数、yは1〜64の整数、zは1〜16の整数である)
(3)(ii)貴金属化合物がパラジウム化合物であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のプロピレンの製造用触媒。
(4)メソ多孔体が、2〜50ナノメートルの細孔を有するものであることを特徴とする上記(1)〜(3)何れかに記載のプロピレンの製造用触媒。
(5)メソ多孔体の表面がカップリング剤で修飾されていることを特徴とする上記(4)に記載のプロピレンの製造用触媒。
(6)カップリング剤が有機アミノシラン化合物であることを特徴とする上記(5)に記載のプロピレンの製造用触媒。
(7)上記(1)乃至(6)何れかに記載の触媒の存在下で、プロピレンを酸素分子により酸化することを特徴とするプロピレンオキシドの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る、(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物をメソ多孔体に固定化した触媒は、プロピレンを分子状酸素で酸化してプロピレンオキシドを製造する際の触媒として有効性を発揮し、反応後の触媒を簡単に分離でき、触媒の変質・分解を生ずることなく、工業的に有用なプロピレンオキシドを高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いられるプロピレンの酸化触媒は、(i)金属過酸化物(過酸化酸素基(μ-O2-)を含有する金属過酸化物)と貴金属化合物をメソ多孔体に固定化固体触媒である。過酸化酸素基(μ-O2-)を含有する金属過酸化物触媒は酸化触媒の機能をし、プロピレンを酸化し、プロピレンオキシドを合成する。(ii)貴金属化合物は溶媒と作用し、分子状酸素を活性化することにより、過酸化酸素基(μ-O2-)を含有する金属過酸化物触媒の過酸化酸素基を再生する。こうして、プロピレンのエポキシ化反応を触媒的に進行させる。
【0011】
本発明で用いる(i)金属過酸化物に特に制限はないが、下記一般式(1)で示される金属過酸化物を用いることが好ましい。
・[M2-(μ-O)2-] (1)
(式中、Aは対カチオン、Mは元素周期律表第5族及び第6族元素の一種或いは多種の組み合わせ、mは1〜16の整数、xは1〜32の整数、yは1〜64の整数、zは1〜16の整数である)
一般式(1)における、過酸化酸素基(μ-O2-)を含む金属過酸化物アニオン[M2-(μ-O)2-]には、たとえば、単核金属過酸化物、イソポリ化合物の過酸化物、ヘテロポリ化合物の過酸化物などが包含される。単核金属過酸化物の具体例としては、たとえば、[WO(μ-O(HO)]O}、[WO(μ-O]、[MoO(μ-O]、[ReO(μ-O]、[Fe(μ-O)]が、イソポリ化合物の過酸化物としては、[W(μ-O]、[W(μ-O(HO)]、[Mo(μ-O(HO)]が、ヘテロポリ化合物の過酸化物としては、{PO[W(O)(μ-O}、{PO[Mo(O)(μ-O}、{(HPO)[W(O(μ-O]}、{SiO[MoO(O(μ-O]}、{SiO[MoO(μ-O]}、{SiO[WO(O(μ-O]}、{SiO[WO(μ-O]}などが挙げられる。その中ヘテロポリ化合物の過酸化物が好ましく、特に{PO[W(O)(μ-O}が好ましい。
【0012】
前記(i)の金属過酸化物と併用される(ii)の貴金属化合物とは、貴金属を含む錯体、酸化物、塩化物などの化合物を意味する。貴金属化合物に特に制限はないが、好ましくはイオン交換法により貴金属アニオンをメソ多孔体の細孔内に導入するため、貴金属化合物は溶媒の水やエタノールに溶解しやすいものが望ましい。このような貴金属化合物の具体例としてはパラジウム、白金、金、銀などの「ハロゲン化物」、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの「金属酸塩化合物」、テトラクロロ金属酸塩ナトリウム、ヘキサクロロ金属酸塩カリウム、テトラアンミン金属ハロゲン化物などの「配位金属化合物」、テトラキストリフェニルフォスフィン金属化合物などの「有機金属化合物」などが挙げられる。特にテトラアンミンパラジウム塩化物などのパラジウム化合物が好ましい。
【0013】
固定化に用いられるメソ多孔体(メソポーラス化合物)とは、均一で規則的な配列のメソ孔(直径2〜50ナノメートル)を持つ多孔質材料を意味する。シリカ系メソ多孔体は最も普通で、ヘキサゴナルメソポーラスシリカ(HMS)、MCM-41、H-ZSM-5、フェリエライト、モルデナイト、FSM-16などが挙げられる。シリカ系メソ多孔体以外に、セリアメソ多孔体、ジルコニアメソ多孔体、チタンニアメソ多孔体などにも用いられる。
【0014】
本発明でも使用するメソ多孔体に特に制限はないが、固定化機能に優れるメソ多孔体特に、その表面がカップリング剤で修飾されているメソ多孔体を用いることが望ましい。 カップリング剤としては有機アミノシラン化合物(A)が用いられる。有機アミノシラン化合物としては、トリメトキシ(3-アミノプロピル)シラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、トリエトキシ(3-アミノプロピル)シラン、トリメトキシ(プロピルアミノ)シランなどが挙げられる。
【0015】
シランカップリング剤で修飾されたメソポーラス化合物は、たとえば有機アミノシラン化合物(A)、メソポーラス形成化合物(B)、鋳型化合物(C)から合成される。すなわち、(B)および(c)と共にアミノ基の付いた有機シラン化合物(A)を合成時に共存させることにより、メソポーラス材料の表面がアミノ基で修飾され、金属過酸化物を固定化することができる。
(B)としてはテトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランなどのシラン化合物、(C)としては、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンなどのアルキルアミン類、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどのハロゲン化4級アンモニウム化合物などが挙げられる。この時の(B)に対する(A)の使用割合は、重量比で0.001〜10、好ましくは0.05〜1、また(B)に対する(C)の使用割合は、0.01〜100、好ましくは0.05〜5である。こうして表面に形成された有機アミノ基は、P2O5、POCl3などとの反応およびイソポリ化合物との反応により、たとえば最も好ましい構造の金属過酸化物であるヘテロポリ化合物を表面に固定化することができる。さらに、パラジウム化合物などの配位金属化合物と反応させることにより、最終的に使用する触媒とすることができる。
【0016】
本発明の複合触媒は、メソポーラス多孔体に(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物を固定化することにより得られる。(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物との使用割合に特に制限はないが、通常、金属過酸化物に対する貴金属化合物(貴金属換算)の重量比で0.0001〜5、好ましくは0.005〜0.1である。
メソポラース多孔体に前記(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物を固定化する方法としては、通常の触媒調製に用いられる方法、たとえば含浸法、沈殿法、混ねい法、インシピエントウェットネス法など、また化学結合形成法、イオン交換法などがある。本発明で好ましく使用される固定化方法は、金属過酸化物は化学結合法、貴金属化合物はイオン交換法である。化学結合法によれば、金属過酸化物の反応中における溶媒中への溶出は避けられる。またイオン交換法によりメソ孔中に導入した貴金属化合物は、メタノール等の溶媒による還元により0価の貴金属状態となり、溶媒に不溶になるので、金属過酸化物と同様に、反応後に溶媒と分離できる。
【0017】
本発明で用いられる代表的な複合触媒を図1により説明する。図1に示されるように、反応前の複合触媒は、1)溶媒に可溶なメソ孔中の金属イオン、2)メソポーラス材料表面に化学結合したアルキルアミン構造(シランカップリング剤から生成)、3)アミンに化学結合したヘテロポリ化合物の過酸化物、といった構造を有する。かかる複合触媒は反応後には、金属イオンが還元されて溶媒に不溶な金属となることから、すべての触媒構造が不溶化する。こうして、濾過等の簡単な操作により触媒と生成物が容易に分離できることになり、反応操作上極めて有益な触媒を得ることができる。
【0018】
本発明の反応方法は気相及び液相のいずれで行うこともできるが、プロピレンと酸素の滞留時間を長くとりやすいことから、液相がより好ましい。溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール類、アルデヒド類、塩化炭化水素類などが用いられるが、還元性があるアルコール類、アルデヒド類が望ましい。酸素との親和性の高さの観点からみて、最も望ましいのはメタノールである。
【0019】
また、液相での反応温度は、50〜500℃、好ましくは70〜200℃の条件下であり、また反応圧力は任意であるが加圧が好ましく、0.01Mpa〜100Mpa、好ましくは0.3Mpa〜5Mpaである。酸素の使用割合は、プロピレン1モル当たり、0.05〜10モル、好ましくは1〜0.2モルの割合である。触媒は使用されるプロピレン1モルに対して、0.001〜0.5モル、好ましくは0.01〜0.1モルが用いられる。原料オレフィンは、窒素、ヘリウム、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈して用いることができる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明は実施例を示すことで、より具体的に示すが、これらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例は本発明の実施態様を説明している。実施例中の酸化反応の分析は島津製作所製GC9A型ガスクロマトガラフィーを用いて測定し、酸化生成物の収率は原料のオレフィン基準で示し。
【0021】
実施例1(触媒の調製)
HMS-PrNH2:溶液A:18.5g(0.09 mol)のテトラエトキシシランと1.79g(0.01mol)のトリメトキシ(3-アミノプロピル)シランを混合する。溶液B:5.09gのn-ドデシルアミンを41gのエタノールと53gの蒸留水の混合溶液に溶解させる。500mlのビーカーを用い、室温で溶液Aを溶液Bに滴下し,18時間攪拌した後、濾過する。得た白い沈殿を蒸留水で洗い、室温で乾燥させてHMS-PrNH2を合成する。合成したHMS-PrNH2を60℃で500mlのエタノールに添加し、6時間攪拌し、HMS-PrNH2の細孔内の界面活性剤を除去する。
【0022】
HMS-PrNH(PO3H2):200mlのビーカーを用い、0.25gのPOCl3を30mlのアセトニトリルに添加し,さらにこの溶液に0.5gのHMS-PrNH2を添加し,室温で24時間攪拌した後、濾過する。得た白い沈殿を蒸留水で洗浄し、0.1Nの燐酸に加え、室温で6時間攪拌した後、濾過する。
【0023】
[W2O3(O2)4(H2O)2]2-溶液:100mlのビーカーを用い、60℃で2.5g(10mmol)タングステン酸を30%の過酸化水素7mlに溶解させ、室温に冷却した後、1時間攪拌する。
【0024】
HMS-PrNH-PW2:0.25gのHMS-PrNH(PO3H2)と8mlのアセトンと1mlの30%の過酸化水素を2.5mlの[W2O3(O2)4(H2O)2]2-溶液に添加し、室温で6時間攪拌した後、濾過する。得た白い沈殿をアセトンと30%の過酸化水素により洗浄し、風乾する。
【0025】
Pd-HMS-PrNH-PW2:0.055gのPd(NH3)4Cl2を40ml蒸留水に溶解させる。この溶液に1gのHMS-PrNH-PW2粉末を添加し、室温で16時間攪拌した後、濾過する。得た沈殿を蒸留水により洗浄し、風乾する。
上記のPd-HMS-PrNH-PW2の合成方法を以下のスキームで表記される。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例2
プロピレンのエポキシ化反応を行った。メタノール10mlの入った50mlのオートクレーブ反応容器に0.2gのPd-HMS-PrNH-PW2触媒を加える。プロピレン0.8MPa、酸素0.4MPa、アルゴン0.8MPaを導入して、反応器を密閉し、100℃に保ち、激しく攪拌ながら反応を続けた。反応後、反応液を室温に下げて気体生成物と液体生成物をそれぞれガスクロマトガラフィーにより分析した。100℃で反応後6時間の生成物をガスクロマトグラフにより分析したところ、プロピレン転化率34.1%、選択率83.2%にてプロピレンオキシドが生成した。副生物として、アクロレイン(3.0%)、アセトン(2.8%)、プロパン(5.4%)、炭化水素(1.2%、C〜Cの和)が検出され、他の生成物も少量認められた。
【0028】
実施例3
実施例1の反応後の溶液を濾過し、反応後の触媒を得た。この反応後の触媒を用い、再び実施例1と同じ操作を行った。その結果,反応6時間後プロピレンの転化率は35.3%であり、プロピレンオキシドへの選択率は83.5%であった。反応後の触媒は濾過により簡単に回収できる。回収した触媒は劣化を伴うことなく高収率でプロピレンオキシドを合成することができた。
【0029】
比較例1
実施例2において、触媒Pd-HMS-PrNH-PW2をHMS-PrNH-PW2に代えた以外は、全て実施例1と同じ方法で実験を行った。その結果、反応6時間後プロピレンの転化率は1.7%であり、プロピレンオキシドへの選択率は88.6%であった。
【0030】
比較例2
実施例2において、触媒Pd-HMS-PrNH-PW2をPd-HMS-PrNH(PO3H2)に代えた以外は、全て実施例1と同じ方法で実験を行った。その結果、反応6時間後プロピレンの転化率は3.4%であり、プロピレンオキシドへの選択率は4.3%であった。
【0031】
比較例3
実施例2において、触媒Pd-HMS-PrNH-PW2をPd-HMS-PrNH2に代えた以外は、全て実施例1と同じ方法で実験を行った。その結果、反応6時間後プロピレンの転化率は2.9%であり、プロピレンオキシドへの選択率は5.1%であった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の代表的な複合触媒の説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンの酸化によりプロピレンオキシドを製造する際に用いられる触媒であって、(i)金属過酸化物と(ii)貴金属化合物をメソ多孔体に固定化させたことを特徴とするプロピレンオキシドの製造用触媒。
【請求項2】
(i)金属過酸化物が下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1に記載のプロピレンオキシドの製造用触媒。
・[M2-(μ-O)2-] (1)
(式中、Aは対カチオン、Mは周期律表第V族及び第VI族から選ばれた少なくとも一種の元素、mは1〜16の整数、xは1〜32の整数、yは1〜64の整数、zは1〜16の整数である]
【請求項3】
(ii)貴金属化合物がパラジウム化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレンの製造用触媒。
【請求項4】
メソ多孔体が、2〜50ナノメートルの細孔を有するものであることを特徴とする請求項1〜3何れかに記載のプロピレンの製造用触媒。
【請求項5】
メソ多孔体の表面がカップリング剤で修飾されていることを特徴とする請求項4に記載のプロピレンの製造用触媒。
【請求項6】
カップリング剤が有機アミノシラン化合物であることを特徴とする請求項5に記載のプロピレンの製造用触媒。
【請求項7】
請求項1乃至6何れかに記載の触媒の存在下で、プロピレンを酸素分子により酸化することを特徴とするプロピレンオキシドの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−68622(P2006−68622A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254200(P2004−254200)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、経済産業省委託研究「ミニマムエナジーケミストリー」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】