説明

プロピレンポリマーの製造方法

【課題】プロピレンコポリマーの製造方法。
【解決手段】少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器中において、プロピレンをコモノマーと重合させ、ポリマー生成物の少なくとも10%が気相反応器中において製造され;未反応モノマーを含有する共重合生成物を、スラリー反応器から回収し;および、気相反応器の前のスラリー反応器に未反応モノマーを本質的に循環させずに、共重合生成物を第一気相反応器に運ぶ;段階を含んで成る。該方法は、非常に軟質の高ランダム性コポリマー、および向上した耐衝撃性を有するコポリマーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンをベースとするホモポリマーおよび高コモノマー含有量を有するコポリマー、ならびに耐衝撃性改質プロピレンポリマーの製造に関する。特に、本発明は、少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器の組み合わせを有して成る反応器システムにおける、プロピレンポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系ポリマーの軟らかさ、耐衝撃性、およびヒートシール性は、プロピレンを、他のオレフィン、例えば、エチレン、イソブチレンなどと共重合させることによって向上させることができる。バルク法および気相法(bulk and gas phase processes)の両方が使用されている。しかし、重合の際に使用されるコモノマーは、バルク法の重合媒体中において、ポリマーの膨潤を生じる。その結果、膨潤した軟質ポリマー粒子が重合の後にフラッシュされる際に、粒子の形態が破壊され、粉末化されたポリマーの嵩密度が非常に減少する。それと同時に、非晶質物質が粉末の表面に堆積する。粘着性低密度物質が、フラッシュタンクの壁に容易に凝集し、輸送の際に問題を生じる。コモノマーの割合が増加すると、これらの問題が増大する。
【0003】
このような理由から、先行技術においては、主に気相法を用いて重合が行われている。これらの方法は、粘着性であるが流動性の製品(EP 0237 003)、およびゴム製品、例えばEPRおよびEPDM(EP 0614917)の製造に提案されている。該方法において、流動床反応器の気体速度が、粒子を分離させ、流体として作用させるのに充分である。しかし、流動床反応器中のポリマーは本質的に、プラグフローモードで運ばれる。
【0004】
気相法は、高コモノマー含有量製品にも好ましい。EP 0674991、EP 0584574、EP 0605001、およびEP 0704464参照。
【0005】
しかし、気相反応器に関する問題は長い滞留時間によって生じ、これは長い移行時間および生産損失の可能性を意味する。これは特に、多反応器法(multireactor processes)において言える。気相法における触媒生産性は低く、より多量の触媒の使用および高い製造コストを意味する。
【0006】
スラリーバルク反応器および気相反応器の異なる長所から利益を得るために、プロピレンコポリマーを製造するバルク反応器および気相反応器のいくつかの組み合わせが当分野において提案されている。しかし、現在のところ、先行技術の方法はいずれも、同一の工程配置を使用して、多種類のポリオレフィン品質の製造に要求される柔軟性および低製造コストの条件を満たしていない。特に、既知の方法の一般的特徴である、かなり多量の未反応モノマーのスラリー反応器への循環は、ループ反応器力学(loop reactor dynamics)を損ない、新規製品の品質への移行を遅らせる。
【0007】
ループ反応器および気相反応器の組み合わせにおける、向上した2段階法のプロピレンの重合方法が、米国特許第4740550号に開示されている。米国特許第4740550号の主な目的は、狭い滞留時間分布でホモポリマーをブロック共重合段階に供給することによって、高品質のブロックコポリマーを製造する方法を提供することである。開示されている方法は、下記段階:バルクループ反応器(bulk loop reactor)におけるホモ重合から成る第一段階;気相反応器における第二段階ホモ重合;第一および第二段階の間のサイクロンにおける微細物質除去;および、最後に、付加気相反応器における衝撃共重合(impact copolymerization)を含んで成る。
【0008】
ループ反応器の重合生成物を気相に供給する前に、微細物質部分(fines fraction)を除去し、ループ反応器に循環させる。微細物質と一緒に、気相反応器からのモノマーの一部が第一段階ループ反応器に直接に循環される。
【0009】
この先行技術に関して、いくつかの重大な問題が存在する。例えば、全ての微細物質がループ反応器の反応器流出口から除去され、ループ反応器に循環される場合に、ループ反応器が結果的に非活性触媒または僅かに重合されたデッド微細物質(dead fines)で満たされる重大な危険性が存在する。一方、微細物質流の一部が最終反応器からの生成物と合わされる場合に、最終生成物における不均質の問題が生じる。さらに、米国特許第4740550号に提案されているように、微細物質流の一部が別に採集され、分離ホモポリマーとブレンドされる場合に、複雑な経済的に許容されない操作を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術の単一および多反応器法に関する問題を解決し、プロピレンのホモおよびコポリマーを製造する新規方法を提供することである。
本発明の他の目的は、広範囲の種々のプロピレン(コ)ポリマー製品を製造するために使用し得る非常に用途の広い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらのおよび他の目的、ならびに、下記の説明から明らかな既知の方法より優れた利点が、下記に説明する本発明によって達成される。
【0012】
本発明の方法は、少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器をその順序において直列に連結してカスケードを形成するようにした組み合わせに基づく。プロピレン(コ)ポリマーを、高い温度および圧力において触媒の存在下に製造する。本発明によれば、未反応モノマーを含有する少なくとも1つのスラリー反応器の重合生成物を、スラリー反応器へのモノマーの最少限の循環において、または循環せずに、第一気相反応器に運ぶ。本発明に関して、第一および第二段階の共重合後に微細物質除去および循環を行わずに、2段階ホモ重合、次いで衝撃共重合段階(impact copolymerization step)によって、高品質の耐衝撃性コポリマーを製造し得ることが見い出された。本発明において、反応器の特定の配置を使用することによって、および、各反応器において生成される相対量をその目的を考慮して選択することによって、循環量を最少限にすることができる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、直列に連結された少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器を反応器システムとして使用し、該少なくとも1つのスラリー反応器が高温または超臨界温度において操作されるバルクループ反応器であり、コポリマー生成物および未反応モノマーを含有する反応媒体を含むスラリー反応器の含有物を、スラリー反応器を気相反応器に連結する導管を使用して気相反応器流動床に直接に運ぶ。
【0014】
特に、本発明の方法は主に請求項1の特徴部に記載される特徴を有する。
【0015】
本発明は、多くの重要な利点を有する。本発明の配置によって、第一反応器に供給されるモノマーが、大部分または完全に、スラリー反応器後に気相反応器において消費されることが見い出された。これは、少量のガスをポリマー生成物と一緒に排出する、気相操作によって可能である。カスケードにおけるループ反応器力学は、速い移行(fast transitions)および高生産性を付与する。気相層材料がループ反応器から直接に利用可能でありので、速い始動も可能である。ループおよび気相反応器カスケードによって、多種類の広範囲分子量分布またはバイモーダル(bimodal)の生成物を得ることができる。該少なくとも1つの気相反応器は、調節可能な層レベルおよび反応速度によって、生成物の第一および第二部分の反応速度比において高い柔軟性を付与する。さらに、溶解制限を有さない気相反応器は、高いまたは非常に高いコモノマー含有量のポリマーを生成することを可能にする。
【0016】
ループ−気相反応器の組み合わせは、気相−気相多反応器法と比較して、滞留時間および生産損失を大幅に減少させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
定義
本発明において、「スラリー反応器」は、バルクまたはスラリーにおいて操作され、ポリマーが粒子形態で形成される、連続または単純攪拌タンク反応器またはループ反応器のような反応器を意味する。「バルク」は、少なくとも60重量%のモノマーを含んで成る反応媒体中における重合を意味する。好ましい実施態様によれば、スラリー反応器がバルクループ反応器を有して成る。
【0018】
「気相反応器」は、機械混合または流動床反応器を意味する。気相反応器が、少なくとも0.2m/秒の気体速度を有する機械攪拌流動床反応器を有して成るのが好ましい。
【0019】
「高温重合」は、関連先行技術の高収率触媒にとって有害であることが既知の80℃の制限温度より高い重合温度を意味する。高温度において、触媒の立体特異性およびポリマー粉末の形態が、損失し得る。下記に記載される本発明に使用される特に好ましい種類の触媒に関しては、そのようなことは起こらない。高温重合が、制限温度より高く、反応媒体の対応する臨界温度より低い温度において起こる。
【0020】
「超臨界重合」は、反応媒体の対応する臨界温度および圧力より上において起こる重合を意味する。
【0021】
「直接供給」は、重合生成物および反応媒体を含んで成るスラリー反応器の含有物が、気相反応器の流動床に直接に運ばれる方法を意味する。
【0022】
「反応区域」は、同じ種類または性質のポリマーを生成する、1つの、または直列に連結された同種類のいくつかの反応器を意味する。
【0023】
「本質的にモノマーを循環しない」および「最少限のまたは零のモノマー循環」という表現は、約30重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に零のモノマーがスラリー工程に循環されることを意味する。これと対照的に、通常のスラリー工程においては、50重量%またはそれ以上のモノマーが循環される。
【0024】
全体方法
本発明は、少なくとも1つのスラリー反応器を有するバルク反応区域、および少なくとも1つのスラリー反応器後のカスケードにおける少なくとも1つの気相反応器から成り、最少限のまたは零のモノマーが第一反応器に循環され、およびプロピレンのホモまたは共重合のために気相に直接供給または間接供給される、多段階法に関する。
【0025】
直接供給法においては、スラリー反応器の含有物、重合生成物および反応媒体が、流動床反応器に直接に運ばれる。スラリー反応器の生成物流出は、不連続、または好ましくは連続である。種々の粒度に基づいてガスまたは粒子流を分離せず、そのままスラリーを運ぶ。粒子を前の反応器に戻さない。任意に、スラリー反応器および気相反応器の間のラインを加熱して、反応媒体の一部または全部を、気相反応器層に入る前に蒸発させることができる。
【0026】
気相反応器において反応が継続される。スラリー反応器から気相反応器に入る全てまた実質的に全て(少なくとも90%)のモノマーは、それがポリマーに変換されるまで、反応器ガス量(inventory)の一部である。
【0027】
2つの反応器の操作において、流出システムを有する気相反応器から流出するポリマーが、固体/気体分離ユニットに入る。底部からのポリマーをさらなる処理段階に供給し、ガスを圧縮し、精製段階後に気相反応器に循環させる。一般に、メタンおよびエタンのような軽不活性物質、ならびにプロパンおよびオリゴマーのような重不活性物質が、これらの精製段階において除去される。精製は、蒸留または半透膜分離によって行うことができる。蒸留の場合は、モノマーを主に液体として気相反応器に循環させる。
【0028】
3つの反応器の操作においては、流出システムを有する第一気相反応器から流出するポリマーが、固体/気体分離ユニットに入る。底部からのポリマーをさらに、第二気相反応器に供給し、ガスを圧縮し、精製段階後に第一気相反応器に循環させる。一般に、メタンおよびエタンのような軽不活性物質、ならびにプロパンおよびオリゴマーのような重不活性物質をこれらの精製段階において除去する。精製は、蒸留または半透膜分離によって行うことができる。蒸留の場合は、モノマーを主に液体として気相反応器に循環させる。
【0029】
3つの反応器の操作において、任意に、流出システムを有する第一気相反応器から流出するポリマーが、付随ガスと一緒に直接に第二気相反応器に入ることもできる。
【0030】
3つの反応器の操作においては、流出システムを有する第二気相反応器から流出するポリマーが、固体/気体分離ユニットに入る。底部からのポリマーをさらなる処理段階に供給し、ガスを圧縮し、一部分は直接に、一部分は精製段階後に第二気相反応器に循環させる。一般に、メタンおよびエタンのような軽不活性物質、ならびにプロパンおよびオリゴマーのような重不活性物質を、これらの精製段階において除去する。精製は、蒸留または半透膜分離によって行うことができる。蒸留の場合は、エチレン高含有流を第二気相反応器に循環し、プロピレン−プロパン流をプロパンおよびオリゴマー除去段階に供給する。
【0031】
触媒を使用することによって、重合生成物を得る。触媒は、高温において適切な活性を付与するどのような触媒であってよい。使用される好ましい触媒系は、触媒成分を含有する高収量チーグラー−ナッタ触媒、助触媒成分、外部供与体(ドナー)、および任意に内部供与体を含んで成る。他の好ましい触媒系は、例えば、高立体選択性を付与する架橋リガンド構造を有し、活性錯体の形態において担体または支持体(support)に含浸される、メタロセン系触媒である。
【0032】
重合温度は少なくとも60℃、好ましくは少なくとも65℃である。スラリー反応器は少なくとも35バール〜100バールの高圧において操作され、気相反応器は少なくとも10バール〜露点圧において操作される。あるいは、直列の反応器のいずれかの反応器を、臨界温度および圧力より上において操作することができる。
【0033】
直列に連結された複数の重合反応器において、プロピレンおよび任意に1種またはそれ以上のC〜C16オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、ジエン、または環状オレフィン、例えば、ビニルシクロヘキサンまたはシクロペンテンを、それぞれ重合および共重合にかける。コモノマーオレフィンを反応器のいずれかにおいて使用することができる。いずれかのまたは全ての反応器において、種々の量の水素を、分子量改変剤または調節剤として使用することができる。
【0034】
所望のプロピレン(コ)ポリマーを、気相反応区域の生成物分離手段から回収することができる。
【0035】
触媒
触媒を使用することによって、重合生成物を得る。触媒として、高収量および有用なポリマー特性、例えば、高温および可能な超臨界重合におけるアイソタクチシティおよび形態学を有する、プロピレンに対して立体特異的な触媒を使用することができる。使用される好ましい触媒系は、触媒成分を含有する高収量チーグラー−ナッタ触媒、助触媒成分、任意に、外部供与体および内部供与体を含んで成る。他の好ましい触媒系は、高立体選択性を付与する架橋リガンド構造を有し、担体に含浸された活性錯体を有するメタロセン触媒である。最後に、触媒は、高温において適切な活性を付与する触媒であるのが好ましい。
【0036】
好適な系の例が、例えば、FI特許第86866号、第96615号、第88047号、第88048号、および第88049号に開示されている。
【0037】
本発明に使用することができる1つの特に好ましい触媒が、FI特許第88047号に開示されている。他の好ましい触媒が、FI特許出願第963707号に開示されている。
【0038】
他の好ましい触媒が、PCT/FI97/00191号、PCT/FI97/00192号に開示されている。
【0039】
予備重合
直列における第一重合反応器に供給する前に、触媒を予備重合に付すことができる。反応器に供給する前に、触媒成分を、予備重合の間に、オレフィンモノマーのようなモノマーと接触させる。好適な系の例が、例えば、FI特許出願第FI961152号に開示されている。
【0040】
オレフィンワックスのような粘稠物質の存在において予備重合を行って、貯蔵および取扱の際に安定な予備重合触媒を得ることもできる。ワックス中で予備重合された触媒は、重合反応器への触媒の装填をたやすくする。好適な系の例が、例えば、FI特許第95387号に開示されている。一般に、約1部の触媒が、最大4部のポリマーに対して使用される。
【0041】
予備重合に使用されるモノマーは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、および1−デセンから成る群から選択することができる。
【0042】
予備重合は、ワックス中において、または連続初期重合反応器において、あるいは連続プラグフロー型予備重合反応器において、バッチ式に行うことができる。
【0043】
重合
本発明は、カスケードと称される、直列に連結された少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器の組み合わせに基づく。
【0044】
重合段階の装置は、適切な種類の重合反応器を有して成る。スラリー反応器は、バルクまたはスラリーにおいて操作される連続または単純攪拌タンク反応器またはループ反応器であり、ポリマーが反応器において粒子形態で形成される。バルクは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含んで成る反応媒体における重合を意味する。気相反応器は、機械混合または流動床反応器である。本発明によれば、スラリー反応器は、好ましくはバルクループ反応器であり、気相反応器は、機械攪拌器を有する流動床型反応器である。
【0045】
該方法における反応器は、超臨界重合反応器であってもよい。
【0046】
スラリー反応器および第一気相反応器の間の製造量分割(production split)は、スラリー反応器へのモノマー循環が行われる場合に、一般に67:33〜50:50である。これに対して、スラリー反応器への循環が必要とされない場合は、スラリー反応器における製造量は、第一気相反応器における製造量より少ないかまたはそれに相当する。全ての場合において、スラリー反応器における製造量は、10%より以上である。従って、好ましい実施態様においては、10〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、特に40〜60重量%のポリマーが、スラリー反応区域において製造され、モノマーがスラリー反応区域へ循環されない。50%〜67%のポリマーがスラリー反応区域において製造される場合は、少量のモノマーを気相反応区域からスラリー反応器へ循環させることができる。
【0047】
本発明によれば、重合法が、少なくとも下記の段階を含んで成る:
・ 第一スラリー重合区域または反応器において、プロピレンおよび任意に他のオレフィンを重合または共重合に付し;
・ 反応媒体を有する第一反応区域から、第一重合生成物を回収し;
・ 直接または間接に、第一重合生成物を気相重合区域または反応器に供給し;
・ 任意に、追加のプロピレンおよび/またはコモノマーを第二反応区域に供給し;
・ 第一区域からの過剰プロピレンおよび/またはコモノマー、ならびに追加プロピレンおよび/またはコモノマーを、第一重合生成物の存在下に第二重合反応に付して、第二重合生成物を得;
・ 第二反応区域から重合生成物を回収し;および
・ 第二反応生成物からポリプロピレンを分離し、回収する。
さらに、該方法は、下記の追加段階の1つまたはそれ以上を含んで成ることもできる:
・ 触媒を1種またはそれ以上のモノマーと予備重合する;
・ 第二反応区域の生成物からガスを分離する;
・ 初期区域の回収重合生成物を、第三または第四反応区域または反応器に供給する;
・ 任意に、追加のプロピレンおよび/またはコモノマーを、第三および第四反応区域へ供給する;
・ 過剰プロピレンおよび/またはコモノマー、ならびに追加プロピレンおよび/またはコモノマーを、初期区域の重合生成物の存在下に、第三および第四重合反応にかけて、第三または第四重合生成物を得る;
・ 第三または第四反応区域から重合生成物を回収する、および
・ 第三または第四反応生成物からポリプロピレンを分離し、回収する。
【0048】
該方法の第一段階において、プロピレンおよび任意のコモノマーを、活性触媒錯体ならびに任意の助触媒および他の補助成分と一緒に、第一重合反応器に供給する。触媒を予備重合させることができ、または、該工程に供給する前に予備重合させる。前記成分と一緒に、水素を分子量調節剤として、ポリマーの所望の分子量を得るために必要な量において反応器に供給することができる。スラリー反応器への循環が行われない実施態様においては、新たなモノマーだけが第一反応器に供給される。
【0049】
あるいは、スラリー反応器へのモノマーの最少限の再循環が行われる実施態様においては、反応器への供給材料が、回収システムを通過した次の反応器からの循環モノマー、存在する場合は、追加される新たなモノマー、水素、任意のコモノマー、および触媒成分から成ることができる。
【0050】
全ての実施態様において、プロピレン、任意のコモノマー、補助触媒および他の補助成分の存在において、活性触媒錯体が重合し、スラリー反応器中に粒子形態において、即ち、反応器に循環される流体に懸濁したポリマー粒子の形態において、生成物を形成する。
【0051】
重合媒体は一般に、モノマーおよび任意に炭化水素を含んで成り、流体は液体または気体である。スラリー反応器、特にループ反応器の場合は、該流体が液体であり、ポリマーの懸濁液がスラリー反応器に連続的に循環され、それによって、炭化水素媒体またはモノマー中の粒子形態のポリマーのより多くの懸濁液が形成される。好ましい実施態様によれば、第一重合または共重合反応が、主にプロピレンから成る反応媒体において行われる。媒体の少なくとも60重量%がプロピレンであるのが好ましい。
【0052】
スラリー反応器の条件は、全生成物の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%が、第一スラリー反応器において重合されるように選択される。温度は40℃〜110℃、好ましくは50℃〜100℃であり、さらに好ましくは、ホモポリマーおよび高ランダム性コポリマーに関しては80℃〜100℃であり、高コモノマー含有量のコポリマーに関しては60℃〜75℃である。反応圧は、反応媒体の蒸気圧に基づいて、30〜100バール、好ましくは35〜80バールである。
【0053】
スラリー重合区域においては、2つ以上の反応器を直列において使用することができる。そのような場合に、第一スラリー反応器において形成される不活性炭化水素またはモノマー中のポリマー懸濁液が、不活性成分およびモノマーから分離されずに、前記スラリー反応器より低圧において稼働する次のスラリー反応器に定期的にまたは連続的に供給される。
【0054】
重合熱は、冷却ジャケットを用いて反応器を冷却することによって、除去される。充分な重合度を得るためには、スラリー反応器における滞留時間は、少なくとも10分、好ましくは20分〜100分である。これは、少なくとも40kg PP/g触媒のポリマー収量を得るために必要である。粒子が膨潤する場合に、高固体濃度、例えば、ホモポリマーに関しては50%、およびコポリマーに関しては35%または40%において、スラリー反応器を操作することも有益である。ループ反応器における固体濃度が低すぎる場合は、第二反応区域または気相反応器に運ばれる反応媒体の量を増加させる。
【0055】
スラリー反応器の含有物、重合生成物および反応媒体は、気相反応器流動床に直接に運ばれる。
【0056】
第二反応器は気相反応器であるのが好ましく、該反応器において、プロピレンおよび任意にコモノマーが、ガスまたは蒸気から成る反応媒体中で重合される。
【0057】
気相反応器は、通常の流動床反応器であってよいが、他のタイプの気相反応器も使用することができる。流動床反応器においては、該層が、形成されたまたは形成されつつあるポリマー粒子、ならびに未だ活性な触媒およびポリマー部分から成る。ガス成分、例えば、粒子を流体として作用させる流速(少なくとも0.2m/秒)のモノマー、を導入することによって、該層が流動状態に維持される。流動ガスは、窒素のような不活性ガス、および改質剤としての水素も含有することができる。本発明においては、回収セクションにおいて問題を生じ得る不必要な不活性ガスの使用は薦められない。
【0058】
使用される気相反応器は、50℃〜115℃、好ましくは60℃〜110℃の温度、および10バール〜40バールの反応圧で操作することができ、モノマーの分圧は2バール〜30バールまたはそれ以上が好ましく、常に露点圧より低い圧力である。
【0059】
1つの好ましい実施態様によれば、種々のフラッシングに必要とされる以外は、新たなプロピレンが第一気相反応器に供給されない。
【0060】
次に、気体反応媒体を含有する第二重合生成物の圧力を、第一気相反応器後に減少させて、例えば、フラッシュタンク中で、生成物の気体およびありうる揮発性成分(例えば、重コモノマーおよび触媒供給材料に使用される化合物)の部分を分離する。オーバーヘッドガス流を、回収システムによって、第一気相反応器に、または一部分を第一気相反応器に、および一部分をスラリー反応器に循環させる。いくらかのモノマー、一般により重いコモノマーを、バルク反応区域に循環させることができる。
【0061】
所望であれば、重合生成物を第二気相反応器に供給し、第三重合反応に付して、改質重合生成物を得ることができ、その生成物からポリプロピレンを分離し、回収する。第三重合反応は、第三重合生成物に向上した耐衝撃性、延性、または軟らかさのような特性を付与するコモノマーの存在において、気相反応器中で行うことができる。一般に、第一気相反応器から流入するガスの一部を、第二気相反応器の前の減圧段階において除去する。除去されたガスを圧縮して回収セクションに運び、2つの反応器の場合において前記に記載したように処理する。あるいは、第二生成物を、第三反応器に直接に運ぶことができる。
【0062】
一般に、コポリマーが本発明の方法によって製造される場合に、それらは、少なくとも0.5重量%のコモノマー、特に少なくとも約2重量%、好ましくは最高20重量%の少なくとも1種類のコモノマーを含有する。第一気相反応器に供給されるコポリマーの一般的コモノマー含有量は、約2〜16重量%である。製造されるコポリマーは、高ランダム性を示す(非常に軟質なコポリマー)。
【0063】
特に、第三(共)重合反応によってゴム状コポリマーを生成するために、重合生成物を第二気相反応器に供給して、改質重合生成物を得る。第三重合反応は、重合生成物に、例えば向上した衝撃強さなどの特性を付与する。エラストマーを生成する段階は、種々の方法によって行うことができる。従って、少なくともプロピレンおよびエチレンを共重合させてエラストマーを得ることによって、エラストマーを製造するのが好ましい。共重合の条件は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第二版、第6巻、第545〜558頁に記載されているような通常のEPM製造条件の範囲である。ポリマーにおけるエチレン繰り返し単位含有量が所定範囲である場合に、ゴム状製品が形成される。従って、コポリマーが10〜70重量%のエチレン単位を含有するような比率においてエチレンおよびプロピレンを共重合させて、エラストマーを形成するのが好ましい。特に、エチレン単位含有量は、コポリマー・プロピレン/エチレン・エラストマーの30〜50重量%である。言い換えれば、エチレンおよびプロピレンを重合させて、エチレン/プロピレンのモル比が30/70〜50/50のエラストマーを得る。
【0064】
既製のまたは天然のエラストマーを第一気相反応器のポリマー生成物に加えることによって、エラストマーを得ることもできる。
【0065】
耐衝撃性改質ポリプロピレンは一般に、約5〜50重量%、特に約10〜45重量%、好ましくは約15〜40重量%の前記エラストマーを含有する。
【0066】
一般に、向上した耐衝撃性を得るように高分子量生成物を製造するために、生成物を第二気相に供給する前に、第二反応生成物の水素濃度が減少される。
【0067】
第三重合改質生成物に特性を付与するコモノマーの存在において共重合が行われる第三(第四など)重合反応区域に、第二気相反応の生成物を運ぶこともできる。
【0068】
第三および第四気相反応器を、60℃〜80℃の温度において操作することができ、反応圧は10〜30バールに維持することができる。
【0069】
前記を要約すると、本発明の1つの特に好ましい実施態様(図1)は:
− ループ反応器中において、40〜80バールの圧力、80℃〜100℃の温度においてプロピレンを重合させ、および、水素を使用して、重合生成物の分子量を調節し;
− ループ反応器からの重合生成物を回収し、該生成物を気相反応器流動床に運び;
− 任意に、追加のプロピレンおよび任意のコモノマーを、気相反応器に供給し;
− 任意に、追加の水素を気相反応器に供給して、水素/プロピレン比を調節して、所望分子量の重合生成物を得;
− 気相反応器から重合生成物を回収し、該生成物をフラッシュタンクに運び、そこにおいて生成物の圧力を減少させて、未反応プロピレンおよび水素を本質的に含有するオーバーヘッド生成物、および重合固形物を主に含有する底部生成物を得;
− オーバーヘッド生成物または少なくともその大部分を、回収セクションを経て気相反応器に循環させ;および
− ポリプロピレンポリマーを、フラッシュタンクの底部生成物として回収する;
ことを含んで成る。
第二の特に好ましい実施態様(図1)によれば:
− プロピレンおよびコポリマー、例えば、エチレンまたは1−ブテンあるいはそれらの両方を、ループ反応器中、40〜80バールの圧力、60℃〜80℃の温度において重合させ、および、水素を使用して、所望分子量の重合生成物を得;
− ループ反応器からの重合生成物を、気相反応器流動床に直接に運び;
− 任意に、追加のプロピレンおよびコモノマーを、気相反応器に供給し;
− 任意に、追加の水素を気相反応器に供給して、水素/プロピレン比を調節して、所望分子量の重合生成物を得;
− 気相反応器から重合生成物を回収し、フラッシュタンクに運び、そこにおいて圧力を減少させて、未反応モノマーおよび水素を本質的に含有するオーバーヘッド生成物、および重合固形物を主に含有する底部生成物を得;
− オーバーヘッド生成物または少なくともその大部分を、回収セクションを経て気相反応器に循環させ;および
− ポリプロピレンポリマーを、フラッシュタンクの底部生成物として回収する。
第三の特に好ましい実施態様(図2)によれば、
− プロピレンおよび任意にコポリマーを、ループ反応器中、40〜80バールの圧力、60℃〜100℃の温度において重合させ、および、水素を使用して、重合生成物の質量を調節し;
− ループ反応器からの重合生成物を回収し、気相反応器流動床に運び;
− 任意に、追加のプロピレンおよび追加のコモノマーを、気相反応器に供給し;
− 任意に、追加の水素を気相反応器に供給して、水素/プロピレン比を調節して、所望分子量の重合生成物を得;
− 第一気相反応器からの重合生成物を回収し、中間フラッシュタンクに運び、そこにおいて生成物の圧力を減少させて、未反応モノマーおよび水素を本質的に含有するオーバーヘッド生成物、および重合固形物を主に含有する底部生成物を得;
− オーバーヘッド生成物または少なくともその大部分を、回収セクションを経て第一気相反応器に循環させ;および
− 中間フラッシュタンクの底部からのポリプロピレンポリマーを、ポリマー供給システムを経て第三重合反応器に供給し;
− 第三重合反応を、気相反応器中においてコモノマーの存在下に行い;
− 第二気相反応器からの重合生成物を回収し、フラッシュタンクに運び、そこにおいて、生成物の圧力を減少させて、未反応モノマーおよび水素を本質的に含有するオーバーヘッド生成物、および重合固形物を主に含有する底部生成物を得;
− 任意に、第三重合からの重合生成物を、直接に、またはフラッシュタンクを経て、第三(第四など)気相重合反応器に運ぶことができ、そこにおいて、コモノマーの存在下に重合が行われる。
【0070】
前記の2つの好ましい実施態様が図面にも示されており、該図面は、使用される工程装置の特定の配置を示している。数字は、装置の下記部分を示す。
1;101 予備重合反応器
30;130 触媒貯蔵器
31;131 供給デバイス
32;132 稀釈剤(任意)
33;133 触媒/稀釈剤混合物
34;134 モノマー
35;135 触媒および可能な供与体
40;140 ループ反応器
42;142 稀釈剤供給(任意)
43;143 モノマー供給
44;144 水素供給
45;145 コモノマー供給(任意)
46;146 ライン46;146を通ってループ反応器
40;140へ戻る
47;147 1個または数個の排出弁
150b フラッシュセパレーター
152b 取り出しライン
60;160;160b 気相反応器
61;161;161b ガス移動ライン
62;162;162b 圧縮機
63;163;163b モノマー供給
64;164;164b コモノマー供給
65;165;165b 水素供給
66;166;166b 移送ライン
67;167 生成物移送ライン
68;168 ポリマー生成物回収システム、例えば、フラッシュ
タンク
69;169 回収ライン
70;170 モノマー回収システム

【0071】
図1によれば、貯蔵器30からの触媒が、ライン32からの任意の稀釈剤と一緒に、供給デバイス31に供給される。供給デバイス31は、触媒/稀釈剤混合物を、ライン33を経て重合室1に供給する。モノマーを34によって供給し、触媒および可能な供与体を、導管35によって反応器1に供給することができ、または、好ましくは、触媒および供与体を混合し、ライン35によって供給する。
【0072】
予備重合された触媒を、好ましくは、ライン36によって重合室1から直接に流出させ、ループ反応器40に運ぶ。ループ反応器40において、ライン42からの任意の稀釈剤、ライン43からのモノマー、ライン44からの水素、およびライン45からの任意のコモノマーを、ライン46によって添加することによって重合を継続させる。任意の触媒も、ループ反応器40に導入することができる。
【0073】
FI特許出願第971368号または第971367号に記載のように、ポリマー−炭化水素混合物が、ループ反応器40から、1個または数個の排出弁47を通って供給される。ループ反応器40から気相反応器60への、直接的な生成物移動67が存在する。
【0074】
反応器60の上部から、ライン61、圧縮機62、および熱交換機(図示せず)を通って、反応器60の下部に通常の方法で除去されるガスを循環させることによって、通常の方法で流動状態に維持されるポリマー粒子から成る流動床が、気相反応器60の下部に存在する。反応器60にミキサーを取り付けるのが必須ではないが有利である(FI特許出願第933073号に記載、図示せず)。ライン63からのモノマー、任意にライン64からのコモノマー、およびライン65からの水素を、既知の方法で反応器60の下部に導入することができる。生成物が、反応器60から移送ライン66を通ってフラッシュタンク68に連続的または定期的に取り出される。回収システムのオーバーヘッド生成物が、モノマー回収システムを経て、気相反応器に循環される。
【0075】
図2に示される実施態様は、気相反応器160からの生成物が、追加の気相反応器160bに供給されるという点においてのみ図1と異なる。ポリマー粒子が、フラッシュタンク168およびポリマー供給タンク150bから、取り出しライン152bを経て、気相反応器160bに運ばれる。気相反応器にミキサー(図示せず)を取り付けるのが好ましい。
【0076】
フラッシュセパレーター168bのオーバーヘッドが、一部分は気相反応器160bに、一部分はモノマー回収システムに循環される。
【0077】
前記の両方の実施態様において、数字70および170は、気相反応器(60、160、160b)またはセパレーター(68、168、168b)の循環モノマーを、水素および/またはモノマーより低い沸点を一般に有する軽不活性炭化水素から遊離し得る、半透膜ユニットまたは除去カラムのような分離手段を意味する。
【0078】
ポリマー
本発明によって製造される生成物は、ポリプロピレンターポリマーを包含するポリプロピレンコポリマーを含んで成る。特に、本発明によって、非常に軟質の高ランダム性コポリマーを製造することができる。該コポリマーは、少なくとも0.5重量%のコモノマー、特に少なくとも約2重量%、好ましくは最高20重量%のコモノマーを含有する。典型的なコモノマー含有量は、約2〜12重量%である。本発明の本質的特徴は、共重合の際により均質なコモノマー分布を与える高重合温度、好ましくは75℃より以上の温度の使用である。60℃の重合温度においてFTIRによって測定されるランダム性は69%であり、65℃では71%であり、および、第一反応器における75℃および第二反応器における80℃の重合温度においては74%である。
本発明によって製造される他の生成物は、生成物の耐衝撃性を向上させる、ゴム状コポリマー、特にエチレン−プロピレンコポリマーを含有するのが好ましい耐衝撃性改質プロピレンポリマーを包含する。エラストマーの比率は、プロピレンの約5〜40重量%である。
【0079】
下記の実施例は、本発明の原理を例示するものである。
【実施例1】
【0080】
PPホモポリマーの連続製造を行うための生産規模の設備をシミュレーションした。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器にも水素およびさらなるプロピレンを供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとをGPRに供給した。これらの反応器での生産速度は、予備重合において300kg/時間であり、ループにおいて15t/時間であり、GPRにおいて10t/時間であった。
予備重合ループ反応器を56バールの圧力および20℃の温度で操作した。ループ反応器を55バールの圧力および85℃の温度で操作した。ループ反応器で製造されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を制御することによって1に調節した。
GPRを35バールの圧力および85℃の温度で操作した。GPRから取り出されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧を制御することによって13に調節した。5t/時間のプロペンをGPR排出口からループ反応器に戻して再利用した。1回の処理によるプロピレンの転化率は83%であった。
【実施例2】
【0081】
良好な衝撃特性を有するPPコポリマーの連続製造を行うための生産規模の設備をシミュレーションした。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および2基の流動床気相反応器(GPR)が含まれる(図2参照)。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器にも水素およびさらなるプロピレンを供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとを第1のGPRに供給した。
第2のGPRに入れる前に、第1のGPRから得られたポリマーの圧力を抜いた。エチレンおよびさらなるプロピレンを第2のGPRに供給した。
これらの反応器での生産速度は、予備重合において300kg/時間であり、ループにおいて15t/時間であり、第1のGPRにおいて10t/時間であり、第2のGPRにおいて6t/時間であった。
予備重合ループ反応器を56バールの圧力および20℃の温度で操作した。ループ反応器を55バールの圧力および85℃の温度で操作した。ループ反応器で製造されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を制御することによって20に調節した。
第1のGPRを35バールの圧力および85℃の温度で操作した。第1のGPRから取り出されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧を制御することによって20に設定した。4.3t/時間のプロペンをGPR排出口からループ反応器に戻して再利用した。
第2のGPRを20バールの圧力および70℃の温度で操作した。第2のGPRから取り出されるPPコポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、制御手段として水素分圧を使用することによって13に調節した。2.7t/時間のプロペンを第2GPRの排出口からループ反応器に戻して再利用し、1.6t/時間のエチレンを第2のGPRに再循環した。
【実施例3】
【0082】
ランダムPPポリマーの連続製造を行うための生産規模の設備をシミュレーションした。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンおよびエチレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給した。エチレン、水素およびさらなるプロピレンもまたループ反応器に供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素エチレンおよびプロピレンとをGPRに供給した。これらの反応器での生産速度は、予備重合の間は300kg/時間であり、ループ反応器において15t/時間であり、GPRにおいて10t/時間であった。
予備重合反応器を56バールの圧力および20℃の温度で操作した。ループ反応器を55バールの圧力および75℃の温度で操作した。ループ反応器で製造されるランダムPPのMFR(2.16kg、230℃)を水素供給量の制御により7に調節し、エチレン含有量をエチレン供給量により3.5%w/wに調節した。
GPRを35バールの圧力および80℃の温度で操作した。GPRから取り出されるランダムPPのMFR(2.16kg、230℃)を水素分圧の制御によって7に調節し、エチレン含有量をエチレン分圧の調節によって3.5%w/wに調節した。5t/時間のプロペンおよび33kg/時間のエチレンをGPR排出口からループ反応器に戻して再循環した。1回の処理によるプロピレンおよびエチレンの転化率は、それぞれ、83%および96%であった。
【実施例4】
【0083】
良好な衝撃特性およびクリープ特性を有するPPコポリマーの連続製造を行うための生産規模の設備をシミュレーションした。設備には、触媒、アルキル、供与体、エチレンおよびプロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器、フラッシュタンクおよび2基の流動床気相反応器が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器にも水素およびさらなるプロピレンを供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーを、プロピレンおよびポリマーが分離されるフラッシュタンクに供給した。
フラッシュタンクから得られたポリマーを第1のGPRに供給した。フラッシュタンクから得られたプロピレンは、水素を除去した後で第1のGPRに供給した。エチレンおよびさらなるプロピレンを第1のGPRに供給した。第1のGPRから得られたポリマーを第2のGPRに供給した。エチレン、いくらかの水素、およびさらなるプロピレンを第2のGPRに供給した。
これらの反応器での生産速度は、予備重合において300kg/時間であり、ループ反応器において10t/時間であり、第1のGPRにおいて10t/時間であり、第2のGPRにおいて6t/時間であった。
予備重合反応器を56バールの圧力および20℃の温度で操作した。ループ反応器を55バールの圧力および85℃の温度で操作した。ループ反応器で製造されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を調節することによって100に設定した。
GPRを35バールの圧力および80℃の温度で操作した。GPRのPPのMFR(2.16kg、230℃)を、反応器間の製造分割および蒸発プロペンからの水素除去効率を制御することによって0.4に設定した。エチレン含有量を、エチレン分圧を調節し、反応器間の製造分割を制御することによって2%w/wに設定した。
第2のGPRを20バールの圧力および70℃の温度で操作した。第2のGPRから取り出されたPPコポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧を制御し、そして反応器間の製造分割を制御することによって0.3に調節した。少量のプロピレンを、第2GPRの排出口からループ反応器に戻して循環させた。
【実施例5】
【0084】
良好なクリープ特性を有するPPコポリマーの連続製造を行うための生産規模の設備をシミュレーションした。設備には、触媒、アルキル、供与体、エチレンおよびプロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器、フラッシュタンクおよび流動床気相反応器が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器にもエチレンおよびさらなるプロピレンを供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーを、モノマーおよびポリマーが分離されるフラッシュタンクに供給した。
フラッシュタンクから得られたポリマーをGPRに供給した。フラッシュタンクから得られたプロピレンは、エチレンを除去した後でGPRに供給した。水素およびさらなるプロピレンをGPRに供給した。
これらの反応器での生産速度は、予備重合の間において300kg/時間であり、ループ反応器において15t/時間であり、第1のGPRにおいて10t/時間であった。
【実施例6】
【0085】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、PPホモポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器には水素およびさらなるプロピレンも供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとをGPRに供給した。
生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、GPRから重合生成物を取り出した後で分離した。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN(チーグラー−ナッタ)触媒であった。この触媒を、予備重合反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は250であり、Al/Doは40(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともに予備重合反応器に入れた。予備重合反応器を、51バールの圧力、20℃の温度、および7分の触媒平均滞留時間で操作した。
予備重合した触媒プロピレンおよび他の成分をループ反応器に移した。ループ反応器を、50バールの圧力、80℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、制御手段として水素供給量を使用することによって7に調節した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーをGPRに移した。GPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が21バールのもとで操作した。その温度は90℃であり、触媒の平均滞留時間は1時間であった。GPR装置から取り出されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は7であり、水素分圧を調節することによって制御した。反応器間の製造分割は、予備重合において1%であり、ループ装置において49%であり、GPRにおいて50%であった。触媒の生産性は、32kgPP/g触媒であった。
【実施例7】
【0086】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、PPホモポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器には水素およびさらなるプロピレンも供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとをGPRに供給した。
生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、GPRから取り出した後で分離した。
使用した触媒は、フィンランド国特許出願第963707号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN触媒であった。この触媒を、予備重合反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は250であり、Al/Doは40(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともに予備重合反応器に入れた。予備重合反応器を、53バールの圧力、20℃の温度、および7分の触媒平均滞留時間で操作した。
予備重合した触媒プロピレンおよび他の成分をループ反応器に移した。ループ反応器を、52バールの圧力、85℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を制御することによって7に調節した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーをGPRに移した。GPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が21バールのもとで操作した。GPRの温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1時間であった。GPR装置から取り出されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は7であり、水素分圧を調節することによって制御した。反応器間の製造分割は、予備重合において1%であり、ループ装置において53%であり、GPRにおいて48%であった。触媒の生産性は、50kgPP/g触媒であった。
【実施例8】
【0087】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、PPホモポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器には水素およびさらなるプロピレンも供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとをGPRに供給した。
生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、GPRから生成物を取り出した後で分離した。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN触媒であった。この触媒を、予備重合反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は250であり、Al/Doは40(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともに予備重合反応器に入れた。予備重合反応器を、58バールの圧力、20℃の温度、および7分の触媒平均滞留時間で操作した。
予備重合した触媒プロピレンおよび他の成分をループ反応器に移した。
ループ反応器を、57バールの圧力、80℃の温度、および2時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量によって375に設定した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーをGPRに移した。GPRを、29バールの全圧で、プロピレン分圧が16バールのもとで操作した。反応器の温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は2時間であった。GPRから取り出されるPPホモポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は450であり、これは、水素分圧を制御し、そして反応器間の製造分割を制御することによって調節した。反応器間の製造分割は、予備重合において1%、ループ反応器において50%、そしてGPRにおいて49%であるように調節した。
【実施例9】
【0088】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、PPランダムポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンおよびエチレンの供給システム、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素、プロピレンおよびエチレンとをGPRに供給した。生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、GPRから取り出した後で分離した。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で大きな立体特異性のZN触媒であった。この触媒を、フィンランド国特許第95387号に従って、回分式で、プロピレンと予備重合した(PP/触媒の重量比は10であった)。予備重合した触媒を、ループ反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は140であり、Al/Doは10(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともにループ反応器に入れた。ループ反応器を、50バールの圧力、75℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量によって4に調節した。エチレン含有量を、エチレン供給量によって3.5%w/wであるように制御した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーをGPRに移した。GPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が21バールのもとで操作した。GPRの操作温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1.5時間であった。GPRから取り出されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧によって4に調節した。エチレン含有量を、エチレン供給量によって3.5%w/wであるように制御した。反応器間の製造分割は、ループ反応器において55%であり、そしてGPRにおいて45%であった。
【実施例10】
【0089】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、PPランダムポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンおよびエチレンの供給システム、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとをGPRに供給した。生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、GPRから取り出した後で分離した。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN触媒であった。この触媒を、フィンランド国特許第95387号に従って、バッチ式で、プロピレンと予備重合した(PP/触媒の重量比は10であった)。予備重合した触媒を、ループ反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は135であり、Al/Doは10(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともにループ反応器に入れた。ループ反応器を、50バールの圧力、75℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を調節することによって0.2に設定した。エチレン含有量は3.5%w/wであり、これは、エチレン供給量を制御することによって調節した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーをGPRに移した。GPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が21バールのもとで操作した。その操作温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1.5時間であった。GPRから取り出されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧を制御することによって3に調節した。エチレン含有量を、反応器間の製造分割を調節することによって1.8%w/wに設定した。所望するエチレン含有量は、反応器間の製造分割が、ループ装置において40%であり、そしてGPRにおいて60%であるときに得られた。
予備重合反応器を56バールの圧力および20℃の温度で操作した。ループ反応器を55バールの圧力および75℃の温度で操作した。ループ反応器で製造されるランダムPPのMFR(2.16kg、230℃)は0.1未満であり、エチレン含有量を、エチレン供給量を制御することによって3.5%w/wに調節した。
GPR反応器を35バールの圧力および80℃の温度で操作した。GPRから取り出されるPPコポリマーのMFR(2.16kg、230℃)は0.3であり、これを水素分圧によって調節した。エチレン含有量を、反応器間の製造分割を調節することによって1.8%w/wに設定した。
ループ排出物中のエチレンをフラッシュガスから回収し、ループ反応器に戻して循環した。GRPの排出物中のプロピレンを回収して、そして水素を除去した後でループ反応器に供給した。1回の処理によるプロピレンおよびエチレンの転化率は、それぞれ、83%および84%であった。
【実施例11】
【0090】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、良好な衝撃特性およびクリープ特性を有するPPコポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンおよびエチレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および2基の流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給する。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器には、水素、エチレンおよびさらなるプロピレンも供給する。
ループ反応器から得られるポリマースラリーと、さらなる水素およびプロピレンとを第1のGPRに供給する。第1のGPRから得られるポリマーを第2のGPRに供給する。エチレン、いくらかの水素、およびさらなるプロピレンを第2のGPRに供給した。生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、第2のGPRから取り出した後で分離する。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN触媒である。この触媒を、予備重合反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させる(Al/Ti比は150であり、Al/Doは10(モル)である)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともにループ反応器に入れる。予備重合反応器を、51バールの圧力、20℃の温度、および7分の触媒平均滞留時間で操作する。
ループ装置を、50バールの圧力、75℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作する。ループ反応器で製造されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を制御することによって7に設定する。エチレン含有量を、制御手段としてエチレン供給量を使用することによって3.5%w/wに調節する。
ループ反応器から得られたポリマースラリーを第1のGPRに移す。第1のGPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が21バールのもとで操作する。その操作温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1.5時間である。GPRから取り出されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧を使用することによって10に調節する。エチレン含有量を、反応器間の製造分割を調節することによって2%w/wに設定する。
第1のGPRから得られたポリマーを第2のGPRに移す。第2のGPRを、10バールの全圧で、モノマー分圧が7バールのもとで操作する。その操作温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1.5時間である。GPRから取り出されるPPコポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧によって7に調節する。エチレン含有量を、エチレン分圧を調節し、そして反応器間の製造分割を制御することによって10%w/wに設定する。
所望する特性は、反応器間の製造分割が、予備重合において1%であり、ループ反応器において40%であり、第1のGPRにおいて40%であり、そして第2のGPRにおいて19%であるときに得られる。
【実施例12】
【0091】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、非常に軟らかなPPコポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンおよびエチレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器にも水素、エチレンおよびさらなるプロピレンを供給した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーと、さらなるエチレン、水素およびプロピレンとをGPRに供給した。生成ポリマーおよび未反応プロピレンを、GPRから取り出した後で分離する。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN触媒であった。この触媒を、予備重合反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は150であり、Al/Doは10(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともにループ反応器に入れた。予備重合反応器を、51バールの圧力、20℃の温度、および7分の触媒平均滞留時間で操作した。
ループ反応器を、50バールの圧力、75℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量によって4に制御した。エチレン含有量を、エチレン供給量を制御することによって3.8%w/wに調節した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーを第1のGPRに移した。第1のGPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が21バールのもとで操作した。その操作温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1.2時間であった。GPRから取り出されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧を調節することによって2.5に設定した。エチレン含有量を、反応器間の製造分割およびエチレン分圧を調節することによって8%w/wに設定した。
所望する特性は、反応器間の製造分割が、予備重合において1%であり、ループ反応器において45%であり、そしてGPRにおいて55%であるときに得られる。
GPRから得られたポリマーを別のGPRに移して、第2のGPRにおけるエチレン分圧をさらにより大きくすることによって、さらにより軟らかなPPコポリマーを製造することができる。
【実施例13】
【0092】
連続操作されるパイロットプラントを使用して、良好なクリープ特性を有するPPコポリマーを製造した。設備には、触媒、アルキル、供与体、プロピレンおよびエチレンの供給システム、予備重合反応器、ループ反応器および流動床気相反応器(GPR)が含まれる。
触媒、アルキル、供与体およびプロピレンを予備重合反応器に供給した。予備重合反応器から得られたポリマースラリーをループ反応器に供給し、ループ反応器には水素、およびさらなるプロピレンも供給した。
ループ反応器から得られたポリマースラリーを、モノマーおよびポリマーが分離されるフラッシュタンクに供給した。フラッシュタンクから得られたポリマーをGPRに供給した。フラッシュタンクから得られたプロピレンは、水素を除去した後でGPRに供給した。エチレン、さらなる水素、およびさらなるプロピレンをGPRに供給した。
使用した触媒は、米国特許第5,234,879号に従って作製された高活性で高立体特異性のZN触媒であった。この触媒を、予備重合反応器に供給する前に、トリエチルアルミニウム(TEA)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)と接触させた(Al/Ti比は150であり、Al/Doは10(モル)であった)。
触媒を米国特許第5,385,992号に従って供給し、プロピレンとともにループ反応器に入れた。予備重合反応器を、51バールの圧力、20℃の温度、および7分の触媒平均滞留時間で操作した。
ループ反応器を、50バールの圧力、75℃の温度、および1時間の触媒平均滞留時間で操作した。ループ反応器で製造されるPPランダムポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素供給量を調節することによって10に設定した。
GPR反応器を、29バールの全圧で、プロピレン分圧が16バールのもとで操作した。その操作温度は80℃であり、触媒の平均滞留時間は1.1時間であった。GPRから取り出されるPPコポリマーのMFR(2.16kg、230℃)を、水素分圧および反応器間の製造分割によって5に調節した。エチレン含有量を、反応器間の製造分割およびエチレン分圧を制御することによって3.5%w/wに調節した。
所望する特性は、反応器間の製造分割が、予備重合において1%であり、ループ反応器において40%であり、そしてGPRにおいて59%であるときに得られる。
GPRから得られたポリマーを別のGPRに移して、第2のGPRにおけるエチレン分圧をさらにより大きくすることによって、さらにより良好な衝撃耐性を有するPPコポリマーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の第一の好ましい実施態様の工程配置の模式図である。
【図2】図2は、本発明の第二の好ましい実施態様の工程配置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器中において、高い温度および圧力において、触媒の存在下に、プロピレンを任意にコモノマーと重合させることを含んで成るプロピレンホモポリマーおよびコポリマーの製造方法であって、未反応モノマーを含有する少なくとも1つのスラリー反応器の重合生成物を、未反応モノマーをスラリー反応器に本質的に循環させずに、第一気相反応器に直接に運ぶ方法。
【請求項2】
スラリー反応器の重合生成物が、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー、およびポリプロピレンとプロピレンコポリマーの混合物から成る群から選択されるポリマー物質を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラリー反応器がループ反応器を含んで成り、反応媒体中のプロピレンの濃度が60重量%より以上であり、生成物が粒子形態で形成される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ランダムまたはター−コポリマーを製造するために、60℃〜80℃の温度においてスラリー反応器が操作される請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
80℃から反応媒体の臨界温度の範囲の温度において、スラリー反応器が操作される請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
反応媒体の臨界温度より高い温度において、およびポリマーの軟化温度より低い温度において、スラリー反応器が操作される請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
35バール〜100バールの範囲の圧力において、スラリー反応器が操作される請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
重合生成物が、直接パイプラインによって、スラリー反応器から第一気相反応器に運ばれる請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
重合生成物が第一気相反応器に供給される前に、重合生成物の反応媒体が蒸発される請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
反応媒体の蒸発に必要とされるエネルギーの少なくとも一部を供給するために、蒸気によって加熱されるジャケット付パイプラインによって、重合生成物が、スラリー反応器から第一気相反応器に運ばれる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第一気相反応器に供給される重合生成物が、>0.5重量%、好ましくは2〜16重量%の少なくとも1種類のコモノマーを含んで成るコポリマーを含有する請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
第一気相反応器中において、重合生成物を追加のコモノマーと共重合させて、コモノマー含有量を増加させる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コモノマー含有量を最高20重量%まで増加させる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
追加のモノマーを供給せずに、第一気相反応器中における重合が行われる請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
重合生成物を気相反応器から回収して、向上した特性、例えば、剛性、耐クリープ性、または軟らかさを付与する請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
コモノマーの存在下に、重合生成物を共重合にかけて、向上した耐衝撃性を有する第三ポリマー生成物を得る請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第一気相反応器に直列に配置された第二気相反応器中において、共重合が行われる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第一改質ポリマーを回収し、さらなる共重合に付して、向上した剛性、衝撃バランス、あるいは応力白化または白化特性を有する第四ポリマー生成物を得る請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
第二気相反応器に直列に配置された第三気相反応器中において、さらなる共重合反応が行われる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのさらなる反応器中において、第二改質ポリマーを少なくとも1つのさらなる共重合に付す請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
未反応モノマーの少なくとも一部を、第二および/または第三気相反応器から回収し、前の気相反応器に循環させる請求項1〜20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
第一気相反応器から回収される未反応モノマーが、気相反応器に循環される請求項1〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
第一気相反応器から回収される未反応モノマーが、スラリー反応器に循環される請求項1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
第一気相反応器から回収される未反応モノマーの一部が、スラリー反応器に循環される、請求項1〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
循環されるモノマーの量が、スラリー反応器の供給材料におけるモノマーの量の1〜65重量%を占める請求項24に記載の方法。
【請求項26】
スラリー反応器の生成率が、スラリー反応器および気相反応器の合計生成率の10〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、特に40〜60重量%である請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの反応器において、水素が分子量改質剤として使用される請求項1〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
使用される触媒が、工程に供給される前に予備重合に付される請求項1〜27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
プロピレンホモポリマーおよびコポリマーの製造方法であって、該方法が、
− 少なくとも1つのスラリー反応器中で、高い温度および圧力において、触媒の存在下に、プロピレンを任意にコモノマーと重合させて、プロピレンポリマーおよび未反応モノマーを含んで成る第一重合生成物を得;
− ポリマーおよび未反応モノマーを回収し;
− ポリマーを少なくとも1つの気相反応器に供給し;
− 本質的に全ての未反応モノマーを該気相反応器に供給し;
− 該気相反応器中において、ポリマーおよび未反応モノマーを重合にかけて、プロピレンポリマーおよび気体物質を含有する第二重合生成物を得;および
− プロピレンポリマーを回収する;
段階を含んで成る方法。
【請求項30】
プロピレンポリマーが、共重合のために、さらなる気相反応器に供給される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの反応器において、水素が分子量改質剤として使用される請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
本質的にモノマーを追加供給せずに、気相における重合が行われる請求項29〜31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
プロピレンコポリマーの製造方法であって、該方法が、
− 少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器中で、60℃〜85℃の高温および高圧において、触媒の存在下に、プロピレンをコモノマーと重合させ、ポリマー生成物の少なくとも10%が気相反応器において製造され;
− 未反応モノマーを含有する共重合生成物を、スラリー反応器から回収し;および
− 未反応モノマーを、気相反応器の前のスラリー反応器に本質的に循環させずに、共重合生成物を第一気相反応器に運ぶ;
段階を含んで成る方法。
【請求項34】
ランダムおよびター−ポリマーを製造するために、60℃〜75℃の温度においてスラリー反応器が操作される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
向上した活性およびコモノマーランダム性のために、75℃〜85℃の温度において、スラリー反応器が操作される請求項33に記載の方法
【請求項36】
コモノマーの存在下に、重合生成物を共重合に付して、向上した軟らかさを有する第一改質ポリマーを得る請求項33に記載の方法。
【請求項37】
プロピレンポリマーの製造方法であって、該方法が、
− 少なくとも1つのスラリー反応器および少なくとも1つの気相反応器中で、少なくとも80℃の高温および高圧において、触媒の存在下に、プロピレンをコモノマーと重合させ、ポリマー生成物の少なくとも40%が気相反応器において製造され;
− 未反応モノマーを含有する共重合生成物を、スラリー反応器から回収し;および
− 未反応モノマーを、気相反応器の前のスラリー反応器に本質的に循環させずに、重合生成物を第一気相反応器に運ぶ;
段階を含んで成る方法。
【請求項38】
コモノマーの存在下に、重合生成物を共重合にかけて、向上した耐衝撃性を有する改質ポリマー生成物を得る請求項37に記載の方法。
【請求項39】
第一気相反応器に直列に配置された第二気相反応器中において、共重合が行われる請求項37に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1つに記載の方法によって製造されるプロピレンホモまたはコポリマー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−121028(P2008−121028A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31270(P2008−31270)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【分割の表示】特願平11−503854の分割
【原出願日】平成10年6月24日(1998.6.24)
【出願人】(508014132)
【Fターム(参考)】