説明

プロペラファン、成型用金型および流体送り装置

【課題】送風能力の向上や、ファン回転時の騒音の低減を図るプロペラファン、そのプロペラファンの製造に用いられる成型用金型およびそのプロペラファンを備える流体送り装置、を提供する。
【解決手段】プロペラファンは、仮想の中心軸101を中心に回転するのに伴って送風を行なう翼21を備える。翼21は、回転方向の側に配置される前縁部22と、回転方向の反対側に配置される後縁部24と、中心軸101を中心とする周方向に延び、前縁部22の外周端と後縁部24の外周端との間を接続する外縁部23とを有する。外縁部23には、中心軸101の軸方向から翼21を見た場合に半径方向外側に凸となる形状を有し、周方向に配列される複数の凸部31と、互いに隣り合う凸部31間に配置される凹部36とが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、プロペラファン、成型用金型および流体送り装置に関し、より特定的には、送風機のためのプロペラファンと、そのようなプロペラファンを樹脂により成型するための成型用金型と、そのようなプロペラファンを備えた空気調和機の室外機、扇風機、空気清浄機、加湿機、除湿機、ファンヒータ、冷却装置、換気装置等の流体送り装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロペラファンに関して、たとえば、特開2009−36187号公報には、ベルマウスとファンの翼端部との間の空間に発生する、翼面の圧力面側から負圧面側に流れ込む漏れ流れの規模を抑制し、縮小することを目的としたプロペラファンが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたプロペラファンにおいては、プロペラファンの翼端部が波形の構造を有する。波形の構造は、翼端部の前縁側から後縁側に向けて、翼の正圧面および負圧面が交互に突出するように形成される。
【0003】
また、特開2003−184792号公報には、翼端渦の発生を可及的に抑制し、空気調和機用室外機ユニットの組み込み時の静音性能を向上させることを目的とした送風機が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された送風機においては、羽根の外周端部に、その前縁付近から後縁付近にかけて次第に半径方向の幅が大きくなる反り返り部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−36187号公報
【特許文献2】特開2003−184792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1および2に開示されるように、翼の外縁部に発生する、圧力面側から負圧面側に流れ込む渦(馬蹄渦)を抑制することによって、騒音を低減させたり、ファンモータの入力を低減させたりする試みが実施されている。
【0006】
一方、プロペラファンの回転時、翼面上には、翼の前縁部もしくは外縁部から後縁部に向かう空気流れ(主流)が形成される。このような主流は、翼面上の上流側では翼面に沿った流れとなるものの、下流側では主流が翼面から剥離する現象が生じ、特に負圧面側でこのような現象が顕著となる。このような剥離の発生は、プロペラファンの送風能力を低下させたり、ファン回転時の騒音を増大させたりする原因となる。
【0007】
また、プロペラファンは、シロッコ(多翼)ファンなどと比較すると、翼の枚数が少なく、翼と翼との間の大空間を空気が通過するため、空気を攪拌する能力が低い。このため、プロペラファンの上流側に強い偏流が存在すると、ファン内部に風速の大きい領域と小さい領域とが生じる。この場合、プロペラファンの翼は、その風速の大きい領域と小さい領域とを交互に通過するため、圧力変動が生じ、強い狭帯域騒音が発生する。また、風速が小さい領域で主流が翼面から剥離する現象が顕著となり、プロペラファンの送風能力が低下する。
【0008】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、送風能力の向上や、ファン回転時の騒音の低減を図るプロペラファン、そのプロペラファンの製造に用いられる成型用金型およびそのプロペラファンを備える流体送り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従ったプロペラファンは、仮想の中心軸を中心に回転するのに伴って送風を行なう翼を備える。翼は、回転方向の側に配置される前縁部と、回転方向の反対側に配置される後縁部と、中心軸を中心とする周方向に延び、前縁部の外周端と後縁部の外周端との間を接続する外縁部とを有する。外縁部には、中心軸の軸方向から翼を見た場合に半径方向外側に凸となる形状を有し、周方向に配列される複数の凸部と、互いに隣り合う凸部間に配置される凹部とが形成される。
【0010】
このように構成されたプロペラファンによれば、翼の回転に伴って、翼面の表層には、複数の凸部の各々を起点に翼面上を通過する翼先端渦が2次流れとして形成され、さらにその上層には、前縁部もしくは外縁部から流入し、翼面上を通過し、後縁部から流出する空気流れ(主流)が形成される。この際、各凸部により生じた翼先端渦から主流に対して運動エネルギが付与されることにより、主流が翼面上の下流側で翼面から剥離することを抑制できる。これにより、プロペラファンの送風能力を向上させるとともに、剥離の発生に起因する騒音を低減させることができる。
【0011】
また好ましくは、凸部は、翼の回転方向に向かって突出するように形成される。このように構成されたプロペラファンによれば、翼の回転に伴い凸部を空気と強く衝突させることにより、翼先端渦を効率的に発生させることができる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0012】
また好ましくは、複数の凸部は、第1凸部と、中心軸を中心とする周方向において第1凸部よりも後縁部に近い側に配置され、第1凸部と隣り合う第2凸部とを含む。第1凸部および第2凸部は、それぞれ、翼の回転方向に向かって突出する先端に第1先端部および第2先端部を有する。中心軸を中心とする周方向において、第1先端部と、第1凸部と第2凸部との間に配置される凹部の底部との間に、第2先端部が位置決めされる。
【0013】
このように構成されたプロペラファンによれば、翼の回転に伴い第1先端部および第2先端部を空気と強く衝突させることにより、第1先端部および第2先端部を起点とした翼先端渦を効率的に発生させることができる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0014】
また好ましくは、複数の凸部は、第3凸部と、中心軸を中心とする周方向において第3凸部よりも後縁部に近い側に配置される第4凸部とを含む。第3凸部および第4凸部は、それぞれ、翼の回転方向に向かって突出する先端に第3先端部および第4先端部を有する。中心軸から第3先端部までの長さは、中心軸から第4先端部までの長さよりも小さい。
【0015】
このように構成されたプロペラファンによれば、翼の回転に伴い、第3先端部および第4先端部を起点とした翼先端渦を発生させる。この際、前縁部側に配置された第3凸部の第3先端部は、後縁部側に配置された第4凸部の第4先端部よりも、中心軸を中心とする半径方向内側に位置決めされるため、第3先端部および第4先端部を起点とした翼先端渦を互いに干渉させることなく、翼面上の平面的な領域に形成することができる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0016】
また好ましくは、複数の凸部は、翼の回転方向に向かって突出する先端に先端部を有する。中心軸を中心とする周方向において後縁部に近い側から前縁部に近い側の凸部ほど、中心軸から先端部の長さが小さくなる。このように構成されたプロペラファンによれば、複数の凸部の各先端部を起点とする翼先端渦を互いに干渉させることなく、翼面上の平面的な領域に形成することができる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0017】
また好ましくは、複数の凸部は、第5凸部と、中心軸を中心とする周方向において第5凸部よりも後縁部に近い側に配置され、第5凸部と隣り合う第6凸部と、中心軸を中心とする周方向において第6凸部よりも後縁部に近い側に配置され、第6凸部と隣り合う第7凸部とを含む。第5凸部と第6凸部との間の凹部の切り込み長さが、第6凸部と第7凸部との間の凹部の切り込み長さよりも大きい。
【0018】
このように構成されたプロペラファンによれば、翼の回転に伴い、凹部には、翼面の一方の側の面と他方の側の面との間の圧力差に起因した馬蹄渦が2次流れとして形成される。この際、凸部により生じた翼先端渦と、凹部に生じた馬蹄渦とから主流に対して運動エネルギが付与されることにより、主流が翼面上の下流側で翼面から剥離することを抑制できる。一方、外縁部から流入し、翼面上を流れ、後縁部から流出する主流の経路長は、前縁部に近い位置から流入した場合ほど長く、後縁部に近い位置から流入した場合ほど短くなる。
【0019】
本発明では、前縁部により近い第5凸部と第6凸部との間の凹部の切り込み長さが、後縁部により近い第6凸部と第7凸部との間の凹部の切り込み長さよりも大きい。このため、馬蹄渦から主流に対して付与する運動エネルギが、より長い経路長を進行する主流で大きくなり、より短い経路長を進行する主流で小さくなる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0020】
また好ましくは、中心軸を中心とする周方向において後縁部に近い側から前縁部に近い側の凹部ほど、凹部の切り込み長さが大きくなる。このように構成されたプロペラファンによれば、馬蹄渦から主流に対して付与する運動エネルギが、より長い経路長を進行する主流で大きくなり、より短い経路長を進行する主流で小さくなる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0021】
また好ましくは、外縁部には、複数の凹部が形成される。このように構成されたプロペラファンによれば、各凹部の両側に配置される凸部により翼先端渦を発生させることによって、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0022】
また好ましくは、前縁部の外周端と外縁部との接続部分が、翼の回転方向に向かって突出し、複数の凸部のうちの1つの凸部を形成する。このように構成されたプロペラファンによれば、翼の回転に伴い前縁部の外周端と外縁部との接続部分を空気と強く衝突させることにより、その接続部分から形成される凸部を起点とした翼先端渦を効率的に発生させることができる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0023】
また好ましくは、プロペラファンは、周方向に離間して設けられる複数の翼を備える。複数の翼には、互いに同じ形態により凸部が形成される。このように構成されたプロペラファンによれば、各翼に形成する凸部を、翼先端渦を発生させて主流の剥離を防ぐという観点から最適化した形態とできる。
【0024】
また好ましくは、プロペラファンは、周方向に離間して設けられる複数の翼を備える。複数の翼には、互いに異なる形態により凸部が形成される。このように構成されたプロペラファンによれば、翼が一定周期で通過することに起因する狭帯域騒音を低減させることができる。
【0025】
また好ましくは、プロペラファンは、樹脂により成型される。このように構成されたプロペラファンによれば、軽量かつ高剛性のプロペラファンを実現することができる。
【0026】
この発明に従った成型用金型は、上述のいずれかに記載のプロペラファンを樹脂により成型するために用いられる。このように構成された成型用金型によれば、軽量かつ高剛性の樹脂製プロペラファンを製造することができる。
【0027】
この発明に従った流体送り装置は、上述のいずれかに記載のプロペラファンを備える。このように構成された流体送り装置によれば、本発明におけるプロペラファンを備えることにより、送風能力が向上され、ファン回転時の騒音が低減された流体送り装置を実現できる。
【発明の効果】
【0028】
以上に説明したように、この発明に従えば、送風能力の向上や、ファン回転時の騒音の低減を図るプロペラファン、そのプロペラファンの製造に用いられる成型用金型およびそのプロペラファンを備える流体送り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1におけるプロペラファンを示す側面図である。
【図2】図1中の矢印IIに示す方向(吸込側)から見たプロペラファンを示す平面図である。
【図3】図1中の矢印IIIに示す方向(噴出側)から見たプロペラファンを示す平面図である。
【図4】図1中のプロペラファンを吸込側から見た斜視図である。
【図5】図1中のプロペラファンの翼を拡大して示す平面図である。
【図6】プロペラファンの翼面上に形成される空気流れの流線の挙動を示す平面投影図である。
【図7】プロペラファンの翼面上に形成される空気流れの流線の挙動を示す回転投影図である。
【図8】図6中のVIII−VIII線上に沿った翼断面を示す図である。
【図9】図1から図4中のプロペラファンの翼面上の空気流れ(2次流れ)を示す平面図である。
【図10】図9中のX−X線上の沿った位置の空気流れ(主流および2次流れ)を示す断面図である。
【図11】屈曲ダクトに設置されたプロペラファンと、ダクトの経路上の空気流れとを示す断面図である。
【図12】図1から図4中のプロペラファンを図11中の屈曲ダクトに設置した場合の空気流れを模式的に表わした図である。
【図13】図1から図4中のプロペラファンの第1変形例を示す平面図である。
【図14】図1から図4中のプロペラファンの第2変形例を示す平面図である。
【図15】プロペラファンの製造に用いられる成型用金型を示す断面図である。
【図16】プロペラファンを用いた空気調和機の室外機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるプロペラファンを示す側面図である。図2は、図1中の矢印IIに示す方向(吸込側)から見たプロペラファンを示す平面図である。図3は、図1中の矢印IIIに示す方向(噴出側)から見たプロペラファンを示す平面図である。図4は、図1中のプロペラファンを吸込側から見た斜視図である。
【0032】
図1から図4を参照して、まず、本実施の形態におけるプロペラファン10の基本的な構造について説明する。プロペラファン10は、3枚翼のプロペラファンであり、たとえば、ガラス繊維入りAS(acrylonitrile-styrene)樹脂等の合成樹脂により一体成型されている。
【0033】
プロペラファン10は、翼21A、翼21Bおよび翼21C(以下、特に区別しない場合は翼21という)を有する。翼21は、仮想軸である中心軸101を中心に、図4中の矢印104に示す方向に回転する。翼21は、中心軸101を中心に回転することにより、図1中の吸込側から噴出側に送風を行なう。
【0034】
翼21A、翼21Bおよび翼21Cは、プロペラファン10の回転軸、すなわち中心軸101の周方向において、等間隔に配置されている。本実施の形態では、翼21A、翼21Bおよび翼21Cは、同一形状に形成されており、いずれかの翼21を中心軸101を中心に回転させた場合に、その翼21の形状と別の翼21の形状とが一致するように形成されている。翼21Bは、翼21Aに対してプロペラファン10の回転方向の側に隣り合って配置され、翼21Cは、翼21Bに対してプロペラファン10の回転方向の側に隣り合って配置されている。
【0035】
翼21は、プロペラファン10の回転方向の側に配置される前縁部22と、回転方向の反対側に配置される後縁部24と、前縁部22の外周端と後縁部24の外周端との間を接続する外縁部23とを有する。
【0036】
プロペラファン10を中心軸101の軸方向から見た場合、すなわち、プロペラファン10を平面的に見た場合に、前縁部22および外縁部23は、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に向けて延びている。前縁部22は、さらに、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に湾曲しながら回転方向に向かって延びている。後縁部24は、中心軸101を中心とする周方向において、前縁部22と対向して配置されている。外縁部23は、中心軸101を中心とする周方向に延びて形成されている。外縁部23は、全体として、前縁部22の外周端と後縁部24の外周端との間で円弧状に延びて形成されている。
【0037】
翼21は、翼先端縁部25をさらに有する。翼先端縁部25は、前縁部22の外周端と外縁部23との接続部分に配置されている。前縁部22および外縁部23は、プロペラファン10の回転方向に向けて延伸し、その先端で翼先端縁部25に連なっている。前縁部22の外周端と外縁部23とは、翼先端縁部25において湾曲しながら接続されている。翼先端縁部25は、その翼先端縁部25を有する翼21において、プロペラファン10の最も回転方向の先端側に配置されている。プロペラファン10を平面的に見た場合に、翼21は、翼先端縁部25を先端に鎌状に尖った形状を有する。
【0038】
プロペラファン10を平面的に見た場合に、翼21の外形が、前縁部22、翼先端縁部25、外縁部23および後縁部24によって構成されている。
【0039】
翼21には、プロペラファン10の回転に伴って送風を行なう(吸込側から噴出側に空気を送り出す)ための翼面28が形成されている。
【0040】
翼面28は、中心軸101の軸方向において吸込側および噴出側に面する側にそれぞれ形成されている。翼面28は、前縁部22、翼先端縁部25、外縁部23および後縁部24に囲まれた領域に形成されている。翼面28は、前縁部22、翼先端縁部25、外縁部23および後縁部24に囲まれた領域の全面に形成されている。
【0041】
翼21A、翼21Bおよび翼21Cの翼面28は、それぞれ、前縁部22から後縁部24に向かう周方向において、吸込側から噴出側に傾斜する湾曲面により形成されている。後縁部24側の翼面28は、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に向かって、中心軸101に略直交する方向に延在する。前縁部22側の翼面28は、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に向かって、噴出側から吸込側に傾斜して延在する。
【0042】
翼面28は、正圧面26と、正圧面26の裏側に配置される負圧面27とから構成されている。正圧面26は、翼面28の噴出側に面する側に形成され、負圧面27は、翼面28の吸込側に面する側に形成されている。プロペラファン10の回転時、翼面28上で空気流れが発生するのに伴って、正圧面26で相対的に大きく、負圧面27で相対的に小さくなる圧力分布が生じる。
【0043】
プロペラファン10は、翼21A、翼21Bおよび翼21Cを互いに連接する(つなげる)連接部46をさらに有する。プロペラファン10を中心軸101の軸方向から見て、翼21A、翼21Bおよび翼21Cを中心軸101の周方向において互いに離間させるような最小の仮想円102を描いた場合に、仮想円102の内側に連接部46が配置され、仮想円102の外側に翼21A、翼21Bおよび翼21Cが配置される。
【0044】
仮想円102の外周上に配置される翼21Aの根元部、翼21Bの根元部および翼21Cの根元部は、中心軸101の軸周りに配置された連接部46によって互いに接続されている。
【0045】
連接部46は、吸込側および噴出側に面する側にそれぞれ翼面47を有し、翼型に形成されている。翼面47は、翼21Aの翼面28、翼21Bの翼面28および翼21Cの翼面28からそれぞれ連続して形成されている。翼21Aの翼面28、翼21Bの翼面28および翼21Cの翼面28は、翼面47を介して連続的に形成されている。
【0046】
たとえば、翼21Aおよび翼21Bに注目すると、翼21Aの前縁部22と翼21Bの後縁部24とが周方向において対峙するため、翼21A側の翼面47の傾斜方向と、翼21B側の翼面47の傾斜方向とが、ねじれた位置関係となる。翼21Aおよび翼21Bの翼面28からそれぞれ連接部46の翼面47に連なるに従って翼面の傾斜は小さくなり、翼21A側の翼面47と翼21B側の翼面47とが、やがて中心軸101を通る線上において滑らかに接続される。
【0047】
本実施の形態におけるプロペラファン10においては、連接部46において翼21Aの根元部、翼21Bの根元部および翼21Cの根元部を接続する領域が、回転に伴って送風を行なう翼面状に形成されている。
【0048】
図4中に最も明確に表わされるように、翼21Aの前縁部22と翼21Bの後縁部24とが連接部46を通じて接続されており、翼21Bの前縁部22と翼21Cの後縁部24とが連接部46を通じて接続され、翼21Cの前縁部22と翼21Aの後縁部24とが連接部46を通じて接続されている。仮想円102は、翼21Aの前縁部22と翼21Bの後縁部24との接続部分に接し、翼21Bの前縁部22と翼21Cの後縁部24との接続部分に接し、翼21Cの前縁部22と翼21Aの後縁部24との接続部分に接するように描かれている。
【0049】
たとえば、翼21Aおよび翼21Bの間の連接部46に注目すると、連接部46は、翼21Aの前縁部22側の根元部から翼21Bの後縁部24側の根元部に向かうに従って、気流送出方向の吸込側から噴出側に延在するように形成されている。連接部46は、プロペラファン10の気流送出方向の吸込側から噴出側に、空気を送出する働きを有する構成をなすように形成されている。
【0050】
翼21A、翼21Bおよび翼21Cと、連接部46とは、薄肉形状を有し、一体に成型されている。すなわち、本実施の形態におけるプロペラファン10においては、中心軸101を中心にその外周側に延出する1枚物の3枚翼が、翼21A、翼21Bおよび翼21Cと連接部46とにより一体的に成型されている。プロペラファン10は、翼21A、翼21Bおよび翼21Cと、翼21Aの根元部、翼21Bの根元部および翼21Cの根元部を接続する連接部46とを含めて、一体的に成型されている。
【0051】
プロペラファン10は、回転軸部としてのボスハブ部41をさらに有する。ボスハブ部41は、プロペラファン10を、その駆動源である図示しないモータの出力軸に接続する部分である。ボスハブ部41は、円筒形状を有し、中心軸101と重なる位置で連接部46に接続されている。ボスハブ部41は、吸込側および噴出側の翼面47から中心軸101の軸方向に延びて形成されている。連接部46は、ボスハブ部41の外周面からその外周側に延出するように形成されている。
【0052】
翼21は、前縁部22と後縁部24とを結ぶ、周方向の断面形状の厚みが、前縁部22および後縁部24から翼中心付近にそれぞれ向かうほど厚くなり、翼中心よりも前縁部22側に寄った位置に最大厚みを有する翼型形状に形成されている。連接部46は、上記に説明した翼21と同様の翼型形状に形成されている。すなわち、本実施の形態におけるプロペラファン10は、翼21の外縁部23から中心軸101に向かういずれの断面位置においても翼型の断面形状を有するように形成されている。
【0053】
なお、以上においては、合成樹脂により一体成型されるプロペラファン10について説明したが、本発明におけるプロペラファンは樹脂製に限られるものではない。たとえば、一枚物の板金を捻り加工することによってプロペラファン10を形成してもよいし、曲面を有して形成される一体の薄肉状物によりプロペラファン10を形成してもよい。これらの場合、別に成型したボスハブ部41をプロペラファン10の回転中心に接合する構造としてもよい。
【0054】
また、本発明は、3枚翼のプロペラファン10に限られず、3枚以外の複数枚の翼21を備えるプロペラファンであってもよいし、1枚の翼21を備えるプロペラファンであってもよい。1枚翼のプロペラファンとする場合、中心軸101に対して翼21の反対側に、バランサーとしての錘が設けられる。
【0055】
図5は、図1中のプロペラファンの翼を拡大して示す平面図である。続いて、図1から図4中のプロペラファン10において、外縁部23に設けられる凹凸構造について説明する。
【0056】
図5を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン10においては、外縁部23に、凸部31A、凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eと(以下、特に区別しない場合は凸部31という)、凹部36P、凹部36Q、凹部36Rおよび凹部36Sと(以下、特に区別しない場合は、凹部36という)が形成される。
【0057】
中心軸101の軸方向からプロペラファン10を見た場合に、凸部31は、中心軸101を中心とする半径方向外側に向けて凸となる形状を有する。凸部31は、送風を行なうための翼面28の面内に形成されている。
【0058】
凸部31A、凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eは、中心軸101を中心とする周方向に並んで配置されている。中心軸101を中心とする周方向において、凸部31Aは、最も回転方向の側、すなわち、前縁部22に近い側に配置されている。凸部31Aは、翼先端縁部25を含んで形成されている。凸部31A,凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eは、挙げた順に、前縁部22に近い側から後縁部24に近い側に向けて並んで配置されている。凸部31Eは、最も回転方向の反対側、すなわち、後縁部24に近い側に配置されている。
【0059】
中心軸101の軸方向からプロペラファン10を見た場合に、凹部36は、中心軸101を中心とする半径方向内側に向けて凹となる形状を有する。凹部36は、周方向に隣り合う凸部31間に配置されている。凹部36Pは、凸部31Aと凸部31Bとの間に配置され、凹部36Qは、凸部31Bと凸部31Cとの間に配置され、凹部36Rは、凸部31Cと凸部31Dとの間に配置され、凹部36Sは、凸部31Dと凸部31Eとの間に配置されている。
【0060】
中心軸101の軸方向からプロペラファン10を見た場合に、凸部31は、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に向かうに従って、プロペラファン10の回転方向に突出するように形成されている。
【0061】
凸部31A、凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eは、回転方向に向かって突出する先端に、それぞれ、先端部32a、先端部32b、先端部32c、先端部32dおよび先端部32eを有する(以下、特に区別しない場合は先端部32という)。先端部32は、各凸部31において最も回転方向の側に配置されている。中心軸101の軸方向からプロペラファン10を見た場合に、先端部32は、湾曲して形成されている。翼21は、先端部32a、先端部32b、先端部32c、先端部32dおよび先端部32eのそれぞれを先端に鎌状に尖った形状を有する。凸部31の突出長さは、翼21の最大厚みよりも大きい。凸部31Bの突出長さは、図5中に示すように、凸部31Bの先端部32bと、凸部31Bに対して回転方向の反対側に隣り合う凹部36Pの底部37pとの間の長さH1によって表わされる。同様に、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eの突出長さは、それぞれ、図5中に示すH2、H3およびH4によって表わされる。
【0062】
凹部36P、凹部36Q、凹部36Rおよび凹部36Sは、それぞれ、底部37p、底部37q、底部37rおよび底部37sを有する(以下、特に区別しない場合は底部37という)。底部37は、凹部36の両側に配置される凸部31から見て凹部36の底部に配置されている。底部37は、各凹部36において最も回転方向の反対側に配置されている。
【0063】
凸部31は、凸部31の先端部32が、その凸部31に対して回転方向の側に隣り合う凹部36の底部37よりも回転方向の側に突出するように形成されている。たとえば、凸部31Cと、凸部31Cに対して回転方向の側に隣り合う凹部36Qとに注目すると、凸部31Cの先端部32cは、凹部36Qの底部37qよりも回転方向の側に突出する。
【0064】
互いに隣り合って配置される2つの凸部31、たとえば、凸部31Bおよび凸部31Cに注目すると、中心軸101を中心とする周方向において、凸部31Bの先端部32bと、凸部31Bと凸部31Cとの間に配置される凹部36Qの底部37qとの間に、凸部31Cの先端部32cが位置決めされる。
【0065】
中心軸101に対する凸部31Aの先端部32aの半径がRaであるとする。同様に、先端部32b、先端部32c、先端部32dおよび先端部32eの半径が、それぞれ、Rb、Rc、RdおよびReであるとする。凸部31と、その凸部31よりも後縁部24に近い側に配置される凸部31とに注目した場合、たとえば、凸部31Aおよび凸部31Cに注目した場合に、中心軸101に対する凸部31Aの先端部32aの半径Raは、中心軸101に対する凸部31Cの先端部32cの半径Rcよりも小さくなる(Ra<Rc)。
【0066】
本実施の形態では、中心軸101を中心とする周方向において前縁部22に近い側から後縁部24に近い側の凸部31ほど、中心軸101に対する先端部32の半径が小さくなる(Ra<Rb<Rc<Rd<Re)。
【0067】
図5中には、中心軸101を中心とし、凸部31Eに接する仮想円(真円)103が描かれている。凸部31は、後縁部24に近い側から前縁部22に近い側の凸部31ほど、仮想円103からの距離が遠ざかるように形成されている。すなわち、凸部31は、後縁部24に近い側から前縁部22に近い側の凸部31ほど、中心軸101と中心とする半径方向において内側に食い込むように形成されている。
【0068】
凸部31と、その凸部31に対して回転方向の側に隣り合う凹部36とに注目した場合、たとえば、凸部31Eと、凹部36Sとに注目した場合に、中心軸101に対する凸部31Eの代表半径(仮想円103の半径)をrとし、中心軸101から凹部36までの最小長さをWとすると、好ましくは、W/r≧0.74の関係を満たす。さらに好ましくは、W/r≧0.86の関係を満たす。
【0069】
続いて、図1から図4中のプロペラファン10によって奏される作用、効果について説明する。図6は、プロペラファンの翼面上に形成される空気流れの流線の挙動を示す平面投影図である。図7は、プロペラファンの翼面上に形成される空気流れの流線の挙動を示す回転投影図である。図8は、図6中のVIII−VIII線上に沿った翼断面を示す図である。
【0070】
図6から図8を参照して、図中には、外縁部23に凹凸構造が設けられないプロペラファン121が示されている。図7中に示すように、プロペラファン121の外周上には、ベルマウス51が配置されている。
【0071】
矢印210に示すように、プロペラファン121の回転時、翼21の翼面28上には、前縁部22もしくは外縁部23から後縁部24に向かう空気流れ(主流)が形成される。このような主流は、前縁部22もしくは外縁部23に近い翼面28上の上流側では、翼面28に沿った流れとなるものの、後縁部24に近い翼面28上の下流側では、主流が翼面28から剥離する剥離領域52が生じる傾向がある。このような傾向は、正圧面26および負圧面27のうち特に負圧面27上で顕著となる。
【0072】
図9は、図1から図4中のプロペラファンの翼面上の空気流れ(2次流れ)を示す平面図である。図10は、図9中のX−X線上の沿った位置の空気流れ(主流および2次流れ)を示す断面図である。
【0073】
図9および図10を参照して、プロペラファン10の回転時、翼面28の表層には、矢印220に示すように翼先端渦が形成される。
【0074】
翼先端渦は、プロペラファン10の回転時、凸部31、より具体的には、凸部31の先端部32が空気と衝突することによって形成される2次流れであり、先端部32を起点に翼面28上を通過し、後縁部24に向かって流れる。本実施の形態では、外縁部23に形成された凸部31A、凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eを起点に、複数の翼先端渦が後縁部24に向かって流れる。凸部31はプロペラファン10の回転方向に突出するように形成されるため、プロペラファン10の回転時、凸部31を強く空気と衝突させることができる。これにより、翼面28上に翼先端渦をより効率的に形成することができる。
【0075】
凸部31Aを起点とする翼先端渦は、中心軸101を中心とする半径方向において最も内側を通る。凸部31A、凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eを起点とする翼先端渦は、挙げた順に、中心軸101を中心とする半径方向において内側から外側に流通経路をシフトさせる。凸部31Eを起点とする翼先端渦は、中心軸101を中心とする半径方向において最も外側を通る。本実施の形態では、前縁部22に近い側から後縁部24に近い側の凸部31ほど、中心軸101に対する先端部32の半径が小さくなるため、各凸部31で生じた翼先端渦を互いに干渉させることなく、複数の翼先端渦を翼面28上の平面的な領域に流すことができる。
【0076】
プロペラファン10の回転時、翼面28のさらに上層には、矢印210に示すように主流が形成される。主流は、翼先端渦が形成される翼面28の表層に対して、翼面28の反対側に形成される。主流は、前縁部22もしくは外縁部23から流入し、翼面28上を通って後縁部24に向かう。この際、各凸部31により生じた翼先端渦から主流に対して運動エネルギが付与される。これにより、主流が翼面28上の下流側で翼面28から剥離することを抑制し、剥離領域52を縮小もしくは消滅させることができる。
【0077】
以上に説明した、この発明の実施の形態1におけるプロペラファンの構造についてまとめて説明すると、本実施の形態におけるプロペラファン10は、仮想の中心軸101を中心に回転するのに伴って送風を行なう翼21を備える。翼21は、回転方向の側に配置される前縁部22と、回転方向の反対側に配置される後縁部24と、中心軸101を中心とする周方向に延び、前縁部22の外周端と後縁部24の外周端との間を接続する外縁部23とを有する。外縁部23には、中心軸101の軸方向から翼21を見た場合に半径方向外側に凸となる形状を有し、周方向に配列される複数の凸部31と、互いに隣り合う凸部31間に配置される凹部36とが形成される。
【0078】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるプロペラファン10によれば、外縁部23に複数の凸部31を形成することによって、翼面28上における主流の剥離現象を抑制することができる。これにより、翼面28から主流に効率よく力を伝えることが可能となり、プロペラファン10の送風能力を向上させることができる。また、プロペラファン10の回転時、主流の剥離に起因する騒音を低減させることができる。
【0079】
本実施の形態におけるプロペラファン10は、プロペラファンよりも空気流れの上流側に強い偏流が生じるような送風機により好適に用いられる。図11は、屈曲ダクトに設置されたプロペラファンと、ダクトの経路上の空気流れとを示す断面図である。
【0080】
図11を参照して、屈曲ダクト81は、短い区間で90°ずつ折れ曲がった屈曲部83を有しており、その屈曲部83に、外縁部23に凹凸構造が設けられないプロペラファン121が設けられている。屈曲部83では空気の流れ方向が急に変更されるため、プロペラファン121の上流部82jには、風速が大きくなる領域85と風速が小さくなる領域86とが形成される。一方、プロペラファン121は、シロッコファンなどと比較すると、翼21によって空気をかき混ぜる力(せん断力)が小さい。このため、上流部82jで生じた偏流は、プロペラファン121で解消されることなく、プロペラファン121の下流部82kの空気流れに引き継がれることになる。
【0081】
この場合、プロペラファン121の翼21は、その風速の大きい領域85と小さい領域86とを交互に通過するため、圧力変動が生じ、強い狭帯域騒音が発生する。また、風速が小さい領域86で主流が翼面28から剥離する現象が顕著となり、プロペラファン121の送風能力が低下する。
【0082】
図12は、図1から図4中のプロペラファンを図11中の屈曲ダクトに設置した場合の空気流れを模式的に表わした図である。
【0083】
図12を参照して、これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン10を屈曲ダクト81に設置した場合、複数の凸部31によって、翼面28上における主流の剥離現象が抑制される。これにより、風速の大きい領域85で翼面28上に乗り上げた空気は、直ちに剥離することなく、風速の小さい領域86へと移動しながら翼面28上を流れ、やがて下流部82kへと送風されていく。このように翼21に複数の凸部31を形成することによって、翼21によって空気をかき混ぜる力が増大するため、上流部82jで生じていた空気流れの偏流を下流部82kで解消することが可能となる。
【0084】
このような構成によれば、風速が小さくなる領域86で顕著に生じていた翼面28上の剥離現象を抑制し、プロペラファン10の送風能力を飛躍的に向上させることができる。また、プロペラファン10の回転時、翼21が風速の大きい領域85と小さい領域86とを交互に通過するということがなくなり、強い狭帯域騒音の発生を抑制することができる。
【0085】
なお、上記のように空気流れの上流側に強い偏流が生じるような送風機としては、狭い空間に通されたダクトにファンを設置する必要が生じるような家電製品、たとえば、冷蔵庫や冷凍庫に組み込まれる送風機などが挙げられる。
【0086】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1におけるプロペラファン10の各種変形例について説明する。
【0087】
図13は、図1から図4中のプロペラファンの第1変形例を示す平面図である。図13を参照して、複数の翼21の各々には、互いに異なる形態により凸部31が形成される。本変形例では、翼21A、翼21Bおよび翼21Cに、互いに異なる数の凸部31が形成されている。より具体的には、翼21Aに4つの凸部31が形成され、翼21Bに6つの凸部31が形成され、翼21Cに5つの凸部31が形成されている。
【0088】
プロペラファンの回転時、ファンを覆うケーシングの定点を一定周期で翼21が通過することに起因して、翼通過音と呼ばれる狭帯域騒音が発生する。本変形例では、翼21A、翼21Bおよび翼21Cが互いに異なる数の凸部31を有するため、ケーシングに直近する凸部31が通過する周期を複数の翼21間で積極的にずらすことができる。これにより、狭帯域騒音の発生を抑制することができる。
【0089】
一方、実施の形態1におけるプロペラファン10においては、翼21A、翼21Bおよび翼21Cに、凸部31が同じ形態により設けられている。このような構成によれば、各翼21に形成する凸部31を、翼先端渦を発生させて主流の剥離を防ぐという観点から最適化した形態とできる。
【0090】
なお、本変形例では、凸部31を設ける数を複数の翼21間で異ならせたが、これに限られず、たとえば、凸部31の突出方向や幅、凹部36の切り込み長さなどを通じて、複数の翼21の各々に凸部31を互いに異なる形態により形成してもよい。
【0091】
図14は、図1から図4中のプロペラファンの第2変形例を示す平面図である。図14を参照して、凸部31A、凸部31B、凸部31C、凸部31Dおよび凸部31Eは、中心軸101を中心とする共通の仮想円103に接するように形成されている。凹部36Pの切り込み長さは、凹部36Pの底部37pと、凹部36Pに対して回転方向の側に隣り合う凸部31Aの先端部32aとの間の長さL1によって表わされる。同様に、凹部36Q、凹部36Rおよび凹部36Sの切り込み長さは、図14中に示すL2、L3およびL4によって表わされる。
【0092】
本変形例では、凹部36の切り込み長さが、その凹部36に対して回転方向の反対側に隣り合う凹部36の切り込み長さよりも大きくなる。たとえば、凹部36Pと、凹部36Pに対して回転方向の反対側に隣り合う凹部36Qとに注目すると、凹部36Pの切り込み長さL1は、凹部36Qの切り込み長さL2よりも大きくなる(L1>L2)。さらに本変形例では、中心軸101を中心とする周方向において後縁部24に近い側から前縁部22に近い側の凹部36ほど、凹部36の切り込み長さが大きくなる(L1>L2>L3>L4)。
【0093】
プロペラファンの回転に伴い、翼21には、上記の翼先端渦に加えて馬蹄渦が2次流れとして形成される。馬蹄渦は、図9中の矢印240に示すように、正圧面26から負圧面27に流れ込むように、凹部36の縁部に発生する。この際、凸部31により生じた翼先端渦と、凹部36に生じた馬蹄渦とから主流に対して運動エネルギが付与されることにより、主流が翼面28上の下流側で翼面28から剥離することを抑制できる。
【0094】
外縁部23から流入し、翼面上を流れる主流の経路長は、中心軸101を中心とする周方向において前縁部22に近いほど長くなり、後縁部24に近いほど短くなる。これに対して、本変形例では、後縁部24に近い側から前縁部22に近い側の凹部36ほど、凹部36の切り込み長さが大きいため、馬蹄渦から主流に対して付与する運動エネルギが、より長い経路長を進行する主流で大きくなる。これにより、主流の剥離をより確実に防ぐことができる。
【0095】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるプロペラファンによれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
【0096】
(実施の形態3)
本実施の形態では、まず、実施の形態1におけるプロペラファン10を樹脂を用いて成型するための成型用金型の構造について説明する。
【0097】
図15は、プロペラファンの製造に用いられる成型用金型を示す断面図である。図15を参照して、成型用金型61は、固定側金型62および可動側金型63を有する。固定側金型62および可動側金型63により、プロペラファンと略同一形状であって、流動性の樹脂が注入されるキャビティが規定されている。
【0098】
成型用金型61には、キャビティに注入された樹脂の流動性を高めるための図示しないヒータが設けられてもよい。このようなヒータの設置は、たとえば、ガラス繊維入りAS樹脂のような強度を増加させた合成樹脂を用いる場合に特に有効である。
【0099】
なお、図15中に示す成型用金型61においては、プロペラファンにおける正圧面側表面を固定側金型62によって形成し、負圧面側表面を可動側金型63によって形成することを想定しているが、プロペラファンの負圧面側表面を固定側金型62によって形成し、プロペラファンの正圧面側表面を可動側金型63によって形成してもよい。
【0100】
プロペラファンとして、材料に金属を用い、プレス加工による絞り成型により一体に形成するものがある。これらの成型は、厚い金属板では絞りが困難であり、質量も重くなるため、一般的には薄い金属板が用いられる。この場合、大きなプロペラファンでは、強度(剛性)を保つことが困難である。これに対して、翼部分より厚い金属板で形成したスパイダーと呼ばれる部品を用い、翼部分を回転軸に固定するものがあるが、質量が重くなり、ファンバランスも悪くなるという問題がある。また、一般的には、薄く、一定の厚みを有する金属板が用いられるため、翼部分の断面形状を翼型にすることができないという問題がある。
【0101】
これに対して、プロペラファンを樹脂を用いて形成することにより、これらの問題を一括して解決することができる。
【0102】
続いて、実施の形態1におけるプロペラファン10を有する流体送り装置の一例として空気調和機の室外機について説明する。
【0103】
図16は、プロペラファンを用いた空気調和機の室外機を示す図である。図16を参照して、空気調和機の室外機75は、実施の形態1におけるプロペラファン10と、駆動用モータ72とを有する送風機73を備える。この送風機73によって流体が送出される。また、室外機75内には室外熱交換器74が設けられ、送風機73によって効率的に熱交換が行なわれる。なお、送風機73は、モータアングル76によって室外機75に設置されている。
【0104】
このような構成によれば、室外機75は、実施の形態1において説明したプロペラファン10を有するため、騒音の発生が抑制されて運転音が静かになる。
【0105】
さらに、プロペラファン10により送風の効率が向上するので、本室外機75では消費エネルギも低減することができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、流体送り装置の一例として、空気調和機の室外機を例に挙げて説明したが、この他に、たとえば、空気清浄機、加湿機、扇風機、ファンヒータ、冷却装置、換気装置などの流体を送出する装置についても本プロペラファンを適用することによって、同様の効果を得ることができる。
【0107】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
この発明は、主に、冷蔵庫や冷凍庫、空気清浄機、空気調和機などの送風機能を有する家庭用の電気機器に適用される。
【符号の説明】
【0109】
10 プロペラファン、21,21A,21B,21C 翼、22 前縁部、23 外縁部、24 後縁部、25 翼先端縁部、26 正圧面、27 負圧面、28 翼面、31 凸部、32 先端部、36 凹部、37 底部、41 ボスハブ部、46 連接部、47 翼面、51 ベルマウス、52 剥離領域、61 成型用金型、62 固定側金型、63 可動側金型、72 駆動用モータ、73 送風機、74 室外熱交換器、75 室外機、76 モータアングル、81 屈曲ダクト、82j 上流部、82k 下流部、83 屈曲部、85,86 領域、101 中心軸、102,103 仮想円、121 プロペラファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の中心軸を中心に回転するのに伴って送風を行なう翼を備え、
前記翼は、回転方向の側に配置される前縁部と、回転方向の反対側に配置される後縁部と、前記中心軸を中心とする周方向に延び、前記前縁部の外周端と前記後縁部の外周端との間を接続する外縁部とを有し、
前記外縁部には、前記中心軸の軸方向から前記翼を見た場合に半径方向外側に凸となる形状を有し、周方向に配列される複数の凸部と、互いに隣り合う前記凸部間に配置される凹部とが形成される、プロペラファン。
【請求項2】
前記凸部は、前記翼の回転方向に向かって突出するように形成される、請求項1に記載のプロペラファン。
【請求項3】
複数の前記凸部は、第1凸部と、前記中心軸を中心とする周方向において前記第1凸部よりも前記後縁部に近い側に配置され、前記第1凸部と隣り合う第2凸部とを含み、
前記第1凸部および前記第2凸部は、それぞれ、前記翼の回転方向に向かって突出する先端に第1先端部および第2先端部を有し、
前記中心軸を中心とする周方向において、前記第1先端部と、前記第1凸部と前記第2凸部との間に配置される前記凹部の底部との間に、前記第2先端部が位置決めされる、請求項2に記載のプロペラファン。
【請求項4】
複数の前記凸部は、第3凸部と、前記中心軸を中心とする周方向において前記第3凸部よりも前記後縁部に近い側に配置される第4凸部とを含み、
前記第3凸部および前記第4凸部は、それぞれ、前記翼の回転方向に向かって突出する先端に第3先端部および第4先端部を有し、
前記中心軸から前記第3先端部までの長さは、前記中心軸から前記第4先端部までの長さよりも小さい、請求項2または3に記載のプロペラファン。
【請求項5】
複数の前記凸部は、前記翼の回転方向に向かって突出する先端に先端部を有し、
前記中心軸を中心とする周方向において前記後縁部に近い側から前記前縁部に近い側の凸部ほど、前記中心軸から前記先端部の長さが小さくなる、請求項4に記載のプロペラファン。
【請求項6】
複数の前記凸部は、第5凸部と、前記中心軸を中心とする周方向において前記第5凸部よりも前記後縁部に近い側に配置され、前記第5凸部と隣り合う第6凸部と、前記中心軸を中心とする周方向において前記第6凸部よりも前記後縁部に近い側に配置され、前記第6凸部と隣り合う第7凸部とを含み、
前記第5凸部と前記第6凸部との間の前記凹部の切り込み長さが、前記第6凸部と前記第7凸部との間の前記凹部の切り込み長さよりも大きい、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項7】
前記中心軸を中心とする周方向において前記後縁部に近い側から前記前縁部に近い側の前記凹部ほど、前記凹部の切り込み長さが大きくなる、請求項6に記載のプロペラファン。
【請求項8】
前記外縁部には、複数の前記凹部が形成される、請求項1から7のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項9】
前記前縁部の外周端と前記外縁部との接続部分が、前記翼の回転方向に向かって突出し、複数の前記凸部のうちの1つの前記凸部を形成する、請求項1から8のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項10】
周方向に離間して設けられる複数の前記翼を備え、
複数の前記翼には、互いに同じ形態により前記凸部が形成される、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項11】
周方向に離間して設けられる複数の前記翼を備え、
複数の前記翼には、互いに異なる形態により前記凸部が形成される、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項12】
樹脂により成型される、請求項1から11のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項13】
請求項12に記載のプロペラファンを樹脂により成型するために用いられる、成型用金型。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載のプロペラファンを備える、流体送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−154221(P2012−154221A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12817(P2011−12817)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】