説明

プロリンCCI−779(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル)ならびに細菌リパーゼを使用するプロリンCCI−779およびCCI−779の二段階酵素的合成

2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(プロリン−CCI−779)、ならびに(a)構造(A)[この構造中、R1およびR2は、水素であり、または一緒になって構造(B)(この構造中、R3およびR4は、各々独立して、水素または線状もしくは分枝状C16アルキルである)を形成し、または一緒になってC57シクロアルキルを形成し、または一緒になって構造(C)(この構造中、R5は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびフェニルから選択される)を有する環状ボロネートを形成する]を有する2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の活性化エステル誘導体とラパマイシンまたはプロリン−ラパマイシンとを適する有機溶媒中、有効量の細菌リパーゼの存在下で反応させる段階、ならびに(b)段階(a)から得られた中間体を脱保護して、CCI−779またはプロリン−CCI−779を生じさせる段階を含む、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのラパマイシン42−エステルまたは2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(CCI−779およびプロリン−CCI−779)の位置特異的調製方法を開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)は、インビトロモデルにおいても、インビボモデルにおいても腫瘍成長に対して有意な阻害効果を実証した、ラパマイシンのエステル誘導体である。CCI−779を含むラパマイシンのヒドロキシエステルの調製および使用は、米国特許第5,362,718号および同第6,277,983号に記載されている。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンの42位でのエステル化は、以前、ラパマイシンとアシル化剤の直接反応によって行われた。しかし、ラパマイシンは、31位および42位に2つの第二ヒドロキシル基を有するので、42−モノアシル化生成物の選択的合成を達成するためにこれら2つの官能中心(functional centers)を区別する試みは、やはり難題を呈した。現在、CCI−779の位置選択的調製プロセスは、少なくとも5つの段階を含む(米国特許第6,277,983号、国際特許公開パンフレット第01/23395号)。先ず、ラパマイシンをシリル化剤で処理して、ラパマイシン31,42−ビス−シリルエーテルを形成し、次にその42−シリルエーテル保護基を選択的に除去して、ラパマイシン42−OH−31−シリルエーテルを生じさせる。次に、この遊離42−OHを、2,4,6−トリクロロベンジル混合2,2,5−トリメチル[1,3−ジオキサン]−5−カルボン酸無水物でアシル化し、2つの後続脱保護段階により所望のCCI−779を生じさせる。
【0003】
CCI−779は、酵素、mTOR(哺乳動物のラパマイシンの標的、FKBP12−ラパマイシン関連タンパク質[FRAP]としても知られている)を阻害する細胞質タンパク質FKBPに結合し、それと複合体を形成する。mTORのキナーゼ活性の阻害により、サイトカイン誘発細胞増殖;細胞周期のG1期を調節する幾つかの重要なタンパク質のmRNAの翻訳;およびG1からSへの細胞周期の進行の抑制を導くIL−2誘発転写をはじめとする、様々なシグナル伝達経路が阻害される。CCI−779は、中枢神経系の癌、白血病、乳癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠腫およびグリア芽細胞種の抑制をはじめとする、多用途に有効であることが実証されている。
【0004】
必要とされているのは、CCI−779およびその類似体の、より効率的な位置特異的製造方法である。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、CCI−779のプロリン類似体(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステルまたはプロリン−CCI−779)およびそれを合成する方法を提供する。プロリン−CCI−779は、腫瘍学および他の関連適用(免疫抑制、抗炎症、抗増殖および抗腫瘍)に有用な活性薬物である。
【0006】
1つの態様において、プロリン−CCI−779の合成は、プロリンラパマイシンのビスシリル化、31,42−ビス−トリメチルシリルプロリンラパマイシンの単一脱保護、モノシリルプロリンラパマイシンのアシル化、その後の加水分解によって達成される。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、CCI−779を得るために、有機溶媒中の細菌リパーゼおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の活性化エステル誘導体を使用するラパマイシンの位置特異的アシル化、その後の脱保護を含む、二段階酵素的プロセスを提供する。
【0008】
もう1つの態様において、本発明の方法は、プロリン−ラパマイシンからのプロリンCCI−779、ラパマイシンファミリーの中のラパマイシンと密接に関連している化合物、の合成を可能にする。
【0009】
本発明の他の態様および利点は、当業者には容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ラパマイシンジヒドロキシエステルのプロリン類似体およびその使用を記載するものである。1つの実施形態において、本発明は、コア構造:
【化6】

により特徴づけられるプロリンCCI−779を提供する。本発明は、さらに、ラパマイシンジヒドロエステルのプロリン類似体を合成する方法を提供する。1つの実施形態では、プロリンラパマイシンが出発原料として使用される。ラパマイシンおよびその調製は、1975年12月30日発行の米国特許第3,929,992号に記載されている。あるいは、ラパマイシンは、市場で購入することができる[Rapamune(登録商標), Wyeth]。プロリンラパマイシンおよびその調製は、記載されている。例えば、欧州特許第0590703号参照。
【0011】
1つの実施形態では、プロリンラパマイシンをビスシリル化して、31,42−ビス−トリメチルシリルプロリンラパマイシンを形成する。この変換に使用することができるシリル化剤としては、例えば、市販のクロロアルキルシラン、例えばクロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリプロピルシランまたはクロロトリイソプロピルシランが挙げられる。1つの実施形態において、シリル化剤はクロロトリメチルシランである。より嵩高いシリル化剤を使用してもよいが、そうした薬剤は、後続の反応における酸性媒体中での脱保護に、より長い時間を必要とする。さらに、酸性媒体中での反応時間が長いほど、多くの分解副産物が形成される。もう1つの実施形態では、塩化トリメチルシリルと適する有機塩基および適する有機溶媒を用いて低温でシリル化反応を行って、31,42−ビス−トリメチルシリルプロリンラパマイシンを形成する。1つの実施形態において、反応温度は約0から5℃である。他の実施形態では、より低温で反応を行い、その結果、反応時間はより長くなる。例えばDMFをはじめとする適する有機溶媒は、容易に選択することができる。1つの実施形態において、酢酸エチルが溶媒である。同様に、適する有機塩基は、当該技術分野において公知のもの、例えばイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリアルキルアミンおよびN,N−ジイソプロピルエチルアミン、の中から容易に選択することができる。1つの実施形態において、塩基はイミダゾールであり、その結果、本明細書に記載の条件下、1時間未満で反応は完了する。
【0012】
希酸条件下、0から5℃での42位における単一脱保護により、31−トリメチルシリルプロリンラパマイシンを生じさせる。
【0013】
4−ジメチルアミノピリジンまたは同様の触媒の存在下、塩化メチレン中、−15から−10℃で2,4,6−トリクロロベンゾイル混合2,2,5−トリメチル[1,3−ジオキサン]−5−カルボン酸無水物を使用することによりモノシリル化プロリンラパマイシンのアシル化を達成して、中間体を得る。もう1つの実施形態では、モノシリルプロリンラパマイシンを、4−ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基触媒の存在下で、2,2,5−トリメチル[1,3−ジオキサン]−5−カルボン酸の酸塩化物とカップリングさせる。例えば、数ある中でもN,N−ジメチルアニリン、ピリジン、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなどの他の第三有機塩基をはじめとする他の有機触媒を、4−ジメチルアミノピリジンの代わりに使用してもよい。
【0014】
1つの実施形態において、アシル化反応用の溶媒は塩化メチレンである。他の実施形態では、THF、ジエチルエーテルまたはt−ブチルメチルエーテルが使用される。この反応は、0℃未満の温度で行うことができる。1つの実施形態において、反応は−10℃またはそれ以下で行う。1つの実施形態において、モノシリルプロリンラパマイシンは、塩化メチレン中、−12℃で、混合無水物およびジメチルアミノピリジンとカップリングさせて、中間生成物を得る。
【0015】
もう1つの実施形態において、アシル化は、米国特許出願公開第2005/0033046号A1(2005年2月10日発行)に記載されているとおり行うことができる。従って、1つの実施形態では、モノシリルプロリンラパマイシンのアシル化を、4−ジメチルアミノピリジンまたは同様の触媒の存在下、塩化メチレン中、−11から−5℃で2,4,6−トリクロロベンジル混合フェニルボリナン無水物を使用することにより達成して、中間体を得る。もう1つの実施形態において、フェニルボリナンは、2−フェニル−1,3,2−ジオキソボリナン−5−カルボン酸である。さらにもう1つの実施形態において、フェニルボリナンは、2−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン−4−イルであり、この場合のフェニルは、場合によっては置換されている。さらにもう1つの実施形態において、フェニルボリナンは、5−メチル−2−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン−5−カルボン酸である。
【0016】
さらなる実施形態において、前記フェニル基は、アルキル、例えばC1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキルで置換されている。他のアリール−(「フェニル−」を含む)ボロン酸をこの反応に用いてもよい。これらには、一、二または三置換アリールボロン酸が挙げられ、この場合の置換基は、同じであるか、異なる。アリール基の置換基としては、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アラルキル、ニトロ、シアノ、および縮合フェニル、例えばナフタリルボロン酸が挙げられる。基としてまたは基の一部(例えば、アルコキシもしくはアラルキル)として使用される場合の用語アルキルは、1から12個の炭素原子、例えば1〜6個の炭素原子の−アルキル部分を包含する。基としてのまたは基の一部(例えば、アラルキルもしくはアリールオキシ)としての用語アリールは、6〜10個の炭素原子のもの、例えばフェニルまたはナフチルをはじめとする芳香族基を意味する。
【0017】
1つの実施形態において、アシル化反応のための溶媒は、塩化メチレンである。他の実施形態では、THF、ジエチルエーテル、またはt−ブチルメチルエーテルが使用される。この反応は、0℃未満の温度で行うことができる。1つの実施形態において、この反応は、−10℃またはそれ以下で行われる。1つの実施形態では、モノシリルプロリンラパマイシンを、塩化メチレン中、−12℃で混合無水物およびジメチルアミノピリジンとカップリングして、中間生成物を得る。
【0018】
適する溶媒(例えばTHF)および温度での緩やかな酸水解により、CCI−779のプロリン類似体を生じさせる。1つの実施形態では、希無機酸、例えば硫酸、塩酸またはリン酸が使用される。もう1つの実施形態では、希硫酸水溶液が使用される。濃度は、0.1Nから約3Nの範囲内である。1つの実施形態において、これらの条件下ではアセタール保護基とシリル保護基の両方が同時に加水分解されるので、濃度は2Nである。より希薄な酸性条件下では、加水分解の完了に、より長い時間がかかる。1つの実施形態において、この段階は、25℃もしくはそれ以下、または約0から5℃で行われる。
【0019】
例えば、クロマトグラフィー、その後の(例えばエーテル処理による)最終的な結晶化をはじめとする当業者には公知の方法によって精製を達成して、精製プロリンCCI−779を生じさせる。
【0020】
もう1つの実施形態において、本発明は、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)およびプロリン−CCI−779を調製するための新規プロセスを提供する。CCI−779を調製するためのプロセスを以下で説明する。しかし、プロリン−CCI−779は、以下で説明するように、プロリンラパマイシンから同プロセスにより調製してもよい。
【0021】
この合成は、2つの段階を必要とする。第一の段階は、有機溶媒中、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸誘導体の活性化エステルでのラパマイシンの細菌リパーゼ触媒アシル化である。この反応は、高度に位置選択的であり、その結果、ほぼ定量収率で、モノ−42−アシル化生成物(すなわち、保護CCI−779)が排他的に形成される。その後の脱保護により、CCI−779が卓越した総収率で得られる。化学的調製と比較して、この化学−酵素的経路は、より簡単な手順で、より高い収率をもたらす。さらに、この方法は、ラパマイシンの31−OH基を保護する段階を一切必要としない。
【0022】
以下の図式は、この酵素的CCI−779調製を図示するものである。後に続く実施例は、特許請求の範囲に記載の本発明を例示するためのものであり、本開示または特許請求の範囲に記載の本発明を制限するものと解釈すべきでない。ラパマイシンおよびその調製は、1975年12月30日発行の米国特許第3,929,992号に記載されている。あるいは、ラパマイシンは、市場で購入することができる[Rapamune(登録商標), Wyeth]。
【化7】

【0023】
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸側鎖の適切な活性化エステルの特定が、このリパーゼ触媒アシル化の成功の鍵になることが判明した。本発明者らは、対応するエノールエステル、特にビニルエステルが、最高活性および最大収率をもたらすことを発見した。しかし、他のアシル化試薬、例えば、メチル、エチルエステル、2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチルエステルおよびN−スクシンイミジルエステルも、使用することができる。プロピオン酸の2つのビスヒドロキシル基における保護基は、反応においても重要な役割を果たす。1つの実施形態では、環状ケタールおよび環状ボロネートを使用する。しかし、他の保護基を、酵素の活性部位にこの側鎖を適応させることができる小ささの保護基の中から選択してもよい。
【0024】
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の活性化エステルは、下記式:
【化8】

[式中、
Rは、水素またはメチルであり、R1およびR2は、水素であり、または一緒になって構造:
【化9】

(R3およびR4は、各々独立して、水素または線状もしくは分枝状C16アルキルを表す)
を有するケタールを形成し、または
一緒になってC57シクロアルキルを形成し、または一緒になって構造:
【化10】

(R5は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびフェニルから選択される)
を有する環状ボロネートを形成する]
の構造を有する。本発明のプロセスを説明するために、イソプロピリデンケタール(I)またはメチルボロネート(II)保護基を有するビニルエステル(R=H)を選択した。
【化11】

【0025】
1つの実施形態において、本発明のプロセスの第一段階は、細菌起源のリパーゼの存在下、適する有機溶媒中、最適な温度のもとで一定時間、ラパマイシンをビニルエステル(I)または(II)と反応させることによって行う。
【0026】
本明細書で用いる場合、「細菌リパーゼ」、すなわち、細菌起源のリパーゼは、非真核生物源、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudonionas fluorescens)、リゾープス・デレマ(Rhizopus delemar)から元来単離された酵素を包含する。しかし、本発明で使用するために選択される酵素は、元来の供給源から直接単離および精製されたものである必要はなく、合成もしくは組換えで、または他の適する手段により調製されたものであってもよい。幾つかの市場の供給業者から様々なこれらの酵素を入手することができる。さらに、これらの酵素の製剤は、様々な供給業者による異なる商品名での異なる細菌起源の粗製、不完全精製、精製または固定化された状態で使用することができる。
【0027】
1つの実施形態では、Amano(天野エンザイム株式会社)からの固定化形態のリパーゼPSであるリパーゼPS−C「Amano」IIが、本発明の方法において使用される。しかし、他のリパーゼを本発明での使用に選択してもよい。こうしたリパーゼは、60%より高い、75%より高い、または90%より高い、ラパマイシンから保護CCI−779中間体への転化率をもたらす。さらなる実施形態において、こうしたリパーゼは、リパーゼにより触媒される加水分解によって生じる有意な量のseco誘導体の形成を回避する。
【0028】
リパーゼは、有効な触媒量、すなわち、ラパマイシンの42−ヒドロキシルのアシル化を妥当な反応速度で有効に触媒する量で使用される。この酵素を(ラパマイシンの量を基準にして)約25から約300重量%の量で使用できることは、当業者には理解されるであろう。1つの実施形態において、この酵素は、約50から約250重量%、約50から約200重量%、または約75から約150重量%の量で使用される。
【0029】
適する有機溶媒としては、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、エチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、MeCN、CH2Cl2、CHCl3iPr2O、ヘキサン、ジオキサン、またはこれらの溶媒を含む混合物が挙げられるが、それらに限定されない。1つの実施形態では、TBME(t−ブチルメチルエーテル)が使用される。出発時に出発ラパマイシンのすべてまたは一部を有効に溶解することができ、妥当な速度で反応を進行させることができる量で溶媒が使用されることは、当業者には理解されるであろう。例えば、TBMEなどの溶媒は、少なくとも4重量容量(wt volume)(すなわち、ラパマイシンの量の4倍(4X)より過剰である容量)から約10重量容量、または約5から8重量容量の量で使用することができる。
【0030】
TBMEは、残留水(約0.05%)を含有することがあり、この残留水は、ラパマイシンをいわゆるseco−誘導体、マクロラクトン環開環産物に分解し得る。この副反応を最小限にするために、反応系において低水分量を維持する。1つの実施形態では、無水溶媒がリパーゼ触媒の標準的な市販製剤と共に使用される。もう1つの実施形態では、リパーゼ溶液中に存在する水の量を乾燥剤の添加によって調整することにより、水分量を制御することができる。さらにもう1つの実施形態では、モレキュラーシーブを使用して、水分を制御することができる。モレキュラーシーブが反応を遅速させるであろうから、埋め合わせるためにより多くの酵素を添加してもよく、またはより長い反応時間を用いてもよい。モレキュラーシーブを使用する場合、5Åシーブが特に望ましい。しかし、数ある中でも4Åおよび3Åをはじめとする他のシーブサイズを容易に利用することができる。適するモレキュラーシーブは、様々な市場の供給業者から入手することができる。さらにもう1つの実施形態では、含水率を制御するために、乾燥剤、例えば、数ある中でもMgSO4、Na2SO4を使用することができる。
【0031】
この反応は、望ましくない副生成物の形成を低減するために十分低いが、過度に長い反応時間を必要とするほど低くはない温度で行われる。この酵素的プロセスに適する温度は、約20℃から約75℃、約30℃から約65℃、または約40℃から約55℃の範囲内であり得る。1つの実施形態において、TBMEを溶媒として使用すると、45℃の反応温度で反応を進行させることができる。こうした条件下での反応は、実質的に48時間以内に完了(転化率>99%)へと進行し得る。しかし、本明細書に記載するように、より低いまたはより高い温度を用いることができ、ならびに反応時間の長さを変化させることができる。もう1つの実施形態では、必要に応じて、約12時間から120時間、18時間から96時間、24時間から72時間または約30時間から60時間、反応を進行させることができる。反応時間の長さは、本発明での制限事項ではない。さらなる実施形態において、この反応は、すべての出発原料が消費されるまで、N2下で行われる。反応は、様々な技法、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりモニターすることができる。あるいは、当業者は、他のモニター法を用いることができる。
【0032】
1つの実施形態において、ラパマイシン、(ラパマイシンの量を基準にして)100重量%リパーゼPS−C「Amano」IIおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸のイソプロピリデンケタール保護ビニルエステル(I)を無水TBME中、45℃で48時間混合することにより、濾過による酵素の除去後、ケタール保護CCI−779が収率>98%で得られた。
【0033】
もう1つの実施形態において、本プロセスは、ラパマイシン、160重量%リパーゼPS−C「Amano」IIおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸のメチルボロネート保護ビニルエステル(II)を無水t−ブチルメチルエーテル(TBME)中、45℃で60時間混合することにより、濾過による酵素の除去後、環状メチルボロネート保護CCI−779が、回収ラパマイシンを基に高収率で得られた。
【0034】
ラパマイシンの42位に、ケタールまたはボロネートのいずれかで保護されている2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を、酵素的に導入した後、得られた中間体のその後の脱保護によりCCI−779を得ることができる。
【0035】
ボロネート誘導体の場合、ボロネート保護基の除去は、アルコール系溶媒の使用により実現することができる。本発明のこの実施形態において、適するアルコール系溶媒は、メタノール(MeOH)、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチルペンタン−2,5−ジオール、またはこれらの溶媒の混合物から容易に選択することができる。1つの実施形態において、この酵素反応から得られた粗生成物をMeOHに溶解し、CCI−779のボロネート部分が、MeOHとの交換により揮発性ジメチルボロネートを形成し、その後、それを減圧下で溶媒と共に蒸発させる。残存する残留物は、所望のCCI−779と共に多少の未反応ラパマイシンを含有し、これは、シリカゲルクロマトグラフィーなどの一般的な方法によって分離することができる。
【0036】
ケタール保護基の除去は、穏やかな酸性条件下で達成することができる。一般に、米国特許第6,277,983号およびそこに引用されている文献に掲載されている手順に従ってもよい。1つの実施形態において、脱保護は、単層酸水溶液/有機溶媒系、例えば、テトラヒドロフラン(THF)中の希硫酸、例えば約0から5℃で2N H2SO4/THF中で行うことができる。しかし、この反応は、完了に約3日またはそれ以上かかり、反応完了後に水性媒体から生成物を回収するために溶媒抽出を必要とする。
【0037】
もう1つの実施形態において、この酸によって促進される脱保護は、他の水混和性溶媒、例えばアセトニトリル(MeCN)、n−プロパノールおよびイソプロパノール中で行うことができる。これらの溶媒は、単独で使用することができ、またはアセトニトリルとn−プロパノールまたはイソプロパノールとの混合物として使用することができる。混合する溶媒の比率は、約5部のアセトニトリルと1部のプロパノール(v/v)から、約1部のアセトニトリルと5部のプロパノールまで、本明細書に記載するように変化させることができる。この比率は、本発明を限定する事項ではない。上記溶媒またはそれらの混合物が反応媒体として使用されるとき、1つの実施形態では硫酸水溶液が使用される。これは、米国特許第5,362,718号に記載されているように、塩酸水溶液などの他の酸を利用したとき生成される不純物の形成を最小にするためである。硫酸水溶液の濃度は、3Nから0.25N、約2Nから0.35N、または約1.5Nから0.5Nの範囲内であり得る。この反応は、温度約25℃またはそれ以下、約−5℃から約10℃、または約0℃から約5℃で行うことができる。反応が完了したら、その粗生成物は、米国特許第6,277,983号(国際特許公開パンフレット第01/23395号)に記載されているような溶媒抽出によって、または氷冷(0℃から5℃)リン酸緩衝液への反応混合物の添加による沈殿によって回収することができる。1つの実施形態において、リン酸緩衝液の濃度は、約2Mから0.05M、1Mから0.1M、または0.5Mから0.15Mの範囲内であり、pH値は、6から9、または7.5から8.5の範囲内である。1つの実施形態において、脱保護は、n−プロパノールと1.2N H2SO4とで、0℃から5℃で行い、反応は24時間以内に完了し、その後、氷水浴で冷却したリン酸緩衝液(0.5M、pH8)への反応混合物の添加により、その粗製物をオフホワイトの粉末として回収する。もう1つの実施形態において、脱保護は、MeCN−n−プロパノールの混合溶媒(2.5/1.5 v/v)中、0℃から5℃で行い、0.6N H2SO4の存在下、反応は28時間で終了した。その生成物を、リン酸緩衝液(0.25M、pH7.8)への反応混合物の添加により、オフホワイトの粉末として回収する。
【0038】
もう1つの実施形態において、CCI−779は、THF中の2N H2SO4水溶液を使用する酵素的反応混合物の直接加水分解により、粗製ケタール保護CCI−779の単離を伴わずに得ることができる。このプロセスでは、上で説明したような酵素的反応を行う。反応が完了したら、酵素を濾過して除去し、2容量のTHFで洗浄し、その後、その混合物を一定容量に濃縮し、THFで希釈する。0〜5℃で一定の時間にわたって2N H2SO4で処理した後、CCI−779を高収率で単離することができる。
【0039】
本発明の合成経路は、米国特許第5,362,718号および同第6,277,983号に掲載されている合成方法論に勝る幾つかの明瞭な利点をもたらす。これらの利点としては、二段階の操作しか必要としない処理の容易さ、および所望の42−エステルの改善された総収率が挙げられる。例えば、米国特許第5,362,718号に記載されている合成方法論は、イソプロピリデンケタール保護CCI−779を収率35%で生じさせ、米国特許第6,277,983に記載されている合成方法論は、収率85%で生じさせるのに対し、本明細書に記載の二段階酵素的プロセスは、ほぼ定量的な収率で生成物を生じさせる。
【0040】
もう1つの実施形態において、本発明は、本明細書に記載する同じ酵素的プロセスにより、プロリン−ラパマイシンからプロリン−CCI−779(CCI−779と密接に関連している化合物)を調製するプロセスを提供する。プロリン−ラパマイシン(ラパマイシン発酵粗製物からの小成分)は、1つのアミノ酸単位が構造的に異なるだけであり、すなわち、ラパマイシンにおけるピペコリン酸の代わりに、それがプロリンによって置換されている。プロリンラパマイシン、プロリン−CCI−779およびその誘導体は、欧州特許第589703号に記載されている。
【化12】

【0041】
本発明に従って調製した結果としてのCCI−779およびプロリンCCI−779は、薬学的組成物において有用である。こうした組成物は、ラパマイシンまたはその誘導体について当該技術分野において説明されている任意の適切な方法によって配合することができる。
【0042】
本明細書に記載の活性化合物を含有する経口配合薬は、錠剤、カプセル、バッカル形、トローチ、ロゼンジおよび経口液、懸濁液または溶液をはじめとする、従来から使用されているあらゆる経口形態を包含し得る。カプセルは、本活性化合物(複数を含む)と不活性充填剤および/または希釈液、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、馬鈴薯もしくはタピオカデンプン)、糖、人口甘味料、粉末セルロース(例えば、結晶性および微結晶性セルロース)、小麦粉、ゼラチン、ゴムなど、との混合物を含有し得る。有用な錠剤型配合薬は、従来どおりの圧縮、湿式造粒または乾式造粒法によって製造することができ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉末糖をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、薬学的に許容される希釈液、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、界面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤を利用することができる。1つの実施形態において、界面改質剤は、非イオン性およびアニオン性界面改質剤を含む。界面改質剤の代表例としては、ポロキサマー188、塩化ベンズアルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化蝋、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における経口配合薬は、活性化合物(複数を含む)の吸収を変化させるために、標準的な遅延または持効性配合を利用することができる。この経口配合は、必要に応じて適切な量の可溶化剤または乳化剤を含有する水またはフルーツジュースへの活性成分の投与からも成り得る。
【0043】
1つの実施形態において、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルの経口配合薬は、米国特許出願第2004−0077677号A1に(米国特許出願番号10/663,506も)記載されている(これらは、本明細書に参照して組み込まれる)。こうした経口配合薬は、湿式造粒プロセスを使用して調製された顆粒を含有する。同様の経口配合薬を、本発明のプロリン−CCI−779を使用して調製することができる。
【0044】
場合によっては、本化合物をエーロゾルの形態で気道に直接投与することが望ましいこともある。
【0045】
本化合物は、非経口または腹腔内投与することもできる。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としてのこれらの活性化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシ−プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中での分散液を調製することもできる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を防止するために保存薬を含有する。
【0046】
注射使用に適する剤形としては、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。すべての場合、剤形は、無菌でなければならず、および容易に注射可能な程度に流動性でなければならない。製造および保管条件下で安定でなければならず、ならびに細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、適切なそれらの混合物ならびに植物油などを含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0047】
1つの実施形態において、注射用配合薬は、米国特許公開第2004−0167152号A1に(米国特許出願番号10/626,943も)記載されている(これらは、本明細書に参照して組み込まれる)。プロリン−CCI−779についての同様の非経口配合薬は、容易に調製することができる。
【0048】
もう1つの実施形態において、本発明において有用な注射用配合薬は、上に記載したような非経口的に許容される溶媒および抗酸化剤を含有するCCI−779またはプロリン−CCI−779補助溶媒濃縮物、ならびにCCI−779またはプロリン−CCI−779、非経口的に許容される共溶媒、抗酸化剤、希釈溶媒および界面活性剤から成る、CCI−779またはプロリン−CCI−779を含有する非経口配合薬を提供する。本発明において有用な所定配合薬はいずれも、各種成分から成る多数の配合成分を含有し得る。1つの実施形態において、非経口的に許容される溶媒としては、非アルコール系溶媒、アルコール系溶媒またはそれらの混合物を挙げることができる。適する非アルコール系溶媒の例としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリルまたはそれらの混合物が挙げられる。「アルコール系溶媒」は、その配合薬のアルコール系溶媒成分として1つまたはそれ以上のアルコールを含有することができる。本発明の配合薬において有用な溶媒の例としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、またはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。これらの補助溶媒が特に望ましい。これらの補助溶媒のために発生する酸化およびラクトン開裂による分解の程度がより低いからである。さらに、エタノールとプロピレングリコールを併せて、より可燃性が低い生成物を生成することができるが、その混合物中のエタノールの量が多いほど、結果として、一般には化学的安定性が良好となる。混合物中、30から100% v/vのエタノールの濃度が好ましい。
【0049】
もう1つの実施形態において、非経口的に許容されるアルコール系補助溶媒中でのCCI−779またはプロリン−CCI−779の安定性を、その配合薬への抗酸化剤の添加により向上させる。許容される抗酸化剤としては、クエン酸、d,l−α−トコフェロール、BHA、BHT、モノチオグリセロール、アルコルビン酸、没食子酸プロピルおよびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。一般に、本発明のこの実施形態において有用な非経口配合薬は、抗酸化剤成分(複数を含む)を補助溶媒濃縮物の0.001%から1%w/v、または0.01%から0.5%w/vの範囲にわたる濃度で含有するであろうが、それより低いまたは高い濃度が望ましいこともある。1つの実施形態では、d,l−α−トコフェロールが、補助溶媒濃縮物の0.01から0.1%w/v、または0.075%w/vの濃度で使用される。
【0050】
他の実施形態において、本発明の配合薬の抗酸化剤成分は、キレート活性も示す。こうしたキレート剤の例としては、例えば、クエン酸、酢酸およびアスコルビン酸(これらは、本配合薬において古典的抗酸化剤およびキレート剤、両方として機能し得る)が挙げられる。他のキレート剤としては、溶液中の金属イオンに結合することができるような材料、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、その塩、またはグリシンなどのアミノ酸が挙げられ、これらはCCI−779またはプロリン−CCI−779の安定性を向上させることができる。さらに他の実施形態では、キレート活性を有する成分を単なる「抗酸化剤成分」として本発明の配合薬に含める。1つの実施形態において、キレート剤として作用するとき、そうした金属結合性成分は、本明細書において提供する抗酸化剤成分の濃度範囲の低限で使用される。加えて、そうしたキレート剤を本発明の抗酸化剤成分の一部として他の酸化剤と併用してもよい。例えば、許容される配合薬は、クエン酸とd,l−α−トコフェロールの両方を含有し得る。当業者は、本明細書において提供する情報を基に、選択される抗酸化剤(複数を含む)の最適濃度を容易に決定することができる。
【0051】
有利なことに、本発明において有用な非経口配合薬の一定の実施形態において、水性輸液または血液での希釈によるCCI−779またはプロリン−CCI−779の沈殿は、その希釈溶液に含有されている界面活性剤の利用により防止することができる。この希釈物の最も重要な成分は、非経口的に許容される界面活性剤である。1つの特に望ましい界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。しかし、当業者は、胆汁酸の塩(タウロコール酸塩、グリココール酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩など)の中から他の適する界面活性剤を容易に選択することができ、これは、場合によってはレシチンと併用される。あるいは、エトキシル化植物油、例えばPEG化ヒマシ油[例えば、PEG−35ヒマシ油、例えば、Cremophor ELという名でBASFから市販されているもの]、ビタミンEトコフェロールプロピレングリコールスクシネート(Vitamin E TGPS)、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ならびにポリソルベートファミリーの他のメンバー、例えばポリソルベート20または60を希釈液中で界面活性剤として使用することができる。希釈液の他の成分としては、水;エタノール;ポリエチレングリコール300、ポリエチレン400、ポリエチレン600、ポリエチレン1000、またはこれらのポリエチレングリコールの1つまたはそれ以上のを含有するブレンド;プロピレングリコール;ならびに溶液の浸透圧を調整するための他の非経口的に許容される補助触媒もしくは薬剤、例えば、塩化ナトリウム、ラクトース、マンニトールまたは他の非経口的に許容される糖、ポリオールおよび電解質を挙げることができる。界面活性剤は、希釈溶液の2から100%w/v、5から80%w/v、10から75%w/v、15から60%w/v、または少なくとも5%w/v、または少なくとも10%w/vを構成すると予想される。
【0052】
本発明において有用な非経口配合薬は、単一の溶液として調製することができる。もう1つの実施形態において、本発明において有用な非経口配合薬は、CCI−779またはプロリン−CCI−779、アルコール系溶媒および抗酸化剤を含有する補助溶媒濃縮物として調製することができ、その後、それを、希釈溶媒および適する界面活性剤を含有する希釈液と併せる。使用の前に、その補助溶媒濃縮物を、希釈溶媒および界面活性剤を含む希釈液と混合する。CCI−779またはプロリンCCI−779を本発明に従って補助溶媒濃縮物として調製するとき、その濃縮物は、0.05mg/mLから、2.5mg/mLから、5mg/mLから、10mg/mLから、または25mg/mLから約50mg/mLまでの濃度のCCI−779またはプロリン−CCI−779を含有することができる。その濃縮物と希釈液とを1部の希釈液に対して約1部の濃縮物まで混合して、1mg/mLから、5mg/mLから、10mg/mLから、20mg/mLから、約25mg/mLまでのCCI−779またはプロリン−CCI−779の濃度を有する非経口配合薬を得ることができる。例えば、非経口配合薬中のCCI−779またはプロリン−CCI−779の濃度は、約2.5から10mg/mLであり得る。本発明は、補助溶媒濃縮物中のCCI−779またはプロリン−CCI−779の濃度がより低い配合薬の使用、およびCCI−779またはプロリン−CCI−779濃度を最低検出レベルに低下させた非経口配合薬まで、1部の濃縮物と1部より多い希釈液(例えば、約1:1.5、1:2、1:3、1:4、1:5または1:9 v/vなどの比率での濃縮物:希釈液)を混合する配合薬の使用も包含する。
【0053】
1つの実施形態において、抗酸化剤は、その配合薬の約0.0005から0.5%w/vを構成し得、界面活性剤は、その配合薬の約0.5%から約10%w/vを構成し得、およびアルコール系溶媒は、その配合薬の約10%から約90%w/vを構成し得る。
【0054】
本発明において有用な非経口配合薬は、直接注射による投与、または静脈内注入用の滅菌輸液への添加による投与に適する剤形を製造するために使用することができる。
【0055】
本開示の目的のため、経皮投与は、上皮および粘膜組織をはじめとする体表をおよび身体の内層を越えて通過するすべての投与を包含すると理解される。こうした投与は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して、ローション、クリーム、フォーム、パッチ、懸濁液、溶液および座剤(直腸および膣座剤)で行うことができる。
【0056】
経皮投与は、活性化合物と、その活性化合物に対して不活性であり、皮膚に対して非毒性であり、全身吸収用の薬剤を皮膚経由で血流に送達することができる担体とを含有する経皮パッチの使用により達成することができる。担体は、クリーム、軟膏、ペースト、ゲルおよび密封デバイス(occlusive devices)など、任意の数の形態をとることができる。クリームおよび軟膏は、粘稠液であってもよいし、または水中油型もしくは油中水型の半固体乳剤であってもよい。活性成分を含有する石油または親水性石油に分散された吸収性粉末から成るペーストも好適であり得る。血流への活性成分の放出のために、様々な密封デバイス、例えば、担体と共にもしくは伴わずに活性成分を収容しているレザバーを覆う半透膜、または活性成分を含有するマトリックスを使用することができる。他の密封デバイスは文献において公知である。
【0057】
座剤配合薬は、座剤の融点を変化させる蝋の添加を伴うまたは伴わないカカオ脂、およびグリセリンをはじめとする、伝統的な材料から製造することができる。水溶性座剤基剤、例えば様々な分子量のポリエチレングリコールも、使用することができる。
【0058】
さらに、本発明は、本発明に従って製造され、適する送達方法による投与のために配合されたプロリン−CCI−779またはCCI−779を収容しているパッケージングおよびキットを提供する。ビン、バイアル、ブリスターパックなどをはじめとする様々な適する容器が当業者には公知である。こうしたパッケージングおよびキットは、例えば使用説明書、注射器、アプリケータなどをはじめとする他の構成要素をさらに収容し得る。
【0059】
以下の実施例は、プロリンCCI−779の製造を説明するものである。本発明がこれらの実施例において提供する試薬および条件に限定されないことは、上述の詳細な説明から容易に理解されるであろう。
【実施例1】
【0060】
プロリンCCI−779の合成
【化13】

この実施例は、上に提供した図式に図示されているCCI−779のプロリン類似体の合成方法を説明するものである。
【0061】
A.31,42−ビス(トリメチルシリル)プロリンラパマイシン(化合物B)の調製
三つ口50mLフラスコに、プロリンラパマイシン(図式中の化合物A)(1.47g、1.63mmol)、イミダゾール(0.45g、6.6mmol、4当量)および酢酸エチル(22.5mL)を充填した。その混合物を磁気的に(magnetically)攪拌すると濁ってきた。混合物を0〜5℃に冷却した。窒素保護下、塩化トリメチルシリル(0.62g、5.7mmol、3.5当量)を注射器により0.5時間かけて添加し、添加している間は温度を0〜5℃に維持した。注射器を2.5mLの酢酸エチルですすぎ、その混合物を0.75時間(0.75h)保持すると、白色の沈殿が形成された。反応は、薄層クロマトグラフィー(TLC)(30:70 アセトン:ヘプタン溶離剤)によってモニターした。TLCサンプルは、0.25mL 飽和重炭酸ナトリウムおよび10滴の酢酸エチルへの3〜4滴の反応混合物のクエンチングにより調製した。その混合物を振盪し、静置した。上部有機層を出発原料(プロリンラパマイシン)に対してスポットした。反応が完了したとき、もはや出発原料は存在しなかった。
【0062】
B.31−トリメチルシリルプロリンラパマイシン、化合物E、の調製
上記の反応が完了したら、2〜3滴の反応混合物を取り出し、31,42−ビス(トリメチルシリル)プロリンラパマイシン対照標準物質として後続段階のために確保した。50mLフラスコに、温度を0〜5℃に維持しながら、0.5N 硫酸(4.5mL)を0.5時間かけて添加した。混合物は、あまり濁ってこなかった。混合物を2.5時間保持し、薄層クロマトグラフィー(TLC、30:70 アセトン:ヘプタン 溶離剤)によってモニターした。TLCサンプルは、0.25mL 飽和重炭酸ナトリウムおよび10滴の酢酸エチルへの3〜4滴の反応混合物のクエンチングによって調製した。その反応アリコートを振盪し、静置した。上部有機層を31,42−ビス(トリメチルシリル)プロリンラパマイシン対照に対してスポットした。反応が完了したとき、31,42−ビス(トリメチルシリル)プロリンラパマイシンは、実質的に存在しなかった。酢酸エチル(5mL)を添加し、層を分離した。下部水性層を酢酸エチル(7.5mL)で抽出した。併せた有機層は、ブライン(7.5mL)での洗浄、飽和重炭酸ナトリウム(6mL)での洗浄、その後、水(3x7.5mL)での洗浄と、この順に洗浄した。最後の水洗のpHは、6〜7であった。有機層をブライン(7.5mL)で再び洗浄し、硫酸ナトリウム(4g)で20分間乾燥させた。その混合物を250mLフラスコへと濾過し、濃縮乾固させた。その固体を室温、高真空下(10mmHgまたはそれ以下)で20時間乾燥させた。重量=1.5gのオフホワイトの泡沫。
【0063】
C.中間体、化合物F、の調製:
攪拌機を装備した三つ口100mLフラスコに、塩化メチレン(7.5mL)中の2,2,5−トリメチル[1,3−ジオキサン]−5−カルボン酸、化合物C(0.63g、3.6mmol)を充填した。ジイソプロピルエチルアミン(0.77g、5.9mmol)を添加し、その後、塩化メチレン(1mL)ですすいだ。塩化2,4,6−トリクロロベンゾイル(0.85g、3.5mmol)を添加し、その後、塩化メチレン(1.5mL)ですすいだ。その混合物を室温で4.5時間保持した。その溶液を−12±2℃に冷却した。
【0064】
塩化メチレン(8mL)中の31−トリメチルシリルプロリンラパマイシン、化合物E(1.51g)を溶解し、100mLフラスコに添加した。塩化メチレン(2mL)をすすぎ液として添加した。塩化メチレン(3mL)中のジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.77g、6.8mmol)の溶液を調製し、温度を−12±2℃に維持しながら2.5時間かけてその100mLフラスコに添加した。塩化メチレン(1mL)をすすぎ液として添加した。その混合物を16時間保持し、0.25mL 水および0.2mL 酢酸エチルへの3〜4滴の反応混合物のクエンチングにより、HPLCによってモニターした。HPLCサンプルは、上部有機層の2滴を取り出し、HPLCバイアル内、窒素雰囲気下でサンプルをブロー乾燥させ、移動相を用いて再び溶解することによって調製した。
HPLCカラム: CSC Hypersil ODS/BDS 5μm
移動相: 68.5% ジオキサン:水 + 0.01M KH2PO4
波長: λ=280nm
流量: 1mL/分
時間: 60分
保持時間: 化合物E 〜14.0から14.5分
化合物F 〜33.4から33.8分
反応が完了したとき、出発原料の0.5%未満が存在した。その反応混合物を水(6mL)でクエンチングした。塩化メチレン(10mL)を添加し、層を分離した。水性層を塩化メチレン(10mL)で抽出した。併せた有機層を、0.5N 硫酸(12mL)、ブライン(10mL)、飽和重炭酸ナトリウム(6mL)および水(3x10mL)でこの順に洗浄した。最後の水洗のpHは、6〜7であった。その透明な黄色の溶液を濃縮して泡沫にした。その固体を室温、高真空下(10mmHgまたはそれ以下)で24時間乾燥させた。重量=1.88gの黄色の泡沫。
【0065】
D.粗製プロリンCCI−779の調製
攪拌機を装備した一つ口50mLフラスコに、THF(18.8mL、10容量)中の化合物Fを充填し、その後、0〜5℃(または約−2.5℃)に冷却した。2N 硫酸(9.4mL、5容量)を2.5時間かけて添加した。添加完了後、その混合物を2.5℃に温め、その後、45時間保持した。0.25mL 飽和重炭酸ナトリウムおよび0.25mL 酢酸エチルへの3〜4滴の反応混合物のクエンチングによる反応をHPLCによってモニターした。HPLCサンプルは、上部有機層の5滴を取り出し、HPLCバイアル内、窒素雰囲気下でサンプルをブロー乾燥させ、移動相を用いて再び溶解することによって調製した。
HPLCカラム: CSC Hypersil ODS/BDS 5μm
移動相: 68.5% ジオキサン:水 + 0.01M KH2PO4
波長: λ=280nm
流量: 1mL/分
時間: 60分
保持時間: 化合物F 〜33.4から33.8分
脱シリル化化合物F 〜10.5から11.5分
(中間体)
プロリンCCI−779 〜5.0から5.5分
化合物Fの脱シリル化中間体が最初に形成された。この反応が完了したとき、そのシリル化類似体の0.5%未満が残存した。酢酸エチル(27mL)およびブライン(7.5mL)を添加し、層を分離した。水性層を酢酸エチル(10mL)で抽出した。併せた有機層をブライン(10mL)、飽和重炭酸ナトリウム(7.5mL)および水(3x7.5mL)でこの順に洗浄した。最後の水洗のpHは、6〜7であった。その混合物を硫酸ナトリウム(5g)で30分間乾燥させ、250mLフラスコへと濾過し、濃縮乾固させた。重量=1.58gの黄色の泡沫。
【0066】
E.粗製プロリンCCI−779のクロマトグラフ精製
シリカゲルカラム(31.6g、60Å、200〜400メッシュ)(22cmの長さ×2.5cmの直径)を用意し、15:85 アセトン:HPLC用ヘキサン(1L)でコンディショニングした。アセトン(1.58mL)中の黄色の粗製プロリンCCI−779(1.58g)を調製し、クロマトグラフに供した。残りの15:85 アセトン:ヘキサン混合物、続いて25:75 アセトン:ヘキサン(4L)でそのカラムを溶離した。陽性画分を併せ、濃縮乾固させた。得られた泡沫を35℃で乾燥させ、高真空(すなわち、10mmHgまたはそれ以下)で24時間乾燥させた。重量=1.12gの薄黄色の泡沫。
【0067】
F.プロリンCCI−779のエーテル処理
一つ口50mLフラスコに、プロリンCCI−779(1.12g)を充填し、エーテル(1.5mL)に溶解した。その混合物を2時間保持した。エーテルを揮散させ、泡沫を得た。その泡沫を35℃、高真空下(10mmHgまたはそれ以下)で12時間乾燥させ、その後、室温で一晩(12時間)乾燥させた。重量=1.09g。1H NMR(500および600MHz,DMSO−d6)δ 5.45(H−1)、6.12(H−2)、6.27(H−3)、6.41(H−4)、6.20(H−5)、3.66(H−7)、1.14および1.86(H−8)、4.02(H−9)、1.19および1.81(H−10)、1.52(H−11)、2.03(H−12)、3.23および3.54(H−18)、1.76(H−19)、2.20および1.89(H−21)、4.22(H−22)、4.87(H−25)、2.28および2.70(H−26)、3.22(H−28)、5.11(H−29)、4.04(H−31)、4.17(H−32)、2.25(H−34)、0.985および1.38(H−35)、2.22(H−36)、1.76(H−37)、0.961および1.11(H−38)、1.31(H−39)、0.726および1.90(H−40)、3.14(H−41)、4.46(H−42)、1.22および1.81(H−43)、0.888および1.60(H−44)、1.60(H−45)、3.05(H−46,OCH3)、0.697(H−47)、6.48(H−48)、0.821(H−49)、1.76(H−50)、約5.1〜5.3(H−51)、3.17(H−52,OCH3)、0.755(H−53)、0.966(H−54)、0.805(H−55)、3.29(H−56,OCH3)、3.46(H−59)、1.01(H−60)、約4.3〜4.7(O−61)。13C NMR(75MHz,DMSO−d6)δ 139.12(C−1)、130.53(C−2)、132.49(C−3)、127.08(C−4)、127.21(C−5)、137.12(C−6)、81.93(C−7)、40.40(C−8)、65.83(C−9)、29.45(C−10)、25.87(C−11)、34.21(C−12)、99.25(C−13)、198.17(C−15)、165.55(C−16)、47.01(C−18)、24.04(C−19)、28.93(C−21)、58.50(C−22)、170.44(C−23)、73.24(C−25)、39.96(C−26)、207.67(C−27)、44.51(C−28)、123.92(C−29)、136.56(C−30)、75.84(C−31)、84.86(C−32)、209.49(C−33)、40.76(C−34)、39.20(C−35)、35.05(C−36)、32.73(C−37)、38.42(C−38)、32.06(C−39)、36.01(C−40)、80.12(C−41)、75.92(C−42)、29.25(C−43)、30.24(C−44)、10.27(C−45)、55.48(C−46,OCH3)、15.46(C−47)、15.59(C−49)、14.41(C−50)、56.56(C−52,OCH3)、12.67(C−53)、21.50(C−54)、14.89(C−55)、57.27(C−56,OCH3)、174.22(C−57)、49.90(C−58)、63.59および63.98(C−59)、16.82(C−60)。MS[M+NH4+]1033.5、[ESI(+),M+Na+]1038.7。
【0068】
以下の実施例は、CCI−779の位置特異的製造を説明するものである。実施例2は、本発明において有用なビニルエステルの製造を説明するものである。しかし、本発明は、これらのビニルエステルまたはこれらの製造方法に限定されない。ビニルエステルの生成に適する代替方法は、当業者には良く知られている。実施例3は、実施例2のビニルエステルを使用するCCI−779の位置特異的製造を説明するものであり、実施例4は、実施例2のビニルエステルを使用するプロリン−CCI−779の位置特異的製造を説明するものである。本発明がこれらの実施例において提供する試薬および条件に限定されないことは、上述の詳細な説明から容易に理解されるであろう。
【実施例2】
【0069】
ビニルエステルの合成:
A.Iの合成
【化14】

MeOH(16mL)中のPdCl2(708mg、4mmol)、LiCl(168mg、4mmol)を、その混合物が透明な溶液になるまで還流させながら加熱し、その後、MeOHを減圧下で除去し、酢酸ビニル(10mL)を添加し、その溶液を濃縮乾固させた。その後、残留物を酢酸ビニル(20mL)に再び溶解し、酢酸ビニル(280mL)中の2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(34.8g、200mmol)の混合物に添加した。その後、その混合物を一晩(約16時間)穏やかに還流させた。その溶液を減圧下で濃縮し、この残留物にヘプタン(150mL)を添加し、黒色の沈殿をセライトのパッドによる濾過によって除去した。そのヘプタン溶液を濃縮し、残留物を減圧下で蒸留して、ビニルエステルIを無色の液体として得た(30.1g、75%)。
【0070】
B.IIの合成:
MeCN(50mL)中のI(10g)の溶液を室温で4時間、H2SO4水溶液(20mL、0.25N)で処理した。その後、その混合物をEtOAcで希釈し、ブライン、2.5% NaHCO3、そしてブラインで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させた。濾過し、約60mLに濃縮し、その後、(MeBO)3(2.2mL)を上述の溶液に一滴ずつ添加した。その混合物を室温で1.5時間攪拌し、ヘキサン(60mL)で希釈し、MgSO4(3g)を添加し、その混合物をさらに10分間攪拌した。濾過および濃縮により油性残留物を生じさせ、それを減圧下で蒸留して、IIを無色の液体として得た(7.2g、78%)。
【実施例3】
【0071】
CCI−779の合成
【化15】

A.中間体Aを経由したCCI−779の合成
方法1:
無水TBME(36mL)中のラパマイシン(6g)、ビニルエステルI(2g)、リパーゼPS−C「Amano」II(6g)の混合物をAr2下で2日間、45℃で加熱した。その混合物を室温に冷却し、酵素を濾過によって除去し、濾液を濃縮し、攪拌しながらその油性残留物をヘプタンに添加した。その後、そのバッチを2時間、−15℃に冷却し、固体をブーフナー漏斗で回収し、冷ヘプタンで洗浄し、Aをオフホワイトの固体として得た、粗収率:98%。MS(EI):1070
【0072】
氷水浴で0℃に冷却したn−PrOH(24mL)に溶解した上述の粗製A(6g)、この溶液にH2SO4水溶液(12mL、1.2N)を添加した。その混合物を24時間、0℃で攪拌し、その後、冷リン酸緩衝液(300mL、pH=7.8)に添加し、その固体をブーフナー漏斗で回収し、DI水で洗浄し、真空下で乾燥させ、ヘキサン−アセトンで溶離するシリカゲルカラム精製によってCCI−779を白色の固体として生じさせた(5.2g、90%)。MS(EI):1030
【0073】
方法2:
無水TBME(150mL)中のラパマイシン(30.0g、32.8mmol)、ビニルエステルI(10.0g、50mmol)、リパーゼPS−C「Amano」II(30g)およびモレキュラーシーブ(5Å)(10.0g)の混合物をAr2下で48時間、42〜43℃で加熱した。THF(100mL)を添加して沈殿を溶解し、その混合物を室温に冷却した。酵素を濾過によって除去し、THF(200mL)で洗浄し、濾液を約60mLに濃縮し、THF(320mL)で希釈した。その後、その溶液を0〜5℃に冷却し、H2SO4(180mL、2N)を1時間かけて1滴ずつ添加した。その混合物を0〜5℃で48時間、またはTLCによりモニターしてAが消失するまで、攪拌した。その混合物をブライン(300mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(3回)。併せた有機層をH2O、5% NaHCO3、その後、ブラインで洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。溶媒を蒸発させることによって、薄黄色を帯びた半固体を得、それをフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン、2:1)によって精製して、CCI−779を白色の固体として得た(30.77g、2段階終わって91%)。
【0074】
B.中間体Bを経由したCCI−779の合成:
無水TBME(45mL)中のラパマイシン(3g)、ビニルエステルII(1.2g)、リパーゼPS−C「Amano」II(5g)の混合物をAr2下で60時間、45℃で加熱した。その混合物を室温に冷却し、酵素を濾過によって除去し、濾液を濃縮し、MeOH(20mL)をその残留物に添加し、濃縮乾固させた。ヘキサン−アセトンで溶離する粗製物のシリカゲルカラム精製によって、CCI−779を白色の固体(2.3g)として生じさせ、ラパマイシン(0.81g)を回収した。収率は、回収したラパマイシンに基づき93%である。
【実施例4】
【0075】
プロリン−CCI−779の合成
本発明の酵素的手順は、実施例2、ラパマイシンからのCCI−779の合成のための手順Aにおいて説明したのと本質的に同じ条件下での、プロリン−ラパマイシンからのプロリンCCI−779の合成にも適用することができる。
【化16】

【0076】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によって範囲が制限されることはない。実際、上述の説明および付随する図から、当業者には、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な変形が明らかとなろう。そうした変形は、添付の特許請求の範囲の中に入ると解釈される。
【0077】
さらに、値は近似値であり、説明のために提供していることは、理解されるはずである。
【0078】
特許、特許出願、出版物、手順などが本出願のいたるところで引用されているが、これらの開示は、それら全文が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書と参考文献の間に矛盾が存在し得る程に、本明細書においてその開示の言語は管理されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(プロリン−CCI−779)。
【請求項2】
(a)ラパマイシンまたはプロリン−ラパマイシンと、構造:
【化1】

[式中、
1およびR2は、水素であり、または一緒になって構造:
【化2】

(R3およびR4は、各々独立して、水素または線状もしくは分枝状C16アルキルを表す)
を有するケタールを形成し、または一緒になってC57シクロアルキルを形成し、または一緒になって構造:
【化3】

(R5は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびフェニルから選択される)
を有する環状ボロネートを形成する]
を有する2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸の活性化エステル誘導体とを、適する有機溶媒中、有効量の微生物リパーゼの存在下で反応させる段階;ならびに
(b)段階(a)から得られた中間体を脱保護して、CCI−779またはプロリン−CCI−779を生じさせる段階
を含む、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのラパマイシン42−エステルまたは2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(CCI−779およびプロリン−CCI−779)を位置特異的に調製する方法。
【請求項3】
前記活性化エステルが、構造:
【化4】

(式中、Rは、水素またはメチルであり、ならびにR1およびR2は、請求項2において定義したとおりである)
を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化エステルが、ビニルエステルである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化エステルが、ビニルエステル(I)およびビニルエステル(II):
【化5】

から成る群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
使用される細菌リパーゼが、微生物であるアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、リゾープス・デレマ(Rhizopus delemar)からのリパーゼである、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用されるリパーゼが、シュードモナス・セパシアからのリパーゼPSまたはPS−Cである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
適する有機溶媒が、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、エチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、MeCN、CH2Cl2、CHCl3iPr2O、ヘキサン、ジオキサン、またはこれらの溶媒を含む混合物である、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
無水MgSO4および無水Na2SO4から成る群より選択される乾燥剤の添加を段階(a)にさらに含む、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
段階(a)における反応にモレキュラーシーブを適用することをさらに含む、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
段階(a)における反応が、20℃から75℃の温度で行われる、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
脱保護段階(b)が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチルペンタン−2,5−ジオールまたはこれらの混合物から成る群より選択されるアルコール系溶媒にボロネート保護CCI−779またはボロネート保護プロリン−CCI−779を溶解することを含む、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ケタール保護CCI−779またはケタール保護プロリン−CCI−779のための脱保護段階(b)が、低温希酸中、水混和性有機溶媒の存在下で行われる、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
酢酸エチル中の塩化トリメチルシリルおよびイミダゾールを使用してプロリンラパマイシンをビスシリル化して、31,42−ビス−トリメチルシリルプロリンを形成する段階;
希酸条件下で31,42−ビス−トリメチルシリルプロリンラパマイシンの42位を単一脱保護して、31−トリメチルシリルプロリンラパマイシンを生じさせる段階;
塩化メチレン中で混合無水物と31−トリメチルシリルプロリンラパマイシンおよびジメチルアミノピリジンとを反応させる段階;ならびに
その生成物を加水分解して、プロリン−CCI−779を生じさせる段階
を含む、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(プロリン−CCI−779)を調製する方法。
【請求項15】
請求項2から13のいずれか一項に記載の方法に従って調製される、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(プロリン−CCI−779)。
【請求項16】
請求項1または15に記載の、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのプロリン−ラパマイシン42−エステル(プロリン−CCI−779)および生理適合性担体を含む組成物。
【請求項17】
請求項2から13のいずれか一項に記載の方法に従って調製される、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)。
【請求項18】
請求項17に記載の、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)および生理適合性担体を含む組成物。
【請求項19】
請求項16または18に記載の組成物および前記組成物のための容器を含む製品。

【公表番号】特表2007−532650(P2007−532650A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508408(P2007−508408)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012030
【国際公開番号】WO2005/100366
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】