説明

プローブ検査装置、及びプローブ検査方法

【課題】ナノプロービングにおいてプローブを試料表面に近づける作業を短時間で行う。
【解決手段】プローブ検査装置400は、試料12を載置する試料台10と、試料台10の上方の待機位置に待機するプローブ20と、試料台10をプローブ20の待機位置に向けて移動させる第1の駆動装置160と、試料台10とプローブ20の待機位置の間を通過する方向に第1の荷電粒子線32を照射する第1の荷電粒子銃30と、試料12が第1の荷電粒子線32を遮断したことを示す信号を生成する第1の検出部120と、第1の検出部120が生成した信号により第1の駆動装置160を制御する第1の制御部140を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃を有するプローブ検査装置、及びプローブ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスの不良解析における不良箇所の絞り込みのために行う検査方法の1つに、ナノプロービング法がある。ナノプロービング法とは、トランジスタのコンタクトホールにプローブ針を直接接続し、個々のトランジスタ特性を解析するものである。
【0003】
ナノプロービングでは、プローブと試料の位置決めを精度良く行う必要がある。しかし目視の場合、プローブと試料の位置決めを高い精度で行うことは困難である。この問題を解決するために、たとえば特許文献1に記載の技術がある。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、走査型電子顕微鏡を用いて試料表面に電子ビームを照射しながら、ナノプロービングを行うというものである。電子ビームの照射により試料から生じる2次電子からSEM像を得ることで、また電子ビームの照射によりプローブに生じる吸収電流を測定することで、水平方向におけるプローブの位置を高い精度で把握することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−204813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノプロービングにおいて、試料へ接触する際のオーバードライブによりプローブが破損する場合がある。これを避けるため、プローブを試料に接触させる際には、まずプローブを試料表面から数um程度の距離まで近づけ、その後低速で移動させて試料に接触させるのが好ましい。特許文献1に記載の技術では、高さの位置を検出できない。そのためプローブを試料表面から数um程度の距離まで近づけるために、多大な時間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、試料を載置する試料台と、
前記試料台の上方の待機位置で待機するプローブと、
前記試料台を前記待機位置に向けて移動させる第1の駆動装置と、
前記試料台と前記待機位置の間を通過する方向に第1の荷電粒子線を照射する第1の荷電粒子銃と、
前記試料が前記第1の荷電粒子線を遮断したことを示す信号を生成する第1の検出部と、
前記第1の検出部が生成した信号を用いて前記第1の駆動装置を制御する第1の制御部と、
を備えるプローブ検査装置が提供される。
【0008】
本発明におけるプローブ検査装置は、電子線が照射されることにより発生する吸収電流を検知することにより、試料及びプローブが一定の高さに到達したことを認識することができる。また、その検知結果から試料及びプローブを移動させる駆動装置を制御することができる構成を備えている。これによりプローブを試料へ近づける工程を自動化することができる。従って本発明によれば、プローブを試料表面から数umの距離まで近づける作業を、短時間で行うことができる。
【0009】
本発明によれば、試料をプローブ検査装置の試料台に載置する工程と、前記試料台を待機位置で待機する前記プローブ検査装置のプローブに近づける工程と、前記プローブを前記試料に接触させる工程と、前記試料の電気特性を測定する工程と、を備え、前記試料台を前記待機位置に近づける工程において、第1の荷電粒子銃を用いて前記試料と前記待機位置の間を通過する方向に第1の荷電粒子線を照射し、前記第1の荷電粒子線が前記試料によって遮断されたことを検出したときに、前記試料台を停止するプローブ検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ナノプロービングにおいてプローブを試料表面に近づける作業を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態におけるプローブ検査装置を示す断面図である。
【図2】図1に示すプローブ検査装置によるプローブの試料への接触工程におけるフローチャートである。
【図3】第2の実施形態におけるプローブ検査装置を示す断面図である。
【図4】比較例におけるプローブ検査装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係るプローブ検査装置400を示す断面図である。プローブ検査装置400は、試料12を載置する試料台10と、試料台10の上方の待機位置に待機するプローブ20と、試料台10をプローブ20の待機位置に向けて移動させる第1の駆動装置160と、試料台10とプローブ20の待機位置の間を通過する方向に第1の荷電粒子線32を照射する第1の荷電粒子銃30と、試料12が第1の荷電粒子線32を遮断したことを示す信号を生成する第1の検出部120と、第1の検出部120が生成した信号により第1の駆動装置160を制御する第1の制御部140を備える。
【0014】
第1の検出部120は第1のアンプ100を介して試料12に接続している。第1の荷電粒子銃30から照射された第1の荷電粒子線32が試料12に当たると、試料12に第1の吸収電流が発生する。第1の吸収電流は、第1のアンプ100により増幅される。第1の検出部120は増幅された第1の吸収電流を検出する。第1の吸収電流を検出すると、第1の検出部120は信号を生成する。この信号に基づいて、第1の制御部140は第1の駆動装置160を制御する。具体的には、第1の吸収電流を検出した場合、試料台10の上昇を停止し、試料台10を数um下降させる。第1の荷電粒子線32は、例えば電子線やイオン線である。
【0015】
プローブ検査装置400はさらに、待機位置で待機しているプローブ20を試料台10に向けて移動させる第2の駆動装置260と、プローブ20が第1の荷電粒子線32を遮断したことを検出する第2の検出部220と、第2の検出部220の検出結果により第2の駆動装置260を制御する第2の制御部240を備える。
【0016】
第2の検出部220は第2のアンプ200を介してプローブ20に接続している。第1の荷電粒子銃30から照射された第1の荷電粒子線32がプローブ20に当たると、プローブ20に第2の吸収電流が発生する。第2の吸収電流は、第2のアンプ200により増幅される。第2の検出部220は増幅された第2の吸収電流を検出する。第2の吸収電流を検出すると、第2の検出部220は信号を生成する。この信号に基づいて、第2の制御部240は第2の駆動装置260を制御する。具体的には、第2の吸収電流を検出した場合、プローブ20の下降を停止する。
【0017】
プローブ検査装置400は、さらに第2の荷電粒子銃40と、2次粒子検出器50を備えている。第2の荷電粒子銃40は試料12、及びプローブ20に第2の荷電粒子線42を照射する。2次粒子検出器50は試料12、及びプローブ20から発生した2次粒子を検出する。この検出結果からSEM像が得られる。
【0018】
図2は、図1に示すプローブ検査装置400の動作の一部を示すフローチャートである。この図2は、プローブ20を試料12に接触させる動作を示している。まず第1の荷電粒子線32がプローブ20の先端の真下を照射するように、プローブ20の位置を調整する(S10)。そして試料12が第1の荷電粒子線32に当たるまで、第1の駆動装置160により試料台10を上昇させる(S20)。第1の荷電粒子線32が試料12に当たると第1の吸収電流が発生する。第1の吸収電流は第1のアンプ100により増幅され、第1の検出部120により検出される(S30)。第1の吸収電流が検出されると、第1の制御部140は第1の駆動装置160を介して試料台10の上昇を停止する(S40)。その後、第1の制御部140は第1の駆動装置160を介して試料台10を数um下降させる(S50)。
【0019】
次いで、プローブ20が第1の荷電粒子線32に当たるまで、第2の駆動装置260によりプローブ20を下降させる(S60)。第1の荷電粒子線32がプローブ20に当たると第2の吸収電流が発生する。第2の吸収電流は第2のアンプ200により増幅され、第2の検出部220により検出される(S70)。第2の吸収電流が検出されると、第2の制御部240は第2の駆動装置260を介してプローブ20の下降を停止させる(S80)。これによりプローブ20を試料12の表面から数umの距離まで近づけることができる。その後プローブ20を低速で下降させ、試料12に接触させる(S90)。そして試料12の電気特性の測定を行う(S100)。
【0020】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。ナノプロービングにおいてプローブを試料に接触させる際には、まずプローブを試料表面から数um程度の距離まで近づけ、その後低速で移動させて試料に接触させるのが好ましい。図4は、比較例におけるプローブ検査装置を示す断面図である。比較例によれば、プローブ検査装置は試料台10の高さを認識することができない。本実施形態によれば、プローブ検査装置400は、第1の荷電粒子線32が試料12に照射されることにより発生する第1の吸収電流を検出することにより、試料台10が一定の高さに到達したことを認識することができる。従ってプローブ20を試料12の表面から数umの距離まで近づける作業を、短時間で行うことができる。
【0021】
またプローブ検査装置400は、第1の荷電粒子線32がプローブ20に照射されることにより発生する第2の吸収電流を検出することにより、プローブ20が一定の高さに到達したことを認識することができる。これによりプローブ20を試料12の表面から数umの距離まで近づける作業を、さらに短時間で行うことができる。
【0022】
図3は第2の実施形態に係るプローブ検査装置420を示す断面図であり、第1の実施形態における図1に対応している。本実施形態におけるプローブ検査装置420は、第1の荷電粒子線32の検出部を除いて第1の実施形態に係るプローブ検査装置400と同様の構成である。またプローブ検査方法についても、第1の荷電粒子線32の検出方法を除いて第1の実施形態に係るプローブ検査方法と同様である。
【0023】
本実施形態では、プローブ検査装置420は、透過粒子検出器34を備える。透過粒子検出器34は、第1の検出部120、及び第2の検出部220を備える。透過粒子検出器34は、試料台10の上方の空間を挟んで第1の荷電粒子銃30と対向しており、第1の制御部140、及び第2の制御部240と接続している。第1の検出部120は第1の荷電粒子検出部を有する。また第2の検出部220は第2の荷電粒子検出部を有する。
【0024】
第1の検出部120は、第1の荷電粒子銃30から照射された第1の荷電粒子線32の強度を検出する。第1の荷電粒子線32が試料12により遮断されると、第1の検出部120に到達する第1の荷電粒子線32の強度は低下する。第1の荷電粒子線32を検出した第1の検出部120は、第1の荷電粒子線32の強度を示す信号を生成する。この信号に基づいて第1の制御部140は第1の駆動装置160を制御する。具体的には、第1の荷電粒子線32の強度が基準値以下となった場合、試料台10の上昇を停止し、試料台10を数um下降させる。
【0025】
同様に、第2の検出部220は、第1の荷電粒子銃30から照射された第1の荷電粒子線32の強度を検出する。第1の荷電粒子線32がプローブ20により遮断されると、第2の検出部220に到達する第1の荷電粒子線32の強度は低下する。第1の荷電粒子線32を検出した第2の検出部220は、第1の荷電粒子線32の強度を示す信号を生成する。この信号に基づいて第2の制御部240は第2の駆動装置260を制御する。具体的には、第1の荷電粒子線32の強度が基準値以下となった場合、プローブ20の下降を停止する。
【0026】
本実施形態においても、プローブ検査装置420は第1の検出部120により第1の荷電粒子線32の強度を検出することで、試料台10が一定の高さに到達したことを認識することができる。また本実施形態においても、プローブ検査装置420は第2の検出部220により第1の荷電粒子線32の強度を検出することで、プローブ20が一定の高さに到達したことを認識することができる。従って第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 試料台
12 試料
20 プローブ
30 荷電粒子銃
32 荷電粒子線
34 透過粒子検出器
40 荷電粒子銃
42 荷電粒子線
50 2次粒子検出器
100 アンプ
120 検出部
140 制御部
160 駆動装置
200 アンプ
220 検出部
240 制御部
260 駆動装置
400 プローブ検査装置
420 プローブ検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料台と、
前記試料台の上方の待機位置で待機するプローブと、
前記試料台を前記待機位置に向けて移動させる第1の駆動装置と、
前記試料台と前記待機位置の間を通過する方向に第1の荷電粒子線を照射する第1の荷電粒子銃と、
前記試料が前記第1の荷電粒子線を遮断したことを示す信号を生成する第1の検出部と、
前記第1の検出部が生成した信号を用いて前記第1の駆動装置を制御する第1の制御部と、
を備えるプローブ検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブ検査装置において、
前記待機位置で待機している前記プローブを前記試料台に向けて移動させる第2の駆動装置と、
前記プローブが前記第1の荷電粒子線を遮断したことを示す信号を生成する第2の検出部と、
前記第2の検出部が生成した信号を用いて前記第2の駆動装置を制御する第2の制御部と、
をさらに備えるプローブ検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプローブ検査装置において、
前記第1の検出部は前記試料に接続し、前記試料が前記第1の荷電粒子線を吸収することにより生成する第1の吸収電流を検出するプローブ検査装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプローブ検査装置において、
前記第1の検出部は前記試料の上方の空間を挟んで前記第1の荷電粒子銃と対向しており、前記第1の荷電粒子線を検出する荷電粒子検出部を有するプローブ検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のプローブ検査装置において、
前記試料及び前記プローブに第2の荷電粒子線を照射する第2の荷電粒子銃と、
前記第2の荷電粒子線の照射角度を変更する偏光器と、
前記試料及び前記プローブで生じた2次粒子を検出する2次粒子検出器と、
をさらに備えるプローブ検査装置。
【請求項6】
試料をプローブ検査装置の試料台に載置する工程と、
前記試料台を待機位置で待機する前記プローブ検査装置のプローブに近づける工程と、
前記プローブを前記試料に接触させる工程と、
前記試料の電気特性を測定する工程と、
を備え、
前記試料台を前記待機位置に近づける工程において、
第1の荷電粒子銃を用いて前記試料と前記待機位置の間を通過する方向に第1の荷電粒子線を照射し、
前記第1の荷電粒子線が前記試料によって遮断されたことを検出したときに、前記試料台を停止するプローブ検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプローブ検査方法において、
前記試料台を前記待機位置に近づける工程と前記プローブを前記試料に接触させる工程との間に、前記プローブを前記試料に近づけて一時停止させる工程をさらに備え、
前記プローブを前記試料に近づけて一時停止させる工程において、
前記第1の荷電粒子線が前記プローブによって遮断されたことを検出したときに、前記プローブを停止するプローブ検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−220750(P2011−220750A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88337(P2010−88337)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】