説明

プローブ

【課題】 電極端子に繰返し接触させる際の耐摩耗性能を確保しつつ、耐電流性能の劣化を抑制することができるプローブを提供する。
【解決手段】 ワーク上の電極端子に接触させるコンタクト部3と、コンタクト部3を支持し、コンタクト部3を電極端子に接触させた際に弾性変形する弾性変形部2により構成される。コンタクト部3は、ワーク上の電極端子に接触させるワーク接触面3aを有し、第1の導電性金属からなる耐摩耗層31と、比抵抗が第1の導電性金属よりも小さい第2の導電性金属からなる低比抵抗電導層32とから形成され、第1の導電性金属が第2の導電性金属よりも耐摩耗性に優れ、ワーク接触面3aが耐摩耗層31の端面と低比抵抗電導層32の端面とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに係り、更に詳しくは、弾性変形部の弾性変形を伴ってコンタクト部を検査対象物上の電極端子に接触させるプローブの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、半導体ウエハ上に多数の半導体デバイスを形成し、これらの半導体デバイスの電気的特性試験を行った後に半導体ウエハをダイシングし、半導体デバイスごとに分離することによって製造される。
【0003】
半導体デバイスの電気的特性試験は、配線基板上に多数のコンタクトプローブを形成したプローブカードに半導体ウエハを近づけ、各コンタクトプローブを半導体ウエハ上の対応する電極パッドに接触させることによって行われる。コンタクトプローブと電極パッドとを接触させる際、両者が接触しはじめる状態に達した後、プローブカードに半導体ウエハを更に近づける処理が行われる。このような処理をオーバードライブと呼び、また、オーバードライブの距離をオーバードライブ量と呼んでいる。
【0004】
オーバードライブは、コンタクトプローブを弾性変形させる処理であり、オーバードライブを行うことにより、電極パッドの高さやコンタクトプローブの高さにばらつきがあっても、全てのコンタクトプローブを電極パッドと確実に接触させることができる。また、オーバードライブ時にコンタクトプローブが弾性変形し、その先端が電極パッド上で移動することにより、スクラブが行われる。このスクラブにより電極パッド表面の酸化膜が除去され、接触抵抗を低減させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコンタクトプローブは、ワーク(検査対象物)上の電極端子に接触させるコンタクト部と、コンタクト部を支持し、コンタクト部を電極端子に接触させた際に弾性変形する弾性変形部とからなる。コンタクト部は、電極端子に繰返し接触させる際の耐摩耗性を向上させるために、通常は弾性変形部よりも硬い導電性金属により形成される。しかも、コンタクト部がワーク上の電極端子と接触する断面積は、電極端子の制約により大きくすることができない。このため、支持部や弾性変形部と比較して、コンタクト部の電気抵抗が大きくなり、異常な高電流発生時は局部的に発熱し、耐電流性能が劣化してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、弾性変形部の弾性変形を伴ってコンタクト部を検査対象物上の電極端子に接触させるプローブの耐電流特性を向上させることを目的としている。特に、電極端子に繰返し接触させる際の耐摩耗性能を確保しつつ、耐電流性能の劣化を抑制することができるプローブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明によるプローブは、検査対象物上の電極端子に接触させるコンタクト部と、上記コンタクト部を支持し、上記コンタクト部を上記電極端子に接触させた際に弾性変形する弾性変形部とを備え、上記コンタクト部が、2種以上の金属層で構成され、上記電極端子との接触面が上記2種以上の金属層の各端面からなるように構成される。
【0008】
このプローブでは、検査対象物上の電極端子に接触させるコンタクト部が2種以上の金属層から形成されるので、1種類の金属層から形成される場合に比べて、コンタクト部の耐電流特性を向上させることができる。例えば、耐摩耗性に優れた耐摩耗性金属層と比抵抗が小さい低比抵抗金属層とからコンタクト部を形成すれば、耐摩耗性金属層のみで形成する場合に比べ、電気抵抗を小さくすることができる。また、コンタクト部を低比抵抗金属層のみで形成する場合に比べ、耐摩耗性の低下が抑制されるので、電極端子に繰返し接触させる際の耐摩耗性能を確保しつつ、耐電流性能の劣化を抑制することができる。
【0009】
第2の本発明によるプローブは、検査対象物上の電極端子に接触させるコンタクト部と、上記コンタクト部を支持し、上記コンタクト部を上記電極端子に接触させた際に弾性変形する弾性変形部とを備え、上記コンタクト部が、上記電極端子に接触させるワーク接触面を有し、第1の導電性金属からなる耐摩耗層と、比抵抗が第1の導電性金属よりも小さい第2の導電性金属からなる低比抵抗電導層とから形成され、第1の導電性金属が第2の導電性金属よりも耐摩耗性に優れ、上記ワーク接触面が上記耐摩耗層の端面と上記低比抵抗電導層の端面とからなるように構成される。
【0010】
このプローブでは、耐摩耗性に優れた導電性金属からなる耐摩耗層と、比抵抗が小さい導電性金属からなる低比抵抗電導層とからコンタクト部が形成される。このため、コンタクト部が耐摩耗層だけで形成される場合に比べ、電気抵抗が小さくなるので、弾性変形部の弾性変形を伴ってコンタクト部を検査対象物上の電極端子に接触させるプローブの耐電流特性を向上させることができる。また、コンタクト部が低比抵抗電導層だけで形成される場合に比べ、耐摩耗性の低下が抑制されるので、電極端子に繰返し接触させる際の耐摩耗性能を確保しつつ、耐電流性能の劣化を抑制することができる。
【0011】
第3の本発明によるプローブは、上記構成に加え、上記低比抵抗電導層及び上記耐摩耗層が、その界面が、オーバードライブ時のスクラブ方向と略平行になるように形成されている。この様な構成によれば、低比抵抗電導層及び耐摩耗層の界面がスクラブ方向に沿って形成されているので、オーバードライブによってワーク接触面上の接触領域がスクラブ方向に移動しても、常に良好な耐摩耗性能及び耐電流性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるプローブでは、コンタクト部が耐摩耗層だけで形成される場合に比べ、電気抵抗が小さくなり、また、コンタクト部が低比抵抗電導層だけで形成される場合に比べ、耐摩耗性の低下が抑制されるので、電極端子に繰返し接触させる際の耐摩耗性能を確保しつつ、耐電流性能の劣化を抑制することができる。従って、弾性変形部の弾性変形を伴ってコンタクト部を検査対象物上の電極端子に接触させるプローブの耐電流特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1によるコンタクトプローブ1を含むプローブカード100の一構成例を示した図である。
【図2】図1のコンタクトプローブ1の一構成例を示した外観図である。
【図3】図2のコンタクトプローブ1の要部を拡大して示した図であり、自由端部21のワーク対向面21a上に形成されたコンタクト部3が示されている。
【図4】図3のコンタクトプローブ1をA−A切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図5】図3のコンタクトプローブ1の耐電流特性を耐摩耗特性と比較して模式的に示した説明図である。
【図6】図2のコンタクトプローブ1の製造方法の一例についての説明図である。
【図7】図2のコンタクトプローブ1の製造方法の一例についての説明図である。
【図8】図2のコンタクトプローブ1の製造方法の一例についての説明図である。
【図9】本発明の実施の形態2によるコンタクトプローブ1の構成例を示した外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
<プローブカード100>
図1は、本発明の実施の形態1によるコンタクトプローブ1を含むプローブカード100の一構成例を示した図であり、図中の(a)には、プローブカード100の下面が示され、(b)には、水平方向から見たプローブカード100が示されている。このプローブカード100は、メイン基板110、プローブ基板120及び連結部材130により構成される。
【0015】
メイン基板110は、プローブ装置(不図示)に対し着脱可能に取り付けられる円形状の配線基板であり、外周付近に外部端子111が形成され、中央付近にプローブ基板120が取り付けられている。プローブ基板120は、2以上のコンタクトプローブ1が配設された矩形状のサブ基板であり、シート状の連結部材130を介してメイン基板110に配線されている。
【0016】
連結部材130は、メイン基板110上に設けられたコネクタ112を介して、メイン基板110に着脱可能に接続されている。コンタクトプローブ1は、弾性変形を伴ってワーク上の電極パッドに接触させるカンチレバー型のプローブ(探針)であり、接触面がワークと対向するように配設されている。
【0017】
<コンタクトプローブ1>
図2は、図1のコンタクトプローブ1の一構成例を示した外観図である。このコンタクトプローブ1は、弾性変形部2及びコンタクト部3からなり、オーバードライブ時には、弾性変形部2が弾性変形することにより、ワーク上の電極パッドに対し、コンタクト部3が所定の針圧で接触する。
【0018】
弾性変形部2は、コンタクト部3を支持し、コンタクト部3を電極パッドに接触させた際に弾性変形する本体部である。この弾性変形部2は、コンタクト部3が形成された自由端部21と、プローブ基板120に固着される固定端部22と、自由端部21及び固定端部22を連結するビーム部23により構成される。
【0019】
ビーム部23は、直線状に延伸した細長い形状からなり、その一端に自由端部21が配置され、他端に固定端部22が配置されている。自由端部21は、ワークに向けて延伸した形状からなり、ビーム部23により、プローブ基板120から離間した状態で弾性的に保持される。また、オーバードライブ時には、ワーク上の電極パッドに対し、コンタクト部3がビーム部23の延伸方向と略平行な方向に移動することにより、スクラブが行われる。
【0020】
コンタクトプローブ1は、プローブ基板120上において、ビーム部23の延伸方向と交差する方向に所定のピッチで配列される。また、各コンタクトプローブ1は、ビーム部23の側面を互いに対向させて配置される。
【0021】
弾性変形部2及びコンタクト部3は、いずれも導電性材料からなる。弾性変形部2は、導電率が高く、かつ、弾性特性に優れた材料、例えば、Pd−Co(パラジウムコバルト)合金、Ni−Co(ニッケルコバルト)合金又はPd−Ni合金からなることが望ましい。一方、コンタクト部3は、導電率が高く、かつ、耐摩耗特性に優れた材料、例えば、Rh(ロジウム)からなることが望ましい。コンタクト部3は、弾性変形部2の先端面から突出していればよく、その形状は任意である。
【0022】
<コンタクト部3の積層構造>
図3は、図2のコンタクトプローブ1の要部を拡大して示した図であり、自由端部21のワーク対向面21a上に形成されたコンタクト部3が示されている。この図では、コンタクトプローブ1の配列方向、プローブ基板120に対する高さ方向、及び、オーバードライブ時のスクラブ方向をそれぞれx軸方向、y軸方向及びz軸方向と呼んでいる。
【0023】
コンタクト部3は、ワーク上の電極パッドに接触させるためのコンタクトチップであり、自由端部21のワーク対向面21a上に突出して形成される。ワーク対向面21aは、ワークの電気的特性試験時に、ワークと対向させた状態で配置される自由端部21の先端面であり、y軸方向と交差する平坦面からなる。弾性変形部2は、y軸方向の力をこのワーク対向面21aに加えることによって弾性変形する。
【0024】
このコンタクト部3は、x方向の厚さが概ね一定であるのに対し、z軸方向の幅に関しては、y軸方向の先端部ほど幅が狭くなっている。また、コンタクト部3は、ワーク上の電極パッドに接触させるワーク接触面3aを有し、低比抵抗電導層32よりも耐摩耗性に優れた導電性金属からなる耐摩耗層31と、比抵抗が耐摩耗層31よりも小さい導電性金属からなる低比抵抗電導層32とから形成されている。
【0025】
ここでは、耐摩耗層31と低比抵抗電導層32とが、x軸方向に積層されている。つまり、耐摩耗層31と低比抵抗電導層32とは、オーバードライブ時のスクラブ方向、すなわち、z軸方向と略平行な界面で互いに接している。ワーク接触面3aは、耐摩耗層31の端面と低比抵抗電導層32の端面とからなる。
【0026】
図4は、図3のコンタクトプローブ1をA−A切断線で切断した場合の切断面を示した断面図である。耐摩耗層31は、硬度が低比抵抗電導層32よりも高い金属からなるのに対し、低比抵抗電導層32は、比抵抗(電気抵抗率)が耐摩耗層31よりも小さい金属からなる。ここでは、硬度が低比抵抗電導層32よりも高い金属を用いることにより、耐摩耗層31の耐摩耗性能を低比抵抗電導層32よりも高くしている。
【0027】
導電性金属の耐摩耗性能は、例えば、導電性金属からなる試験片を一定の力で電極パッドに押し当てながら移動させることを一定回数繰り返した際の摩耗量を測定することにより、定量的に評価することができる。
【0028】
例えば、耐摩耗層31は、Rh(比抵抗4.5μΩ、モース硬度6)、Ru(ルテニウム:比抵抗7.6μΩ、モース硬度6.5)、Re(レニウム:比抵抗19.3μΩ、モース硬度8)、Os(オスミニウム:比抵抗9.5μΩ、モース硬度7.5)、Ir(イリジウム:比抵抗5.3μΩ、モース硬度6.5)などの材料からなる。一方、低比抵抗電導層32は、Au(金:比抵抗2.35μΩ、モース硬度2.5〜3)、Cu(銅:比抵抗1.67μΩ、モース硬度3)などの材料からなる。また、Ni合金、Pd合金も高硬度化が可能であることから、耐摩耗層31の材料として使用することができる。
【0029】
耐摩耗層31及び低比抵抗電導層32の積層方向(x軸方向)に関し、低比抵抗電導層32の厚さW2の比率、すなわち、コンタクト部3の厚さ(W1+W2)に対する低比抵抗電導層32の厚さW2の割合を大きくすれば、コンタクト部3の合成抵抗は下がり、コンタクトプローブ1の耐電流性能を上げることができるが、耐摩耗性能が低下する。従って、耐摩耗層31の材料や、低比抵抗電導層32の厚さW2の比率は、要求される耐摩耗性能や耐電流性能に応じて定められる。
【0030】
図5は、図3のコンタクトプローブ1の耐電流特性を耐摩耗特性と比較して模式的に示した説明図である。この図では、横軸が低比抵抗電導層32の厚さW2の比率Rwを示し、左縦軸が、コンタクト部3の合成抵抗に相当するプローブ抵抗r、右縦軸が、一定数コンタクトした後のプローブの摩耗量を示している。また、図中には、低比抵抗電導層32の厚さW2の比率Rwを変化させた場合におけるコンタクト部3の合成抵抗が特性曲線Bとして示され、耐摩耗特性が特性曲線Cにより示されている。
【0031】
プローブ抵抗rは、コンタクトプローブ1の断面積に反比例することから、厚さW2の比率Rw=W2/(W1+W2)が大きくなれば、当該比率Rwに反比例して小さくなる。このため、特性曲線Bは、Rw=0におけるプローブ抵抗r=rから徐々に減少し、Rw=1においてr=rに達している。
【0032】
一方、特性曲線Cは、コンタクトプローブ1の耐摩耗特性を示し、低比抵抗電導層32が耐摩耗層31よりも耐摩耗性能に劣っていることから、耐摩耗性能は、比率Rwが大きくなれば、顕著に劣化する。低比抵抗電導層32の厚さW2の比率Rwは、この様な耐電流特性及び耐摩耗特性を考慮して決定される。例えば、比率Rwは、特性曲線B及びCの交点から求めることができ、10%以上50%以下の範囲内であることが望ましい。
【0033】
<製造工程>
図6〜図8は、図2のコンタクトプローブ1の製造方法の一例についての説明図である。図6の(a)〜(d)、図7の(a)〜(d)、図8の(a)及び(b)は、コンタクトプローブ1の製造工程を時系列に示した図である。このコンタクトプローブ1は、プローブ配列の方向、すなわち、x軸方向に導電性金属を堆積させることによって形成される。
【0034】
ここでは、コンタクトプローブ1が、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製される。MEMS技術とは、フォトリソグラフィ技術及び犠牲層エッチング技術を利用して、微細な立体的構造物を作成する技術である。フォトリソグラフィ技術は、半導体製造工程などで利用されるフォトレジストを用いた微細パターンの加工技術である。また、犠牲層エッチング技術は、犠牲層と呼ばれる下層を形成し、その上に構造物を構成する層を形成した後、犠牲層のみをエッチングによって除去することにより、立体的な構造物を作成する技術である。
【0035】
犠牲層を含む各層の形成処理には、周知のめっき技術を利用することができる。例えば、陰極としての基板と、陽極としての金属片とを電解液に浸し、両電極間に電圧を印加することにより、電解液中の金属イオンを基板表面に付着させることができる。この様な処理は、電気めっき処理と呼ばれ、基板を電解液に浸すウエットプロセスであることから、めっき処理後には、乾燥処理が行われる。また、この乾燥処理後には、研磨処理などによって積層面を平坦化する平坦化処理が必要に応じて行われる。
【0036】
図6の(a)には、コンタクトプローブ1を形成させる導電性基板が示されている。ここでは、シリコン基板200の上面全体に導電性薄膜201が形成されているものとする。導電性薄膜201は、Cuなどの犠牲金属からなる。
【0037】
図6の(b)には、導電性薄膜201上にフォトレジスト202を選択的に形成した後、フォトレジスト202の非形成領域に犠牲層203を形成した状態が示されている。フォトレジスト202は、シリコン基板200の全面に形成された後、コンタクト部3に相当する領域内のフォトレジスト202だけが選択的に除去される。このレジスト膜のパターニング工程では、所定のフォトマスクを用いた露光処理と、所定の現像液を用いて余分なレジスト膜を除去する現像処理などが行われる。
【0038】
この様なパターニング工程により、コンタクト部3に相当する領域において導電性薄膜201を露出させることができる。この状態において、Cuなどの犠牲金属を電気めっきすれば、コンタクト部3に相当する領域内に犠牲金属を堆積させ、犠牲層203を形成することができる。
【0039】
図6の(c)には、フォトレジスト202を除去し、新たにフォトレジスト204を選択的に形成した状態が示されている。フォトレジスト204は、シリコン基板200の全面に形成された後、弾性変形部2に相当する領域内のフォトレジスト204だけが選択的に除去される。つまり、自由端部21、固定端部22及びビーム部23に相当する領域において導電性薄膜201を露出させることができる。
【0040】
図6の(d)には、フォトレジスト204の非形成領域に導電性金属層205を形成した状態が示されている。図6の(c)の状態において、Pd−Coなどの導電性金属を電気めっきすれば、弾性変形部2に相当する領域内に導電性金属を堆積させ、導電性金属層205を形成することができる。
【0041】
図7の(a)には、フォトレジスト204を除去し、新たにフォトレジスト206を選択的に形成した状態が示されている。フォトレジスト206は、シリコン基板200の全面に形成された後、コンタクト部3に相当する領域内のフォトレジスト206だけが選択的に除去される。これにより、犠牲層203が露出する。このレジスト膜のパターニング工程では、図6の(b)で用いたフォトマスクを用いることができる。
【0042】
図7の(b)には、フォトレジスト206の非形成領域に導電性金属を堆積させた状態が示されている。図7の(a)の状態において、Rhなどの導電性金属を電気めっきすれば、犠牲層203上に導電性金属を堆積させ、耐摩耗層31に相当する導電性金属層207を形成することができる。
【0043】
図7の(c)には、シリコン基板200の表面を研磨した後、フォトレジスト206を除去し、新たにフォトレジスト208を選択的に形成した状態が示されている。フォトレジスト208は、シリコン基板200の全面に形成された後、弾性変形部2に相当する領域内のフォトレジスト208だけが選択的に除去される。つまり、コンタクト部3をマスクし、弾性変形部3に相当する領域内の導電性金属層205のみを露出させることができる。
【0044】
図7の(d)には、フォトレジスト208の非形成領域に導電性金属を堆積させた状態が示されている。図7の(c)の状態において、Pd−Coなどの導電性金属を電気めっきすれば、弾性変形部3に相当する領域内の導電性金属層205上に更に導電性金属を堆積させることができる。
【0045】
図8の(a)には、フォトレジスト208を除去し、新たにフォトレジスト209を選択的に形成した後、フォトレジスト209の非形成領域に導電性金属を堆積させた状態が示されている。
【0046】
フォトレジスト209は、シリコン基板200の全面に形成された後、コンタクト部3に相当する領域内のフォトレジスト209だけが選択的に除去される。これにより、導電性金属層207が露出する。このレジスト膜のパターニング工程においても、図6の(b)で用いたフォトマスクを用いることができる。そして、Auなどの導電性金属を電気めっきすれば、導電性金属層207上に導電性金属を堆積させ、低比抵抗電導層32に相当する導電性金属層210を形成することができる。
【0047】
図8の(b)には、シリコン基板200の表面を研磨した後、フォトレジスト209を除去し、新たにフォトレジスト211を選択的に形成した後、フォトレジスト211の非形成領域に導電性金属を堆積させた状態が示されている。図8の(a)の状態において、Rhなどの導電性金属を電気めっきすれば、弾性変形部3に相当する領域内の導電性金属層205上に更に導電性金属を堆積させることができる。
【0048】
最後に、導電性金属層205からなる弾性変形部3と、耐摩耗層31及び低比抵抗電導層32からなるコンタクト部3を取り出せば、コンタクトプローブ1が得られる。例えば、導電性薄膜201及び犠牲層203がともにCuからなる場合であれば、Cuを選択的に溶解するエッチング液を用いて、導電性金属層205、耐摩耗層31及び低比抵抗電導層32からなるコンタクトプローブ1を取り出すことができる。
【0049】
導電性金属層205や耐摩耗層31、低比抵抗電導層32を構成する導電性金属としては、コンタクトプローブ1の製造工程において使用されるこの様なエッチング液に対し耐性を有する金属が望ましい。
【0050】
本実施の形態によれば、低比抵抗電導層32よりも耐摩耗性に優れた導電性金属からなる耐摩耗層31と、比抵抗が耐摩耗層31よりも小さい導電性金属からなる低比抵抗電導層32とからコンタクト部3が形成されるので、コンタクト部3が耐摩耗層31だけで形成される場合に比べ、コンタクトプローブ1の耐電流特性を向上させることができる。特に、コンタクト部3が低比抵抗電導層32だけで形成される場合に比べ、耐摩耗性の低下が抑制されるので、ワーク上の電極パッドに繰返し接触させる際の耐摩耗性能を確保しつつ、耐電流性能の劣化を抑制することができる。
【0051】
また、耐摩耗層31と低比抵抗電導層32との界面がスクラブ方向に沿って形成されているので、オーバードライブによってワーク接触面3a上の接触領域がスクラブ方向に移動しても、常に良好な耐摩耗性能及び耐電流性能を得ることができる。さらに、耐摩耗層31及び低比抵抗電導層32が、導電性金属をx軸方向に堆積させることによって形成されるので、各レジスト膜のパターニング工程において同一のフォトマスクを使用することができ、製造工程を簡素化することができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態1では、コンタクト部3が、耐摩耗層31及び低比抵抗電導層32をx軸方向に積層した2層からなる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、低比抵抗電導層32が耐摩耗層31,33によってx軸方向に挟まれている場合について説明する。
【0053】
図9は、本発明の実施の形態2によるコンタクトプローブ1の構成例を示した外観図であり、自由端部21のワーク対向面21a上に形成されたコンタクト部3が示されている。このコンタクトプローブ1は、図3のコンタクトプローブ1と比較すれば、コンタクト部3が、耐摩耗層31,33及び低比抵抗電導層32からなる点で異なるが、その他の構成は同一である。
【0054】
このコンタクト部3は、耐摩耗層31,33及び低比抵抗電導層32をx軸方向に積層した3層からなり、低比抵抗電導層32が耐摩耗層31,33によってx軸方向に挟まれている。つまり、耐摩耗層31,33と低比抵抗電導層32とは、x軸方向と交差する界面で互いに接している。耐摩耗層31と耐摩耗層33とは、例えば、同じ導電性金属からなり、同程度の厚さである。
【0055】
この様に、低比抵抗電導層32をその両側から耐摩耗層31,33によって挟み込む構造とすることにより、耐電流性能を確保しつつ、コンタクト部3の耐摩耗性能をより向上させることができる。また、耐摩耗層31,33の各厚さW1,W3に対し、低比抵抗電導層32の厚さW2の比率Rw=W2/(W1+W2+W3)は、10〜30%程度が望ましい。
【0056】
なお、実施の形態1及び2では、コンタクト部3の耐摩耗層31,33及び低比抵抗電導層32が、x軸方向に積層される場合の例について説明したが、本発明はコンタクト部3の構成をこれに限定するものではない。例えば、耐摩耗層及び低比抵抗電導層をz軸方向、すなわち、スクラブ方向に積層するものも本発明には含まれる。
【0057】
また、実施の形態1及び2では、コンタクトプローブ1が、x軸方向に導電性金属を堆積させることによって形成される場合の例について説明したが、本発明はコンタクトプローブ1の製造方法をこれに限定するものではない。例えば、y軸方向、すなわち、ワーク対向面21aと交差する方向に導電性金属を堆積させることによって、コンタクトプローブ1を形成しても良い。
【0058】
また、実施の形態2では、耐摩耗層31と耐摩耗層33とが同じ導電性金属からなる場合の例について説明したが、耐摩耗性能が低比抵抗電導層32よりも高ければ、耐摩耗層31及び33が異なる金属からなるものも本発明には含まれる。
【0059】
また、実施の形態1及び2では、弾性変形部2とコンタクト部3とが一体的に形成される場合の例について説明したが、本発明はコンタクトプローブ1の製造方法をこれに限定するものではない。例えば、導電性金属層207,210を導電性金属層205内に突き出す構造、また、弾性変形部2とコンタクト部3とを別個に作成し、コンタクト部3を弾性変形部2のワーク対向面21aに接合させるような構成であっても良い。
【0060】
また、実施の形態1及び2では、コンタクトプローブ1がカンチレバー型のプローブからなる場合の例について説明したが、本発明はコンタクトプローブ1の構成をこれに限定するものではない。例えば、弾性変形部が細長い柱状体からなり、弾性変形部の長尺方向がy軸方向となるように立てた状態でプローブ基板上に配設される垂直型プローブにも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 コンタクトプローブ
2 弾性変形部
21 自由端部
21a ワーク対向面
22 固定端部
23 ビーム部
3 コンタクト部
3a ワーク接触面
31,33 耐摩耗層
32 低比抵抗電導層
100 プローブカード
110 メイン基板
111 外部端子
112 コネクタ
120 プローブ基板
130 連結部材
W1,W3 耐摩耗層の厚さ
W2 低比抵抗電導層の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物上の電極端子に接触させるコンタクト部と、
上記コンタクト部を支持し、上記コンタクト部を上記電極端子に接触させた際に弾性変形する弾性変形部とを備え、
上記コンタクト部は、2種以上の金属層で構成され、
上記電極端子との接触面が上記2種以上の金属層の各端面からなることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
検査対象物上の電極端子に接触させるコンタクト部と、
上記コンタクト部を支持し、上記コンタクト部を上記電極端子に接触させた際に弾性変形する弾性変形部とを備え、
上記コンタクト部は、上記電極端子に接触させるワーク接触面を有し、第1の導電性金属からなる耐摩耗層と、比抵抗が第1の導電性金属よりも小さい第2の導電性金属からなる低比抵抗電導層とから形成され、第1の導電性金属が第2の導電性金属よりも耐摩耗性に優れ、上記ワーク接触面が上記耐摩耗層の端面と上記低比抵抗電導層の端面とからなることを特徴とするプローブ。
【請求項3】
上記低比抵抗電導層及び上記耐摩耗層は、その界面が、オーバードライブ時のスクラブ方向と略平行になるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−233861(P2012−233861A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104580(P2011−104580)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000232405)日本電子材料株式会社 (272)
【Fターム(参考)】