説明

ヘッジホッグシグナル伝達の阻害剤としての、イソキノリン、キノリン及びキナゾリン誘導体

本発明は、種々の障害、疾患及び病的状態を治療するためのイソキノリン、キノリン及びキナゾリン誘導体を提供し、より具体的には、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するためのイソキノリン、キノリン及びキナゾリン誘導体の使用、並びに過剰増殖疾患及び血管新生媒介疾患の治療のためのこれらの化合物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、米国仮特許出願第61/185,412号(2009年6月9日出願)の利益を主張し、この出願は参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、種々の障害、疾患及び病的状態を治療するためのイソキノリン、キノリン及びキナゾリン誘導体の使用、より具体的には、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するためのイソキノリン、キノリン及びキナゾリン誘導体の使用、並びに過剰増殖疾患及び血管新生媒介疾患の治療のためのこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヘッジホッグ(Hh)遺伝子は、Drosophila melanogasterの胚性致死変異体についての研究の間に最初に同定され、Hhの変異は、幼虫のセグメントパターン形成を変化させることが見出されている(Nusslein-Volhard, C.; Wieschaus, E. Nature 1980, 287, 795-801)。その後、この遺伝子は多くの他の無脊椎動物及び脊椎動物(ヒトを含む)において同定された。Hh遺伝子の3つの哺乳動物対応物(ソニックヘッジホッグ(Sonic hedgehog)(Shh)、デザートヘッジホッグ(Dessert hedgehog)(Dhh)及びと称される)、及びcDNAライブラリー(Echelard, Y.; Epstein, D. J.; et al., Cell 1993, 75, 1417-1430.)。Hhは、複数のプロセシング事象(切断部位におけるコレステロール部分の付加と組合わせたC末端ドメインの自己触媒的切断、及びN末端パルミトイル化が含まれる)を受けて、活性リガンドを生じる(Lee, J. J.; Ekker, S. C.; et al., Science 1994, 266, 1528-1537; Porter, J. A.; Young, K. E.; et al., Science 1996, 274, 255-259; Pepinsky, R. B.; Zeng, C.;et al., J. Biol.Chem. 1998, 273, 14037-14045)。
【0004】
分泌されたHhタンパク質の受容体は、複数回膜貫通タンパク質Patched(Ptch)である。Ptchの2つの脊椎動物ホモログ(Ptch1及びPtch2)のうち、Ptch1の役割がより理解されている。Hhリガンドの非存在下では、Ptchは下流のエフェクターSmoothened(Smo)の活性を阻害する。Hhの結合はPtchを不活性化し、Smoの活性化を生じる(Stone, D. M.; Hynes, M.; et al., Nature 1996, 384, 129-134)。Drosophilaにおいて、Fused(Fu)、Suppressor of Fused(SuFu)及びCostal-2(Cos2)を含むタンパク質複合体は、Smoの下流のシグナル伝達を媒介し、いくつかのキナーゼ(例えば、プロテインキナーゼA(PKA)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)及びカゼインキナーゼ1(CK1))によって補助される。Fu及びCos2の哺乳動物ホモログは未だ同定されておらず、シグナル伝達機構が哺乳動物とDrosophilaとで異なることを示唆している。Shhシグナル伝達に必要ないくつかの哺乳動物特異的キナーゼが同定されている(Varjosalo, M.; Bjorklund, M.; et al., Cell 2008, 133, 537-548; Mao, J.; Maye, P.; et al., J. Biol. Chem. 2002, 277, 35156-35161; Riobo, N. A.; Haines, G. M.; et al., Cancer Res.2006, 66, 839-845)。これらのタンパク質は、Hhの直ぐ下流で機能する、今日までに同定された唯一の転写因子Gli(DrosophilaではCi)の機能を調節する。
【0005】
最初に発見された脊椎動物Gli遺伝子はヒトGli1であり、これは、悪性神経膠腫において約50倍に増幅されていた(Kinzler, K. W.; Bigner, S. H.; et al., Science 1987, 236, 70-73)。脊椎動物は、3つのGliタンパク質(Gli1、Gli2及びGli3)を有しており、これらは全て、5つの高度に保存されたタンデムのZnフィンガー、かなり保存されたN末端ドメイン、いくつかの潜在的PKA部位、及びC末端中の多数のさらなる小さい保存された領域を有する。これらの類似性にもかかわらず、Gliサブタイプの機能は異なっている。Gli2及びGli3は共に、活性化ドメイン及びリプレッサードメインを含んでいる。結果として、上流のHhシグナルが存在しないとき、全長Gli3及びより低い程度までGli2は、構成的に切断されて、短縮されたリプレッサー形態を生じる(Dai, P.; Akimaru, H.; et al., J. Biol. Chem. 1999, 274, 8143-8152; Ruiz i Altaba, DeVelopment 1999, 126, 3205-3216; Shin, S. H.; Kogerman, P.; et al., Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 1999, 96, 2880-2884)。Hhシグナル伝達はこの切断を阻害し、アクチベータ機能を有する全長のGli2及びGli3を生じる。対照的に、Gli1は、タンパク質分解的切断を受けず、構成的アクチベータとして機能する。Gli1遺伝子の転写は、Hhによって開始され、Gli3によっても制御される27。Hh経路のGli1以外の標的遺伝子には、Ptch、いくつかのWnt及びTGFスーパーファミリータンパク質、細胞周期タンパク質(サイクリンDなど)、及び幹細胞マーカー遺伝子(NANOG及びSOX2など)が挙げられる30,31。発明者らは現在、Gli1標的遺伝子を包括的に同定するための試みを行っている(Yoon, J. W.; Kita, Y.; et al., J. Biol. Chem. 2002, 277, 5548-5555; Yoon, J. W.; Gilbertson, R.; Mt. J. Cancer2008, 124, 109-119)。
【0006】
Hhシグナル伝達経路は、適切な胚発生に非常に重要である(Ingham, P. W.; McMahon, A. P. Genes DeV. 2001, 15, 3059-3087)。Hhシグナル伝達経路は、成体では、神経系及び他の組織における増殖を抑えるため及び幹細胞の維持においても重要である(Machold, R.; Hayashi, S., et al., Neuron 2003, 39, 937-950; Lavine, K. J.; Kovacs, A.;et al., J. Clin. InVest. 2008, 118, 2404-2414. Balordi, F.; Fishell, G. et al., J. Neurosci. 2007, 27, 14248-14259)。脊椎動物の組織/器官におけるHhの発現及び役割は、最近の総説に広範に記載されている(Varjosalo, M.; Taipale, J. Genes DeV. 2008, 22, 2454-2472)。
【0007】
脊椎動物の胚発生におけるHhの2つの機能は、いずれも非常に重要であり、比較的よく理解されている:神経管分化及び前後肢パターン形成。これらの機能におけるHhシグナル伝達の優勢な機構はパラクラインシグナル伝達であり、ここでHh分子は勾配様式で機能する。例えば、脊椎動物の肢芽において、異なる濃度のShhへの曝露は、指趾間部間葉のパターン形成を調節し、特異的パターンでの指の適切な成長に影響を与える(Tabin, C. J.; McMahon, A. P. Science 2008, 321, 350-352)。神経管発生において、底板によって産生されるShhは、背腹パターン形成、腹側細胞集団の特異化、及び脳における全般的な細胞増殖を引き起こす40。全前脳症(腹側細胞型が失われた、前脳及び中顔面の発生に関与する障害)は、Shh活性の喪失をもたらす変異によって、ヒトにおいて引き起こされる(Belloni, E.; Muenke, M.; et al., Nat. Genet. 1996, 14, 353-356)。
【0008】
Shhシグナル伝達の別の重要な特徴は、Gliサブタイプが独自かつ重複した機能を有することである。トランスジェニックマウスの中脳及び後脳におけるGil1の異所的発現は、いくつかの腹側細胞型の発現を生じるが、Gli1のZnフィンガードメインをコードする領域中の変異に関してホモ接合性のマウスは、正常に発生する(Hynes, M.; Stone, D. M.; et al., Neuron, 1997, 19, 15-26; Park, H. L.; Bai, C.; et al., DeVelopment 2000, 127, 1593-1605)。しかしながら、Gli1/Gli2二重変異体マウスは、重篤な複数の欠損(腹側脊髄の多様な喪失、およびより小さい肺を含む)を有する表現型を有しており、従って、Gli2は、脊髄及び肺の発生において、Gli1よりも重要な役割を果たす。対照的に、Gli1/Gli3二重変異体マウスはこれらの表現型を有さなかった(Park, H. L.; Bai, C.; et al., DeVelopment 2000, 127, 1593-1605)。Gli2及びGli3は共に、骨格の発生に関与しており、各サブタイプは特定の機能的役割を果たす。Gli2変異体マウスは、口蓋裂、歯の欠損、椎体及び椎間板の非存在、並びに短い肢及び胸骨を含むいくつかの骨格異常を示す(Mo, R.; Freer, A. M.; et al., DeVelopment 1997, 124, 113-123)。Gli1/Gli2二重変異体マウスは正常な指の数及びパターンを有したが、Gli3変異体マウスは多指症を示したので、Gli3は、肢におけるShh効果の主要なメディエータであると思われる(Hui, C. C.; Joyner, A. L. Nat. Genet. 1993, 3, 241-246)。
【0009】
Gli変異体の遺伝学的分析により、Gliサブタイプ発生の要求が、脊椎動物間でさえも全く異なっていることが明らかになった。ゼブラフィッシュにおいて、detour(dtr)変異(Gli1の機能喪失型対立遺伝子をコードする)及びyou-too(yot)変異(C末端短縮型Gli2をコードする)は共に、体軸形成及び脳におけるHh標的遺伝子の発現に欠損を有しており(Karlstrom, R. O.; Tyurina, O. V.; et al., DeVelopment 2003, 130, 1549-1564)、マウス及びゼブラフィッシュにおけるGli1及びGli2の多様な要求を示唆している。
【0010】
成体において、Hh経路は、神経系及び他の組織における増殖を抑えるため及び幹細胞の維持において重要である。Zhang及びKalderonは、HhがDrosophilaの卵巣において幹細胞に対して特異的に作用すること、及びこれらの細胞が、Hhの非存在下では増殖できないことを示している(Zhang, Y.; Kalderon, D. Nature 2001, 410, 599-604)。他の研究は、出生後の終脳におけるHhシグナル伝達が、神経前駆体の増殖を促進し、かつそれらの集団を維持することを示しており、哺乳動物の終脳におけるShhシグナル伝達が、神経幹細胞のニッチの維持に関与し得ることを示唆している。Shhが過剰発現され、増殖がSmoアンタゴニストの使用によって阻害された研究によって、成体の神経前駆細胞の増殖におけるHhの役割が確認された(Lai, K.; Kaspar, B. K.; et al., Nat. Neurosci. 2003, 6, 21-27)。
【0011】
Hh遺伝子は、組織の増殖を誘導する能力を有する。この機能は、胚形成及び組織の維持において重要であるが、この経路の不適切な活性化は、腫瘍形成を生じ得る(Hunter, T. Cell 1997, 88, 333-346)。全ての癌死の約25%における腫瘍が、Hh経路の異常な活性化を伴っていると推定される。腫瘍形成又は腫瘍増殖は、Hhリガンドの異常な上方調節から、或いは下流の成分の発現又は機能の調節解除(例えば、Ptchの喪失、Smoの活性化変異(Xie, J.; Murone, M.; et al., Nature 1998, 391, 90-92)、SuFuの喪失、Gil1又はGli2遺伝子の増幅又は染色体転座、Gli2タンパク質の増幅又は安定化(Bhatia, N.; Thiyagarajan, S.; J. Biol. Chem. 2006, 281, 19320-19326)による)から、生じ得る。
【0012】
癌において増幅されていることが最初に見出されたHh経路遺伝子はGli1であり、これは、ヒト神経膠芽腫及び誘導された細胞株において、高レベルで発現されていた。その後、Gli1は種々の膠細胞腫瘍で一貫して発現していることが見出され、Gli1過剰発現は、中枢神経系の過剰増殖を誘導することが示された(Dahmane, N.; Sanchez, P.; et al., DeVelopment 2001, 128, 5201-5212)。Gli1過剰発現は、Hh経路活性の唯一の信頼性あるマーカーとしてGill発現を同定した研究において、低グレードから高グレードまでの脳腫瘍のパネルにおいても観察されている(Clement, V.; Sanchez, P.; Curr. Biol. 2007, 17, 165-172)。さらに、多くのこれらの腫瘍の初代培養物における細胞増殖は、Gil1の低分子干渉RNAによって阻害された。Gil1発現は、マウスにおけるPDGF誘導された神経膠腫形成(liomagenesis)において腫瘍のグレードと相関した。Gli1以外のHhシグナル伝達成分も、神経膠芽腫の特定のサブセットにおける腫瘍形成に寄与する。PDGF誘導された腫瘍において、Shhの発現レベルは、腫瘍のグレードと相関した。しかしながら、他の研究では、神経膠腫のサブセットのみが高レベルのShhを含むことが見出された。
【0013】
Hh経路の調節に欠損を有する別の癌は、基底細胞癌(BCC)である。ヒトPtchは、Gorlin症候群(GS)(散発性BCCを生じる遺伝性疾患)を有する患者において、その変異のおかげで最初に同定された(Johnson, R. L.; Rothman, A. L.; et al., Science 1996, 272, 1668-1671)。BCCにおいて同定されたPtchの変異には、短縮型タンパク質を生じる欠失、及びヘテロ接合性の消失(LOH)又は他の対立遺伝子における変異を伴う挿入若しくはナンセンス変異が挙げられる。これらの変異は、PtchがSmoを抑制する能力を阻害し、構成的なHhシグナル伝達を生じる。Ptch1の異常はBCC患者の大多数において検出されるが、BCCのサブセットもまた、Ptchによる阻害に対するその感受性を低下させるSmoの変異によって駆動されることが現在明らかである。さらに、Gli1タンパク質の過剰発現は、マウスにおいてBCC様の腫瘍を引き起こし、BCC腫瘍形成におけるGli1転写の重要性を立証している(Nilsson, M.; Unden, A. B.; et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2000, 97, 3438-3443)。Gli1転写物のレベルは、特定の他の皮膚腫瘍からBCCを識別するために使用できる(Hatta, N.; Hirano, T.; et al., J. Cutaneous Pathol. 2005, 32, 131-136)。しかしながら、Gliベースの転写の遮断は、BCCの増殖を停止させることが未だ示されていない。
【0014】
最も一般的な悪性小児脳腫瘍である髄芽腫は、Ptch及びSmoにおける変異、並びに他のHh経路遺伝子(例えば、SuFu及びGli)における変異に関連している(Pomeroy, S. L.; Tamayo, P.; et al., Nature 2002, 415, 436442)。欠失及び変異によるPtch遺伝子座の不活性化が、散発性髄芽腫の約10%において見出されている。これらの腫瘍におけるShh経路の関与は、Smo阻害剤によるマウス髄芽腫の処置が、マウスにおいて、細胞増殖を阻害し、腫瘍増殖を減少させた研究によって、さらに確認された(Berman, D. M.; Karhadkar, S. S.; et al., Science 2002, 297, 1559-1561; Sanchez, P.; Ruiz i Altaba, Mech. DeV. 2005, 122, 223-230; Romer, J. T.; Kimura, H. et al., Cancer Cell 2004, 6, 229-240)。Taylorらは、SuFuを、その変異が個体を髄芽腫に罹りやすくする腫瘍サプレッサー遺伝子として同定した。彼らは、髄芽腫を有する小児のサブセットが、野生型対立遺伝子のヘテロ接合性の消失を伴って、SuFuにおける生殖細胞系列変異及び体細胞変異を有することを見出した。これらの変異のいくつかは、核からGliタンパク質を輸送(export)できない短縮型SuFuタンパク質をコードしていた。さらに、腫瘍サプレッサーRENもまた髄芽腫に関連しており、髄芽腫では、RENの対立遺伝子欠失及び発現低下が頻繁に観察される。これは、Hh経路をネガティブに調節することによって髄芽腫の増殖を阻害することが示唆されている(C.; Zazzeroni, F.; Gallo, R.; et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.2004, 101, 10833-10838; Argenti, B.; Gallo, R.; et al., J. Neurosci. 2005, 25, 8338-8346)。
【0015】
Hhは、膵臓癌腫瘍形成の初期及び後期メディエータであることも示されている。Shhは、正常な成人ヒト膵臓においては検出されなかったが、膵臓腺癌標本の70%において異常に発現されていた(Thayer, S. P.; di Magliano, M. P.; et al., Nature 2003, 425, 851-856)。Shhシグナル伝達の関与は、膵臓発癌の複数のステージで示されており、K-Ras(膵臓癌において最も頻繁に変異している遺伝子の1つ)を含む複数の発癌性因子が付随している(Morton, J. P.; Mongeau, M. E.; et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2007, 104, 5103-5108; Ji, Z.; Mei, F. C.; et al., J. Biol. Chem. 2007, 282, 14048-14055)。活性化されたHhシグナル伝達は、原発性及び転移性の膵臓腺癌から樹立した細胞株において検出され、Smo阻害剤シクロパミンは、培養物中及びマウス中の両方において、膵臓癌細胞株のサブセットにおいてアポトーシスを誘導した(Sheng, T.; Li, C.; et al., Mol. Cancer. 2004, 3, 29)。
【0016】
多数の研究が、Hhシグナル伝達が膵臓癌に関与していることを示している。Sanchez及びその他は、成人ヒト前立腺癌におけるShh-Gli経路成分の発現を報告した。原発性前立腺腫瘍培養物及び転移性前立腺癌細胞株の、Smo阻害剤による処理は、この経路及び増殖を遮断した。前立腺癌細胞におけるShh発現の増加は、Gill発現を上方調節し、前立腺腫瘍異種移植片の増殖を劇的に加速する(Fan, L.; Pepicelli, C. V.; et al., Endocrinology 2004, 145, 3961-3970)。Shh活性の上昇は、局在性の前立腺癌から転移性の前立腺癌を識別し、この経路の操作は、これらの腫瘍の浸潤性及び転移を調節した(Karhadkar, S. S.; Bova, G. S.; et al., Nature 2004, 431, 707-712)。
【0017】
Hhシグナル伝達は、種々の他の癌(例えば、肺、結腸直腸、膀胱、子宮内膜、卵巣及び食道の癌、並びに横紋筋肉腫)にも関与している(Chi, S.; Huang, S.; et al., Cancer Lett. 2006, 244, 53-60; Watkins, D. N.; Berman, D. M.; et al., Nature 2003, 422, 313-317; Qualtrough, D.; Buda, A.;et al., Mt. J. Cancer 2004, 110, 831- 837; McGarvey, T. W.; Maruta, Y.; Oncogene 1998, 17, 1167-1172; Feng, Y. Z.; Shiozawa, T.; et al., Clin. Cancer Res. 2007, 13, 1389-1398; Bhattacharya, R.; Kwon, J.; et al., Clin. Cancer Res. 2008, 14, 7659-7666; Mori, Y.; Okumura, T.; et al., Oncology 2006, 70, 378-389; Tostar, U.; Malm, C. J.; et al., J. Pathol. 2006, 208, 17-25; Hahn, H.; Wojnowski, L.; et al., Nat. Med. 1998, 4, 619-622)。癌におけるHh-Gliシグナル伝達経路の役割及び治療標的としてのその可能性が、近年の論文においてより詳細に検討されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
いくつかの癌におけるHh-Gliシグナル伝達の異常な活性化が、それを、抗癌剤発見のための魅力的な標的にしている。ヘッジホッグシグナル伝達の種々の阻害剤(例えば、細胞周期をG0-G1で停止させ、SCLCにおいてアポトーシスを誘導することが示されている天然アルカロイドであるシクロパミン)が調査されている。シクロパミンは、Smoの7回らせんの束に結合することによって、Smoを阻害すると考えられている。現在、シクロパミンは、抗癌剤として、前臨床研究及び臨床研究の段階にある(Kolterud, A.; Toftga°rd, R. Drug DiscoVery Today: Ther. Strategies 2007, 4, 229-235)。現在多数のSmo阻害剤が報告されており、シクロパミンアナログ又は合成Smoアンタゴニストとして分類され得る。いくつかの製薬会社が、ハイスループットスクリーニングヒットの最適化によって、薬物様の特性を有する新たなSmo阻害剤を同定している。
【0019】
1つのこのような低分子GDC-0449は、Curis及びGenentechによって開発されたものであり、現在、進行BCC及び固形上皮性腫瘍に対するI/II相臨床試験の段階にある(Gunzner, J.; Sutherlin, D.; et al., WO2006028958, 2006年3月16日)。これらの化合物にもかかわらず、ヘッジホッグシグナル伝達経路の強力な阻害剤が今なお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I):
【0021】
【化1】

【0022】
で示される化合物又はその医薬上許容される塩に関する
(式中、
BはN又はCHであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、シクロアルキル又は複素環を示し;
Lは、酸素、NR、NRCO、NRSO、NRSO、SONR、NRCONH、NRCSNH、CONR、CSNR、NRCHR、NRPO又はNRPO(OH)であり;
環Aは、アリール、複素環、ヘテロアリールであり;
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル(acvl)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル又はスルホンアミドを示すか;或いは
は、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルカノイル、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル及びスルホンアミドで置換されていてもよい、アリール、複素環又はヘテロアリールであり;
及びRは、水素又は置換されていてもよいC1−4アルキル基から独立して選択され;
mは0〜4である)。
【0023】
具体的実施形態において、本発明の化合物は、一般式Iaを有する:
【0024】
【化2】

【0025】
又はその医薬上許容される塩
(式中、
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、シクロアルキル又は複素環を示し;
Lは、酸素、NR、NRCO、NRSO、NRSO、SONR、NRCONH、NRCSNH、CONR、CSNR、NRCHR、NRPO又はNRPO(OH)であり;
環Aは、アリール、複素環、ヘテロアリールであり;
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル又はスルホンアミドを示すか;或いは
は、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルカノイル、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル及びスルホンアミドで置換されていてもよい、アリール、複素環又はヘテロアリールであり;
及びRは、水素又は置換されていてもよいC1−4アルキル基から独立して選択され;
mは0〜4である)。
【0026】
別の具体的実施形態において、本発明の化合物は、一般式Ibを有する:
【0027】
【化3】

【0028】
又はその医薬上許容される塩
(式中、
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、シクロアルキル又は複素環を示し;
Lは、酸素、NR、NRCO、NRSO、NRSO、SONR;NRCONH、NRCSNH、CONR、CSNR、NRCHR、NRPO又はNRPO(OH)であり;
環Aは、アリール、複素環、ヘテロアリールであり;
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル(acvl)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル又はスルホンアミドを示すか;或いは
は、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルカノイル、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル及びスルホンアミドで置換されていてもよい、アリール、複素環又はヘテロアリールであり;
及びRは、水素又は置換されていてもよいC1−4アルキル基から独立して選択され;
mは0〜4である)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以降の定義で上記及び開示全体で用いる種々の用語に言及する。
【0030】
本明細書中、化合物は通常標準的な命名法を用いて記載される。不斉中心を有する化合物については、(別段の定めがない限り)全ての光学異性体及びそれらの混合物が包含されると理解されるべきである。更に、炭素−炭素二重結合を伴う化合物は、Z体であってもE体であってもよく、別段の定めがない限り当該化合物の全ての異性型を本発明中に含める。化合物が様々な互変異性型で存在する場合は、列挙された化合物はいずれか1つの特定の互変異性体に限定されず、むしろ全ての互変異性型を含むことが意図される。本明細書中、いくつかの化合物は可変基(variables;例、X、Ar)を含む一般式を用いて記載される。別段の定めがない限り、そのような式中の各可変基は任意の他の可変基と独立に定義され、且つ式中二度以上現れる可変基は全て出現のたびごとに独立に定義される。
【0031】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。本明細書中、別段の定めがない限り、単独での又は他の基の一部としての用語「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を含有する一価のアルカン(炭化水素)由来の基(radical)を指す。アルキル基は任意の利用可能な結合点で置換されてもよい。別のアルキル基で置換されたアルキル基は「分枝鎖アルキル基」としても言及される。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。例示的な置換基としては以下の1以上の基が挙げられるが、これらに限定されない:アルキル、アリール、ハロ(F、Cl、Br、I等)、ハロアルキル(CCl又はCF等)、アルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、カルボキシ(−COOH)、アルキルオキシカルボニル(−C(O)R)、アルキルカルボニルオキシ(−OCOR)、アミノ(−NH)、カルバモイル(−NHCOOR−又は−OCONHR−)、尿素(−NHCONHR−)又はチオール(−SH)。本発明のいくつかの好ましい実施形態においては、アルキル基は例えば、アミノ、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、アゼチジン等のヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、メトキシ、又はピロリジン等のヘテロアリール基で置換される。
【0032】
本明細書中、単独での又は他の基の一部としての用語「シクロアルキル」は、3〜9個、好ましくは3〜7個の炭素原子の完全飽和又は部分不飽和の炭化水素環を指す。例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等が挙げられる。更に、シクロアルキルは置換されていてもよい。置換シクロアルキルは、ハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、シアノ、オキソ(=O)、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、−COH、−C(=O)H、CO−アルキル、−C(=O)アルキル、ケト、=N−OH、=N−O−アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、−NR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−CONR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−NR’COR’’、−NR’C(=O)R’’、−SONR’R’’、及び−NR’SOR’’(式中、R’及びR’’のそれぞれは水素、アルキル、置換アルキル、及びシクロアルキルから独立に選ばれるか、又はR’及びR’’は一緒になって複素環又はヘテロアリール環を形成する)よりなる群から選ばれる1、2、又は3個の置換基を有するような環を指す。
【0033】
本明細書中、単独での又は他の基の一部としての用語「アルケニル」は、2〜12個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素基を指す。そのような基の例としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル等が挙げられる。アルケニル基は利用可能ないずれの結合点で置換されていてもよい。アルケニル基の例示的な置換基には、アルキル基について上で列挙されたものが挙げられ、特にシクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のC〜Cシクロアルキル基であって、例えばアミノ、オキソ、ヒドロキシル等で更に置換されていてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
【0034】
用語「アルキニル」は、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、そのうちの少なくとも1つが三重結合である、直鎖又は分枝鎖のアルキン基を指す。アルキニル基には、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル及びC−Cアルキニル基が含まれ、これらはそれぞれ、2〜8、2〜6又は2〜4個の炭素原子を有する。アルキニル基の例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが挙げられる。アルキニル基は利用可能ないずれの結合点で置換されていてもよい。アルキニル基の例示的な置換基には、アミノ、アルキルアミノ等の、アルキル基について上で列挙されたものが挙げられる。記号「C」後の下付き文字での数字は、個々の基が含有できる炭素原子数を規定する。
【0035】
単独での又は他の基の一部としての用語「アルコキシ」は、酸素連結(−O−)を通して結合した、上記のようなアルキル基を意味する。好ましいアルコキシ基は1〜8個の炭素原子を有する。そのような基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ及び2−エチルヘキシルオキシが挙げられる。
【0036】
用語「アルキルチオ」は硫黄架橋を介して結合した上記のようなアルキル基を指す。好ましいアルコキシ基及びアルキルチオ基は、アルキル基がヘテロ原子架橋を介して結合するものである。好ましいアルキルチオ基は1〜8個の炭素原子を有する。そのような基の例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピチオール(propythiol)、n−ブチルチオール等が挙げられる。
【0037】
用語「オキソ」は本明細書で使用する場合、ケト(C=O)基を指す。非芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基は、−CH−の−C(=O)−への転換をもたらす。
【0038】
用語「アルカノイル」は、式:−C(O)Rの基を指し、式中R基は、直鎖又は分枝鎖C−Cアルキル基、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである。
【0039】
本明細書中、単独での又は他の基の一部としての用語「アルコキシカルボニル」は、カルボニル基を通して結合したアルコキシ基を意味する。アルコキシカルボニル基は式:−C(O)OR(式中、R基は直鎖又は分枝鎖C−Cアルキル基、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである)により表される。
【0040】
本明細書中、単独での又は他の基の一部としての用語「アリール」は、単環式又は二環式の芳香族環(例、フェニル、置換フェニル等)及び縮合した基(例、ナフチル、フェナントレニル等)を指す。従ってアリール基は、少なくとも6原子を有する少なくとも1つの環を含み、そのような環が最大で5つ存在し、そこには最大で20個の原子が含まれ、隣接する炭素原子間又は好適なヘテロ原子間の交互の(共鳴した)二重結合を有する。アリール基は、I、Br、F、又はCl等のハロゲン;メチル、エチル、プロピル等のアルキル;メトキシ又はエトキシ等のアルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、カルバモイル、アルキルオキシカルボニル、ニトロ、アルケニルオキシ、トリフルオロメチル、アミノ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、アルキルS(O)(式中、m=0、1、2)、又はチオールを含むがこれらに限定されない1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0041】
本明細書中、単独での又は他の基の一部としての用語「アミノ」は、−NHを指し、「アミノ」は、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロへテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、チオアルキル、カルボニル又はカルボキシル等の、同一であっても異なっていてもよい1つ又は2つの置換基で置換されていてもよい。これらの置換基は、カルボン酸、本明細書中で提示するアルキル又はアリール置換基のいずれかで更に置換されていてもよい。ある実施形態においては、アミノ基はカルボキシル又はカルボニルで置換されて、N−アシル誘導体又はN−カルバモイル誘導体を形成する。
【0042】
用語「ヘテロ原子」は、炭素以外の任意の原子、例えばN、O、又はSを指す。
【0043】
本明細書中、単独での又は他の基の一部としての用語「ヘテロアリール」は、置換された、又は置換されていない、5又は6員の単環式芳香族基、9又は10員の二環式芳香族基、及び11〜14員の三環式芳香族基であって、少なくとも1つのヘテロ原子(O、S又はN)を環のうちの少なくとも1つの中に有する基を指す。ヘテロ原子を含有するヘテロアリール基の環はそれぞれ、各環中の合計ヘテロ原子数が4以下で且つ各環が少なくとも1つの炭素原子を有するという条件で、1個又は2個の酸素又は硫黄原子及び/或いは1〜4個の窒素原子を含有できる。
【0044】
二環式及び三環式の基を完成させる縮合環は炭素原子のみを含んでいてもよく、且つ飽和、部分飽和、又は不飽和であってもよい。窒素原子及び硫黄原子は酸化されていてもよく、窒素原子は4級化されていてもよい。二環式又は三環式のヘテロアリール基は少なくとも1つの完全に芳香族の環を含まなければならないが、他の縮合環は芳香族でも非芳香族でもよい。ヘテロアリール基は任意の環の利用可能ないずれの窒素原子又は炭素原子に結合していてもよい。ヘテロアリール環系はハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、−COH、−C(=O)H、−CO−アルキル、−C(=O)アルキル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルオキシ、フェニルチオ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール、−NR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−CONR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−NRCOR’’、−NR(=O)R’’、−SONR’R’’、及び−NR’SOR’’(式中、R’及びR’’は、水素、アルキル、置換アルキル、及びシクロアルキルからそれぞれ独立して選ばれるか、又はR’及びR’’は一緒になって複素環又はヘテロアリール環を形成する)よりなる群から選ばれる0、1、2、又は3個の置換基を含有してもよい。
【0045】
好ましくは、単環式ヘテロアリール基としては、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、ジアゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、S イソチアゾリル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、及びトリアジニル等が挙げられる。
【0046】
二環式へテロアリール基としては、好ましくはインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル(benzodioxolyl)、ベンゾキサキソリル(benzoxaxolyl)、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、ジヒドロイソインドリル、及びテトラヒドロキノリニル等が挙げられる。
【0047】
三環式へテロアリール基としては、好ましくはカルバゾリル、ベンジドリル(benzidolyl)、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、及びキサンテニル等が挙げられる。
【0048】
本明細書では、単独での又は他の基の一部としての用語「複素環」又は「ヘテロシクロアルキル」は、環中の炭素原子の1つがO、S又はNから選ばれるヘテロ原子で置換されたシクロアルキル基(非芳香族)を指す。「複素環」は1〜3個の縮合環、ペンダント環又はスピロ環を有し、そのうちの少なくとも1つが複素環(即ち、1つ以上の環原子がへテロ原子で、残りの環原子が炭素である)である。複素環は置換されていてもよいが、これは複素環がアルキル(好ましくは、低級アルキル)、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルコキシ(好ましくは、低級アルコキシ)、ニトロ、モノアルキルアミノ(好ましくは、低級アルキルアミノ)、ジアルキルアミノ(好ましくは、アルキルアミノ)、シアノ、ハロ、ハロアルキル(好ましくは、トリフルオロメチル)、アルカノイル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミド(好ましくは、低級アルキルアミド)、アルコキシアルキル(好ましくは、低級アルコキシ;低級アルキル)、アルコキシカルボニル(好ましくは、低級アルコキシカルボニル)、アルキルカルボニルオキシ(好ましくは、低級アルキルカルボニルオキシ)及びアリール(好ましくは、フェニル;当該アリールはハロ、低級アルキル及び低級アルコキシ基で置換されていてもよい)から独立に選ばれる1以上の基で、環の1以上の置換可能な位置で置換されてもよいことを意味する。複素環基は一般的に、安定な化合物を生じるという条件で、いずれの環原子又は置換基原子を介して結合してもよい。N−結合型複素環基は成分窒素原子を介して結合する。
【0049】
典型的には、複素環は1〜4個のへテロ原子を含み;いくつかの実施形態中では各複素環が1環当たり1個又は2個のヘテロ原子を有する。一般的に、各複素環は3〜8環員を含有し(7環員までを有する環がいくつかの実施形態で列挙される)、縮合環、ペンダント環又はスピロ環を含む複素環は典型的に、炭素原子から成り、且つ窒素、酸素及び/又は硫黄から選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含有する9〜14環員を含有する。
【0050】
「複素環」基又は「ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロリジン、イミダゾリジン及びチアゾリドが挙げられる。
【0051】
本明細書中、用語「カルバモイル」は、式C(O)N(R)で示される置換基を含むアミノカルボニルを指し、式中、Rは、H、ヒドロキシル、アルキル、炭素環、複素環、炭素環置換されたアルキル又はアルコキシ、或いは複素環置換されたアルキル又はアルコキシであり、該アルキル、アルコキシ、炭素環及び複素環は、本明細書中で定義したとおりである。カルボモイル(carbomoyl)基には、アルキルアミノカルボニル(例えば、エチルアミノカルボニル、Et−NH−CO−)、アリールアミノカルボニル(例えば、フェニルアミノカルボニル)、アラルキルアミノカルボニル(aralkylaminocrbonyl)(例えば、ベンゾイルアミノカルボニル)、複素環アミノカルボニル(例えば、ピペリジニルアミノカルボニル)、及び特にヘテロアリールアミノカルボニル(例えば、ピリジルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0052】
本明細書中、用語「スルファモイル」は−SO−N(R)を指し、式中、各Rは独立して、H、アルキル、炭素環、複素環、カルボシクロアルキル又はヘテロシクロアルキルである。具体的なスルファモイル基は、メチルスルファモイル(−SO−NHMe)などのアルキルスルファモイル;フェニルスルファモイルなどのアリールスルファモイル;ベンジルスルファモイルなどのアラルキルスルファモイルである。
【0053】
本明細書中、用語「スルフィニル」は−SORを指し、式中、Rは、アルキル、炭素環、複素環、カルボシクロアルキル又はヘテロシクロアルキルである。具体的なスルフィニル基は、メチルスルフィニルなどのアルキルスルフィニル(即ち、−SO−アルキル);フェニルスルフィニルなどのアリールスルフィニル(即ち、−SO−アリール);ベンジルスルフィニルなどのアラキルスルフィニル(arakylsulfinyl)である。
【0054】
本明細書中、用語「スルホアミド(sulfoamide)」は−NR−SO−Rを指し、式中、各Rは独立して、H、アルキル、炭素環、複素環、カルボシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル)、炭素環又は複素環である。具体的なスルホンアミド基は、メチルスルホンアミドなどのアルキルスルホンアミド(例えば、−NH−SO−アルキル);フェニルスルホンアミドなどのアリールスルホンアミド(例えば、−NH−SO−アリール);ベンジルスルホンアミドなどのアラルキルスルホンアミドである。
【0055】
本明細書中、用語「スルホニル」は−SO−R基を指し、式中、Rは、アルキル、炭素環、複素環、カルボシクロアルキル又はヘテロシクロアルキルである。具体的なスルホニル基は、メチルスルホニルなどのアルキルスルホニル(例えば、−SO−アルキル);フェニルスルホニルなどのアリールスルホニル;ベンジルスルホニルなどのアラアルキルスルホニル(araalkylsulfonyl)である。
【0056】
2つの文字間又は記号間にないダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を表示するために用いられる。例えば、−CONHは炭素原子を通して結合する。
【0057】
用語「置換基」は、本明細書中で用いる場合、対象とする分子内の特定の原子に共有結合する分子の部分を指す。例えば、「環置換基」は環員の原子(好ましくは、炭素原子又は窒素原子)に共有結合する、本明細書で論じるハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基又は他の基等の部分であってもよい。
【0058】
用語「置換されていてもよい」とは、アリール基又は複素環基又は他の基が、アルキル(好ましくは、低級アルキル)、アルコキシ(好ましくは、低級アルコキシ)、ニトロ、モノアルキルアミノ(好ましくは、1〜6個の炭素を有する)、ジアルキルアミノ(好ましくは、1〜6個の炭素を有する)、シアノ、ハロ、ハロアルキル(好ましくは、トリフルオロメチル)、アルカノイル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミド(好ましくは、低級アルキルアミド)、アルコキシアルキル(好ましくは、低級アルコキシ及び低級アルキル)、アルコキシカルボニル(好ましくは、低級アルコキシカルボニル)、アルキルカルボニルオキシ(好ましくは、低級アルキルカルボニルオキシ)及びアリール(好ましくはフェニル;当該アリールはハロ、低級アルキル及び低級アルコキシ基で置換されていてもよい)から独立に選ばれる1以上の基によって、1以上の置換可能な位置において置換されてもよいことを指す。任意の置換は「0〜X個の置換基で置換される」(式中、Xは可能な置換基の最大数である)との表現によっても示される。ある置換されてもよい基は、独立に選ばれた0〜2、3又は4個の置換基で置換される。
【0059】
本明細書中で列挙された化合物についての、用語「医薬上許容される塩」は、過度の毒性又は発癌性なく、且つ好ましくは刺激、アレルギー反応、或いは他の問題又は合併症なく、ヒト又は動物の組織と接触させて使用するのに適した酸又は塩基の塩である。そのような塩としては、アミン等の塩基性残基の鉱酸塩及び有機酸塩、並びにカルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩又は有機塩が挙げられる。具体的な医薬塩としては、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、アルカン酸(酢酸、HOOC−(CH−COOH(式中、nは0〜4である)等)等の酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、医薬上許容される陽イオンとしてはナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は本明細書中で提供される化合物の更なる医薬上許容される塩を把握するであろう。一般的に、医薬上許容される酸又は塩基の塩は、任意の従来の化学的方法によって、塩基部分又は酸部分を含有する親化合物から合成できる。端的には、そのような塩は、これら化合物の遊離酸又は塩基形態を、水中又は有機溶媒中、或いはその2つの混合物中(一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリル等の非水性媒体の使用が好ましい)で化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製できる。式Iの各化合物は、それが必要というわけではないが、水和物、溶媒和物又は非共有結合性の複合体として製剤化され得ることは明らかであろう。更に、様々な結晶形態及び結晶多形が本発明の範囲内である。式Iの化合物のプロドラッグもまた、本明細書中で提供される。
【0060】
「置換されていてもよい」基は、置換されていないか、又は1以上の利用可能な位置で水素以外により置換されている。そのような任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノン、C−Cアルキルチオ、アミノ、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cハロアルキル、−COOH、−CONH、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニル、−SONH並びに/或いはモノ又はジ(C−Cアルキル)スルホンアミド、並びに炭素環基及び複素環基が挙げられる。
【0061】
任意の置換は「0〜X個の置換基で置換される」(式中、Xは可能な置換基の最大数である)との表現によっても示される。ある置換されてもよい基は、独立に選ばれた0〜2、3又は4個の置換基で置換される。
【0062】
具体的実施形態において、Aは、以下の基から選択される環である:
【0063】
【化4】

【0064】
【化5】

【0065】
本発明の具体的な化合物の例は、以下に明示する化合物である。
【0066】
【化6】

【0067】
【化7】

【0068】
【化8】

【0069】
【化9】

【0070】
【化10】

【0071】
【化11】

【0072】
【化12】

【0073】
【化13】

【0074】
【化14】

【0075】
【化15】

【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
【化18】

【0079】
【化19】

【0080】
【化20】

【0081】
【化21】

【0082】
【化22】

【0083】
【化23】

【0084】
【化24】

【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
【化31】

【0092】
【化32】

【0093】
【化33】

【0094】
【化34】

【0095】
【化35】

【0096】
【化36】

【0097】
【化37】

【0098】
【化38】

【0099】
本発明は、式(A):
【0100】
【化39】

で示される化合物又はその医薬上許容可能な塩にも関する
(式中、
Kは、NRC(O)、C(O)NR、NRSO、SONR及びNRC(O)NRから選択され;
は、アリール、複素環及びヘテロアリールから選択され;
は、H、ハロ、ニトロ、−OR、C−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル及びC−Cハロアルキルから選択され;
m=0〜4であり;
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
WはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ、及びC−Cアルキル、C−Cアルキルチオ、−NR、−OR、及びシアノから選択される)。
【0101】
1実施形態において、本発明は、式(A):
【0102】
【化40】

で示される化合物又はその医薬上許容可能な塩に関する
(式中、
Kは、NRC(O)、C(O)NR、NRSO、SONR及びNRC(O)NRから選択され;
は、フェニル及びピリジルから選択され;
は、H、ハロ、ニトロ、C−Cアルキルスルホニル及びC−Cアルキルから選択され;
m=0〜4であり;
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
WはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ及びC−Cアルキルから選択される)。
【0103】
本発明は、式(B):
【0104】
【化41】

【0105】
で示される化合物又はその医薬上許容可能な塩にも関する
(式中、
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
は、複素環、ハロアルキル、NRC(O)R、NRC(O)NR、NRC(O)[C(R)(R)]O[C(O)]、(CHSO、NRSO、NRC(O)−Q−R及びN(OR)C(O)Rから選択され;
nは1〜2であり;
pは0又は1であり;
Qは複素環であり;
Uは、H、ハロ、C−Cアルキル、C−Cアルキルチオ、−NR、−OR及びシアノから選択され;
VはCH及びNから選択され;
WはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ及びC−Cアルキルから選択される)。
【0106】
本発明は、式(C):
【0107】
【化42】

【0108】
で示される化合物又はその医薬上許容可能な塩にも関する
(式中、
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
は、複素環、ハロアルキル、NRC(O)R、NRC(O)NR、NRC(O)[C(R)(R)]O[C(O)]、(CHSO、NRSO、NRC(O)−Q−R及びN(OR)C(O)Rから選択され;
nは1〜2であり;
pは0又は1であり;
Qは複素環であり;
Uは、H、ハロ、C−Cアルキル、C−Cアルキルチオ、−NR、−OR、及びシアノから選択され;
VはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ及びC−Cアルキルから選択される)。
【0109】
具体的実施形態において、本発明は、以下に示す式(i)〜(xv)の化合物、及びその医薬上許容可能な塩に関する:
【0110】
【化43】

【0111】
【化44】

【0112】
【化45】

【0113】
別の実施形態においては、発明化合物の調製方法が提供される。本発明の化合物は、一般的には、確立されたアミド結合形成手順を介して中心環とA環とをカップリングすることにより、調製できる。化合物(I)及び本発明の全ての他の化合物は、様々な立体異性体、幾何異性体、互変異性体等を含有してもよい。あり得る全ての異性体及びそれらの混合物が本発明中に含められ、混合比は特に限定されない。式(C)のキノリン化合物は、以下に記載するイソキノリン化合物及びキナゾリン化合物と同様に調製され得る。
一般式(4)のイソキノリン(式中、Rは好ましくはClである)の合成は、以下のように実施することが好ましい(スキーム1):まず、市販の(±)−2−アミノ−1−フェニルエタノール(1)を、TEAの存在下、非プロトン性溶媒、好ましくはジクロロメタン中で、市販の2−クロロ−5−ニトロベンゾイルクロリド(2)と反応させて、2−クロロ−N−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)−5−ニトロベンズアミド(3)を形成する。次いで、後者の化合物を、還流条件下、不活性溶媒、好ましくはトルエン及びキシレン中で、脱水剤、好ましくは五酸化リン又はオキシ塩化リンに曝露して、イソキノリン(4)を形成した(Manning H. C., Goebel, T., et al., Org. Lett., 2002, 4, 1075-1078; Funabashi, K., Ratni, H., et. Al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 10784-10785)。
【0114】
【化46】

【0115】
イソキノリン又はキナゾリン7を形成するための代替の方法は、鈴木クロスカップリング反応である(スキーム2)。パラジウム触媒(例えば、パラジウム(II)アセテートトリフェニルホスフィン、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))の存在下、種々のアリールボロン酸と化合物5(式中、BはCH又はNであり;QはCl、Br又はIである)とにより、式7を有する化合物を得た(Chapoulaud, V. G. et al., Tetrahedron, 2000, 56, 5499-5507; Mongin, F., Rebstock, A., et al., J. Org. Chem., 2004, 69, 6766-6771)。この反応は、ハロゲン化物の代わりに、擬ハロゲン化物(例えば、トリフラート(OTf))を用いても、またボロン酸の代わりにホウ素−エステルを用いても、機能する。化合物5(BはNであり、QはClである)を、還流下、4−ヒドロキシキナゾリンとSOCl/DMFとの反応によって調製した(Hennequin L. F. et al., J. Med. Chem., 1999, 42, 5369-5389)。
【0116】
【化47】

【0117】
次いで、還元試薬の存在下化合物7を還元して、中間体8を形成する(スキーム3)。ニトロ基の還元は、触媒的水素化、SnClによる還元及び二塩化チタンによる還元を含むがこれらに限定されない、有機合成の当業者に周知の多くの方法で実施できる。本明細書中で、好ましい還元試薬はSnClである。具体的実施形態において、還元反応は約60℃で実施される。還元方法の概説については、Hudlicky, M. Reductions in Organic Chemistry, ACS Monograph 188, 1996を参照のこと。
【0118】
【化48】

【0119】
アルデヒド(9)(式中、R’は、置換又は非置換の(C−C)アルキルを示す)を中間体8と反応させ、続いて生成物を、還元剤(例えば、水素、単純又は錯体の金属水素化物、遷移金属又はその塩であるが、好ましくはシアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用する)を使用して還元して、式(10)を有するN−アルキル−アミノ化合物を形成した(スキーム4)。
【0120】
【化49】

【0121】
化合物8又は10は、11(式中、Rは、水素又は置換されていてもよいC1−4アルキル基である)に変換できる。次いで、化合物11を、特許WO 01/25220 A1中のプロセスに従って、一般式12(式中、Qは、塩化物又はO−EDCである)のカルボン酸、カルボン酸無水物又は酸塩化物でアシル化するか、或いは酸塩化物、スルファモイルハライド(13)、イソシアナート(14)又はチオシアナート(15)と反応させて、式Ia、IIa、IIIa又はIVaのN−アシル−アミノ化合物を形成する(スキーム5)。この反応は、周囲温度で塩基の存在下非プロトン性溶媒中で実施することが有利である。
【0122】
簡便には、−60℃から還流までの範囲内の温度で、縮合反応の非プロトン性溶媒(ジクロロメタン、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、THF、DMFなどであるが、これらに限定されない)が使用されてもよく、単独又はそれらの混合物として使用されてもよい。
【0123】
種々の塩基試薬(ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メチルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、水素化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくはピリジンである)が使用されてもよく、溶媒なしで単独で使用されてもよい。
【0124】
化合物11を、縮合反応を介して式16を有するアルデヒド又はケトン(式中、Rは、水素又は置換されていてもよいC1−4アルキル基を示し、R及びmは、本明細書中に定義したとおりである)と反応させ、その後生成物を、還元試薬を用いて還元して、化合物Vaを形成する(スキーム5)。
【0125】
簡便には、−60℃から室温までの範囲内の温度で、縮合反応の溶媒(ジクロロメタン、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、THF、DMFなどであるが、これらに限定されない)が使用されてもよく、単独又はそれらの混合物として使用されてもよい。
【0126】
種々の還元剤及び反応条件が、イミンを還元するために使用できる。シアノ水素化ホウ素ナトリウムが還元試薬として使用され得る。使用され得る他の還元試薬としては、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、Red−Alなどが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒(アルコール性溶媒(例えば、メタノール及びエタノール)であるがこれらに限定されない)が、中性条件下で、0℃から還流溶媒(DMF、アセトニトリル、ベンゼン、トルエンなど)の温度までの温度範囲で、使用され得る。
【0127】
【化50】

【0128】
スキーム6において、化合物8を酸性媒体中で亜硝酸塩と反応させ、得られたアリールジアゾニウム塩溶液を、銅(I)塩(例えば、CuCl)の存在下、酢酸中の二酸化硫黄溶液と混合して、所望のアリールスルホニルクロリドを形成した(Hanson, J., Dogne J., et al., J. Med. Chem., 2007, 50, 3928-3936)。次いで、化合物17を、式18を有するアミン(式中、Rは本明細書中で定義したとおりである)と反応させて、化合物Ibを形成する。
【0129】
簡便には、−60℃から還流までの範囲内の温度で、縮合反応の非プロトン性溶媒(ジクロロメタン、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、THF、DMFなどであるが、これらに限定されない)が使用されてもよく、単独又はそれらの混合物として使用されてもよい。
【0130】
種々の塩基剤(ピリジン、トリエチルアミン、ジ−イソプロピルエチルアミン、メチルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、水素化ナトリウムなどであるが、これらに限定されず、好ましくはピリジンである)が使用されてもよく、溶媒なしで単独で使用されてもよい。
【0131】
【化51】

【0132】
スキーム7において、化合物8の調製と同じ方法を用いて、化合物19をアミン20に還元した。具体的実施形態において、還元反応は、およそ室温で、SnClを用いて実施される。中間体20を活性化酸21(式中、R’は、置換又は非置換の、(C−C10)アルキル、アルケニル、(C−C)アリール又はヘテロアリールを示す)と反応させて、最終化合物Icを得る。具体的実施形態において、活性化酸(21)は酸ハロゲン化物(例えば、Qは塩化物である)又は活性化エステル(例えば、QはO−EDCである)である。具体的実施形態において、この反応は、約0℃〜室温で実施される。
【0133】
【化52】

【0134】
中間体20を、非求核塩基(例えば、TEA又はジイソプロピルエチルアミン)の存在下、適切な塩化スルホニルR’−(SO)Cl(21)(式中、R’は、置換又は非置換の、(C−C10)アルキル、アルケニル、(C−C)アリール又はヘテロアリールを示す)と反応させて、所望のスルホンアミドIdを形成する(スキーム8)。
【0135】
【化53】

【0136】
スキーム9に示すように、式Ieは、置換されたアルデヒド又はケトンRCOR(式中、R又はRは、独立して、又は一緒に、水素、置換又は非置換の、(C−C10)アルキル、アルケニル、アリール又はヘテロアリールを示す)との縮合反応と、その後の還元反応とによって、調製できる。縮合反応の溶媒、還元試薬及び反応条件は、化合物Vaの調製と同じであり得る。
【0137】
【化54】

【0138】
潜在的脱離基(例えば、Cl、Br、I、SO2Meなど)で置換されたヘテロアリール基を有する化合物23、イソキナロン(isoquinalone)又はキナゾリンは、不活性溶媒の存在下、求核試薬(例えば、アミン24、RNHR10(式中、R又はR10は、独立して、又は一緒に、置換又は非置換の、(C−C10)アルキル、アルケニル;又は(C−C)アリール若しくはヘテロアリール)を示す)又は式25を有する第2級アミン(式中、Z、R及びRは、本明細書中で定義するとおりである))での処理によって置換反応を受けて、化合物If及びIgを得うる(スキーム10)。
【0139】
関与する反応又は試薬に不都合な影響を有さず、且つ少なくともある程度まで試薬を溶解できる限り、使用される溶媒の性質に特に制限はない。好適な溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;ハロゲン化炭化水素、とりわけ塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の芳香族及び脂肪族炭化水素;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及び炭酸ジエチル等のエステル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン及びシクロヘキサノン等のケトン;ニトロエタン及びニトロベンゼン等の、ニトロアルカン又はニトロアレン(nitroarane)であってもよいニトロ化合物;アセトニトリル及びイソブチロニトリル等のニトリル;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の、脂肪酸アミドであってもよいアミド;並びにジメチルスルホキシド及びスルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
【0140】
反応は広範な範囲の温度にわたって起こり得、正確な反応温度は本発明にとって決定的に重要ではない。我々は一般的に、温度−50℃〜100℃で反応を実施することが好都合であることを見出した。
【0141】
【化55】

【0142】
スキーム11は、カルボン酸26の−COOH基中の−OH基を塩素原子と交換して、式12の塩化アシルを得る方法の1つを示す。種々の塩素剤及び反応条件を使用できる。二塩化酸化硫黄(塩化チオニル)が、還流条件下で溶媒なしで塩素剤として使用され得る(Clayden, J., Organicchemistry. Oxford University Press.2001, 276-296)。使用され得る他の剤としては、塩化リン(V)、塩化リン(III)(Boyd, R; Morrison, R., Organic chemistry, 1992, 666-762)、塩化オキサリル及び塩化シアヌル(Venkataraman, K.and Wagle, D. R, Tet. Left. 1979, 20 (32): 3037-3040)などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのHCl耐久性のない酸が、Applye反応を介して塩化アシルを形成できる(Taschner, M. J., e-EROS: Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, 2001)。
【0143】
【化56】

【0144】
スキーム12は、メチルエステル27を、希釈アルカリ様水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液又は水酸化リチウム溶液、好ましくは水酸化リチウム溶液と共に加熱還流して、式28の酸を如何にして形成できるかを説明する。水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン及びヘキサメチルホスホロトリアミド及びテトラヒドロフランが挙げられるがこれらに限定されないプロトン性溶媒が使用され得る。好ましくは、プロトン性溶媒は、テトラヒドロフランと水との混合物である。生成物28は、12を調製するために使用されるのと同じ反応条件を用いて塩素剤とさらに反応させることによって、酸塩化物(式中、Qは塩化物である)を形成することができ、この生成物はまた、EDCIと反応して、活性エステル(QはO−EDCである)を形成することができる。化合物29は、アミン24又は25とさらに反応して、アミド化合物Ih及びIjを形成し得る(スキーム12)。
【0145】
【化57】

【0146】
本発明における式Ik、Im、Ioを有する化合物の調製は、当該分野で公知の方法によって実施できる(例えば、Stephenson, F. M., Org. Synth. 1963, 4, 984; Snell, J. M., Weissberger, A., et al., Org. Synth, 1955, 3, 788; Greenwood, F. L., et al., Org. Synth., 1963, 4, 108)。メチレンアリール化合物30を、ベンゼン中5%のAcOH溶液中で過酸化ベンゾイル及びN−ブロモスクシンイミドと合わせて加熱し、臭化ベンジル誘導体31を得た。化合物31を、非求核塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸セシウム、TEA又はジイソプロピルエチルアミン)の存在下、求核試薬(例えば、アミン24及び25(式中、R、R、R及びR10は、本明細書中で定義したとおりである)及びチオール誘導体R11SH 32(式中、R11は、置換又は非置換の、(C−C10)アルキル、アルケニル、(C−C)アリール又はヘテロアリールを示す))と反応させて、Ik、Im及びIoを得ることができる(スキーム13)。
【0147】
【化58】

【0148】
本発明における式Ipを有する化合物の調製は、チオール誘導体(Io)がプロトン性溶媒(例えば、水、メタノール及びエタノール)の存在下でスルホン(Ip)に酸化される方法によって、実施できる(スキーム14)。
【0149】
使用される酸化剤は、OXONE(登録商標)、メタ−クロロ過安息香酸、ペルオキシトリフルオロ酢酸又は過酸化水素であり得るが、これらに限定されない。適切な溶媒は、アルコール性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又は1−ブタノール、特にエタノール)と混合した、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン及びトルエンであり得るが、これらに限定されない。酸化反応は、−60℃から室温までの簡便な範囲内の温度で実施する。
【0150】
【化59】

【0151】
本発明は、1種以上の有効薬物及び医薬上許容される担体の製剤である組成物を提供する。この関連で、本発明は対象哺乳動物へ投与するための組成物を提供し、当該組成物は式Iの化合物、又は医薬上許容されるその塩を含み得る。
【0152】
本発明の化合物の医薬上許容される塩としては、医薬上許容される無機及び有機の酸及び塩基由来のものが挙げられる。好適な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられる。他の酸(例えば、シュウ酸)は、それ自体は医薬上許容できないが、本発明の化合物及び医薬上許容できるそれらの酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において使用し得る。
【0153】
適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム)、アンモニウム及びN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中で開示した化合物のいずれかの塩基性窒素含有基の四級化を想定している。そのような四級化により、水溶性又は油溶性又は分散性の生成物が得られ得る。本発明の組成物は、経口的、非経口的に、吸入噴霧により、局所的に、直腸から、鼻から、頬から、膣から、又は移植したリザーバーを介して、投与し得る。本明細書中で使用する場合、用語「非経口的」には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内の注射技術又は注入技術が含まれる。好ましくは当該組成物は、経口、腹腔内又は静脈内で投与される。
【0154】
本発明の医薬的上許容できる組成物は、経口的に許容できる任意の投薬形態(これには、カプセル、錠剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェハー剤、チューインガム、水性懸濁液又は水性溶液が含まれるが、それらに限定されない)で、経口投与し得る。
【0155】
当該経口用組成物は:微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等の結合剤;澱粉又は乳糖等の賦形剤;アルギン酸、トウモロコシ澱粉等などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑剤;コロイド状二酸化珪素等の流動促進剤;及び蔗糖又はサッカリン等の甘味剤;或いはペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジフレーバー等のフレーバー剤等の追加の成分を含有してもよい。単位用量形態がカプセルである場合、それは脂肪油等の液体担体を更に含有してもよい。他の単位用量形態は、単位用量の物理的形態を変更する、例えば被覆剤等の他の種々の物質を含有できる。従って錠剤又は丸薬は、糖、シェラック、又は他の腸溶被覆剤で被覆されてもよい。シロップ剤は有効成分のほか、甘味剤としての蔗糖、及びある種の防腐剤、色素及び着色剤及び香料を含有してもよい。
【0156】
これらの種々の組成物を調製するのに用いられる物質は、医薬的又は獣医学的に純粋なもので、且つ使用される量において無毒であるべきである。
【0157】
非経口的な治療投与目的のため、有効成分を溶液又は懸濁液に取り込んでもよい。溶液又は懸濁液は、以下の成分:注射用の水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒等の滅菌希釈液;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等の緩衝剤;塩化ナトリウム又はデキストロース等の浸透圧調整のための剤も含み得る。非経口用製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納できる。
【0158】
注射用途のために好適な医薬形態としては、滅菌溶液、分散物、乳剤及び滅菌粉末が挙げられる。最終的な形態は製造及び保存条件下で安定でなくてはならない。更に、最終的な医薬形態は汚染から保護されなくてはならず、従って細菌又は真菌等の微生物の増殖を阻害できなくてはならない。単回の静脈内又は腹腔内投与量が投与できる。或いは、長時間徐々に注入したり、又は毎日短期間複数回注入したりして利用されてもよく、典型的には1〜8日間継続する。隔日投与又は数日に1回ごとに投与しても利用され得る。
【0159】
滅菌注射用溶液は、上記に列挙されたか又は当業者に公知の他の成分を必要に応じて加えてもよい1種以上の適切な溶媒中に、必要量の化合物を含めることによって調製してもよい。滅菌注射用溶液は適切な溶媒中に、必要に応じて他の種々の成分と共に、必要量の化合物を含めることによって調製してもよい。次いで濾過等の滅菌手段を施してもよい。典型的には分散物は、分散媒及び必要な他の上記成分も含有する滅菌ビヒクルに化合物を含めることによって作製される。滅菌粉末の場合、好ましい方法としては、必要な任意の成分が添加される真空乾燥及び凍結乾燥が挙げられる。
【0160】
適切な医薬的担体としては、滅菌水;生理食塩水、デキストロース;水又は生理食塩水中のデキストロース;ひまし油1モルにつきエチレンオキシド約30〜約35モルを合わせた、ひまし油とエチレンオキシドの縮合生成物;液体の酸;低級アルカノール;トウモロコシ油等の油;脂肪酸のモノ−又はジ−グリセリド又はホスファチド(例、レシチン)等の乳化剤を伴うピーナツ油及びゴマ油等;グリコール;ポリアルキレングリコール;懸濁化剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)が存在する水性媒体;アルギン酸ナトリウム;ポリ(ビニルピロリドン)など(単独又はレシチン;ステアリン酸ポリオキシエチレン等などの好適な分散剤と共に)が挙げられる。担体は、浸透促進剤と一緒に保存剤、安定化剤(preserving stabilizing)、湿潤剤、及び乳化剤等の佐剤を含有してもよい。述べたように、あらゆる場合において、最終的な形態は無菌でなければならず、中空針等の注射機器も容易に通過できなくてはならない。適切な溶媒又は賦形剤を選択することにより、適切な粘性が達成及び維持され得る。その上、レシチン等の分子又は粒子コーティング剤の使用、分散物中の粒子サイズの適切な選択、又は界面活性剤の性質を持つ物質の使用が利用されてもよい。
【0161】
本発明によれば、トリアジン誘導体を含有する組成物及びナノ粒子形態のトリアジン誘導体のin vivoでの送達に有用な方法が提供され、これらは前記投与経路のいずれのためにも好適である。
【0162】
米国特許第5,916,596号、6,506,405号及び6,537,579号では、アルブミン等の生体適合性ポリマーからのナノ粒子調製が教示されている。従って本発明によれば、溶媒蒸発法により、高剪断力(例、超音波破砕、高圧ホモジェナイゼーション等)条件下で調製された水中油型乳剤から本発明のナノ粒子を形成する方法が提供される。
【0163】
或いは、医薬的上許容できる本発明の組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与されてもよい。これらは、剤を、室温で固体であるが直腸の温度では液体であり、従って直腸中で融解し薬物を放出する好適な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製できる。そのような物質としては、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0164】
医薬上許容できる本発明の組成物は、治療標的が、局所適用により容易に到達できる領域又は器官を含む場合(眼、皮膚、又は下部腸管の疾患が挙げられる)は特に、局所的に投与されてもよい。好適な局所製剤はこれらの各領域又は器官用に容易に調製される。
【0165】
下部腸管のための局所適用は、直腸用坐剤製剤(上記参照)又は好適な浣腸製剤で達成できる。局所経皮貼付剤が使用されてもよい。
【0166】
局所適用用に、医薬上許容される組成物が、1種以上の担体中に懸濁又は溶解された有効成分を含有する好適な軟膏に製剤化されてもよい。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋及び水があげられるが、これらに限定されない。或いは、医薬上許容される組成物は、1種以上の医薬上許容される担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含有する好適なローション剤又はクリーム剤に製剤化できる。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
眼科用使用のために、医薬上許容される組成物は、塩化ベンジルアルコニウム(benzylalkonium chloride)等の保存剤あり又はなしのいずれかで、pHが調整された等張の滅菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、又は好ましくは、pHが調整された等張の滅菌生理食塩水中の溶液として製剤化されてもよい。或いは眼科用使用のために、医薬上許容される組成物は、ワセリン等の軟膏に製剤化されてもよい。
【0168】
医薬上許容される本発明の組成物は、鼻エアロゾル又は吸入により投与されてもよい。そのような組成物は医薬製剤化の分野において周知の技法で調製され、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進剤、フッ化炭素、及び/或いは他の従来の可溶化又は分散剤を使用して生理食塩水中の溶液として調製されてもよい。
【0169】
最も好ましくは、医薬上許容される本発明の組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0170】
本発明によれば、本発明の化合物は、ヘッジホッグシグナル伝達を阻害し、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺の腫瘍及び傍神経節腫を含むがこれらに限定されない癌等の、異常なヘッジホッグシグナル伝達、細胞の増殖又は過剰増殖に関連する癌の治療に用いられ得る。本発明の化合物は、肝臓及び胆管の癌(特に肝細胞癌)、腸癌、特に結腸直腸癌、卵巣癌、小細胞及び非小細胞肺癌、乳癌、肉腫(繊維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫(rhabdomysocarcoma)、平滑筋肉腫(leiomysosarcoma)、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫が挙げられる)、中枢神経系の腫瘍(特に脳腫瘍)及びリンパ腫(ホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞未分化大細胞リンパ腫が挙げられる)を治療するためにも用いられ得る。
【0171】
本発明の化合物及び方法は、単独か又は他の剤(例、下記の化学療法剤又はタンパク質治療剤)と組み合わせて投与するかのいずれの場合でも、例えば脳卒中、循環器疾患、心筋梗塞、鬱血性心不全、心筋症、心筋炎、虚血性心疾患、冠動脈疾患、心原性ショック、血管性ショック、肺高血圧症、肺水腫(心原性肺水腫を含む)、胸水貯留、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、及び糖尿病性網膜症及び未熟児網膜症を含む網膜症、炎症性疾患、再狭窄、喘息、急性又は成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、狼瘡、血管漏出、臓器移植,移植寛容誘導の間に起こる虚血又は再灌流傷害等の虚血又は再灌流傷害からの保護;血管形成後の虚血又は再灌流傷害;関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎又は骨関節炎等);多発性硬化症;潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患;狼瘡(全身性エリテマトーデス(crythematosis));移植片対宿主病;接触過敏症、遅延型過敏症、及びグルテン過敏性腸症(セリアック病)を含むT細胞介在性過敏性疾患;I型糖尿病;乾癬;接触性皮膚炎(ツタウルシ起因のものを含む);橋本甲状腺炎;シェーグレン症候群;グレーブス病等の自己免疫性甲状腺機能亢進症;アジソン病(副腎の自己免疫疾患);多腺性自己免疫疾患(多腺性自己免疫症候群としても知られる);自己免疫性脱毛症;悪性貧血;白斑;自己免疫性下垂体機能低下症(hypopituatarism);ギラン・バレー症候群;他の自己免疫疾患;結腸癌及び胸腺腫等の、Srcファミリーキナーゼ等のキナーゼが活性化又は過剰発現された癌を含む癌、又はキナーゼ活性が腫瘍の増殖又は生存を促進する癌;糸球体腎炎、血清病;蕁麻疹(uticaria); 呼吸アレルギー(喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎)又は皮膚アレルギー等のアレルギー性疾患;菌状息肉腫;急性炎症反応(急性又は成人呼吸窮迫症候群及び虚血再灌流傷害等);皮膚筋炎;円形脱毛症;慢性光線過敏性皮膚炎;湿疹;ベーチェット病;掌蹠膿疱症(Pustulosis palmoplanteris);壊疽性膿皮症(Pyoderma gangrenum);セザリー症候群;アトピー性皮膚炎;全身性硬化症(systemic schlerosis);モルフェア;末梢肢虚血及び虚血性肢疾患;骨粗鬆症、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、パジェット病、及び腎性骨ジストロフィー等の骨疾患;化学療法又はIL−2等の免疫調節剤により誘導される血管漏出症候群を含む血管漏出症候群;脊髄及び脳の傷害又は外傷;緑内障;黄斑変性症を含む網膜疾患;硝子体網膜疾患;膵臓炎;血管炎、川崎病、閉塞性血栓血管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症及びベーチェット病を含む血管炎(vasculatides);強皮症;子癇前症;地中海貧血;カポジ肉腫;フォンヒッペル・リンダウ病等を含むがこれらに限定されない種々の疾患の治療にも有用である。
【0172】
本発明は、上記疾患及び状態に罹患した哺乳動物の治療方法も提供する。単回投与形態の組成物を製造するための担体物質と組み合わされ得る本発明の化合物の量は、治療される宿主、具体的な投与態様によって異なるであろう。好ましくは、組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の阻害剤の投与量をこれらの組成物を受容する患者に投与できるように製剤化すべきである。
【0173】
1つの態様において、本発明化合物は、化学療法剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、化学療法剤、免疫調節剤、治療抗体又はプロテインキナーゼ阻害剤(例、チロシンキナーゼ阻害剤)と組み合わせて、そのような治療が必要な対象に投与される。
【0174】
当該方法は、1種以上の発明化合物を罹患哺乳動物に投与することを含む。当該方法は、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、マイクロチューブリン(microtubulin)阻害剤、及びトポイソメラーゼ阻害剤を含む細胞毒性剤等の第二の活性薬剤の投与を更に含んでもよい。当該第二の活性薬剤は同一の組成物で共投与してもよいし、第二の組成物で共投与してもよい。好適な第二の活性薬剤の例としては、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン(AcrQnine);アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィド ジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトール メシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニン メシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロルニチン(Eflomithine);エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;ヨード化ケシ油エチルエステル 131;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金 Au 198;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−1a;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール(Safmgol);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウム Sr 89;スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;及び塩酸ゾルビシン等の細胞毒性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
本発明によれば、化合物及び組成物は、心疾患、脳卒中及び神経変性疾患等の非腫瘍性疾患の治療において高度に選択的な活性を達成するために、他の剤と組み合わせて、準細胞毒性レベルで使用してもよい(Whitesell et al., Curr Cancer Drug Targets (2003), 3(5), 349-58)。
【0176】
発明化合物と組み合わせて投与されてもよい例示的な治療剤としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、及びセツキシマブ等のEGFR阻害剤が挙げられる。Her2阻害剤としては、カネルチニブ、EKB−569、及びGW−572016が挙げられる。Src阻害剤のダサチニブ、及びカソデクス(ビカルタミド)、タモキシフェン、MEK−1キナーゼ阻害剤、MARKキナーゼ阻害剤、PI3阻害剤、及びイマチニブ等のPDGF阻害剤、17−AAG及び17−DMAG等のHsp90阻害剤も挙げられる。固形腫瘍への血流を遮断することによって、癌細胞から栄養分を奪うことにより癌細胞を静止させる抗血管形成剤及び抗血管剤も挙げられる。これもアンドロゲン依存性腫瘍を非増殖性にする去勢も利用され得る。IGF1R阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤及び受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、並びにインテグリンの阻害剤も挙げられる。
【0177】
本発明の医薬組成物及び方法は、サイトカイン、免疫調節剤及び抗体等の他のタンパク質治療剤と更に組み合わせてもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「サイトカイン」は、ケモカイン、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、コロニー刺激因子、及び受容体関連タンパク質、並びにそれらの機能的断片を包含する。本明細書中で用いられる場合、用語「機能的断片」は、定められた機能アッセイを通して同定される生物学的機能又は活性を有するポリペプチド又はペプチドを指す。サイトカインとしては、内皮単球活性化ポリペプチドII(EMAP−II)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、顆粒球−CSF(G−CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−12、及びIL−13、及びインターフェロン等が挙げられ、これらは細胞又は細胞機構における特定の生物学的、形態学的、又は表現形変化に関係している。
【0178】
併用療法のための他の治療剤としては、シクロスポリン(例、シクロスポリンA)、CTLA4−Ig、抗体(ICAM−3、抗IL−2受容体(抗Tac)、抗CD45RB、抗CD2、抗CD3(OKT−3)、抗CD4、抗CD80、抗CD86等)、CD40に特異的な抗体及びgpn39(即ち、CD154)に特異的な抗体等の、CD40とgp39との間の相互作用を遮断する剤、CD40及びgp39から構築された融合タンパク質(CD40Ig及びCD8gp39)、デオキシスペルグアリン(DSG)等の核移行阻害剤等のNF−κB機能の阻害剤、HM:G CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン及びシンバスタチン)等のコレステロール生合成阻害剤、イブプロフェン及びシクロオキシゲナーゼ阻害剤(ロフェコキシブ等)等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、プレドニソン又はデキサメタゾン等のステロイド、金化合物、メトトレキセート等の抗増殖剤、FK506(タクロリムス、プログラフ)、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン及びシクロホスファミド等の細胞毒性薬、テニダップ、抗TNF抗体又は可溶性TNF受容体等のTNF−a阻害剤、並びにラパマイシン(シロリムス又はラパミューン)或いはそれらの誘導体が挙げられる。
【0179】
他の治療剤が本発明の化合物と組み合わせて使用される場合、それらは例えば、米医薬品便覧(PDR)中で言及されたとおりの量で、又は当業者により別途決められた量で用いてもよい。
【実施例】
【0180】
本発明を更に説明するために以降の実施例を提供するが、当然ながら決して本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0181】
明記される場合を除き、アルゴン雰囲気中無水条件下(即ち、乾燥溶媒)で、オーブンで乾燥した器具を使用し、且つ空気感受性物質の取り扱いにおける標準技法を用いて、全ての実験を実施した。重炭酸ナトリウム(NaHCO)及び塩化ナトリウム(ブライン)の水溶液は、飽和であった。
【0182】
分析的薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merk Kieselゲル60 F254プレート上で、紫外線及び/又はアニスアルデヒド、過マンガン酸カリウム又はリンモリブデン酸浸漬により可視化して実施した。
【0183】
NMRスペクトル:1H核磁気共鳴スペクトルを400MHzで記録した。データは次のように提示する:化学シフト、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、qn=クインテット、dd=ダブルダブレット、m=マルチプレット、bs=ブロードシングレット)、結合定数(J/Hz)及び積分値。結合定数はスペクトルから直接取り出して計算したものであり、補正はしていない。
【0184】
LC/マススペクトル:電気スプレー(ES+)イオン化を用いた。プロトン化親イオン(M+H)又は親ナトリウムイオン(M+Na)又は最高質量のフラグメントを提示する。他の記載がない限り、分析勾配は、5分間での水中10%ACNから100%ACNまでの傾斜から成った。
【0185】
実施例1
【0186】
【化60】

【0187】
DCM(66.0mL)中2−クロロ−5−ニトロベンゾイルクロリド(11.70g、53.2mmol)の溶液を、トリエチルアミン(7.40mL、53.2mmol)を含むDCM(200mL)中2−アミノ−1−フェニルエタノール(7.30g、53.2mmol)の溶液に0℃で滴下した。この反応混合物を0℃で1時間撹拌した。この反応を飽和NaHCO溶液でクエンチし、有機層を分離した。この有機層をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。粗製残渣をヘキサン/EtOAcから再結晶化して、所望の化合物を白色固体として得た(10.76g、%収率)。1H NMR (400 MHz, CDCI3): δ 8.46 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.21 (dd, J = 2.8, 8.8 Hz, 1 H), 7.59 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.44-7.31 (m, 5H), 6.65 (br s, 1 H), 5.01 (m, 1 H), 3.97 (m, 1 H), 3.56 (m 1 H), 2.68 (d, J = 2.8 Hz, 1 H). MS (ESI): C15H13ClN2O4Naについて計算値343, 実測値343 (M+Na)+.
【0188】
実施例2
【0189】
【化61】

【0190】
トルエン/キシレン(265.0mL、1:1)中POCI(11.86mL、127.2mmol)及びP(17.0g、119.8mmol)と2−クロロ−N−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)−5−ニトロベンズアミド(3.40g、10.60mmol)との混合物を、2日間還流した。この反応混合物を冷却し、次いで氷水中に注ぎ、その後10%NaOH溶液で中和した。この混合物をEtOAcで抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 95:5〜90:10)及びその後のヘキサン/EtOAcからの再結晶化によって精製して、所望の化合物を黄色結晶として得た(850mg、28%)。 1H NMR (400 MHz, CDCI3): δ 8.66 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.38 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.32 (dd, J = 2.8, 8.8 Hz, 1H), 7.95 (m, 1H), 7.80 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.77-7.73 (m, 2H), 7.57 (m, 2H). MS (ESI): C15H10ClN2O2について計算値: 285, 実測値 285 (M+H)+.
【0191】
実施例3
【0192】
【化62】

【0193】
エタノール(36.8mL)中2 1−(2−クロロ−5−ニトロフェニル)イソキノリン(785mg、2.76mmol)及び塩化錫(II)脱水物(dehydrate)(2.93g、12.97mmol)の混合物を、70℃で1.5時間加熱した。この反応混合物を冷却し、次いで氷水中に注ぎ、その後飽和NaHCO溶液で中和した。この混合物をセライトのパッドを通して濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液をEtOAcで抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮して、所望の化合物を黄色固体として得た(650mg、92%)。 1H NMR (400 MHz, CDCI3): δ 8.61 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.75-7.67 (m, 3H), 7.53 (m, 1H), 7.29 (dd, J = 0.8, 8.0 Hz, 1H), 6.76 (m, 2H), 3.76 (br s, 2H). MS (ESI): C15H12ClN2について計算値: 255, 実測値 255 (M+H)+.
【0194】
実施例4
【0195】
【化63】

【0196】
DCM(3.1mL)中2−クロロ−4−(メチルスルホニル)ベンゾイルクロリド(298mg、1.18mmol)の溶液を、ピリジン(127μL、1.57mmol)を含むDCM(10.0mL)中4−クロロ−3−(イソキノリン−1−イル)アニリン(100mg、0.393mmol)の溶液に、0℃で滴下した。この反応混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。EtOAcを添加し、この混合物を飽和NaHCO溶液及びブラインでそれぞれ洗浄した。有機相を無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 1:1〜2:3)で精製して、所望の化合物を白色固体として得た(86mg、46%収率)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ10.98 (s, 1H), 8.61 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.12 (dd, J = 0.4, 1.6 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.00 (dd, J = 1.6, 8.0 Hz, 1H), 7.92 (m, 3H), 7.83 (m, 2H), 7.66 (m, 2H), 7.58 (m, 1H), 3.33 (s, 3H). MS (ESI): C23H17Cl2N2O3Sについて計算値: 471, 実測値 471 (M+H)+.
【0197】
実施例5
【0198】
【化64】

【0199】
フェニルイソシアナート(29μL、0.260mmol)を、DCM(7.87mL)中4−クロロ−3−(イソキノリン−1−イル)アニリン(60mg、0.236mmol)の溶液に、室温で滴下した。この反応混合物を一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 7:3〜1:1)で精製して、所望の化合物を淡黄色(pale yellow)固体として得た(36mg、41%収率)。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.94 (s, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.60 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.08 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.93 (dd, J = 0.6, 5.8 Hz, 1H), 7.81 (m, 1H), 7.67 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.64 (m 1H), 7.56 (m, 3H), 7.43 (m, 2H), 7.26 (m, 2H), 6.96 (m, 1H). MS (ESI): C22H17ClN3Oについて計算値: 374, 実測値 374 (M+H)+.
【0200】
実施例6
【0201】
【化65】

【0202】
塩化ピコリノイルHCl塩(63mg、0.354mmol)を、トリエチルアミン(99μL、0.708mmol)を含むDCM(5.90mL)中4−クロロ−3−(イソキノリン−1−イル)アニリン(45mg、0.177mmol)の溶液に、0℃で添加した。この反応混合物を室温まで温め、3時間撹拌した。EtOAcを添加し、この混合物を飽和NaHCO溶液及びブラインでそれぞれ洗浄した。有機相を無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 7:3〜1:1)で精製して、所望の化合物を白色固体として得た(25mg、39%収率)。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.94 (s, 1H), 8.74 (m, 1H), 8.62 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.16-8.04 (m, 5H), 7.95 (dd, J = 0.8, 5.6 Hz, 1H), 7.82 (m, 1H), 7.70-7.58 (m, 4H). MS (ESI): C21H15ClN3Oについて計算値: 360, 実測値 360 (M+H)+.
【0203】
実施例7
【0204】
【化66】

【0205】
DCM(4.0mL)中4−クロロ−3−ニトロベンゼン−1−スルホニルクロリド(50mg、0.196mmol)の溶液を、DCM(9.8mL)中4−クロロ−3−(イソキノリン−1−イル)アニリン(50mg、0.196mmol)の溶液に0℃で滴下した。この反応混合物を0℃で1時間撹拌した。反応を飽和NaHCO溶液でクエンチし、混合物をEtOAcで抽出した。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をDCMで処理して、所望の化合物を淡黄色(light yellow)固体として得た(69mg、74%収率)。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.08 (s, 1H), 8.64 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.44 (t, J = 1.2 Hz, 1H), 8.17 (m, 2H), 8.02 (d, J = 1.2 Hz, 2H), 7.95 (m, 1H), 7.69 (m, 1H), 7.65 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.41 (m, 2H), 7.27 (d, J = 2.8 Hz, 1H). MS (ESI): C21H14Cl2N3O4Sについて計算値: 474, 実測値 474 (M+H)+.
【0206】
実施例8
【0207】
【化67】

【0208】
DMF(2滴)を含むSOCl(27.4mL)中4−ヒドロキシキナゾリン(1.20g、8.21mmol)混合物を2時間還流した。SOClを減圧下で除去し、残渣をDCM中に溶解した。この溶液を飽和NaHCO溶液及びブラインでそれぞれ洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮して、所望の化合物を白色固体として得た(1.19g、88%収率)。 1H NMR (400 MHz, CDCI3): δ 9.06 (s, 1H), 8.29 (m, 1H), 8.09 (m, 1H), 7.98 (m, 1H), 7.75 (m, 1H). MS (ESI): C8H6ClN2について計算値: 165, 実測値 165 (M+H)+.
【0209】
実施例9
【0210】
【化68】

【0211】
トルエン(30.0mL)及びエタノール(2.0mL)中、4−クロロキナゾリン(658mg、4.0mmol)、3−ニトロフェニルボロン酸(935mg、5.6mmol)、Pd(PPh(231mg、0.2mmol)及び2M KCO溶液(4.0mL、8.0mmol)の混合物を、6時間還流した。この反応混合物を冷却し、水を加えた。得られた混合物をEtOAcで抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 10:1〜1:1)で精製して、所望の化合物を淡黄色(pale yellow)固体として得た(771mg、77%収率)。1H NMR (400 MHz, CDCI3): δ 9.43 (s, 1H), 8.69 (m, 1H), 8.45 (ddd, J = 1.0, 2.4, 8.4 Hz, 1H), 8.17 (m, 2H), 8.05 (ddd, J = 0.8, 1.2, 2.0 Hz, 1H), 7.99 (m, 1H), 7.80 (m, 1H), 7.69 (m, 1H). MS (ESI): C14H10N3O2について計算値: 252, 実測値 252 (M+H)+.
【0212】
実施例10
【0213】
【化69】

【0214】
エタノール(37.2mL)中4−(3−ニトロフェニル)キナゾリン(700mg、2.79mmol)及び塩化錫(II)脱水物(dehydrate)(2.83g、12.56mmol)の混合物を、70℃で1.5時間加熱した。この反応混合物を冷却し、次いで氷水中に注ぎ、その後飽和NaHCO溶液で中和した。この混合物をセライトのパッドを通して濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液をEtOAcで抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮して、所望の化合物を黄色固体として得た(600mg、97%)。 1H NMR (400 MHz, CDCI3): δ 9.36 (s, 1H), 8.19 (m, 1H), 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.91 (m, 1H), 7.60 (m, 1H), 7.34 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.12 (m, 1H), 7.09 (t, J = 2.0 Hz, 1H), 6.88 (ddd, J = 1.2, 2.4, 8.0 Hz, 1H), 3.85 (s, 2H). MS (ESI): C14H12N3について計算値: 222, 実測値 222 (M+H)+.
【0215】
実施例11
【0216】
【化70】

【0217】
塩化ピコリノイルHCl塩(60mg、0.339mmol)を、トリエチルアミン(95μL、0.678mmol)を含むDCM(7.53mL)中3−(キナゾリン−4−イル)アニリン(50mg、0.226mmol)の溶液に0℃で添加した。この反応混合物を室温まで温め、30分間撹拌した。EtOAcを添加し、混合物を飽和NaHCO溶液及びブラインでそれぞれ洗浄した。有機相を無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 1:1)で精製して、所望の化合物を薄いピンク色の固体として得た(39mg、53%収率)。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.94 (s, 1H), 9.38 (s, 1H), 8.76 (m, 1H), 8.43 (t, J = 1.8 Hz, 1H), 8.24-8.05 (m, 6H), 7.79 (m, 1H), 7.70 (ddd, J = 1.6, 4.8, 7.6 Hz, 1H), 7.63 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.57 (dt, J = 1.6, 7.6 Hz, 1H). MS (ESI): C20H15N4Oについて計算値: 327, 実測値 327 (M+H)+.
【0218】
実施例12
【0219】
【化71】

【0220】
フェニルイソシアナート(37μL、0.339mmol)を、DCM(7.53mL)中3−(キナゾリン−4−イル)アニリン(50mg、0.226mmol)の溶液に室温で滴下した。この反応混合物を4時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1〜95:5)で精製して、所望の化合物を白色固体として得た(27mg、35%収率)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.36 (s, 1H), 8.95 (s, 1H), 8.74 (s, 1H), 8.18 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.08 (m, 2H), 7.99 (s, 1H), 7.77 (m, 1H), 7.64 (m, 1H), 7.54 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.28 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 6.97 (t, J = 7.6 Hz, 1H). MS (ESI): C21H17N4Oについて計算値: 341, 実測値 341 (M+H)+.
【0221】
実施例13
【0222】
【化72】

【0223】
1−クロロ−2−イソシアナト−3−メチルベンゼン(78μL、0.565mmol)を、DCM(7.53mL)中3−(キナゾリン−4−イル)アニリン(50mg、0.226mmol)の溶液に室温で滴下した。この反応混合物を6時間撹拌した。沈殿物を減圧下での濾過によって収集し、DCM及びヘキサンで洗浄して、所望の化合物を淡黄色(pale yellow)固体として得た(57mg、65%収率)。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.34 (s, 1H), 9.20 (s, 1H), 8.16 (m, 1H), 8.10 (dd, J = 0.8, 8.4 Hz, 1H), 8.05 (m, 2H), 7.98 (t, J = 1.8 Hz, 1H), 7.76 (m, 1H), 7.66 (m, 1H), 7.52 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.24 (m, 1H), 7.19 (q, J = 7.6 Hz, 1H), 2.27 (s, 3H). MS (ESI): C22H18ClN4Oについて計算値: 389, 実測値 389 (M+H)+.
【0224】
実施例14
ヘッジホッグシグナル伝達阻害アッセイ
Hh依存的C3H10T1/2分化アッセイ:C3H10T1/2細胞は、Hh経路の刺激により骨芽細胞へと分化する能力を有する、間葉系多能性前駆細胞である。骨芽細胞は、酵素アッセイで容易に測定できる十分なアルカリホスファターゼ(AP)を産生する。簡潔に述べると、マウス中胚葉胚性繊維芽細胞C3H10T1/2細胞(ATCC Cat# CCL−226から得られる)を、10%熱非働化FBS(Hyclone)、50単位/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン(Gibco/Invitrogen)及び2mM Glutamine(Gibco/Invitrogen)を補充したBasal MEM Media(Gibco/Invitrogen)中で、37℃、空気雰囲気中5% CO2で培養した。細胞を、継代のためにPBS中0.05%のトリプシン及び0.02%のEDTAで解離させ、プレートした。C3H10T1/2細胞は、8x103細胞/ウェルの密度で、96ウェル中にプレートした。細胞をコンフルエンスになるまで増殖させた(72時間)。5μMの20(S)−ヒドロキシコレステロール並びに5μMの22(S)−ヒドロキシコレステロール及び/又は化合物を含む培地を、アッセイ開始時に添加し、72時間置いた。培地を吸引し、細胞をPBS中で1回洗浄した。アルカリホスファターゼを、Emerald IIを含むTropix CDP−Star(0.4mM Cat# MS100RY)100μLをウェルに添加することによって測定し、プレートを暗中で1時間室温でインキュベートした。プレートを、Envisionプレートリーダーで405nmで読み取った。化合物濃度に対する%阻害を、Prismグラフ描画ソフトウェアを使用して片対数プロット上にプロットし、EC50を、4パラメータロジスティック方程式を用いた非線形回帰分析によって決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で示される化合物又はその医薬上許容される塩
(式中、
BはN又はCHであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、シクロアルキル又は複素環を示し;
Lは、酸素、NR、NRCO、NRSO、NRSO、SONR;NRCONH、NRCSNH、CONR、CSNR、NRCHR、NRPO又はNRPO(OH)であり;
環Aは、アリール、複素環、ヘテロアリールであり;
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル又はスルホンアミドを示すか;或いは
は、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アシル、アルキル、アルカノイル、スルホニル、スルフィニル、アルコキシ、カルバモイル、アシルアミン、スルファモイル及びスルホンアミドで置換されていてもよい、アリール、複素環又はヘテロアリールであり;
及びRは、水素又は置換されていてもよいC1−4アルキル基から独立して選択され;
mは0〜4である)。
【請求項2】
式(Ia)
【化2】

で示される化合物又はその医薬上許容される塩(式中、A、R、R、L及びmは、請求項1で定義したとおりである)。
【請求項3】
式(Ib)
【化3】

で示される化合物又はその医薬上許容される塩(式中、A、R、R、L及びmは、請求項1で定義したとおりである)。
【請求項4】
(全ての構造例)からなる群より選択される化合物。
【請求項5】
式(A):
【化4】

で示される化合物又はその医薬上許容される塩
(式中、
Kは、NRC(O)、C(O)NR、NRSO、SONR及びNRC(O)NRから選択され;
は、アリール、複素環及びヘテロアリールから選択され;
は、H、ハロ、ニトロ、−OR、C−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル及びC−Cハロアルキルから選択され;
m=0〜4であり;
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
WはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ、及びC−Cアルキル、C−Cアルキルチオ、−NR、−OR、及びシアノから選択される)。
【請求項6】
Kが、NRC(O)、C(O)NR、NRSO、SONR及びNRC(O)NRから選択され;
が、フェニル及びピリジルから選択され;
が、H、ハロ、ニトロ、C−Cアルキルスルホニル及びC−Cアルキルから選択され;
m=0〜4であり;
、R及びRがそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
WがCH及びNから選択され;
Zが、H、ハロ及びC−Cアルキルから選択される、
請求項5に記載の化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項7】
式(B):
【化5】

で示される化合物又はその医薬上許容される塩
(式中、
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
は、複素環、ハロアルキル、NRC(O)R、NRC(O)NR、NRC(O)[C(R)(R)]O[C(O)]、(CHSO、NRSO、NRC(O)−Q−R及びN(OR)C(O)Rから選択され;
nは1〜2であり;
pは0又は1であり;
Qは複素環であり;
Uは、H、ハロ、C−Cアルキル、C−Cアルキルチオ、−NR、−OR及びシアノから選択され;
VはCH及びNから選択され;
WはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ及びC−Cアルキルから選択される)。
【請求項8】
式(C):
【化6】

で示される化合物又はその医薬上許容される塩
(式中、
、R及びRはそれぞれ独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;
は、複素環、ハロアルキル、NRC(O)R、NRC(O)NR、NRC(O)[C(R)(R)]O[C(O)]、(CHSO、NRSO、NRC(O)−Q−R及びN(OR)C(O)Rから選択され;
nは1〜2であり;
pは0又は1であり;
Qは複素環であり;
Uは、H、ハロ、C−Cアルキル、C−Cアルキルチオ、−NR、−OR、及びシアノから選択され;
VはCH及びNから選択され;
Zは、H、ハロ及びC−Cアルキルから選択される)。
【請求項9】
式(i):
【化7】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
式(ii):
【化8】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
式(iii):
【化9】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
式(iv):
【化10】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
式(v):
【化11】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項14】
式(vi):
【化12】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項15】
式(vii):
【化13】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項16】
式(viii):
【化14】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項17】
式(ix):
【化15】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項18】
式(x):
【化16】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項19】
式(xi):
【化17】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項20】
式(xii):
【化18】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項21】
式(xiii):
【化19】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項22】
式(xiv):
【化20】

で示される化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項23】
式(xv):
【化21】

で示される化合物である、請求項8に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬上許容可能な塩、水和物、溶媒和物、結晶形態、塩及び個々のジアステレオマーの製造方法。
【請求項25】
少なくとも1種の1〜23のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬上許容可能な塩、水和物、溶媒和物、結晶形態、塩及び個々のジアステレオマー、並びに医薬上許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項26】
副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、唾液腺、皮膚、肝臓、胆嚢及び胆管、食道、胃、腸、膵臓、腎臓、膀胱、子宮頚部、卵巣、肺(lungr)、乳房、前立腺、脳、結合組織の腫瘍、白血病、リンパ腫又は黒色腫の1以上に罹患した動物を治療するための、請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−529530(P2012−529530A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515106(P2012−515106)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/037986
【国際公開番号】WO2010/144586
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】