説明

ヘッドプレートおよびインクジェットヘッドのアライメント方法

【課題】低コストでインクジェットヘッドを簡単且つ精度良くアライメントすることができるヘッドプレートおよびインクジェットヘッドのアライメント方法を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド(ヘッド本体7)1が位置決めされた状態で搭載されるヘッドプレート10であって、高精度の直線性を有し位置決めの主基準となる第1エッジ部31と、第1エッジ部31に直交し、位置決めを補填する第2エッジ部32と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを組み込む(固定する)ためのヘッドプレートおよびインクジェットヘッドのアライメント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を単一のキャリッジプレート(ヘッドプレート)に精度良く位置決めして仮固定(接着)する組立装置が知られている(特許文献1)。液滴吐出ヘッドが組み付けられるキャリッジプレートには、画像認識によりキャリッジプレートをX軸・Y軸・Θ方向に位置決めするための左右一対の基準ピンが設けられている。各基準ピンは、円柱状のピン本体と、ピン本体の先端面の中央部に形成した凹状、具体的には孔状の基準マークとで構成される。組立装置では、媒介金具(ヘッド保持部材)を介して液滴吐出ヘッドが仮組みされたキャリッジプレートを導入し、先ず、認識カメラによりキャリッジプレートの基準ピンが画像認識される。キャリッジプレートは、この認識データと、予め記憶されたアライメントマスクの基準マーク(基準位置データ)との比較により、Xテーブル、Yテーブル、Θテーブルを適宜駆動させ、位置補正が行われる。次に、同様に記憶されたアライメントマスクのヘッド基準マークに合わせて各液滴吐出ヘッドの位置補正が行われる。そして、キャリッジおよび液滴吐出ヘッドの位置補正が完了した後、ヘッド保持部材とキャリッジとの間に接着剤を注入し、接着剤が凝固するまで液滴吐出ヘッドを保持し、仮固定を行う。ヘッド保持部材は、接着剤で固定されることで、ねじ止め等と異なり外力を作用させることなく、キャリッジに不動に仮固定される。その後、本固定において、ねじ止め等により液滴吐出ヘッドはキャリッジに組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来の組立装置は、インクジェットヘッドをヘッドプレートに精度良く位置決めするために、精度良く作製された専用の部品である基準ピンが必要となる。基準ピンは、位置決めの基準となるため、高い製作精度と高い組付け精度が要求され、コストがかさむという問題があった。
【0005】
本発明は、低コストでインクジェットヘッドを簡単且つ精度良くアライメントすることができるヘッドプレートおよびインクジェットヘッドのアライメント方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘッドプレートは、インクジェットヘッドが位置決めされた状態で搭載されるヘッドプレートであって、高精度の直線性を有し位置決めの主基準となる第1エッジ部と、第1エッジ部に直交し位置決めを補填する第2エッジ部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、インクジェットヘッドの位置決め基準となる特別の部材(基準ピン等)をヘッドプレートに設ける必要がなく、ヘッドプレート自体を位置決め基準とすることによって部品点数を減らすことができる。これによって、コストを削減することができる。
【0008】
この場合、方形の外観形状を有し、第1エッジ部は、1の辺で構成され、第2エッジ部は、1の辺に直交する他の辺で構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1エッジ部および第2エッジ部である方形の2辺によって、インクジェットヘッドの位置決めをするための基準となる座標軸を作成することができ、これを基にして、インクジェットヘッドの位置を設定することができる。
【0010】
この場合、第1エッジ部は、ヘッドプレートに対し表裏一方の面から有底のスリット孔を形成すると共に、表裏他方の面からスリット孔に沿って、スリット孔の穴底の一部を除去するように浅溝を形成することにより、穴底の残余の部分として形成されている。
【0011】
この構成によれば、ヘッドプレートにおいて第1エッジ部をより薄く形成することができ、位置決めに際してエッジを鮮明に認識することができ、画像認識の精度が向上させることができる。
【0012】
この場合、第1エッジ部は、搭載されたインクジェットヘッドのノズル列に直交する方向に延在していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、特に吐出タイミングで補正を行うことができない、インクジェットヘッドの副走査方向の位置を精度良く位置決めすることができる。
【0014】
この場合、第1エッジ部は、ヘッドプレートの他の部分に比して薄肉に形成されていることが好ましい。
【0015】
さらに、この場合、第1エッジ部において、少なくともエッジが研磨仕上げであることが好ましい。
【0016】
これらの構成によれば、第1エッジ部を画像認識した際に、厚みによってその位置に誤差が生じる(エッジが不鮮明になる)ことを防ぐと共に、研磨仕上げによって高精度に直線性を持たせることができる。これによって、第1エッジ部のエッジを精度良く認識することができる。
【0017】
本発明のインクジェットヘッドのアライメント方法は、上記のヘッドプレートに、インクジェットヘッドをアライメントするインクジェットヘッドのアライメント方法であって、インクジェットヘッドを仮組みしたヘッドプレートを不動にセットするヘッドプレートセット工程と、セットされたヘッドプレートにおける第1エッジ部の離間した2箇所、および第2エッジ部の1箇所を画像認識するヘッドプレート認識工程と、計3箇所の画像認識結果に基づいて、ヘッドプレートにおけるX・Y座標を作成する座標作成工程と、作成したX・Y座標に基づいて、インクジェットヘッドをX軸方向、Y軸方向およびΘ方向において位置合わせするヘッド位置決め工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ヘッドプレートにおける第1エッジ部および第2エッジ部を画像認識することによって、ヘッドプレート自体をインクジェットヘッドのアライメントに利用することができる。これによって、特別な部品(基準ピン等)を用いることなく、簡単且つ精度良くインクジェットヘッドをアライメントすることができる。
【0019】
この場合、位置合わせしたインクジェットヘッドを不動に保持しながら、ヘッドプレートに締結する締結工程と、を更に備えたことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、一旦位置決め状態となったインクジェットヘッドを、位置ずれせずにヘッドプレートに組み付ける(本固定)ことができる。
【0021】
この場合、ヘッドプレート認識工程では、透過照明により画像認識を実施することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、位置決めの主基準となる第1エッジ部のエッジを高コントラストで認識することができ、簡単に精度良く画像認識することができる。
【0023】
この場合、座標作成工程では、第1エッジ部の2箇所のエッジを通る第1の仮想ラインと、第1の仮想ラインに直交し第2エッジ部の1箇所のエッジを通る第2の仮想ラインとの交点を原点とし、X・Y座標を展開することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、仮想ラインによって形成された測定原点から、インクジェットヘッドのX・Y座標を設定することができる。これによって、設定されたX・Y座標にインクジェットヘッドの位置を合わせることで簡単に位置決めを行うことができる。
【0025】
この場合、ヘッド位置決め工程では、インクジェットヘッドのノズル列における離間した2つのノズル孔を基準とし、2つのノズル孔を画像認識しながら位置合わせを実施することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、仮想ラインから作成された2つのノズル孔のX・Y座標を設定することにより、簡単且つ高精度にインクジェットヘッドの位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インクジェットヘッドの外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係るヘッドプレートの平面図である。
【図3】本実施形態に係るヘッドプレートをセットしたアライメント治具の外観斜視図である。
【図4】本実施形態に係るヘッドプレートをセットしたアライメント治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドのアライメント方法について説明する。このアライメント方法は、インクジェットヘッドをヘッドプレートに位置決めするものであり、専用の治具を用いて行われる。そこで先ず、インクジェットヘッドおよびヘッドプレートについて説明し、その後、アライメント治具とこれを用いたインクジェットヘッドのアライメント方法について説明する。
【0029】
ヘッドユニット8は、複数(本実施形態では、4つ)のインクジェットヘッド1と、複数のインクジェットヘッド1を搭載したヘッドプレート10と、で構成されている。また、各インクジェットヘッド1は、本来のインクジェットヘッド1の形態を為すヘッド本体7と、ヘッド本体7に対しフランジ上に組み付けたサブプレート6と、で構成されている。ヘッド本体7とサブプレート6とは、予め精度良く(高精度にアライメントされている)組み付けられており、この状態で、本実施形態のアライメント治具20に持ち込まれる。
【0030】
図1に示すように、各インクジェットヘッド(ヘッド本体7)1は、2インチのインクジェットヘッド1で構成されており、そのノズル面2に相互に平行な複数の吐出ノズル3から成る2列のノズル列4を有している。この場合、2列のノズル列4は、ノズル列方向に1/2ノズルピッチ位置ずれして配設されている。インクジェットヘッド(ヘッド本体7)1は、そのフランジを介してサブプレート6に組み付けられている。4つのインクジェットヘッド1は、そのノズル列4がヘッドプレート10の長辺と平行になるように、搭載されている。また、4つのインクジェットヘッド1は、千鳥状に配設され、片側2つのインクジェットヘッド1のノズル列4は、それぞれ吐出ノズル3がノズル列4方向に連続し、部分描画ラインを構成している。
【0031】
サブプレート6は、ヘッド本体7のノズル面2を挿通させる開口部9を有する細長形状の平板プレートであり、開口部9の両外側にはヘッドプレート10に組み付けるための複数の貫通孔11と、後述するアライメント治具20(ヘッド支持プレート23)を装着するための複数の補助ねじ孔12と、が形成されている。インクジェットヘッド1は、先ずサブプレート6の貫通孔11を介してヘッドプレート10に緩くねじ止めされて仮装着される。その後、インクジェットヘッド1は、アライメント治具20に対し、サブプレート6の補助ねじ孔12を介してねじ止めされ、アライメントが行われる(詳細は後述する)。
【0032】
図2に示すように、本発明のヘッドプレート10は、ステンレス等の厚板で角部を面取りした方形に形成されている。ヘッドプレート10には、複数(本実施形態では4個)のインクジェットヘッド1を取付けるための複数の装着開口13と、後述するカメラユニットによってインクジェットヘッド1の位置決めの主基準として検出される一対のスリット孔18と、セットテーブル21に固定するための複数の固定孔16と、インクジェットヘッド1を組み付けるための複数のねじ孔19(各インクジェットヘッド1宛て2つ)と、が形成されている。
【0033】
インクジェットヘッド1のアライメント作業に際して、ノズル面2を上向きにしてインクジェットヘッド1を組付けたヘッドプレート10は、後述するアライメント治具20のセットテーブル21上に装着される。詳細は後述するが、ヘッドプレート10の一方のスリット孔18には、セットテーブル21の装着部に固定された状態で、下方からの透過照明と、透過照明と同軸上に設置された上方からのカメラユニットと、が臨むようになっている。なお、ヘッドプレート10は、長辺方向において左右対称に形成されており、セットの際に左右の誤りが発生することはない。
【0034】
複数(4つ)の装着開口13は、4つのインクジェットヘッド1の配置に合わせて、千鳥を為すように配設されている。各装着開口13は、これに遊挿されるインクジェットヘッド1に比してわずかに大きく形成され、アライメントに際してインクジェットヘッド1の微小移動を許容する。複数のねじ孔19は、各装着開口13の外側両縁部にインクジェットヘッド1を組み付けるために形成されている。各固定孔16は、ヘッドプレート10の四隅に形成されており、ヘッドプレート10は、この固定孔16でセットテーブル21の装着部にねじ止め固定される。また、インクジェットヘッド1を搭載した後のヘッドプレート10(ヘッドユニット8)は、この固定孔16でインクジェット記録装置(図示省略)にねじ止め固定される。なお、このインクジェットヘッド1の配列パターンは一例であり、インクジェットヘッド1の個数や列数、さらに配列パターンは任意である。
【0035】
一対のスリット孔18は、ヘッドプレート10の長辺方向の両側端部に形成されており、いずれもノズル列4に直交する方向に延在している。各スリット孔18の溝底部分には、研磨仕上げされ高精度の直線を為すエッジ31aを備えた第1エッジ部31が形成されている。第1エッジ部31は、ヘッドプレート10に対し裏面(図2では上面)側から有底のスリット孔18を形成すると共に、表面(図2では下面)側からスリット孔18に沿って、スリット孔18の孔底の一部を除去するように浅溝を形成することにより、溝底の残余の部分として形成されている。すなわち、各スリット孔18において、装着開口13側となる内側半部に薄肉となる第1エッジ部31が形成され、外側半部にスリット状の貫通開口が形成されている。そして、各第1エッジ部31の貫通開口側の端であるエッジ31aは、研磨仕上げされ高精度の直線を為している。なお、有底のスリット孔18および浅溝は、フライス加工等により形成される。
【0036】
第1エッジ部31が他部分に比して薄肉に形成されているため、インクジェットヘッド1のアライメントに際して、透過照明により第1エッジ部31のエッジ31aを高コントラストで画像認識することができる。画像認識された第1エッジ部31のエッジ31aは、インクジェットヘッド1の位置決めに際して主基準位置となり、第1エッジ部31と直交するヘッドプレート10の1辺(長辺)は第2エッジ部32として検出され、副基準位置となる(詳細は後述する)。なお、上記の第1エッジ部31の形成において、有底のスリット孔18をヘッドプレート10の裏面側から形成し、浅溝をヘッドプレート10の表面側から形成するようにしてもよい。このようにすれば、後に画像認識するノズル面2とのZ軸方向の距離差が小さくなり、カメラユニットのフォーカシングに基づくアライメント誤差を吸収することができる。
【0037】
上述のように、インクジェットヘッド1のノズル列4に直交する第1エッジ部31は、そのエッジ31aが高精度に形成(管理)され、一方で、第2エッジ部32のエッジ(ヘッドプレート10の長辺)は、第1エッジ部31のエッジ31aほど高精度に形成されているわけではない。これは、ヘッドユニット8をインクジェット記録装置(図示省略)に搭載したときに、ノズル列4の方向(副走査方向)におけるノズル位置は、簡単に補正することができない(物理的な補正となる)のに対し、ノズル列4に直交する方向(主走査方向)におけるノズル位置は、吐出タイミングの調整で簡単に補正できることに起因している。したがって、第2エッジ部32も、段部を介して薄肉に精度良く形成してもよいが、本実施形態の第2エッジ部32は、後述する座標作成において、大体の位置として画像認識できれば足りる。一方、上記のスリット孔18に代えて、ヘッドプレート10の短辺を、(例えば、段部を介して薄肉に精度良く形成して)第1エッジ部としてもよい。
【0038】
図3および図4を参照して、インクジェットヘッド1をヘッドプレート10にアライメントするためのアライメント治具20について説明する。
アライメント治具20は、ヘッドプレート10を上下反転させ、位置決め状態でセットするセットテーブル21と、ヘッドプレート10を囲むようにセットテーブル21上に設置した方形の位置決め枠体24と、位置決め枠体24の長辺間に渡すように配設されると共に、インクジェットヘッド1を上側から保持するためのヘッド支持プレート23と、位置決め枠体24をセットテーブル21上において位置調整する微小移動機構26と、を備えている。また、アライメント治具20は、セットテーブル21における位置決め枠体24の設置領域に設けられ、位置決め枠体24を吸着する真空吸着部25と、を備えている。インクジェットヘッド1は、ヘッド支持プレート23越しに、上方に設置されたカメラユニットによって透過照明により画像認識される。
【0039】
作業者は、インクジェットヘッド1を装着したヘッドプレート10をセットテーブル21上に載置固定する。そして、カメラユニットにより、ヘッドプレート10における第1エッジ部31および第1エッジ部31と直交する1辺(第2エッジ部32)を検出(画像認識)して位置決め基準となる座標軸を設定し、この測定原点に基づきインクジェットヘッド1のX・Y座標を設定する。設定された座標に合わせ込むべく、インクジェットヘッド1のノズル列4を画像認識しながら、微小移動機構26によって位置決め枠体24を位置調整する。位置決め状態のインクジェットヘッド1は、位置決め枠体24を真空吸着部25に真空吸引することで、ヘッド支持プレート23を介して不動に保持される(仮固定)。最後に、仮固定されたインクジェットヘッド1を、ねじ止めによりヘッドプレート10に締結(本固定)する。
【0040】
セットテーブル21は、ステンレス等の厚板で略方形に形成され、中央にはヘッドプレート10が臨む方形の開口部28が広く形成されている。セットテーブル21の両開口縁部には、ヘッドプレート10を固定するための複数のねじ孔(図示省略)が形成されており、上方からヘッドプレート10を開口部28に載せ込み、ねじ止めにより固定する。
【0041】
一方、セットテーブル21における位置決め枠体24の着座部分には、位置決め枠体24をセットテーブル21に吸着固定する真空吸着部25が設けられている。すなわち、真空吸着部25は、セットテーブル21における位置決め枠体24の設置領域を吸着テーブルの構成としたものであり、四周枠状の設置領域には、複数の吸着孔(図示省略)が分布し、これら複数の吸着孔は真空配管(図示省略)を介して真空吸引設備44に連通している。そして、この真空配管には、真空吸引をON−OFFさせる手動バルブ45が介設されている。作業者は、インクジェットヘッド1を位置調整した後、この手動バルブ45を操作して、位置決め枠体24を真空吸着部25に真空吸引し、位置決め枠体24、ひいてはインクジェットヘッド1を不動に保持する(仮固定)。
【0042】
位置決め枠体24は、ステンレス等の厚板で形成された方形状の枠体であり、ヘッド支持プレート23を端部で支持すると共に、ヘッドプレート10から外れた位置においてセットテーブル21上に設置されている。位置決め枠体24の下面は、真空吸着部25により良好に吸着されるべく、平坦に且つ平滑に形成されている。また、位置決め枠体24の上面には、ヘッド支持プレート23を固定するための複数のねじ孔(図示省略)が形成されている。そして、位置決め枠体24は、上記の微小移動機構26によりX軸方向(図示の左右方向)、Y軸方向(図示の前後方向)、およびΘ方向に微調整され、ヘッド支持プレート23を介してインクジェットヘッド1の位置を調整する。
【0043】
ヘッド支持プレート23は、ノズル面2を上向きにしたインクジェットヘッド1を遊嵌する複数(図示では4つ)の認識開口36を有するプレート本体33と、サブプレート6(インクジェットヘッド1)をプレート本体33の下面に締結する左右の締結ねじ(締結部材)34と、サブプレート6とプレート本体33との間に介設した左右一対のスペーサー(図示省略)と、を有している。この場合、各締結ねじ34は、プレート本体33の上側からプレート本体33およびスペーサーを貫通し、サブプレート6の補助ねじ孔12に螺合する。インクジェットヘッド1は、プレート本体33により上側から押さえ付けるようにして(プレート本体33が僅かに湾曲する)、所定の位置に仮装着される。なお、ヘッド支持プレート23は、インクジェットヘッド1と同数の認識開口36を有しており、全てのインクジェットヘッド1の位置決めを完了させるまでプレート本体33を組替える必要がないため、効率良く位置調整を行うことができる。
【0044】
プレート本体33は、ステンレス製の方形状の平板で、位置決め枠体24にその両端をねじ止めにより支持されている。プレート本体33は、ヘッドプレート10の4つの装着開口13を覆うと同時に、サブプレート6の貫通孔11を逃げる程度の幅に形成されている。また、プレート本体33には、各装着開口13内側に設けられた貫通孔11に合致するように工具挿入孔15が設けられている。すなわち、インクジェットヘッド1をヘッドプレート10に本固定するためのねじ(図示省略)は、プレート本体33と外側とこの工具挿入孔15からねじ込まれる。認識開口36は、セットテーブル21上にセットされたインクジェットヘッド1のノズル面2を上方から画像認識するために形成されている。また、左右の締結ねじ34は、インクジェットヘッド1をねじ止めするために認識開口36の両外側に設置されている。
【0045】
スペーサーは、インクジェットヘッド1(サブプレート6)とプレート本体33との間に介設され、インクジェットヘッド1を上下方向に位置規制する。実際のスペーサーは、サブプレート6とプレート本体33との間隙寸法よりわずかに長く形成されており、プレート本体33は上側にわずかに湾曲する。これにより、インクジェットヘッド1がヘッドプレート10に押し付けられた状態となり、仮固定されたインクジェットヘッド1の上下方向の位置ブレを防ぎ、精度良くヘッドプレート10に本固定することができる。
【0046】
カメラユニットは、座標設定のためにヘッドプレート10を画像認識する他、ヘッド支持プレート23越しに、ノズル面2の位置決め基準を画像認識するものであり、セットテーブル21の上方に設置されている。この場合の、ノズル面2の位置決め基準は、ノズル列4の最外端に位置する2つのノズルを基準とすることが、好ましい。また、セットテーブル21の下方には、ヘッドプレート10の第1エッジ部31のエッジ31aを検出するための透過照明がカメラユニットと同軸上に設置されている。透過照明は、セットテーブル21にセットされたヘッドプレート10のエッジ31aを検出し、ヘッドプレート10の位置を精度良く認識する。なお、カメラユニットは、複数台のカメラを有していることが好ましい。
【0047】
微小移動機構26は、位置決め枠体24に外側から突き当てるように組み込んだ複数(3個)の調整ブロック37と、各調整ブロック37に突き当てるように設置された複数(3個)のマイクロヘッド38と、各マイクロヘッド38に対して複数(3個)設置された戻しばね39と、により構成されている。各調整ブロック37は、セットテーブル21上に取り付けられたベースプレート46上に回動自在に設置され、その先端には、位置決め枠体24を押し込む回転ローラー(ローラーフォロア)47が取り付けられている。マイクロヘッド38は、位置決め枠体24の長辺の外側に設置された第1マイクロヘッド38aと、位置決め枠体24の短辺の外側に離間して設置された第2および第3マイクロヘッド38b,38cと、で構成されている。戻しばね39は、位置決め枠体24の長辺に設置された第1および第2戻しばね39a,39bと、位置決め枠体24の短辺に設置された第3戻しばね39cと、で構成されている。
【0048】
この場合、位置決め枠体24は、第2および第3マイクロヘッド38b,38cと、第3戻しばね39cとの協働により、第1マイクロヘッド38aの回転ローラー47にガイドされてX軸方向に微小移動し、X軸方向に位置決めされる。同様に、位置決め枠体24は、第1マイクロヘッド38aと、第1および第2戻しばね39a,39bとの協働により、第2および第3マイクロヘッド38b,38cの回転ローラー47にガイドされてY軸方向に微小移動し、Y軸方向に位置決めされる。また、位置決め枠体24は、第2および第3マイクロヘッド38b,38cと、第1および第2戻しばね39a,39bとの協働により、第1マイクロヘッド38aの回転ローラー47を中心にΘ方向に微小回転し、Θ方向に位置決めされる。このようにして、カメラユニットの認識結果を参酌しながら、微小移動機構26を回転操作し、位置決め枠体24をX軸、Y軸、Θ軸方向に微調整することにより、ヘッド支持プレート23を介してインクジェットヘッド1のアライメントが行われる。
【0049】
ここで、アライメント治具20を用いた、ヘッドプレート10におけるインクジェットヘッド1のアライメント方法について説明する。
このアライメント方法は、インクジェットヘッド1を装着したヘッドプレート10を不動にセットするヘッドプレートセット工程と、セットされたヘッドプレート10における第1エッジ部31およびこれに直交する第2エッジ部32を画像認識するヘッドプレート認識工程と、計3箇所の画像認識結果に基づいて、ヘッドプレート10におけるX・Y座標を作成する座標作成工程と、作成したX・Y座標に基づいて、インクジェットヘッド1をX軸方向、Y軸方向およびΘ方向において位置合わせするヘッド位置決め工程と、を備えている。さらに、位置合わせしたインクジェットヘッド1を不動に保持しながら、ヘッドプレート10に締結する締結工程を備える。
【0050】
ヘッドプレートセット工程では、先ず、インクジェットヘッド1のノズル面2を上向きにしてヘッドプレート10の装着開口13に上側から挿入し、サブプレート6の貫通孔11からヘッドプレート10のねじ孔19に緩くねじ止めして仮装着する。このヘッドプレート10をセットテーブル21に載置し、固定孔16でねじ止め固定する。続いて、ヘッド支持プレート23を、ヘッドプレート10の全ての装着開口13を覆うようにして、位置決め枠体24上に掛け渡してねじ止め固定する。さらに、締結ねじ34およびスペーサーにより、各インクジェットヘッド1をヘッド支持プレート23にねじ止めしておく。
【0051】
ヘッドプレート認識工程は、透過照明によりカメラユニットでヘッドプレート10の第1エッジ部31を画像認識(検出)する。一方のスリット孔18の第1エッジ部31のエッジ2箇所を検出し、この2箇所を通る直線を第1仮想ライン41として設定する(主基準位置)。次に、第1エッジ部31と直交するヘッドプレート10の1辺を第2エッジ部32として、そのエッジ1箇所を検出し、第1仮想ライン41と直交する直線を第2仮想ライン42として設定する(副基準位置)。
【0052】
座標作成工程では、設定された第1仮想ライン41と第2仮想ライン42との交点を測定原点としてX・Y座標を展開し、ヘッドプレート10上のインクジェットヘッド1の位置を設定する。具体的には、各インクジェットヘッド1のノズル列4において、離間した2つの吐出ノズル3のX・Y座標を作成する。
【0053】
ヘッド位置決め工程では、作成した2つの吐出ノズル3のX・Y座標に基づいて、インクジェットヘッド1をX軸方向、Y軸方向およびΘ方向に位置合わせするため、カメラユニットでノズル面2を画像認識しながら、微小移動機構26のマイクロヘッド38を調節して位置決め枠体24を微小移動させる。位置決め枠体24の移動に伴い、ヘッド支持プレート23を介してインクジェットヘッド1の位置が微調整される。
【0054】
インクジェットヘッド1の位置調整が完了した後、位置決め枠体24を真空吸引して真空吸着部25に吸着固定させる。これにより、位置決め枠体24と共にヘッド支持プレート23が完全に固定され、これに伴い、ヘッド支持プレート23によって上側から押さえ付けられたインクジェットヘッド1も、位置決め状態で完全に不動に保持される(仮固定)。そして、仮固定されたインクジェットヘッド1を工具挿入孔15からねじ止めすることによって、最終的にインクジェットヘッド1がヘッドプレート10に固定される(本固定)。このようにして、1のインクジェットヘッド1のアライメント作業が完了する。最後に、アライメント治具20に固定されたインクジェットヘッド1おける左右の締結ねじ34を緩めねじ止め状態を解除する。続いて、他の3つのインクジェットヘッド1についても、上記ヘッド位置決め工程において1つずつ位置決めを行い、アライメント作業を行う。
【0055】
以上の構成によれば、ヘッドプレート10(第1エッジ部31)を位置決めの基準として画像認識しアライメントを行うことによって、ヘッドアライメントのための特別部品(基準ピン等)が不要になる。したがって、低コストで簡単且つ精度良くインクジェットヘッド1のアライメントを行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
1…インクジェットヘッド 3…ノズル列 10…ヘッドプレート 18…スリット孔 31a…エッジ 31…第1エッジ部 32…第2エッジ部 41…第1仮想ライン 42…第2仮想ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドが位置決めされた状態で搭載されるヘッドプレートであって、
高精度の直線性を有し前記位置決めの主基準となる第1エッジ部と、
前記第1エッジ部に直交し前記位置決めを補填する第2エッジ部と、を備えたことを特徴とするヘッドプレート。
【請求項2】
方形の外観形状を有し、
前記第1エッジ部は、1の辺で構成され、
前記第2エッジ部は、1の辺に直交する他の辺で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドプレート。
【請求項3】
前記第1エッジ部は、前記ヘッドプレートに対し表裏一方の面から有底のスリット孔を形成すると共に、表裏他方の面から前記スリット孔に沿って、前記スリット孔の穴底の一部を除去するように浅溝を形成することにより、前記穴底の残余の部分として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドプレート。
【請求項4】
前記第1エッジ部は、搭載された前記インクジェットヘッドのノズル列に直交する方向に延在していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のヘッドプレート。
【請求項5】
前記第1エッジ部は、前記ヘッドプレートの他の部分に比して薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のヘッドプレート。
【請求項6】
前記第1エッジ部において、少なくともエッジが研磨仕上げであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のヘッドプレート。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のヘッドプレートに、インクジェットヘッドをアライメントするインクジェットヘッドのアライメント方法であって、
前記インクジェットヘッドを仮組みしたヘッドプレートを不動にセットするヘッドプレートセット工程と、
セットされた前記ヘッドプレートにおける前記第1エッジ部の離間した2箇所、および前記第2エッジ部の1箇所を画像認識するヘッドプレート認識工程と、
計3箇所の前記画像認識結果に基づいて、前記ヘッドプレートにおけるX・Y座標を作成する座標作成工程と、
作成した前記X・Y座標に基づいて、前記インクジェットヘッドをX軸方向、Y軸方向およびΘ方向において位置合わせするヘッド位置決め工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェットヘッドのアライメント方法。
【請求項8】
位置合わせした前記インクジェットヘッドを不動に保持しながら、前記ヘッドプレートに締結する締結工程、を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドのアライメント方法。
【請求項9】
前記ヘッドプレート認識工程では、
透過照明により前記画像認識を実施することを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェットヘッドのアライメント方法。
【請求項10】
前記座標作成工程では、
前記第1エッジ部の2箇所のエッジを通る第1の仮想ラインと、前記第1の仮想ラインに直交し前記第2エッジ部の1箇所のエッジを通る第2の仮想ラインとの交点を原点とし、前記X・Y座標を展開することを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載のインクジェットヘッドのアライメント方法。
【請求項11】
前記ヘッド位置決め工程では、
前記インクジェットヘッドのノズル列における離間した2つのノズル孔を基準とし、前記2つのノズル孔を画像認識しながら前記位置合わせを実施することを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載のインクジェットヘッドのアライメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−104493(P2011−104493A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260628(P2009−260628)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】