説明

ヘッドメンテナンス方法及びヘッドメンテナンス機構ならびにそれを備えた記録装置

【課題】ヘッドキャップからのインクの溢れ出しを防止しつつ駆動部や機構部における負担を極力抑えることが可能なヘッドメンテナンス方法及びヘッドメンテナンス機構ならびに記録装置を提供する。
【解決手段】ヘッドキャップ内にインクノズルからインクを吐出させてインクのメニスカスを形成するフラッシングを行うヘッドメンテナンス方法であって、ヘッドキャップ内に貯留したインク量であるヘッドキャップ内フラッシング量に次のメディアへのその後の印刷処理に伴う印刷前フラッシング及び定期フラッシングのインク量を加算したヘッドキャップ内フラッシング予測量を求め、ヘッドキャップ内フラッシング予測量がしきい値以上となる場合に、ヘッドキャップ内に貯留したインクを排出する空吸引処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタなどの印字ヘッドのメンテナンスを行うヘッドメンテナンス方法及びヘッドメンテナンス機構ならびにそれを備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多数枚のブランクCDやDVDなどのメディアにデータの書き込みを行うディスクダビング装置や、データの書き込みとレーベル印刷を行ってメディアを制作して発行可能なCD/DVDパブリッシャなどのメディア処理装置が知られている。この種のメディア処理装置は、メディアへデータを書き込むドライブ及びメディアのレーベル面に印刷を施す記録装置であるプリンタを備えている。
【0003】
一般に、この種のプリンタは、往復移動可能なキャリッジに装填されたインクジェットヘッドが複数のインクノズルからインク滴を所望の位置に噴射することによって印字を行うように構成されている。インクジェットヘッドのノズル形成面には、印字の際にインクやごみ等の異物が付着することがあるため、印宇領域外にて適宜クリーニングする必要がある。
【0004】
そこで、インクジェットヘッドによる印字領域から外れたメンテナンス領域にインクジェットヘッドの保守動作を行うヘッドメンテナンス機構を配置し、このヘッドメンテナンス機構によって、インクジェットヘッドのノズル形成面にヘッドキャップを密着させて増粘状態のインクを吸引する吸引クリーニング、インクジェットヘッドのノズル形成面の汚れを払拭するワイピング、インクノズルの詰まりを防止するためにヘッドキャップをノズル形成面に密着させるキャッピング、インクジェットヘッドのインクノズルでの増粘したインクを除去するために、印字開始前あるいは定期的にインクジェットヘッドのインクノズルからインクをヘッドキャップ内に吐出するフラッシングなどを行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−1835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記メンテナンス機構では、メンテナンス時に、ヘッドキャップ内に貯留されたインクの量が予め設定されたしきい値となる時点にて、ヘッドキャップ内に貯留したインクをポンプによって排出する排液処理として空吸引処理を行っている。
ところで、メンテナンス時においては、インク貯留量がしきい値に達していない場合でも、メンテナンス後の印字開始前あるいは定期的に行われるフラッシングによって吐出されるインクによってヘッドキャップ内のインクがヘッドキャップに貯留可能なインクの許容貯留量を超えることがないように、空吸引処理の開始タイミングの判断基準となるしきい値をインクの許容貯留量に対して、例えば、2/3程度に設定して十分に余裕をもたせている。
しかし、このように、実際のインクの許容貯留量に対して大きく余裕をもってしきい値を設定すると、ヘッドキャップからのインクの溢れ出しなどの不具合をなくすことができるが、空吸引処理の頻度が高くなり、メンテナンス機構の駆動部や機構部における負担が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ヘッドキャップからのインクの溢れ出しを防止しつつ駆動部や機構部における負担を極力抑えることが可能なヘッドメンテナンス方法及びヘッドメンテナンス機構ならびに記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のヘッドメンテナンス方法は、ヘッドキャップ内に印字ヘッドのインクノズルからインクを吐出させて増粘したインクを除去するフラッシングを行うヘッドメンテナンス方法であって、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクの貯留量にその後の印刷処理に伴うフラッシングのインク量を加算した予測量を求め、前記ヘッドキャップにおけるインクの許容貯留量から求めたしきい値と前記予測量とを比較し、予測量がしきい値以上となる場合に、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクを排出する排液処理を実行することを特徴とする。
【0008】
このヘッドメンテナンス方法によれば、ヘッドキャップ内に貯留したインクの貯留量にその後の印刷処理に伴うフラッシングのインク量を加算した予測量を求め、ヘッドキャップにおけるインクの許容貯留量から求めたしきい値と予測量とを比較し、予測量がしきい値以上となる場合に、ヘッドキャップ内に貯留したインクを排出する排液処理を実行するので、しきい値を、実際のインクの許容貯留量に対して大きく余裕をもたせることなく設定しても、溢れ出しなどを防止しつつ排液処理の実行頻度を少なくし、駆動部や機構部における負担を極力抑えることができる。特に、排液処理を印刷処理中に行う場合には、排液処理の実行頻度の減少により、印刷処理のスループットへの影響も極力抑えることができる。
【0009】
また、前記排液処理の実行の判断を、前記印字ヘッドによる印刷処理の合間に行うのが好ましい。
このヘッドメンテナンス方法によれば、排液処理の実行による印刷処理のスループットへの影響をなくすことができる。
【0010】
また、前記しきい値は、前記ヘッドキャップにおけるインク許容貯留量と略等しくされていることが好ましい。
このヘッドメンテナンス方法によれば、溢れ出しなどを防止しつつ排液処理の実行頻度を最小限にし、駆動部や機構部における負担を極力抑えることができる。
【0011】
また、本発明のヘッドメンテナンス機構は、インクノズルにおける増粘したインクを除去すべく印字ヘッドのインクノズルから吐出するフラッシング時のインクを受けるヘッドキャップと、このヘッドキャップ内に貯留されたインクを排出する排液手段とを備えたヘッドメンテナンス機構であって、前記排液手段は、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクの貯留量にその後の印刷処理に伴うフラッシングのインク量を加算した予測量が、前記ヘッドキャップにおけるインクの許容貯留量から求めたしきい値以上となる場合に、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクを排出することを特徴とする。
【0012】
このヘッドメンテナンス機構によれば、ヘッドキャップ内に貯留したインクの貯留量にその後の印刷処理に伴うフラッシングのインク量を加算した予測量が、ヘッドキャップにおけるインクの許容貯留量から求めたしきい値以上となる場合に、排液手段がヘッドキャップ内に貯留したインクを排出するので、しきい値を、実際のインクの許容貯留量に対して大きく余裕をもたせることなく設定しても、溢れ出しなどを防止しつつ排液処理の実行頻度を少なくし、駆動部や機構部における負担を極力抑えることができる。特に、排液処理を印刷処理中に行う場合には、排液処理の実行頻度の減少により、印刷処理のスループットへの影響も極力抑えることができる。
【0013】
また、前記排液手段における前記排液処理の実行の判断が、前記印字ヘッドによる印刷処理の合間に行われることが好ましい。
このヘッドメンテナンス機構によれば、排液処理の実行による印刷処理のスループットへの影響をなくすことができる。
【0014】
また、前記しきい値は、前記ヘッドキャップにおけるインク許容貯留量と略等しくされていることが好ましい。
このヘッドメンテナンス機構によれば、溢れ出しなどを防止しつつ排液処理の実行頻度を最小限にし、駆動部や機構部における負担を極力抑えることができる。
【0015】
また、本発明の記録装置は、上記のヘッドメンテナンス機構を備えたことを特徴とする。
この記録装置によれば、排液処理の実行頻度が少なくされて駆動部や機構部における負担が極力抑えられるので、長寿命化を図ることができ、また、排液処理を印刷処理中に行う場合には、排液処理の実行頻度の減少により、印刷処理のスループットに優れた記録装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るヘッドメンテナンス方法及びヘッドメンテナンス機構ならびにそれを備えた記録装置の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、パブリッシャからなるメディア処理装置に適用した場合を例にとって説明する。
図1はパブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図、図2はパブリッシャのケースを外した状態の前方側の斜視図、図3はパブリッシャのケースを外した状態の後方側の斜視図、図4はパブリッシャに設置されたレーベルプリンタ部分の斜視図である。
【0017】
パブリッシャ1は、例えばCDあるいはDVD等の円板状のメディアへのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷を行うメディア処理装置であり、ほぼ直方体形状のケース2を備えている。このケース2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉3,4が取り付けられている。ケース2の上側左端部には、表示ランプ、操作ボタンなどが配列された操作面5が設けられており、また、ケース2の下端には、メディア排出口6が設けられている。
【0018】
正面視右側の開閉扉3は、未使用のブランクメディアMAをセットする時、あるいは作成済みメディアMBを取り出すときに開閉する扉である。
また、正面視左側の開閉扉4は、レーベルプリンタ11のインクカートリッジ12の入れ換え時に開閉するためのものであり、この開閉扉4を開けると、鉛直方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14(図2参照)が露出するようになっている。
【0019】
図2にも示すように、メディア処理装置1のケース2の内部には、データ書き込み処理が行われていない複数枚の未使用のブランクメディアMAをスタック可能なメディア保管部としてのブランクメディアスタッカ21と、作成済みメディアMBが保管されるメディア保管部としての作成済みメディアスタッカ22が同軸状態で上下に配置されている。ブランクメディアスタッカ21及び作成済みメディアスタッカ22は、それぞれ図2に示した所定位置に対して着脱自在である。
【0020】
ブランクメディアスタッカ21は、左右一対の円弧状の枠板24,25を備えており、これにより、ブランクメディアMAを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収納可能な構成をなしている。ブランクメディアスタッカ21にブランクメディアMAを収納あるいは補充する作業は、開閉扉3を開けてスタッカを取り出すことにより、簡単に行うことが可能となっている。
【0021】
下側の作成済みメディアスタッカ22も同一構造となっており、左右一対の円弧状の枠板27,28を備えており、これによって、作成済みメディアMBを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収納可能なスタッカが構成されている。
【0022】
また、開閉扉3からは、作成済みメデイアMB(すなわち、データの書き込み、及びレーベル面印刷が終了したメディア)を取り出すこともできる。
【0023】
これらのブランクメディアスタッカ21及び作成済みメディアスタッカ22の後側には、メディア搬送機構31が配置されている。メディア搬送機構31は、ベース72に取り付けられている水平支持板部34とシャーシ32の天板33との間に垂直に架け渡されている垂直ガイド軸35を有している。この垂直ガイド軸35に搬送アーム36が昇降および旋回可能な状態で支持されている。搬送アーム36は、駆動モータ37によって垂直ガイド軸35に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸35を中心に左右に旋回可能である。メディア搬送機構31によってメディア排出口6に搬送されてきたメディアは、このメディア排出口6から外部に取り出すことが可能である。
【0024】
上下のスタッカ21,22及びメディア搬送機構31の側方の部位には、上下に積層された2つのメディアドライブ41が配置され、これらメディアドライブ41の下側にレーベルプリンタ11の後述するキャリッジ62(図4参照)が移動可能に配置されている。
メディアドライブ41は、メディアへのデータ書き込み位置とメディアの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ41aをそれぞれ有している。
【0025】
また、レーベルプリンタ11は、メディアのレーベル面へのレーベル印刷可能な位置とメディアの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ51を有している。
【0026】
図2及び図3では、上側のメディアドライブ41のメディアトレイ41aが手前に引き出されてメディア受け渡し位置にある状態及び下側のレーベルプリンタ11のメディアトレイ51が奥側のレーベル印刷可能位置にある状態が示されている。また、レーベルプリンタ11はインクジェットプリンタであり、インク供給機構71として各色(本実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色)のインクカートリッジ12が用いられ、これらのインクカートリッジ12がカートリッジ装着部14の各カートリッジホルダ13に前方から装着されている。
【0027】
ここで、ブランクメディアスタッカ21の左右一対の枠板24,25の間及び作成済みメディアスタッカ22の左右一対の枠板27,28の間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、これら上下のブランクメディアスタッカ21と作成済みメディアスタッカ22との間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が水平に旋回して、作成済みメディアスタッカ22の真上に位置できるように隙間が開いている。さらに、メディアトレイ41aをメディアドライブ41に押し込むと、メディア搬送機構31の搬送アーム36を下降させて、メディア受け渡し位置にあるメディアトレイ51にアクセス可能となっている。したがって、搬送アーム36の昇降及び左右への旋回の組み合わせ動作によって、メディアを各部に搬送することが可能とされている。
【0028】
メディアトレイ51のメディア受け渡し位置の下方には、廃棄用メディアMDを保管するための廃棄用スタッカ52が配置されており、この廃棄用スタッカ52には、例えば30枚程度の廃棄用メディアMDが保管可能とされている。メディアトレイ51が廃棄用スタッカ52の上方のメディア受け渡し位置からデータ書き込み位置へ退避した状態にてメディア搬送機構31の搬送アーム36により、廃棄用メディアMDを廃棄用スタッカ52に供給可能となっている。
【0029】
まとめると、CDあるいはDVDからなるメディアは、ブランクメディアスタッカ21、作成済みメディアスタッカ22、廃棄用スタッカ52、メディアドライブ41のメディアトレイ41a及びレーベルプリンタ11のメディアトレイ51間を、メディア搬送機構31の搬送アーム36によって搬送される。
【0030】
レーベルプリンタ11は図示略のインク吐出用のノズルを備えたインクジェットヘッド61を有するキャリッジ62を備えており、このキャリッジ62は、図示は略すがキャリッジモータの駆動力でキャリッジガイド軸に沿って水平方向に往復移動する。
【0031】
レーベルプリンタ11は、インクカートリッジ12が装着されるカートリッジ装着部14を有するインク供給機構71を備えている。このインク供給機構71は、縦型構造を有しており、パブリッシャ1のベース72上に立設されて鉛直方向に配設されている。このインク供給機構71には、可撓性を有するインク供給チューブ73の一端が接続されており、このインク供給チューブ73の他端は、キャリッジ62に接続されている。
【0032】
そして、インク供給機構71に装着されるインクカートリッジ12のインクは、インク供給チューブ73を介してキャリッジ62に供給され、このキャリッジ62に設けられた図示しないダンパユニット及び背圧調整ユニットを経てインクジェットヘッド61に供給され図示略のインクノズルから吐出される。
なお、インク供給機構71には、その上部に主部を配置するように加圧機構74が設けられており、この加圧機構74は、インクカートリッジ12内を加圧し、インクカートリッジ12内のインクパックに貯留しているインクを送り出す。
【0033】
また、キャリッジ62のホームポジション(図4に示す位置)における下方側には、ヘッドメンテナンス機構81が設けられている。
このヘッドメンテナンス機構81は、ホームポジションに配置されたキャリッジ62の下面に露出するインクジェットヘッド61のインクノズルを覆うヘッドキャップ82と、インクジェットヘッド61のヘッドクリーニング動作やインク充填動作によってヘッドキャップ82に排出されたインクを吸引する廃インク吸引ポンプ83とを備えている。
【0034】
そして、このヘッドメンテナンス機構81の廃インク吸引ポンプ83によって吸引されたインクは、チューブ84を介して、廃インク吸収タンク85へ送り込まれる。
この廃インク吸収タンク85は、ケース86内に図示略の吸収材を配設したもので、その上面は、複数の通気孔87を有するカバー88によって覆われている。
なお、ヘッドメンテナンス機構81の下方には、廃インク吸収タンク85の一部である廃インク受け部89が設けられ、ヘッドメンテナンス機構81から滴下したインクを受け止め、吸収材によって吸収するようになっている。
【0035】
次に、ヘッドメンテナンス機構81を詳述する。
図5はヘッドメンテナンス機構の構造を説明する斜視図、図6はヘッドメンテナンス機構の構造を説明する正面図、図7はヘッドメンテナンス機構の動作を説明する斜視図、図8はヘッドメンテナンス機構の動作を説明する正面図である。
【0036】
ヘッドメンテナンス機構81は、図5及び図6に示すように、インクジェットヘッド61のノズル形成面61aを封止するためのヘッドキャップ機構101と、このノズル形成面61aを払拭するためのワイパ機構102を備えている。
【0037】
ヘッドキャップ機構101は、キャップスライダ111を備えている。キャップスライダ111は、ケース状に形成されたもので、インクジェットヘッド61のノズル形成面61aに対して接近又は離間する方向にスライドするようになっている。
【0038】
キャップスライダ111の上端凹部には、先端部分にヘッドキャップ82が固定されたキャップホルダ112がキャップスライダ111に対し進退移動できるように保持されている。ヘッドキャップ82は、インクジェットヘッド61のノズル形成面61aを封止可能な大きさの開口を有する箱型状のゴムで形成されたもので、その開口部分には、多層構造の吸収材113が取付けられている。
【0039】
ワイパ機構102は、弾性材であるゴム性の板材からなるワイパ121を有しており、このワイパ121が、インクジェットヘッド61の移動方向に対して直交する方向へ進退可能に支持されたワイパスライダ122に固定されている。
そして、ワイパ121は、ワイパスライダ122の移動により、ノズル形成面61aの汚れを払拭するワイピング処理を行うためにインクジェットヘッド61の移動経路内に配置されたワイピング位置(図5の状態)と、図7に示すように、インクジェットヘッド61の移動経路から外れた退避位置との間を移動できるようになっている。
【0040】
図6に示すように、ワイパ121は、その先端がノズル形成面61aからはみ出し量s分インクジェットヘッド61側に配置されている。これにより、ワイピング位置にワイパ121を配置させた状態にて、インクジェットヘッド61をホームポジションから印刷領域へ移動させることにより、図8に示すように、インクジェットヘッド61のノズル形成面61aに対してワイパ121が接触して擦れ、ワイパ121によってノズル形成面61aが払拭され、ノズル形成面61aに付着しているインク等の異物が除去される。尚、インクの種類によっては、ワイパ121を軟質のプラスチック等により形成しても良い。
【0041】
また、図5及び図7に示すように、ワイパ機構102は、スライドするワイパ121の経路の途中に、吸収材123を備えており、ワイパ121が吸収材123に接触しながらスライドすることにより、ワイパ121に付着したインクが吸収材123によって拭き取られる。
なお、ヘッドキャップ機構101のキャップスライダ111及びワイパ機構102のワイパスライダ122は、いずれも廃インク吸引ポンプ83の駆動によってスライドされる。
【0042】
そして、上記レーベルプリンタ11では、ヘッドメンテナンス機構81によってインクジェットヘッド61のクリーニング処理が行われる。なお、このクリーニング処理は、予め設定された所定のタイミングあるいはユーザの操作時に行われるもので、インクジェットヘッド61のノズル形成面61aにヘッドキャップ82を密着させて廃インク吸引ポンプ83によって内部を吸引してインクジェットヘッド61のインクノズルから増粘状態のインクを吸引するインク吸引クリーニング及びインクジェットヘッド61のノズル形成面61aの汚れをワイパ121によって払拭するワイピングが行われる。
【0043】
また、上記ヘッドメンテナンス機構81を備えたレーベルプリンタ11では、インクジェットヘッド61のインクノズルでの増粘したインクを除去するために、印字開始前あるいは定期的にインクジェットヘッド61のインクノズルから所定量のインクをヘッドキャップ82内に吐出するフラッシング、インクノズルの詰まりを防止するために印字休止後にてインクジェットヘッド61のノズル形成面61aにヘッドキャップ82を密着させて保護するキャッピングも行う。
【0044】
ここで、上記パブリッシャ1では、各メディアへの印刷処理間にてレーベルプリンタ11が休止動作を行い、この休止動作にて必要に応じてヘッドキャップ82に貯留されたインクを排液する空吸引処理を行う。
以下、このレーベルプリンタ11における休止動作について、図9に示すフローチャートに沿って説明する。
【0045】
メディアへの印刷処理が終了すると、休止動作が開始される。
この休止動作が開始されると、印字開始前フラッシング及び定期フラッシングによってヘッドキャップ82内に貯留されたインクの量であるヘッドキャップ内フラッシング量(貯留量)が算出される(ステップS01)。
さらに、このヘッドキャップ内フラッシング量に対して、休止動作中に行われる休止時フラッシング量、次のメディアへのその後の印刷処理に伴う印刷開始前フラッシング量及び印刷処理中に行われる定期フラッシング量を加算したヘッドキャップ内フラッシング予測量が算出される(ステップS02)。
【0046】
そして、この算出したヘッドキャップ内フラッシング予測量が、予め設定されたしきい値以上であるかが判定される(ステップS03)。
ここで、この予め設定されたしきい値は、ヘッドキャップに貯留されるインクの許容貯留量から定められたもので、本実施形態では、このしきい値は許容貯留量にほぼ等しい値とされている。
【0047】
そして、このヘッドキャップ内フラッシング予測量がしきい値以上と判断された場合は、空吸引処理が行われる(ステップS04)。
具体的には、廃インク吸引ポンプ83が駆動し、ヘッドキャップ82内に貯留したインクが吸引され、チューブ84を介して廃インク吸収タンク85へ送り込まれる。
【0048】
空吸引処理が終了したら、インクジェットヘッド61のインクノズルからヘッドキャップ82内へインクを突出するフラッシングが行われ、インクノズルにおける増粘したインクが除去される(ステップS05)。
【0049】
なお、ヘッドキャップ内フラッシング予測量がしきい値未満と判断された場合は(ステップS03)、空吸引処理(ステップS04)を行うことなく、フラッシングが行われる(ステップS05)。
その後、インクジェットヘッド61のノズル形成面61aにヘッドキャップ82を密着させてノズル形成面61aを密閉して保護するキャッピングが行われる(ステップS06)。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態に係るヘッドメンテナンス方法及びヘッドメンテナンス機構によれば、ヘッドキャップ82内のインクの貯留量であるヘッドキャップ内フラッシング量に次のメディアへのその後の印刷処理に伴う印刷前フラッシング及び定期フラッシングのインク量を加算したヘッドキャップ内フラッシング予測量を求め、ヘッドキャップ82におけるインクの許容貯留量から求めたしきい値とヘッドキャップ内フラッシング予測量とを比較し、ヘッドキャップ内フラッシング予測量がしきい値以上となる場合に、ヘッドキャップ82内に貯留したインクを排出する空吸引処理を実行するので、しきい値を、実際のインクの許容貯留量に対して大きく余裕をもたせることなく設定しても、溢れ出しなどを防止しつつ空吸引処理の実行頻度を少なくし、廃インク吸引ポンプ83などの駆動部や機構部における負担を極力抑えることができる。
【0051】
また、空吸引処理の実行の判断を、インクジェットヘッド61による印刷処理の合間に行うので、空吸引処理の実行による印刷処理のスループットへの影響をなくすことができる。
特に、しきい値を、ヘッドキャップ82におけるインク許容貯留量と略等しくすることにより、溢れ出しなどを防止しつつ空吸引処理の実行頻度を最小限にし、廃インク吸引ポンプ83などの駆動部や機構部における負担を極力抑えることができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、被印刷媒体であるメディアへの印刷処理間にて行われる休止動作での空吸引処理の実行判定を例にとって説明したが、本発明は、この場合に限らず、例えば、メディアや用紙などの被印刷媒体に対して印刷処理を連続して行う場合にも適用可能である。この場合、印刷処理中にて前述した空吸引処理の実行判定(ステップS01〜S04)を行う。そして、この場合にも、空吸引処理の実行回数を極力抑えてメンテナンス機構81の駆動部や機構部における負担を極力抑えることができ、さらには、印刷処理のスループットへの影響も極力抑えることができる。
【0053】
そして、上記のヘッドメンテナンス機構81を備えたレーベルプリンタ11などの記録装置によれば、空吸引処理の実行頻度が少なくされて駆動部や機構部における負担が極力抑えられるので、長寿命化を図ることができ、また、空吸引処理を印刷処理中に行う場合には、空吸引処理の実行頻度の減少により、印刷処理のスループットに優れた記録装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】パブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図である。
【図2】パブリッシャのケースを外した状態の前方側の斜視図である。
【図3】パブリッシャのケースを外した状態の後方側の斜視図である。
【図4】パブリッシャに設置されたレーベルプリンタ部分の斜視図である。
【図5】ヘッドメンテナンス機構の構造を説明する斜視図である。
【図6】ヘッドメンテナンス機構の構造を説明する正面図である。
【図7】ヘッドメンテナンス機構の動作を説明する斜視図である。
【図8】ヘッドメンテナンス機構の動作を説明する正面図である。
【図9】空吸引処理の実行判定が行われる休止動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
61…インクジェットヘッド(印字ヘッド)、81…ヘッドメンテナンス機構、82…ヘッドキャップ、83…廃インク吸引ポンプ(排液手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドキャップ内に印字ヘッドのインクノズルからインクを吐出させて増粘したインクを除去するフラッシングを行うヘッドメンテナンス方法であって、
前記ヘッドキャップ内に貯留したインクの貯留量にその後の印刷処理に伴うフラッシングのインク量を加算した予測量を求め、前記ヘッドキャップにおけるインクの許容貯留量から求めたしきい値と前記予測量とを比較し、予測量がしきい値以上となる場合に、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクを排出する排液処理を実行することを特徴とするヘッドメンテナンス方法。
【請求項2】
前記排液処理の実行の判断を、前記印字ヘッドによる印刷処理の合間に行うことを特徴とする請求項1に記載のヘッドメンテナンス方法。
【請求項3】
前記しきい値は、前記ヘッドキャップにおけるインク許容貯留量と略等しくされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドメンテナンス方法。
【請求項4】
インクノズルにおける増粘したインクを除去すべく印字ヘッドのインクノズルから吐出するフラッシング時のインクを受けるヘッドキャップと、このヘッドキャップ内に貯留されたインクを排出する排液手段とを備えたヘッドメンテナンス機構であって、
前記排液手段は、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクの貯留量にその後の印刷処理に伴うフラッシングのインク量を加算した予測量が、前記ヘッドキャップにおけるインクの許容貯留量から求めたしきい値以上となる場合に、前記ヘッドキャップ内に貯留したインクを排出することを特徴とするヘッドメンテナンス機構。
【請求項5】
前記排液手段における前記排液処理の実行の判断が、前記印字ヘッドによる印刷処理の合間に行われることを特徴とする請求項4に記載のヘッドメンテナンス機構。
【請求項6】
前記しきい値は、前記ヘッドキャップにおけるインク許容貯留量と略等しくされていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のヘッドメンテナンス機構。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載のヘッドメンテナンス機構を備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−221796(P2008−221796A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67582(P2007−67582)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】