説明

ヘッドレスト位置調整方法及び装置

【課題】簡単な構成でより高精度且つ迅速にヘッドレストの位置を目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整する。
【解決手段】ヘッドレスト位置調整装置100は、複数の検知電極11〜15を有する静電容量センサ部10と、静電容量センサ部10からの検出結果に基づき駆動モータ44の駆動を制御する制御部30とを備える。制御部30は、演算処理回路28において頭部49aの頭部位置Pをセンサ出力から算出し、この頭部位置Pが、予め設定されたヘッドレスト43からの所定距離及びヘッドレスト43の高さ方向の所定範囲により画定される適正領域PS内に収まるように、ヘッドレスト43を移動させる。ヘッドレスト43の中心位置43Pを頭部49aに対する目標調整位置へ移動させている位置調整動作中に目標調整位置の再算出処理が行われ、算出結果に応じてヘッドレストの位置調整動作が変化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両の座席に設けられたヘッドレストの位置を調整するヘッドレスト位置調整方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車等の車両の座席に備えられたヘッドレストの位置を調整するものとして、下記特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1に開示されたヘッドレストは、ヘッドレスト内に配置された静電容量式のセンサを用いて、まずヘッドレストと頭部との相対位置がセンサの感度が良好な範囲となるようにヘッドレストを前方に移動させる。そして、ヘッドレストを前方に移動させた後に、頭部の高さ位置及びヘッドレストと頭部との間の距離を最適な位置にするという2段階の調整動作を行って、ヘッドレストの位置を自動調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4444815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたものでは、ヘッドレストが前方に移動している最中或いは移動直後に頭部位置が変動した場合や、環境変化や外部ノイズなどの外乱の影響でセンサ出力値が変動した場合などに、正確な頭部位置の検出ができなくなり、位置調整の精度に欠ける場合がある。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡単な構成でより高精度且つ迅速にヘッドレストの位置を目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することができるヘッドレスト位置調整装置及びヘッドレスト位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るヘッドレスト位置調整方法は、車両の座席に備えられたヘッドレストに高さ方向に並設された複数の検知電極を有する静電容量センサ部によって、前記座席に着座した人体の頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する検知工程と、位置調整手段によって、前記静電容量センサ部からの出力に基づいて、前記ヘッドレストの移動すべき目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記目標調整位置へ移動させる位置調整工程とを備え、前記位置調整工程では、前記ヘッドレストの位置調整動作中に前記目標調整位置の再算出処理が行われ、算出結果に応じて前記ヘッドレストの位置調整動作を修正することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るヘッドレスト位置調整方法によれば、既存の構造からなる静電容量センサ部からの出力に基づいて、ヘッドレストの位置調整動作中にヘッドレストの目標調整位置が再算出され算出結果に応じて位置調整動作が修正されるので、位置調整動作中に頭部がヘッドレストから離れた場合やずれた場合、或いは外乱の影響を受けた場合などにおいても、簡単な構成でより高精度且つ迅速にヘッドレストの位置を目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することができる。
【0008】
本発明の一つの実施形態においては、前記位置調整工程では、前記位置調整手段が、前記静電容量センサ部の出力に基づいて第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて移動させ、前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて移動させる。
【0009】
また、本発明の他の実施形態においては、前記位置調整工程では、前記目標調整位置の再算出処理が所定時間毎に繰り返し行われる。
【0010】
本発明の更に他の実施形態においては、前記位置調整工程では、前記ヘッドレストの前記目標調整位置への移動に先立って、前記静電容量センサ部の出力に基づき、前記ヘッドレストの高さ方向の位置を初期調整する。
【0011】
本発明の更に他の実施形態においては、前記位置調整工程では、前記位置調整手段が、前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて上下方向に移動させ、前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて前後方向に移動させ、前記ヘッドレストの上下方向の移動と前後方向の移動を交互に繰り返す。
【0012】
本発明の更に他の実施形態においては、前記位置調整工程では、前記位置調整手段が、前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて上下方向に移動させ、前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の前記第1の目標調整位置を修正し、修正後の前記第1の目標調整位置へ移動する動作を前記頭部に対する前記ヘッドレストの位置が所定範囲に入るまで繰り返し実行し、前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて前後方向に移動させ、前記第2の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の前記第2の目標調整位置を修正し、修正後の前記第2の目標調整位置へ移動する動作を前記頭部に対する前記ヘッドレストの位置が所定範囲に入るまで繰り返し実行する。
【0013】
本発明に係るヘッドレスト位置調整装置は、車両の座席に備えられたヘッドレストに高さ方向に沿って並設され、前記座席に着座した人体の頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する複数の検知電極を有する静電容量センサ部と、前記静電容量センサ部からの出力に基づいて、前記ヘッドレストを移動すべき目標調整位置を算出すると共に、前記ヘッドレストを前記目標調整位置へ移動させる位置調整手段とを備え、前記位置調整手段は、前記ヘッドレストの位置調整動作中に前記目標調整位置の再算出処理を行い、算出結果に応じて前記ヘッドレストの位置調整動作を修正することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るヘッドレスト位置調整装置によれば、既存の構造からなる静電容量センサ部からの出力に基づいて、ヘッドレストの位置調整動作中にヘッドレストの目標調整位置を再算出して算出結果に応じて位置調整動作を修正するので、位置調整動作中に頭部がヘッドレストから離れた場合やずれた場合、或いは外乱の影響を受けた場合などにおいても、簡単な構成でより高精度且つ迅速にヘッドレストの位置を目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成でより高精度且つ迅速にヘッドレストの位置を目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置を配置した車両の座席を示す図である。
【図2】同ヘッドレスト位置調整装置の検知電極のヘッドレストにおける配置態様を示す図である。
【図3】同ヘッドレスト位置調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】同ヘッドレスト位置調整装置による静電容量センサ部からの第1の出力例を示す図である。
【図5】同ヘッドレスト位置調整装置による位置調整動作モデルを示す図である。
【図6】同ヘッドレスト位置調整装置における適正領域を示す図である。
【図7】同ヘッドレスト位置調整装置による第1の位置調整動作処理を示すフローチャートである。
【図8】同ヘッドレスト位置調整装置による静電容量センサ部からの第2の出力例を示す図である。
【図9】同ヘッドレスト位置調整装置による静電容量センサ部からの第3の出力例を示す図である。
【図10】同ヘッドレスト位置調整装置におけるヘッドレストの高さ方向の位置調整方式を説明するための図である。
【図11】同ヘッドレスト位置調整装置による静電容量センサ部からの第4の出力例を示す図である。
【図12】同ヘッドレスト位置調整装置におけるヘッドレストの前後方向の距離算出角度とヘッドレストと頭部との間の距離との関係を説明するための図である。
【図13】同ヘッドレスト位置調整装置による静電容量センサ部からの第5の出力例を示す図である。
【図14】同ヘッドレスト位置調整装置による静電容量センサ部からの第6の出力例を示す図である。
【図15】同ヘッドレスト位置調整装置の他の全体構成を示すブロック図である。
【図16】同ヘッドレスト位置調整装置による第2の位置調整動作処理を示すフローチャートである。
【図17】同ヘッドレスト位置調整装置による他の位置調整動作モデルを示す図である。
【図18】同ヘッドレスト位置調整装置による第3の位置調整動作処理を示すフローチャートである。
【図19】同ヘッドレスト位置調整装置による第4の位置調整動作処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係るヘッドレスト位置調整方法及びヘッドレスト位置調整装置を詳細に説明する。
【0018】
[ヘッドレスト位置調整装置の配置態様]
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置を配置した車両の座席を示す図である。図2は、ヘッドレスト位置調整装置の検知電極のヘッドレストにおける配置態様を示す図である。図3は、ヘッドレスト位置調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、ヘッドレスト位置調整装置100は、車両などの座席(シート)40に設けられ、例えば座席40のヘッドレスト43に配置された静電容量センサ部10と、座席40の背もたれ部(シートバック)41に配置された駆動モータ44とを備えて構成されている。
【0020】
また、ヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43に配置され、静電容量センサ部10からの検出結果に基づき駆動モータ44の駆動を制御する制御部30を備えて構成されている。本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100では、制御部30は、静電容量センサ部10とモジュール化され一体的に構成されてヘッドレスト43側に配置されている。
【0021】
なお、この制御部30と駆動モータ44とは、例えばハーネス32により電気的に直接接続されているが、例えば無線などによって駆動モータ44を制御可能な状態となるように、電気的に接続された構成であってもよい。また、駆動モータ44は背もたれ部41側ではなく、ヘッドレスト43側に配置されていてもよい。
【0022】
静電容量センサ部10は、例えば基板19の一方の面側に形成された複数の検知電極11〜15と、この基板19の他方の面側に形成された検出回路20とを備えて構成されている。この静電容量センサ部10は、座席40の着座部42に着座した人体(乗員)49の頭部49aとヘッドレスト43(具体的には、ヘッドレスト43に配置された各検知電極11〜15)との間の静電容量を検知する。
【0023】
基板19は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)、リジッド基板或いはリジッドフレキシブル基板により構成されている。複数の検知電極11〜15は、例えばPET、PEN、PI、PAなどの絶縁材からなるベース基板上にパターン形成された銅、銅合金、アルミニウムなどの導電材からなる。
【0024】
これら各検知電極11〜15は、その他、メンブレン回路に形成されたり、導電性接着材(粘着材)や導電性フィルム、或いは一般的な電線等のその他の導電部材からなるものでもよい。また、設置される箇所によっては、透明電極により構成することもできる。この場合は、基板19を透明性を有するパネルやフィルム材によって形成し、各検知電極11〜15を透明電極で構成するようにすればよい。透明電極は、例えばITOやPEDOT/PSS、或いはPEDOT/TsOなどを用いることができる。
【0025】
複数の検知電極は11〜15は、図2に示すように、例えばそれぞれ矩形短冊状に形成され、その長手方向がヘッドレスト43の高さ方向に交差すると共に、ヘッドレスト43の高さ方向に沿って並設された状態でヘッドレスト43の前面側に配置されている。各検知電極11〜15は、例えば検知電極13の中心がヘッドレスト43の中心と一致するように、所定間隔毎に上記高さ方向に沿って並設されている。そして、これら検知電極11〜15には、例えばそれぞれ電極番号1〜5(N1〜N5やch1〜ch5など)が割り振られている。
【0026】
なお、検知電極11〜15は、本実施形態では5つ設けられているが、これに限定されるものではない。検知電極は、ヘッドレスト43が動いている状態でも乗員49の頭部49aの頭部位置(頭部中心位置)P(図5等参照)を検出可能な数(少なくとも2つ)だけ設けられていればよく、5つよりも多く設けられていてもよい。
【0027】
一方、静電容量センサ部10の検出回路20は、図3に示すように、各検知電極11〜15と一対一で接続された複数の静電容量検知回路21〜25を備える。各静電容量検知回路21〜25は、それぞれ検知電極11〜15によって検知された静電容量を示す情報を制御部30に出力する。
【0028】
制御部30は、検出回路20の各静電容量検知回路21〜25と接続され、これらからの情報に基づく静電容量値を利用して、乗員49の頭部位置Pを検出(演算)する演算処理回路28と、演算処理回路28からの出力に基づいて駆動モータ44の駆動を制御するモータ駆動回路31とを備えて構成されている。
【0029】
演算処理回路28は、また、検出した頭部位置Pに対し、ヘッドレスト43の位置を移動させるべく目標調整位置を算出し、算出結果に基づくモータ駆動情報をモータ駆動回路31に出力する。このように演算処理回路28は、静電容量値に基づいてヘッドレスト43と頭部49aとの間の水平方向の電極頭部間距離を算出して、頭部49aの前後方向位置を算出したり、頭部49aの鉛直方向の高さ位置を算出したりして、ヘッドレスト43の位置調整のための各種演算を行い、その結果をモータ駆動回路31に出力する。
【0030】
モータ駆動回路31は、モータ駆動情報に基づく制御信号を駆動モータ44に出力して、ヘッドレスト43を上下前後に移動させる。駆動モータ44は、例えばヘッドレスト43の支持軸43aを上下方向や前後方向に移動させてヘッドレスト43の位置を変化させる。従って、制御部30及び駆動モータ44は、検出回路20からの静電容量値に基づいて、ヘッドレスト43の位置を乗員49の頭部49aに対する目標調整位置へ移動させて調整する位置調整手段を構成する。
【0031】
なお、検出回路20の各静電容量検知回路21〜25は、各検知電極11〜15と頭部49aとの間の静電容量に応じてデューティー比が変化するパルス信号を生成すると共に平滑化して検知信号を出力する。すなわち、各静電容量検知回路21〜25は、静電容量を電圧に変換するC−V変換機能を有する。
【0032】
これら静電容量検知回路21〜25は、例えば公知のCR充放電時間を計測する回路、充電した電荷を既知のコンデンサに転送する回路、インピーダンスを測定する回路、発振回路を構成して発振周波数を計測する回路などを用いて構成することができる。
【0033】
制御部30の演算処理回路28は、例えばCPU、RAM、ROMなどを備えてなり、各静電容量検知回路21〜25からの出力に基づく静電容量値を得る。各検知電極11〜15(電極番号1〜5)の出力であるセンサ出力(V)の一例は、例えば図4に示すようなものとなる。
【0034】
この図4に示すように、例えば電極番号3の検知電極13の出力が0.15Vを超えて最も高く、電極番号1の検知電極11の出力が0.05Vを下回り最も低い値となるような出力状態の場合、例えば検知電極13と水平方向に対向する位置が頭部49aの高さ位置であるとすることができる。
【0035】
また、このようなセンサ出力を利用すれば、頭部49aの高さ位置と共に、後述するような頭部49aとヘッドレスト43との間の距離(電極頭部間距離)を算出して、頭部49aの前後位置も測定することができる。従って、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100では、静電容量センサ部10のセンサ出力を用いて、制御部30が次のような位置調整動作を行う。
【0036】
[第1の位置調整動作の概要]
図5は、ヘッドレスト位置調整装置による位置調整動作モデルを示す図である。図6は、ヘッドレスト位置調整装置における適正領域を示す図である。ここでは、ヘッドレスト43を高さ方向及び前後方向に同時に移動させる位置調整動作(全体動作1)について説明する。まず、図5(a)に示すように、頭部位置Pに対してヘッドレスト43の中心位置43Pが下方にある場合(動作1−1)について説明する。
【0037】
この動作1−1の場合、制御部30は、最初に静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得して、頭部49aの高さ位置及び前後位置を算出する。すなわち、中心位置43Pに対する頭部位置Pの高さ方向及び前後方向の距離をそれぞれ算出する。そして、その算出結果により示される頭部位置Pが、図6に示すような適正領域PS内に収まるか否かを判断すると共に、算出結果と適正領域PSとに基づいて、ヘッドレスト43を実際に高さ方向及び前後方向に移動させる距離(ヘッドレストの調整距離)を演算する。
【0038】
図6に示すように、適正領域PSは、予め設定されたヘッドレスト43からの所定距離及びヘッドレスト43の高さ方向の所定範囲により画定される領域であり、頭部位置Pがこの適正領域PS内に収まっている状態が最も好ましい。この適正領域PSは、例えば頭部位置Pのヘッドレスト43からの距離が10mm〜30mmのときは、ヘッドレスト43の中心位置43Pから上下方向にそれぞれ±20mmの範囲となる。また、頭部位置Pのヘッドレスト43からの距離が0mm〜10mmのときは、ヘッドレスト43の中心位置43Pから上下方向にそれぞれ±30mm+αの範囲となる。
【0039】
図5(a)に示す場合では、当初頭部位置Pが適正領域PS内に収まっておらず、ヘッドレスト43に対して上方位置にある。従って、図5(a)中の矢印細線(1)で示すようにヘッドレスト43を移動させるべく、矢印の先端が示す目標調整位置を設定してヘッドレスト43の位置調整動作を開始する。
【0040】
位置調整動作が開始されると、図5(a)中の矢印太線Tで示すように、頭部位置Pが適正領域PS内に収まるように、ヘッドレスト43を高さ方向及び前後方向に同時に移動させる(すなわち、この場合は斜め上方向に移動させる)。なお、矢印細線(1)〜(3)はヘッドレスト43の目標移動軌跡を示し、矢印太線Tはヘッドレスト43の実際の移動軌跡を示している。
【0041】
そして、制御部30は、位置調整動作中においても所定間隔毎に再度センサ出力を取得して、上記算出処理を行い、算出結果の判断処理を行う。判断処理の結果、頭部位置Pが矢印細線(1)で示すよりも下方にあると判断した場合、例えば図5(a)中の矢印細線(2)で示すように目標調整位置を修正し、ヘッドレスト43を矢印太線Tで示すよう移動させる(すなわち、この場合はほぼ前方向に移動させる)。
【0042】
その後、これらの処理を繰り返して、目標調整位置を修正する必要がある場合は、例えば図5(a)中の矢印細線(3)で示すように再度目標調整位置を修正して、ヘッドレスト43の位置調整動作を変化させる。最終的に、頭部位置Pが適正領域PS内に収まるようにヘッドレスト43を移動させると、その軌跡は矢印太線Tで示すよう表される。
【0043】
一方、図5(b)に示すように、頭部位置Pに対してヘッドレスト43の中心位置43Pが上方にある場合(動作1−2)では、当初頭部位置Pが適正領域PS内に収まっておらず、ヘッドレスト43に対して下方位置にある。従って、上記動作1−1の場合と同様に、図5(b)中の矢印細線(1)〜(3)で示すような目標調整位置の修正及びヘッドレスト43の位置調整動作の変化を繰り返して、頭部位置Pが適正領域PS内に収まるようにヘッドレスト43を移動させると、その軌跡は最終的に矢印太線Tで示すようになる。
【0044】
このように、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、静電容量センサ部10からの出力に基づいて、ヘッドレスト43の位置調整動作中にヘッドレスト43の目標調整位置を再算出して算出結果に応じて位置調整動作を変化させる。従って、位置調整動作中に頭部49aがヘッドレスト43から離れた場合やずれた場合、その他外乱の影響を受けた場合等でも、高精度且つ迅速にヘッドレスト43の中心位置43Pを目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することが可能である。
【0045】
[第1の位置調整動作処理の流れ]
図7は、ヘッドレスト位置調整装置による第1の位置調整動作処理を示すフローチャートである。図7に示すように、まず、制御部30は、上述したように静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得し(ステップS100)、頭部位置Pの中心位置43Pに対する高さ位置及び前後位置を算出する(ステップS102)。
【0046】
そして、制御部30は、算出結果と適正領域PSとに基づき演算されたヘッドレスト43の調整距離が、適正領域PS内であるか否かを判断する(ステップS104)。調整距離が適正領域PS内に収まっていると判断された場合(ステップS104のYes)は、ヘッドレスト43が頭部49aに対する適正位置にあると判断することができる。
【0047】
このため、ヘッドレスト43の位置調整動作を行うことなくステップS120に移行して、ヘッドレスト位置調整動作を終了するか否かを判断し(ステップS120)、終了すると判断された場合(ステップS120のYes)は、第1の位置調整動作を終了する。このステップS120での判断処理は、静電容量センサ部10からのセンサ出力の取得を更新して、例えば所定時間頭部49aの頭部位置Pが変動していないかどうかを判断することにより行われたり、車両のイグニッションスイッチやギヤポジションスイッチなどの信号を得て、位置調整動作を行う必要がないかを判断することにより行われる。
【0048】
一方、調整距離が適正領域PS内に収まっていないと判断された場合(ステップS104のNo)は、算出結果に含まれる頭部位置P(頭部49aの高さ位置、前後位置)や、適正領域PS、ヘッドレスト43の調整距離などの各種情報に基づき、ヘッドレストの初期目標調整位置を設定し(ステップS106)、設定された初期目標調整位置に向けてヘッドレスト位置調整動作を開始する(ステップS108)。
【0049】
位置調整動作を開始したら、位置調整動作中(すなわち、ヘッドレスト43の移動中)においても、例えば所定時間(0.1sec)経過後に、静電容量センサ部10から再度センサ出力を取得し(ステップS110)、頭部位置Pの中心位置43Pに対する高さ位置及び前後位置を算出する(ステップS112)。そして、ヘッドレスト43の調整距離が、適正領域PS内であるか否かを再度判断する(ステップS104)。
【0050】
調整距離が適正領域PS内に収まっていると判断された場合(ステップS114のYes)は、上記ステップS120に移行して、ヘッドレスト位置調整動作を終了するか否かを判断し、終了すると判断された場合(ステップS120のYes)は、第1の位置調整動作を終了する。
【0051】
調整距離が適正領域PS内に収まっていないと判断された場合(ステップS114のNo)は、上述したような各種情報に基づき、ヘッドレストの目標調整位置を修正設定する(ステップS116)。そして、修正設定された目標調整位置に向けてヘッドレスト位置調整動作を補正し(ステップS118)、上記ステップS110に移行して処理を繰り返す。なお、ステップS120において、ヘッドレスト位置調整動作を終了しないと判断された場合(ステップS120のNo)は、同様に上記ステップS110に移行して処理を繰り返す。
【0052】
ヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43をこのように動作させて位置調整を行うため、頭部49aにヘッドレスト43が常に追従移動するように動作させることができる。従って、高精度且つ迅速にヘッドレスト43の位置を自動的に調整することができる。
【0053】
ここで、静電容量センサ部10による第2の出力例を、図8に基づいて説明する。図8(a)は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが50mm程度である場合に、各検知電極11〜15で検知された静電容量値Cを示している。また、図8(b)は、距離Lが70mm程度である場合に、図8(c)は、距離Lが90mm程度である場合に、それぞれ検知された静電容量値Cを示している。
【0054】
図8(a)に示すように、距離Lが比較的近い50mm程度である場合は、各静電容量値Cの差が明確であり、頭部49aの頭部位置Pを正確に得ることができる。これと共に、例えば後頭部の形状(凹凸など)に応じて変化する静電容量値のグラフを得ることができる。
【0055】
このため、図8(a)に示すような場合は、静電容量センサ部10からのセンサ出力に基づき、制御部30によって頭部49aの後頭部形状を推測することができ、頭部位置Pの高さ位置を推定して得ることができる。従って、この場合は、頭部位置Pの高さ位置を算出して、この算出結果及び適正領域PSに基づき、ヘッドレスト43の高さ位置の調整を行うことができる。
【0056】
しかし、図8(b)或いは図8(c)に示すような場合は、各静電容量値Cの差が曖昧であるため、正確な頭部位置Pを得ることは難しく、ヘッドレスト43の高さ位置の調整を行うことが困難となってしまう。一方、各検知電極11〜15のうち、最上位置の検知電極15で検知された静電容量値C5と、最下位置の検知電極11で検知された静電容量値C1との差(比)は、距離Lによる影響が小さく、距離Lが50mmのときも70mmのときも同様の結果を得ることができる。
【0057】
すなわち、距離Lが70mm程度であるときも、図9(a)に示すように、両静電容量値C1,C5を比較すると、頭部位置Pがヘッドレスト43の中心位置43Pと水平方向にほぼ一致している場合は、両者共に同等の静電容量値を示すこととなる。また、頭部位置Pが中心位置43Pと水平方向に一致しなくなった場合は、図9(b)に示すように両静電容量値の差が大きくなる。
【0058】
静電容量センサ部10からのセンサ出力のうち、このようにして得られた静電容量値の差に基づいて頭部位置Pを検出し、この検出結果に基づきヘッドレスト43の高さ方向の位置を調整する位置調整方式は、例えば図10に示すように表すことができる。図10は、ヘッドレストの高さ方向の位置調整方式を説明するための図である。
【0059】
図10に示すように、静電容量値C1とC5との比αは、α=C1/(C1+C5)の式によって得ることができる。こうして得られた比αに基づいて、ヘッドレスト43の移動量(mm)を決定することができる。すなわち、頭部位置Pが中心位置43Pと水平方向にほぼ一致するときの移動量を0mmとした場合、この比αが0に近いときはヘッドレスト43を上方向(+方向)に移動させ、1に近いときは下方向(−方向)に移動させるように駆動モータ44に対して制御信号を出力する。
【0060】
このように、ヘッドレスト43の高さ方向の位置調整は、簡単な方法によって行うことができる。一方、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lは、例えばセンサ出力に基づき距離算出角度を算出して、予め設定された距離及び角度の関係プロファイルデータとこれを比較することによって、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを得ることもできる。すなわち、ヘッドレスト43の前後方向の位置調整方式は、次のように行われる。
【0061】
ここで、距離算出角度は、制御部30の演算処理回路28によって、例えば次のように求められる。すなわち、演算処理回路28は、センサ出力の静電容量値に基づいて、各検知電極11〜15の設置位置を一方の軸とすると共に各静電容量値を他方の軸とする二次元座標を演算処理用の仮想領域上に作成する。
【0062】
そして、この二次元座標上にて、各検知電極11〜15のうち、ヘッドレスト43の最上位置に配置された検知電極(例えば、検知電極15)の位置及び静電容量値を示す点A(図11参照、以下同じ。)と、最大の静電容量値が検出された検知電極(例えば、検知電極13)の位置及び静電容量値を示す点B(図11参照、以下同じ。)とを結ぶ直線ABを作成する。
【0063】
また、ヘッドレスト43の最下位置に配置された検知電極(例えば、検知電極11)の位置及び静電容量値を示す点C(図11参照、以下同じ。)と、上記点Bとを結ぶ直線CBを作成する。こうして二次元座標上に作成した直線AB及び直線CBで成す角度を距離算出角度θ(図11参照、以下同じ。)を算出する。演算処理回路28は、この距離算出角度θに基づいて距離Lを算出する。
【0064】
具体的には、二次元座標D上のセンサ出力値(静電容量値)は、次のようになる。図11(a)に示すように、電極間距離H内にある頭部位置Pからの距離Lが所定範囲内であり、ヘッドレスト43の中心位置43Pと頭部位置Pとが水平方向にほぼ正対していれば、各検知電極11〜15の出力値は検知電極13の出力値が最大となり、最上位置又は最下位置の検知電極15,11の出力値が最小となる。
【0065】
この場合、演算処理回路28は、上述したように二次元座標D上にて、検知電極15の設置位置及び出力値を示す点Aと、最大出力値が検出された検知電極13の設置位置及び出力値を示す点Bとを結ぶ直線ABを作成する。また、最下位置に配置された検知電極11の設置位置及び出力値を示す点Cと、最大出力値が検出された検知電極13の設置位置及び出力値を示す点Bとを結ぶ直線CBを作成する。
【0066】
これにより、二つの直線AB,CBにて決まる距離算出角度θを得ることができ、得られた距離算出角度θを、例えば図12に示すような距離及び角度の関係プロファイルデータと比較することにより、この距離算出角度θにより決まる距離Lを導き出すことができる。また、この距離算出角度θは、上記直線AB及び点Bから検知電極の設置位置を示す軸に向かって直交するように延びる基準直線BLで成る第1距離算出角度θ1と、この基準直線BL及び上記直線CBで成る第2距離算出角度θ2とを算出し、これらを合わせることで求めることもできる。
【0067】
すなわち、例えば各検知電極11〜15の出力値のうちの最大出力値をVmaxとし、このVmaxに対する検知電極の電極番号をNmaxとして抽出し、更に検知電極15(N)の出力値をVとすると共に検知電極11(N)の出力値をVとすると、次式(1)及び(2)によりθ1及びθ2を求めることができる。
【0068】
【数1】

【0069】
【数2】

【0070】
そして、θ=θ1+θ2を計算することにより、距離算出角度θを得ることができる。なお、図11(b)に示すように、例えば距離Lが所定範囲内であり、最下位置の検知電極11付近と頭部位置Pとが水平方向にほぼ正対していれば、最大出力値が検知電極11の出力値となることがある。
【0071】
この場合は、検知電極11の出力値のゼロ点C0及び点(最大出力値の点)BCを結ぶ直線BCC0と、この点BCと最上位置の検知電極15の設置位置及び出力値を示す点Aとを結ぶ直線ABCとが距離算出角度θ(第1距離算出角度θ1、直線ABCの傾き(鋭角の角度)θ1)を成す。
【0072】
一方、図11(c)に示すように、例えば距離Lが所定範囲内であり、最上位置の検知電極15付近と頭部位置Pとが水平方向にほぼ正対していれば、最大出力値が検知電極15の出力値となることがある。この場合は、検知電極15の出力値のゼロ点A0及び点(最大出力値の点)ABを結ぶ直線ABA0と、この点AB及び最下位置の検知電極11の設置位置と出力値とを示す点Cを結ぶ直線ABCとが距離算出角度θ(第2距離算出角度θ2、直線ABCの傾き(鋭角の角度)θ2)を成す。
【0073】
このように求めることができる距離算出角度θは、図12(a)に示すように、第1距離算出角度θ1又は第2距離算出角度θ2については相関曲線T1で表すように、距離Lが大きくなるほど大きくなるという関係を示す。同様に、図12(b)に示すように、距離算出角度θについても相関曲線T2で示すように、距離Lが大きくなるほど大きくなるという関係を示す。
【0074】
従って、ヘッドレスト位置調整装置100は、制御部30の演算処理回路28にてこの距離算出角度θ(第1及び第2距離算出角度θ1,θ2を含む、以下同じ。)を用いてヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを測定することができる。そして、この測定結果に基づいて、ヘッドレスト43の前後位置の調整を行うことができる。
【0075】
また、ヘッドレストの前後方向の位置調整方式は、上述したものの他に、次のように距離算出角度θを得て行われてもよい。図13に示すように、各検知電極11〜15のうち、最小出力値が検出された検知電極12の設置位置及び出力値を示す点Eと、最大出力値が検出された検知電極14の設置位置及び出力値を示す点Fとを結ぶ直線EFを作成する。
【0076】
更に、検知電極14の出力値のゼロ点F0と上記点Fとを結ぶ直線FF0を作成し、直線EFと直線FF0とで距離算出角度θを成し、距離Lを得るようにしてもよい。この場合、距離算出角度θは、直線EFの鋭角の傾きと同じであるため、この傾きの角度を算出すれば、距離算出角度θを得ることになる。
【0077】
また、図14(a)に示すように、最上位置の検知電極15又は最下位置の検知電極11のいずれもが最大出力値を示さない場合に、最大出力値が検出された検知電極14の設置位置及び出力値を示す点Jと、この検知電極14よりも上方に位置する検知電極のうちの最小出力値が検出された検知電極15の設置位置及び出力値を示す点Kとを結ぶ直線JKを作成する。
【0078】
そして、検知電極14の点Jとこの検知電極14よりも下方に位置する検知電極のうちの最小出力値が検出された検知電極12の設置位置及び出力値を示す点Mとを結ぶ直線JMを作成し、直線JKと直線JMとで距離算出角度θを成し、距離Lを測定するようにしてもよい。
【0079】
また、図14(b)に示すように、最上位置の検知電極15又は最下位置の検知電極11のいずれかが最大出力値を示す場合(ここでは、検知電極11の場合)は、最小出力値が検出された検知電極14の設置位置及び出力値を示す点Uと、最大出力値が検出された検知電極11の設置位置及び出力値を示す点Vとを結ぶ直線UVを作成する。
【0080】
更に、検知電極11の出力値のゼロ点V0と上記点Vとを結ぶ直線VV0を作成し、直線UVと直線VV0とで距離算出角度θを成し、距離Lを測定するようにしてもよい。この場合も、距離算出角度θは、直線UVの鋭角の傾きと同じであるため、この傾きの角度を算出すれば距離算出角度θを得ることができる。
【0081】
また、図14(c)に示すように、最上位置の検知電極15又は最下位置の検知電極11のいずれかが最大出力値を示す場合(ここでは、検知電極15の場合)は、最小出力値が検出された検知電極12の設置位置及び出力値を示す点Rと、最大出力値が検出された検知電極15の設置位置及び出力値を示す点Sとを結ぶ直線RSを作成する。
【0082】
更に、検知電極15の出力値のゼロ点S0と上記点Sとを結ぶ直線SS0を作成し、直線RSと直線SS0とで距離算出角度θを成し、距離Lを測定するようにしてもよい。この場合も、距離算出角度θは、直線RSの鋭角の傾きと同じであるため、この傾きの角度を算出すれば距離算出角度θを得ることができる。
【0083】
なお、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100における静電容量センサ部10の検出回路20は、次のように構成されていてもよい。図15は、ヘッドレスト位置調整装置の他の全体構成を示すブロック図である。図15に示すように、検出回路20は、各検知電極11〜15と接続された時分割回路26と、この時分割回路26により各検知電極11〜15にてそれぞれ異時に検知された静電容量を示す情報を制御部30の演算処理回路28にそれぞれ出力する静電容量検知回路27とを備えて構成されている。
【0084】
このように検出回路20を構成すれば、頭部位置Pに基づいてヘッドレスト43の高さ位置を検出する場合、時分割回路26を介して各検知電極11〜15にて静電容量を順番に走査し、その結果に基づき頭部位置Pを得てヘッドレスト43の高さ位置を算出することが可能となる。
【0085】
[第2の位置調整動作の流れ]
図16は、ヘッドレスト位置調整装置による第2の位置調整動作処理を示すフローチャートである。まず、制御部30は、静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得して(ステップS94)、頭部位置Pの中心位置43Pに対する高さ位置を算出する(ステップS96)。
【0086】
そして、算出結果と適正領域PSとを比較して、ヘッドレスト43の高さ位置を初期調整し(ステップS98)、図7に示したフローチャートのステップS100に移行して、以降の処理を実行する。このように、第2の位置調整動作では、上記ステップS102での高さ位置及び前後位置の算出処理の前に、ヘッドレスト43の高さ位置を予め初期調整しておく。
【0087】
このようにすることで、頭部位置Pが静電容量センサ部10の全体面から高さ方向に外れている場合などに、前後位置の検出精度が著しく低下してしまい、ヘッドレスト43の位置調整精度が全体として悪化してしまうことを確実に防止することができる。すなわち、予め高さ位置を初期調整しておくことで、ステップS106における初期目標調整位置の設定精度を向上させることができる。なお、上記ステップS98における高さ位置の初期調整は、このような趣旨からすれば、ステップS108以降の位置調整動作中の高さ位置の調整よりも粗く行うことができる。
【0088】
[第3の位置調整動作の概要]
図17は、ヘッドレスト位置調整装置による他の位置調整動作モデルを示す図である。ここでは、ヘッドレスト43を高さ方向及び前後方向に異時に移動させる位置調整動作(全体動作2)について説明する。図17(a)及び(b)に示すように、頭部位置Pに対してヘッドレスト43の中心位置43Pが下方にある場合(動作2−1)及び上方にある場合(動作2−2)について説明する。
【0089】
これら動作2−1,2−2の場合、制御部30は、最初に静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得して、頭部49aの高さ位置を算出する。すなわち、中心位置43Pに対する頭部位置Pの高さ方向の距離を算出する。そして、その算出結果と適正領域PSとを比較して、ヘッドレスト43を実際に高さ方向に移動させて初期調整する。
【0090】
次に、静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得して、頭部49aの前後位置を算出する。すなわち、中心位置43Pに対する頭部位置Pの前後方向の距離を算出する。そして、その算出結果と適正領域PSとを比較して、ヘッドレスト43を実際に前後方向に移動させて初期調整する。
【0091】
その後、ヘッドレスト位置調整動作を開始して、頭部位置Pが適正領域PS内に収まるか否かを高さ位置、前後位置それぞれ別々に判断して、高さ位置の位置調整動作と前後位置の位置調整動作とを異時に実行する。
【0092】
図17(a)に示す場合では、当初頭部位置Pが適正領域PS内に収まっておらず、ヘッドレスト43に対して上方位置にある。従って、ヘッドレスト43を移動させる場合は、図17(a)中の矢印細線(1)で示すように、例えば所定時間毎に高さ位置及び前後位置について目標調整位置の設定を繰り返してヘッドレスト43の位置調整動作を継続する。この場合、最終的なヘッドレスト43の実際の移動軌跡は、矢印太線Tで示すように階段状になる。
【0093】
一方、図17(b)に示す場合では、当初頭部位置Pが適正領域PS内に収まっておらず、ヘッドレスト43に対して下方位置にある。従って、上記と同様に、図17(b)中の矢印細線(1)で示すような目標調整位置の設定を繰り返して、頭部位置Pが適正領域PS内に収まるようにヘッドレスト43を移動させて位置調整動作を継続すると、その軌跡は最終的に矢印太線Tで示すようになる。
【0094】
このように位置調整動作を変化させるようにしても、位置調整動作中に頭部49aがヘッドレスト43から離れた場合やずれた場合、その他外乱の影響を受けた場合等においても、高精度且つ迅速にヘッドレスト43の中心位置43Pを目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することができる。
【0095】
[第3の位置調整動作処理の流れ]
図18は、ヘッドレスト位置調整装置による第3の位置調整動作処理を示すフローチャートである。この第3の位置調整動作は、高さと前後の調整をそれぞれ順番に行う場合の処理を示している。図18に示すように、まず、制御部30は、上述したように静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得し(ステップS200)、頭部位置Pの中心位置43Pに対する高さ位置を算出して(ステップS202)、ヘッドレスト43の高さ位置を初期調整する(ステップS204)。
【0096】
次に、静電容量センサ部10からのセンサ出力を取得し(ステップS206)、頭部位置Pの中心位置43Pに対する前後位置を算出して(ステップS208)、ヘッドレスト43の前後位置を初期調整する(ステップS210)。高さ位置及び前後位置を初期調整したら、センサ出力を取得する(ステップS212)と共に、目標高さ位置を算出する(ステップS214)。
【0097】
そして、制御部30は、算出結果と適正領域PSとに基づき演算されたヘッドレスト43の高さ位置の調整距離が、適正領域PS内であるか否かを判断する(ステップS216)。調整距離が適正領域PS内に収まっていると判断された場合(ステップS216のYes)は、ヘッドレスト43が頭部49aに対する適正位置にあると判断することができるので、ヘッドレスト43の高さ位置の調整を行わずに再度センサ出力を取得する(ステップS220)。
【0098】
一方、調整距離が適正領域PS内に収まっていないと判断された場合(ステップS216のNo)は、算出結果に含まれる頭部位置P(頭部49aの高さ位置)や、適正領域PS、ヘッドレスト43の調整距離などの各種情報に基づき、ヘッドレスト43の高さ位置を目標高さ位置に合わせて調整し(ステップS218)、上記ステップS220に移行する。
【0099】
制御部30は、ステップS220において再度センサ出力を取得したら、目標前後位置を算出し(ステップS222)、算出結果と適正領域PSとに基づき演算されたヘッドレスト43の前後位置の調整距離が、適正領域PS内であるか否かを判断する(ステップS224)。
【0100】
調整距離が適正領域PS内に収まっていると判断された場合(ステップS224のYes)は、ヘッドレスト43が頭部49aに対する適正位置にあると判断することができるので、ヘッドレスト43の前後位置の調整を行わずに、算出結果や適正領域PSに基づいて、高さ前後の調整距離がどちらも適正領域PS内であるか否かを判断する(ステップS228)。
【0101】
一方、調整距離が適正領域PS内に収まっていないと判断された場合(ステップS224のNo)は、算出結果に含まれる頭部位置P(頭部49aの前後位置)や、適正領域PS、ヘッドレスト43の調整距離などの各種情報に基づき、ヘッドレスト43の前後位置を目標前後位置に合わせて調整し(ステップS226)、上記ステップS228に移行する。
【0102】
ステップS228において、高さ前後の調整距離がどちらも適正領域PS内であると判断された場合(ステップS228のYes)は、ヘッドレスト位置調整動作を終了するか否かを判断し(ステップS230)、終了すると判断された場合(ステップS230のYes)は、第3の位置調整動作を終了する。このステップS230での判断処理は、上記ステップS120と同様に行われる。
【0103】
なお、ステップS228において、高さ前後の調整距離のいずれかが適正領域PS内ではないと判断された場合(ステップS228のNo)、及びステップS230において、ヘッドレスト位置調整動作を終了しないと判断された場合(ステップS230のNo)は、上記ステップS212に移行して処理を繰り返す。
【0104】
ヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43をこのように高さ方向及び前後方向に別々に動作させて位置調整を行うこともできるため、頭部49aにヘッドレスト43が常に追従移動するように動作させることができる。従って、高精度且つ迅速にヘッドレスト43の位置を自動的に調整することができる。
【0105】
[第4の位置調整動作処理の流れ]
図19は、ヘッドレスト位置調整装置による第4の位置調整動作処理を示すフローチャートである。なお、図19に示すフローチャートでは、図18に示したフローチャートとステップS200〜ステップS212が共通する。このため、ここではステップS212以降の処理から説明を開始する。この第4の位置調整動作は、高さと前後の調整をそれぞれ収束するまで順番に行う場合の処理を示している。
【0106】
制御部30は、高さ位置及び前後位置を初期調整したら、センサ出力を取得する(ステップS312)と共に、目標高さ位置を算出し(ステップS314)、算出結果と適正領域PSとに基づき演算されたヘッドレスト43の高さ位置の調整距離が、適正領域PS内であるか否かを判断する(ステップS316)。
【0107】
調整距離が適正領域PS内に収まっていると判断された場合(ステップS316のYes)は、ヘッドレスト43が頭部49aに対する適正位置にあると判断することができるので、ヘッドレスト43の高さ位置の調整を行わずに再度センサ出力を取得する(ステップS320)。
【0108】
一方、調整距離が適正領域PS内に収まっていないと判断された場合(ステップS316のNo)は、算出結果に含まれる頭部位置P(頭部49aの高さ位置)や、適正領域PS、ヘッドレスト43の調整距離などの各種情報に基づき、ヘッドレスト43の高さ位置を目標高さ位置に合わせて調整し(ステップS318)、上記ステップS312に移行して処理を繰り返す。
【0109】
制御部30は、ステップS320において再度センサ出力を取得したら、目標前後位置を算出し(ステップS322)、算出結果と適正領域PSとに基づき演算されたヘッドレスト43の前後位置の調整距離が、適正領域PS内であるか否かを判断する(ステップS324)。
【0110】
調整距離が適正領域PS内に収まっていると判断された場合(ステップS324のYes)は、ヘッドレスト43が頭部49aに対する適正位置にあると判断することができるので、ヘッドレスト43の前後位置の調整を行わずに、ヘッドレスト位置調整動作を終了するか否かを判断し(ステップS328)、終了すると判断された場合(ステップS328のYes)は、第4の位置調整動作を終了する。このステップS328での判断処理は、上記ステップS120やステップS230と同様に行われる。
【0111】
一方、調整距離が適正領域PS内に収まっていないと判断された場合(ステップS324のNo)は、算出結果に含まれる頭部位置P(頭部49aの前後位置)や、適正領域PS、ヘッドレスト43の調整距離などの各種情報に基づき、ヘッドレスト43の前後位置を目標前後位置に合わせて調整し(ステップS326)、上記ステップS320に移行して処理を繰り返す。なお、ステップS328において、ヘッドレスト位置調整動作を終了しないと判断された場合(ステップS328のNo)は、上記ステップS312に移行して処理を繰り返す。
【0112】
以上述べたように、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、既存の構造からなる静電容量センサ部10からのセンサ出力に基づいて、ヘッドレスト43の位置調整動作中にヘッドレスト43の目標調整位置を再算出して算出結果に応じて位置調整動作を変化させる。従って、位置調整動作中に頭部49aがヘッドレスト43から離れた場合やずれた場合、或いは外乱の影響を受けた場合などにおいても、簡単な構成でより高精度且つ迅速にヘッドレストの位置を目標調整位置に対して正確且つ自動的に調整することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 静電容量センサ部
11〜15 検知電極
19 基板
20 検出回路
21〜25 静電容量検知回路
26 時分割回路
27 静電容量検知回路
28 演算処理回路
30 制御部
31 モータ制御回路
43 ヘッドレスト
44 駆動モータ
49 人体(乗員)
49a 頭部
100 ヘッドレスト位置調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に備えられたヘッドレストに高さ方向に並設された複数の検知電極を有する静電容量センサ部によって、前記座席に着座した人体の頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する検知工程と、
位置調整手段によって、前記静電容量センサ部からの出力に基づいて、前記ヘッドレストの移動すべき目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記目標調整位置へ移動させる位置調整工程とを備え、
前記位置調整工程では、
前記ヘッドレストの位置調整動作中に前記目標調整位置の再算出処理が行われ、算出結果に応じて前記ヘッドレストの位置調整動作を修正する
ことを特徴とするヘッドレスト位置調整方法。
【請求項2】
前記位置調整工程では、
前記位置調整手段が、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて移動させ、
前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて移動させる
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト位置調整方法。
【請求項3】
前記位置調整工程では、前記目標調整位置の再算出処理が所定時間毎に繰り返し行われる
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト位置調整方法。
【請求項4】
前記位置調整工程では、前記ヘッドレストの前記目標調整位置への移動に先立って、前記静電容量センサ部の出力に基づき、前記ヘッドレストの高さ方向の位置を初期調整する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整方法。
【請求項5】
前記位置調整工程では、
前記位置調整手段が、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて上下方向に移動させ、
前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて前後方向に移動させ、
前記ヘッドレストの上下方向の移動と前後方向の移動を交互に繰り返す
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト位置調整方法。
【請求項6】
前記位置調整工程では、
前記位置調整手段が、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて上下方向に移動させ、
前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の前記第1の目標調整位置を修正し、修正後の前記第1の目標調整位置へ移動する動作を前記頭部に対する前記ヘッドレストの位置が所定範囲に入るまで繰り返し実行し、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて前後方向に移動させ、
前記第2の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の前記第2の目標調整位置を修正し、修正後の前記第2の目標調整位置へ移動する動作を前記頭部に対する前記ヘッドレストの位置が所定範囲に入るまで繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト位置調整方法。
【請求項7】
車両の座席に備えられたヘッドレストに高さ方向に沿って並設され、前記座席に着座した人体の頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する複数の検知電極を有する静電容量センサ部と、
前記静電容量センサ部からの出力に基づいて、前記ヘッドレストを移動すべき目標調整位置を算出すると共に、前記ヘッドレストを前記目標調整位置へ移動させる位置調整手段とを備え、
前記位置調整手段は、
前記ヘッドレストの位置調整動作中に前記目標調整位置の再算出処理を行い、算出結果に応じて前記ヘッドレストの位置調整動作を修正する
ことを特徴とするヘッドレスト位置調整装置。
【請求項8】
前記位置調整手段は、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて移動させ、
前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて移動させる
ことを特徴とする請求項7記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項9】
前記位置調整手段は、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて上下方向に移動させ、
前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて前後方向に移動させ、
前記ヘッドレストの上下方向の移動と前後方向の移動を交互に繰り返す
ことを特徴とする請求項7記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項10】
前記位置調整手段は、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の第1の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第1の目標調整位置へ向けて上下方向に移動させ、
前記第1の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの上下方向の前記第1の目標調整位置を修正し、修正後の前記第1の目標調整位置へ移動する動作を前記頭部に対する前記ヘッドレストの位置が所定範囲に入るまで繰り返し実行し、
前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の第2の目標調整位置を算出し、前記ヘッドレストを前記第2の目標調整位置へ向けて前後方向に移動させ、
前記第2の目標調整位置への移動中の前記静電容量センサ部の出力に基づいて前記ヘッドレストの前後方向の前記第2の目標調整位置を修正し、修正後の前記第2の目標調整位置へ移動する動作を前記頭部に対する前記ヘッドレストの位置が所定範囲に入るまで繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項7記載のヘッドレスト位置調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−43608(P2013−43608A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184276(P2011−184276)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】