説明

ヘリオスタット制御用の光検出装置

【課題】1つの光検出センサで制御可能なヘリオスタット制御用の光検出装置を提供する。
【解決手段】中間開口9をシャッター11により均等に半分ずつ開口させ、各開口部分を通過してくる太陽光Lを光検出センサ8により交互に検出し、交互に検出した受光量が等しい場合には、太陽光Lが光検出センサ8に真っ直ぐ向いているため、ヘリオスタット1の反射鏡3が光検出センサ8側に真っ直ぐ向いていると判断し、異なっている場合は傾いていると判断して、制御部13からそれを是正するようにヘリオスタット1へ信号を出力する。1つの光検出センサ8による受光量で制御するため、光検出センサ8の性能のバラツキの影響を受けず、正確な制御が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘリオスタット制御用の光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘリオスタットの反射鏡を所定の方向へ指向させるための光検出装置としては、赤緯方向及び赤経方向にそれぞれ設けられている。各方向における光検出装置は制御する方向性が90°装置するだけで同じ構造である。すなわち、ボックスの一面に太陽光導入用のスリットを形成し、そこから導入した太陽光をボックスの内部底面に設けた2つの光検出センサにて検出する。スリットを通過した太陽光は一定幅をもつ実質的な平行光束であるためスリット位置と入射方向の関係により各光検出センサでの受光量が変化する。そのため、各光検出センサでの受光量が等しくなるように、反射鏡を制御している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−333003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、1つの光検出装置に2つの光検出センサを用い、2つの光検出センサの受光量が等しくなるように制御しているが、2つの光検出センサ自体に受光性能のバラツキがある場合には、正確な制御が行えない。例えば、光検出センサの温度特性等の相違により、同じ温度環境において、異なった性能を示し精密な差動動作が困難な場合がある。さらに、入射方向が大きくはずれると光検出センサが太陽光を検出することができず反射鏡の制御が困難となる場合もある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、1つの光検出センサで制御可能なヘリオスタット制御用の光検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ボックスの一面にヘリオスタットの反射鏡にて反射された太陽光を導入するスリットを形成すると共に、ボックスの内部底面に1つの光検出センサを設け、且つボックスの内部に中間開口を有する遮蔽壁を設け、該中間開口に中間開口を均等に半分ずつ開口させるシャッターを移動自在に設け、シャッターと光検出センサとの間にスリット像を光検出センサの表面に結像可能なレンズを設け、光検出センサの受光量をシャッターの2つの位置ごとに取得して制御部へ出力し、制御部にてシャッターの2つの位置における受光量が等しくなるように信号を出力することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、赤緯方向用と赤経方向用の2つが隣接状態で設けられ、且つそれぞれのシャッターが1つの駆動部により連動していることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、シャッターが一方向へ連続回転する回転式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ボックスの内部に設けられた中間開口をシャッターにより均等に半分ずつ開口させるようにし、開口した部分を通過して光検出センサに達する太陽光の受光量を検出している。そして、シャッターの2つの位置に対応して開口した中間開口の各半分を通過して検出される太陽光の受光量が等しい場合には、ヘリオスタットの反射鏡で反射された太陽光が光検出センサに真っ直ぐ向いているため、ヘリオスタットの反射鏡が光検出センサ側に真っ直ぐ向いていると判断し、異なっている場合は光検出センサに対して傾いていると判断して、制御部よりヘリオスタットへ信号を出力するようにしている。1つの光検出センサによる受光量で制御しているため、光検出センサの性能のバラツキの影響を受けず、正確な制御が行える。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、隣接状態で設けられた赤緯方向用及び赤経方向用のシャッターが1つの駆動部により連動しているため、駆動部が1つで済み、コストの面で有利である。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、シャッターが一方向へ連続回転する回転式であるため、シャッターの駆動が容易であり、赤緯方向用と赤経方向用の同時操作も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1〜図9は、本発明の第1実施形態を示す図である。ヘリオスタット1は架台2と反射鏡3から主に構成されている。このヘリオスタット1は赤道儀タイプで、反射鏡3は架台2に対して、太陽の日周運動に関連する赤経方向Aに図示せぬ極軸を中心に回転自在で、且つ季節運動に関連する赤緯方向Bにも回転自在である。
【0012】
反射鏡3の前面には赤緯方向A用及び赤経方向B用の光検出装置4、5がそれぞれ上下一体的に形成され、架台2に対して支持されている。従って、反射鏡3は架台2に対して可動だが、光検出装置4、5は不動である。光検出装置4、5には反射鏡3で反射された太陽光Lが所定の角度で当たるようになっている。
【0013】
光検出装置4、5の先には、反射鏡3で反射された太陽光Lを向けたい目標点(図示せず)があり、反射鏡3で反射された太陽光Lの一部が真っ直ぐの角度で光検出装置4、5を指向した際に、光検出装置4、5に当たらずに通り過ぎた太陽光Lがその目標点に当たるようになっている。すなわち、各光検出装置4,5を通る反射光Lの延長上に目標点が位置づけられるように反射鏡3の位置(角度)が制御される。また、両光検出装置4、5は向きが90°相違するだけで、同じ構造のため、以下赤経方向A用の光検出装置4を代表して説明する。
【0014】
光検出装置4は、1つの遮光された直方体状のボックス6を有し、その反射鏡3側の一面に太陽光導入用のスリット7が形成されている。スリット7は赤経方向Aに交差する方向を長手方向として形成されている。ボックス6の内部底面には1つの光検出センサ8が設けられている。この光検出センサ8は光の量を検出できるものであれば何でも良く、太陽電池なども良い。
【0015】
ボックス6の内部には正方形の中間開口9を有する遮蔽壁10が設けられている。この中間開口9には往復スライドするシャッター11が設けられ、このシャッター11が往復移動することにより、中間開口9を均等に半分ずつ開口させることができる。シャッター11が移動する範囲の両側には、それぞれスイッチSW1、SW2が設けられ、シャッター11が移動によりスイッチSW1、SW2を押すことによりシャッター11の位置を知ることができる。シャッター11の位置により、中間開口9のどちら側半分が開いているか知ることができる。
【0016】
シャッター11と光検出センサ8との間には中間開口9の開口された部分より通過して太陽光Lを集光させ、光検出センサ8の表面にスリット7の像を結像可能なレンズ12が設けられている。スリット7、遮蔽壁10、レンズ12、光検出センサ8はボックス6の主軸(図中の鎖線)に沿って配置される。したがって、もしスリット7とレンズ12との間に何の障害物も無い場合は、光検出センサ8の受光面上にスリット7の実像の位置が固定される関係にあるため、スリット7を通過してレンズ7に達した太陽光Lは、そのまま平行光束として常に受光面の所定の範囲内に到達する。
【0017】
次に作用を説明する。ヘリオスタット1の反射鏡3で反射され、光検出装置4に向かう太陽光Lがスリット7から真っ直ぐボックス6の内部に入射しない場合は、反射鏡3が真っ直ぐ光検出装置4側を向いていない場合であり、反射鏡3で反射された太陽光Lは意図する方向へ指向していない。
【0018】
このような場合を示しているのが図4及び図5である。図4のように太陽光Lが主軸からずれて傾いた方を開口するようにシャッター11がスライドしている場合(シャッター11がスイッチSW1を押している場合)は、光検出センサ8による受光量a1が多い(図8参照)。図5はシャッター11が逆側へスライドした場合(シャッター11がスイッチSW2を押している場合)で、この場合はシャッター11により太陽光Lが全て遮断させるため、光検出センサ8による受光量b1がほとんど無い(図8参照)。太陽光Lの乱反射分が光検出センサ8に到達するため受光量b1は完全なゼロにはならない。
【0019】
各シャッター11の位置は、シャッター11が対応するスイッチSW1、SW2を押すことにより知ることができるため、押されたスイッチSW1、SW2と、その時の光検出センサ8の受光量a1、b1から、太陽光Lがどちらに傾いているか知ることができる。すなわち、受光量a1、b1が不均等であることから、太陽光Lが傾いていることを知ることができ、どちらが大きいかにより傾き方向を知ることができる。従って、光検出センサ8に接続された制御部13で比較演算して、どちら側に傾いている検知して、両方の場合の受光量が等しくなるように、制御部13からヘリオスタット1へ信号を出力し、反射鏡3が光検出装置4に対して真っ直ぐになるように制御すれば、受光量a2、a3・・・と、受光量b2、b3、b4・・・がだんだん等しくなるように変化する。
【0020】
本実施形態の制御部13における比較演算は、光検出センサ8の出力を一対のサンプルホールド回路(図示せず)を介して二系統の受光量の信号を差動増幅器(図示せず)で比較することにより実現する。すなわち、スイッチSW1のONに相応して光検出センサ8の受光量a1,a2,a3等が順次第1のサンプルホールド回路でサンプルおよびホールドされ、スイッチSW2のONに相応して光検出センサ8の受光量b1,b2,b3等が順次第2のサンプルホールド回路でサンプルおよびホールドされこれらが差動増幅器に入力される。したがって、差動増幅器は二系統の受光量の差を検出してヘリオスタット1をフィードバック制御する。
【0021】
反射鏡3が光検出装置4に対して真っ直ぐになると、反射光3で反射された太陽光Lも主軸に沿って真っ直ぐになるため、図6及び図7に示すように、シャッター11がどの位置にあっても、光検出センサ8による受光量a1、a2、a3・・・と、受光量b1、b2、b3・・・は等しくなる(図9参照)。以上のような制御部13の機能により、太陽の位置が変化しても、この状態が維持されるため、反射鏡3で反射された太陽光Lは光検出装置4側へ真っ直ぐに向いて、太陽光Lを予め決められた方向へ反射させることができる。尚、赤緯方向Bでの光検出装置5の場合も同様である。
【0022】
シャッター11をスライドさせるタイミング(中間開口9を半分ずつ切り換えるタイミング)としては、あまり長くすると制御の精度が低下するため、4秒以内の切り換えが好適である。
【0023】
この実施形態によれば、1つの光検出センサ8による受光量で制御しているため、光検出センサ8の性能のバラツキの影響を受けず、正確な制御が行える。さらに、レンズ12によりスリット7の実像が光検出センサ8の受光面に結ばれる構成となっているので、太陽光Lが主軸から大きく外れても太陽光Lを検出することができるため制御の信頼性が向上する。
【0024】
なお、本実施例においては、シャッター11の開閉(位置)を検出するスイッチSW1,SW2として機械的なスイッチ素子について説明したが、フォトカプラ等の非接触型センサをスイッチとして使用してもよい。以下の実施例においても同様である。
【0025】
(第2実施形態)
図10及び図11は、本発明の第2実施例を示す図である。本実施形態に係る光検出装置14、15は、前記第1実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0026】
この実施形態に係る光検出装置14、15は、赤緯方向A用及び赤経方向B用としてL型に組み合わせられたもので、各光検出装置14、15のシャッター11は平行リンク16により一辺が支持されている。平行リンク16の他端は回動自在に支持されている。光検出装置14、15の間には、モータ(駆動部)17により所定角度往復回転する回転板18が設けられ、この回転板18と前記各光検出装置14、15の各平行リンク16の一部がそれぞれアーム19、20により連結されている。
【0027】
従って、この回転板18を所定角度だけ往復回転させることにより、2つ光検出装置14、15の各シャッター11が連動してスライドし、中間開口9を半分ずつ開口させる。1つのモータ17で、2つのシャッター11を同時操作することができるため、コストの面で有利である。
【0028】
(第3実施形態)
図12及び図13は、本発明の第3実施例を示す図である。本実施形態も、先の実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0029】
この実施形態に係る光検出装置21、22では、太陽光を導入するボックスの一面側が円形の回転カバー23で形成されている。光検出装置21が赤経方向Aの制御用で、光検出装置22が赤緯方向Bの制御用である。回転カバー23には、8つの開口24、25が角度45°ずつ変位した状態で円周方向に形成されている。スイッチSW1、SW2を作動させる長孔26、27も形成されている。
【0030】
8つの開口24、25は1つごとに半径方向で位置が交互に相違している。従って、回転カバー23を回転させることにより、各開口24、25の隣接部分が中間開口9を半分ずつ隠すことになりシャッターとして機能する。回転カバー23は一定方向へ連続回転するようになっている。
【0031】
回転カバー23を一定方向へ連続回転させることにより、中間開口9を半分ずつ交互に開口させることができる。中間開口9の半分だけ開口させた状態を、スイッチSW1、SW2が長孔26、27に対応することで検出することができる。
【0032】
以上のような構造から、光検出センサ8の受光量を交互に検出して比較することにより、先の実施形態と同様に、正確な制御が行える。特に、この実施形態では、シャッターが回転式であるため、シャッターの駆動が容易であり、赤緯方向用と赤経方向用の同時操作ができる。
【0033】
以上の実施形態では、スイッチSW1、SW2が長孔26、27に対応することにより、中間開口9の半分開口状態を認識できるようにしたが、これに限定されず、回転カバー23の回転位置を別のセンサーにより検出することにより、中間開口9の半分開口状態を認識しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヘリオスタットを示す斜視図。
【図2】光検出装置の縦断面図。
【図3】光検出装置の横断面図。
【図4】傾いた太陽光が導入された状態を示す断面図。
【図5】傾いた太陽光がシャッターで遮蔽された状態を示す断面図。
【図6】真っ直ぐに導入された太陽光の一部をシャッターにより遮蔽した状態を示す断面図。
【図7】真っ直ぐに導入された太陽光の一部を別の位置のシャッターにより遮蔽した状態を示す断面図。
【図8】傾いた太陽光の場合の受光量を示すグラフ。
【図9】真っ直ぐな太陽光の場合の受光量を示すグラフ。
【図10】第2実施形態に係る光検出装置を示す説明図。
【図11】光検出装置のシャッターが別の状態を示す説明図。
【図12】第3実施形態に係る光検出装置を示す側面図。
【図13】シャッターが回転した状態を示す図12相当の側面図。
【符号の説明】
【0035】
1 ヘリオスタット
3 反射鏡
4、5、14、15、21、22 光検出装置
6 ボックス
7 スリット
8 光検出センサ
9 中間開口
10 遮蔽壁
11 シャッター
12 レンズ
13 制御部
17 モータ(駆動部)
23 回転カバー
SW1、SW2 スイッチ
A 赤経方向
B 赤緯方向
L 太陽光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスの一面にヘリオスタットの反射鏡にて反射された太陽光を導入するスリットを形成すると共に、ボックスの内部底面に1つの光検出センサを設け、且つボックスの内部に中間開口を有する遮蔽壁を設け、該中間開口に中間開口を均等に半分ずつ開口させるシャッターを移動自在に設け、シャッターと光検出センサとの間にスリット像を光検出センサの受光面に結像可能なレンズを設け、光検出センサの受光量をシャッターの2つの位置ごとに取得して制御部へ出力し、制御部にてシャッターの2つの位置における受光量が等しくなるように信号を出力することを特徴とするヘリオスタット制御用の光検出装置。
【請求項2】
赤緯方向用と赤経方向用の2つが隣接状態で設けられ、且つそれぞれのシャッターが1つの駆動部により連動していることを特徴とする請求項1記載のヘリオスタット制御用の光検出装置。
【請求項3】
シャッターが一方向へ連続回転する回転式であることを特徴とする請求項1記載のヘリオスタット制御用の光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−54209(P2010−54209A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216404(P2008−216404)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】