説明

ヘリコプタのロータ

【課題】部品点数・部材量が少なく小型・軽量性に優れ、耐久性、性能維持性に優れたヘリコプタのロータを提供する。
【解決手段】回転翼10のピッチ動作とスタビライザ11の揺動動作とをリンクさせるリンク機構は、回転翼のピッチ軸から離れて回転翼に固定配置された第一当接子a1と、ピッチ軸から離れて回転翼に固定配置され、第一当接子とピッチ軸を基準に逆側の等距離に配設された第二当接子a2と、スタビライザの揺動軸から離れてスタビライザに固定配置された第三当接子a3と、揺動軸から離れてスタビライザに固定配置され、第三当接子と揺動軸を基準に逆側の等距離に配設された第四当接子a4とを有する。少なくとも飛行時に、第一当接子と第三当接子、第二当接子と第四当接子とがマスト軸方向の押圧力成分を有して当接し、滑動することにより、ピッチ動作と揺動動作とをリンクさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーソ式のスタビライザを有するヘリコプタのロータに係り、特に小型玩具用に適した簡素なロータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シーソ式のスタビライザを有するロータを備えたヘリコプタが記載されている。
周知のように、飛行中の外乱によりマストの角度に変化が生じても、スタビライザは慣性モーメントにより略水平を持続しようとするのでスタビライザのマストに対する相対角が変化し、このスタビライザのマストに対するシーソ動作により機体を水平に戻すように回転翼をサイクリックピッチコントロールにより操舵する。このスタビライザの作用により水平安定性が向上する。このシーソ式のスタビライザは小さな機体ではよく用いられている。
【0003】
スタビライザにより、回転翼を操舵するために、両者はリンクされる。RCヘリ一般においては、回転翼とスタビライザとは、リンクロッドにより連結され、リンクロッドの両端においてユニバーサルジョイント(ボールジョイント)される。特許文献1記載に記載のヘリコプタにあっても、リンクロッドが用いられている。特許文献1記載に記載のヘリコプタにあっては、主回転翼部(4)、補助回転翼部(同文献中符号5)、ロッド(31)がそれぞれ順に回転翼、スタビライザ、リンクロッドに相当する。ロッド(31)の両端に形成された孔が主回転翼部(4)及び補助回転翼部(5)に設けられたレバーアーム(34,37)の先端に外嵌されてジョイントされている。
【特許文献1】特開2007−191144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の回転翼とスタビライザとのリンク機構では、次のような課題がある。
リンクロッドに長さが必要であり、ロータが高さ方向に大型化し、構成部材の重量も多くなる。
また、回転翼とスタビライザとがリンクロッドにより連結されているため、ロータが衝突したとき、過大な荷重が回転翼やスタビライザ、リンクロッドに負荷され、回転翼やスタビライザ、レバーアームやリンクロッド、そのジョイント部分の塑性変形や破損のおそれがある。リンク機構部が塑性変形すると、飛行性能が変化してしまい、性能維持性が劣る。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、部品点数・部材量が少なく小型・軽量性に優れ、耐久性、性能維持性に優れたヘリコプタのロータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、回転翼と、スタビライザと、前記回転翼及び前記スタビライザをマストに取り付け、前記回転翼をピッチ変化自在に軸支し、前記スタビライザをその両端がマスト軸方向に相補的に揺動自在に軸支するハブとを備え、前記回転翼のピッチ動作と前記スタビライザの揺動動作とをリンクさせるリンク機構が構成されており、
前記リンク機構は、
前記ピッチ軸から離れて前記回転翼に固定配置された第一当接子と、
前記ピッチ軸から離れて前記回転翼に固定配置され、前記第一当接子と前記ピッチ軸を基準に逆側に配設された第二当接子と、
前記揺動軸から離れて前記スタビライザに固定配置された第三当接子と、
前記揺動軸から離れて前記スタビライザに固定配置され、前記第三当接子と前記揺動軸を基準に逆側に配設された第四当接子とを有し、
少なくとも飛行時に、前記第一当接子と前記第三当接子、前記第二当接子と前記第四当接子とがマスト軸方向の押圧力成分を有して当接し、滑動することにより、前記ピッチ動作と前記揺動動作とをリンクさせるヘリコプタのロータである。
【0007】
請求項2記載の発明は、マスト軸方向に見て前記ロータのピッチ軸と前記スタビライザの揺動軸とが交差し、前記第一当接子及び前記第二当接子の当接端は前記ピッチ軸に平行な線状に形成され、前記第三当接子及び前記第四当接子の当接端は前記揺動軸に平行な線状に形成されてなる請求項1に記載のヘリコプタのロータである。
【0008】
請求項3記載の発明は、飛行回転時の第一当接子及び第二当接子の浮動により前記当接が確立する請求項1又は請求項2に記載のヘリコプタのロータである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記ハブは、前記マスト周りに形成された筒部と、マスト軸に対して垂直方向で互いに逆方向で一直線状に延設された一対のピッチ軸部材とを一体に有し、
前記回転翼は、2枚一体翼で、中央部の下面に前記ピッチ軸部材を収める溝を有し、
前記中央部に下面側から取り付けられて前記ピッチ軸部材を前記溝から離脱不能にする留め具を備え、
前記留め具は、前記筒部を通す挿通孔と、前記挿通孔の縁部に形成され、前記ピッチ軸部材の根元部下端に当接する一対の凸部とを有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のヘリコプタのロータである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記留め具は、前記回転翼に対して弾性爪により着脱可能にされ、前記留め具が取り外された前記回転翼は、前記ハブから当該ハブの先端方向へ離脱可能にされてなる請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のヘリコプタのロータである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記回転翼は、回転軸を中心として相対する位置に一対の係合孔を有し、
前記留め具は、前記係合孔に係合する前記弾性爪を一対有し、当該弾性爪の爪先方向が前記回転翼の半径方向外向きに形成されてなる請求項5に記載のヘリコプタのロータである。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記ハブは、マスト軸に対して垂直方向で互いに逆方向で一直線状に延設された一対の揺動軸部材を一体に有し、
前記スタビライザは、前記揺動軸部材に嵌る一対の孔が相対する位置に形成されたリング部を有し、
前記一対の孔の軸方向への前記リング部の弾性変形により当該孔と孔との距離が増大し、前記リング部の弾性回復により前記距離が縮小することによって、前記スタビライザを前記揺動軸部材に着脱可能にされてなる請求項1から請求項6のうちいずれか一にヘリコプタのロータである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転翼とスタビライザとのリンクが、回転翼に固定された当接子と、スタビライザに固定された当接子との当接、滑動により行われる。したがって、リンクロッドを用いない。また、リンクロッドをマスト軸方向に延在させて回転翼とスタビライザとをリンクさせる必要がないので、回転翼とスタビライザとを近づけることができ、ロータがマスト軸方向に小型化する。
また本発明によれば、回転中に回転翼が衝突したとき、過大な荷重が回転翼からスタビライザにリンク機構を介して伝達されることは無く、逆に、回転中にスタビライザが衝突したとき、過大な荷重がスタビライザから回転翼にリンク機構を介して伝達されることは無いから、回転翼やスタビライザ、リンク機構の塑性変形や破損のおそれが軽減され、耐久性、性能維持性が向上する。
以上のことから本発明によれば、部品点数・部材量が少なく小型・軽量性に優れ、耐久性、性能維持性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0015】
本実施形態に係るヘリコプタの平面図を図1に、側面図を図2に正面図を図3に示す。
図1、図2及び図3に示すように、本ヘリコプタ1は、シングルロータ式のヘリコプタのメインロータ2に本発明のロータを適用したものである。本発明のロータは、シングルロータ式に限らず、同軸反転式、タンデム式のヘリコプタのあらゆるロータに適用できる。
【0016】
本ヘリコプタ1は、メインロータ2と、マスト3と、胴体部4と、テールブーム5と、テールロータ6と、テールモータ7と、スキッド8とを備える。
【0017】
胴体部4内に受信装置・制御装置等を搭載した電気回路基板、メインモータ、バッテリー、ギア等が搭載されている。ギアを介してメインモータによりマスト3がメインロータ2とともに回転駆動される。テールロータ6はテールブーム5に支持され、同じくテールブーム5に搭載されたテールモータ7により駆動される。
【0018】
かかる構成により本ヘリコプタ1は、送信機から送られてくる2チャンネル無線操縦信号に基づきメインロータ2及びテールロータ6の回転を制御して飛行し、上昇、下降、左右旋回が可能である。
本ヘリコプタ1は、玩具用の簡略化された無線コントロールヘリコプタで、前後、左右の移動をコントロールするためのスワッシュプレート及びこれに代わる前後舵及び左右舵の操舵手段を有さない。しかし本発明の適用は、そのような前後、左右の移動をコントロールするための操舵手段を搭載することを妨げない。
【0019】
メインロータ2は、回転翼10と、スタビライザ11と、ハブ12と、留め具14とを備える。回転翼10とスタビライザ11とのリンク機構は、回転翼10に付属する部分及びスタビライザ11に付属する部分のみによって構成される。
図4は、ハブ12の平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。図5は、回転翼10の平面図である。図6は、回転翼10の下面側斜視図である。図7は、留め具14の斜視図である。図8は、スタビライザ11の下面側斜視図である。図9は、回転翼10、ハブ12及び留め具14の組立斜視図である。図10は、回転翼10、スタビライザ11、ハブ12及び留め具14の組立斜視図である。
【0020】
ハブ12は、回転翼10及びスタビライザ11をマスト3に取り付ける部品である。ハブ12は、筒部12aと、ピッチ軸部材12bと、揺動軸部材12cとを一体に有する。ハブ12は、マスト3がインサートされた金型により、マストに固着して形成され、これらの部分12a,12b,12cが一体に形成された樹脂成型品である。
筒部12aは、マスト3周りにマスト軸と同軸に形成され、マスト3に固着している。筒部12a内にマスト3が通った状態となっている。ピッチ軸部材12bは、マスト軸に対して垂直方向で互いに逆方向で一直線状に延設された一対の構成を有する。同じく揺動軸部材12cは、マスト軸に対して垂直方向で互いに逆方向で一直線状に延設された一対の構成を有する。ピッチ軸部材12bと、揺動軸部材12cとは、マスト軸方向に沿って異なる位置に形成されている。本実施形態においては、ピッチ軸部材12bが下、揺動軸部材12cが上であり、回転翼10の上方にスタビライザ11が配置される。
ピッチ軸部材12bと、揺動軸部材12cとは、マスト軸方向に見て交差している。その交差角は、本実施形態では略90度であるが、これに限定されない。この交差角は、スタビライザによるロータの水平安定性が出るように機体ごとに設計上適宜決定すればよい。
【0021】
回転翼10は、翼部10a、翼部10b、中央部10cが一体に樹脂成型された2枚一体翼である。中央部10cの中央には、ハブ挿通孔10dが形成されている。中央部10cの下面にピッチ軸部材12bを収める溝10eが、ハブ挿通孔10dを挟んで形成されている。翼部10a及び翼部10bのピッチ軸は一致しており、溝10eは、翼部10a,10bのピッチ軸方向に延在する。ハブ挿通孔10dにハブ12が挿通され、溝10eにピッチ軸部材12bが収められる。
ハブ挿通孔10dの周りで、溝10eの両側に計4つの突起10fが中央部10cに基端を置いて下方へ突出形成されている。
また、回転翼10は、回転軸を中心として相対する位置に一対の係合孔10g,10gを有する。
【0022】
留め具14は、基部14aと、一対の弾性爪14b,14bと、一対の凸部14c,14cと、ハブ挿通孔14dと、位置固定孔14eとを有する。
留め具14は、ハブ挿通孔14dがマスト3に通されてピッチ軸部材12bの下端側に配置されて組み入れられる。
弾性爪14bは、アーム部14b−1と、爪部14b−2とを有する。弾性爪14b,14bは、基部14aの両端に形成される。基部14aの端部からやや半径方向外側に傾斜して上方にアーム部14b−1が立設される。アーム部14b−1の先端に爪部14b−2が形成されている。爪部14b−2の爪先方向はロータ2の半径方向外向きに形成されている。弾性爪14b,14bが係合孔10g,10gに下から挿入されて係合し、留め具14が回転翼10に取り付けられる。これにより留め具14は、中央部10cに下面側から取り付けられてピッチ軸部材12bを溝10eから離脱不能にする。
ピッチ軸部材12bが溝10eに収められ、留め具14によって溝10eから離脱不能にされることにより、ハブ12は、回転翼10をピッチ変化自在に軸支する。
【0023】
爪部14b−2の爪先方向がロータ2の半径方向外向きに形成されているので、ロータ2が回転することよって、爪部14b−2が係合孔10gから外れにくくなる。爪部14b−2の爪先方向をロータ2の半径方向内向きにすると、ロータ2が回転することよって、爪部14b−2が係合孔10gに対して後退する方向に力や変形が生じて外れやすくなる。
【0024】
また、位置固定孔14eに突起10fが嵌め入れられる。弾性爪14b,14bと係合孔10g,10gとの係合によっても、回転翼10と留め具14との相対位置は固定されるので、突起10f及び位置固定孔14eを省略しても良いが、不十分でれば利用する。
【0025】
凸部14c,14cは、ハブ挿通孔14dの縁部で基部14aの上面側に形成されている。したがって、機体がメインロータ2に吊下げられた状態において、凸部14c,14cはピッチ軸部材12bの根元部下端に当接する。このような凸部14c,14cを設ける理由は以下による。
ピッチ軸部材12bの形成誤差や、本ヘリコプタ1の衝突、墜落等による変形、基部14aの形成誤差や配置誤差等に起因して、回転翼10のマスト3に対する取付角が傾斜し、翼部10aと翼部10bとでフラップ角が異なってしまうことがある。
凸部14c,14cを設けず、ピッチ軸部材12bに対応する基部14aの上面をフラットに構成する場合は、基部14aの上面がピッチ軸部材12bの先端まで接触するので、上記誤差、変形の上記取付角への影響は比較的顕著である。
これに対し凸部14c,14cを設けた場合、ピッチ軸部材12bに対する上下方向の当接部がマスト3に近いピッチ軸部材12bの根元部下端に限定され、上記誤差、変形の上記取付角への影響を比較的小さくすることができる。
【0026】
留め具14は、回転翼10に対して弾性爪14b,14bにより着脱可能である。留め具14が取り外された回転翼は、ハブ12から当該ハブ12の先端方向へ離脱可能である。但し、先にスタビライザ11をハブ12から取り外しておく必要がある。揺動軸部材12cがハブ挿通孔10dを通るように、揺動軸部材12c及びハブ挿通孔10dの寸法を決めておく。
【0027】
スタビライザ11は、リング部11aと、スタビライザバー11b,11cと、スタビライザエンド11d,11eとを有する。スタビライザ11は、樹脂の一体成型により作製されたものである。リング部11aには、揺動軸部材12cに嵌る一対の孔11f,11fが相対する位置に形成されている。スタビライザバー11b,11c及びスタビライザエンド11d,11eが直線状に延び、スタビライザエンド11d,11eの下端それぞれに設けられた穴11gには、金属の重り(図示せず)が収納されて固定されている。
【0028】
一対の孔11f,11fの軸方向へリング部11aを弾性変形させることにより当該孔11fと孔11fとの距離を増大させて、両孔11f,11fに揺動軸部材12cを挿し込み、リング部11aの弾性回復により上記距離を元の距離に縮小させることによって、使用時に脱落しないようにスタビライザ11を揺動軸部材12cに取り付ける。このようにしてスタビライザ11は、揺動軸部材12cに着脱可能にされている。スタビライザ11が揺動軸部材12cに取り付けられることにより、ハブ12は、スタビライザエンド11d,11eがマスト軸方向に相補的に揺動するようにスタビライザ11を軸支する。
【0029】
次に、回転翼10とスタビライザ11とのリンク機構の構成につき説明する。
本リンク機構は、第一当接子a1と、第二当接子a2と、第三当接子a3と、第四当接子a4とを有する。
第一当接子a1は、レバーアームb1に支持されて回転翼10のピッチ軸から離れて回転翼10に固定配置さている。
同じく第二当接子a2は、レバーアームb2に支持されて回転翼10のピッチ軸から離れて回転翼10に固定配置さている。第二当接子a2は、第一当接子a1と回転翼10のピッチ軸を基準に逆側の等距離に配設されている。第一当接子a1及び第二当接子a2の当接端は回転翼10のピッチ軸に平行な線状に形成されている。第一当接子a1及び第二当接子a2は、当接端を上向きにして円筒面状に形成されている。その円筒面の軸は、回転翼10のピッチ軸に平行である。
【0030】
第三当接子a3は、レバーアームb3に支持されてスタビライザ11の揺動軸から離れてスタビライザ11に固定配置されている。
同じく第四当接子a4は、レバーアームb4に支持されてスタビライザ11の揺動軸から離れてスタビライザ11に固定配置されている。第四当接子a4は、第三当接子a3と回転翼10のピッチ軸を基準に逆側の等距離に配設されている。第三当接子a3及び第四当接子a4の当接端はスタビライザ11の揺動軸に平行な線状に形成されている。第三当接子a3及び第四当接子a4は、当接端を下向きにして一枚歯状に形成されている。図示しているものに拘わらず、その歯の先端をより細くしたり、丸くしたりして、常に一点で当接するようにすることが好ましい。
【0031】
次に、回転翼10とスタビライザ11とのリンク機構の動作につき説明する。
ロータ2が回転すると、回転翼10が翼部10a,10bの揚力によりハブ12に対して浮動する。この浮動はピッチ軸部材12bと溝10eとの間に上下方向に遊びを設けることによって実現することができる。
【0032】
回転翼10がハブ12に対して浮動すると、第一当接子a1及び第二当接子a2も浮動し、それぞれ第三当接子a3、第四当接子a4に近づき当接する。これによりリンクが確立する。このリンクの確立は、少なくとも離陸時に実現されれば足りる。
第一当接子a1が上向き、第三当接子a3が下向きで互いに交差して上下に当接する。同じく、第二当接子a2が上向き、第三当接子a3が下向きで互いに交差して上下に当接する。
ロータ2静止時から、第一当接子a1が第三当接子a3に当接し、第二当接子a2が第四当接子a4に当接しているように設計すると、回転翼10やスタビライザ11、ハブ12の成形誤差や変形により当接子同士の当接力が異なってしまい、リンク動作の円滑性が個体ごとに、さらには使用暦により異なってしまう。本実施形態によれば、第一当接子a1及び第二当接子a2の浮動により当接子同士の当接が確立するので、個体によらず均一なリンク動作の円滑性を維持できる。
【0033】
さて、本ヘリコプタ1の離陸後、マスト3に対してスタビライザエンド11dが下がり、従ってスタビライザエンド11eが上げると、翼部10aのピッチ角が減少し,翼部10bのピッチ角が増加する。逆に、マスト3に対してスタビライザエンド11dが上がり、従ってスタビライザエンド11eが下がると、翼部10aのピッチ角が増加し,翼部10bのピッチ角が減少する。この変化過程において、第一当接子a1と第三当接子a3とが滑動する。本実施形態の構造にあっては、第一当接子a1の第三当接子a3との当接点が移動するとともに、第三当接子a3の第一当接子a1との当接点が移動する。同じく第二当接子a2と第四当接子a4とが滑動する。本実施形態の構造にあっては、第二当接子a2の第四当接子a4との当接点が移動するとともに、第四当接子a4の第二当接子a2との当接点が移動する。本実施形態によらず、一方の当接子の当接端を面状にし、他方の当接子の当接端を点状にすれば、点状の方は当接点が一定である。
以上のように本リンク機構は、第一当接子a1と第三当接子a3、第二当接子a2と第四当接子a4とがマスト軸方向の押圧力成分を有して当接し、滑動することにより、回転翼10のピッチ動作とスタビライザ11の揺動動作とをリンクさせる機構である。
【0034】
当接子同士の当接は、円滑で精度のよいリンク動作のため本実施形態のようにマスト軸方向であることが好ましいが、マスト軸に対して斜めであってもマスト軸方向の押圧力成分を有するので、回転翼10のピッチ動作とスタビライザ11の揺動動作とを互いに伝達すること、すなわちリンクは可能である。マスト軸方向の押圧力成分を有さない場合は、押圧力は、ピッチ軸や揺動軸へ向かうので、動作を伝達できない。
リンク動作中に、当接方向がマスト軸方向から斜めに外れるような構造を採用してもよい。本実施形態によれば、第一当接子a1及び第二当接子a2を回転翼10のピッチ軸に平行にし、第三当接子a3及び第四当接子a4をスタビライザ11の揺動軸に平行にしているので、誤差及び変形を無視すれば、リンク動作中にこれらの当接子a1,a2,a3,a4が傾動することは無く、当接方向がマスト軸方向から斜めに外れることが無い。したがって、より円滑で精度のよいリンク動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘリコプタの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘリコプタの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るヘリコプタの正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るハブの平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転翼の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る回転翼の下面側斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る留め具の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るスタビライザの下面側斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る回転翼、ハブ及び留め具の組立斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る回転翼、スタビライザ、ハブ及び留め具の組立斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ヘリコプタ
2 メインロータ
3 マスト
4 胴体部
5 テールブーム
6 テールロータ
7 テールモータ
8 スキッド
10 回転翼
10a 翼部
10b 翼部
10c 中央部
10d ハブ挿通孔
10e 溝
10f 突起
10g 係合孔
11 スタビライザ
11a リング部
11b,11cスタビライザバー
11d,11eスタビライザエンド
11f 孔
11g 穴
12 ハブ
12a 筒部
12b ピッチ軸部材
12c 揺動軸部材
14 留め具
14a 基部
14b 弾性爪
14c 凸部
14d ハブ挿通孔
14e 位置固定孔
a1 第一当接子
a2 第二当接子
a3 第三当接子
a4 第四当接子
b1 レバーアーム
b2 レバーアーム
b3 レバーアーム
b4 レバーアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼と、スタビライザと、前記回転翼及び前記スタビライザをマストに取り付け、前記回転翼をピッチ変化自在に軸支し、前記スタビライザをその両端がマスト軸方向に相補的に揺動自在に軸支するハブとを備え、前記回転翼のピッチ動作と前記スタビライザの揺動動作とをリンクさせるリンク機構が構成されており、
前記リンク機構は、
前記ピッチ軸から離れて前記回転翼に固定配置された第一当接子と、
前記ピッチ軸から離れて前記回転翼に固定配置され、前記第一当接子と前記ピッチ軸を基準に逆側に配設された第二当接子と、
前記揺動軸から離れて前記スタビライザに固定配置された第三当接子と、
前記揺動軸から離れて前記スタビライザに固定配置され、前記第三当接子と前記揺動軸を基準に逆側に配設された第四当接子とを有し、
少なくとも飛行時に、前記第一当接子と前記第三当接子、前記第二当接子と前記第四当接子とがマスト軸方向の押圧力成分を有して当接し、滑動することにより、前記ピッチ動作と前記揺動動作とをリンクさせるヘリコプタのロータ。
【請求項2】
マスト軸方向に見て前記ロータのピッチ軸と前記スタビライザの揺動軸とが交差し、
前記第一当接子及び前記第二当接子の当接端は前記ピッチ軸に平行な線状に形成され、前記第三当接子及び前記第四当接子の当接端は前記揺動軸に平行な線状に形成されてなる請求項1に記載のヘリコプタのロータ。
【請求項3】
飛行回転時の第一当接子及び第二当接子の浮動により前記当接が確立する請求項1又は請求項2に記載のヘリコプタのロータ。
【請求項4】
前記ハブは、前記マスト周りに形成された筒部と、マスト軸に対して垂直方向で互いに逆方向で一直線状に延設された一対のピッチ軸部材とを一体に有し、
前記回転翼は、2枚一体翼で、中央部の下面に前記ピッチ軸部材を収める溝を有し、
前記中央部に下面側から取り付けられて前記ピッチ軸部材を前記溝から離脱不能にする留め具を備え、
前記留め具は、前記筒部を通す挿通孔と、前記挿通孔の縁部に形成され、前記ピッチ軸部材の根元部下端に当接する一対の凸部とを有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のヘリコプタのロータ。
【請求項5】
前記留め具は、前記回転翼に対して弾性爪により着脱可能にされ、前記留め具が取り外された前記回転翼は、前記ハブから当該ハブの先端方向へ離脱可能にされてなる請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のヘリコプタのロータ。
【請求項6】
前記回転翼は、回転軸を中心として相対する位置に一対の係合孔を有し、
前記留め具は、前記係合孔に係合する前記弾性爪を一対有し、当該弾性爪の爪先方向が前記回転翼の半径方向外向きに形成されてなる請求項5に記載のヘリコプタのロータ。
【請求項7】
前記ハブは、マスト軸に対して垂直方向で互いに逆方向で一直線状に延設された一対の揺動軸部材を一体に有し、
前記スタビライザは、前記揺動軸部材に嵌る一対の孔が相対する位置に形成されたリング部を有し、
前記一対の孔の軸方向への前記リング部の弾性変形により当該孔と孔との距離が増大し、前記リング部の弾性回復により前記距離が縮小することによって、前記スタビライザを前記揺動軸部材に着脱可能にされてなる請求項1から請求項6のうちいずれか一にヘリコプタのロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−12159(P2010−12159A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177036(P2008−177036)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】