説明

ベベリング用筒体

【課題】錆びることがなく、また、ベベル加工を行っても水晶片の汚れが軽減する。
【解決手段】水晶片にベベル加工を施すベベリング用筒体10であって、セラミックからなり有底で一方が開口する円筒体11と、セラミックからなり前記円筒体の開口端部と密着固定される蓋体12とを備え、前記セラミックから構成されることを特徴とし、円筒体11と蓋体12とが共にセラミックであることにより、研磨材が円筒体11と蓋体12とに付着して塊となるのを防ぐことができ、また、円筒体11と蓋体12とが共にセラミックであることにより、錆が発生することがなくなった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶片のベベル加工に用いられるベベリング用筒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電材料である水晶片にベベル加工を施す際には、鉄などの金属の円筒容器が用いられている。この金属容器、つまりベベリング用筒体は、有底で一方が開口した円筒体と、この開口を塞ぐ蓋体とから構成されており、この円筒体と蓋体とはねじ込み式で一体となるか、ボルトなどで蓋体を円筒体に固定して一体となっている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
水晶片をベベル加工する場合は、円筒体に研磨材と水晶片とを入れた状態で蓋体を円筒体に固定し、円筒体の中心軸を回転軸にして回転させて水晶片をベベル加工していた。
ここで、水晶片の加工の状態に応じて研磨剤を入れ替える場合は、円筒体にねじ込み又はボルトで固定されている蓋体をはずし、ふるい等の網状のものに円筒体内の水晶片ごと研磨材を落とし込み、ふるい等で水晶片のみを受けるようにしていた。したがって、再度、ベベル加工をする場合は、このふるい等についた水晶片を回収して再び円筒体に入れ、新たに研磨材を円筒体に流入させた後、蓋体を円筒体に固定していた。
【0004】
このような従来のベベリング用筒体は、円筒体の中心軸を回転軸にして回転させたときに、内部の研磨材が円筒体の内表面に沿って流動させられ、所定の高さまできたところで円筒体の内表面から離れて下に落ち込んでいくようになっている。
これにより、研磨材と一緒に封入されている水晶片は、円筒体内で表裏反転を繰り返えしながら円筒体表面および研磨材で研磨されることとなる。
また、ベベリング用筒体に用いられる材質としては、鉄などの金属の他にセラミックが用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−285000号公報(段落0002〜0005、図6)
【特許文献2】特開2008−166971号公報
【特許文献3】特開2002−224943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のベベリング用筒体は、例えば、鉄でできているため、水晶片の研磨の最中に金属の粒子が生成されてしまっていた。これにより、ベベル加工が完了した後、水晶片に金属の粒子が付着してしまい、洗浄作業が煩雑であるという問題があった。
また、例えば、円筒体が鉄からなる場合は、研磨材を水で希釈してベベル加工を行うと、円筒体が錆びるという問題がある。したがって、従来のベベリング用筒体は、錆の除去に手間がかかるという問題がある。
また、ベベリング用筒体が鉄からなる場合、研磨材がベベリング用筒体に付着してしまい、部分的に塊となることがあった。これにより、ベベル加工された水晶片の品質にばらつきが生じることがあった。
また、ベベリング用筒体が例えば、一般に機械工作用のセラミックを用いた場合、粉末をプレス等により成形して焼成すると、この焼成で固定される形状や厚みにムラ等が起こり、加工精度が悪くなる恐れがある。また、加工精度良くベベリング用筒体が形成できても、ベベル加工の際に水晶片でベベリング用筒体の内面が削れてしまったり、セラミックの脱粒という問題がある。
さらに、ベベリング用筒体が回転している際にひび割れが生じ、安定したベベル加工を行うことができなかった。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、錆びることがなく、また、ベベル加工を行っても水晶片の汚れが軽減され、安定したベベル加工が行えるベベリング用筒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、水晶片にベベル加工を施すベベリング用筒体であって、セラミックからなり有底で一方が開口する円筒体と、セラミックからなり前記円筒体の開口端部と密着固定される蓋体とを備え、前記セラミックがA479M(京セラ(株)製の材質番号)から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようなベベリング用筒体によれば、ベベリング用筒体を構成する円筒体と蓋体とがセラミックで形成されているため、錆びることがない。また、このようなベベリング用筒体によれば、セラミックが鉄よりも堅いためにセラミックの粒子の発生を少なくすることができる。これにより、このようなベベリング用筒体は、水晶片にベベル加工を行っても水晶片の汚れを軽減させることができる。
また、このようなベベリング用筒体によれば、研磨材がベベリング用筒体に付着することがないため、水晶片のベベル加工の品質を向上させることができる。
また、セラミックがA479M(京セラ(株)製の材質番号)から構成されるため、回転中にベベリング用筒体にひびが入ることなく安定したベベル加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るベベリング用筒体の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係るベベリング用筒体の使用例の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るベベリング用筒体の一例を示す概念図である。図2は、本発明の実施形態に係るベベリング用筒体の使用例の一例を示す概念図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るベベリング用筒体10は、有底で一方が開口する円筒体11と、この開口端部に固定される蓋体12とから構成されている。
このベベリング用筒体10は、その内部に研磨材Lと水晶片Bとを封入し、このベベリング用筒体10の中心軸線C1を回転軸として回転させることで水晶片Bにベベル加工を施すようになっている。
【0014】
また、円筒体11は、A479M(京セラ(株)製の材質番号)のセラミックから形成されている。この円筒体11は、一方の端部が塞がれて底部となり、他方の端部が所定の直径で開口した筒状となっている。
【0015】
図2に示すように、蓋体12は、セラミックからなり、円筒体11と同じ直径で形成されている。
【0016】
次に、本発明の実施形態に係るベベリング用筒体10を用いた水晶片のベベル加工方法について説明する。
まず、図1に示すように、所定の粒度のメディアMと砥粒とを備えた研磨材Lと、所定の大きさに形成された水晶片Bとを用意する。
【0017】
(材料封入工程)
材料封入工程は、円筒体11に用意した研磨材Lと水晶片Bとを入れ、円筒体11の開口した端部を蓋体12で塞ぐ工程である。
蓋体12は、円筒体11の開口側端部に、ねじ込み式による固定や、ボルトによる固定などができるようになっている。
【0018】
(回転工程)
回転工程は、研磨材Lと水晶片Bとを入れた円筒体11を、該円筒体11の中心軸線C1を回転軸として回転させる工程である。
この回転工程により、水晶片Bが研磨材Lで研磨されてベベル加工が進行することとなる。このとき、ベベリング用筒体10は、筒体回転ローラ装置60を用いて、中心軸線C1を水平にした状態で回転させられる。これにより、水晶片Bが円筒体の内周面を滑りつつ研磨材Lと接触してベベル加工が行われる。
なお、筒体回転ローラ装置60は、水平に設けられる少なくとも2本一対のローラ61と、これらローラ61の回転軸に設けられる第一のプーリ62と、所定の回転速度で回転する駆動装置63と、この駆動装置63の回転軸に設けられる第二のプーリ64と、第一のプーリ62と第二のプーリ64とに掛けられるベルト65とから構成されている。
このように構成される筒体回転ローラ装置60は、駆動装置63により駆動装置63の回転軸に設けられる第二のプーリ64を回転させ、ベルト65を介して第一のプーリ62を回転させることでローラ61を回転させる。
これにより、ローラ61上に載せられたベベリング用筒体10は、中心軸線C1を水平にした状態で回転させられることとなる。
【0019】
このように、本発明のベベリング用筒体10は、円筒体11と蓋体12とがセラミックで形成されているので、研磨材Lが円筒体11と蓋体12とに付着して塊となることがなく、ベベル加工の品質を向上させることができる。また、本発明のベベリング用筒体は、円筒体11と蓋体12とがA479M(京セラ(株)製の材質番号)のセラミックで形成されているので、セラミックの粒子の発生が少なく、ベベル加工を行っても水晶片の汚れを軽減することができる。
また、本発明のベベリング用筒体は、円筒体11がA479M(京セラ(株)製の材質番号)のセラミックからなるため、回転軸方向に長く形成することもできる。さらに、本発明のベベリング用筒体は、他のセラミックで形成される場合や金属で形成される場合よりも耐久性を向上させることができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、円筒体11の断面において、外周の断面形状を円形、内周の断面形状を多角形に形成しても良い。このような形状は、セラミックを焼成することで形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 ベベリング用筒体
11 円筒体
12 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶片にベベル加工を施すベベリング用筒体であって、
セラミックからなり有底で一方が開口する円筒体と、
セラミックからなり前記円筒体の開口端部と密着固定される蓋体とを備え、
前記セラミックがA479M(京セラ(株)製の材質番号)から構成されることを特徴とするベベリング用筒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−55025(P2011−55025A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199230(P2009−199230)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】