説明

ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置と除染方法、並びにこの方法によって形成したベリリウム小塊

【課題】トリチウムによる放射性汚染物としての取り扱い難さをなくし、かつ使用するエネルギーを少なくして、取り扱い易い小塊の形で使用済の放射性汚染ベリリウムから放射性汚染のないベリリウム金属を回収する。
【解決手段】内部空間部には、ベリリウム塊を加熱してベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウムの塊を更に加熱して溶融させる加熱部と、前記加熱部の加熱温度が所定の状態になったことによって溶融したベリリウム塊に重力が作用するようにしてベリリウム小塊の形状で滴下分離させるベリリウム小塊分離手段と、重力落下方向に滴下分離したベリリウム小塊が落下する落下路と、を配設し、落下するベリリウム小塊を冷却、収納するベリリウム小塊冷却、収納部を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置、ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法、並びにこの方法によって形成したベリリウム小塊に関する。
【背景技術】
【0002】
ベリリウムは、ウランの核分裂反応を利用する核分裂反応型原子炉における中性子反射体、さらに未来のエネルギーとしての核融合反応型原子炉における中性子増倍材として、それぞれ特異的で貴重な役割を担う物質である。原子力分野でベリリウムを中性子反射体あるいは中性子増倍材として利用すると、天然に100%存在するBeから式1に示す中性子(n)捕獲核反応によって放射性物質である三重水素(トリチウム:H)が生成する。
Be(n,α)He→β崩壊→Li(n,α)H(トリチウム)…式1
【0003】
式1に示したベリリウムの中性子捕獲による核反応によって生成したトリチウムはベリリウム中に蓄積されるため、使用済みベリリウムはトリチウムによる放射性汚染物となる。従って、使用済みベリリウムは大変取り扱い難い物質となっている。
【0004】
特許文献1には、使用済みの放射化ベリリウムからの酸化物や放射化された不純物を除去してベリリウムを回収し、再利用することが記載されている。
【0005】
ベリリウムを取り扱ってはいないが、溶融炉を使用した有用金属回収することを記述する文献として特許文献2がある。この特許文献には、繊維状成形体を供給する原料供給系と、原料供給系に接続され繊維状成形体に廃液を含浸させる廃液供給系と、廃液を含浸させた状態の繊維状成形体を加熱して揮発分を蒸発させる加熱手段と、加熱手段によって蒸発させた揮発分を溶融炉本体のオフガス処理系に移送させるパージエア供給系とを具備し、廃液を仮焼して気化状態の有用金属を回収することが記載されている。
【0006】
特許文献3にはガスアトマイズ法による微細金属除去の製造方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−243798号公報
【特許文献2】特開平6−186394号公報
【特許文献3】特開2004−183049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ベリリウムはその資源量が少なく、稀少元素の一つである。そのため原子炉等で使用された放射性汚染ベリリウムに含まれる放射性物質を除去し、その再利用を図ることは社会的にも大きな意義がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、トリチウムによる放射性汚染物としての取り扱い難さをなくし、かつ二次的放射線汚染をなくして、取り扱い易い小塊の形で使用済の放射性汚染ベリリウムから放射性汚染のないベリリウム金属を回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内部空間部を備えた気密構造体と、前記内部空間部には、原料としてのベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊を該内部空間部内に保持するベリリウム塊保持部と、前記ベリリウム塊を加熱してベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウムの塊を更に加熱して溶融させる加熱部と、前記加熱部の加熱温度が所定の状態になったことによって溶融したベリリウム塊に重力が作用するようにしてベリリウム小塊の形状で滴下隔離させるベリリウム小塊分離手段と、重力落下方向に滴下分離したベリリウム小塊が落下する落下路と、を配設し、落下するベリリウム小塊を冷却収納するベリリウム小塊冷却収納部を配設し、前記気密構造体には、抽出させたトリチウムを外部に排出するトリチウム排出部、原料としてのベリリウム塊の導入部およびベリリウム小魂排出部を形成したことを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置を提供する。
【0011】
本発明は、更に、前記加熱部は、溶融るつぼと該溶融るつぼの外側に設けた加熱手段とから構成され、前記加熱部の加熱温度制御手段を有し、該加熱温度制御手段によるベリリウム塊の溶融温度制御によって、ベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置を提供する。
【0012】
本発明は、更に、前記内部空間部は前記加熱部によって上下内部空間に仕切られ、該上下内部空間に連通して上下内部空間の圧力バランスを調整する圧力バランス調整手段を有して、圧力バランスの調整によってベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置を提供する。
【0013】
本発明は、更に、前記加熱部は、溶融るつぼと該溶融るつぼの外側に設けた加熱手段とから構成され、前記加熱部の加熱温度制御手段を有し、該加熱温度制御手段によるベリリウム塊の溶融温度制御によっても、ベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置を提供する。
【0014】
本発明は、更に、前記加熱部は、高周波誘導加熱手段によって形成され、前記ベリリウム小塊分離手段は該高周波加熱手段の内部にもしくはその直下に形成されることを特徴とするベリリウムの溶融成形およびトリチウム除染装置を提供する。
【0015】
本発明は、内部空間部を備えた気密構造体と、前記内部空間部には、原料としてのベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊を該内部空間部内に保持するベリリウム塊保持部と、前記ベリリウム塊を加熱する加熱部と、を備えたベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置によるベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法において、
前記加熱部の加熱温度を所定の温度にすることによってベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウムの塊を更に加熱して溶融させ、溶融にベリリウム塊からベリリウム塊を重力作用の下に滴下分離し、滴下分離したベリリウム小塊を重力落下方向に形成した落下路形成部を落下させ、落下するベリリウム小塊を冷却・収納し、前記気密構造体に設けたトリチウム排出部から外部に排出することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法を提供する。
【0016】
本発明は、更に、前記加熱部は、溶融るつぼと該溶融るつぼの外側に設けた加熱手段とから構成され、前記加熱部の加熱温度制御手段を有し、該加熱温度制御手段によるベリリウム塊の溶融温度制御によって、ベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法を提供する。
【0017】
本発明は、更に、前記内部空間部は前記加熱部によって上下内部空間に仕切られ、該上下内部空間に連通して上下内部空間の圧力バランスを調整する圧力バランス調整手段を有して、圧力バランスの調整によってベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法を提供する。
【0018】
本発明は、内部空間部を備えた気密構造体と、前記内部空間部には、原料としてのベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊を該内部空間部内に保持するベリリウム塊保持部と、前記ベリリウム塊を加熱する加熱部と、を備えたベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置によって形成されるベリリウム小塊において、前記加熱部の加熱温度を所定の温度にすることによってベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウム塊を更に加熱して溶融させ、溶融したベリリウム塊を重力作用の下に滴下分離し、滴下分離したベリリウム小塊を重力落下方向に形成した落下路形成部を冷却落下させて形成したことを特徴とするトリチウムを除染した使用済のベリリウム小塊を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上述のように、第1ステップで加熱部による加熱によって使用済の放射性汚染ベリリウム金属(すなわちベリリウム塊)からこのベリリウム塊中に蓄積されているトリチウムを抽出、除去し、次のステップで更に加熱することによってベリリウム塊を溶融(溶解)させ、重力を利用して滴下させ、ベリリウム小塊を成形するようにしているので、トリチウムによる放射性汚染物としての取り扱い難さがなくなり、かつ重力を利用した滴下方式の採用によって二次的な放射性汚染を防止し、取り扱い易い小塊の形でベリリウム金属を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例であるベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置を示す。図1において、ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置100は、内部空間部2を備えた気密構造体としての本体1とを備える。内部空間部2には、ベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊3が収納される。本例の場合、ベリリウム塊3はすべて溶融した金属溶湯として図示してある。下部部分が溶融状態であってもよい。
【0022】
本体1は、上部容器4と下部容器5の2つの容器が合体した形状をなし、くびれた形状の中間容器6によって連結されている。中間容器6はなくてもよいし、本体を円筒状に形成してもよい。上部容器4は高温ゾーンとして形成し、下部容器5は低温ゾーンとして形成する。下部容器5は、低温保存容器7によって被覆されている。
【0023】
上部容器4の内部空間部2には、ベリリウム塊保持部11、ヒーターによって形成される加熱部12、重力落下方向に溶融したベリリウム塊が流下する流下炉13を形成し、流路部13の終端15はノズル構成で、ベリリウム塊からベリリウム塊を滴下分離するベリリウム小塊分離部14が形成される。本例の場合、加熱部12はベリリウムの塊保持する機能を有してベリリウム塊保持部11としても作用するが、両機能を分離することができる。
【0024】
加熱部12は、溶融るつぼ21と溶融るつぼ21の外側に設けた加熱手段としてのヒータから構成され、加熱部12は、上部容器5内の内部空間部2を上部内部空間22と下部空間23とに隔絶、すなわち仕切っている。
【0025】
溶融るつぼ21は、上側の漏斗状の金属溶湯形成部24とこれに連接する上述したベリリウム小塊分離部14から形成され、これらの金属溶湯形成部24、ベリリウム小塊分離部14は周囲のヒーターによって加熱される。ヒーターは加熱温度制御装置18によって温度制御される。
【0026】
本体1には、上端部にホッパー25が取り付けてある。ホッパー25は、垂直方向に設けられた、上部空間22に達して開口する導入管26、本体1の外側で導入管26に設けられたバルブ27および上端の補給口28から形成されている。
【0027】
下部空間23には、縮小形状部31を保護するように熱遮蔽32が設けてある。流路部13の終端15の下方には滴下分離されたベリリウム小塊が重力作用によって落下する落下路10が形成される。上部空間22および下部空間にそれぞれ連通する連通管33、34および35、36が設けてある。連通管33、34からはスイープガスが導入され、連通管35、36からはスイープガスが導出される。従って、連通管35、36はトリチウム排出部として機能する。連通管33から導入されるスイープガスはバランスガスとしての機能とを有する。連通管33から導入されるスイープガスによって上下内部空間22、23の圧力バランスが調整される。このようにして圧力バランス調整手段(圧力バランス調整機構)37が構成される。
【0028】
下部容器5内の内部空間部2の底部にはベリリウム小塊収納部として機能する。回収容器41が置かれて回収された回収金属すなわちベリリウム小塊40が収納される。下部空間23、中間部空間46および下部容器空間42には連続した前述の落下路10が形成される。下部容器5内の下部容器空間42には冷却ガス管43が連通され、冷却ガスが下部容器空間42に導入されるように形成される。落下路10を落下するベリリウム小塊は冷却される時に、ベリリウム小塊は下部容器空間部42で冷却される。また、下部容器5(本体1)には、ベリリウム小塊排出部となる回収口44が設けてあって、回収したベリリウム小塊40を回収することができるようにしてある。このようにして、ベリリウム小塊冷却、収納部が形成される。
低温保存容器7には冷媒管45から冷媒が導入、導出されるようにしてある。
中間容器6の内部の中間容器空間46には熱遮蔽47が設けてある。
【0029】
以上のように、ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置100は、堅形の構造体として形成される。
【0030】
使用済の放射性汚染ベリリウムは塊の形状であるいは棒状の形状で、原料としてのベリリウム塊の導入部として機能するホッパー25から溶融るつぼ21に投入される。ここでは塊状形状あるいは棒状形状であっても塊として取り扱うことができるので、ベリリウム塊として記載する。溶融るつぼ21に投入されたベリリウム塊は加熱部12(すなわちヒータ)によって加熱される。この加熱過程で固体状態のベリリウム塊中に蓄積されていたトリチウムはベリリウム塊外へと抽出される。内部空間22は連通管33からアルゴンガスやベリウムガスなどの不活性ガスがスイープガスとして導入され、抽出されたトリチウムガスは連通管35からスイープガスと共に本体1外へと移送され、除去される。
【0031】
更にトリチウムを排出したベリリウム塊を加熱して、溶融温度(1287℃)以上の例えば1300℃に加熱するとベリリウム塊は金属溶湯(ベリリウム溶湯)となる。ベリリウム塊の加熱温度は加熱温度制御装置18の制御可能である。溶融したベリリウム塊(ベリリウム溶湯)は、落下路13を流下してその先端に達すると、ベリリウム塊に重力作用によってベリリウム塊を形成し分離するベリリウム小塊分離手段15によってベリリウム小塊として分離される。すなわち、落下路13の先端のノズルは、加熱部12の加熱温度が所定の状態になったことによって溶融したベリリウム塊からベリリウム小塊を重力作用によって分離するベリリウム小塊分離手段として機能する。溶融して液状化したベリリウム塊が重力によって落下する時に微小球であるベリリウム小塊が形成される現象(作用)によってベリリウム小塊が形成され、重力によって滴下分離され、落下していく。この滴下分離は、上述のように重力作用によって雨滴のように滴下させるものであって重力作用が働くような構成であれば充分であるが、この作用を補助する機能、例えばガス噴射などによる分離機能を付加することを妨げない。
【0032】
加熱部12によるベリリウム塊の溶融状態を制御することによって下方に滴下する溶融したベリリウム小塊の液状滴のサイズと量を制御することができる。分離されたベリリウム小塊は下部空間23および中間容器46を重力によって下方へと落下していく。この落下の過程でベリリウム小塊は微小球となり冷却ガス管43からの冷却ガスによって冷却される。
【0033】
圧力バランス調整手段37は連通管33から導入されるスイープガス、すなわちバランスガスの量を調整することによって上下空間22、23の圧力バランスを調整し、溶融るつぼ21に作用する圧力を調整する。このように圧力バランスを変えることで溶融し、分離されるベリリウム小塊の液状滴のサイズと量を制御することができる。圧力バランス調整による液状滴のサイズと量の制御と加熱部12による加熱温度制御による液状滴のサイズと量の制御を併用して用いることができる。これ併用によってより以上に汎用性が増すことになる。
【0034】
このように、温度一定制御あるいは温度可変制御によって液状滴を生成するに際して予めベリリウム塊からトリチウムとトリチウムガスとして抽出しておくことが重要である。トリチウムが除去されたベリリウム小塊は更に落下して落下の途中で固体状となって回収容器41で受けられ、一時的に保管され、回収口44から本体外へと移送される。
【0035】
以上のように、ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置100は、内部空間部2を備えた気密構造体としての本体1と、内容空間部2に原料としてのベリリウム塊を内部空間2に原料としてのベリリウム塊を内部空間2内に保持するベリリウム塊保持部11と、ベリリウム塊の加熱部12を備えて構成される。
【0036】
このベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置100は、加えて第1ステップとしての加熱によってベリリウム塊中に蓄積されたトリチウムを抽出され、次の加熱ステップによってベリリウム塊を溶融させる。更に、この装置100は、加熱部12の加熱温度を所定の温度にすることによって溶融したベリリウム塊からベリリウム小塊を重力作用の下に滴下分離し、滴下分離したベリリウム小塊を重力落下方向に形成した落下路で冷却、落下させる。落下したベリリウム小塊として回収される。
【実施例2】
【0037】
図2は、本発明の第2の実施例であるベリリウム溶融成形およびトリチウムの除染装置100を示す。先の実施例と同一の構成には同一の番号を付してあり、先の実施例で説明した内容を援用するものとして、先の実施例と異なる点を主に説明する。
【0038】
この実施例は、ベリリウム塊保持部としてベリリウム塊移動機構11Aが使用される。ベリリウム塊として棒状のベリリウム塊50が用いられる。ベリリウム塊移動機11Aは棒状のベリリウム塊3Aを保持すると共に、上下方向に移動させる。加熱部として高周波誘導加熱炉12Aが用いられる。ベリリウム塊移動機構11によって棒状のベリリウム塊3Aは高周波誘導加熱炉12A内に配設される。棒状のベリリウム塊3Aの上部には高周波誘導加熱炉がないために固体状を呈する。ベリリウム塊3Aの下方移動によって加熱され、固体状態の時にトリチウムは排出される。この例は棒状のベリリウム塊3Aを上下移動するようにしているが、高周波誘導加熱炉12Aを移動機構によって上下移動させるようにしてもよい。高周波誘導加熱炉12Aは加熱温度制御装置18によって温度制御され、溶融状態制御されるのが先の実施例と同じである。先の実施例は加熱部12によって上下空間22、23に仕切られていたが、この実施例では仕切りを設けていない。仕切りを設けるようにすれば先の実施例と同一の制御が可能になる。
【0039】
高周波誘導加熱炉12Aの加熱コイルの電圧を制御し、電流を通すことによって棒状のベリリウム塊は加熱される。この加熱過程において、挿入、移動によって充分に加熱された下先端部(図で下端部)は溶融し、金属溶湯(ベリリウム溶湯)3を形成し、その上方部は溶融に至らず固定状を呈する。従って、高周波誘導加熱炉12Aの下側の溶融部においてベリリウム塊からベリリウム小塊を滴下分離するベリリウム小塊分離手段14が形成され、その作用は先の実施例と同じであるがノズルは形成されない。ただこの場合には溶融したベリリウム塊が接触して流下する流下炉13(図1)はなく、非接触の状態で下方移動させることになる。そして、所定の加熱で所定時間経つと重力が作用し、滴下分離されることになる。
【0040】
このベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置100は、第1ステップの加熱によって固体状態のベリリウム塊中に蓄積されたトリチウムを抽出させ、次の加熱ステップによってベリリウム塊を溶融させる。更に、この装置100は、加熱部12の加熱温度を所定の温度にすることによって溶融したベリリウム塊からベリリウム小塊を重力作用の下に滴下分離し、滴下分離したベリリウム小塊を重力落下方向に形成した落下路で冷却、落下させている。落下したベリリウム小塊は回収容器41にトリチウムが除染されたベリリウム小塊として回収される。
【0041】
以上のように、本実施例によれば、稀少元素であるベリリウムが使用済で放射性汚染された状態から放射性物質(トリチウム)が除去されて、ベリリウムの小塊として回収され再利用が図られることになって社会的にも大きな意義がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例の構成図。
【図2】本発明の他の実施例の構成図。
【符号の説明】
【0043】
1…本体(気密構造体)、2…内部空間部、3,3A…ベリリウム塊、4…上部容器、5…下部容器、6…中間容器、10…落下路、11…ベリリウム塊保持部、11A…ベリリウム塊移動機構、12…加熱部、13…流下路、14…ベリリウム小塊分離部、15…終端、21…溶融るつぼ、22…上部内部空間、23…下部内部空間、33,34,35,36…連通管、37…圧力バランス調整手段(圧力バランス調整機構)、43…冷却ガス管、40…ベリリウム小塊、41…回収容器、44…回収口、100…ベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間部を備えた気密構造体を有し、前記内部空間部には、原料としてのベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊を該内部空間部内に保持するベリリウム塊保持部と、前記ベリリウム塊を加熱してベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウム塊を更に加熱して固体の状態の溶融させる加熱部と、前記加熱部の加熱温度が所定の状態になったことによって溶融したベリリウム塊に重力が作用するようにしてベリリウム小塊の形状で滴下隔離させるベリリウム小塊分離手段と、重力落下方向に滴下分離したベリリウム小塊が落下する落下路と、を配設し、さらに落下するベリリウム小塊を冷却収納するベリリウム小塊冷却収納部を配設し、
前記気密構造体には、抽出させたトリチウムを外部に排出するトリチウム排出部、原料としてのベリリウム塊の導入部およびベリリウム小魂排出部を形成したことを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置。
【請求項2】
請求項1において、前記加熱部は、溶融るつぼと該溶融るつぼの外側に設けた加熱手段とから構成され、前記加熱部の加熱温度制御手段を有し、該加熱温度制御手段によるベリリウム塊の溶融温度制御によって、ベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置。
【請求項3】
請求項1において、前記内部空間部は前記加熱部によって上下内部空間に仕切られ、該上下内部空間に連通して上下内部空間の圧力バランスを調整する圧力バランス調整手段を有して、圧力バランスの調整によってベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置。
【請求項4】
請求項3において、前記加熱部は、溶融るつぼと該溶融るつぼの外側に設けた加熱手段とから構成され、前記加熱部の加熱温度制御手段を有し、該加熱温度制御手段によるベリリウム塊の溶融温度制御によっても、ベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置。
【請求項5】
請求項1において、前記加熱部は、高周波誘導加熱手段によって形成され、前記ベリリウム塊分離手段は該高周波加熱手段の内部にもしくはその直下に形成されることを特徴とするベリリウム小塊の溶融成形およびトリチウム除染装置。
【請求項6】
内部空間部を備えた気密構造体と、前記内部空間部には、原料としてのベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊を該内部空間部内に保持するベリリウム塊保持部と、前記ベリリウム塊を加熱する加熱部と、を備えたベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置によるベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法において、前記加熱部の加熱温度を所定の温度にすることによって固体の状態のベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウムの塊を更に加熱して溶融させ、溶融したにベリリウム塊を重力作用の下に滴下分離し、滴下分離したベリリウム小塊を重力落下方向に形成した落下路形成部を落下させ、落下するベリリウム小塊を冷却・収納し、前記気密構造体に設けたトリチウム排出部から外部に排出することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法。
【請求項7】
請求項6において、前記加熱部は、溶融るつぼと該溶融るつぼの外側に設けた加熱手段とから構成され、前記加熱部の加熱温度制御手段を有し、該加熱温度制御手段によるベリリウム塊の溶融温度制御によって、ベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法。
【請求項8】
請求項6において、前記内部空間部は前記加熱部によって上下内部空間に仕切られ、該上下内部空間に連通して上下内部空間の圧力バランスを調整する圧力バランス調整手段を有して、圧力バランスの調整によってベリリウム小塊のサイズの大きさを制御することを特徴とするベリリウム溶融成形およびトリチウム除染方法。
【請求項9】
内部空間部を備えた気密構造体と、前記内部空間部には、原料としてのベリリウム(ベリリウムの化合物を含む)塊を該内部空間部内に保持するベリリウム塊保持部と、前記ベリリウム塊を加熱する加熱部と、を備えたベリリウム溶融成形およびトリチウム除染装置によって形成されるベリリウム小塊において、
前記加熱部の加熱温度を所定の温度にすることによって固体の状態のベリリウム塊中に含まれたトリチウムを抽出させ、トリチウムが抽出された前記ベリリウムの塊を更に加熱して溶融させ、溶融したベリリウム塊から重力作用の下に滴下分離し、滴下分離したベリリウム小塊を重力落下方向に形成した落下路形成部を冷却落下させて形成したことを特徴とするトリチウムを除染した使用済のベリリウム小塊。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−139150(P2009−139150A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313966(P2007−313966)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(595007105)ブラッシュ ウェルマン インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Brush Wellman,Inc.
【住所又は居所原語表記】17876 St.clair Avenue,Cleveland,Ohio 44110,U.S.A.
【出願人】(000140627)株式会社化研 (27)
【Fターム(参考)】