説明

ベルト駆動機構及びそれを備えたメディア処理装置

【課題】移動体が異常停止するなどしてタイミングベルトの駆動負荷が増加しても、機器の損傷を防ぐとともにユーザに対する安全性を保障することのできるベルト駆動機構及びそれを備えたメディア処理装置を提供する。
【解決手段】ベルト駆動機構100は、トレイモータ124によって回転されるトレイ駆動プーリ111と回転可能に支持されたトレイ従動プーリ112とにトレイベルト113が巻き掛けられ、トレイベルト113によってメディアトレイ51を移動させるものであって、付勢部材143により移動可能に支持されるプーリ支持部142を有し、付勢部材143によりプーリ支持部142を介してトレイベルト113に張力を付与する張力付与機構141を備え、トレイ駆動プーリ111は、トレイベルト113の張力増加時に付勢部材143の付勢力に抗してプーリ支持部142が変位することにより、その回転駆動力が減少するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられたタイミングベルトを有するベルト駆動機構及びそれを備えたメディア処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多数枚のブランクCDやDVDなどのメディアにデータの書き込みを行うディスクダビング装置、データの書き込みとレーベル印刷を行ってメディアを制作して発行可能なCD/DVDパブリッシャなどのメディア処理装置が知られている。この種のメディア処理装置は、メディアへデータを書き込むドライブ及びメディアのレーベル面に印刷を施すプリンタを備えている。
そして、この種のメディア処理装置は、プリンタやドライブにてメディアを載置したトレイを水平移動させるべく、駆動プーリと従動プーリとにタイミングベルトを巻き掛け、このタイミングベルトにトレイを固定したベルト駆動機構を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,927,208号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動体であるトレイが、ユーザが誤って落としたディスクなどの異物に干渉したり、ユーザによる接触でその動きが妨げられたりすると、タイミングベルトの移動負荷が異常に増加する。その異常を検出するために、駆動プーリを回転させるサーボモータの負荷変動を検出することが行われているが、プーリに対してタイミングベルトが歯飛びすると、負荷変動が抑制され、異常の検出が困難であった。
【0005】
この場合、駆動プーリに対するベルトの歯飛びを防止する各種機構を設ければ良いが、駆動制御部は、サーボモータのエンコード情報に基づいてトレイを所定位置まで移動させようとしてサーボモータの回転数を保つように、サーボモータへの駆動電流を増加してしまう。このため、サーボモータには、より大きなトルクが生じ、ベルト駆動機構などの各部材が破損、損傷するなどの不具合が生じてしまうおそれがある。また、ユーザが機器内の他の部材とトレイとの間に手を挟んだ場合には、強い力で挟まれてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、移動体が異常停止するなどしてタイミングベルトの駆動負荷が増加しても、機器の損傷を防ぐとともにユーザに対する安全性を保障することのできるベルト駆動機構及びそれを備えたメディア処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明に係るベルト駆動機構は、駆動源によって回転される駆動プーリと回転可能に支持された従動プーリとにタイミングベルトが巻き掛けられ、前記駆動プーリの回転による前記タイミングベルトの走行によって移動体を移動させるベルト駆動機構であって、前記タイミングベルトに対して弾性部材により移動可能に支持される張力付与部材を有し、前記弾性部材の付勢力により前記張力付与部材を介して前記タイミングベルトに張力を付与する張力付与機構を備え、前記駆動プーリは、前記タイミングベルトの張力増加時に前記弾性部材の付勢力に抗して前記張力付与部材が変位することにより、その回転駆動力が減少するように制御されることを特徴とする。
【0008】
この構成のベルト駆動機構によれば、張力付与機構が弾性部材の付勢力によって張力付与部材からタイミングベルトに張力を付与しており、移動体が異常停止する等によりタイミングベルトの駆動負荷が異常に増加した時に、タイミングベルトの張力も異常に増加するため、弾性部材の付勢力に抗して張力付与部材が変位する。そして、張力付与部材の変位によって駆動プーリの回転駆動力が減少するように制御されるため、移動体の移動が妨げられても駆動プーリが駆動し続けることによる各部材への大きな負荷の作用を抑制し、機器の損傷を防ぐとともにユーザに対する安全性を保障することができる。なお、駆動プーリの回転駆動力が減少するように制御されるとは、回転駆動力を小さくすること、完全に停止すること、逆転させること、を含む。
【0009】
また、本発明に係るベルト駆動機構において、前記従動プーリは、前記張力付与部材に支持され、前記弾性部材により前記駆動プーリから離れる方向に付勢されていることが好ましい。
この構成によれば、移動体の負荷が異常増加した時には移動体の負荷がタイミングベルトに作用して、張力付与部材に支持された従動プーリが弾性部材の付勢力に抗して駆動プーリに接近する方向へ変位する。その際、駆動プーリの回転駆動力が減少するように制御されて移動体にかかる負荷を減少することができる。
【0010】
また、本発明に係るベルト駆動機構において、前記張力付与部材は、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間で前記タイミングベルトの外周面に接触するテンションローラを支持していることが好ましい。
この構成によれば、移動体の負荷が異常増加した時には移動体の負荷がタイミングベルトに作用して、タイミングベルトの張力増加によってタイミングベルトがテンションローラを変位させる。その際、駆動プーリの回転駆動力が減少するように制御されて移動体にかかる負荷を減少することができる。
【0011】
また、本発明に係るベルト駆動機構において、前記張力付与部材の変位を検出するセンサと、前記センサからの検出信号に基づいて前記駆動源を制御する制御部とを備えていることが好ましい。
この構成によれば、張力付与部材の変位を検出するセンサからの検出信号によって制御部が駆動源を制御することにより、移動体の移動が妨げられても駆動源が駆動し続けることによる各部材への大きな負荷の作用を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係るベルト駆動機構において、前記張力付与部材の変位により前記駆動源への駆動電流の供給を遮断するスイッチを備えていることが好ましい。
この構成によれば、張力付与部材の変位によってスイッチが作動することにより、駆動源への駆動電流の供給が遮断されて停止されるので、移動体の移動が妨げられても駆動源が駆動し続けることによる各部材への大きな負荷の作用を抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係るベルト駆動機構において、前記張力付与部材の変位によって作動し、前記駆動源の回転を制動させる制動部材を備えていることが好ましい。
この構成によれば、張力付与部材の変位によって制動部材が駆動源の回転を制動するので、移動体の移動が妨げられても駆動源が駆動し続けることによる各部材への大きな負荷の作用を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係るメディア処理装置は、メディアを保持した状態で移動するメディアトレイと、前記メディアトレイ上のメディアに対して情報処理を行う処理部とを備えたメディア処理装置であって、本発明に係るベルト駆動機構によって前記メディアトレイが前記移動体として移動されることを特徴とする。
この構成のメディア処理装置によれば、メディアトレイが異物などに干渉して異常停止しても故障などの不具合なく、メディアの処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るベルト駆動機構及びそれを備えたメディア処理装置の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、パブリッシャからなるメディア処理装置を例にとって説明する。
図1はパブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図、図2はパブリッシャのケースを外した状態の前方側の斜視図、図3はパブリッシャのケースを外した状態の後方側の斜視図、図4はパブリッシャに設置されたレーベルプリンタ部分の斜視図である。
【0016】
パブリッシャ1は、例えばCDあるいはDVD等の円板状のメディアへのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷を行うメディア処理装置であり、ほぼ直方体形状のケース2を備えている。このケース2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉3,4が取り付けられている。ケース2の上側左端部には、表示ランプ、操作ボタンなどが配列された操作面5が設けられており、また、ケース2の下端には、メディア排出口6が設けられている。
【0017】
正面視右側の開閉扉3は、未使用のブランクメディアMAをセットする時、あるいは作成済みメディアMBを取り出すときに開閉する扉である。
また、正面視左側の開閉扉4は、レーベルプリンタ11のインクカートリッジ12の入れ換え時に開閉するためのものであり、この開閉扉4を開けると、鉛直方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14(図2参照)が露出するようになっている。
【0018】
図2にも示すように、メディア処理装置1のケース2の内部には、データ書き込み処理が行われていない複数枚の未使用のブランクメディアMAをスタック可能なメディア保管部としてのブランクメディアスタッカ21と、作成済みメディアMBが保管されるメディア保管部としての作成済みメディアスタッカ22が同軸状態で上下に配置されている。ブランクメディアスタッカ21及び作成済みメディアスタッカ22は、それぞれ図2に示した所定位置に対して着脱自在である。
【0019】
ブランクメディアスタッカ21は、左右一対の円弧状の枠板24,25を備えており、これにより、ブランクメディアMAを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収納可能な構成をなしている。ブランクメディアスタッカ21にブランクメディアMAを収納あるいは補充する作業は、開閉扉3を開けてスタッカを取り出すことにより、簡単に行うことが可能となっている。
【0020】
下側の作成済みメディアスタッカ22も同一構造となっており、左右一対の円弧状の枠板27,28を備えており、これによって、作成済みメディアMBを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収納可能なスタッカが構成されている。
【0021】
また、開閉扉3からは、作成済みメデイアMB(すなわち、データの書き込み、及びレーベル面印刷が終了したメディア)を取り出すこともできる。
【0022】
これらのブランクメディアスタッカ21及び作成済みメディアスタッカ22の後側には、メディア搬送機構31が配置されている。メディア搬送機構31は、ベース72に取り付けられている水平支持板部34上に垂直に設けられている垂直ガイド軸35を有している。この垂直ガイド軸35に搬送アーム36が昇降および旋回可能な状態で支持されている。搬送アーム36は、駆動モータ37によって垂直ガイド軸35に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸35を中心に左右に旋回可能である。メディア搬送機構31によってメディア排出口6に搬送されてきたメディアは、このメディア排出口6から外部に取り出すことが可能である。
【0023】
上下のスタッカ21,22及びメディア搬送機構31の側方の部位には、上下に積層された2つのメディアドライブ41が配置され、これらメディアドライブ41の下側にレーベルプリンタ11の後述するキャリッジ62(図4参照)が移動可能に配置されている。
メディアドライブ41は、メディアへのデータ書き込み位置とメディアの受け取り及び受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ41aをそれぞれ有している。
【0024】
また、レーベルプリンタ11は、メディアのレーベル面へのレーベル印刷可能な位置とメディアの受け取り及び受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ51を有している。
【0025】
図2及び図3では、上側のメディアドライブ41のメディアトレイ41aが手前に引き出されてメディア受け渡し位置にある状態及び下側のレーベルプリンタ11のメディアトレイ51が奥側のレーベル印刷可能位置にある状態が示されている。また、レーベルプリンタ11はインクジェットプリンタであり、インク供給機構71として各色(本実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色)のインクカートリッジ12が用いられ、これらのインクカートリッジ12がカートリッジ装着部14の各カートリッジホルダ13に前方から装着されている。
【0026】
ここで、ブランクメディアスタッカ21の左右一対の枠板24,25の間及び作成済みメディアスタッカ22の左右一対の枠板27,28の間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、これら上下のブランクメディアスタッカ21と作成済みメディアスタッカ22との間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が水平に旋回して、作成済みメディアスタッカ22の真上に位置できるように隙間が開いている。さらに、メディアトレイ41aをメディアドライブ41に押し込むと、メディア搬送機構31の搬送アーム36を下降させて、メディア受け渡し位置にあるメディアトレイ51にアクセス可能となっている。したがって、搬送アーム36の昇降及び左右への旋回の組み合わせ動作によって、メディアを各部に搬送することが可能とされている。
【0027】
メディアトレイ51のメディア受け渡し位置の下方には、廃棄用メディアMDを保管するための廃棄用スタッカ52が配置されており、この廃棄用スタッカ52には、例えば30枚程度の廃棄用メディアMDが保管可能とされている。メディアトレイ51が廃棄用スタッカ52の上方のメディア受け渡し位置からデータ書き込み位置へ退避した状態にてメディア搬送機構31の搬送アーム36により、廃棄用メディアMDを廃棄用スタッカ52に供給可能となっている。
【0028】
このような構成により、CDあるいはDVDであるメディアは、ブランクメディアスタッカ21、作成済みメディアスタッカ22、廃棄用スタッカ52、メディアドライブ41のメディアトレイ41a及びレーベルプリンタ11のメディアトレイ51間を、メディア搬送機構31の搬送アーム36によって搬送される。
【0029】
次に、レーベルプリンタ11の構成について説明する。
図2から図4にも示すように、レーベルプリンタ11はインクジェットヘッド61を有するキャリッジ62を備えており、このキャリッジ62は、キャリッジガイド軸63に沿って、水平方向に往復移動可能に支持されている。そして、このキャリッジ62は、キャリッジガイド軸63に沿って水平に架け渡したタイミングベルトであるキャリッジベルト64と、これを駆動するためのキャリッジモータ65とを備えている。レーベルプリンタ11のキャリッジ62には、インク供給機構71と接続された可撓性を有するインク供給チューブ73が接続されている。
【0030】
キャリッジ62に搭載されているインクジェットヘッド61は、そのノズル面が下向きとされており、インクジェットヘッド61の下側位置を、前後方向に水平にメディアトレイ51が往復移動可能となっている。メディアトレイ51は、その右側の端が、前後方向に水平に延びるガイド軸102によって支持され、その左側の端が、スライド可能な状態で、前後方向に水平に延びるガイドレール104によって支持されている。このメディアトレイ51の駆動機構も、前後方向に水平に架け渡したトレイベルト113と、これを駆動するためのトレイモータ124とを備えた構成となっている。
【0031】
メディアトレイ51は、矩形の板の上面に、メディアの外周端面と当接してメディアの移動を規制するための円形の低い凸部51aを備えている。
また、この凸部51aの中心部には、同心円上において120度間隔に配置された3本の垂直爪(図示省略)を備えている。3本の垂直爪は、半径方向に一体となって移動可能であり、メディアトレイ51がメディア受け渡し位置に移動するとカム機構(図示省略)により半径方向内側に移動する構造となっている。
【0032】
メディア受け渡し位置において、メディアを、そのレーベル面を上向きにして、上から凸部51a内に落とすと、メディアのセンターホールに3本の垂直爪が差し込まれた状態になる。この後に、トレイモータ124を駆動して、メディアトレイ51をガイド軸102に沿って後側(図4の右奥側)に移動させると、前述のカムの作用により3本の垂直爪が半径方向の外方に僅かに移動し、これら3本の垂直爪がメディアのセンターホールの内周面に内側から押し付けられた状態になる。これにより、メディアがメディアトレイ51に保持される。メディアトレイ51をインクジェットヘッド61の印字領域内まで移動させれば、インクジェットヘッド61によって、メディアのレーベル面に所定の印刷を施すことができる。
【0033】
次に、メディアトレイ51を移動させるベルト駆動機構について説明する。
図5はベルト駆動機構の概略平面図、図6はベルト駆動機構の概略側面図である。
ベルト駆動機構100によって移動されるメディアトレイ51は、その一側部に設けられたスライド軸受101に、装置の前後方向に水平に延びるガイド軸102が貫通して配置され、また、他側部に設けられたスライド片103が、装置の前後方向に延びるガイドレール104にスライド可能に載置されている。これにより、メディアトレイ51は、ガイド軸102及びガイドレール104によって装置の前後方向にスライド可能に支持されている。
【0034】
ガイド軸102は、装置の前後方向に配設されたフレーム105に沿って間隔をあけて配置されており、その両端が、フレーム105の両端に設けられた固定板106に固定されている。
フレーム105には、装置後方側の端部近傍に、トレイ駆動プーリ(駆動プーリ)111が回転可能に設けられ、装置前方側の端部近傍に、トレイ従動プーリ(従動プーリ)112が回転可能に設けられている。そして、これらトレイ駆動プーリ111及びトレイ従動プーリ112には、タイミングベルトであるトレイベルト113が巻き掛けられており、このトレイベルト113には、ベルトクランプ114によってメディアトレイ51の一側部が固定されている。これにより、メディアトレイ51は、トレイベルト113が走行されることにより、その走行方向に沿ってスライドされる。
【0035】
トレイ駆動プーリ111の回転軸121には、エンコード板122及び伝達プーリ123が固定されている。また、フレーム105の下方には、トレイモータ124が設けられており、このトレイモータ124の駆動軸125には、モータプーリ126が設けられている。そして、これら伝達プーリ123及びモータプーリ126には、タイミングベルトであるモータベルト127が巻き掛けられている。なお、モータベルト127の走行においては、モータプーリ126が駆動プーリとして機能し、伝達プーリ123が従動プーリとして機能する。
【0036】
エンコード板122には、その周縁に沿って複数の位置検出用スリットが等間隔に形成されており、位置検出器(図示省略)がエンコード板122の位置検出用スリットを検出するようになっている。そして、この位置検出器からの検出信号に基づいてメディアトレイ51の位置が検出可能とされている。
【0037】
図6に示すように、トレイ駆動プーリ111とトレイベルト113の接線近傍には、ベルト押さえ機構131が設けられている。このベルト押さえ機構131は、基端部がフレーム105に対して揺動可能に支持されたレバー132と、このレバー132の揺動端に回転自在に支持された押さえローラ133とを有しており、バネ(図示省略)によってレバー132の揺動端がトレイ駆動プーリ111側へ付勢されている。そして、このベルト押さえ機構131は、押さえローラ133がトレイベルト113の外周部をトレイ駆動プーリ111に押圧付勢され、トレイ駆動プーリ111に対するトレイベルト113の歯飛びを抑制している。
【0038】
また、トレイ従動プーリ112は、張力付与機構141によりトレイ駆動プーリ111から離間する方向へ付勢された状態で支持されている。この張力付与機構141は、フレーム105に支持されたプーリ支持部142を有しており、このプーリ支持部142に、トレイ従動プーリ112が回転可能に支持されている。このプーリ支持部142は、フレーム105に対してスライド可能に支持されており、このプーリ支持部142とフレーム105との間には、プーリ支持部142を、トレイ駆動プーリ111から離間する方向へ付勢する引っ張りバネからなる付勢部材143が設けられている。これにより、トレイ従動プーリ112は、張力付与機構141によって、トレイ駆動プーリ111から離間する方向に付勢され、これらトレイ駆動プーリ111及びトレイ従動プーリ112に巻き掛けられたトレイベルト113に所定の張力が付与される。
【0039】
また、この張力付与機構141の近傍には、接触式の異常検出センサ151が設けられている。この異常検出センサ151は、接触子152を有しており、この接触子152は、プーリ支持部142からトレイ駆動プーリ111側に所定距離離れた位置に配置されている。そして、この異常検出センサ151は、トレイモータ124を駆動させる制御部153に接続されており、検出結果が制御部153に送信される。
【0040】
また、モータベルト127にも、張力付与機構161が設けられている。この張力付与機構161は、基端部がフレーム105に揺動可能に支持された張力付与部材であるレバー162と、このレバー162の揺動端に回転自在に支持されたテンションローラ163とを有しており、引っ張りバネからなる付勢部材164によってレバー162の揺動端がモータベルト127に対して交差する方向におけるモータベルト127側(上側)へ付勢されている。そして、この張力付与機構161は、テンションローラ163がモータベルト127の外周部を押圧付勢し、モータプーリ126及び伝達プーリ123に巻き掛けられたモータベルト127に所定の張力が付与され、モータベルト127の張力変動をテンションローラ163の変位により吸収するようになっている。
【0041】
そして、上記ベルト駆動機構100では、トレイモータ124が駆動して駆動軸125が回転されると、この駆動軸125の回転力が、モータプーリ126及び伝達プーリ123に巻き掛けられたモータベルト127によってトレイ駆動プーリ111の回転軸121に伝達され、トレイ駆動プーリ111が回転される。このようにトレイ駆動プーリ111が回転されると、このトレイ駆動プーリ111及びトレイ従動プーリ112に巻き掛けられたトレイベルト113が走行し、これにより、トレイベルト113に固定されたメディアトレイ51が装置の前後方向に移動される。
【0042】
ここで、図7に示すように、メディアトレイ51が装置前方(右側)へ向けて移動中に、例えば、ユーザが落としたメディアなどの異物Aに干渉して異常停止した場合でも、トレイベルト113は、ベルト押さえ機構131によってトレイ駆動プーリ111に押圧付勢されて歯飛びが防止されているので、歯飛びすることなくトレイ駆動プーリ111によって走行される。
【0043】
これにより、図8に示すように、トレイベルト113は、メディアトレイ51の移動方向後端からトレイ駆動プーリ111に至る部分で弛みが生じるとともに、メディアトレイ51の移動方向前端からトレイ従動プーリ112を介してトレイ駆動プーリ111に至る部分で大きな張力が生じる。
これにより、トレイ従動プーリ112は、トレイベルト113の張力によって、張力付与機構141の付勢部材143の付勢力に抗してトレイ駆動プーリ111側へ引き寄せられる。
【0044】
すると、トレイ従動プーリ112とともに張力付与機構141のプーリ支持部142がトレイ駆動プーリ111側へ移動し、このプーリ支持部142によって異常検出センサ151の接触子152が押圧され、これにより、異常検出センサ151から制御部153に検出信号が出力される。
制御部153では、異常検出センサ151からの検出信号に基づいて、ベルト駆動機構100に異常が生じていると判断し、トレイモータ124の駆動を停止させる。
【0045】
このように、上記実施形態に係るベルト駆動機構100によれば、メディアトレイ51が異常停止すると、張力付与機構141のプーリ支持部142の変位によって異常検出センサ151が作動し、その異常検出センサ151からの検出信号に基づいて制御部153がトレイモータ124の駆動を制御して、トレイ駆動プーリ111の回転駆動力を減少させるので、メディアトレイ51の移動が妨げられてもトレイモータ124及びトレイ駆動プーリ111が駆動し続けることによる各部材への大きな負荷の作用を抑制し、機器の損傷を防ぐことができる。また、ユーザの接触によりメディアトレイ51の移動が妨げられた場合でも、ユーザの手を強く挟んでしまうなどの不具合を防止してユーザに対する安全性を保障することができる。
したがって、このベルト駆動機構100を備えたパブリッシャ1によれば、メディアトレイ51が異物などに干渉して異常停止しても故障などの不具合なく、メディアの処理を行うことができる。
【0046】
なお、上記の例では、異常検出センサ151からの検出信号に基づいて、制御部153がトレイモータ124の駆動を停止させたが、完全に停止させずに駆動力を減少させるようにしても良い。また、このトレイモータ124の駆動を逆転させても良い。
また、図9に示すように、異常検出センサ151に代えて、プーリ支持部142が接触子154に接触することによりOFFするスイッチ155を設け、このスイッチ155によってトレイモータ124への駆動電流の供給を遮断する構造としても良い。
【0047】
また、図10に示すものは、制動機構171を設けたものである。この制動機構171は、作動棒部172と作用棒部173とを有する制動部材174を備えている。この制動部材174は、作動棒部172及び作用棒部173の一端が連結され、この連結箇所がトレイモータ124の駆動軸125と同一方向の軸を中心として回動可能に支持されている。
作動棒部172は、張力付与機構141のプーリ支持部142に対して、トレイ駆動プーリ111側の近傍に配置されており、作用棒部173は、トレイモータ124のモータプーリ126の外周近傍に配置されている。
【0048】
制動部材174は、巻バネ(図示省略)の付勢力によって図10中時計回りへ回転力が付与されており、作動棒部172の時計回りへの回転方向前方側に設けられた係止部175に作動棒部172が当接している。
また、作用棒部173には、モータプーリ126側にブレーキパッド176が設けられている。
【0049】
そして、上記制動機構171を備えたベルト駆動機構100によれば、異物Aによってメディアトレイ51が停止し、トレイ従動プーリ112とともに張力付与機構141のプーリ支持部142がトレイ駆動プーリ111側へ移動すると、このプーリ支持部142が作動棒部172に当接する。これにより、制動部材174が巻バネの付勢力に抗して反時計回りに回転し、作用棒部173のブレーキパッド176がトレイモータ124のモータプーリ126に接触する。これにより、モータプーリ126が制動され、トレイ駆動プーリ111の回転駆動力が減少してメディアトレイ51の移動力が大幅に抑制される。
なお、トレイモータ124のトルクが大きくなることにより、制御部153は、その電圧変動により、異常を検出し、トレイモータ124の駆動を停止する。
【0050】
また、上記実施形態では、メディアトレイ51が装置前方(右側)へ向けて移動中に、装置前方側の異物Aと干渉して異常停止した際の張力付与機構141のプーリ支持部142の変位によってトレイベルト113の走行を強制的に停止あるいは抑制したが、モータベルト127に張力を付与する張力付与機構161のレバー162の変位によってトレイベルト113の走行を強制的に停止あるいは抑制することもできる。
【0051】
例えば、図11に示すように、メディアトレイ51が装置後方(左側)へ向けて移動中に、装置後方側の異物Bと干渉して異常停止した際には、トレイ駆動プーリ111及び伝達プーリ(従動プーリ)123の回転が阻害されるがモータプーリ(駆動プーリ)126は変わらず駆動されるため、テンションローラ163が接触した側のモータベルト127で張力が異常に増加して、付勢部材164の付勢力に抗してテンションローラ163及びレバー162を大きく下方に変位させることになる。そこで、例えば、レバー(張力付与部材)162の下方に異常検出センサ151を設けておくことで、メディアトレイ51の異常停止によるレバー162の異常変位を検出して、その検出信号に基づいて制御部153がトレイモータ124の駆動を制御して、トレイ駆動プーリ111の回転駆動力を減少させることができる。
【0052】
つまり、レバー162の変位によって異常検出センサ151の接触子152を作動させてトレイモータ124の回転を制御したり、レバー162の変位によってスイッチ155を作動させてトレイモータ124の回転を停止させたり、あるいはレバー162の変位によって制動機構171の制動部材174を回動させてトレイモータ124の回転力を抑えてトレイベルト113の走行を強制的に停止あるいは抑制しても良い。
【0053】
また、図11に示した構成は、図6,図9,図10に示した各構成と組み合わせて実施することも可能である。その場合、メディアトレイ51がどちらの方向に移動する際でも、異常停止時の対応が可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態における各種の機構は、上記の例に限定されない。例えば、上記の例では、ベルト押さえ機構131を設けることにより、トレイ駆動プーリ111に対するトレイベルト113の歯飛びを防止したが、図12に示すように、トレイ駆動プーリ111の周囲の一部に、円弧状のストッパ181を設け、このストッパ181によってトレイベルト113のトレイ駆動プーリ111からの離間を防止し、トレイ駆動プーリ111からのトレイベルト113の歯飛びを防止しても良い。
【0055】
また、張力付与部材であるプーリ支持部142やレバー162の変位を検出するセンサは、上記の接触式のものに限らず、非接触式のものを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】パブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図である。
【図2】パブリッシャのケースを外した状態の前方側の斜視図である。
【図3】パブリッシャのケースを外した状態の後方側の斜視図である。
【図4】パブリッシャに設置された記録装置部分の斜視図である。
【図5】ベルト駆動機構の概略平面図である。
【図6】ベルト駆動機構の概略側面図である。
【図7】ベルト駆動機構の動作を説明する概略側面図である。
【図8】ベルト駆動機構の動作を説明する概略側面図である。
【図9】ベルト駆動機構の他の構造を説明する概略側面図である。
【図10】ベルト駆動機構の他の構造を説明する概略側面図である。
【図11】ベルト駆動機構の他の構造を説明する概略側面図である。
【図12】歯飛び防止構造の他の例を説明するベルト駆動機構の一部の側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…パブリッシャ(メディア処理装置)、51…メディアトレイ(移動体)、61…インクジェットヘッド(処理部)、100…ベルト駆動機構、111…駆動プーリ、112…従動プーリ、113…タイミングベルト(ベルト)、124…トレイモータ(駆動源)、141,161…張力付与機構、142…プーリ支持部(張力付与部材)、143…付勢部材、151…センサ、153…制御部、155…スイッチ、162…レバー(張力付与部材)、174…制動部材、M…メディア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって回転される駆動プーリと回転可能に支持された従動プーリとにタイミングベルトが巻き掛けられ、前記駆動プーリの回転による前記タイミングベルトの走行によって移動体を移動させるベルト駆動機構であって、
前記タイミングベルトに対して弾性部材により移動可能に支持される張力付与部材を有し、前記弾性部材の付勢力により前記張力付与部材を介して前記タイミングベルトに張力を付与する張力付与機構を備え、
前記駆動プーリは、前記タイミングベルトの張力増加時に前記弾性部材の付勢力に抗して前記張力付与部材が変位することにより、その回転駆動力が減少するように制御されることを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト駆動機構であって、
前記従動プーリは、前記張力付与部材に支持され、前記弾性部材により前記駆動プーリから離れる方向に付勢されていることを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項3】
請求項1に記載のベルト駆動機構であって、
前記張力付与部材は、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間で前記タイミングベルトの外周面に接触するテンションローラを支持していることを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のベルト駆動機構であって、
前記張力付与部材の変位を検出するセンサと、前記センサからの検出信号に基づいて前記駆動源を制御する制御部とを備えていることを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載のベルト駆動機構であって、
前記張力付与部材の変位により前記駆動源への駆動電流の供給を遮断するスイッチを備えていることを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項6】
請求項1から3の何れか一項に記載のベルト駆動機構であって、
前記張力付与部材の変位によって作動し、前記駆動源の回転を制動させる制動部材を備えていることを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項7】
メディアを保持した状態で移動するメディアトレイと、前記メディアトレイ上のメディアに対して情報処理を行う処理部とを備えたメディア処理装置であって、
請求項1から6の何れか一項に記載のベルト駆動機構によって前記メディアトレイが前記移動体として移動されることを特徴とするメディア処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−180280(P2008−180280A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14180(P2007−14180)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】