説明

ベーンポンプ

【課題】作動油の吸い込み不良を防止することができるベーンポンプを提供する。
【解決手段】メインポンプ室41及びサブポンプ室42から油圧機器110に作動流体を供給するベーンポンプ100において、作動流体を貯留するタンク120とメインポンプ室41とを連通するメイン吸込通路60と、メインポンプ室41と油圧機器110とを連通するメイン吐出通路70と、メイン吸込通路60の分岐部61から分岐しタンク120とサブポンプ室42とを連通するサブ吸込通路80と、サブポンプ室42と油圧機器110とを連通するサブ吐出通路90と、タンク120とメインポンプ室41とが連通しないように分岐部61よりも下流側のメイン吸込通路60を遮断するとともにサブポンプ室42から吐出された作動流体がメインポンプ室41に供給されるようにサブ吐出通路90をメイン吸込通路60に接続して作動流体の流路を切替可能な弁機構200と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器に作動流体としての作動油を供給する油圧供給源として使用されるベーンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動軸に連結されるロータと、ロータに対して径方向に移動可能に設けられる複数のベーンと、ベーンの先端が摺動可能な内周面を有するカムリングと、ベーン、ロータ、及びカムリングによって画成されるメインポンプ室及びサブポンプ室と、タンクに貯留された作動油をメインポンプ室及びサブポンプ室に導く吸込通路と、メインポンプ室及びサブポンプ室から油圧機器に作動油を導く吐出通路と、を備えるベーンポンプが開示されている。
【0003】
このベーンポンプでは、ロータの回転速度に応じて、油圧機器に対する作動油の吐出流量が変化する。そのため、ロータが高回転速度である場合には、サブポンプ室から吐出された作動油を吸込通路に還流することによって、ベーンポンプの吐出流量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−299471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなベーンポンプでは、作動油が吸込通路を介して常にメインポンプ室及びサブポンプ室の両方に供給されるため、ロータの高回転速度時には吸込通路に吸い込まれる作動油の吸込流量が増加しやすく、タンクとの接続位置近傍の吸込通路内でキャビテーションが生じおそれがある。このように、ベーンポンプにおいて作動油の吸い込み不良が発生すると、ベーンポンプから油圧機器に作動油を安定的に供給することができない。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作動流体の吸い込み不良を防止することができるベーンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動軸に連結されるロータと、前記ロータに対して径方向に移動可能に設けられる複数のベーンと、前記ベーンの先端が摺動可能な内周面を有するカムリングと、前記ベーン、前記ロータ、及び前記カムリングによって画成されるメインポンプ室及びサブポンプ室と、を備え、前記メインポンプ室及び前記サブポンプ室から油圧機器に作動流体を供給するベーンポンプにおいて、作動流体を貯留するタンクと、前記タンクと前記メインポンプ室とを連通するメイン吸込通路と、前記メインポンプ室と前記油圧機器とを連通するメイン吐出通路と、前記メイン吸込通路の分岐部から分岐し、前記タンクと前記サブポンプ室とを連通するサブ吸込通路と、前記サブポンプ室と前記油圧機器とを連通するサブ吐出通路と、前記タンクと前記メインポンプ室とが連通しないように前記分岐部よりも下流側の前記メイン吸込通路を遮断するとともに、前記サブポンプ室から吐出された作動流体が前記メインポンプ室に供給されるように前記サブ吐出通路を前記メイン吸込通路に接続して、作動流体の流路を切替可能な弁機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロータの高回転速度時等において、ベーンポンプは、サブポンプ室によってタンク内の作動流体を吸い込み、吸い込んだ作動流体をメインポンプ室に導いて、メインポンプ室から油圧機器に作動流体を供給することができる。そのため、ベーンポンプにおける作動流体の吸込流量はメインポンプ室及びサブポンプ室の両方によって作動流体を吸い込む従来のベーンポンプの吸込流量よりも少なくなる。これにより、タンクとの接続位置近傍のメイン吸込通路内においてキャビテーションが発生することを抑制でき、ベーンポンプにおける作動流体の吸い込み不良を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態によるベーンポンプの平面図であって、ポンプカバーを外した状態を示す図である。
【図2】全吐出状態におけるベーンポンプの油圧回路図である。
【図3】半吐出状態におけるベーンポンプの油圧回路図である。
【図4】変形例によるベーンポンプの平面図であって、ポンプカバーを外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態によるベーンポンプ100について説明する。
【0011】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態によるベーンポンプ100の構成を説明する。
【0012】
図1に示すように、ベーンポンプ100は、車両に搭載されるパワーステアリング装置や変速機等の油圧供給源として用いられるポンプである。このベーンポンプ100は、駆動軸1の端部に連結されるロータ10と、ロータ10に対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン20と、ベーン20の先端部が摺動可能なカム面31を有するカムリング30と、を備える。
【0013】
駆動軸1は、車両が備えるエンジンの動力に基づいて回転駆動される。駆動軸1の端部に固定されるロータ10は、駆動軸1の回転に伴って回転する。図1において、ロータ10は時計回りに回転する。
【0014】
ロータ10には、外周面及び両端面に開口するように形成されたスリット11が複数設けられる。これらスリット11は、ロータ10の回転中心に対して放射状に配置される。スリット11には、ベーン20が摺動自在に挿入される。スリット11の根元部分には、ベーンポンプ100から吐出された作動油の一部が導かれる背圧室12が形成される。ベーン20は背圧室12内の作動油によって径方向外側に押し出され、ベーン20の先端部はカムリング30の内周面としてのカム面31に当接する。ロータ10の外周面、カムリング30のカム面31、及び隣り合うベーン20によって複数のポンプ室40が区画される。
【0015】
カムリング30は、ロータ10を収容可能な環状部材である。カムリング30の内周面がカム面31として構成され、カム面31は平面視において略長円形状に形成されている。カムリング30のカム面31には、ポンプ室40の容積が拡張する二つの吸込領域32A、32Bと、ポンプ室40の容積が収縮する二つの吐出領域33A、33Bとが形成される。したがって、ポンプ室40はロータ10の回転に伴って拡縮する。
【0016】
なお、吸込領域32A及び吸込領域32Bはカムリング30の軸心に対して略対称となる位置に設けられ、吐出領域33A及び吐出領域33Bもカムリング30の軸心に対して略対称となる位置に設けられる。
【0017】
駆動軸1は、図示しない軸受によって、ポンプボディ2に対して回転自在に支持される。ポンプボディ2は、ロータ10、カムリング30、及びサイドプレート3を収容可能な収容凹部2Aを備える。
【0018】
収容凹部2A内には、サイドプレート3及びカムリング30が積層状態で配置される。ポンプボディ2の開口側の端部2Bには図示しないポンプカバーが締結され、このポンプカバーによって収容凹部2Aは封止される。
【0019】
図2に示すように、サイドプレート3に対向するポンプカバーの端面には、吸込領域32Aに対応して開口し、吸込領域32Aに位置するポンプ室40に作動油を供給する円弧状の吸込ポート51Aと、吸込領域32Bに対応して開口し、吸込領域32Bに位置するポンプ室40に作動油を供給する円弧状の吸込ポート51Bとが形成される。
【0020】
また、ポンプカバーに対向するサイドプレート3の端面には、吐出領域33Aに対応して開口し、吐出領域33Aに位置するポンプ室40の作動油を吐出する円弧状の吐出ポート52Aと、吐出領域33Bに対応して開口し、吐出領域33Bに位置するポンプ室40の作動油を吐出する円弧状の吐出ポート52Bとが形成される。
【0021】
ポンプ室40は、ロータ10が一回転する過程で、吸込領域32Aにて吸込ポート51Aを通じて作動油を吸込み、吸込んだ作動油を吐出領域33Aにて吐出ポート52Aを通じて吐出し、その後吸込領域32Bにて吸込ポート51Bを通じて作動油を吸込み、吸込んだ作動油を吐出領域33Bにて吐出ポート52Bを通じて吐出する。このように、ポンプ室40は、ロータ10が一回転する過程において作動油の吸込吐出を2回行う。
【0022】
吸込領域32Aから吐出領域33Aまでの範囲にある各ポンプ室40がメインポンプ室41を構成し、吸込領域32Bから吐出領域33Bまでの範囲にある各ポンプ室40がサブポンプ室42を構成する。したがって、メインポンプ室41は、吸込ポート51Aを通じて作動油を吸込み、吐出ポート52Aを通じて作動油を吐出する。また、サブポンプ室42は、吸込ポート51Bを通じて作動油を吸込み、吐出ポート52Bを通じて作動油を吐出する。
【0023】
なお、ベーンポンプ100では、メインポンプ室41及びサブポンプ室42からの作動油の吐出流量がそれぞれ等しくなるように、メインポンプ室41の容積及びサブポンプ室42の容積は略同一となるように設定されている。
【0024】
図1に示すように、サイドプレート3には、二つの位置決めピン4が立設して結合される。位置決めピン4は、カムリング30に形成された貫通孔34を挿通した状態で、ポンプカバーの係合穴に挿入される。これら位置決めピン4によって、カムリング30に対するポンプカバーとサイドプレート3との相対回転が規制される。これにより、カムリング30の吸込領域32A、32Bとポンプカバーの吸込ポート51A、51Bとの位置決め、及びカムリング30の吐出領域33A、33Bとサイドプレート3の吐出ポート52A、52Bとの位置決めが行われる。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、ベーンポンプ100の油圧回路について説明する。
【0026】
図2は、メインポンプ室41及びサブポンプ室42から吐出された作動油が油圧機器110へと供給される全吐出状態を示す。図3は、メインポンプ室41から吐出された作動油が油圧機器110へと供給される半吐出状態を示す。図2及び図3において、細矢印は作動油の流れ方向を示している。
【0027】
メインポンプ室41は、メイン吸込通路60を介して、作動油を貯留するタンク120と連通する。メイン吸込通路60の一端は作動油を貯留するタンク120に接続し、メイン吸込通路60の他端はポンプカバーの吸込ポート51Aに接続する。
【0028】
また、メインポンプ室41は、メイン吐出通路70を介して、油圧機器110と連通する。メイン吐出通路70の一端はポンプカバーの吐出ポート52Aに接続し、メイン吐出通路70の他端は油圧機器110の作動油流入部に接続する。
【0029】
サブポンプ室42は、サブ吸込通路80を介してタンク120と連通する。サブ吸込通路80は、メイン吸込通路60の分岐部61から分岐する通路である。サブ吸込通路80の一端はメイン吸込通路60の分岐部61に接続し、サブ吸込通路80の他端はポンプカバーの吸込ポート51Bに接続する。
【0030】
また、サブポンプ室42は、サブ吐出通路90を介して油圧機器110と連通する。サブ吐出通路90は、メイン吐出通路70の合流部71に合流する通路である。サブ吐出通路90の一端はポンプカバーの吐出ポート52Bに接続し、サブ吐出通路90の他端はメイン吐出通路70の合流部71に接続する。
【0031】
ベーンポンプ100のメインポンプ室41から吐出された作動油は、メイン吐出通路70を通じて常時油圧機器110に供給される。これに対して、ベーンポンプ100のサブポンプ室42から吐出された作動油は、サブ吐出通路90に介装されたスプール弁200によって選択的に油圧機器110に供給される。
【0032】
スプール弁200は、サブ吐出通路90及びメイン吸込通路60における作動油の流路を切り替え可能に構成された弁機構である。スプール弁200は、サブ吐出通路90及び分岐部61よりも下流側のメイン吸込通路60に介装される。
【0033】
スプール弁200は、両端に作用する油圧に応じて移動し作動油の流路を変更可能なスプール210と、スプール210の一端に臨んで画成される第1圧力室221と、スプール210の他端に臨んで画成される第2圧力室222と、第2圧力室222内に収容され第2圧力室222の容積を拡大する方向にスプール210を付勢するスプリング230と、を備える。
【0034】
第1圧力室221には所定圧に調整された作動油が常時導かれ、第2圧力室222には所定圧に調整された作動油とタンク圧とが電磁弁240の作動によって選択的に導かれる。
【0035】
図2に示すように、電磁弁240の作動によって第2圧力室222に所定圧に調整された作動油が導かれる場合には、第1圧力室221の圧力と第2圧力室222の圧力とが略同一となり、スプール210はスプリング230の付勢力によって第2圧力室222の容積を拡大する方向に移動する。
【0036】
この状態では、メインポンプ室41はメイン吸込通路60を介して作動油を吸い込み、メイン吐出通路70を介して油圧機器110に作動油を吐出する。サブポンプ室42は、分岐部61よりも上流側のメイン吸込通路60及びサブ吸込通路80を介して作動油を吸い込み、サブ吐出通路90を介して油圧機器110に作動油を吐出する。このように、ベーンポンプ100は全吐出状態となり、メインポンプ室41及びサブポンプ室42から吐出された作動油の全量が油圧機器110へ供給される。
【0037】
これに対して、図3に示すように、電磁弁240の作動によって第2圧力室222にタンク圧が導かれる場合には、第1圧力室221の圧力によるスプール210に作用する押圧力が、第2圧力室222の圧力によるスプール210に作用する押圧力とスプリング230の付勢力との総和よりも大きくなり、スプール210は第2圧力室222の容積を収縮する方向に移動する。
【0038】
この状態では、スプール弁200のスプール210によって、分岐部61よりも下流側のメイン吸込通路60はタンク120とメインポンプ室41とが連通しないように遮断され、サブ吐出通路90はサブポンプ室42から吐出された作動油がメインポンプ室41に供給されるようにメイン吸込通路60に接続される。これにより、サブポンプ室42は、分岐部61よりも上流側のメイン吸込通路60及びサブ吸込通路80を介して作動油を吸い込み、サブ吐出通路90及びメイン吸込通路60を介してメインポンプ室41に作動油を供給する。メインポンプ室41は、サブポンプ室42から供給された作動油を、メイン吐出通路70を介して油圧機器110に吐出する。このように、ベーンポンプ100は半吐出状態となり、メインポンプ室41から吐出された作動油が油圧機器110へ供給される。
【0039】
低エンジン回転速度域では、ロータ10の回転速度が小さいため、ベーンポンプ100から吐出される作動油の吐出流量は少ない。そのため、ベーンポンプ100から油圧機器110に十分な作動油が供給されるように、スプール弁200はベーンポンプ100が全吐出状態となるように制御される。
【0040】
一方、高エンジン回転速度域では、ロータ10の回転速度が大きいため、ベーンポンプ100から吐出される作動油の吐出流量は多い。そのため、ベーンポンプ100から油圧機器110に過剰な作動油が供給されないように、スプール弁200はベーンポンプ100が半吐出状態となるように制御される。
【0041】
ロータ10の高回転速度時において、ベーンポンプ100は、サブポンプ室42によってタンク120内の作動油を吸い込み、吸い込んだ作動油をメインポンプ室41に導いて、メインポンプ室41から油圧機器110に作動油を供給する。このような場合において、サブポンプ室42によって作動油を吸い込むベーンポンプ100における吸込流量は、メインポンプ室及びサブポンプ室の両方によって作動油を吸い込む従来のベーンポンプにおける吸込流量よりも少なくなる。
【0042】
上述の通り、ベーンポンプ100では、スプール弁200はエンジン回転速度、つまりロータ10の回転速度に基づいて切り換えられる。なお、低エンジン回転速度域においても油圧機器110がほとんど作動油を必要としない場合には、ベーンポンプ100が半吐出状態となるようにスプール弁200を制御することで、ベーンポンプ100における駆動トルクを低減することが可能となる。
【0043】
上記した本実施形態のベーンポンプ100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0044】
ロータ10の高回転速度時において、ベーンポンプ100では、スプール弁200によって、タンク120とメインポンプ室41とが連通しないように分岐部61よりも下流側のメイン吸込通路60が遮断されるとともに、サブポンプ室42から吐出された作動油がメインポンプ室41に供給されるようにサブ吐出通路90がメイン吸込通路60に接続される。ベーンポンプ100はロータ10の高回転速度時にサブポンプ室42のみによってタンク120の作動油を吸い込むので、ベーンポンプ100における作動油の吸込流量は、メインポンプ室及びサブポンプ室の両方によって作動油を吸い込む従来のベーンポンプの吸込流量よりも少なくなる。したがって、ロータ10の高回転速度時に、タンク120との接続位置近傍のメイン吸込通路60内においてキャビテーションが発生することを防止できる。これにより、ベーンポンプ100における作動油の吸い込み不良を防止でき、ベーンポンプ100から油圧機器110に作動油を安定的に供給することが可能となる。
【0045】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなし得ることは明白である。
【0046】
例えば、本実施形態のベーンポンプ100は、メインポンプ室41の容積及びサブポンプ室42の容積が略同一となるように構成したが、図4に示すようにサブポンプ室42の容積がメインポンプ室41の容積よりも僅かに大きくなるように構成してもよい。
【0047】
図4を参照すると、ベーンポンプ100のロータ10は、ロータ10の回転中心がカムリング30の軸心に対してメインポンプ室41側にずれるように配置される。これにより、サブポンプ室42におけるカム面31とロータ10の外周面との最大間隔d1がメインポンプ室41におけるカム面31とロータ10の外周面との最大間隔d2よりも広くなり、サブポンプ室42の容積がメインポンプ室41の容積よりも大きくなる。
【0048】
メインポンプ室41及びサブポンプ室42内の作動油はポンプ構成部材間の微小隙間から僅かに漏れ出てしまうため、メインポンプ室41及びサブポンプ室42から吐出される作動油の吐出流量は、メインポンプ室41及びサブポンプ室42に供給される作動油の供給流量よりも少なくなる。そのため、メインポンプ室41の容積及びサブポンプ室42の容積を略同一にした場合に、ベーンポンプ100が半吐出状態になると、サブポンプ室42から吐出した作動油をメインポンプ室41に供給したのでは、メインポンプ室41への作動油の供給流量が不足することがある。しかしながら、サブポンプ室42の容積をメインポンプ室41の容積よりも大きくすれば、サブポンプ室42から作動油が僅かに漏れ出ても、サブポンプ室42から吐出される作動油の吐出流量を補償でき、半吐出状態においてもメインポンプ室41への作動油の供給流量が不足することがない。したがって、ベーンポンプ100から油圧機器110に作動油をより安定的に供給することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によるベーンポンプは、車両のパワーステアリング装置や変速機等の油圧供給源に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 ベーンポンプ
1 駆動軸
10 ロータ
20 ベーン
30 カムリング
31 カム面
40 ポンプ室
41 メインポンプ室
42 サブポンプ室
60 メイン吸込通路
61 分岐部
70 メイン吐出通路
71 合流部
80 サブ吸込通路
90 サブ吐出通路
110 油圧機器
120 タンク
200 スプール弁
210 スプール
221 第1圧力室
222 第2圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に連結されるロータと、前記ロータに対して径方向に移動可能に設けられる複数のベーンと、前記ベーンの先端が摺動可能な内周面を有するカムリングと、前記ベーン、前記ロータ、及び前記カムリングによって画成されるメインポンプ室及びサブポンプ室と、を備え、前記メインポンプ室及び前記サブポンプ室から油圧機器に作動流体を供給するベーンポンプにおいて、
作動流体を貯留するタンクと、
前記タンクと前記メインポンプ室とを連通するメイン吸込通路と、
前記メインポンプ室と前記油圧機器とを連通するメイン吐出通路と、
前記メイン吸込通路の分岐部から分岐し、前記タンクと前記サブポンプ室とを連通するサブ吸込通路と、
前記サブポンプ室と前記油圧機器とを連通するサブ吐出通路と、
前記タンクと前記メインポンプ室とが連通しないように前記分岐部よりも下流側の前記メイン吸込通路を遮断するとともに、前記サブポンプ室から吐出された作動流体が前記メインポンプ室に供給されるように前記サブ吐出通路を前記メイン吸込通路に接続して、作動流体の流路を切替可能な弁機構と、を備えることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
前記サブポンプ室は、前記メインポンプ室よりも容積が大きくなるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
前記ロータは、回転中心が前記カムリングの軸心に対してメインポンプ室側にずれるように配置されることを特徴とする請求項2に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
前記弁機構は、前記ロータの回転状態に応じて前記メイン吸込通路及び前記サブ吐出通路における作動流体の流路を変更可能なスプールを有するスプール弁であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202268(P2012−202268A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66137(P2011−66137)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】