説明

ペプチド銅複合体による発毛の刺激

【課題】薬剤処置による発毛の刺激に顕著な進歩が達成よりも、発毛に対してより大きな刺激的効果を有する化合物の提供。
【解決手段】活性な治療用物質として使用するための、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤、および以下の構造を有するペプチド-銅複合体を含有する組成物:[R-R-R]:銅(II)(ここで、Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;Rは、ヒスチジン、アルギニンまたはその誘導体であり;そしてRは、ペプチド結合によってRに結合される少なくとも1つのアミノ酸またはアミノ酸誘導体である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般にペプチド-銅複合体に関し、そしてより詳細には、発毛(hair growth)を刺激するためのペプチド-銅複合体を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
抜け毛は、多くのヒトを広く悩ますものであり、最も普通な抜け毛は、男性が年をとるにつれ頭髪を失うアンドロゲン性脱毛症(AGA)(すなわち、男性型禿頭症)である。他の抜け毛症(hair loss afflications)は、円形脱毛症(AA)、女性型禿頭症、および化学療法および/または放射線治療による続発性の抜け毛(すなわち、続発性脱毛症(secondary alopecia))を包含する。
【0003】
毛は通常2タイプに分けられる:「硬毛」および「軟毛」。硬毛は、粗く、着色した毛であり、これは、皮膚の深部に発生した小胞から生じる。軟毛は、典型的に薄く、非着色の毛であり、これは、より小さく、そして皮膚の表面に位置する小胞から成長する。脱毛が進行するに伴い、硬毛タイプの毛から軟毛タイプの毛への変化が生じる。脱毛に寄与する他の変化は、毛の発育周期における変化である。毛は、典型的に、発育相(活性な発毛)、退行相(中間期)および休止相(休止期、この間に毛幹が新たな成長の前に脱落する)という3つの周期を経過する。禿頭症が進行するに伴い、各相における毛包の割合にシフトが生じ、その大部分が発育相から休止相へシフトする。総数は比較的に一定であるが、毛包のサイズが減少することもまた知られている。
【0004】
種々の手順および薬剤が、抜け毛を治療するための試みに利用されてきた。通常の技術は、毛移植を包含する。簡単に述べれば、毛を含む皮膚の栓(plug)は、毛が成長している頭皮の領域から、禿頭また禿げかけの頭皮の領域に移植される。しかし、この手順は、時間がかかり、そして比較的に痛みを有する。他のアプローチは、紫外線照射および運動療法(exercise therapy)を含む。
【0005】
最近、薬剤治療によって発毛を刺激することが達成されたが、成功の例は限られている。最も良く認知されている発毛剤の1つは、Upjohnに譲渡された特許文献1に開示されているように、「Minoxidil」の商品名で販売されている。しかし、Minoxidilの使用によって生じる結果は有望であると考えられるが、当該分野では、温血動物における毛の発育(growth of hair)を刺激し得る組成物を改良する必要性がまだ存在する。このために、特定のペプチド-銅複合体は、効果的な発毛剤であることが見出された。例えば、特許文献2、特許文献3、および特許文献4は、温血動物における毛の発育を刺激するに有効である特定のペプチド-銅複合体を開示している。
【特許文献1】米国特許第4,596,812号明細書
【特許文献2】米国特許第5,177,061号明細書
【特許文献3】米国特許第5,120,831号明細書
【特許文献4】米国特許第5,214,032号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬剤処置による発毛の刺激に顕著な進歩が達成されてきたが、発毛に対してより大きな刺激的効果を有する化合物に対する必要性が当該分野においてまだ存在する。本発明は、この必要性を十分に満たすだけでなく、さらに他の関連の利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって以下が提供される:
(1)活性な治療用物質として使用するための、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤、および以下の構造を有するペプチド-銅複合体を含有する組成物:
[R-R-R]:銅(II)
ここで、Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;Rは、ヒスチジン、アルギニンまたはその誘導体であり;そしてRは、ペプチド結合によってRに結合される少なくとも1つのアミノ酸またはアミノ酸誘導体であり、但し、Rがヒスチジルまたは(3-メチル)ヒスチジルであり、そしてRがリジン、リジル-プロリル-バリル-フェニルアラニル-バリン、リジル-バリル-フェニルアラニル-バリン、リジル-トリプトファン、またはリジル-(グリシル)1−2-トリプトファンである場合、Rはグリシル、アラニル、セリルまたはバリルではなく、そしてさらに、Rがヒスチジルまたは(3-メチル)ヒスチジルであり、そしてRがグリシン、グリシル-プロリル-バリル-フェニルアラニル-バリン、グリシル-バリル-フェニルアラニル-バリン、グリシル-トリプトファン、またはグリシル-(グリシル)1−2-トリプトファンである場合、Rはリジルではない。
(2)Rがアミノ酸である、項目1に記載の組成物。
(3)Rがヒスチジンである、項目1に記載の組成物。
(4)Rが少なくとも1つのアミノ酸である、項目1に記載の組成物。
(5)Rがアミノ酸である、項目1に記載の組成物。
(6)前記ペプチド-銅複合体の投与が局所的投与である、項目1に記載の組成物。
(7)Rが親水性アミノ酸である、項目6に記載の組成物。
(8)Rが親水性アミノ酸である、項目6に記載の組成物。
(9)活性な治療用物質として使用するための、以下の構造を有するペプチド-銅
複合体および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を包含する組成物:
[R-R]:銅(II)
ここで、Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;Rは、ヒスチジン、アルギニン、またはその誘導体である。
(10)Rがアミノ酸である、項目9に記載の組成物。
(11)Rがヒスチジンである、項目9に記載の組成物。
(12)Rが親水性アミノ酸である、項目9に記載の組成物。
(13)活性な治療用物質として使用するための、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤、および以下の構造を有するペプチド-銅複合体を含有する組成物:
[R-R-R]:銅(II)
ここで、Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;Rは、ヒスチジン、アルギニン、またはその誘導体であり、そしてRは、アミド結合によってRに結合される化学的部分であり、ここで、Rはアミノ酸またはアミノ酸誘導体ではない。
(14)Rがアミノ酸である、項目13に記載の組成物。
(15)Rがヒスチジンである、項目13に記載の組成物。
(16)Rが、-NH、1〜20個の炭素原子を有するアルキルアミノ部分、および6〜20個の炭素原子を有するアリールアミノ部分からなる群から選択される、項目13に記載の組成物。
(17)発毛の刺激を必要とする動物における発毛を刺激するための薬剤の製造のための、項目1〜16のいずれかに記載のペプチド-銅複合体の使用。
(18)前記動物が、アンドロゲン性脱毛症、円形脱毛症、女性型禿頭症および続発性脱毛症からなる群から選択される抜け毛症を有する、項目17に記載の使用。
(19)前記抜け毛症がアンドロゲン性脱毛症である、項目18に記載の使用。
(20)前記抜け毛症が続発性脱毛症である、項目18に記載の使用。
(21)発毛の刺激を必要とする動物において発毛を刺激するための方法であって、有効な量の項目1〜16のいずれかに記載のペプチド-銅複合体を動物に投与することを含む、方法。
(22)前記ペプチド-銅複合体の投与が局所的投与である、項目18に記載の方法。
発明の要旨
簡単に述べれば、本発明は、温血動物における毛の発育を刺激するためのペプチド-銅複合体、およびこのペプチド-銅を含有する組成物に関する。本発明の組成物は、受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせた1種またはそれ以上のペプチド-銅複合体を包含する。本明細書中で使用されるように、用語「銅」は、銅(II)(すなわち、Cu+2)を表示するために使用されている。
【0008】
本発明のペプチド-銅複合体は、有効な量のペプチド-銅複合体の適用を生じる様式でこれを必要とする動物に投与される。本明細書中で使用されるように、用語「有効な量」とは、抜け毛症(例えば、男性型禿頭症)と関連するかまたは抜け毛傷害(insult)(例えば、放射線照射または化学療法)によって引き起こされた発毛を刺激するペプチド-銅複合体の量を意味する。従って、ペプチド-銅複合体は、予防用、ならびに治療用および化粧用に使用され得る。ペプチド-銅複合体の投与は、好ましくは、局所的適用によるが、他の投与経路、例えば、注射(例えば、筋内、静脈内、皮下および皮内)が利用され得る。典型的には、本発明のペプチド-銅複合体は、局所的適用のための溶液、クリームまたはゲルとして、あるいは注射用の溶液として処方され、そして1種またはそれ以上の受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む。
【0009】
本明細書中で使用されるように、用語「ペプチド-銅複合体」とは、銅にキレートされる少なくとも2つのアミノ酸(またはアミノ酸誘導体)を有するペプチドを意味し、ここで、このペプチドのアミノ末端からの第2のアミノ酸はヒスチジン、アルギニンまたはその誘導体である。このようなペプチド-銅複合体は以下の一般的構造Aを有する:
A: [R-R]:銅(II)
ここで、
Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;そして
Rは、ヒスチジン、アルギニンまたはその誘導体である。
【0010】
本発明のペプチド-銅複合体は、約1:1〜約3:1、そしてより好ましくは約1:1〜約2:1の範囲のペプチド:銅比を有する。要するに、ペプチドの成分は銅イオンの少なくとも1つの配位部位を占め、そして複数のペプチドは一つの銅イオンにキレートされ得る。
【0011】
好ましい実施態様では、ペプチド-銅複合体は、アミド結合またはペプチド結合(すなわち、-C(=O)NH-)によって構造AのR部分に結合される追加の化学的部分を含む。この実施態様では、ペプチド-銅複合体は以下の構造Bを有する:
B: [R-R-R]:銅(II)
ここで、
Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;
Rは、ヒスチジン、アルギニンまたはその誘導体であり;そして
Rは、アミド結合によってRに結合される化学的部分である。
【0012】
さらに好ましい実施態様では、構造BのRは、ペプチド結合によってRに結合される少なくとも1つのアミノ酸である。この実施態様では、ペプチド-銅複合体は以下の構造Cを有する:
C: [R-R-R]:銅(II)
ここで、
Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;
Rは、ヒスチジン、アルギニンまたはその誘導体であり;そして
Rは、ペプチド結合によってRに結合されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体であり、但し、Rがヒスチジルまたは(3-メチル)ヒスチジルであり、そしてRがリジン、リジル-プロリル-バリル-フェニルアラニル-バリン、リジル-バリル-フェニルアラニル-バリン、リジル-トリプトファン、またはリジル-(グリシル)1−2-トリプトファンである場合、Rはグリシル、アラニル、セリルまたはバリルではなく、そしてさらに、Rがヒスチジルまたは(3-メチル)ヒスチジルであり、そしてRがグリシン、グリシル-プロリル-バリル-フェニルアラニル-バリン、グリシル-バリル-フェニルアラニル-バリン、グリシル-トリプトファン、またはグリシル(グリシル)1−2-トリプトファンである場合、Rはリジルではない。
【0013】
本発明のなおさらなる実施態様では、追加のキレート剤が、上記で開示されるペプチド-銅複合体に加えられて、ペプチド-銅-キレート剤の3成分の複合体を形成し得る。
【0014】
本発明の他の局面は、以下の詳細な説明を参照して明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、温血動物における毛の発育を刺激するペプチド-銅複合体に関する。このような複合体は、典型的に、受容可能な希釈剤および/またはキャリアを含有する組成物として投与される。投与は、好ましくは、発毛の刺激が望まれる領域(例えば、頭皮)への直接的な局所適用によるが、他の投与経路も利用され得る。
【0016】
本発明のペプチド-銅複合体は、アンドロゲン性脱毛(AGA)に悩んでいる動物(ヒトを含む)における発毛を刺激するために使用され得る。この症状に悩む動物は、通常雄性であり、そしてこの症状の結果、年をとるにつれて頭髪の脱落(「男性型禿頭症」とも呼ばれる)が生じる。従って、ペプチド-銅複合体は、発毛を刺激するために投与され得、これにより、抜け毛の激しさおよび/またはAGAが進行する速度を取り除くかまたは低減する。他の抜け毛症は、円形脱毛症(AA)、女性型禿頭症、および化学療法および/または放射線処置に続発する抜け毛(すなわち、続発性脱毛症)を包含する。続発性脱毛症の場合、ペプチド-銅複合体は、特定の脱毛傷害(例えば、化学療法または放射線治療)に先んじて使用され得、この傷害の前に発毛を刺激し、それにより、傷害によって生じる抜け毛の量を低減する。
【0017】
上記のように、本発明のペプチド−銅複合体は、少なくとも2つのアミノ酸(またはアミノ酸誘導体)を有し、そのうちの1つは、ヒスチジン、アルギニンまたはそれらの誘導体である。この文脈において、ペプチド−銅複合体は、上記で同定されるような構造Aを有する。例えば、R1がアミノ酸であり、そしてR2がヒスチジルである場合、またはR1がアミノ酸であり、そしてR2がアルギニンである場合、ペプチド銅複合体はそれぞれ以下の構造DおよびEを有する:
D:[(アミノ酸)-ヒスチジン]:銅(II)
E:[(アミノ酸)-アルギニン]:銅(II)
上記構造Aで使用される用語「アミノ酸」および「アミノ酸誘導体」は、本明細書中の下記で定義される。本発明のアミノ酸は、アミノ部分を有する任意のカルボン酸を含有する。このアミノ酸は、天然に存在するα-アミノ酸(以下の一覧表、一文字アミノ酸表記を括弧内に挙げる)を包含する(がこれらに限定されない):アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)およびバリン(V)。他の天然に存在するアミノ酸は、ヒドロキシプロリンおよびγ-カルボキシグルタメートを包含する(がこれらに限定されない)。好適な実施態様において、アミノ酸は、アミノ酸のα-炭素に結合したアミノ部分(すなわち、例えば、プロリンに存在する2級アミン-NH-よりもむしろ-NH2基)を有する天然に存在するα-アミノ酸であり、これは銅にキレート化した際にその配位位置を占有する。本明細書で使用される「親水性アミノ酸」は、K、R、H、D、E、N、Q、C、M、SおよびTから選択されるアミノ酸を包含する(がこれらに限定されない)。
【0018】
本発明のアミノ酸誘導体は、以下の構造を有する任意の化合物を包含する:
【0019】
【化1】

【0020】
ここでRは、天然に存在するアミノ酸側鎖の誘導体である。1つの実施態様において、上記構造におけるR1およびR2は、水素、1個〜20個の炭素原子を含有する置換または非置換の、直鎖、分枝鎖または環状の、飽和または不飽和のアルキル部分、および6個〜20個の炭素原子を含有する置換または非置換アリール部分(ヘテロ芳香族部分を含む)から選択され得る。好適な実施態様において、R1およびR2は、以下の表1で同定される化学部分から選択され得る。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明のヒスチジン誘導体は以下の構造を有する化合物を包含する:
【0023】
【化2】

【0024】
ここでnは1〜20であり、そしてXおよびYは独立して、1個〜12個の炭素原子を含有するアルキル部分、または6個〜12個の炭素原子を含有するアリール部分から選択される。好適な実施態様において、nは1であり、Xはメチルであり、そしてYはH(すなわち、3-メチルヒスチジル)であるか、またはXはHであり、そしてYはメチル(すなわち、5-メチルヒスチジン)である。
【0025】
同様に、本発明のアルギニン誘導体は、以下の構造を有する化合物を包含する:
【0026】
【化3】

【0027】
ここでnは1〜20(nが3は除く)である。
【0028】
本発明の別の実施態様において、構造Aのペプチド−銅複合体はさらに、アミドまたはペプチド結合(すなわち、-C(=O)NH-)によりR2部分に結合した化学部分を含有する。本実施態様のペプチド−銅複合体は、上記構造Bのように示される。本明細書で使用されるように、アミド結合によりR2部分に結合した化学部分(すなわち、R3)は、R2のカルボキシル末端(すなわち、ヒスチジン、アルギニン、またはそれらの誘導体のカルボキシル末端)とアミド結合を形成し得るアミノ基を有する任意の化学部分を包含する。適切なR3部分は、-NH2、1個〜20個の炭素原子を有するアルキルアミノ部分、および6個〜20個の炭素原子を有するアリールアミノ部分、ならびにアミノ酸およびそれらの誘導体を包含する(がこれらに限定されない)。本明細書で使用される「アルキルアミノ部分」は、アミノ部分を含有するアルキル部分を包含し、ここでアルキル部分は上記で定義した通りであり、そしてオクチルアミンおよびプロピルアミンを包含する(がこれらに限定されない)。同様に、「アリールアミノ部分」は、アミノ部分を含有するアリール部分を包含し、ここでアリール部分は上記で定義した通りであり、そしてベンジルアミンおよびベンジル-(CH2)1-14-アミンを包含する(がこれらに限定されない)。R2のカルボキシル末端とアミド結合を形成し得るアミノ基を有する適切な化学部分のさらなる例は、スペルミンおよびスペルミジンのようなポリアミンを包含する。
【0029】
例えば、構造BにおいてR1がアミノ酸であり、R2がヒスチジンまたはアルギニンであり、そしてR3がアミノ部分である場合、ペプチド−銅複合体はそれぞれ以下の構造FおよびGを有する:
F:[(アミノ酸)-ヒスチジン-NH2]:銅(II)
G:[(アミノ酸)-アルギニン-NH2]:銅(II)
同様に、R1がアミノ酸であり、R2がヒスチジンまたはアルギニンであり、そしてR3がアルキルアミノ部分である場合、ペプチド−銅複合体はそれぞれ以下の構造HおよびIを有する:
H:[(アミノ酸)-ヒスチジン-NH-アルキル]:銅(II)
I:[(アミノ酸)-アルギニン-NH-アルキル]:銅(II)
なおさらなる実施態様(上記構造Cで表されるように)において、構造BのR3部分は、上記で定義される少なくとも1つのアミノ酸またはアミノ酸誘導体である。好適な実施態様において、R3はペプチド結合によりR2に結合した天然に存在するα-アミノ酸である。例えば、構造CのR1およびR3がアミノ酸であり、そしてR2がヒスチジンまたはアルギニンである場合、本発明のペプチド−銅複合体は、それぞれ以下の構造JおよびKを有する:
J:[(アミノ酸)-ヒスチジン-(アミノ酸)]:銅(II)
K:[(アミノ酸)-アルギニン-(アミノ酸)]:銅(II)
ただ1つのアミノ酸が構造HおよびIのR3位に示されているが、他の化学部分(さらなるアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体を含む)もまた存在し得ることが理解されるべきである。例えば、構造HおよびIのR3は、フェニルアラニン-フェニルアラニン、(グリシル)n-トリプトファン(ここでnは1〜4である)、プロリル-X1-フェニルアラニル-X2またはX1-フェニルアラニル-X2(ここでX1およびX2はバリン、アラニンおよびグリシンから選択される)のようなペプチドであり得る。
【0030】
本発明のペプチド−銅複合体のペプチドは、一般にジペプチド(すなわち、構造A)、アミド結合を介してカルボキシル末端に結合した化学部分を有するジペプチド(すなわち、構造B)またはトリペプチド(すなわち、上記構造C)として分類され得る。構造BおよびCのペプチド−銅複合体の場合、さらなる化学部分(アミノ酸を含む)は、ジペプチドまたはトリペプチドに結合され、4つまたはそれ以上のアミノ酸を含有するペプチドを産し得る。例示目的のために、表2は、本発明のペプチド−銅複合体の種々の代表的な例を示す。
【0031】
【表2−1】

【0032】
【表2−2】

【0033】
本発明のペプチド−銅複合体のさらなる例は、米国特許第5,118,665号および第5,164,367号、ならびに米国特許第4,760,051号;第4,665,054号;第4,877,770号;第5,177,061号;第4,810,693号;第4,767,753号;第5,135,913号;第5,023,237号;第5,059,588号および第5,120,831号に開示されている。これらの全ては、その全体が本明細書中に参考として援用される。従って、上記米国特許に開示されているペプチド−銅複合体は、アンドロゲン性脱毛症(AGA)または男性型禿頭症に悩む動物(ヒトを含む)において発毛を刺激するために使用され、それにより抜け毛の重篤度および/またはAGAが進行する速度を除去するかまたは低減し得る。これらのペプチド−銅複合体はまた、他の抜け毛症(円形脱毛症、女性型禿頭症ならびに化学療法および/または放射線治療による続発性の抜け毛(すなわち、続発性脱毛症)を含む)を処置するために使用され得る。続発性脱毛症の場合、ペプチド−銅複合体は、通常、抜け毛を引き起こす発作の前に発毛を刺激するため(例えば、化学療法または放射線治療法(regiments))に使用され得る。このように、本発明のペプチド−銅複合体は、抜け毛を防止するために使用され得る。
【0034】
本発明の実施において、銅に対するペプチドのモル比は、1に対して0より高い(例えば、0.1:1、0.2:1など)。銅に対するペプチドのモル比は、ペプチドによって占められる銅の配位座(coordination site)数にある程度依存する。好ましい実施態様において、銅に対するペプチドのモル比は、約1:1から3:1にわたり、より好ましくは約1:1から2:1にわたる。例えばトリペプチドの場合(例えば、GHF:銅)、銅に対するペプチドの好ましい比は1:1から2:1にわたり、各トリペプチドは銅の3つの配位座を占める。同様に、ジペプチドの場合(GH:銅等)、銅に対するペプチドの好ましい比は1:1から3:1にわたり、各ジペプチドは銅イオンの2つの配位座を占める。
【0035】
本発明の別の実施態様において、ペプチド-銅-キレート剤三成複合体を形成するために、ペプチド-銅複合体にキレート剤が加えられ得る。適切なキレート剤には、ヒスチジンのようなイミダゾールまたはイミダゾール含有化合物、および、システインまたはメチオニンのような含硫アミノ酸が含まれる。従って、ペプチド-銅複合体がGHF:銅の場合、ヒスチジンを加えて、三成複合体のGHF:銅:ヒスチジンを産出し得る。しかし、そのような三成複合体を形成するためには、銅対ペプチド対キレート剤のモル比を考慮しなければならない。例えば、銅対ペプチドの比率が2:1の場合、ペプチド-銅複合体にキレート剤を加えることは可能ではあるが、ペプチドによる部位占有によって困難である。しかし、銅に対するペプチドの比率をほぼ1:1に維持することによって、キレート化基が容易に加えられ、三成複合体を形成し得る。従って、好ましいペプチド対銅対キレート剤の比率は約1:1:1である。
【0036】
本発明のキラルアミノ酸(特にアミノ酸)は特に明示されていないが、本発明は、天然に存在するL型およびD型の両方を含む。例えば、本明細書において開示している天然に存在するL-アミノ酸(またはアミノ酸誘導体)は、対応するD-アミノ酸(またはアミノ酸誘導体)によって置換され得る。
【0037】
本発明の実施において、ペプチドの第2の位置(即ち、構造体A、B、およびCのR)は、ヒスチジン、アルギニンまたはそれらの誘導体のいずれかであることが重要である。本発明のペプチド-銅複合体の優れた効果は、少なくともある程度は、ヒスチジン、アルギニンまたはそれらの誘導体のアミノ酸側鎖のアミノ部分での銅の結合によって達成される。例えば、ヒスチジンの場合、ヒスチジンイミダゾール環のアミン基が銅の配位座を占める(即ち、アミン基の残余原子価または非共有電子が銅と分配される)。アルギニンの場合、アミノ酸側鎖のアミン基が、同様に、銅の配位座を占める。 Rと銅原子との結合は、ペプチド-銅複合体を産出するために、好ましくは、構造体A、B、およびCのR部分由来のアミン基の配位と結合される。従って、本発明のペプチドは、Rアミン基、好ましくは、RおよびRアミン基の両方を、ペプチド-銅複合体に供与することによって、銅をキレート化する。構造体BおよびCのペプチド-銅複合体は、銅における別の配位座をさらに占め得る。具体的には、構造体Bのアミド結合のアミン基、および構造体Cのペプチド結合がさらに配位座を占め得る。
【0038】
前述のように、本発明のペプチド-銅複合体は、発毛剤としての有用性を有する。より詳細には、ペプチド-銅複合体は、温血動物の発毛を刺激する。従って、ペプチド-銅複合体は、抜け毛を伴う様々な疾患状態を処置するために用いられ得、アンドロゲン性脱毛症(男性型禿頭症としても知られる)、円形脱毛症および女性型禿頭症が含まれる(ただしこれらに限定されない)。このような場合、ペプチド-銅複合体は、抜け毛症の開始後、発毛を刺激する。あるいは、ペプチド-銅複合体は、続発性脱毛症のような症状の予防のために投与され得る。例えば、複合体は、抜け毛を通常もたらす化学治療および/または放射線処置のような傷害の前に投与され得る。従って、本発明のペプチド-銅複合体は、抜け毛を予防するために用いられ得る。
【0039】
本発明のペプチド-銅複合体の投与は、有効量または有効用量のペプチド-銅複合体の動物への送達を生じる任意の方法によってもまた投与され得、毛包への送達を含む。例えば、頭皮または毛の刺激が望まれる他の領域(以下「処置領域」)に、直接局所塗布することによって投与され得る。あるいは、頭皮を含む処置領域への注射(例えば、皮内注射等)によっても達成され得る。代表的には、ペプチド-銅複合体は、1つ以上の受容可能なキャリアまたは希釈剤と組合せたペプチド-銅複合体を含む組成物として処方され、長時間のペプチド-銅複合体の持続放出を提供する処方物を含む。
【0040】
1つの実施態様において、ペプチド-銅複合体は、処置領域への皮内注射のために処方される。このような場合、このような処方物は、皮内注射に適切なビヒクルと組み合わせた1つ以上の本発明のペプチド-銅複合体を含むことが好ましく、ペプチド-銅複合体は、0.1mlビヒクルあたり100μgから2000μgにわたる濃度(すなわち、1.0mg/mlから20mg/ml)で組成物中に存在する。皮内注射に適切なビヒクルは、生理食塩水および滅菌水を包含する(ただし、これらに限定されない)。
【0041】
別の実施形態において、ペプチド-銅複合体は、局所投与のために処方される。適切な局所処方物には、液体、ローション、クリーム、またはジェルの形態中に1つ以上のペプチド-銅複合体を含む。局所投与は、処置領域へ直接塗布することによって達成され得る。例えば、このような適用は、処置領域の皮膚上に処方物(例えば、ローションまたはジェル)を塗布することにより、または処置領域上に液体処方物をスプレーで塗布することにより達成され得る。発毛の速度を加速するまたはその後の抜け毛を予防することに十分である任意の量の局所処方物が有効であり、そして処置は、発毛徴候が進展するたびごとに反復され得る。好ましくは、本発明の局所組成物は、組成物の0.1重量%から20重量%、より好ましくは、0.1重量%から5重量%にわたる量で1つ以上のペプチド-銅複合体を含む。
【0042】
キャリアおよび希釈剤に加えて、ペプチド-銅複合体はまた、浸透増進剤および/または界面活性剤のような付加成分を含むように処方され得る。例えば、局所処方物は、0.5%から10%の1つ以上の界面活性剤(乳化剤とも称される)を含み得る。非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤は、本発明の目的のために使用され得る。適切な非イオン性界面活性剤の例は、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール(Nonoxynol-9)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(Brij-97)、種々のポリオキシエチレンエーテル(Tritons)、ならびに種々の分子量の酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロックコポリマー(例えば、Pluronic 68)である。適切なイオン性界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウムおよび類似の組成物を包含する。浸透増進剤もまた、局所処方物に存在し得る。適切な浸透増進剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、尿素および置換(substituted)尿素組成物を包含する。局所投与のための液体処方物の場合、浸透増進剤(例えばDMSO)の濃度は、液体処方物の30%から80%にわたり得る。
【0043】
局所処方物のバランスは、不活性な、生理的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含み得る。適切なキャリアまたは希釈剤は、水、生理食塩水、静菌性食塩水(0.9mg/mlベンジルアルコール含有生理食塩水)、ペトロラタムベースクリーム(例えば、USP親水性軟膏および類似のクリーム(例えば、 Unibase, Parke-Davis))、種々のタイプの薬学的に受容可能なジェル、および短鎖アルコールおよびグリコール(例えば、エチルアルコールおよびプロピレングリコール)を含むが、これらに限定されない。本発明の別の実施形態において,局所処方物はまた、ペプチド-銅複合体の毛包送達の補助のために、リポソーム内部にカプセル化されたペプチド-銅複合体を含み得る。あるいは、ペプチド-銅複合体は、イオン導入法を介して化合物を送達するための機器で処方され得る。
【0044】
本発明のペプチド-銅複合体は、局所的に塗布された場合には、優れた皮膚浸透性を示す。これにより、処置領域への有効用量が増し、従って発毛刺激もそれに応じて増す。本発明の実施において、注射(例えば、皮内注射)による投与については、疎水性のアミノ酸またはアミノ酸誘導体が好ましくは使用され、一方局所投与については、親水性アミノ酸またはアミノ酸誘導体が使用される。疎水性アミノ酸またはアミノ酸誘導体の使用は、一般的に本発明の銅-ペプチド複合体の活性を増強するが、局所適用については、皮膚の浸透性を増大させるので、親水性アミノ酸またはアミノ酸誘導体の使用が好ましい。
【0045】
例示の目的のために、表3は、本発明の文脈内の適切な局所処方物の例を表す。以下に使用される「%(w/w)」は、処方物の総重量に基づいた成分の重量パーセンテージを表す。
【0046】
【表3】

【0047】
【表3−2】

【0048】
本発明のペプチドは、ペプチド合成技術の当業者に公知の溶液または固相技法のいずれかによって、合成され得る。一般的な手順は、所望のペプチド配列を作製するために保護されたアミノ酸の段階的な付加を包含する。次いで、得られるペプチドを、このペプチドを水に溶解し、続いて塩化銅を添加し、pHを調整することによって、(所望の銅対ペプチドのモル比で)銅とキレート化させる。本発明のペプチド-銅複合体の合成、および特定の代表的なペプチド-銅複合体の活性に関するより詳細な開示を以下に表す。
【実施例】
【0049】
実施例
以下の実施例は、説明のために提供されるのであって、限定のためではない。以下の実施例を概説すると、実施例1は、水溶液中でペプチドを銅にキレート化することによる本発明のペプチド-銅複合体の一般的な調製を開示する。実施例2〜10は、銅にキレート化され、ペプチド-銅複合体を産生し得るペプチドの合成を開示する。実施例11〜16は、発毛を刺激する本発明の代表的なペプチド-銅複合体の能力を開示する。
【0050】
化学物質の供給源
以下の実施例で用いられる化学物質およびペプチド中間体は、多くの供給者から購入され得る。供給者としては以下が挙げられる
【0051】
【数1】

【0052】
実施例1
ペプチド-銅複合体の調製
本発明のペプチド-銅複合体を、蒸留水にペプチドを溶解し、次いで塩化銅(例えば、Chemical Dynamics、N.J.から入手可能な99.999%)を添加し、次いで溶液のpHを約7.0に調節することにより合成し得る。例えば、ペプチドと銅との比が1:1、2:1、またはそれ以上(例えば、3:1)であるグリシル-L-ヒスチジル-L-フェニルアラニン(GHF)の銅複合体を、所定量のGHFを蒸留水に溶解し(例えば、50mg/mL)、所望のモル量の精製塩化銅を添加することにより調製し得る。次いで、得られたペプチド溶液のpHを、例えば、水酸化ナトリウム溶液を添加することにより約7.0に調節する。あるいは、塩化銅以外の銅塩(例えば、酢酸銅、硫酸銅、または硝酸銅)を用い得る。
【0053】
実施例2
グリシル-L-ヒスチジル-L-カプロラクタムの合成
L(-)-3-アミノ-ε-カプロラクタムをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、次いでTHF中のイソブチルクロロホルメートおよびN-メチルモルホリンを用いて、Nα-t-ブチルオキシカルボニル-Nim-ベンジルオキシカルボニル-L-ヒスチジン(Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン)とカップリングさせた。-20℃で2時間後、そして室温でさらに1時間後、反応物を2N 重炭酸カリウム水溶液でクエンチした。この生成物を酢酸エチルに抽出し、1M クエン酸水溶液、および飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過し、エバポレートして、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジル-L-カプロラクタムを得た。
【0054】
上記の化合物をジクロロメタン中の30%トリフルオロ酢酸に30分かけて溶解し、次いでエバポレートし、Nim-ベンジルオキシカルボニル-L-ヒスチジル-L-カプロラクタムを形成した。次いで、これをテトラヒドロフランに溶解し、そしてイソブチルクロロホルメート、N-メチルモルホリンおよびベンジルオキシカルボニル-グリシンを添加し、ベンジルオキシカルボニル-グリシル-Nim-ベンジルオキシカルボニル-L-ヒスチジル-L-カプロラクタムを形成した。この生成物を1回、酢酸エチルから再結晶し、次いで酢酸に溶解し、そして10%Pd-C触媒の存在下、一晩水素化した。得られたグリシル-L-ヒスチジル-L-カプロラクタムを水で数回凍結乾燥し、次いでC-18逆相カラムの液相クロマトグラフィーにより精製し、二酢酸塩としてペプチドを得た。
【0055】
実施例3
L-アラニル-L-ヒスチジル-L-フェニルアラニンの合成
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン(9.74g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(5.8mL、5.3g、52.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、フェニルアラニンベンジルエステルトシレート(10.7g、25.0mmol)を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで加温した。この時、2M 重炭酸カリウム水溶液を添加して反応をクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして13.7g(87%)のブロックジペプチドを白色の半固体として得た(Rf=0.75、10%メタノール/ジクロロメタン)。これをさらに精製せず、次の変換に用いた。
【0056】
t-ブチルオキシカルボニル保護ジペプチド(12.9g、20.6mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして13.3g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色固体として得た。Rf=0.49(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0057】
-15℃で、N-CBZ-L-アラニン(6.03g、27.0mmol)およびN-メチルモルホリン(3.3mL、3.0g、29.7mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.7mL、3.9g、28.4mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたジペプチド(11.4g、21.8mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートしてブロックトリペプチドを白色固体として得た(Rf=0.55、10%メタノール/ジクロロメタン)。これを95%エタノールから再結晶して、12.6g(79%)の自由流動白色粉末を得た。
【0058】
【数2】

【0059】
ブロックトリペプチド(12.6g、17.6mmol)のエタノール(150mL)懸濁液に、混合物が非常に濁るまで、水(約150mL)を添加した。得られた混合物を塩化パラジウム(1.56g、8.8mmol)とともに、水素雰囲気下(5atm)で16時間振盪した。触媒をCelite(R)の栓を通す濾過により除去し、そして濾液を濃縮して揮発性有機物質を除去した。残留物を凍結乾燥し、8.30gの白色粉末を得た。この物質を水に溶解し、0.2mのナイロン膜を通して濾過し、そして凍結乾燥して6.27g(87%)の所望のトリペプチド二塩酸塩を自由流動白色粉末として得た。
【0060】
【数3】

【0061】
実施例4
グリシル-L-ヒスチジル-L-グルタミン酸の合成
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン(9.74g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(5.8mL、5.3g、52.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、グルタミン酸ジベンジルエステルトシレート(12.5g、25.0mmol)を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで加温した。この時、2M 重炭酸カリウム水溶液を添加して反応をクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして15.2g(87%)のブロックジペプチドを白色の半固体として得た(Rf=0.74、10%メタノール/ジクロロメタン)。これをさらに精製せず、次の変換に用いた。
【0062】
t-ブチルオキシカルボニル保護ジペプチド(15.1g、21.6mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして14.8g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色固体として得た。Rf=0.48(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0063】
-15℃で、N-CBZ-L-グリシン(5.23g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(3.0mL、2.8g、27.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたジペプチド(12.9g、21.6mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、シロップになるまで濃縮し、これを無水エタノールで希釈し、そして-20℃で一晩保存した。得られた沈殿物をフィルター上で回収し、9.93g(58%)のブロックトリペプチドを白色固体として得た(Rf=0.58、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0064】
【数4】

【0065】
ブロックトリペプチド(9.6g、12.2mmol)のエタノール(150mL)懸濁液に、混合物が非常に濁るまで、水(約150mL)を添加した。得られた混合物を塩化パラジウム(2.22g、12.5mmol)とともに、水素雰囲気下(5atm)で16時間振盪した。触媒をCelite(R)の栓を通す濾過により除去し、そして濾液を濃縮して揮発性有機物質を除去した。残留物を凍結乾燥し、4.72gの白色粉末を得た。この物質を水に溶解し、0.2mのナイロン膜を通して濾過し、そして凍結乾燥して4.64g(93%)の所望のトリペプチド二塩酸塩を自由流動白色粉末として得た。
【0066】
【数5】

【0067】
実施例5
グリシル-L-ヒスチジル-L-フェニルアラニンの合成
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン(9.74g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(5.8mL、5.3g、52.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、フェニルアラニンベンジルエステルトシレート(10.7g、25.0mmol)を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで加温した。この時、2M 重炭酸カリウム水溶液を添加して反応をクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして13.0g(83%)のブロックジペプチドを白色の半固体として得た(Rf=0.79、10%メタノール/ジクロロメタン)。これをさらに精製せず、次の変換に用いた。
【0068】
t-ブチルオキシカルボニル保護ジペプチド(12.9g、20.6mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして12.3g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色固体として得た。Rf=0.50(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0069】
-15℃で、N-CBZ-グリシン(5.23g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(3.0mL、2.8g、27.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたジペプチド(10.8g、20.6mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、14.0g(95%)のブロックトリペプチドを白色固体として得た(Rf=0.64、10%メタノール/ジクロロメタン)。これを、無水エタノールから再結晶し、自由流動白色粉末を得た。
【0070】
ブロックトリペプチド(6.0g、8.3mmol)のエタノール(150mL)懸濁液に、混合物が非常に濁るまで、水(約150mL)を添加した。得られた混合物を塩化パラジウム(1.47g、8.3mmol)とともに、水素雰囲気下(5atm)で16時間振盪した。触媒をCelite(R)の栓を通す濾過により除去し、そして濾液を濃縮して揮発性有機物質を除去した。残留物を凍結乾燥し、1.46gの白色粉末を得た。この物質を水に溶解し、0.2mのナイロン膜を通して濾過し、そして凍結乾燥して1.38g(38%)の所望のトリペプチド二塩酸塩を自由流動白色粉末として得た。
【0071】
【数6】

【0072】
実施例6
グリシル-L-ヒスチジル-L-リシル-L-フェニルアラニンの合成
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-リシン(9.5g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(5.8mL、5.3g、52.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.7mmol)を添加した。2分後、フェニルアラニンベンジルエステルトシレート(10.7g、25.0mmol)を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで加温した。この時、2M 重炭酸カリウム水溶液を添加して反応をクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして17.76g(約100%+共沸溶媒)のブロックジペプチドを白色の半固体として得た(Rf=0.84、10%メタノール/ジクロロメタン)。これをさらに精製せず、次の変換に用いた。
【0073】
t-ブチルオキシカルボニル保護ジペプチド(15.4g、25.0mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして15.8g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色の半固体として得た。Rf=0.55(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0074】
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン(9.74g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(3.0mL、2.8g、27.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.7mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたジペプチド(12.9g、25.0mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、20.58g(93%)のブロックトリペプチドを白色の半固体として得た(Rf=0.67、10%メタノール/ジクロロメタン)。これを、さらに精製せず、次の変換に用いた。
【0075】
t-ブチルオキシカルボニル保護トリペプチド(20.5g、23.1mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして20.5g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色固体として得た。Rf=0.51(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0076】
-15℃で、N-CBZ-グリシン(7.24g、34.6mmol)およびN-メチルモルホリン(4.2mL、3.9g、38.1mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(4.7mL、5.0g、36.3mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたトリペプチド(18.2g、23.1mmol)のテトラヒドロフラン/ジメチルホルムアミド1:1(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、21.6g(95%)のブロックテトラペプチドを白色固体として得た(Rf=0.85、10%メタノール/ジクロロメタン)。これをさらに精製せず、次の変換に用いた。
【0077】
ブロックテトラペプチド(21.5g、21.9mmol)のエタノール(150mL)懸濁液に、混合物が非常に濁るまで、水(約125mL)を添加した。得られた混合物を塩化パラジウム(3.89g、21.9mmol)とともに、水素雰囲気下(5atm)で16時間振盪した。反応混合物は約1/2時間以内に透明になった。このことは、反応が完了したことを示し得る。触媒を濾過により除去し、そして濾液をエバポレートして13.7gの無色半固体を得た。この物質を水に溶解し、そして凍結乾燥して11.5g(94%)の所望のテトラペプチド二塩酸塩を自由流動白色粉末として得た。
【0078】
【数7】

【0079】
実施例7
グリシル-L-ヒスチジル-L-リシル-L-フェニルアラニル
-L-フェニルアラニンの合成
-15℃で、Nα-BOC-L-フェニルアラニン(10.6g、40.0mmol)およびN-メチルモルホリン(4.8mL、4.5g、44.0mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(5.5mL、5.7g、42.0mmol)を添加した。2分後、フェニルアラニンベンジルエステルトシレート(17.1g、40.0mmol)、テトラヒドロフラン(50mL)、およびN-メチルモルホリン(4.4mL、4.0g、40.0mmol)を混合することにより調製した溶液を、添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで加温した。この時、2M 重炭酸カリウム水溶液を添加して反応をクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして19.8g(98%)のブロックジペプチドを白色固体として得た(Rf=0.98、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0080】
t-ブチルオキシカルボニル保護ジペプチド(19.7g、39.2mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして19.3g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を得た。Rf=0.65(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0081】
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-リシン(15.2g、40.0mmol)およびN-メチルモルホリン(4.8mL、4.5g、44.0mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(5.5mL、5.7g、42.0mmol)を添加した。2分後、保護ジペプチド(15.8g、39.2mmol)を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、29.9g(98%)のブロックトリペプチドを白色固体として得た(Rf=0.84、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0082】
t-ブチルオキシカルボニル保護トリペプチド(15.4g、25.0mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(300mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして28.7g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を綿毛状の白色固体として得た。Rf=0.72(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0083】
-15℃で、Nα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン(15.6g、40.0mmol)およびN-メチルモルホリン(4.8mL、4.5g、44.0mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(80mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(5.5mL、5.7g、42.0mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたトリペプチド(12.9g、25.0mmol)のジメチルホルムアミド(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、29.1g(72%)のブロックテトラペプチドを白色固体として得た(Rf=0.97、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0084】
t-ブチルオキシカルボニル保護テトラペプチド(29.1g、28.0mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(300mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして28.4g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色固体として得た。
【0085】
-15℃で、N-CBZ-グリシン(7.32g、35.0mmol)およびN-メチルモルホリン(4.2mL、3.9g、38.1mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(4.8mL、5.0g、36.7mmol)を添加した。2分後、適切に保護されたテトラペプチド(26.3g、28.0mmol)のテトラヒドロフラン/ジメチルホルムアミド1:1(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、27.3g(87%)のブロックペンタペプチドを白色固体として得た(Rf=0.95、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0086】
ブロックペンタペプチド(27.3g、24.2mmol)のエタノール(200mL)懸濁液に、混合物が非常に濁るまで、水(約100mL)を添加した。得られた混合物を塩化パラジウム(4.3g、24.4mmol)とともに、水素雰囲気下(5atm)で16時間振盪した。反応混合物は約1/2時間以内に透明になった。このことは、反応が完了したことを示し得る。触媒を濾過により除去し、そして濾液をエバポレートして14.6g(82%)の所望のペンタペプチド二塩酸塩を自由流動白色粉末として得た。[a] -12.1°(c 2.0、メタノール)
実施例8
グリシル-L-アルギニル-L-リシンの合成
-15℃で、Nα-BOC-Ng-ニトロ-L-アルギニン(8.0g、25.0mmol)およびN-メチルモルホリン(3.0mL、2.8g、27.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、L-(Nim-CBZ)リシンベンジルエステル塩酸塩(10.2g、25.0mmol)、およびN-メチルモルホリン(2.8mL、2.5g、25.0mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで加温した。この時、2M 重炭酸カリウム水溶液を添加して反応をクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして16.3g(97%)のブロックジペプチドを白色固体として得た(Rf=0.57、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0087】
t-ブチルオキシカルボニル保護ジペプチド(16.3g、24.3mmol)の35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)溶液を1/2時間、室温で撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、そして2M 重炭酸カリウム水溶液で中性にした。生成物を酢酸エチル(3×100mL)に抽出した。一緒にした抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして17.0g(約100%+共沸溶媒)の遊離アミノ化合物を白色の半固体として得た。Rf=0.12(10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0088】
-15℃で、CBZ-グリシン(7.32g、35.0mmol)およびN-メチルモルホリン(4.2mL、4.0g、38.5mmol)の撹拌したテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、イソブチルクロロホルメート(4.8mL、5.0g、36.8mmol)を添加した。2分後、保護ジペプチド(13.9g、24.3mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を添加した。反応混合物を-15℃で1.5時間攪拌し、次いで0℃まで加温した。このとき、反応を2M 重炭酸カリウム水溶液を添加することによりクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。一緒にした抽出液を1M クエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてエバポレートして、17.7g(95%)のブロックトリペプチドを白色固体として得た(Rf=0.51、10%メタノール/ジクロロメタン)。
【0089】
ブロックトリペプチド(17.7g、23.2mmol)のエタノール(250mL)懸濁液に、混合物が非常に濁るまで、水(約100mL)を添加した。得られた混合物を塩化パラジウム(4.25g、24.0mmol)とともに、水素雰囲気下(5atm)で18時間振盪した。触媒を濾過により除去し、そして濾液をエバポレートして、白色の半固体を得た。この物質を水に溶解し、0.45mのナイロンシリンジフィルターを通して濾過し、そして凍結乾燥して10.2g(約100%)の所望のトリペプチド二塩酸塩を白色粉末として得た:
【0090】
【数8】

【0091】
実施例9
L-アラニル-ヒスチジル-L-リジン
AHKは、Bachem Bioscience Inc., Philadephia, Pennsylvaniaから酢酸塩(カタログ番号#-1555)として得られ得る。あるいは、AHKは、以下の手順によりジヒドロクロライド塩として合成され得る。
【0092】
テトラヒドロフラン(50mL)中のNα-BOC-Nim-CBZ-L-ヒスチジン(9.74g、25.0mmol)およびN-メチルモルフォリン(5.8mL、5.3g、52.5mmol)の撹拌溶液に、−15℃でイソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、(N-ε-CBZ)-L-リジンベンジルエステルハイドロクロライド(10.2g、25.0mmol)を加えた。反応混合物を、−15℃にて1.5時間撹拌し、次いで0℃まで温めた。このときに、2M水性重炭酸カリウムの添加により反応をクエンチした。生成物を、エチルアセテート(3×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を、1Mクエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO3(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートして、白色の半固体(Rf=0.61、10%メタノール/ジクロロメタン)として17.2g(93%)のブロックされたジペプチドを得た。これを、さらに精製することなく以下の形質転換に用いた。
【0093】
35%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(150mL)中のt-ブチルオキシカルボニル保護されたジペプチド(17.2g、23.2mmol)の溶液を、1/2時間室温で撹拌した。得られた溶液を、減圧下に濃縮しそして2M水性重炭酸カリウムで中和した。生成物をエチルアセテート(3×150mL)中に抽出した。組み合わせた抽出物を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートして、白色固体:Rf=0.26(10%メタノール/ジクロロメタン)として16.8g(約100%+飛沫溶媒)の遊離アミノ化合物を得た。
【0094】
テトラヒドロフラン(50mL)中のN-CBZ-L-アラニン(6.28g、25.0mmol)およびN-メチルモルフォリン(3.0mL、2.8g、27.5mmol)との撹拌溶液に、−15℃でイソブチルクロロホルメート(3.4mL、3.6g、26.3mmol)を添加した。2分後、テトラヒドロフラン(50mL)中の上記の保護されたジペプチド(14.9g、23.2mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、−15℃で1.5時間撹拌し、次いで0℃まで温めた。このときに、反応を、2M水性重炭酸カリウムの添加により反応をクエンチした。生成物を、エチルアセテート(3×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を、1Mクエン酸(3×100mL)、水、2M KHCO3(3×100mL)、水、およびブラインで洗浄した。得られた溶液を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートしてシロップにし、そしてこれから、ブロックされたトリペプチドを、95%エタノール(300mL)での希釈により沈澱させた。得られた物質を、フィルター上で回収し、95%エタノールで洗浄し、そして乾燥させて白色の固体(Rf=0.49、10%メタノール/ジクロロメタン); mp 151〜153℃を得た。
【0095】
エタノール(200mL)中のブロックされたトリペプチド(21.5g、21.9mmol)の懸濁物に水(約200mL)を添加した。得られた混合物を、水素の雰囲気下(5気圧)で1時間塩化パラジウム(4.25g、24.0mmol)とともに振盪した。得られた混合物(物質の大部分(触媒以外)が、溶解していた)を濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮し、揮発性の有機物質を除去した。残りの水溶液を凍結乾燥し、10.88gの白色固体を得た。この物質を水に溶解させ、0.2mナイロンメンブレンを通して濾過し、再び凍結乾燥し、白色の粉体として10.50g(99%)の所望のトリペプチドジヒドロクロライドを得た:
【0096】
【数9】

【0097】
実施例10
ペプチドと銅との種々のモル比のペプチド-銅複合体の合成
A. 2:1のモル比のペプチド-銅複合体
AHKの溶液を、2.6954(0.0065mole)のAHKアセテート(Bachem Bioscience Inc.)を約10mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。このAHK溶液の最初のpHは6.71であった。これとは別に、塩化銅(II)の溶液を、0.4479gm(0.0033mole)の無水塩化銅(II)を約2.0mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。塩化銅(II)溶液を、迅速に撹拌しているAHK溶液に緩徐に添加し、そしてpHを、pHメーターで絶えずモニターした。全ての塩化銅(II)溶液を添加した後、合わせた溶液のpHは3.83であった。次いでpHを、0.5M NaOH溶液の緩徐な添加により7.16に調整し、そして最終容積を、蒸留水の添加により20.0mlに調整した。この手順により、ペプチドと銅とのモル比が2:1、そして10mg/mlの濃度でAHK:Cuを含有する水溶液を生成した。溶液は濃青紫であり、そして563〜580nmで特徴的な吸収極大を有した。
【0098】
B. 2:1のモル比のペプチド-銅複合体
AHKを、実施例9に記載されるようなジヒドロクロライド塩として調製した。AHKの溶液を、0.6388gm(0.00146mole)のL-アラニル-L-ヒスチジル-L-リジンヒドロクロライドを約5mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。このAHK溶液の最初のpHは、2.45であった。これとは別に、塩化銅(II)の溶液を、0.0967gm(0.0007モル)の無水塩化銅(II)を約1.0mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。塩化銅(II)溶液を、迅速に撹拌しているAHK溶液に緩徐に添加し、そしてpHを、pHメーターで絶えずモニターした。全ての塩化銅(II)溶液を添加した後、合わせた溶液のpHは、2.36であった。次いでpHを、0.5M NaOH溶液の緩徐な添加により7.05に調整し、そして最終容積を、蒸留水の添加により20.0mlに調整した。この手順により、ペプチドと銅とのモル比が2:1、そして10mg/mlの濃度でAHK:Cuを含有する水溶液を生成した。溶液は、濃青紫であり、そして563〜580nmで特徴的な吸収極大を有した。
【0099】
C. 1.1:1のモル比のペプチド-銅複合体
AHKを、実施例9に記載されるようなジヒドロクロライド塩として調製した。AHKの溶液を、1.6144gm(0.0037mole)のL-アラニル-L-ヒスチジル-L-リジンヒドロクロライドを約10mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。このAHK溶液の最初のpHは、2.70であった。これとは別に、塩化銅(II)の溶液を、0.4267gm(0.0032mole)の無水塩化銅(II)を約2.0mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。塩化銅(II)溶液を、迅速に撹拌しているAHK溶液に緩徐に添加し、そしてpHを、pHメーターで絶えずモニターした。全ての塩化銅(II)溶液を添加した後、合わせた溶液のpHは、2.14であった。次いでpHを、0.5M NaOH溶液の緩徐な添加により6.89に調整し、そして最終容積を、蒸留水の添加により20.0mlに調整した。この手順により、ペプチドと銅とのモル比が1.1:1、そして7.5mg/mlの濃度でAHK:Cuを含有する水溶液を生成した。溶液は濃青紫であり、そして593nmで特徴的な吸収極大を有し、そして586〜607nmで広範なピークを有した。
【0100】
D. 1:1のモル比のペプチド-銅複合体
AHKの溶液を、1.3007gm(0.0007モル)のAHKアセテート(Bachem Bioscience Inc.)を約5mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。このAHK溶液の最初のpHは、6.95であった。これとは別に、塩化銅(II)の溶液を、0.0966gm(0.0007モル)の無水塩化銅(II)を約2.0mlの蒸留水に溶かすことにより調製した。塩化銅(II)溶液を、迅速に撹拌しているAHK溶液に緩徐に添加し、そしてpHを、pHメーターで絶えずモニターした。全ての塩化銅(II)溶液を添加した後、合わせた溶液のpHは、2.91であった。次いでpHを、0.5M NaOH溶液の緩徐な添加により7.08に調整し、そして最終容積を、蒸留水の添加により15.0mlに調整した。この手順により、ペプチドと銅とのモル比が1:1、そして10mg/mlの濃度でAHK:Cuを含有する水溶液を生成した。溶液は濃青紫であり、そして595nmで特徴的な吸収極大を有し、そして584〜612nmで広範なピークを有した。
【0101】
実施例11
代表的な銅-ペプチド複合体による発毛の刺激
以下の実施例は、本発明の代表的なペプチド-銅複合体の皮内注射の後の温血動物における発毛の刺激を説明する。
【0102】
本実験において、C3Hマウス(60日齢、休止発毛相)の背部を、電気バリカンを用いて1日目に綿密に剪毛した。次いで、示したペプチド-銅複合体を含有する無菌生理食塩水を、マウスの剪毛された領域内の2つの位置に皮内注射した(すなわち、皮膚下に浸潤させた)。2つの位置での注射は、各マウスの剪毛領域内の2つの試験位置を提供した。各注射(0.1ml)は、無菌生理食塩水中に0.36〜0.55mgの間のペプチド-銅複合体を含有した。生理食塩水(0.1ml)を注射されたマウスの群は、コントロールとして供した。ペプチド-銅複合体の注射の後、発毛の徴候が10日以内に見られた。最初の視覚的なサインは、注射部位を取り囲む環状の領域において皮膚の色が濃くなることであった。この領域のサイズは、一般に用量依存性であり、用量の増加とともに増加する。本実験に用いた0.1mlの注射は、直径約0.5cm2〜5.0cm2と測定される発毛の円を生じた。活性な発毛が注射後14〜20日の間で生じ、29日目までに最大の効果が見られた。注射部位で発毛するマウスの数および発毛領域の直径の両方を、21日目に測定した。ポジティブな応答を、本研究において注射されたマウスの総数と比較した、注射部位で発毛を示すマウスの数で表した。本実験の結果を、下記の表4に示す(開始日は、毛包染色が最初に観測された日である):
【0103】
【表4】

【0104】
実施例12
代表的なペプチド-銅複合体による発毛の刺激
以下の実施例は、本発明の代表的なペプチド-銅複合体の皮内注射の後の温血動物における発毛の刺激を説明する。
【0105】
上記の実施例11のように、C3Hマウス(60日齢、休止発毛相)の背中を、電気バリカンを用いて1日目に綿密に剪毛した。次いで、示したペプチド-銅複合体を含有する無菌生理食塩水を、マウスの剪毛された領域内の2つの試験位置に皮内注射した(すなわち、皮膚下に浸潤させた)。2つの位置での注射は、各マウスの剪毛領域内の2つの試験位置を提供した。各注射(0.1ml)は、無菌生理食塩水中に0.75〜1.5mgの間のペプチド-銅複合体を含有した。生理食塩水(0.1ml)を注射されたマウスの群を、コントロールとして供した。ペプチド-銅複合体の注射の後、発毛の徴候が10日以内に見られた。最初の視覚的なサインは、注射部位を取り囲む環状の領域において皮膚の色が濃くなることであった。この領域のサイズは、一般に用量依存性であり、用量の増加とともに増加する。本実験に用いた0.1mlの注射は、直径約0.5cm2〜5cm2と測定される発毛の円を生じた。活性な発毛が注射後14〜20日の間で生じ、29日目までに最大の効果が見られた。注射部位で発毛するマウスの数および発毛領域の直径の両方を、21日目に測定した。ポジティブな応答を、本研究において注射されたマウスの総数と比較した、注射部位で発毛を示すマウスの数で表した。本実験の結果を表5に示す。
【0106】
【表5】

【0107】
実施例13
D-アミノ酸を含有するペプチド-銅複合体による発毛の刺激
本実験は、天然に存在するL-アミノ酸の代わりにD-アミノ酸を利用するAHK:Cu(1.1:1)の皮内注射による温血動物における発毛の刺激を説明する。
【0108】
本実験において、C3Hマウス(60日齢、休止発毛相)の背中を、電気バリカンを用いて1日目に綿密に剪毛した。次いで、AHK:Cu(1.1:1)、またはD-アミノ酸を含有するAHK:Cu(1.1:1)を含有する無菌生理食塩水を、マウスの剪毛された領域内の2つの位置に皮内注射した(すなわち、皮膚下に浸潤させた)。2つの位置での注射は、各マウスの剪毛領域内の2つの試験位置を提供した。各注射(0.1ml)は、無菌生理食塩水中に、注射あたり1.2または1.8μmoleのいずれかのペプチド-銅複合体を含有した。生理食塩水(0.1ml)を注射されたマウスの群を、コントロールとして供した。ペプチド-銅複合体の注射の後、発毛の徴候が10日以内に見られた。最初の視覚的なサインは、注射部位を取り囲む環状の領域において皮膚の色が濃くなることであった。この領域のサイズは、一般に用量依存性であり、用量の増加とともに増加する。本実験に用いた0.1mlの注射は、直径約0.5cm2〜5cm2と測定される発毛の円を生じた。活性な発毛が注射後14〜20日間で生じ、29日目までに最大の効果が見られた。
【0109】
発毛の程度を、2つの注射部位での発毛の総面積を測定することにより決定した。本実験のデータを表6に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
上記の表は、D-アミノ酸の対応するL-アミノ酸に代えての置換が、ペプチド銅複合体の発毛活性に影響しないことを説明する。
【0112】
実施例14
ペプチド-銅複合体の局所的適用による発毛の刺激
本実験は、ペプチド-銅複合体の局所的適用による温血動物における発毛の刺激を説明する。本実験において、休止期周期の雌C3Hマウス(60〜65日齢)を、それの後背部領域を剪毛することにより調製した(すなわち1日目)。ペプチド-銅複合体の局所的適用を、処置当たり約0.1mlを送達する綿先端アプリケーター(cotton-tipped applicator)を用いて、1日当たり2回(月曜日〜金曜日)実施した。本実験に用いた局所的製剤は、以下の成分を含有した:
ペプチド銅複合体 0.1〜0.5%(w/w)
滅菌水 16.9〜16.5%(w/w)
プロピレングリコール 50.0%(w/w)
エタノール 30.0%(w/w)
Nonoxynol-9 3.0%(w/w)
上記の製剤の局所的投与は、小胞の着色の開始まで継続した。小胞の着色の開始は、毛幹の出現を生じる。応答の程度の測定を、週おきにデジタルイメージ分析を使用して実施し、これは14日目から開始した。データを、以下の式を用いて、処置面積応答%として示した:
処置面積%=(発育面積/処置面積)×100
局所適用後の発毛に対する疎水性アミノ酸残基の効果を説明する比較目的のために、AHK:Cuを、AHF:Cuと比較した。本実験において、AHK:Cu(1.1:1)を含有する局所的製剤およびAHF:Cu(1.1:1)を含有する局所的製剤を、上記に示されるように、0.5%(w/w)および0.1%(w/w)の濃度で調製した。発毛応答(すなわち、「処置面積%」)を、20日目、27日目、および34日目に測定した。本実験の結果を、表7に示す。
【0113】
【表7】

【0114】
表7に示したデータは、親水性残基(すなわち、AHK:Cuのリジンアミノ酸)を含有するペプチド-銅複合体は、局所的投与による投与の後、発毛を刺激することにおいて、疎水性アミノ酸残基(すなわち、AHF:Cuのフェニルアラニンアミノ酸)を含有する類似したペプチドよりも活性であることを示す。このことは、親水性残基を含有するペプチド-銅複合体が、疎水性アミノ酸残基を含有する類似したペプチドよりも低い活性である注射による投与と対照的である。
【0115】
実施例15
ペプチド-銅複合体の腹腔内注射による発毛の刺激
以下の実験は、化学療法薬剤シトシンアラビノシド(Ara-C)での処置の間のペプチド-銅複合体GHKVFV:Cuの腹腔内(全身)注射による毛包生存度(すなわち、生育)の維持を説明する。
【0116】
本実験において、Sprague-Dawley仔ラット(8日齢)を、本研究の持続期間、4つの同腹仔(n=10/同腹仔)において維持した。0日目に、同腹仔に、滅菌生理食塩水溶液中のGHKVFV:Cu(2:1)、または生理食塩水コントロールの腹腔内(IP)注射を与えた(動物当たり1注射、注射当たり0.1ml)。1日目に、全ての動物に、Ara-C(50mg/kg)での一連の7回の継続的な日毎のIP注射を開始した。8日目に、全ての動物を、以下の評点尺度を用いて、抜け毛(脱毛症)の程度について評価した:
階級 脱毛症の程度
0 正常(抜け毛なし)
1 わずかに薄い
2 中程度に薄い
3 全体にわたって低密度な毛
4 毛の全喪失
Ara-C注射は、ほとんどの動物において5〜6日目までに顕著な抜け毛を引き起こした。GHKVFV:Cuの効果を評価するために、抜け毛の程度を、毎日評価した。50mg/kgの投与量でのGHKVFV:Cuの注射は、試験動物の体における毛のマイルドな保持を引き起こした。これは主に、頭部で見られ、体の毛は低密度のままであった。このことは、全体的な抜け毛を示した生理食塩水コントロール(+Ara-C)群と対照的である。表8は、前記の評点尺度を用いて、8日目に評価した本実験の結果を示す。「脱毛症の程度」は全ての動物に関する平均応答として表される。
【0117】
【表8】

【0118】
保持された毛の観察を、8日目に組織学的に確認した。生理食塩水+Ara-Cのみを投与された動物に関する5〜10%と比較して、50mg/kgのGHKVFV:Cuを投与された動物の背部の毛の約30〜40%が、発育相にあることを見出した。Ara-Cを投与されていない生理食塩水コントロール動物は、100%の発育相小胞を有した。
【0119】
実施例16
ペプチド-銅複合体の皮内注射による発毛の刺激
以下の実験は、化学療法薬剤シトシンアラビノシド(Ara-C)での処置の間のペプチド-銅複合体AHK:Cuの皮内(局所的)注射による、毛胞生存度(すなわち、生育)の局所的維持を説明する。
【0120】
本実験において、Sprague-Dawley仔ラット(8日齢)を、本研究の持続期間、5つの同腹仔(n=10〜11/同腹仔)において維持した。0日目に、同腹仔に、滅菌生理食塩水溶液中のAHK:Cu(1:1)、または生理食塩水コントロールの皮内(ID)注射を与えた(動物当たり1注射、注射当たり0.05ml)。各同腹仔は、AHK:CuまたはAra-Cを投与しない(すなわち、生理食塩水のみを投与する)2匹の正常なコントロール動物を含んだ。1日目に、指定された動物に、Ara-C(25mg/kg)での一連の7回の継続的な日毎の腹腔内(IP)注射を開始した。10日目に、全ての動物を、実施例15と同一の評点を用いて、注射部位での抜け毛(脱毛症)の程度について評価した。
【0121】
Ara-C注射は、ほとんどの動物で5〜6日目までに顕著な抜け毛を引き起こした。AHK:Cuの刺激効果を評価するために、抜け毛の程度を、毎日注射部位で評価した。AHK:Cu注射は、一般に注射部位の周りの0.25cm半径における毛の保持を引き起こした。これは、0.1〜0.5mg用量群において最も顕著である。表9は、前記の評点尺度を用いて、10日目に評価した結果を示す。「脱毛症の程度」は、注射の部位で見られる平均応答として表される。
【0122】
【表9】

【0123】
AHK:Cu注射の領域内の保持された毛の観察を組織学的に調査した。正常に出現し、そして機能する生育相毛胞が、AHK:Cuの注射部位でみられるが、注射から離れて位置する小胞は、異栄養性および非機能性であった(内部および外部の毛根鞘の完全性の混乱、取り除かれた毛幹)。これらのデータは、AHK:Cu注射の部位内の正常な毛胞機能の全体的な観察を確認し、そして化学療法処置の間に活性な生育周期を維持する毛胞に対するAHK-Cuの刺激効果を説明する。
【0124】
本発明の特定の実施態様を、説明の目的のために本明細書中で記載してきたが、種々の改変が、本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされ得ることは、上記から、明らかである。従って、本発明は、添付される請求の範囲による以外には制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性な治療用物質として使用するための組成物であり、該組成物は、
以下の構造:
[R−R]:銅(II)
を有するペプチド−銅複合体および
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤
を含有し、ここで、Rは、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;Rは、ヒスチジン、アルギニン、またはその誘導体である、組成物。
【請求項2】
がアミノ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
がヒスチジンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
が親水性アミノ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
活性な治療用物質として使用するための組成物であり、該組成物は、
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤、および
以下の構造
[R−R−R]:銅(II)
を有するペプチド−銅複合体
を含有し、
ここで、
は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体であり;
は、ヒスチジン、アルギニン、またはその誘導体であり、そして
は、アミド結合によってRに結合される化学的部分であり、
ここで、Rはアミノ酸でも、アミノ酸誘導体でもない、
組成物。
【請求項6】
がアミノ酸である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
がヒスチジンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
が、−NH、1〜20個の炭素原子を有するアルキルアミノ部分、および6〜20個の炭素原子を有するアリールアミノ部分からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載されるペプチド−銅複合体を使用して、医薬を製造する方法であって、該医薬は、発毛の刺激を必要とする動物における発毛を刺激するためのものである、方法。
【請求項10】
前記動物が、アンドロゲン性脱毛症、円形脱毛症、女性型禿頭症および続発性脱毛症からなる群から選択される抜け毛症を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抜け毛症がアンドロゲン性脱毛症である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抜け毛症が続発性脱毛症である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
発毛の刺激を必要とする動物において発毛を刺激するための方法であって、有効な量の請求項1〜8のいずれかに記載のペプチド-銅複合体を動物に投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記医薬が、局所的投与のために処方されている、請求項9〜12に記載の方法。

【公開番号】特開2006−328076(P2006−328076A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196269(P2006−196269)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【分割の表示】特願平8−502485の分割
【原出願日】平成7年6月16日(1995.6.16)
【出願人】(506246276)プロサイト コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】