説明

ペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法及び誘電体ベーストランジスタの製造方法

【目的】ペロブスカイト構造の酸化物層をキャリア走行領域とするペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法及び誘電体ベーストランジスタの製造方法に関し、酸化物層の表層の導電率を調整する工程を含むペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法及び誘電体ベーストランジスタの製造方法を提供すること。
【構成】電子用ドープ元素がドープされたペロブスカイト構造の第一の酸化物層17と正孔ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第二の酸化物層18を重ねて形成する工程と、熱処理によって前記電子ドープ用元素と前記正孔ドープ用元素を相互拡散させて第一の酸化物層17と前記第二の酸化物層18の少なくとも界面近傍の層のキャリアを変化させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法及び誘電体ベーストランジスタの製造方法に関し、より詳しくは、ベロブスカイト構造の酸化物層をキャリア走行領域とするペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法及び誘電体ベーストランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性、高誘電性の酸化物のメモリー応用の研究開発は盛んになっている。例えば電極応用としてはLaSrCoO、CaRuOが注目され、また、ペロブスカイト構造を有する酸化物には超伝導、強磁性、金属−絶縁体転移などのように半導体にはない特性をもつものがある。
【0003】
このような諸特性を利用すると、不揮発性メモリーや透明トランジスタ表示素子をはじめとして、半導体にはない様々な新機能素子を実現する可能性がある。また、シリコンエレクトロニクスの補助的地位に留まらず、酸化物エレクトロニクスという一分野を構築する可能性がある。
【0004】
酸化物を用いた集積化技術は、今後、酸化物デバイスの発展とともに進むと予想される。
【0005】
酸化物デバイスの一つの例としてSrTiO3基板を用いた誘電体ベーストランジスタが提案されている。
【0006】
この誘電体ベーストランジスタは、図5に示すように、高誘電率のSrTiO3基板よりなる誘電体ベース層1の上面に、シリコンよりなるトンネルバリア層2,3が間隔をおいて2箇所に形成され、それらのトンネルバリア層2,3の上にはエミッタ層4とコレクタ層5が形成されている。また、高誘電率のベース層2の下面には、金属のベース電極6が形成されており、ベース電極6に印加した電位により誘電体ベース層1の電位が制御される。
【0007】
そして、低温下においてエミッタ層4に電子を供給すると、その電子はトンネル効果によりその下のトンネルバリア層2を抜けて誘電体ベース層1の表層を走行し、他方のトンネルバリア層3のバリアを越えてコレクタ層5に到達する。この場合、ベース電極6から誘電体ベース層1に印加する電圧を変化させると、エミッタ層4から誘電体ベース層に注入されるキャリアの量が変わり、これによりトランジスタの電流が制御されることになる。
【0008】
ところで、誘電体ベース層1として使用されるSrTiO3のような酸化物基板の表層の導電率を変化させることは素子の特性を調整するために有用である。
【0009】
その方法としては、蒸着或いはスパッタによってNb又はLa等の金属を酸化物基板の表面に付着した後に、熱処理によってその金属を酸化物基板の表面に拡散させるという方法が考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、Nb、Laなどの金属は約1000℃の熱処理によってもSrTiO3基板中に拡散せず、そのSrTiO3基板の結晶構造には変化がないし、TiサイトをNbに置換したり、SrサイトをLaに置換するのは難しい。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、酸化物層の表層の導電率を調整する工程を含むペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法及び誘電体ベーストランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題は、図3に例示するように、電子ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第一の酸化物層17と正孔ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第二の酸化物層18を重ねて形成する工程と、熱処理によって前記電子ドープ用元素と前記正孔ドープ用元素を相互拡散させて第一の酸化物層17と前記第二の酸化物層18の少なくとも界面近傍の層のキャリアを変化させる工程とを有することを特徴とするペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法によって解決する。
【0013】
または、電子ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第一の酸化物層と正孔ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第二の酸化物層を重ねて形成する工程と、熱処理によって前記電子ドープ用元素と前記正孔ドープ用元素を相互拡散させて第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の少なくとも界面近傍の層のキャリアを変化させる工程と、前記第一の酸化物層及び前記第二の酸化物層からなる誘電体ベース層の一方の面にトンネル層を形成する工程と、前記トンネル層の上に間隔をおいてエミッタ電極とコレクタ電極を形成する工程と、前記誘電体ベース層の他方の面の上にベース電極を形成する工程とを有することを特徴とする誘電体ベーストランジスタの製造方法によって解決する。
【0014】
また、上記した課題は、図4に例示するように、構成元素サイトに欠損を有するペロブスカイト構造の第一の酸化物層20と、該第一の酸化物層20に比べて高い導電率を有するペロブスカイト構造の第二の酸化物層21とを重ねて形成する工程と、熱処理により前記欠損を前記第二の酸化物層21に伝搬させて、前記第二の酸化物層21の導電率を低下させる工程とを有することを特徴とするペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法によって解決する。
【0015】
または、構成元素サイトに欠損を有するペロブスカイト構造の第一の酸化物層と、該第一の酸化物層に比べて高い導電率を有するペロブスカイト構造の第二の酸化物層とを重ねて形成する工程と、熱処理により前記欠損を前記第二の酸化物層に伝搬させて、前記第二の酸化物層の導電率を低下させる工程と、前記第一の酸化物層及び前記第二の酸化物層からなる誘電体ベース層の一方の面にトンネル層を形成する工程と、前記トンネル層の上に間隔をおいてエミッタ電極とコレクタ電極を形成する工程と、前記誘電体ベース層の他方の面の上にベース電極を形成する工程とを有することを特徴とする誘電体ベーストランジスタの製造方法によって解決する。
【0016】
本発明によれば、ペロブスカイト構造を有する酸化物は金属−酸素面の切り口の格子定数がほぼ等しく、ペロブスカイト構造を有する酸化物層の上に別のペロブスカイト構造を有する酸化物層をエピタキシャル成長できる場合が多い、というペロブスカイト構造の酸化物の性質を利用して、ABO3下地酸化物層の上にA′B′O3薄膜を成長した後に、熱処理によって4元AA′BB′固溶体層、或いはAA′又はBB′の2元固溶体層を形成することにより、下地酸化物層と薄膜酸化物層とは導電性の異なる固溶体を形成している。ただし、A、A′は2価又は3価の金属イオン、B、B′は3d遷移基金属、Oは酸素である。
【0017】
本発明によれば、ペロブスカイト構造の第一の酸化物層の上にペロブスカイト構造の第二の酸化物を堆積し、ついで、熱処理によって、第一の酸化物層と第二の酸化物層のそれぞれを構成する2価又は3価の元素同士と、第一の酸化物層と第二の酸化物層のそれぞれを構成する3d遷移金属元素同士の少なくとも一方を相互拡散し、これにより第一の酸化物層の表層又は表面上に第一の酸化物層及び第二の酸化物層とは導電率の異なる第三の酸化物層を形成している。
【0018】
その第三の酸化物は、第一の酸化物層と第二の酸化物層に含まれる価数の異なる元素同士を置き換えることによって形成され、その置き換えられた元素によってキャリアを導入して絶縁体から金属までの幅広い導電率を有する。
【0019】
また、電子ドープ用元素が導入されたペロブスカイト構造の第一の酸化物層の上に正孔ドープ用元素が導入されたペロブスカイト構造の第二の酸化物層を形成した後に、熱処理によって電子ドープ用元素と正孔ドープ用元素を相互拡散して第二の酸化物層と第一の酸化物層表面のキャリアを変化させるようにしたので、その領域の導電率が調整される。
【0020】
さらに、構成元素の欠損を有するペロブスカイト構造の第一の酸化物層の上に、導電性を有するペロブスカイト構造の第二の酸化物層を形成した後に、熱処理によって第一の酸化物層中の欠損を第二の酸化物層に伝搬させている。これにより、第二の酸化物層の導電率が小さくなるように変化する。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように本発明によれば、ペロブスカイト構造の第一の酸化物層の上にペロブスカイト構造の第二の酸化物を堆積し、ついで、熱処理によって、第一の酸化物層と第二の酸化物層のそれぞれを構成する2価又は3価の元素同士と、第一の酸化物層と第二の酸化物層のそれぞれを構成する3d遷移金属元素同士の少なくとも一方を相互拡散し、これにより第一の酸化物層の表層又は表面上に第一の酸化物層及び第二の酸化物層とは導電率の異なる第三の酸化物層を形成するようにしたので、第一の酸化物層と第二の酸化物層に含まれる価数の異なる元素同士を置き換えることによって形成された第三の酸化物は、その置き換えられた元素によってキャリアを導入して絶縁体から金属までの幅広い導電率を得ることができる。
【0022】
また、電子ドープ用元素が導入されたペロブスカイト構造の第一の酸化物層の上に正孔ドープ用元素が導入されたペロブスカイト構造の第二の酸化物層を形成した後に、熱処理によって電子ドープ用元素と正孔ドープ用元素を相互拡散して第二の酸化物層と第一の酸化物層表面のキャリアを変化させるようにしたので、その領域の導電率を調整できる。
【0023】
さらに、構成元素の欠損を有するペロブスカイト構造の第一の酸化物層の上に導電性を有するペロブスカイト構造の第二の酸化物層を形成した後に、熱処理によって第一の酸化物層中の欠損を第二の酸化物層に伝搬させたので、第二の酸化物層の導電率を小さくなるように変化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
そこで、以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例に係る酸化物層の表面の導電率を制御する工程を示す断面図である。
【0026】
まず、図1(a) に示すように、抵抗率が10ΩcmのLaMnO3基板(下地層)11の上に、抵抗率1×10-3ΩcmのLaMn1-x1Nix1O3層12をレーザアブレーションにより100nmの厚さに形成する。なお、x1はNiの組成比を示している。
【0027】
次に、水素(H)を5%、ヘリウム(He)を95%の割合で混合したガスの雰囲気中にLaMnO3基板11及びLaMn1-x1Nix1O3層12を置いて、1000℃の温度でそれらを2時間加熱する。これにより、LaMnO3基板11中のMnとLaMn1-x1Nix1O3層12中のNiが相互拡散するため、LaMnO3基板11の表層とLaMn1-x1Nix1O3層12では金属−絶縁体転移が生じ、転移した領域は図1(b) に示すような抵抗率10Ωcm以下のLaMn1-x1-yNix1+yO3固溶体13となる。なお、yはNiの組成比を示している。
【0028】
LaMn1-x1-yNix1+yO3固溶体13は金属であってその抵抗率は、組成比x、yの値を変えたり加熱温度を変えることにより1×10-3Ωcm〜10Ωcmの範囲で所望の値に変わる。
【0029】
本実施例ではLaMnO3を基板としたが、一般式ABO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を下地としてもよい。また、本実施例では酸化物基板の上にLaMn1-x1Nix1O3層12を形成したが、一般式abO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を使用してもよい。ここで、A、aは2価又は3価の金属イオン、B、bは3d遷移金属、Oは酸素である。元素A、B、a、bは、それぞれ2元素であってもよい。
【0030】
この場合、ABO3からなる基板の表層には、A1-zz1-YYO3固溶体が形成される。なお、Z、Yはそれぞれ組成比を示している。
【0031】
(第2実施例)
第2図は、本発明の第2実施例に係る酸化物層の表面の導電率を制御する工程を示す断面図である。
【0032】
まず、図2(a) に示すように、抵抗率が1×105Ωcmより大きなSrTiO3基板14の上に、抵抗率が数ΩcmのLaTiO3層15をレーザアブレーションにより10nmの厚さに形成する。SrTiO3中のTiは4価であり、LaTiO3中のTiは3価である。
【0033】
次に、Hを5%、Heを95%の割合で混合したガスの雰囲気中にSrTiO3基板14及びLaTiO3層15を置いて、温度1010℃でそれらを2時間加熱する。
【0034】
これにより、SrTiO3基板14中のSrとLaTiO3層15中のLaが相互拡散し、SrTiO3基板14の表層とLaTiO3層15では金属−絶縁体転移が生じ、転移した領域は図2(b) に示すように抵抗率10-3〜10-5ΩcmのLa1-x2Srx2TiO3固溶体16となる。このLa1-x2Srx2TiO3固溶体16は、Srによって正孔がドープされた状態になる。なお、x2はSrの組成比を示し、組成比x2が約0.05以上で金属−絶縁体転移が生じる。
【0035】
その雰囲気は水素の存在によって僅かに還元雰囲気となっているので、SrTiO3基板14には僅かに酸素欠損が生じる。その欠損は、La1-x2Srx2TiO3固溶体16を形成した後に600℃の酸素雰囲気中で2時間熱処理を行うことによって解消する。
【0036】
La1-x2Srx2TiO3固溶体16を形成する際の加熱温度の大きさによってその導電率が変化し、例えば加熱温度を980℃とすると、その固溶体のキャリア面密度は約1×1013/cm2 、移動度200cm2 /Vsとなり、加熱温度を1000℃とするとキャリア面密度は約1×1015/cm2 、移動度3500cm2 /Vsと変化する。
【0037】
本実施例ではSrTiO3を基板としたが、一般式ABO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を下地として使用してもよい。また、本実施例では基板の上にLaTiO3層を形成したが、一般式abO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を使用してもよい。ここで、A,aは2価又は3価の金属イオン、B,bは3d遷移金属、Oは酸素である。
【0038】
この場合、ABO3からなる下地層の表層には、A1-zz1-YYO3固溶体が形成される。
【0039】
(第3実施例)
図3は、本発明の第3実施例に係る酸化物層の表面の導電率を制御する工程を示す断面図である。
【0040】
まず、図3(a) に示すように、抵抗率10-3〜10-4ΩcmのSrTi1-y3Nby3O3基板17上に、抵抗率〜102ΩcmのSrTi1-x3Alx3O3層18をレーザアブレーションにより10nmの厚さに形成する。この場合、5価のNbは4価のTiと置き代わって電子供給ドーパントとなり、3価のAlは4価のTiと置き代わって正孔供給ドーパントとなる。なお、x3はAlの組成比、y3はNbの組成比を示している。
【0041】
次に、Hを5%、Heを95%の割合で混合したガスの雰囲気中にSrTi1-y3Nby3O3基板17及びSrTi1-x3Alx3O3層18を置き、それらを1200℃の温度で2時間加熱する。これにより、SrTi1-y3Nby3O3基板17中のNbとSrTi1-x3Alx3O3層18中のAlが相互拡散し、SrTi1-y3Nby3O3基板17表層とSrTi1-x3Alx3O3層18は図3(b) に示すようにSrTi1-x3-z2Nbz1Alz2O3固溶体19となる。SrTi1-x3-z2Nbz1Alz2O3固溶体19では、正孔キャリアと電子キャリアが補償し合って導電率が低下したり或いは零となる。なお、z1はNbの組成比、z2はAlの組成比を示す。
【0042】
その熱処理を行う雰囲気は僅かな還元雰囲気であるので、SrTi1-y2Nby2O3基板17に生じる結晶を解消するために、固溶体19を形成した後に600℃の酸素雰囲気中で2時間熱処理を行う。
【0043】
本実施例ではNbをドープしたSrTiO3を基板としたが、電子供給ドーパント又はドナーが含まれた一般式ABO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を下地として使用してもよい。また、本実施例では基板の上にAlがドープされたSrTiO3の層を形成したが、正孔供給ドーパント又はアクセプタが含まれた一般式abO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を使用してもよい。ここで、A,aは2価又は3価の金属イオン、B,bは3d遷移金属、Oは酸素である。
【0044】
(第4実施例)
図4は、本発明の第4実施例に係る酸化物層の表面の導電率を制御する工程を示す断面図である。
【0045】
まず、図4(a) に示すように、Srが欠損したSr0.95TiO3基板20上に、抵抗率1×10-4ΩcmのLa0.5Sr0.5TiO3層21をレーザアブレーションにより10nmの厚さに形成する。
【0046】
次に、Hを5%、Heを95%の割合で混合したガスの雰囲気中にSr0.95TiO3基板20及びLa0.5Sr0.5TiO3層21を置き、それらを1010℃の温度で2時間加熱する。これにより、Sr0.95TiO3基板20中の欠損がLa0.5Sr0.5TiO3層21に伝搬して、図4(b) に示すように、La0.5Sr0.5TiO3層21がLa0.5Sr0.5-dTiO3層22となる。なお、dは0.5よりも小さいSrの組成比を示す。
【0047】
La0.5Sr0.5-dTiO3層22の抵抗率は、組成比dの値によってLa0.5Sr0.5TiO3層21の抵抗率の10〜1000倍程度の大きさに変化できる。
【0048】
本実施例ではSrが欠損したSr0.95TiO3を基板としたが、欠損を有する一般式ABO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を下地として使用してもよい。また、本実施例では基板の上にLa0.5Sr0.5TiO3層を形成したが、電子又は正孔を供給するドーパントが含まれる一般式abcO3で表示されるペロブスカイト構造の酸化物を使用してもよい。ここで、A,aは2価又は3価の金属イオン、B,bは3d遷移金属、cは正孔又は電子供給ドーパント、Oは酸素である。
【0049】
(その他の実施例)
基板の上の酸化物層の厚さが200nm以下の場合に、熱によってその酸化物層の全てが上記したような固溶体となるが、200nmよりも厚い場合には、その酸化物層の上層部は固溶体に変化せず、接合界面近傍の層が固溶体となる。
【0050】
また、上記したような固溶体が形成された基板は、図5に示したようなトンネル層や電極が形成されてトランジスタなどの酸化物素子となる。
【0051】
なお、上記した酸化物や固溶体などの電気的特性を抵抗率で示しているが、導電率で示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施例の工程を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例の工程を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施例の工程を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施例の工程を示す断面図である。
【図5】従来方法により形成された酸化物基板を使用する酸化物素子の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 LaMnO3基板
12 LaMn1-x1Nix1O3
13 LaMn1-x1-yNix1+yO3固溶体
14 SrTiO3基板
15 LaTiO3
16 La1-x2Srx2TiO3固溶体
17 SrTi1-y2Nby2O3基板
18 SrTi1-x2Alx2O3
19 SrTi1-x2-z2Nbz1Alz2O3固溶体
20 Sr0.95TiO3基板
21 La0.5Sr0.5-dTiO3
22 La0.5Sr0.5-dTiO3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第一の酸化物層と正孔ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第二の酸化物層を重ねて形成する工程と、
熱処理によって前記電子ドープ用元素と前記正孔ドープ用元素を相互拡散させて第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の少なくとも界面近傍の層のキャリアを変化させる工程とを有することを特徴とするペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法。
【請求項2】
前記電子ドープ用元素はNbであり、前記正孔ドープ用元素はAlであることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法。
【請求項3】
前記第一の酸化物層はSrTi1-yNbO3であり、前記第二の酸化物層はSrTi1-xAlx3であることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法。
【請求項4】
構成元素サイトに欠損を有するペロブスカイト構造の第一の酸化物層と、該第一の酸化物層に比べて高い導電率を有するペロブスカイト構造の第二の酸化物層とを重ねて形成する工程と、
熱処理により前記欠損を前記第二の酸化物層に伝搬させて、前記第二の酸化物層の導電率を低下させる工程とを有することを特徴とするペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法。
【請求項5】
前記第一の酸化物層はSrに欠損を有するSrTiNbO3であり、前記第二の酸化物層はLaSrTiO3であることを特徴とする請求項4に記載のペロブスカイト構造の酸化物層を有する酸化物素子の製造方法。
【請求項6】
電子ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第一の酸化物層と正孔ドープ用元素がドープされたペロブスカイト構造の第二の酸化物層を重ねて形成する工程と、
熱処理によって前記電子ドープ用元素と前記正孔ドープ用元素を相互拡散させて第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の少なくとも界面近傍の層のキャリアを変化させる工程と、
前記第一の酸化物層及び前記第二の酸化物層からなる誘電体ベース層の一方の面にトンネル層を形成する工程と、
前記トンネル層の上に間隔をおいてエミッタ電極とコレクタ電極を形成する工程と、
前記誘電体ベース層の他方の面の上にベース電極を形成する工程とを有することを特徴とする誘電体ベーストランジスタの製造方法。
【請求項7】
構成元素サイトに欠損を有するペロブスカイト構造の第一の酸化物層と、該第一の酸化物層に比べて高い導電率を有するペロブスカイト構造の第二の酸化物層とを重ねて形成する工程と、
熱処理により前記欠損を前記第二の酸化物層に伝搬させて、前記第二の酸化物層の導電率を低下させる工程と、
前記第一の酸化物層及び前記第二の酸化物層からなる誘電体ベース層の一方の面にトンネル層を形成する工程と、
前記トンネル層の上に間隔をおいてエミッタ電極とコレクタ電極を形成する工程と、
前記誘電体ベース層の他方の面の上にベース電極を形成する工程とを有することを特徴とする誘電体ベーストランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−303529(P2006−303529A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169266(P2006−169266)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【分割の表示】特願平7−23743の分割
【原出願日】平成7年2月13日(1995.2.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】