説明

ペーストの転写状態判定装置およびペーストの転写状態判定方法

【課題】電子部品の電極におけるフラックスの転写状態の良否を判定する装置および方法を提供する。
【解決手段】バンプ11aの輝度を変化させる顔料が配合されたフラックスが転写されたバンプ11aにおける輝度分布を検出し、閾値THを超える輝度を示す領域11cと閾値THを超えない輝度を示す領域11dの比率に基づいてフラックスの転写状態の良否を判定する。これにより、フラックスの転写状態の良否を的確に判定することができ、フラックスの転写不良に起因する電極の接合不具合を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極に転写されたフラックス等のペーストの転写状態の良否を判定するペーストの転写状態判定装置およびペーストの転写状態判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フリップチップ等の接合体と基板等の被接合体との接合性の向上を目的として、フリップチップの電極と基板との接合部にフラックスを介在させている。フラックスは、接合前のフリップチップの電極に予め転写することにより供給され、フラックスが転写された電極を基板に押圧することによりフリップチップと基板の接合が行われる。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3289604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、フラックスが電極の表面に完全に転写されていなかったり、転写量(厚み)に不足があったりする等の転写不良が発生すると、フリップチップと基板との物理的、電気的な接合強度が不足する等の不具合が生じることがある。
【0004】
そこで本発明は、接合体の電極におけるフラックス等のペーストの転写状態の良否を判定するペーストの転写状態判定装置およびペーストの転写状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のペーストの転写状態判定装置は、電極の輝度を変化させる顔料が配合されたペーストが転写された前記電極における輝度分布を検出する輝度分布検出手段と、前記輝度分布に基づいて前記ペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率を演算する演算手段と、前記ペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率に基づいて前記ペーストの転写状態の良否を判定する判定手段と、を備えた。
【0006】
請求項2記載のペーストの転写状態判定装置は、請求項1記載のペーストの転写状態判定装置において、前記演算手段が、前記ペーストが転写された電極の輝度とペーストが転写されていない電極の輝度との間の輝度に設定された閾値を超えている領域と超えていない領域との比率を演算し、前記判定手段が、前記閾値を超えている領域と超えていない領域との比率に基づいて前記ペーストの転写状態の良否を判定する。
【0007】
請求項3記載のペーストの転写状態判定方法は、電極の輝度を変化させる顔料が配合されたペーストを前記電極に転写する工程と、前記電極における輝度分布を検出する工程と、前記輝度分布に基づいてペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率を演算する工程と、前記ペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率に基づいて前記ペーストの転写状態の良否を判定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フラックス等のペーストの転写による電極の輝度の差を利用し、ペーストが転写された電極におけるペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率に基づいてペーストの転写状態の良否を判定するので、ペーストの転写状態の良否を的確に判定することができ、ペーストの転写不良に起因する電極の接合不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の実施の形態の実装装置の全体構成について説明する。図1において、基台1は実装装置のベースとなり、基台1上の略中央には基板2の搬送を行う基板搬送装置3がX方向に延伸して配設される。基板搬送装置3は基板2をクランプして固定する機能を備え、基板2を所定の位置に位置決めする基板位置決め装置としても機能する。なお、本発明において、基板2の搬送方向をX方向とし、これに水平面内で直交する方向をY方向とする。
【0010】
基板搬送装置3のY方向における両側方には複数のパーツフィーダ4が並設される。パーツフィーダ4は内部に収納された複数の電子部品を供給口5に順次供給する電子部品供給装置として機能する。基台1のX方向における両端部には一対のYテーブル6が配設され、一対のYテーブル6にXテーブル7が架設される。Xテーブル7には実装ヘッド8が装着される。Yテーブル6およびXテーブル7にはY軸駆動機構6aおよびX軸駆動機構7a(図2参照)が備えられ、実装ヘッド8を基台1に対して相対的に水平移動させる実装ヘッド移動手段として機能する。
【0011】
図2において、実装ヘッド8には複数のノズルユニット9が装着され、各ノズルユニット9の下端部にはノズル10が装着される。各ノズル10にはZ軸駆動機構10aおよびθ軸駆動機構10bが備えられ、各ノズル10は独立してZ方向に昇降およびθ方向(Z軸周り)に回転可能に構成される。また、各ノズル10には吸排気機構10cが備えられ、ノズル10内を真空吸引して電子部品11を吸着し、排気して電子部品11をリリースする真空破壊を行う。
【0012】
図1において、基板搬送装置3とパーツフィーダ4の間にはラインカメラ12が配設される。ラインカメラ12はノズル10に吸着された電子部品11を下方から撮像する撮像手段として機能する。図2において、画像処理部12aは、ラインカメラ12によって撮像された電子部品11の画像から電子部品11の外形(四辺)をパターン認識し、電子部品11の中心位置と角度を検出する。
【0013】
図1において、基板搬送装置3とパーツフィーダ4の間でラインカメラ12の側方にはペースト供給手段としてのフラックス供給部13が配設される。フラックス供給部13の上部には、電子部品11の電極に形成された複数のバンプ11a(図2参照)に供給するフラックスや銀ペースト等のペーストが貯留され、ノズル10に吸着された電子部品11の各バンプ11aの表面に転写されるようになっている。フラックスには、例えば黒色のカヤセットが配合され、バンプ11aの輝度を低下させる効果を伴っている。
【0014】
図1において、基板搬送装置3とパーツフィーダ4の間でフラックス供給部13の側方にはカメラ14が配設される。カメラ14にはCCDやCMOS等の光センサが備えられ、対象物の反射光を感知する複数の画素が配列される。図2において、輝度分布検出部14aは、カメラ14の画素毎に感知された反射光の強弱に基づいて対象物の輝度分布を検出する。従って、ノズル10に吸着された電子部品11の複数のバンプ11aにおける輝度分布を検出する場合には、輝度分布を検出したい箇所をカメラ14の撮像領域に位置させる。
【0015】
図3は輝度分布検出部14aにより検出されたバンプ11aにおける輝度分布を示している。図3(a)において、フラックスが転写されていないバンプ11aの場合、金や半田で形成されるバンプ11aの強い反射光によりバンプ11a全体は高輝度で検出され、バンプに比べて低反射性であるレジストやパッシベーションなどの樹脂により覆われた電子部品11の本体11bは低輝度で検出される。一方、図3(b)、(c)はフラックス
が転写されたバンプ11aの輝度分布を示しており、通常使用される淡色系のフラックスが転写されたバンプ11aは、図3(b)に示すように高輝度で検出され、暗色系の顔料が配合されたフラックスが転写されたバンプ11aは、図3(c)に示すように、フラックスが転写されていないバンプ11aにおける輝度(図3(a)参照)より低輝度で検出される。
【0016】
そこで、フラックスが転写されてないバンプ11aにおける輝度(図3(a)参照)と暗色系の顔料が配合されたフラックスが転写されたバンプ11aにおける輝度の間に閾値THを設定し、検出された輝度分布と閾値THを比較してバンプ11aにおけるフラックスの転写状態を判定する。例えば、図3(d)に示すように、バンプ11aにフラックスが転写された領域11cと転写されていない領域11dが混在する場合、転写された領域11cは閾値THより低輝度で検出され、転写されていない領域11dは閾値THより高輝度で検出される。この場合、閾値THより高輝度で検出される領域が大きいほどフラックスが転写されていない領域が大きいことになり、フラックスの不良転写が発生していると判定できる。
【0017】
図2において、制御部15は、Y軸駆動機構6aおよびX軸駆動機構7a、Z軸駆動機構10a、θ軸駆動機構10b、吸排気機構10c、画像処理部12a、輝度分布検出部14aとの間で電気信号の送受信可能に接続される。制御部15には記憶領域15aと演算領域15bが含まれ、記憶領域15aに記憶された制御プログラムや各種パラメータに基づいて実装装置の動作制御を行う。記憶領域15aには、上述した閾値THのほかにフラックスの転写状態の良否を判定するための許容値が設定される。
【0018】
フラックスの転写状態の良否は、バンプ11aにおける輝度分布のうち閾値THを超える輝度を示す画素数のバンプ11aの円領域に含まれる画素数に対する比率(以下、輝度異常画素比率という)により判定され、輝度異常画素比率が許容値(許容比率)を超える場合に不良転写が発生していると判定する。記憶領域15aにはバンプ11aの径が記憶され、この径に基づいてバンプ11aの円領域に含まれる画素数が算出される。また、記憶領域15aには、電子部品11の電極に形成された複数のバンプ11aの電子部品11の中心に対する相対位置が記憶され、画像処理部12aにより検出された電子部品11の中心位置および角度に基づいて各バンプ11aの位置を算出できるようになっている。フラックスの転写状態の判定の際には、電子部品11の中心に対する相対位置に基づいて任意のバンプ11aをカメラ14の撮像領域に順次位置決めし、全てのバンプ11aにおける輝度分布を検出し、それぞれ閾値THおよび許容値との比較を行う。
【0019】
このように、カメラ14と輝度分布検出部14aは、フラックスが転写されたバンプ11aにおける輝度分布を検出する輝度分布検出手段として機能し、制御部15は、バンプ11aにおける輝度分布に基づいてフラックスが転写された領域と転写されていない領域との比率を演算し、また、フラックスが転写されたバンプ11aにおける輝度分布から所定の輝度に設定した閾値THを超えている領域と超えていない領域との比率を演算する演算手段として機能するとともに、フラックスが転写された領域と転写されていない領域との比率に基づいてフラックスの転写状態の良否を判定し、また、閾値THを超えている領域と超えていない領域との比率に基づいてフラックスの転写状態の良否を判定する判定手段として機能する。
【0020】
なお、電子部品11が微小チップである場合には、カメラ14の撮像領域に電子部品11の全体が含まれることがある。このような場合には、電子部品11全体を撮像して複数のバンプ11aにおける輝度分布を一度に検出することが可能である。また、フラックスが転写された部分の輝度が、フラックスが転写されていない部分の輝度より高輝度で検出されるように構成することも可能である。この場合、フラックスに赤色のキナクリドンな
どの高反射性の顔料を配合し、フラックスが転写されてないバンプ11aにおける輝度とフラックスが転写されたバンプ11aにおける輝度との間に閾値を設定し、輝度分布のうち閾値を下回る輝度を示す画素数の認識対象全体の画素数に対する比率によりフラックスの転写状態の良否を判定する。また、上述した電子部品11の電極にはバンプ11aが形成されており、バンプ11a自体を電子部品11の電極として構成しているが、電極が電子部品11の下面から突出する凸状体等であればバンプ11aを介さずに基板2と接合できるので、その場合には電極自体にフラックスを転写し、電極自体におけるフラックスの転写状態の良否を判定する。
【0021】
制御部15にはキーボードやドライバ等からなる入力部16が接続され、制御部15にアクセスして記憶領域15aにデータの入力等を行う。さらに、制御部15には出力部17が接続される。出力部17は、CRTや液晶パネル等の表示手段を備え、実装装置における動作状況を可視表示するほか、警告手段を備え、実装装置の稼動中にエラーが生じた場合等にオペレータに警告する。
【0022】
このように構成される実装装置は、電子部品の電極におけるフラックスの転写状態の良否を判定する機能を備えており、次に、フラックスの転写状態の良否を判定する方法について図4を参照して説明する。まず、実装対象となる電子部品11の電極に形成された各バンプ11aの径および位置を設定する(ST1)。各バンプ11aの位置に関しては電子部品11の中心位置に対する相対位置で設定する。各バンプ11aが規則的にマトリックス配列して形成されている場合には、行列数および行ピッチ、列ピッチで設定するようにしてもよい。
【0023】
次に、閾値THおよび許容比率を設定する(ST2)。このうち閾値THは、フラックスが転写されてないバンプ11aにおける輝度と暗色系の顔料が配合されたフラックスが転写されたバンプ11aにおける輝度の間に設定する。また、許容比率は、バンプ11aの円領域全体に対するフラックスが転写された領域の比率を画素比で表したものであり、電子部品11と基板2の間で要求される接合品質を物理的、電気的に許容できる値に設定する。なお、ST1とST2については何れの順序であってもよい。
【0024】
次に、各バンプ11aに暗色系の顔料を配合したフラックスを転写する(ST3)。フラックスはフラックス供給部13の上部に貯留されているので、各バンプ11aが形成された面を下向きにした状態でノズル10に吸着された電子部品11をフラックス供給部13の上方で昇降させて各バンプ11aの表面にフラックスを転写する。
【0025】
次に、各バンプ11aの位置を算出する(ST4)。各バンプ11aの位置は、ノズル10に吸着された電子部品11をラインカメラ12の上方に移動させ、撮像画像から電子部品11の外形(四辺)をパターン認識して電子部品11の中心位置と角度を検出し、記憶領域15aに記憶された各バンプ11aの電子部品11の中心に対する相対位置に基づいて算出される。
【0026】
次に、各バンプ11aにおける輝度分布を検出する(ST5)。ST4において算出された各バンプ11aの位置に基づいて各バンプ11aをカメラ14の撮像領域に順次位置決めし、各バンプ11aにおける輝度分布を検出する。バンプ11a毎に検出された輝度分布は、ST2において設定した閾値THおよび許容比率と比較され、フラックスの転写状態の良否が判定される。全てのバンプ11aにおける輝度異常画素比率が許容比率を下回る場合には転写良好であると判定し(ST6)、1つでも許容比率を超える場合には転写不良であると判定し(ST7)、エラー警告を行う(ST8)。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、フラックス等のペーストの転写不良に起因する電極の接合不具合を防止することができるので、電子部品の実装分野において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の電子部品実装装置の全体構成図
【図2】本発明の実施の形態の電子部品実装装置の制御系の構成図
【図3】本発明の実施の形態の輝度分布を示す説明図
【図4】本発明の実施の形態のフラックス転写状態の良否判定処理フロー図
【符号の説明】
【0029】
11 電子部品
11a バンプ
14 カメラ
14a 輝度分布検出部
15 制御部
TH 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の輝度を変化させる顔料が配合されたペーストが転写された前記電極における輝度分布を検出する輝度分布検出手段と、
前記輝度分布に基づいて前記ペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率を演算する演算手段と、
前記ペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率に基づいて前記ペーストの転写状態の良否を判定する判定手段と、
を備えたペーストの転写状態判定装置。
【請求項2】
前記演算手段が、前記ペーストが転写された電極の輝度とペーストが転写されていない電極の輝度との間の輝度に設定された閾値を超えている領域と超えていない領域との比率を演算し、前記判定手段が、前記閾値を超えている領域と超えていない領域との比率に基づいて前記ペーストの転写状態の良否を判定する請求項1記載のペーストの転写状態判定装置。
【請求項3】
電極の輝度を変化させる顔料が配合されたペーストを前記電極に転写する工程と、
前記電極における輝度分布を検出する工程と、
前記輝度分布に基づいてペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率を演算する工程と、
前記ペーストが転写された領域と転写されていない領域との比率に基づいて前記ペーストの転写状態の良否を判定する工程と、
を含むペーストの転写状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−305724(P2007−305724A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131362(P2006−131362)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】