説明

ホウ化清浄剤の使用により高い動的摩擦係数を与える湿式摩擦クラッチ−潤滑剤系

シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチ、又はこのようなクラッチを含む装置が、過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a)無灰分散剤、(b)有機リン化合物及び(c) ホウ化清浄剤、そして必要により(d) 補助摩擦改質剤を含む性能を高める添加剤を含む潤滑剤組成物で潤滑される、湿式摩擦クラッチ−潤滑剤系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い動的摩擦係数を生じ得る湿式摩擦クラッチ−潤滑剤系だけでなく、湿式摩擦クラッチ、例えば、車両用オートマチックトランスミッション中で普通に使用されるものの中で発生される動的摩擦係数を増大する方法に関する。より具体的には、本発明はホウ化清浄剤を含む潤滑剤で潤滑されたシリカをベースとする粒子の表面被覆物を有する湿式摩擦クラッチに関するものであり、これらの組み合わせはこのような湿式クラッチが、特定の清浄剤を用いないで配合された匹敵する潤滑剤で潤滑される場合よりも有意に高い動的摩擦レベルを発生する。
【背景技術】
【0002】
より燃費の良い自動車への絶え間ない探求が、オートマチックトランスミッション製造者を、エネルギー効率をより一層高めたトランスミッションを製造するよう推し進めている。ステップ付きオートマチックトランスミッション、自動化マニュアルトランスミッション、連続可変トランスミッション及び二重クラッチトランスミッションを含む幾つかの型のオートマチックトランスミッションがある。オートマチックトランスミッションの夫々の型が自動車中に使用される場合にその他のものよりもいくつかの利点を与えるが、サイズ及び重量を減少させる能力はトランスミッションの型に関係なく利益を与える。紙複合材料、流体潤滑クラッチが使用されるオートマチックトランスミッション(例えば、ステップ付きオートマチックトランスミッション、連続可変トランスミッション及び二重クラッチトランスミッション)では、例えば、クラッチに使用されるプレートの数を減らすことによるサイズの減少が、全体のトランスミッションのサイズ及び重量を減少させる。クラッチ内の摩擦レベルを増大することはクラッチ内で伝達されるトルクのレベルを増大し、それによって、同じ量のトルクを伝達するのにそれ程表面積を必要としないという望ましい効果を有する。それ故、例えば、5枚の繊維複合材料プレートを有する湿式クラッチでは、液体及び摩擦ライニングにより与えられる動的摩擦の20%の増大が1枚の紙プレート及び1枚の鋼プレートの除去を可能にし、それによりクラッチの重量及びサイズを、これに相当する20%減少させる。
今回、本件出願人はホウ化清浄剤を含む、潤滑液、特に潤滑動力伝達液、更に特別にはオートマチックトランスミッション液が、シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有する複合材料摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチと連係して使用される場合に、それらが使用されるトランスミッションが一層小さくされることを可能にする動的摩擦の増大されたレベルを送出する湿式摩擦クラッチ−潤滑剤系を生じ、トランスミッションのサイズ及び重量を減少させ、車両全体の燃料効率の改良をもたらすことを発見した。
Schwindらの米国特許第4,792,410号はマニュアルトランスミッション用の潤滑剤中の、摩擦改質剤とホウ化金属清浄剤(この場合、その金属イオンがアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)の組み合わせの使用を開示しており、過塩基化(overbased)ホウ化ナトリウム清浄剤の使用を例示している。その特許請求された潤滑剤を使用するはマニュアルトランスミッションシフティング中の減少された二重もどり止め及びクラッシング(これは金属接触時の金属に関係する)を与えるためである。マニュアルトランスミッションは湿式摩擦クラッチを含まない。Schwindらの特許は清浄剤の金属イオンの選択が性能に効果を有することを示唆しておらず、またオートマチックトランスミッション中又は湿式摩擦クラッチを含むその他の装置と連係しての本明細書に開示された組成物の使用を説明又は意図していない。
Wardの米国特許第6,451,745号は連続可変トランスミッション中の使用のための潤滑剤を開示しており、その潤滑剤はホウ化分散剤及びホウ化清浄剤を含み、その潤滑剤は少なくとも250ppmのホウ素含量を有する。Wardの特許はシリカをベースとする粒子の表面被覆物を有する複合材料摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチを記載しておらず、またホウ化清浄剤の選択が特に発生される摩擦のレベルにおいて、紙をベースとするクラッチ性能に影響することを示唆していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第一の局面において、本発明はシリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチ、又はこのようなクラッチを含む装置が、過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a) 無灰分散剤、(b) 有機リン化合物及び(c) ホウ化清浄剤を含む潤滑剤組成物で潤滑される、湿式摩擦クラッチ−潤滑剤系に関する。シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチを含む装置がオートマチックトランスミッション、特に車両用オートマチックトランスミッションであることが好ましい。
第二の局面において、本発明はシリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチ、又はこのようなクラッチを含む装置を潤滑する方法であって、前記クラッチ又は装置を、過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a) 無灰分散剤、(b) 有機リン化合物及び(c) ホウ化清浄剤を含む潤滑剤組成物で潤滑する工程を含む前記方法に関する。第一の局面のように、シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチを含む装置がオートマチックトランスミッション、特に車両用オートマチックトランスミッションであることが好ましい。
第三の局面において、本発明は過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a) 一種以上の無灰分散剤、(b) 一種以上の有機リン化合物及び(c) 一種以上のホウ化清浄剤を含む動力伝達液に関するものであり、前記液が5.0mg KOH/g未満の全アルカリ価、即ち、TBN(ASTM D2896に従って測定して)、200ppm未満のホウ素含量、及び500ppm未満のリン含量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】車両用オートマチックトランスミッション中で使用されるような、湿式摩擦クラッチの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
車両のオートマチックトランスミッション中に配置されるような、湿式摩擦クラッチが、図1に示され、複数のクラッチプレートを有することができ、夫々がセルロースをベースとする摩擦ライニング1A〜1E(また、複合材料摩擦ディスクと称される)と、これらに付随し、通常は鋼で形成されているリアクションプレート2A〜2Dとを含み、摩擦ライニングとリアクションプレートはハウジング3内で作動ピストン4とリリーススプリング5の間にパックされている。このような組立体は更にその他の構成部分、例えば、波形プレート7(これはクラッチ適用をクッションするように作用する)、スペーサープレート9(必要に応じて)、及び保持リング6及び8を含んでもよい。摩擦ライニング1Aに関して、作動ピストン4は更に相当するリアクションプレートとして機能する。湿式摩擦クラッチは潤滑動力伝達液を使用して液体圧力の選択的適用により運転される。
紙複合材料液体潤滑(湿式)クラッチ中で高レベルの摩擦を与える能力は潤滑剤の高度に望ましい性質である。通常の潤滑剤により与えられる動的摩擦レベルに対する動的摩擦レベルの増大は、シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングとともに本発明のホウ化清浄剤を含む特定の配合物の使用により達成することができる。必要な成分について以下に更に詳しく説明する。
本発明の実施に有益な潤滑油は天然潤滑油、合成潤滑油及びこれらの混合物である。好適な潤滑油として、合成ワックス及びスラックワックスの異性化により得られる原料油だけでなく、原油の芳香族成分及び極性成分をハイドロクラッキングすることにより(溶剤処理によるのではなく)製造された原料油がまた挙げられる。一般に、好適な潤滑油は100℃で約1〜約40mm2/s(cSt)の範囲の動粘度を有するであろう。典型的な適用は潤滑油原料油又は原料油混合物が100℃で好ましくは約1〜約40mm2/s(cSt)、更に好ましくは、約2〜約8mm2/s(cSt)、最も好ましくは、約2〜約6mm2/s(cSt)の範囲の粘度を有することを必要とするであろう。
天然潤滑油として、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、石油、鉱油、及び石炭又はシェールから誘導された油が挙げられる。好ましい天然潤滑油は鉱油である。
本発明の実施に有益な鉱油として、全ての一般の鉱油原料油が挙げられる。これは化学構造においてナフテン系又はパラフィン系である油だけでなく、酸、アルカリ、及びクレー又はその他の薬剤、例えば、塩化アルミニウムを使用する通常の方法により精製される油だけでなく、例えば、溶剤、例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、ジクロロジエチルエーテル等による溶剤抽出又は処理により製造された抽出油を含む。それらは水素処理もしくは水素精製されてもよく、冷却方法もしくは接触脱蝋方法により脱蝋されてもよく、又はハイドロクラッキングされてもよい。鉱油は粗天然源から製造されてもよく、又は異性化ワックス物質又はその他の精製方法の残渣を含んでもよい。
【0006】
鉱油の特に有益なクラスは、苛酷に水素処理又はハイドロクラッキングされる鉱油を含む。これらの方法は鉱油を高温で水素化触媒の存在下で非常に高い水素圧力に暴露する。典型的な加工条件は水素化型触媒上の300℃から450℃までの範囲の温度で約211kg/cm2(3000ポンド/平方インチ(psi))の水素圧力を含む。この加工は硫黄及び窒素を潤滑油から除去し、供給原料中のアルキレン又は芳香族構造を飽和する。その結果は極めて良好な酸化耐性及び粘度指数を有するベースオイルである。これらの方法の二次的な利益は供給原料の低分子量成分、例えば、ワックスが線状構造から分岐構造に異性化され、それによりかなり改良された低温特性を有する完成ベースオイルを提供できることである。これらの水素処理ベースオイルはその後に更に触媒により、又はそれらに格別の低温流動性を与える通常の手段により脱蝋されてもよい。上記方法の一つ以上によりつくられた潤滑ベースオイルの商業上の例はシェブロンRLOP、ペトロ-カナダP65、ペトロ-カナダP100、Yukong社のYubase4、インペリアル・オイル・カナダMXT、及びシェルXHVI5.2である。これらの物質がAPI グループIII 鉱油と普通称される。
典型的には、このような鉱油は100℃で約2.0mm2/s(cSt)から約10.00mm2/s(cSt)までの動粘度を有するであろう。好ましい鉱油は約2〜約6mm2/s(cSt)の動粘度を有し、100℃で約3〜約5mm2/s(cSt)の動粘度を有するこれらの鉱油が最も好ましい。
【0007】
本発明の実施に有益な合成潤滑油として、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、オリゴマー化オレフィン、重合オレフィン、及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリラクテン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)等、及びこれらの混合物);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン等);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等);並びにアルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィドだけでなく、これらの誘導体、類縁体及び同族体等が挙げられる。合成油のこのクラスからの好ましい油はα-オレフィンのオリゴマー、特に1-デセンのオリゴマーである。これらの物質が普通ポリ-α-オレフィンと称される。
合成潤滑油として、アルキレンオキサイドポリマー、共重合体、コポリマー、及びこれらの誘導体(この場合、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により変性されていた)がまた挙げられる。このクラスの合成油はエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの重合により調製されたポリオキシアルキレンポリマー、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテル及びアリールエーテル(例えば、1000の平均分子量を有するメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテル、1000〜1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジフェニルエーテル)、並びにこれらのモノ-及びポリカルボン酸エステル(例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル、及びCi2オキソ酸ジエステル)により例示される。
合成潤滑油の別の好適なクラスはジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)のエステルを含む。これらのエステルの特別な例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより生成された複雑なエステル等が挙げられる。合成油の好ましい型はC4-Ci2アルコールのアジペートを含む。
【0008】
合成潤滑油として有益なエステルとして、C5-Ci2モノカルボン酸及びポリオール並びにポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等からつくられたものがまた挙げられる。
シリコンをベースとするオイル(例えば、ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシ-シロキサンオイル及びシリケートオイル)が合成潤滑油の別の有益なクラスを構成する。これらのオイルとして、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサン等が挙げられる。その他の合成潤滑油として、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びデシルホスホン酸のジエチルエステル)、ポリマーのテトラヒドロフラン、ポリ-α-オレフィン等が挙げられる。
潤滑油は精製油、再精製油、又はこれらの混合物から誘導されてもよい。未精製油は更に精製又は処理しないで天然源又は合成源(例えば、石炭、シェール、又はタールサンドビチュメン)から直接得られる。未精製油の例として、レトルト操作から直接得られたシェール油、蒸留から直接得られた石油、又はエステル化方法から直接得られたエステル油が挙げられ、これらの夫々が更に処理しないでその後に使用される。精製油は精製油が一つ以上の性質を改良するために一つ以上の精製工程で処理された以外は未精製油と同様である。好適な精製技術として、蒸留、水素処理、脱蝋、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、濾過、及びパーコレーションが挙げられ、これらの全てが当業者に知られている。再精製油は使用された油を精製油を得るのに使用される方法と同様の方法で処理することにより得られる。これらの再精製油はまた再生油又は再加工油として知られており、使用済み添加剤及び油分解生成物を除去するための技術によりしばしば更に加工される。
典型的には、本発明に使用される潤滑油は天然潤滑油であろう。合成潤滑油原料油が使用される場合、それはポリ-α-オレフィン、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、又はこれらの混合物であることが好ましい。好ましい合成潤滑油はポリ-α-オレフィンである。
【0009】
本発明の実施に有益な無灰分散剤として、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル、並びにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が挙げられる。また、ポリアミンとヒドロカルビル置換フェニル酸の縮合生成物が有益である。これらの分散剤の混合物がまた使用し得る。
塩基性窒素含有無灰分散剤は広く知られた潤滑油添加剤であり、それらの調製方法が特許文献に広範に記載されている。例えば、ヒドロカルビル置換スクシンイミド及びスクシンアミド並びにそれらの調製方法が、例えば、米国特許第3,018,247号、同第3,018,250号、同第3,018,291号、同第3,361,673号及び同第4,234,435号に記載されている。ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル−アミドが、例えば、米国特許第3,576,743号、同第4,234,435号及び同第4,873,009号に記載されている。マンニッヒ分散剤(これらはヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンの縮合生成物である)が、例えば、米国特許第3,368,972号、同第3,413,347号、同第3,539,633号、同第3,697,574号、同第3,725,277号、同第3,725,480号、同第3,726,882号、同第3,798,247号、同第3,803,039号、同第3,985,802号、同第4,231,759号及び同第4,142,980号に記載されている。アミン分散剤及び高分子量脂肪族又は脂環式ハライドとアミンからのそれらの製造方法が、例えば、米国特許第3,275,554号、同第3,438,757号、同第3,454,55 号及び同第3,565,804号に記載されている。
【0010】
好ましい分散剤はアルケニルスクシンイミド及びスクシンアミドである。そのスクシンイミド又はスクシンアミド分散剤は塩基性窒素そして更に1個以上のヒドロキシ基を含むアミンから生成し得る。通常、アミンはポリアミン、例えば、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンである。ポリアルキレンポリアミンの例として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンが挙げられる。分子当り平均約5〜7個の窒素原子を有する低コストポリ(エチレンアミン)(PAM)が“ポリアミンH”、“ポリアミン400”、“ダウ・ポリアミンE-100”等の商品名で市販されている。ヒドロキシ置換アミンとして、N-ヒドロキシアルキル-アルキレンポリアミン、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、及び米国特許第4,873,009号に記載された型のN-ヒドロキシアルキル化アルキレンジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリアミンとして、典型的には200〜2500の範囲の平均分子量を有するポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンジアミン及びトリアミンが挙げられる。この型の製品はジェファミンのトレードマークのもとで入手し得る。
無灰分散剤を生成するために、アミンが5〜95質量%のヒドロカルビル置換ジカルボン酸物質を含む油溶液を、所望の量の水が除去されるまで、一般に1〜10時間(例えば、2〜6時間)にわたって約100℃〜250℃、好ましくは125℃〜175℃で加熱することにより選ばれたヒドロカルビル置換ジカルボン酸物質、例えば、アルキレン無水コハク酸と容易に反応させられる。その加熱はアミド及び塩よりもむしろ、イミド又はイミドとアミドの混合物の生成に有利になるように行なわれることが好ましい。ヒドロカルビル置換ジカルボン酸物質対アミンだけでなく、本明細書に記載されたその他の求核性反応体の当量の反応比は、反応体及び生成される結合の型に応じて、大きく変動し得る。一般に0.1当量から1.0当量まで、好ましくは約0.2当量から0.6当量まで(例えば、0.4〜0.6当量)のジカルボン酸単位含量(例えば、置換無水コハク酸含量)が求核性反応体、例えば、アミンの反応当量当り使用される。例えば、0.8モルのペンタミン(分子当り2個の一級アミノ基及び5反応当量の窒素を有する)がポリオレフィンと1.6の官能価を有する無水マレイン酸の反応から誘導された組成物をアミドとイミドの混合物に変換するのに好ましく使用され、即ち、ペンタミンがそのアミンの反応性窒素当量当り約0.4当量(即ち、1.6割る(0.8x5)当量)の無水コハク酸単位を与えるのに充分な量で使用されることが好ましい。
ホウ化剤で処理されたアルケニルスクシンイミドの使用がまた本発明の組成物中の使用に適している。何とならば、それらがフルオロエラストマー及びシリコン含有エラストマーの如き物質からつくられた弾性シールと極めて適合性であるからである。分散剤はまた当業者に知られている多くの試薬で後処理されてもよい(例えば、米国特許第3,254,025号、同第3,502,677号及び同第4,857,214号を参照のこと)。
【0011】
好ましい無灰分散剤はポリイソブテニル無水コハク酸及びアルキレンポリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンから生成されたポリイソブテニルスクシンイミドであり、そのポリイソブテニル置換基は300〜2500(好ましくは400〜2200)の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテンから誘導される。或る種の分散剤を広範囲のアルケニルスクシンイミド内で選ぶことは改良された摩擦特性を有する液体を生じることがわかった。本発明の最も好ましい分散剤はポリイソブテン置換基が約950の原子質量単位の分子量を有するものであり、その塩基性窒素含有部分はポリアミン(PAM)であり、その分散剤がホウ化剤で後処理された。
本発明の無灰分散剤はあらゆる有効量で使用し得る。しかしながら、それらは典型的には完成潤滑剤中で約0.1質量%から約10.0質量%まで、好ましくは約0.5質量%から約7.0質量%まで、最も好ましくは約2.0質量%から約5.0質量%までで使用される。
【0012】
本発明の実施に有益な油溶性リン含有化合物は広く変動してもよく、化学的タイプにより制限されない。唯一の制限はその物質がその作用の部位への潤滑油系内のリン含有化合物の分散及び輸送を可能にするように油溶性であることである。好適なリン化合物の例はホスファイト及びチオホスファイト(モノ-アルキル、ジ-アルキル、トリ-アルキル及びこれらの部分加水分解類縁体);ホスフェート及びチオホスフェート;無機リン、例えば、亜リン酸、リン酸又はそれらのチオ類縁体で処理されたアミン;亜鉛ジチオジホスフェート;アミンホスフェートである。特に好適なリン化合物の例として、モノ-n-ブチル-水素-酸-ホスファイト;ジ-n-ブチル-水素ホスファイト;トリフェニルホスファイト;トリフェニルチオホスファイト;トリ-n-ブチルホスフェート;トリラウリルトリチオホスファイト;ジメチルオクタデセニルホスホネート;H3PO3及びH3BO3で後処理された低分子量(例えば、900MW以下のポリイソブテニル)ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)ポリアミン分散剤(例えば、米国特許第4,857,214号を参照のこと);及び亜鉛(ジ-2-エチルヘキシルジチオホスフェート)が挙げられる。
好ましい油溶性リン化合物はリン酸及び亜リン酸のエステルである。これらの物質として、ジ-アルキル、トリ-アルキル及びトリ-アリールホスファイト及びホスフェートが挙げられる。好ましい油溶性リン化合物は、例えば、米国特許第5,314,633号に記載されたように生成された、混合チオアルキルホスファイトエステルである。最も好ましいリン化合物はチオアルキルホスファイト、例えば、下記の例B1により示されるものである。
本発明のリン化合物はあらゆる有効量で油中に使用し得る。しかしながら、このような化合物の典型的な有効濃度は約5ppmから約5000ppmまでのリンを油に送出する濃度であろう。好ましい濃度範囲は完成油中の約10ppmから約1000ppmまでのリンであり、最も好ましい濃度範囲は約50ppmから約500ppmまでである。
【0013】
例B1
アルキルホスファイト混合物を還流冷却器、撹拌機及び窒素バブラーを備えた丸底の4口フラスコにジブチル水素ホスファイト194g(1.0モル)を入れることにより調製した。そのフラスコを窒素でフラッシし、シールし、撹拌機を始動させた。ジブチル水素ホスファイトを真空(-90kPa)下で150℃に加熱し、ヒドロキシルエチル-n-オクチルスルフィド190g(1モル)を約1時間にわたって滴下ロートにより添加した。その添加中に、ブタノール約35mlを冷却トラップ中に回収した。ヒドロキシルエチル-n-オクチルスルフィドの添加を完結した後、加熱を約1時間続けた。追加のブタノールが発生しなかった。その反応混合物を冷却し、リン及び硫黄について分析した。最終生成物は115mg KOH/gの全アルカリ価即ちTAN(ASTM D664に従って測定して)を有し、8.4質量%のリン及び9.1質量%の硫黄を含んでいた。
本発明の第三の必要とされる成分はホウ化清浄剤である。本発明の組成物の金属含有清浄剤は一種以上の下記の酸性物質(又はこれらの混合物):(1) スルホン酸、(2) カルボン酸、(3) サリチル酸、(4) アルキルフェノール、(5) 硫化アルキルフェノールとのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の油溶性の中性又は過塩基化塩により例示される。本発明に有益な好ましい塩はカルシウム又はマグネシウムの過塩基化塩である。
油溶性の中性金属含有清浄剤は清浄剤中に存在する酸性部分の量に関して化学量論上当量の量の金属を含む清浄剤である。こうして、一般に中性清浄剤はそれらの過塩基化相当物と較べた場合に低い塩基度を有するであろう。このような清浄剤を生成する際に利用される酸性物質として、カルボン酸、サリチル酸、アルキルフェノール、スルホン酸、硫化アルキルフェノール等が挙げられる。
金属清浄剤に関する“過塩基化”という用語は金属が有機基よりも化学量論上多い量で存在する金属塩を示すのに使用される。過塩基化塩を調製するのに普通に使用される方法は酸の鉱油溶液を化学量論上過剰の金属中和剤、例えば、金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、又は硫化物とともに約50℃の温度で加熱し、得られる生成物を濾過することを伴なう。大過剰の金属のとり込みを助けるための中和工程中の“促進剤”の使用が同様に知られている。促進剤として有益な化合物の例として、フェノール系物質、例えば、フェノール、ナフトール、アルキルフェノール、チオフェノール、硫化アルキルフェノール、及びホルムアルデヒドとフェノール系物質の縮合生成物;アルコール、例えば、メタノール、2-プロパノール、オクタノール、セロソルブアルコール、カルビトールアルコール、エチレングリコール、ステアリルアルコール、及びシクロヘキシルアルコール;並びにアミン、例えば、アニリン、フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェニルα-ナフチルアミン、及びドデシルアミンが挙げられる。塩基性塩を調製するのに特に有効な方法は酸を過剰の塩基性アルカリ土類金属中和剤及び少なくとも一種のアルコール促進剤と混合し、その混合物を高温、例えば、60℃〜200℃で炭酸化することを含む。
【0014】
好適な金属含有清浄剤の例として、カルシウムフェネート、マグネシウムフェネート、硫化カルシウムフェネート、及び硫化マグネシウムフェネート(夫々の芳香族基が炭化水素溶解性を付与するために1個以上の脂肪族基を有する);スルホン酸カルシウム、及びスルホン酸マグネシウム(夫々のスルホン酸部分が芳香族核(これは順に炭化水素溶解性を付与するために1個以上の脂肪族置換基を通常含む)に結合されている);及びサリチル酸カルシウム及びサリチル酸マグネシウム(その芳香族部分が通常炭化水素溶解性を付与するために1個以上の脂肪族置換基により置換されている);脂肪族カルボン酸及び脂肪族置換脂環式カルボン酸のカルシウム塩及びマグネシウム塩;並びに多くのその他の同様の油溶性有機酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の如き物質の中性塩及び過塩基化塩が挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の異なるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の中性塩又は過塩基化塩の混合物が使用し得る。同様に、2種以上の異なる酸の混合物の中性塩及び/又は過塩基化塩(例えば、一種以上の過塩基化カルシウムフェネートと一種以上の過塩基化スルホン酸カルシウム)がまた使用し得る。
広く知られているように、過塩基化金属清浄剤は一般に、おそらくミクロ分散液又はコロイド懸濁液の形態の、過塩基化量の無機塩基を含むものと見なされている。こうして、金属清浄剤に適用される“油溶性”という用語はその用語の厳密な意味で必ずしも完全に、又は真に油溶性ではない金属清浄剤(無機塩基が存在する)を含むことが意図されている。何とならば、このような清浄剤はベースオイルに混合される場合にあたかもそれらが油に充分に、また完全に溶解されたのと極めて同じように挙動するからである。
総合すると、本明細書に先に言及された種々の金属清浄剤は、時折、中性、塩基性又は過塩基化アルカリ金属又はアルカリ土類金属含有有機酸塩と単に称された。
油溶性の中性金属清浄剤及び過塩基化清浄剤並びにアルカリ土類金属含有清浄剤の製造方法は当業者に広く知られており、特許文献(例えば、米国特許第2,001,108号、同第2,081,075号、同第2,095,538号、同第2,144,078号、同第2,163,622号、同第2,270,183号、同第2,292,205号、同第2,335,017号、同第2,399,877号、同第2,416,281号、同第2,451,345号、同第2,451,346号、同第2,485,861号、同第2,501,731号、同第2,501,732号、同第2,585,520号、同第2,671,758号、同第2,616,904号、同第2,616,905号、同第2,616,906号、同第2,616,911号、同第2,616,924号、同第2,616,925号、同第2,617,049号、同第2,695,910号、同第3,178,368号、同第3,367,867号、同第3,496,105号、同第3,629,109号、同第3,865,737号、同第3,907,691号、同第4,100,085号、同第4,129,589号、同第4,137,184号、同第4,184,740号、同第4,212,752号、同第4,617,135号、同第4,647,387号、及び同第4,880,550号を参照のこと)に広範に報告されている。
【0015】
上記金属清浄剤は当業者に知られている方法によりホウ化し得る。ホウ化は過塩基化工程の前、又は後に達成し得る。ホウ化は幾つかのホウ化剤により達成でき、ホウ化に有益な物質として、ホウ酸、メタホウ酸、オルトホウ酸、アルキルボレート、ハロゲン化ホウ素、ホウ素のポリマー、ホウ素のエステル及び同様の物質が挙げられるであろう。ホウ素化金属の調製方法が、例えば、米国特許第3,480,548号、同第3,679,584号、同第3,829,381号、同第3,909,691号、同第4,965,003号、及び同第4,965,004号に記載されている。本発明に有益な生成物のホウ素含量は典型的には3質量%より大きく、好ましくは4質量%より大きく、最も好ましくは5質量%より大きい。
本発明による使用に好ましい金属清浄剤はホウ化過塩基化スルホン酸マグネシウムである。
使用される金属清浄剤の量は広く変動することができ、本発明の実施に重要ではない。この量はその組成物により与えられる動的摩擦を増大するのに有効な量であることのみを必要とする。しかしながら、典型的には、この量は完成液体中で0.01質量%から10.0質量%まで、好ましくは0.05質量%から7.0質量%まで、最も好ましくは0.1質量%から0.5質量%までの範囲であろう。金属清浄剤は潤滑剤組成物に少なくとも25ppm、例えば、少なくとも50ppm、好ましくは少なくとも100ppm、例えば、少なくとも150ppmのホウ素を与える量で使用されることが好ましいであろう。
【0016】
例C1
ホウ化スルホン酸マグネシウムをディーン・スタークトラップを備えた5リットルの丸底フラスコ中のトルエン1600gm中のオルトホウ酸(600gm、9.7モル)の撹拌還流混合物へのトルエン250gm中の市販のスルホン酸マグネシウム(インフィネウムC9340)750gmの溶液の滴下添加により調製した。発泡を制御するために、その添加を約1時間にわたって行なった。添加が完結した後、水95cc(約5.25モル)を集めた。トルエン250gm中で希釈されたスルホン酸マグネシウム750gmの更なる仕込(上記のような)をその還流混合物に徐々に添加した。還流を6時間続け、その時点で水合計193gm(10.7モル)を集めた。その反応混合物を冷却し、遠心分離して懸濁固体を除去した。次いでそれをきれいなフラスコに移し、トルエンを真空下で蒸留して除いてホウ化スルホン酸マグネシウム1840gmを得た。分析:Mg:7.36%;B:5.79%;S:1.38%; TBN(ASTM D2896):337;TAN(ASTM D664):147 mg KOH/g。
例C2
ホウ化スルホン酸カルシウムをディーン・スタークトラップを備えた5リットルの丸底フラスコ中のトルエン2000gm中のオルトホウ酸(500gm、8.1モル)の撹拌還流混合物へのトルエン500gm中の市販のスルホン酸カルシウム(インフィネウムC9330)1500gmの溶液の滴下添加により調製した。発泡を制御するために、その添加を数時間にわたって行なった。水発生が停止するまで、その還流を続け、その時点で水合計210gm(11.7モル)を集めた。その反応混合物を冷却し、遠心分離して懸濁固体を除去した。次いでそれをきれいなフラスコに移し、トルエンを真空下で蒸留して除いてホウ化スルホン酸マグネシウム1772gmを得た。分析:Ca:9.22%;B:5.86%;S:1.41%; TBN(ASTM D2896):243;TAN(ASTM D664):80 mg KOH/gm;炭酸塩(CO2として):5.7%。
本発明の実施に有益な潤滑剤は更に摩擦改質剤を含んでもよく、一つの好ましい実施態様において、これを含む。摩擦改質剤は当業者に広く知られており、好適な摩擦改質剤の有益なリストが米国特許第4,792,410号、同第5,750,476号、同第5,840,662号及び同第5,942,472号に含まれる。有益な摩擦改質剤として、脂肪ホスファイト;脂肪酸アミド;脂肪エポキシド;ホウ化脂肪エポキシド;脂肪アミン;グリセロールエステル;ホウ化グリセロールエステル;アルコキシル化脂肪アミン;ホウ化アルコキシル化脂肪アミン;脂肪酸の金属塩;硫化オレフィン;脂肪イミダゾリン;カルボン酸及び/又は酸無水物とポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物;アルキルサリチル酸の金属塩;アルキルリン酸のアミン塩;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
上記型の摩擦改質剤の夫々の代表的な物質が知られており、市販されている。例えば、脂肪ホスファイトは一般に式(RO)2PHOのものである。先の式で示されるような、好ましいジアルキルホスファイトは、典型的には少量の式(RO)(HO)PHOのモノアルキルホスファイトとともに存在する。これらの構造において、“R”という用語はアルキル基を都合良く表す。勿論、そのアルキルは実際にアルケニルであることが可能であり、こうして、本明細書に使用される“アルキル”及び“アルキル化”という用語は、ホスファイト内に飽和アルキル基以外を含むであろう。ホスファイトはホスファイトを実質的に親油性にするのに充分なヒドロカルビル基を有するべきである。ヒドロカルビル基は実質的に非分岐であることが好ましい。多くの好適なホスファイトが市販されており、米国特許第4,752,416号に記載されたように合成されてもよい。ホスファイトはR基の夫々中に8〜24個の炭素原子を含むことが好ましい。好ましくは、脂肪ホスファイトが脂肪基の夫々中に12〜22個の炭素原子、最も好ましくは16〜20個の炭素原子を含む。一実施態様において、脂肪ホスファイトがオレイル基から生成され、こうして夫々の脂肪基中に18個の炭素原子を有する。
ホウ化脂肪エポキシドはカナダ特許第1,188,704号から知られている。これらの油溶性ホウ素含有組成物は約80℃から約250℃までの温度で、ホウ酸又は三酸化ホウ素の少なくとも一種を下記の式を有する少なくとも一種の脂肪エポキシドと反応させることにより調製される。
【0018】
【化1】

【0019】
式中、R1、R2、R3及びR4の夫々は水素又は脂肪族基であり、又はこれらのいずれか二つはそれらが結合されている1個以上のエポキシ炭素原子と一緒に環状基を形成する。脂肪エポキシドは少なくとも8個の炭素原子を含むことが好ましい。
ホウ化脂肪エポキシドは2種の物質の反応を伴なうそれらの調製方法により特徴づけられる。試薬Aは三酸化ホウ素又はメタホウ酸(HBO2)、オルトホウ酸(H3BO3)及びテトラホウ酸(H2B4O7)を含むホウ酸の種々の形態のいずれかであってもよい。ホウ酸、そして特にオルトホウ酸が、好ましい。試薬Bは上記式を有する少なくとも一種の脂肪エポキシドであってもよい。式中、R基の夫々が最もしばしば水素又は少なくとも6個の炭素原子を含むヒドロカルビル基もしくは脂肪族基である少なくとも一つを有する脂肪族基である。試薬A対試薬Bのモル比は一般に1:0.25〜1:4である。1:1〜1:3の比が好ましく、約1:2が特に好ましい比である。ホウ化脂肪エポキシドは2種の試薬を単にブレンドし、反応が起こるのに充分な時間の期間にわたってそれらを80℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃の温度で加熱することにより調製し得る。所望により、その反応が実質的に不活性の、通常液体の有機希釈剤の存在下で行なわれてもよい。その反応中に、水が発生され、蒸留により除去されてもよい。上記“試薬B”に相当する、非ホウ化脂肪エポキシドが、摩擦改質剤としてまた有益である。
ホウ化アミンは一般に米国特許第4,622,158号から知られている。ホウ化アミン摩擦改質剤(ホウ化アルコキシル化脂肪アミンを含む)は上記されたホウ素化合物と、相当するアミンの反応により都合良く調製される。アミンは単純な脂肪アミン又はヒドロキシ含有三級アミンであってもよい。
ホウ化アミンは上記されたホウ素反応体をアミン反応体に添加し、得られる混合物を撹拌しながら50℃〜300℃、好ましくは100℃〜250℃又は150℃〜230℃で加熱することにより調製し得る。その反応は副生物の水がその反応混合物から発生することを停止する(反応の完結を示す)まで続けられる。
【0020】
ホウ化アミンを調製するのに有益なアミンの中に、トレードマーク“ETHOMEEN”により知られ、アクゾ・ノーベルから入手し得る市販のアルコキシル化脂肪アミンがある。これらのETHOMEENTM物質の代表例はETHOMEENTM C/12(ビス(2-ヒドロキシエチル)ココアミン);ETHOMEENTM C/20(ポリオキシエチレン(1O)ココアミン);ETHOMEENTM S/12(ビス(2-ヒドロキシエチル)大豆アミン);ETHOMEENTM T/12(ビス(2-ヒドロキシエチル)牛脂アミン);ETHOMEENTM T/15(ポリオキシエチレン-(5)牛脂アミン);ETHOMEENTM 0/12(ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイル-アミン);ETHOMEENTM 18/12(ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン);及びETHOMEENTM 18/25(ポリオキシエチレン(15)オクタデシルアミン)である。脂肪アミン及びエトキシル化脂肪アミンがまた米国特許第4,741,848号に記載されている。
アルコキシル化脂肪アミン、及び脂肪アミンそれら自体(例えば、オレイルアミン)が一般に本発明における摩擦改質剤として有益である。このようなアミンは市販されている。脂肪ジアミン、例えば、ジ-ココアアミン及びジ-牛脂アミン並びに酸、酸無水物又はエポキシドとの反応により調製されたそれらの誘導体がまた有益である。米国公開特許出願第2006/0084583号及びWO 2007/044820に記載されたような反応生成物がまた有益である。
グリセロールのホウ化脂肪酸エステル及び未ホウ化脂肪酸エステルの両方が摩擦改質剤として使用し得る。グリセロールのホウ化脂肪酸エステルは反応の水を除去しつつグリセロールの脂肪酸エステルをホウ酸でホウ化することにより調製される。充分なホウ素が存在することが好ましく、その結果、夫々のホウ素原子がその反応混合物中に存在する15から2.5のヒドロキシル基と反応するであろう。その反応は好適な有機溶媒、例えば、メタノール、ベンゼン、キシレン、トルエン、又は油の不在下又は存在下で60℃〜135℃の範囲の温度で行なわれてもよい。
グリセロールの脂肪酸エステルそれら自体は当業界でよく知られた種々の方法により調製し得る。これらのエステルの多く、例えば、グリセロールモノオレエート及びグリセロールタロウエートが、商業規模で製造される。有益なエステルは油溶性であり、C8-C22脂肪酸又は天然産物に見られるようなこれらの混合物から調製されることが好ましく、以下に大いに詳しく記載される。グリセロールの脂肪酸モノエステルが好ましいが、モノエステル及びジエステルの混合物が使用されてもよい。例えば、市販のグリセロールモノオレエートは45質量%〜55質量%のモノエステルと55質量%〜45質量%のジエステルの混合物を含んでもよい。
【0021】
脂肪酸が上記グリセロールエステルを調製するのに使用でき、それらがまたそれらの金属塩、アミド及びイミダゾリンを調製するのにまた使用でき、これらのいずれもがまた摩擦改質剤として使用し得る。好ましい脂肪酸は6〜24個、好ましくは8〜18個の炭素原子を含むものである。酸は分岐又は直鎖、飽和又は不飽和であってもよい。好適な酸として、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトール酸、リノール酸、ラウリン酸、及びリノレン酸、並びに天然産物牛脂、パーム油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、及びニーツフットオイルからの酸が挙げられる。特に好ましい酸はオレイン酸である。好ましい金属塩として、亜鉛塩及びカルシウム塩が挙げられる。例は過塩基化カルシウム塩及び一般式Zri4オレエート30iにより表し得る塩基性オレイン酸-亜鉛塩錯塩である。好ましいアミドはアンモニア又は一級もしくは二級アミン、例えば、ジエチルアミン及びジエタノールアミンとの縮合により調製されたものである。脂肪イミダゾリンは酸とジアミン又はポリアミン、例えば、ポリエチレンポリアミンの環状縮合生成物である。イミダゾリンは一般に下記の構造により表される。
【0022】
【化2】

【0023】
式中、Rはアルキル基であり、かつR’は水素もしくはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基(-(CH2CH2NH)n-基を含む)である。好ましい実施態様において、摩擦改質剤がC8-C24脂肪酸とポリアルキレンポリアミンの縮合生成物、特に、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンの生成物である。カルボン酸とポリアルキレンアミンの縮合生成物は一般にイミダゾリン又はアミドであってもよい。
摩擦改質剤の別の好適なクラスはアルキル置換無水コハク酸とポリアミンの反応により生成されたものである。例えば、好適な物質として、3-オクタデニル無水コハク酸とジ-エチレントリアミン又はテトラエチレンペンタミンの縮合生成物が挙げられる。これらの物質の調製が米国特許第5,840,663号に記載されている。
硫化オレフィンが摩擦改質剤として使用される広く知られた市販物質である。特に好ましい硫化オレフィンは米国特許第4,957,651号及び同第4,959,168号の詳細な教示に従って調製されるものである。(1)多価アルコールの少なくとも一種の脂肪酸エステル、(2)少なくとも一種の脂肪酸、(3)少なくとも一種のオレフィン、及び(4)1価アルコールの少なくとも一種の脂肪酸エステルからなる群から選ばれた2種以上の反応体の同時硫化混合物がそこに記載されている。反応体(3)、オレフィン成分は、少なくとも一種の60オレフィンを含む。このオレフィンは脂肪族オレフィンであることが好ましく、これは通常4〜40個の炭素原子、好ましくは8〜36個の炭素原子を含むであろう。末端オレフィン、又はアルファ-オレフィン、特に12〜20個の炭素原子を有するものが、好ましい。これらのオレフィンの混合物が市販されており、このような混合物が本発明における使用につき意図されている。
2種以上の反応体の同時硫化混合物は、適当な反応体の混合物を硫黄の源と反応させることにより調製される。硫化される混合物は10〜90重量部の反応体(1)、もしくは0.1〜15重量部の反応体(2)、又は10〜90重量部、しばしば15〜60重量部、更にしばしば25〜35重量部の反応体(3)、或いは10〜90重量部の反応体(4)を含み得る。本発明における、混合物は、反応体(3)と反応体(1)、(2)及び(4)として同定された反応体の群の少なくとも一種のその他の員とを含む。硫化反応は一般に撹拌しながら、そして必要により不活性雰囲気中で、また不活性溶媒の存在下で高温で行なわれる。本発明の方法に有益な硫化剤として、元素状硫黄(これが好ましい)、硫化水素、ハロゲン化硫黄、硫化ナトリウム及び硫化水素と硫黄又は二酸化硫黄の混合物が挙げられる。典型的には、0.5〜3モルの硫黄がオレフィン結合1モル当りしばしば使用される。
【0024】
アルキルサリチレートの金属塩として、長鎖(例えば、Ci2-Ci6)アルキル置換サリチル酸のカルシウム塩及びその他の塩が挙げられる。
アルキルリン酸のアミン塩として、リン酸のオレイルエステル及びその他の長鎖エステルと、以下に記載されるアミンの塩が挙げられ、これに関するアミンの一つの有益な型はターシャリー-脂肪族一級アミン(プリメンTM)である。
摩擦改質剤の量は一般に潤滑組成物の0.05質量%から8.0質量%まで、好ましくは0.1質量%から7.0質量%まで、又は0.25質量%から5.0質量%までである。
上記物質の幾つかは配合された潤滑剤中で相互作用し得ることが知られており、その結果、最終潤滑剤の成分が初期に添加されるものとは異なってもよい。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤の)がその他の分子の酸性部位に移動し得る。それにより生成された生成物(本発明の組成物をその意図される用途で使用した後に生成された生成物を含む)は、容易に記載し難いかもしれない。それでもなお、全てのこのような変性及び反応生成物が本発明の範囲内に含まれ、それ故、本発明は上記成分を混合することにより調製された組成物を含む。
種々のホウ素含有添加剤(ホウ化分散剤及びホウ素含有摩擦改質剤を含む)の使用が記載されるが、一つの好ましい実施態様において、本発明の潤滑剤組成物のホウ素含量が200ppm未満、例えば、150ppm未満に維持される。
湿式クラッチ用の摩擦ライニングが当業界で一般に知られており、幾つかの会社、ボルグ・ワーナー・オートモーティブ(アウバーン・ヒルズ、ミシガン);ダイナックス社(北海道、日本);及びNSK社(東京、日本)により製造される。本発明に含まれる特別な物質はシリカをベースとする粒子を含む摩擦クラッチライニングであり、更に好ましくはシリカをベースとする粒子の表面層を有するものである。このような粒子の例はセライト(登録商標)、セラトム(登録商標)、ケイソウ土及び/又は二酸化ケイ素である。これらの物質の調製及び使用が、例えば、米国特許第5,585,166号、同第6,121,168号及び同第6,875,711号に記載されており、これらの主題が参考として本明細書に含まれる。
【実施例】
【0025】
実施例1
試験液を金属清浄剤中に含まれるスルホン酸のモル数(4.2ミリモル/kg)に基づく等しい量をAPI グループIII 鉱油(SKコーポレーションから入手し得る、ユベース3)に溶解することにより調製する。次いで夫々の試験液を、温度の或る範囲にわたって異なる紙系摩擦ライニングを使用して、低速摩擦装置(LVFA)で摩擦対スライディング速度特性につき評価した。液体を適当な紙系摩擦ライニング及びそれに対し運転する鋼ディスクから構成された部分を取り付けられたLVFAの試験セルに添加した。その系を30分間で分解し、温度を150℃に上昇させ、1時間保持した。1時間のエージング後に、摩擦特性対温度を150℃、120℃及び80℃で測定した。下記の表1は、その三つの温度での1.0メートル/秒(m/s)スライディング速度における測定摩擦係数の値を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
(1) NSK ワーナー社から入手し得る
(2) ボルグ・ワーナー社から入手し得る
(3) ダイナックス社から入手し得る
(4) インフィネウム社から入手し得る、インフィネウムC9330
(5) 例C2の生成物
(6) インフィネウム社から入手し得る、インフィネウムC9340
(7) 例C1の生成物
摩擦材NW 561Eは比較例である。何とならば、それがシリカをベースとする粒子の表面層を含まないからである。清浄剤のホウ化バージョン及び単純(非ホウ化)バージョンにより生じた摩擦係数が同じであることが明らかである。BW 6500及びD831-70の両方がシリカ粒子表面層を含む。そのデータはホウ化スルホン酸カルシウムがこの材料について単純(非ホウ化)バージョンより高い摩擦を生じるが、それがD831-70材料につき高い摩擦を生じないことを示す。ホウ化スルホン酸マグネシウムのみが両方の材料につき高い摩擦レベルを示す。
ホウ化スルホン酸マグネシウムが試験条件の範囲にわたって非ホウ化バージョンの両方で得られた摩擦係数よりも9%から30%まで高い摩擦係数を生じたことがこのデータから見られる。
【0028】
実施例2
試験液を金属清浄剤中に含まれるスルホン酸のモル数(4.2ミリモル/kg)に基づく等しい量をAPI グループIII 鉱油(ユベース3)(これはまた1.5質量%の950 MW PIBSA と市販のポリアミン(PAM)からつくられた分散剤及び0.125質量%の亜リン酸水素ジブチル(250ppmのP)を含んでいた)に溶解することにより調製する。次いで夫々の試験液を、温度の或る範囲にわたって異なる紙系摩擦ライニングを使用して、低速摩擦装置(LVFA)で摩擦対スライディング速度特性につき評価した。液体を適当な紙系摩擦ライニング及びそれに対し運転する鋼ディスクから構成された部分を取り付けられたLVFAの試験セルに添加した。その系を30分間で分解し、温度を150℃に上昇させ、1時間保持した。1時間のエージング後に、摩擦特性対温度を150℃、120℃及び80℃で測定した。下記の表2は全ての三つの温度での1.0メートル/秒(m/s)スライディング速度における測定摩擦係数の値を示す。
【0029】
【表2】

【0030】
(1) NSK ワーナー社から入手し得る
(2) ボルグ・ワーナー社から入手し得る
(3) ダイナックス社から入手し得る
(4) インフィネウム社から入手し得る、インフィネウムC9330
(5) 例C2の生成物
(6) インフィネウム社から入手し得る、インフィネウムC9340
(7) 例C1の生成物
再度、配合された製品において、ホウ化スルホン酸マグネシウムがカルシウムバージョンよりも高い摩擦係数を両方の材料につき生じたこと、及び効果が対照材料、NW 561Eで見られなかったことが見られる。スルホン酸マグネシウムのホウ化バージョンによる摩擦係数は試験された材料及び条件の範囲にわたって非ホウ化バージョンで得られた摩擦係数より5%から12%まで高かった。
先に言及された書類の夫々が参考として本明細書に含まれる。実施例、又は明らかに記述された箇所を除いて、物質、反応条件、分子量、炭素原子の数等の量を明記するこの記載中の全ての数量は“約”という用語により修飾されると理解されるべきである。特に示されない限り、本明細書に言及される夫々の化学物質又は組成物は異性体、副生物、誘導体、及び商用グレード中に存在すると通常理解されるその他の物質を含んでもよい商用グレード物質であると解されるべきである。しかしながら、夫々の化学成分の量は、特に示されない限り、市販物質中に通例存在し得る溶媒又は希釈剤油を除いて表される。また、本明細書に示される量、範囲及び比の上限及び下限は異なる成分の範囲のように独立に組み合わされてもよいことが理解されるべきである。本明細書に使用される“実質的にからなる”という表現は考慮中の組成物の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない物質の混入を許す。
本発明の特別な特徴及び例は便宜のためのみに提示され、本発明の利益を示す本発明のその他の実施態様が配合されてもよい。これらの別の実施態様が明細書の教示から当業者により認められ、特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0031】
1A〜1E−セルロースをベースとする摩擦ライニング
2A〜2D−付随するリアクションプレート
3−ハウジング
4−作動ピストン
5−リリーススプリング
6、8−保持リング
7−波形プレート
9−スペーサープレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチ、又はこのようなクラッチを含む装置が、過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a) 無灰分散剤、(b) 有機リン化合物及び(c) ホウ化清浄剤を含む潤滑剤組成物で潤滑されることを特徴とする、湿式摩擦クラッチ−潤滑剤系。
【請求項2】
前記クラッチが装置中に含まれ、前記装置が車両用オートマチックトランスミッションである、請求項1記載の系。
【請求項3】
前記オートマチックトランスミッションが、ステップ付きオートマチックトランスミッション、自動化マニュアルトランスミッション、連続可変トランスミッション及び二重クラッチトランスミッションからなる群から選ばれた型のものである、請求項2記載の系。
【請求項4】
前記ホウ化清浄剤が、ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤であり、又はホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤を含む、請求項2記載の系。
【請求項5】
前記ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤が、過塩基化ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤であり、又は過塩基化ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤を含む、請求項4記載の系。
【請求項6】
前記有機リン化合物が、ホスファイト及びチオホスファイト(モノ-アルキル、ジ-アルキル、トリ-アルキル及びこれらの部分加水分解類縁体);ホスフェート及びチオホスフェート;無機リンで処理されたアミン;亜鉛ジチオジホスフェート;アミンホスフェート;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項2記載の系。
【請求項7】
前記有機リン化合物が、モノ-n-ブチル-水素-酸-ホスファイト;ジ-n-ブチル-水素ホスファイト;トリフェニルホスファイト;トリフェニルチオホスファイト;トリ-n-ブチルホスフェート;トリラウリルトリチオホスファイト;ジメチルオクタデセニルホスホネート;H3PO3及びH3BO3で後処理された低分子量ポリイソブテニル無水コハク酸ポリアミン分散剤;亜鉛(ジ-2-エチルヘキシルジチオホスフェート);及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項6記載の系。
【請求項8】
前記有機リン化合物がリン酸及び亜リン酸のエステルからなる群から選ばれる、請求項6記載の系。
【請求項9】
前記潤滑剤組成物が更に少量かつ有効量の補助摩擦改質剤を含む、請求項2記載の系。
【請求項10】
前記補助摩擦改質剤が、脂肪ホスファイト;脂肪酸アミド;脂肪エポキシド;ホウ化脂肪エポキシド;脂肪アミン;グリセロールエステル;ホウ化グリセロールエステル;アルコキシル化脂肪アミン;ホウ化アルコキシル化脂肪アミン;脂肪酸の金属塩;硫化オレフィン;脂肪イミダゾリン;カルボン酸及び/又は酸無水物とポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物;アルキルサリチル酸の金属塩;アルキルリン酸のアミン塩;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項9記載の系。
【請求項11】
シリカをベースとする粒子の表面被覆物を有するセルロースをベースとする摩擦ライニングを有する湿式摩擦クラッチ、又はこのようなクラッチを含む装置の潤滑方法であって、前記クラッチ又は装置を、過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a) 無灰分散剤、(b) 有機リン化合物及び(c) ホウ化清浄剤を含む潤滑剤組成物で潤滑する工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
前記クラッチが装置中に含まれ、前記装置が車両用オートマチックトランスミッションである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記オートマチックトランスミッションが、ステップ付きオートマチックトランスミッション、自動化マニュアルトランスミッション、連続可変トランスミッション及び二重クラッチトランスミッションからなる群から選ばれた型のものである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ホウ化清浄剤が、ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤であり、又はホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤が、ホウ化過塩基化スルホン酸マグネシウム清浄剤であり、又はホウ化過塩基化スルホン酸マグネシウム清浄剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記リン有機化合物が、ホスファイト及びチオホスファイト(モノ-アルキル、ジ-アルキル、トリ-アルキル及びこれらの部分加水分解類縁体);ホスフェート及びチオホスフェート;無機リンで処理されたアミン;亜鉛ジチオジホスフェート;アミンホスフェート;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記有機リン化合物が、モノ-n-ブチル-水素-酸-ホスファイト;ジ-n-ブチル-水素ホスファイト;トリフェニルホスファイト;トリフェニルチオホスファイト;トリ-n-ブチルホスフェート;トリラウリルトリチオホスファイト;ジメチルオクタデセニルホスホネート;H3PO3 及びH3BO3で後処理された低分子量ポリイソブテニル無水コハク酸ポリアミン;亜鉛(ジ-2-エチルヘキシルジチオホスフェート);及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記リン化合物がリン酸及び亜リン酸のエステルからなる群から選ばれる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記潤滑剤組成物が更に少量かつ有効量の補助摩擦改質剤を含む、請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記補助摩擦改質剤が、脂肪ホスファイト;脂肪酸アミド;脂肪エポキシド;ホウ化脂肪エポキシド;脂肪アミン;グリセロールエステル;ホウ化グリセロールエステル;アルコキシル化脂肪アミン;ホウ化アルコキシル化脂肪アミン;脂肪酸の金属塩;硫化オレフィン;脂肪イミダゾリン;カルボン酸及び/又は酸無水物とポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物;アルキルサリチル酸の金属塩;アルキルリン酸のアミン塩;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
過半量の潤滑粘度の油並びに少量かつ有効量の(a) 一種以上の無灰分散剤、(b) 一種以上の有機リン化合物及び(c) ホウ化清浄剤を含む動力トランスミッション液であって、前記液が5.0mg KOH/g未満のTBN(ASTM D-2896に従って測定して)、200ppm未満のホウ素含量、及び500ppm未満のリン含量を有することを特徴とする動力トランスミッション液。
【請求項22】
前記ホウ化清浄剤が、一種以上のホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤であり、又は一種以上のホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤を含む、請求項21記載の液。
【請求項23】
前記ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤が、過塩基化ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤であり、又は過塩基化ホウ化スルホン酸マグネシウム清浄剤を含む、請求項22記載の液。
【請求項24】
前記有機リン化合物が、ホスファイト及びチオホスファイト(モノ-アルキル、ジ-アルキル、トリ-アルキル及びこれらの部分加水分解類縁体);ホスフェート及びチオホスフェート;無機リンで処理されたアミン;亜鉛ジチオジホスフェート;アミンホスフェート;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項21記載の液。
【請求項25】
前記有機リン化合物が、モノ-n-ブチル-水素-酸-ホスファイト;ジ-n-ブチル-水素ホスファイト;トリフェニルホスファイト;トリフェニルチオホスファイト;トリ-n-ブチルホスフェート;トリラウリルトリチオホスファイト;ジメチルオクタデセニルホスホネート;H3PO3及びH3BO3で後処理された低分子量ポリイソブテニル無水コハク酸ポリアミン分散剤;亜鉛(ジ-2-エチルヘキシルジチオホスフェート);及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項24記載の液。
【請求項26】
前記有機リン化合物がリン酸及び亜リン酸のエステルからなる群から選ばれる、請求項24記載の液。
【請求項27】
前記潤滑剤組成物が更に少量かつ有効量の補助摩擦改質剤を含む、請求項21記載の液。
【請求項28】
前記補助摩擦改質剤が、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ化脂肪エポキシド、脂肪アミン、グリセロールエステル、ホウ化グリセロールエステル、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、硫化オレフィン、脂肪イミダゾリン、カルボン酸及び/又は酸無水物とポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物、アルキルサリチル酸の金属塩、アルキルリン酸のアミン塩、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項27記載の液。

【図1】
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【公表番号】特表2013−520527(P2013−520527A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553865(P2012−553865)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/024671
【国際公開番号】WO2011/102836
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(313002845)
【出願人】(313002856)
【出願人】(313002867)
【出願人】(313002878)
【出願人】(313002889)
【出願人】(313002890)
【出願人】(313002915)
【Fターム(参考)】