説明

ホログラフィックメモリ再生装置、ホログラフィックメモリ再生方法およびホログラム記録媒体

【課題】
情報が記録された記録媒体を装置から取り外し、再度取り付けた場合に再生品質を確保するために、記録時と再生時とで記録媒体の取り付け角度を一致させなければならないという課題があった。
【解決手段】
ホログラム記録媒体から情報を再生する光情報記録再生装置において、光検出器によりホログラム記録媒体から反射した参照光の光検出器上の位置を検出し、検出した位置情報を基に前記ホログラム記録媒体の傾きを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを用いて記録媒体から情報を再生する装置および方法、およびホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、青紫色半導体レーザを用いた、Blu−ray Disc(TM)規格により、民生用においても50GB程度の記録密度を持つ光ディスクの商品化が可能となってきた。今後は、光ディスクでも100GB〜1TBというHDD(Hard Disc Drive)容量と同程度まで大容量化が望まれる。
【0003】
しかしながら、このような超高密度を光ディスクで実現するためには、短波長化と対物レンズ高NA化による高密度化技術とは異なる新しい方式による高密度化技術が必要である。
【0004】
次世代のストレージ技術に関する研究が行われる中、ホログラフィを利用してデジタル情報を記録するホログラム記録技術が注目を集めている。
【0005】
ホログラム記録技術とは、空間光変調器により2次元的に変調されたページデータの情報を有する信号光を、記録媒体の内部で参照光と重ね合わせ、その時に生じる干渉縞パターンによって記録媒体内に屈折率変調を生じさせることで情報を記録媒体に記録する技術である。
【0006】
情報の再生時には、記録時に用いた参照光を記録媒体に照射すると、記録媒体中に記録されているホログラムが回折格子のように作用して回折光を生じる。この回折光が記録した信号光と位相情報を含めて同一の光として再生される。
【0007】
再生された信号光は、CMOSやCCDなどの光検出器を用いて2次元的に高速に検出される。このようにホログラム記録技術は、1つのホログラムによって2次元的な情報を一気に光記録媒体に記録し、さらにこの情報を再生することを可能とするものであり、そして、記録媒体のある場所に複数のページデータを重ね書きすることができるため、大容量かつ高速な情報の記録再生を果たすことができる。
【0008】
特開2007−256949(特許文献1)には「ホログラフィックメモリ媒体に、ラジアルチルト方向の基準入射角度を規定するための基準チルトホログラムを記録しておく。記録/再生動作時には、まず、基準チルトホログラムの記録位置に参照光を照射し、その受光状態から、ラジアルチルト方向における参照光の基準入射角度(基準角度Sr)を検出する。そして、ホログラフィックメモリ媒体をラジアルチルト方向に変位させるチルトアクチュエータ19を駆動制御して、参照光のラジアルチルト方向の入射角度を基準角度Srに整合させる。しかる後、ホログラフィックメモリ媒体に信号光および参照光を照射して、記録/再生動作を実行する。」(要約)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−256949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
情報が記録された記録媒体を装置から取り外し、再度取り付けた場合に再生品質が劣化するという問題があった。原因の一つとして記録媒体を再度取り付けた場合に記録時の記録媒体の取り付け角度からずれてしまっていることが挙げられる。このため、記録時と再生時とで記録媒体の取り付け角度を一致させなければならないという課題があった。
【0011】
しかしながら、特許文献1の従来技術の場合、基準チルトホログラムを記録する必要があり、これを記録媒体の製造業者で行う場合はコストの増大のおそれがある。また、ユーザが行う場合は基準チルトのホログラムが記録される際に記録媒体に傾きがあると傾いた状態が基準となるおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、基準となるホログラムや追加の装置構成を用いずとも記録媒体の傾きを検出する手段を提供することにより、一度装置から取り外した記録媒体を再度取り付けた場合に良好な品質で再生可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、例えば請求項の範囲に記載の発明により解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基準となるホログラムや追加の装置構成を用いずに記録媒体の傾きを検出することが可能となり、一度装置から取り外した記録媒体を再度取り付けた場合に良好な品質で再生可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ホログラム記録媒体の傾きを検出するための原理を示した図
【図2】光情報記録再生装置の実施例を表す概略図
【図3】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す概略図
【図4】光情報記録再生装置内のピックアップの実施例を表す概略図
【図5】光情報記録再生装置の動作フローの実施例を表す概略図
【図6】ホログラム記録媒体の傾きを検出するために用いる参照光がホログラム記録媒体で反射する位置を示した図
【図7】第1の実施例におけるホログラム記録媒体の傾き検出を行うための動作フローの一例を示した図
【図8】第2の実施例におけるホログラム記録媒体の傾き検出を行うための動作フローの一例を示した図
【図9】第3の実施例におけるピックアップの構成を示した図
【図10】第3の実施例におけるホログラム記録媒体の傾きを検出するための原理を示した図
【図11】第4の実施例において参照光の基準となる角度をオフセットさせるための動作フローの一例を示した図
【図12】基準となる角度をオフセットさせる量を示した図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。図2はホログラフィを利用してデジタル情報を記録および/または再生するホログラム記録媒体の記録再生装置を示すブロック図である。
【0018】
光情報記録再生装置10は、ピックアップ11、再生用参照光光学系12、キュア光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14、回転モータ50、およびディスクチルト機構90を備えており、ホログラム記録媒体1は回転モータ50によって回転することと、ディスクチルト機構90によって傾きを補正することが可能な構成となっている。
【0019】
ピックアップ11は、参照光と信号光をホログラム記録媒体1に出射してホログラフィを利用してデジタル情報を記録媒体に記録する役割を果たす。この際、記録する情報信号はコントローラ89によって信号生成回路86を介してピックアップ11内の空間光変調器に送り込まれ、信号光は空間光変調器によって変調される。
【0020】
ホログラム記録媒体1に記録した情報を再生する場合は、ピックアップ11から出射された参照光を記録時とは逆の向きにホログラム記録媒体に入射させる光波を再生用参照光光学系12にて生成する。再生用参照光によって再生される再生光をピックアップ11内の後述する光検出器によって検出し、信号処理回路85によって信号を再生する。
【0021】
ホログラム記録媒体1に照射する参照光と信号光の照射時間は、ピックアップ11内のシャッタの開閉時間をコントローラ89によってシャッタ制御回路87を介して制御することで調整できる。
【0022】
キュア光学系13は、ホログラム記録媒体1のプリキュアおよびポストキュアに用いる光ビームを生成する役割を果たす。プリキュアとは、ホログラム記録媒体1内の所望の位置に情報を記録する際、所望位置に参照光と信号光を照射する前に予め所定の光ビームを照射する前工程である。ポストキュアとは、ホログラム記録媒体1内の所望の位置に情報を記録した後、該所望の位置に追記不可能とするために所定の光ビームを照射する後工程である。
【0023】
ディスク回転角度検出用光学系14は、ホログラム記録媒体1の回転角度を検出するために用いられる。ホログラム記録媒体1を所定の回転角度に調整する場合は、ディスク回転角度検出用光学系14によって回転角度に応じた信号を検出し、検出された信号を用いてコントローラ89によってディスク回転モータ制御回路88を介してホログラム記録媒体1の回転角度を制御する事が出来る。
【0024】
ホログラム記録媒体1を所定の傾きに調整するために、後述する記録媒体の角度検出を行い、検出した信号を用いてコントローラ89によってディスクチルト制御回路91を介してディスクチルト機構90を駆動することでホログラム記録媒体1の傾きを制御することができる。
【0025】
光源駆動回路82からは所定の光源駆動電流がピックアップ11、キュア光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14内の光源に供給され、各々の光源からは所定の光量で光ビームを発光することができる。
【0026】
また、ピックアップ11、そして、ディスクキュア光学系13は、ホログラム記録媒体1の半径方向に位置をスライドできる機構が設けられており、アクセス制御回路81を介して位置制御がおこなわれる。
【0027】
ところで、ホログラフィの角度多重の原理を利用した記録技術は、参照光角度のずれに対する許容誤差が極めて小さくなる傾向がある。
【0028】
従って、ピックアップ11内に、参照光角度のずれ量を検出する機構を設けて、サーボ信号生成回路83にてサーボ制御用の信号を生成し、サーボ制御回路84を介して該ずれ量を補正するためのサーボ機構を光情報記録再生装置10内に備えることが必要となる。
【0029】
また、ピックアップ11、キュア光学系13、ディスク回転角度検出用光学系14は、いくつかの光学系構成または全ての光学系構成をひとつに纏めて簡素化しても構わない。
【0030】
図3は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の基本的な光学系構成の一例における記録原理を示したものである。光源201を出射した光ビームはコリメートレンズ202を透過し、シャッタ203に入射する。シャッタ203が開いている時は、光ビームはシャッタ203を通過した後、例えば2分の1波長板などで構成される光学素子204によってp偏光とs偏光の光量比が所望の比になるようになど偏光方向が制御された後、PBS(Polarization Beam Splitter)プリズム205に入射する。
【0031】
PBSプリズム205を透過した光ビームは、信号光206として働き、ビームエキスパンダ208によって光ビーム径が拡大された後、位相マスク209、リレーレンズ210、PBSプリズム211を透過して空間光変調器212に入射する。
【0032】
空間光変調器212によって情報が付加された信号光は、PBSプリズム211を反射し、リレーレンズ213ならびに空間フィルタ214を伝播する。その後、信号光は対物レンズ215によってホログラム記録媒体1に集光する。
【0033】
一方、PBSプリズム205を反射した光ビームは参照光207として働き、偏光方向変換素子216によって記録時または再生時に応じて所定の偏光方向に設定された後、ミラー217ならびにミラー218を経由してガルバノミラー219に入射する。ガルバノミラー219はアクチュエータ220によって角度を調整可能のため、レンズ221とレンズ222を通過した後にホログラム記録媒体1に入射する参照光の入射角度を、所望の角度に設定することができる。なお、参照光の入射角度を設定するために、ガルバノミラーに代えて、参照光の波面を変換する素子を用いても構わない。
【0034】
このように信号光と参照光とをホログラム記録媒体1において、互いに重ね合うように入射させることで、記録媒体内には干渉縞パターンが形成され、このパターンを記録媒体に書き込むことで情報を記録する。また、ガルバノミラー219によってホログラム記録媒体1に入射する参照光の入射角度を変化させることができるため、角度多重による記録が可能である。
【0035】
以降、同じ領域に参照光角度を変えて記録されたホログラムにおいて、1つ1つの参照光角度に対応したホログラムをページと呼び、同領域に角度多重されたページの集合をブックと呼ぶことにする。
【0036】
図4は、光情報記録再生装置10におけるピックアップ11の基本的な光学系構成の一例における再生原理を示したものである。記録した情報を再生する場合は、前述したように参照光をホログラム記録媒体1に入射し、ホログラム記録媒体1を透過した光ビームを、アクチュエータ223によって角度調整可能なガルバノミラー224にて反射させることで、その再生用参照光を生成する。
【0037】
この再生用参照光によって再生された再生光は、対物レンズ215、リレーレンズ213ならびに空間フィルタ214を伝播する。その後、再生光はPBSプリズム211を透過して光検出器225に入射し、記録した信号を再生することができる。
【0038】
図5は、光情報記録再生装置10における記録、再生の動作フローを示したものである。ここでは、特にホログラフィを利用した記録再生に関する動作フローを説明する。
【0039】
図5(a)は、光情報記録再生装置10にホログラム記録媒体1を挿入した後、記録または再生の準備が完了するまでの動作フローを示し、図5(b)は準備完了状態からホログラム記録媒体1に情報を記録するまでの動作フロー、図5(c)は準備完了状態からホログラム記録媒体1に記録した情報を再生するまでの動作フローを示したものである。
【0040】
図5(a)に示すように媒体を挿入すると(501)、光情報記録再生装置10は、例えば挿入された媒体がホログラフィを利用してデジタル情報を記録または再生する媒体であるかどうかディスク判別を行う(502)。
【0041】
ディスク判別の結果、ホログラフィを利用してデジタル情報を記録または再生するホログラム記録媒体であると判断されると、光情報記録再生装置10はホログラム記録媒体に設けられたコントロールデータを読み出し(503)、例えばホログラム記録媒体に関する情報や、例えば記録や再生時における各種設定条件に関する情報を取得する。
【0042】
コントロールデータの読み出し後は、コントロールデータに応じた各種調整やピックアップ11に関わる学習処理(504)を行い、光情報記録再生装置10は、記録または再生の準備が完了する(505)。
【0043】
準備完了状態から情報を記録するまでの動作フローは図5(b)に示すように、まず記録するデータを受信して(511)、該データに応じた情報をピックアップ11内の空間光変調器に送り込む。
【0044】
その後、ホログラム記録媒体に高品質の情報を記録できるように、必要に応じて各種学習処理を事前に行い(512)、シーク動作(513)によりピックアップ11ならびにキュア光学系13の位置をホログラム記録媒体の所定の位置に配置する。
【0045】
その後、キュア光学系13から出射する光ビームを用いて所定の領域をプリキュアし(514)、ピックアップ11から出射する参照光と信号光を用いてデータを記録する(515)。
【0046】
データを記録した後は、必要に応じてデータをベリファイし(516)、キュア光学系13から出射する光ビームを用いてポストキュアを行う(517)。
【0047】
準備完了状態から記録された情報を再生するまでの動作フローは図5(c)に示すように、ホログラム記録媒体から高品質の情報を再生できるように、必要に応じて各種学習処理を事前に行う(521)。その後、シーク動作(522)によりピックアップ11ならびに再生用参照光光学系12の位置をホログラム記録媒体の所定の位置に配置する。
【0048】
その後、ピックアップ11から参照光を出射し、ホログラム記録媒体に記録された情報を読み出す(523)。
【0049】
本発明のホログラム記録媒体の傾き検出は学習処理504、もしくはデータ記録515、もしくはデータ再生523の中で行うことが可能である。
【0050】
なお、データ再生の場合には本発明のホログラム記録媒体の傾き検出によりホログラム記録媒体の傾き調整を行った後に、さらにホログラムから回折される光を用いてホログラム記録媒体の傾きもしくはガルバノミラー219およびガルバノミラー224の傾きの微調整を行っても構わない。
【0051】
図1はピックアップ11において、ホログラム記録媒体の傾きを検出するための原理を示した図である。ここで、図3および図4におけるリレーレンズ213、空間フィルタ214、およびPBSプリズム211は省略して図示しているが、これらの光学部品があった場合には、以降の説明において光検出器225で検出される像が反転するものとして考えれば問題ない。
【0052】
図1(a)はホログラム記録媒体1に傾きが無い基準の状態を示す。参照光の角度がレンズ222の光軸と同一である場合に、ホログラム記録媒体1の表面で反射した参照光の角度が対物レンズ215の光軸と同一となる関係にあるものとする。この関係の場合、ホログラム記録媒体1で反射した参照光は対物レンズ215により光検出器225に集光し、集光する位置は対物レンズ215の光軸位置となる。
【0053】
図1(b)はホログラム記録媒体1に傾きがある場合の状態を示す。図1(b)ではホログラム記録媒体の角度が図1(a)の基準状態からΔθだけずれているものとする。このとき、レンズ222の光軸を通る参照光はホログラム記録媒体1で反射した際に2Δθだけ対物レンズの光軸から傾く。対物レンズ215の焦点距離をfとして光軸から2Δθだけ傾いた参照光が光検出器で光軸からΔxだけずれて集光する場合に、一例としてΔx=f・sin2Δθの関係となっているものとする。このとき、Δθ={sin-1(Δx/f)}/2であるため、集光した光の位置を光検出器225で検出して算出したΔxを用いて、ホログラム記録媒体1の基準状態からの角度ずれ量を算出することができる。
【0054】
なお、ここでは、ホログラム記録媒体の傾きが無い場合に反射した参照光の角度が対物レンズ215の光軸と同一であるものとして説明を行ったが、必ずしも同一である必要は無く、ホログラム記録媒体の傾きが無い場合に光検出器225に集光する位置を基準とすれば同様の傾き検出が可能である。
【0055】
なお、光検出器225に集光した参照光は光検出器225の複数の画素に跨った輝点となる場合には、輝点の重心を用いてΔxを算出すれば良い。
【0056】
なお、図5ではホログラム記録媒体1を透過する参照光は図示していないが、透過する参照光があっても構わなく、参照光の一部が反射すれば傾き検出が可能である。
【0057】
図6はホログラム記録媒体の傾きを検出するために用いる参照光がホログラム記録媒体で反射する位置をホログラム記録媒体の断面で示した図である。ホログラム記録媒体1は透明保護層601、記録層602、透明保護層603から構成され、参照光は透明保護層601、記録層602、透明保護層603の順に透過するものとする。
【0058】
図6(a)は透明保護層601の表面で反射した参照光をホログラム記録媒体の傾き検出に利用する例である。通常、不要反射を防止するためAR(Anti Reflection)コートを透明保護層601の表面に付けるが、僅かに参照光は反射するため、この参照光を用いてホログラム記録媒体1の傾き検出を行うことができる。また、記録再生には用いない領域に位置する透明保護層601の表面に反射膜を付ける、もしくはARコートを付けないことによって反射させた参照光を用いて傾き検出を行っても良い。
【0059】
図6(b)は記録層602の中央の一部に反射膜604を配置し、反射膜604で反射した参照光をホログラム記録媒体の傾き検出に利用する例である。ホログラム記録媒体1の製造コストが上がるものの、ホログラム記録位置に近い領域を用いた検出が行えるため、より効果の高い傾き検出を行うことができる。
【0060】
なお、この他にも透明保護層601と記録層602との界面、記録層602と透明保護層603との界面、もしくは透明保護層603の表面等を用いてホログラム記録媒体1の傾き検出を行うことも可能である。
【0061】
図7は第1の実施例におけるホログラム記録媒体の傾き検出を行うための動作フローの一例を示した図である。処理が開始されると、まずホログラム記録媒体1の傾き検出の対象となる領域が対物レンズ215の光軸とレンズ222の光軸の交差する位置の近傍に配置されるようにディスク回転モータ制御回路88とアクセス制御回路81を用いて制御する(701)。次にディスクチルト制御回路91により設定可能な下限の角度にホログラム記録媒体1の角度を設定する(702)。次に参照光をレンズ222の光軸と一致する角度でホログラム記録媒体1に照射する(703)。次にホログラム記録媒体1で反射した参照光を光検出器225で受光する(704)。次に受光した情報を基に、第1の実施例で記述した方法でホログラム記録媒体の傾きを算出する(705)。次にディスクチルト制御回路91の設定角度が設定可能な上限の角度より大きいか判断を行う(706)。706で上限の角度以下であれば、ホログラム記録媒体1の傾きをディスクチルト制御回路により所定量増加させる(707)。706で上限の角度より大きい場合は、設定したホログラム記録媒体1の角度と算出されたホログラム記録媒体1の傾きとの関係からホログラム記録媒体1の傾きが最小となる設定角度を算出し、ディスクチルト制御回路91により設定し処理を終了する(708)。
【0062】
本実施例によれば、光情報記録再生装置10において記録再生に必要な基本的な構成のみでホログラム記録媒体1の傾きを検出することが可能であり、一度装置から取り外した記録媒体を再度取り付けた場合に良好な品質で再生可能となる。
【実施例2】
【0063】
第2の実施例における装置構成は第1の実施例と同様である。
【0064】
図8は第2の実施例におけるホログラム記録媒体の傾き検出を行うための動作フローの一例を示した図である。処理が開始されると、まずホログラム記録媒体1の傾き検出の対象となる領域が対物レンズ215の光軸とレンズ222の光軸の交差する位置の近傍に配置されるようにディスク回転モータ制御回路88とアクセス制御回路81を用いて制御する(801)。次に参照光がレンズ222の光軸と一致する角度でホログラム記録媒体1に照射する(802)。次にホログラム記録媒体1で反射した参照光を光検出器225で受光する(803)。次に受光した情報を基に、ホログラム記録媒体1の傾きを算出する(804)。次にホログラム記録媒体1の傾きが所定の範囲に入っているか判断を行う(805)。所定の範囲に入っていれば処理を終了し、入っていなければ、検出された傾きの量に応じてホログラム記録媒体の傾きをディスクチルト制御回路91により調整する(806)。その後再度802〜805の処理を繰り返し、ホログラム記録媒体1の傾きが所定の範囲内に入るようにする。
【0065】
本実施例によれば、光情報記録再生装置10において記録再生に必要な基本的な構成のみでホログラム記録媒体1の傾きを検出することが可能であり、一度装置から取り外した記録媒体を再度取り付けた場合に良好な品質で再生可能となる。また、所定回数の傾き検出を行う必要が無いため、第1の実施例と比べて短時間で処理を終えられる利点がある。
【実施例3】
【0066】
図9は第3の実施例におけるピックアップ11の構成を示した図である。図9において、光源901を出射した光ビームはコリメートレンズ902を透過し、シャッタ903に入射する。シャッタ903が開いている時は、光ビームはシャッタ903を通過した後、例えば1/2波長板などで構成される光学素子904によってp偏光とs偏光の光量比が所望の比になるように偏光方向を制御された後、偏光ビームスプリッタ905に入射する。
【0067】
偏光ビームスプリッタ905を透過した光ビームは、偏光ビームスプリッタ907を経由して空間光変調器908に入射する。空間光変調器908によって情報を付加された信号光906は偏光ビームスプリッタ907を反射し、所定の入射角度の光ビームのみを通過させるアングルフィルタ909を伝播する。その後、信号光ビームは対物レンズ910によってホログラム記録媒体1に集光する。
【0068】
一方、偏光ビームスプリッタ905を反射した光ビームは参照光912として働き、偏光方向変換素子919によって記録時又は再生時に応じて所定の偏光方向に設定された後、ミラー913ならびにミラー914を経由してレンズ915に入射する。レンズ915は参照光912を対物レンズ910のバックフォーカス面に集光させる役割を果たしており、対物レンズ910のバックフォーカス面にて一度集光した参照光は、対物レンズ910によって再度、平行光となってホログラム記録媒体1に入射する。
【0069】
ここで、対物レンズ910又は光学ブロック921は、例えば符号920に示す方向に駆動可能であり、対物レンズ910又は光学ブロック921の位置を駆動方向920に沿ってずらすことにより、対物レンズ910と対物レンズ910のバックフォーカス面における集光点の相対位置関係が変化するため、ホログラム記録媒体1に入射する参照光の入射角度を所望の角度に設定することができる。
なお、対物レンズ910又は光学ブロック921を駆動する代わりに、ミラー914をアクチュエータにより駆動することで参照光の入射角度を所望の角度に設定しても構わない。
【0070】
このように、信号光と参照光をホログラム記録媒体1において、互いに重ね合うように入射させることで、記録媒体内には干渉縞パターンが形成され、このパターンを記録媒体に書き込むことで情報を記録する。また対物レンズ910又は光学ブロック921の位置を駆動方向920に沿ってずらすことによって、ホログラム記録媒体1に入射する参照光の入射角度を変化させることができるため、角度多重による記録が可能である。
【0071】
記録した情報を再生する場合は、前述したように参照光をホログラム記録媒体1に入射し、ホログラム記録媒体1を透過した光ビームをガルバノミラー916にて反射させることで、その再生用参照光を生成する。この再生用参照光によって再生された再生光は、対物レンズ910、アングルフィルタ909を伝播する。その後、再生光は偏光ビームスプリッタ907を透過して光検出器918に入射し、記録した信号を再生することができる。
【0072】
図9で示した光学系は、信号光と参照光を同一の対物レンズに入射させる構成とすることで、図2で示した光学系構成に比して、大幅に小型化できる利点を有する。
【0073】
図10はピックアップ11において、第3の実施例におけるホログラム記録媒体の傾きを検出するための原理を示した図である。図10(a)はホログラム記録媒体1に傾きが無い基準の状態を示す。参照光のホログラム記録媒体1への入射角をθとする。ホログラム記録媒体1に傾きが無い場合は反射した参照光と対物レンズ910の光軸とがなす角はθとなる。反射した参照光は対物レンズ910により集光しアングルフィルタ909と偏光ビームスプリッタ907を透過して光検出器918に入射する。集光した光が光検出器918に入射する位置と対物レンズ910の光軸との距離をxとする。対物レンズ910の焦点距離をfとして光軸からθだけ傾いた参照光が光検出器で光軸からxだけずれて集光する場合に、一例としてx=f・sinθの関係となっているものとすると、x=f・sinθとなる。
【0074】
図10(b)はホログラム記録媒体1に傾きがある場合の状態を示す。図10(b)ではホログラム記録媒体の角度が図10(a)の基準状態からΔθだけずれているものとする。このとき、角度θの参照光はホログラム記録媒体1で反射した際にθ+2Δθだけ対物レンズの光軸から傾くため、反射した参照光が光検出器918に集光する位置の基準状態からのずれをΔxとすると、x+Δx=f・sin(θ+2Δθ)の関係となる。これより、Δθ={sin-1((x+Δx)/f)−θ}/2であるため、ホログラム記録媒体1の基準状態からの角度ずれ量を算出することができる。
【0075】
第3の実施例におけるホログラム記録媒体の傾き検出を行うための動作フローとしては第1の実施例や第2の実施例で用いた動作フローを適用することができる。
【実施例4】
【0076】
第4の実施例における装置構成は第1の実施例と同様である。
【0077】
図11は第4の実施例において参照光の基準となる角度をオフセットさせるための動作フローの一例を示した図である。処理が開始されると、まずホログラム記録媒体1の傾き検出の対象となる領域が対物レンズ215の光軸とレンズ222の光軸の交差する位置の近傍に配置されるようにディスク回転モータ制御回路88とアクセス制御回路81を用いて制御する(1101)。次に参照光がレンズ222の光軸と一致する角度でホログラム記録媒体1に照射する(1102)。次にホログラム記録媒体1で反射した参照光を光検出器225で受光する(1103)。次に受光した情報を基に、ホログラム記録媒体1の傾きを算出する(1104)。1102では参照光がレンズ222の光軸と一致する角度を基準としていたが、算出したホログラム記録媒体1の傾きの情報を基に、基準となる角度をオフセットさせて終了する(1105)。
【0078】
図12は図1と同様の構成において、ホログラム記録媒体の傾きの情報を基に基準となる角度をオフセットさせる量を示した図である。光情報記録媒体に傾きΔθがある場合には、図1(b)で示したように参照光が光検出器で光軸からΔx=f・sin2Δθだけずれて検出される。このとき、1104でΔθ={sin-1(Δx/f)}/2としてホログラム記録媒体の傾きを算出することができる。1105で参照光の基準となる角度を図12に示すようにΔθオフセットさせることで、ホログラム記録媒体と参照光の基準となる角度との関係を適正に保つことができる。
【0079】
なお、このようにして基準となる角度をオフセットさせた場合、ホログラム記録媒体で反射した参照光は対物レンズ215の光軸からΔθだけずれているため、光検出器225上で参照光はΔx1=f・sinΔθだけずれて検出される。1105の後にΔx1を検出し、意図した通りに参照光がオフセットしているかを確認しても構わない。
【0080】
本実施例によれば、一度装置から取り外した記録媒体を再度取り付けた場合に良好な品質で再生可能となるだけでなく、ホログラム記録媒体の角度を制御する機構が不要となるため、低コストで光情報記録再生装置10を構成することができる。
【0081】
以上の説明では検出したホログラム記録媒体1の傾きの情報を用いてホログラム記録媒体1の傾きを補正するものとして説明を行ったが、必ずしもホログラム記録媒体1の傾き補正のために利用しなくても良く、例えば検出されたホログラム記録媒体の傾きの情報を基に光検出器における再生像の位置検出に利用しても構わない。
【0082】
なお、以上の説明では参照光の多重方向と同じ方向の角度のホログラム記録媒体の傾きについて説明を行ったが、これと垂直な方向のホログラム記録媒体の傾きについても同様の原理を用いて検出可能である。
【0083】
また、以上の説明では記録や再生に先立って行う学習処理における動作として説明を行ったが、記録中や再生中に同様のホログラム記録媒体の傾き検出を行い、適宜、ホログラム記録媒体の角度を制御しても構わない。記録中の場合には、通常光検出器は利用していないため、参照光の偏光状態を制御することで、ホログラム記録媒体1で反射した参照光の一部を光検出器で検出することができる。再生中の場合には、再生されたデータとホログラム記録媒体1で反射した参照光が同時に光検出器で検出されるが、反射した参照光は高い輝度で検出されるため、例えば閾値を設けて、光検出器において検出された光強度が閾値以上の画素の情報を参照光の情報と考えて傾き検出を行えば良い。
【符号の説明】
【0084】
1・・・ホログラム記録媒体、10・・・光情報記録再生装置、11・・・ピックアップ、
12・・・再生用参照光光学系、13・・・ディスクCure光学系、
14・・・ディスク回転角度検出用光学系、50・・・回転モータ、
81・・・アクセス制御回路、82・・・光源駆動回路、83・・・サーボ信号生成回路、
84・・・サーボ制御回路、85・・・信号処理回路、86・・・信号生成回路、
87・・・シャッタ制御回路、88・・・ディスク回転モータ制御回路、
89・・・コントローラ、
201・・・光源、202・・・コリメートレンズ、203・・・シャッタ、
204・・・1/2波長板、205・・・偏光ビームスプリッタ、
206・・・信号光、207・・・参照光、
208・・・ビームエキスパンダ、209・・・フェーズ(位相)マスク、
210・・・リレーレンズ、211・・・偏光ビームスプリッタ、
212・・・空間光変調器、213・・・リレーレンズ、214・・・空間フィルタ、
215・・・対物レンズ、216・・・偏光方向変換素子、217・・・ミラー、
218・・・ミラー、219・・・ミラー、220・・・アクチュエータ、
221・・・レンズ、222・・・レンズ、223・・・アクチュエータ、
224・・・ミラー、225・・・光検出器
901・・・光源、902・・・コリメートレンズ、903・・・シャッタ、
904・・・偏光方向変換素子、905・・・偏光ビームスプリッタ、
906・・・信号光、907・・・偏光ビームスプリッタ、908・・・空間光変調器、
909・・・アングルフィルタ、910・・・対物レンズ、
911・・・アクチュエータ、912・・・参照光、
913・・・ミラー、914・・・ミラー、915・・・レンズ、
916・・・ミラー、917・・・アクチュエータ、918・・・光検出器、
919・・・偏光方向変換素子、920・・・駆動方向、921・・・光学ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光と参照光との干渉パターンがページデータとして記録されているホログラム記録媒体から情報を再生するホログラフィックメモリ再生装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を参照光と信号光に分離する光学素子と、
前記参照光により再生されたページデータと前記ホログラム記録媒体で反射した参照光の強度分布とを検出する光検出器と、を備え、
前記光検出器により前記反射した参照光の前記光検出器上の位置を検出し、検出した位置情報を基に前記ホログラム記録媒体の傾きを検出することを特徴とするホログラフィックメモリ再生装置。
【請求項2】
前記反射した参照光はホログラム記録媒体の表面で反射することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィックメモリ再生装置。
【請求項3】
前記反射した参照光はホログラム記録媒体の記録材料の厚み方向における中央近傍で反射することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィックメモリ再生装置。
【請求項4】
請求項1記載のホログラフィックメモリ再生装置であって、
ホログラム記録媒体の傾きを補正するアクチュエータを備え、
前記検出したホログラム記録媒体の傾きの情報を基に前記ホログラム記録媒体の傾きを前記アクチュエータにより補正することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィックメモリ再生装置。
【請求項5】
請求項1記載のホログラフィックメモリ再生装置であって、
参照光角度を調整するミラーを備え、
前記検出したホログラム記録媒体の傾きの情報を基に前記ホログラム記録媒体の傾きを前記ミラーにより補正することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィックメモリ再生装置。
【請求項6】
信号光と参照光とを用いたホログラフィを利用して、ホログラム記録媒体から情報を再生するホログラフィックメモリ再生方法において、
前記ホログラム記録媒体に参照光を照射する工程と、
前記ホログラム記録媒体において反射した参照光の強度分布を検出する工程と、
前記検出した強度分布に基づいて前記ホログラム記録媒体の傾きを検出する工程と、を含むことを特徴とするホログラフィックメモリ再生方法。
【請求項7】
信号光と参照光との干渉パターンをページデータとして記録するホログラム記録媒体であって、
表面の少なくとも一部に参照光を反射させるための領域を設けていることを特徴とするホログラム記録媒体。
【請求項8】
信号光と参照光との干渉パターンをページデータとして記録するホログラム記録媒体であって、
記録材料の厚み方向の中央近傍の少なくとも一部に参照光を反射させるための領域を設けていることを特徴とするホログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−64810(P2013−64810A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202550(P2011−202550)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】