説明

ホログラム記録装置

【課題】 プレ露光及びポスト露光により生じるノイズを低減することができるホログラム記録装置を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係るホログラム記録装置は、ホログラム記録媒体、光源、直流電流回路、高周波重畳回路、光学系及び空間光変調部を備える。光源は、レーザ光を発生する半導体レーザを備える。直流電流回路は、前記半導体レーザに直流電流を印加する。高周波重畳回路は、前記半導体レーザに高周波電流を印加する。光学系は、前記レーザ光を情報光ビーム及び参照光ビームに分割して、当該情報光ビーム及び参照光ビームを前記ホログラム記録媒体に導く。空間光変調部は、前記情報光ビームを空間変調する。前記ホログラム記録媒体に情報を記録する前後には、前記半導体レーザは、前記高周波重畳回路により駆動されて、コヒーレンスの低いレーザ光を発生し、当該コヒーレンスの低いレーザ光により前記ホログラム記録媒体の特性を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報をホログラムとして記録するホログラム記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラフィを用いた体積記録型の高密度記録(以下、HDS:Holographic Digital Storageという)及びHDSの記録再生装置が開発されつつある。HDS記録再生装置が備えるホログラム記録媒体の材料としては、煩雑な現像処理が不要で、高感度で多重性能がよい光重合性フォトポリマーがある。フォトポリマーは反応性が高いことから、保存寿命が短いという問題がある。これを解決する方法の1つに、フォトポリマーに酸素を添加して、意図せず発生したラジカルを酸素と反応させる方法がある。この場合、記録媒体に情報を記録する際には、記録媒体を予め露光することで酸素を消費させ、感度の高い状態にする必要がある。この情報記録前に施される露光はプレ露光と呼ばれる。
【0003】
また、情報記録後に光重合開始剤が残っていると、これを種としてラジカル重合が生じて、記録媒体にノイズが発生することがある。これを防ぐために、情報記録後に記録媒体を露光することにより、光重合開始剤を消費させる。この情報記録後に施される露光は、ポスト露光と呼ばれる。
【0004】
プレ露光及びポスト露光では、露光自体によって生じる干渉縞によるノイズの発生を防ぐために、干渉性の低い光ビーム(インコヒーレント光ビーム)を記録媒体に輝度むらなく照射する必要がある。プレ露光及びポスト露光用の光源には、一般に、LEDが使用される。しかしながら、情報記録再生用の光源とは別に、プレ露光及びポスト露光用の光源を用意すると、コストが増大し、さらに、装置の小型化に向かないという問題がある。情報記録再生用の光源をプレ露光及びポスト露光に利用する場合には、この光源からのレーザ光を、干渉性の低いレーザ光に変換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−77923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、情報記録再生用の光源をプレ露光及びポスト露光に利用する場合にも、プレ露光及びポスト露光により生じるノイズを低減することができるホログラム記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るホログラム記録装置は、ホログラム記録媒体、光源、直流電流回路、高周波重畳回路、光学系及び空間光変調部を備える。光源は、レーザ光を発生する半導体レーザを備える。直流電流回路は、前記半導体レーザに直流電流を印加する。高周波重畳回路は、前記半導体レーザに高周波電流を印加する。光学系は、前記レーザ光を情報光ビーム及び参照光ビームに分割して、当該情報光ビーム及び参照光ビームを前記ホログラム記録媒体の略同じ位置に導く。空間光変調部は、前記情報光ビームの光路上に配置され、前記情報光ビームを空間変調する。前記ホログラム記録媒体に情報を記録する際には、前記半導体レーザは、前記直流電流回路により駆動されて、コヒーレンスの高いレーザ光を発生し、前記ホログラム記録媒体に情報を記録する前及び後の少なくとも一方には、前記半導体レーザは、前記高周波重畳回路により駆動されて、コヒーレンスの低いレーザ光を発生し、当該コヒーレンスの低いレーザ光により前記ホログラム記録媒体の特性を変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る光情報記録再生装置であって、情報記録時に使用される光学系を概略的に示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係る光源を概略的に示す図。
【図3】(a)は、図2に示した回折格子を回転させた場合の発振スペクトルを測定した結果を示すグラフであり、(b)は、回折格子のフィードバック波長が半導体レーザの利得帯域外となるまで回折格子を回転させた場合の発振スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施形態に係る光情報記録再生装置であって、情報再生時に使用される光学系を概略的に示すブロック図。
【図5】第2の実施形態に係る光源を概略的に示す図。
【図6】第3の実施形態に係る光源を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、実施形態に係るホログラム記録装置としての光情報記録再生装置を説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0010】
本実施形態に係る光情報記録再生装置は、参照光ビームと記録光ビームとが別々の光軸を持つ2光束記録再生方式を採用している。本実施形態に係る光情報記録再生装置は、2光束記録再生方式に限らず、参照光と記録光とが同一の光軸を通るコアキシャル方式といった他の記録再生方式を採用してもよい。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光情報記録再生装置100を概略的に示している。この光情報記録再生装置100は、光情報記録媒体(ホログラム記録媒体ともいう)111を備え、この光情報記録媒体111は、例えば、厚みを有する円盤形状に形成されている。光情報記録媒体111は、図示しない駆動機構によって3次元方向に移動可能且つ回転可能に支持されている。
【0012】
光情報記録媒体111は、厚み方向に複数の層を持つ。具体的には、光情報記録媒体111は、情報記録層が保護層により挟まれた積層構造を有する。情報記録層は、例えば、0.2mm〜2.0mmの厚さを持つ。情報記録層は、照射された光ビームの振幅に比例して光学的特性(屈折率等)が変化するホログラフィック材料、例えば、フォトポリマーで作られる。フォトポリマーは、重合性化合物(モノマー)の光重合を利用した感光材料である。フォトポリマーは、重合性モノマー、光重合開始剤及びマトリクスを主成分として含有する。マトリクスは、多孔質状の高分子であり、情報記録層の体積保持の役割を果たす。重合性モノマー及び光重合開始剤は、マトリクス中に略均一に分散されている。さらに、情報記録層には、意図せず発生したラジカル種によるモノマーの光重合を防ぐために、酸素が添加されている。
【0013】
この情報記録層に光ビームが照射されると、照射位置の屈折率が変化する。光情報記録媒体111は、記録情報を屈折率変化として保持する。後に説明するような2光束記録再生方式による情報記録では、2つの光束(情報光ビーム及び参照光ビーム)が互いに異なる光路を通って情報記録層の略同じ位置に照射される。これらの光束の干渉により情報記録層に光の強度分布が生じ、即ち、情報記録層内に干渉縞が形成される。干渉縞の明部(光強度の強い領域)では、光重合開始剤にラジカルが生じ、このラジカルにモノマーがラジカル重合する。重合したモノマーはラジカル化するため、連続的にラジカル重合が生じる。一方、干渉縞の暗部(光強度の弱い領域)に位置するモノマーは、明部に拡散移動する。この結果、干渉縞の明部では、モノマーの密度が高くなり、干渉縞の暗部では、モノマーの密度が低くなる。このように、情報記録層では、モノマーの密度差が生じることにより、干渉縞の光強度分布に応じた屈折率分布が生じる。
【0014】
保護層は、例えば、ガラス、ポリカーボネイト、アクリル系樹脂等の材料で作られる。保護層は、記録層を傷、埃などから保護する役割及び記録層の形状を保持する役割を果たす。
【0015】
なお、情報記録層は、フォトポリマーの例に限定されず、他のホログラフィック材料で作られてもよい。また、保護層は、上述した材料に限られず、使用されるレーザ波長に対する光学特性、機械的強度特性、寸法安定性、成形性などの各種特性が良好な他の材料で作られてもよい。
【0016】
さらに、光情報記録再生装置100は、光源101、直流電流回路としての定電流源120、高周波重畳回路121、空間光変調部107及び各種光学系を備えている。
【0017】
光源101は、定電流源120又は高周波重畳回路121により駆動されて、レーザ光を発生する。本実施形態の光源101は、図2を参照して後に説明するように、コリメータレンズ202を備え、光源101から射出されるレーザ光は、コリメータレンズ202によって平行光線に整形され、即ち、コリメートされている。
【0018】
定電流源120は、光源101に定電流を印加する。高周波重畳回路121は、数百MHzから数GHz程度の高周波電流を光源101に印加する。
【0019】
空間光変調部107は、入射した光ビームを光情報記録媒体111に記録するページデータで変調する。本実施形態では、空間光変調部107は、強誘電体型反射型液晶表示装置(FLCOS:Ferroelectric Liquid crystal on silicon)であり、画素毎に反射光の偏光方向を変えることにより、情報光を空間的に変調する。空間光変調部107には、記録情報(ユーザデータ)から生成されたページデータが図示しない信号処理部から入力される。空間光変調部107は、ページデータに従って、各画素をON画素又はOFF画素に設定する。ON画素は、入射した光ビームの偏光を回転させて反射し、OFF画素は、入射した光ビームをそのまま反射する。
【0020】
なお、空間光変調部107は、FLCOSに限らず、透過型液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)であってもよい。
【0021】
次に、図1を参照して、光情報記録媒体111に情報を記録する動作を説明する。
情報記録時には、光源101は、定電流源120により駆動される。光源101で発生したレーザ光は、シャッタ102へ向けられる。シャッタ102は、開閉することにより、光源101で発生したレーザ光を通過させ若しくは遮断する。シャッタ102を通過したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)103に入射する。偏光ビームスプリッタ103は、入射したレーザ光を2つの光束に分割する。具体的には、レーザ光のS偏光成分は、偏光ビームスプリッタ103の反射面で反射され、レーザ光のP偏光成分は、偏光ビームスプリッタ103を透過する。偏光ビームスプリッタ103で反射されたS偏光成分は、情報光ビームとしてシャッタ104へ向けられる。また、偏光ビームスプリッタ103を透過したP偏光成分は、参照光ビームとしてλ/2板112へ向けられる。
【0022】
偏光ビームスプリッタ103からの情報光ビームは、シャッタ104を通過し、リレーレンズ105に入射する。シャッタ104を通過した情報光ビームは、リレーレンズ105により偏光ビームスプリッタ106へ導かれる。リレーレンズ105は、入射した情報光ビームの空間強度を均一にして且つ所望のビーム径を有する平行光線に整形するために、2以上のレンズを含む。
【0023】
リレーレンズ105からの情報光ビームは、偏光ビームスプリッタ106で空間光変調部107に向けて反射される。空間光変調部107は、入射した情報光ビームを偏光変調するとともに、偏光ビームスプリッタ106へ向けて反射する。より具体的には、空間光変調部107のOFF画素は情報光ビームをS偏光のまま反射し、ON画素は情報光ビームをP偏光に変調して反射する。
【0024】
空間光変調部107によって変調された情報光(変調情報光)は、偏光ビームスプリッタ106によって振幅変調される。より具体的には、変調情報光のP偏光成分は、偏光ビームスプリッタ106を透過し、変調情報光のS偏光成分は、偏光ビームスプリッタ106の反射面で反射される。
【0025】
偏光ビームスプリッタ106を透過した変調情報光ビーム(P偏光成分)は、リレーレンズ108、λ/2板116及び対物レンズ110を経由して、光情報記録媒体111の記録層内で集光される。リレーレンズ108は、2以上のレンズを含み、偏光ビームスプリッタ106からの変調情報光ビームを、対物レンズ110の入射径に応じた大きさのビーム径に調整する。リレーレンズ108を通過した変調情報光ビームは、コリメートされている。λ/2板116は、変調情報光ビームをP偏光からS偏光へ変換する。S偏光に変換された情報光ビームは、対物レンズ110に入射してレンズパワーを与えられて光情報記録媒体111の情報記録層内で集光される。なお、情報光ビームの集光位置は、光情報記録媒体111の情報記録層内部に限らず、光情報記録媒体111の外部でもよい。
【0026】
さらに、リレーレンズ108に含まれるレンズ間には、アパーチャ109が設けられている。アパーチャ109は、変調情報光がリレーレンズ108内のレンズにより一旦集光される場所に配置される。情報光ビームが集光する場所は、情報光ビームが空間光変調部107及びPBS106によって変調された強度分布のフーリエ変換面である。情報光ビームのフーリエ変換像は、光情報記録媒体111に入射する位置付近での情報光ビームと共役な関係になっており、アパーチャ109の大きさによって、光情報記録媒体111に入射する位置付近での情報光ビームの大きさが決まる。即ち、アパーチャ109は、集光された情報光ビームの焦点付近での通過光サイズを制限することによって、光情報記録媒体111上での情報光ビームのスポットサイズを制御する。
【0027】
光情報記録媒体111では、媒体平面に平行な方向に、あるステップ間隔だけシフトした位置に他の情報を記録することができる。光情報記録媒体111付近での情報光ビームのスポットサイズが小さいほど、小さなステップ間隔で記録することができ、記録密度を高めることができる。従って、アパーチャ109の大きさをできるだけ小さくすることが望ましい。
【0028】
一方、偏光ビームスプリッタ103を透過した参照光ビームは、λ/2板112によってS偏光に変換される。S偏光に変換された参照光ビームは、反射ミラー113及び114によって反射されてリレーレンズ115に導かれる。反射ミラー114で反射された参照光ビームは、リレーレンズ115によって、光情報記録媒体111上での情報光ビームのビーム径とほぼ同じビーム径を持つ平行光線に変換され、光情報記録媒体111に向けられる。参照光ビームは、情報光ビームが入射した光情報記録媒体111の位置と略同じ位置に入射する。情報光及び参照光は、互いに干渉して光情報記録媒体111の情報記録層内に干渉縞を形成する。情報記録層には、この干渉縞の強度分布に応じた屈折率変化が生じる。光情報記録媒体111には、この屈折率変化が記録情報として保持される。
【0029】
前述したように、光情報記録媒体111の情報記録層は、ホログラフィック材料により構成されるので、多重記録が可能である。例えば、参照光ビーム及び情報光ビームと光情報記録媒体111とがなす角度若しくは情報光ビームに対する参照光ビームの入射角を変更することにより、情報記録層の同一位置に情報を多重化して記録することがきる。このような多重記録方式は、角度多重方式と呼ばれる。さらに、光情報記録再生装置100は、参照光ビーム及び記録光ビームの波長を変更する波長多重方式を利用することもできる。
【0030】
情報記録後には、光情報記録媒体111に対してポスト露光が施される。情報記録後に光重合開始剤が残っていると、これを種としてラジカル重合が生じてノイズの原因となる。情報記録後に光情報記録媒体111を露光することにより、光重合開始剤を消費させることができ、その結果、光情報記録媒体111に生じるノイズを低減することができる。
【0031】
また、情報記録前には、光情報記録媒体111に対してプレ露光が施される。前述したように、情報記録層には、意図せず発生したラジカル種によるモノマーの光重合を防ぐために、酸素が添加されている。プレ露光では、光情報記録媒体111を露光することにより、酸素を消費して、光情報記録媒体111を感度の高い状態にして効果的に記録ができるようにしている。
【0032】
プレ露光及びポスト露光では、露光自体によって生じる干渉縞によるノイズの発生を防ぐために、干渉性の低いレーザ光を光情報記録媒体111に輝度むらなく照射する。干渉性の低いレーザ光は、光源101を高周波電流で駆動することで得られる。半導体レーザ201においては、高周波電流が印加されると、半導体レーザの活性層内でキャリア数が変動し、通常は抑圧されている多数のモードが同時に発振する。また、各モードの強度は時間的に一定ではない。多数のモードが同時発振することにより動的にスペクトルが広がるためにコヒーレンスを著しく低下させることができる。
【0033】
また、高周波重畳回路121により、立ち上がりの早いパルスを印加すると、緩和振動による短パルス発振が得られる。この短パルスも波長帯域が広くなりコヒーレンスが著しく低下する。
【0034】
ホログラム記録に用いられる光源は、干渉性が高いレーザ光を発生することが要求される。このため、光源111の発振波長(スペクトル)は、波長選択性を備えた外部共振器を利用して制御される。
【0035】
図2は、本実施形態の光源101をより詳細に示している。この光源101は、図2に示されるように、半導体レーザ201、コリメータレンズ202及び外部共振器203を備えている。外部共振器203では、波長選択素子としての回折格子204及びミラー205が90度の角度をなした状態で配置されている。この光源101では、外部共振器203を軸206周りに回転させても、射出光軸角度が変化しない。光源101から射出されるレーザ光の発振波長は、半導体レーザ201から射出されたレーザ光と回折格子204のなす角度に依存する。外部共振器203を軸206周りに回転すると、半導体レーザ201から射出されたレーザ光と回折格子204のなす角度が変わる。従って、外部共振器203の回転角を制御することで、光源101から射出されるレーザ光の発振波長を変えることができる。情報記録時及び情報再生時には、光源101は、例えば、中心波長が405nmのレーザ光を発生する。
【0036】
プレ露光及びポスト露光のために、コヒーレンスを低下させる場合、回折格子204による波長選択性により特定波長のフィードバックが大きいため、単に高周波重畳で駆動してもスペクトルを広げることができない。
【0037】
プレ露光時及びポスト露光時には、回折格子204のフィードバック波長(帰還波長)が半導体レーザ201の利得帯域から外れるまで、外部共振器203を回転させる。これにより、回折格子204による発振波長制限がなくなるので、光源101から射出されるレーザ光のコヒーレンスを低下することが可能となる。
【0038】
図3(a)は、外部共振器203を回転させて、光源101からのレーザ光の発振スペクトルを測定した結果を示す。図3(a)に示されるように、外部共振器203を回転すると、発振スペクトルがシフトする。さらに、回転角を大きく若しくは小さくして、回折格子204のフィードバック波長が半導体レーザの利得帯域以上若しくは以下になると、図3(b)に示したようにフリーなスペクトルで発振する。この状態で高周波重畳することにより、光源101から射出されるレーザ光を低コヒーレンス化することができる。
【0039】
このようにして、低コヒーレンス化されたレーザ光を用いてプレ露光又はポスト露光することにより、光情報記録媒体111に発生するノイズを低減することができる。また、プレ露光及びポスト露光用として、新たな光源を用意せずに、情報記録再生用の光源111を利用することにより、低コスト化及び装置の小型化を実現することができる。
【0040】
次に、図4を参照して、光情報記録媒体111から情報を再生する方法を説明する。
【0041】
図4の光情報記録再生装置100は、図1に示した構成に加えて、情報再生用として、λ/4板401、反射ミラー402及び撮像部403を備える。λ/4板401は、参照光の偏光を変換する。反射ミラー402は、例えばガルバノミラーであり、参照光ビームの位相が共役となるように参照光を反射する。撮像部403は、例えばCCDセンサ又はCMOSセンサ等の受光素子がマトリクス状に配列されたエリアセンサであり、光情報記録媒体111からの回折光ビームを撮像する。
【0042】
情報再生時には、光源101は、定電流源120により駆動される。光源101で発生したレーザ光は、シャッタ102を通過して偏光ビームスプリッタ103に入射し、偏光ビームスプリッタ103によって2つの光束に分割される。偏光ビームスプリッタ103では、レーザ光のS偏光成分が反射され、レーザ光のP偏光成分が透過する。情報再生時には、S偏光成分は、シャッタ104により遮光される。一方、P偏光成分は、参照光ビームとしてλ/2板112に向けられる。
【0043】
偏光ビームスプリッタ103を透過した参照光ビームは、λ/2板111によってP偏光からS偏光に変換され、反射ミラー112および反射ミラー113によって反射されてリレーレンズ115に入射する。参照光ビームは、リレーレンズ115によって所望のビーム径に拡大若しくは縮小されて光情報記録媒体111に入射する。
【0044】
光情報記録媒体111に入射した参照光ビームは、光情報記録媒体111を透過し、λ/2板401を透過して反射ミラー402で反射される。反射ミラー402からの反射参照光ビームは、再びλ/4板401を透過して、P偏光に変換される。
【0045】
P偏光に変換された参照光ビームは、光情報記録媒体111を再び照射される。この参照光ビームの照射位置に記録情報が存在する場合には、照射された参照光ビームの回折光ビームが対物レンズ108へ伝播する。この回折光ビームを再生光ビームと呼ぶ。なお、参照光ビームがP偏光であることから、再生光ビームもP偏光である。
【0046】
光情報記録媒体111からの再生光ビームは、対物レンズ110を通過し、λ/2板116を透過してS偏光に変換される。S偏光に変換された再生光ビームは、リレーレンズ108及びアパーチャ109によって、ビーム径が拡大若しくは縮小され、偏光ビームスプリッタ106によって撮像部403へ向けて反射される。撮像部403は、偏光ビームスプリッタ106からの反射再生光ビームを撮像して、ページデータ画像を取得する。ページデータ画像の信号は、図示しない信号処理部へ送られ、信号処理部によって記録情報(ユーザデータ)が再生される。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る光情報記録再生装置は、半導体レーザと回折格子を備えた外部共振器とを組み合わせて用いる光源を備え、光源から射出されるレーザ光の干渉性を制御することができる。情報記録時及び情報再生時には、コヒーレンスが高いレーザ光を用いることで、光情報記録媒体に情報を書き込むことができる。プレ露光時及びポスト露光時には、低コヒーレンス化されたレーザ光を用いることで、光情報記録媒体111に発生するノイズを低減することができる。さらに、プレ露光及びポスト露光用の光源として、情報記録再生用の光源111を利用することにより、光情報記録再生装置100の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図5を参照して、第2の実施形態に係る光情報記録再生装置を説明する。
第2の実施形態の光情報記録再生装置は、第1の実施形態と略同じ構成を有する。本実施形態では、第1の実施形態の光源101が図5に示される光源501に置き換えられている。図5に示されるように、本実施形態の光源501は、半導体レーザ201、コリメータレンズ202、波長選択素子としてのエタロン502及び半透過ミラー506を備えている。エタロン502は、誘電体505がガラス503及び504で挟まれた構造を持ち、狭帯域の波長フィルタとして機能する。
【0049】
光源501では、半導体レーザ201からのレーザ光は、コリメータレンズ202によってコリメートされ、エタロン502に入射する。エタロン502は、入射したレーザ光のうちの特定の周波数帯のレーザ光を通過させる。エタロン502を通過したレーザ光は、半透過ミラー506によりその一部が反射されてエタロン502に戻される。これにより、特定の周波数帯のレーザ光が共振して増強される。半透過ミラー506を透過したレーザ光は、光源101の出力レーザ光となる。
【0050】
エタロン502は、誘電体505の屈折率を変化させることにより、その透過特性が変化し、即ち、透過させる周波数帯が変わる。従って、半導体レーザ201と半透過ミラー506との間にエタロン502が配置されることにより、発振波長可変の外部共振器を構成することができる。
【0051】
プレ露光及びポスト露光を施す場合、誘電体505の屈折率を大きく変化させて、エタロン502の透過波長を半導体レーザ201の利得帯域以上にした状態で、半導体レーザ201に高周波電流を重畳することにより、光源101から射出されるレーザ光を低コヒーレンス化することができる。
【0052】
本実施形態に係る光情報記録再生装置によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(第3の実施形態)
図6を参照して、第3の実施形態に係る光情報記録再生装置を説明する。
第3の実施形態の光情報記録再生装置は、第1の実施形態と略同じ構成を有する。本実施形態では、光源101が図6に示される光源601に置き換えられている。図6に示されるように、本実施形態の光源601は、半導体レーザ201、ボールレンズ602、及び波長選択素子としてのファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)603を備えている。
【0054】
半導体レーザ201で発生したレーザ光は、ボールレンズ602によりコリメートされてファイバブラッググレーティング603に向けられる。ファイバブラッググレーティング603は、光ファイバのコア中に屈折率の周期的な構造を作ることにより、入射したレーザ光のうちの特定の周波数帯のレーザ光を反射させる狭帯域な波長フィルタとして機能する。ファイバブラッググレーティング603は、機械的に伸長させることにより、或いは、温度変化させることにより、FBG周期が変わって透過特性が変化し、波長可変の外部共振器を構成することができる。
【0055】
本実施形態に係る光情報記録再生装置によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
上述した実施形態によれば、プレ露光時又はポスト露光時に光情報記録媒体に生じるノイズを低減することができる。さらに、プレ露光及びポスト露光用として、新たな光源を用意せずに、情報記録再生用の光源111を利用することにより、低コスト化及び装置の小型化を実現することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
100…光情報記録再生装置、101,501,601…光源、102,104…シャッタ、103,106…偏光ビームスプリッタ(PBS)、105,108,115…リレーレンズ、107…空間光変調部、109…アパーチャ、110…対物レンズ、111…光情報記録媒体、112,116…λ/2板、113,114,402…反射ミラー、120…定電流源、121…高周波重畳回路、201…半導体レーザ、202…コリメータレンズ、203…外部共振器、204…回折格子、205…ミラー、401…λ/4板、403…撮像部、502…エタロン、506…半透過ミラー、602…ボールレンズ、603…ファイバブラッググレーティング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム記録媒体と、
レーザ光を発生する半導体レーザを備える光源と、
前記半導体レーザに直流電流を印加する直流電流回路と、
前記半導体レーザに高周波電流を印加する高周波重畳回路と、
前記レーザ光を情報光ビーム及び参照光ビームに分割して、当該情報光ビーム及び参照光ビームを前記ホログラム記録媒体の略同じ位置に導く光学系と、
前記情報光ビームの光路上に配置され、前記情報光ビームを空間変調する空間光変調部と、を具備し、
前記ホログラム記録媒体に情報を記録する際には、前記半導体レーザは、前記直流電流回路により駆動されて、コヒーレンスの高いレーザ光を発生し、前記ホログラム記録媒体に情報を記録する前及び後の少なくとも一方には、前記半導体レーザは、前記高周波重畳回路により駆動されて、コヒーレンスの低いレーザ光を発生し、当該コヒーレンスの低いレーザ光により前記ホログラム記録媒体の特性を変化させることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項2】
前記光源は、前記レーザ光のうちの特定の周波数帯の光を選択的に透過させる波長選択素子をさらに備え、
前記ホログラム記録媒体に情報を記録する前及び後の少なくとも一方には、前記特定の周波数帯を、前記半導体レーザの利得帯域外に設定することを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録装置。
【請求項3】
前記波長選択素子は、回折格子であることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録装置。
【請求項4】
前記波長選択素子は、エタロンであることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録装置。
【請求項5】
前記波長選択素子は、ファイバブラッググレーティングであることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74091(P2012−74091A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215834(P2010−215834)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】