説明

ホースラインの形状検出システム

【課題】海中に配置されているホースラインの形状確認を行うことができ、しかも油の給送が行われている間や海象条件が悪い時でも正確な形状確認を行うことのできるホースラインの形状検出システムを提供する。
【解決手段】検出装置20から5.5kHzの音波が海中に向かって発信され、その音波に応答して各トランスポンダ10,11からそれぞれ所定の周波数の音波が発信され、検出装置20によって各トランスポンダ10,11との距離及び検出装置20に対する各トランスポンダ10,11の配置されている方向が検出される。また、検出装置20の検出結果に基づいて各トランスポンダ10,11の位置座標が前記所定時間おきに制御ユニット30によって演算されるとともに、前記所定時間おきに記憶装置31に記憶される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原油等の油を海中のパイプラインから海上のタンカーに輸送するためのマリンホースのホースラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のホースラインの監視システムとして、ホースラインに所定の間隔をおいて設けられた複数のGPS受信装置と、各GPS受信装置から送信された位置データに基づいてホースラインの形状を確認するモニタリング手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記ホースラインの監視システムでは、各GPS受信装置から送信される電波がGPS衛星を介してモニタリング手段によって受信されるようになっており、また、電波は海水中において急激に減衰するので、ホースラインが海上に浮いている場合はホースラインの形状確認が可能であるが、ホースラインが海中に配置されている場合はホースラインの形状確認を行うことができないという問題点があった。
【0005】
また、海中に配置されたホースラインの形状確認は、従来はダイバーによる目視によって行われていたが、ダイバーによる目視確認であるため正確な形状確認が難しく、また、油の給送が行われている間(荷役中)や海象条件が悪い時は安全を考慮してダイバーによる目視確認を行うことができないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、海中に配置されているホースラインの形状確認を行うことができ、しかも油の給送が行われている間や海象条件が悪い時でも正確な形状確認を行うことのできるホースラインの形状検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、複数のマリンホースを連結して成るホースラインの海中における形状を検出するホースラインの形状検出システムにおいて、互いにホースラインの長手方向に間隔をおいて設けられ、所定の音波を受信するとそれぞれ所定の周波数の音波を発信する複数のトランスポンダと、海中に向かって前記所定の音波を発信する音波発信手段と、各トランスポンダから発信される音波を受信することにより各トランスポンダまでの距離及び各トランスポンダが配置されている方向を検出可能な検出手段と、検出手段によって検出された各トランスポンダまでの距離及び各トランスポンダの配置されている方向に基づいて各トランスポンダの位置を演算する演算手段を備えている。
【0008】
これにより、互いにホースラインの長手方向に間隔をおいて複数のトランスポンダが設けられ、検出装置は各トランスポンダまでの距離及び各トランスポンダが配置されている方向を検出可能であり、演算手段は検出手段の検出結果に基づいて各トランスポンダの位置を演算することから、海中に配置されているホースラインの形状確認を行うことができ、しかも油の給送が行われている間や海象条件が悪い時でも正確な形状確認を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、海中に配置されているホースラインの形状確認を行うことができ、しかも油の給送が行われている間や海象条件が悪い時でも3次元的な形状確認を行うことができるので、海中におけるホースラインの形状が設計通りとなっているか否かの確認や、海象条件に応じたホースラインの形状の変化を容易且つ確実に確認することが可能となり、設置場所等に応じたホースラインの設計精度の向上を図る上で極めて有利である。また、ホースラインの破損とホースラインの形状変化との関係を調査することも可能となり、ホースラインの耐久性向上や耐久性の予測を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のホースラインの形状検出システムを示す図
【図2】マリンホースの側面図
【図3】トランスポンダ及び発電装置が取付けられたマリンホースの端部をあらわす図
【図4】発電装置の断面図
【図5】制御ユニット及び管理コンピュータの構成を示す図
【図6】表示装置を示す図
【図7】本実施形態の第1変形例を示すトランスポンダが取付けられたマリンホースの端部をあらわす図
【図8】本実施形態の第2変形例を示すトランスポンダが取付けられたマリンホースの端部をあらわす図
【図9】本実施形態の第3変形例を示すホース本体の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施形態を図1乃至図6を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態のホースラインの形状検出システムは、互いにホースラインHLの長手方向に間隔をおいて設けられ、それぞれ所定の音波を受信すると所定の周波数の音波を発信する複数のトランスポンダ10と、各トランスポンダ10から発信される音波を受信することにより各トランスポンダ10までの距離及び各トランスポンダ10の配置されている方向を検出可能な検出装置20と、検出装置20による検出結果からホースラインHLの形状を演算する制御ユニット30と、制御ユニット30の演算結果を衛星通信を介して受信する管理コンピュータ35とを備えている。
【0013】
ホースラインHLは複数のマリンホース40を連結して形成され、各マリンホース40はホース本体41とその軸方向両端にそれぞれ設けられた連結金具42とを備えた周知の構造を有する。ホース本体41は少なくとも一層の耐圧補強層が設けられた周知の構造を有する。各マリンホース40は海中に沈むように構成されたサブマリン型のマリンホースであり、例えば図1に示すように各マリンホース40によって2本のホースラインHLが形成され、各ホースラインHLの下端は水深数十mの海底に設けられたPLEM101(Pipe Line End Manifold,パイプラインエンドマニフォールド)に接続され、各ホースラインHLの上端は海面に浮かぶブイ200に接続されている。PLEM101は海底に敷設されたパイプライン施設100の一部に設けられ、マリンホース40の連結金具42が接続されている。ブイ200は例えばリング状の外周部201と円筒状の内周部202とを有し、外周部201と内周部202とが同軸上に配置されている。また、外周部201と内周部202とは例えば外周部201の軸心C周りに回転可能に構成され、各ホースラインHLの上端のマリンホース40の連結金具42が内周部202の下面のホース接続部202aに接続されている。また、外周部201は複数の係留チェーン203によって海底に係留されている。各マリンホース40のホース本体41にはそれぞれ単一または複数の周知のフロート43が取付けられ、各フロート43は各ホースラインHLが海中においてチャイニーズランタンと呼ばれる形状をなすように配置されている。
【0014】
各トランスポンダ10は直径が数cmで長さが数十cmの円筒状に形成されている。トランスポンダ10としては例えば海洋電子株式会社製の型式ALS−20TORのトランスポンダを使用することができる。また、トランスポンダ10は各ホースラインHLに3つずつ設けられ、各トランスポンダ10は例えば5.5kHzの音波を受信するとそれぞれ所定の周波数の音波を発信するように構成されている。例えば図1における右側のホースラインHLの一番上のトランスポンダ10は6kHzの音波を発信するように設定され、その下のトランスポンダ10は6.5kHzの音波を発信するように設定され、他の各トランスポンダ10もそれぞれ互いに異なる所定の周波数の音波を発信するように構成されている。また、各トランスポンダ10は軸方向の一端側が音波送受信部となっており、その音波送受信部がカバー10aによって覆われている。カバー10aは水中生物の付着を防止可能な材料から形成されており、水中生物の付着を防止可能な材料の例としては、防菌剤(イソチアゾロン等の化合物)を配合したクロロプレンゴム等のゴム材料が挙げられる。
【0015】
各トランスポンダ10はホースラインHLを構成する各マリンホース40にそれぞれ取付けられている。例えば、図2及び3に示すように、各マリンホース40のホース本体41の外周面に取付けられたカラー44にマリンホース40の軸方向に延びる孔44aを設け、その孔44aにトランスポンダ10を挿入することにより、各マリンホース40にそれぞれトランスポンダ10を着脱自在に取付けることが可能である。尚、カラー44はマリンホース40にフロート43を取付けるために用いられる周知のリング状部材であり、ゴム材料等から形成されている。また、カラー44を加硫成形する際に円柱状の中子を加硫用金型内に配置することにより、カラー44にトランスポンダ10を挿入するための孔44aを成形することが可能である。また、各トランスポンダ10と検出装置20との間に各ホースラインHLが配置されないように各トランスポンダ10が各ホースラインHLに取付けられている。
【0016】
各トランスポンダ10の他にPLEM101の上面には基準位置トランスポンダ11が取付けられている。基準位置トランスポンダ11は例えば各トランスポンダ10と同等の構成を有し、5.5kHzの音波を受信すると前記各トランスポンダ10と異なる所定の周波数の音波を発信するように構成されている。また、前記各トランスポンダ10と同様に音波送受信部がカバーで覆われている。さらに、基準位置トランスポンダ11のPLEM101に対する相対的な移動が10cm以下となるように構成され、このような場合、基準位置トランスポンダ11はPLEM101に対して固定的に取付けられていると言える。
【0017】
検出装置20は海中に向かって5.5kHzの音波を所定時間(例えば1分)おきに発信可能に構成され、各トランスポンダ10は検出装置20からの5.5kHzの音波を受信するとそれぞれ前記所定の周波数の音波を発信するようになっている。また、検出装置20として例えば海洋電子株式会社製の型式ALS−20TORのトランスデューサを使用することができる。検出装置20は複数の音波受信部21を備え、検出装置20が5.5kHzの音波を海中に向かって発信してから各トランスポンダ10から音波を各音波受信部21が受信するまでの時間に基づいて検出装置20と各トランスポンダ10との距離が検出され、各音波受信部21が受信する各トランスポンダ10からの音波の位相差に基づいて検出装置20に対する各トランスポンダ10の配置されている方向が検出されるようになっている。尚、検出装置20による各トランスポンダ10までの距離の検出及び各トランスポンダ10の配置されている方向の検出は周知のSSBL(Super Short Base Line)音響測位法を用いて行われるようになっている。
【0018】
図1に示すように、検出装置20はブイ200の内周部202の下面に例えば金属製のシャフト20aを介して固定され、内周部202における各ホースラインHLが接続された部分に対する検出装置20の相対的な移動が10cm以下となるとともに、内周部202における各ホースラインHLが接続された部分に対する相対的な傾きが10°以下となるように構成されている。このように検出装置20が固定されている場合、検出装置20はブイ200における各ホースラインHLが接続された部分に対して固定的に取付けられていると言える。また、検出装置20は内周部202の下面から下方に所定距離(例えば2m)だけ離れた位置に配置されている。
【0019】
制御ユニット30は周知のコンピュータから成り、図5に示すように、記憶装置31、表示装置32及びアンテナ33を備えている。制御ユニット30は例えばブイ200の内周部202の上端側に取付けられるとともに、検出装置20に接続され、検出装置20によって検出された各トランスポンダ10,11との距離及び各トランスポンダ10,11が配置されている方向に基づき、検出装置20を基準点として各トランスポンダ10,11のX方向(水平方向)、Y方向(X方向と直交する水平方向)及びZ方向(上下方向)の位置座標を演算する。さらに、制御ユニット30は基準位置トランスポンダ11に対する各トランスポンダ10の相対位置を演算するとともに、各トランスポンダ10の互いの相対位置を演算するようになっている。また、制御ユニット30は、各トランスポンダ10,11の位置座標を記憶装置31に記憶しながら、基準位置トランスポンダ11に対する各トランスポンダ10の相対位置を表示装置32に表示可能に構成されている。図6に示すように、表示装置32は各トランスポンダ10の位置P1及び基準位置トランスポンダ11の位置P2を表示するとともに、予め設定されているPLEM101やブイ200の位置を表示し、各ホースラインHLの推定形状IHLを表示するようになっている。図6は各トランスポンダ10,11の位置P1,P2及び各ホースラインHLの推定形状IHLを2次元的に表示するようになっているが、各トランスポンダ10,11の位置及び各ホースラインHLの推定形状IHLを3次元的に表示することも可能である。
【0020】
また、図5に示すように、制御ユニット30は、記憶装置31に記憶されている各トランスポンダ10,11の位置座標データを所定時間おき(例えば1時間おき)に送信可能に構成され、送信された位置座標データは周知の衛星通信を介して管理コンピュータ35のアンテナ36によって受信される。管理コンピュータ35は記憶装置37及び表示装置38を備えており、管理コンピュータ35は受信した位置座標データを記憶装置37に記憶させるとともに、表示装置32と同様の表示を表示装置38に行わせる。
【0021】
また、このホースラインの形状検出システムは傾斜検出装置50を備えており、傾斜検出装置50はブイ200の内周部202の検出装置20が取付けられた部分に対して固定的に取付けられている。傾斜検出装置50は例えば周知のジャイロセンサから成る。また、傾斜検出装置50がブイ200の内周部202の検出装置20が取付けられた部分に対して移動距離が10cm以下且つ傾きが10°以下となるように取付けけられている場合、傾斜検出装置50は内周部202の検出装置20が取付けられた部分に対して固定的に取付けられていると言える。
【0022】
また、各マリンホース40にはそれぞれ発電装置60が取付けられている。発電装置60は、連結金具42やホース本体41の外周面に取付けられた円環状の装置本体61と、装置本体61内に装置本体61の周方向に移動可能に設けられた永久磁石62と、コイル中心軸が装置本体61の周方向に延びるように線材を螺旋巻きすることにより形成されたコイル63とを有する。
【0023】
装置本体61は非磁性体の部材からなり、内部に永久磁石62が周方向に移動可能に収容された円環状の磁石用通路61aが形成されている。
【0024】
永久磁石62はフェライト磁石やアルニコ磁石等からなり、磁石用通路61aの内面に沿った形状を有する。また、永久磁石62の外周部には磁石用通路61aの内面に接触して回転する複数のローラ62aが設けられ、装置本体61が揺動すると永久磁石62が磁石用通路61a内を周方向に移動するようになっている。
【0025】
コイル63は装置本体61の外面と磁石用通路61aとの間に配置され、螺旋状に巻回された金属性の線材から成る。
【0026】
装置本体61には周知の蓄電器64が取付けられ、ホースラインHLが潮流等によって揺動すると、ホースラインHLの各マリンホース40に取付けられている装置本体61も揺動し、磁石用通路61a内を永久磁石62が移動することによりコイル63に電磁誘導によって電流が発生し、その電流が蓄電器64に蓄えられるようになっている。また、蓄電器64は図示しない導線によって各トランスポンダ10,11に接続され、各トランスポンダ10,11は蓄電器64からの電力によって作動するようになっている。
【0027】
このように構成されたホースラインの形状検出システムでは、前記所定時間(例えば1分)おきに検出装置20から5.5kHzの音波が海中に向かって発信され、その音波に応答して各トランスポンダ10,11からそれぞれ所定の周波数の音波が発信され、検出装置20によって各トランスポンダ10,11との距離及び検出装置20に対する各トランスポンダ10,11の配置されている方向が検出される。また、検出装置20の検出結果に基づいて各トランスポンダ10,11の位置座標が前記所定時間おきに制御ユニット30によって演算されるとともに、前記所定時間おきに記憶装置31に記憶され、各トランスポンダ10,11の表示装置32上における位置P1,P2が前記所定時間おきに更新される。
【0028】
このように、本実施形態によれば、所定時間おきに各トランスポンダ10,11の位置が演算され、海中に配置されている各ホースラインHLの形状確認を行うことができるので、油の給送が行われている間や海象条件が悪い時でも正確な形状確認を行うことができ、また、各ホースラインHLの形状確認を三次元的に行うことも可能である。従って、海中における各ホースラインHLの形状が設計通りとなっているか否かの確認や、海象条件に応じた各ホースラインHLの形状の変化を容易且つ確実に確認することが可能となり、設置場所等に応じたホースラインの設計精度の向上を図る上で極めて有利である。また、各ホースラインHLの破損と各ホースラインHLの形状変化との関係を調査することも可能となり、各ホースラインHLの耐久性向上や耐久性の予測を行うことも可能となる。
【0029】
また、検出装置20が内周部202に対する相対的な移動や傾きが発生するように内周部202に取付けられている場合は、その移動によって検出装置20と各トランスポンダ10,11との距離が変化し、その傾きによって検出装置20に対して各トランスポンダ10,11が配置されている方向が変化する。これに対し、検出装置20がブイ200の内周部202における各ホースラインHLが接続されている部分に対して固定的に取付けられているので、各トランスポンダ10,11の位置を正確に演算する上で極めて有利である。
【0030】
さらに、ブイ200の内周部202における検出装置20が取付けられている部分に対して傾斜検出装置50が固定的に取付けられ、傾斜検出装置50は内周部202の水平方向に対する傾きを検出することから、検出装置20の傾きに基づいて各トランスポンダ10,11の位置の演算結果を補正することも可能となり、各トランスポンダ10,11の位置を正確に演算する上で極めて有利である。
【0031】
また、基準位置トランスポンダ11がパイプライン施設100における各ホースラインHLの下端が接続されている部分に対して固定的に取付けられ、パイプライン施設100はブイ200と異なって移動しないことから、基準位置トランスポンダ11に対する各トランスポンダ10の相対位置を演算することにより、各トランスポンダ10の絶対位置を把握することが可能となり、各トランスポンダ10の位置を正確に演算する上で極めて有利である。
【0032】
また、制御ユニット30による演算結果が記憶装置31,37に保存されることから、保存されている各トランスポンダ10,11の位置データを用いて各ホースラインHLの破損と各ホースラインHLの形状変化との関係の調査等を行うことが可能となり、ホースラインの設計精度の向上を図る上でより有利である。尚、検出装置20による検出結果をそのまま記憶装置31,37に保存することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0033】
また、各トランスポンダ10がマリンホース40のホース本体41に取付けられたリング状部材としてのカラー44に着脱可能に取付けられているので、ホースラインHLへの各トランスポンダ10の取付けや各トランスポンダ10の交換を容易に行うことが可能となる。
【0034】
また、各トランスポンダ10と検出装置20との間に各ホースラインHLが配置されないように各トランスポンダ10が設けられているので、検出装置20によって各トランスポンダ10からの音波を確実に検出することができ、各トランスポンダ10の位置を正確に演算する上で極めて有利である。
【0035】
また、各トランスポンダ10の音波受信部が水中生物の付着を防止可能な材料から成るカバーによって覆われているので、各トランスポンダ10の音波送受信を長期に亘って確実に行うことができる。
【0036】
また、管理コンピュータ35は衛星通信によって制御ユニット30の演算結果を受信するようになっているので、様々な場所に設置されている複数のホースラインHLの形状確認を効率的に行うことができる。尚、検出装置20による検出結果をそのまま衛星通信を介して管理コンピュータ35によって受信することも可能である。
【0037】
尚、本実施形態では、ホース本体41の外周面にカラー44を取付けるとともに、カラー44にマリンホース40の軸方向に延びる孔44aを設け、その孔44aにトランスポンダ10を着脱可能に取付けたものを示した。これに対し、図7に示すように、ホース本体41の外周面にリング状部材としてのベルト45a付きホルダー45を取付け、ホルダー45にマリンホース40の軸方向に延びる孔45bを設け、孔45bにトランスポンダ10を着脱可能に取付けることも可能である。また、図8に示すように、連結金具42にトランスポンダ10を取付け可能な金具46を取付け、金具46によってトランスポンダ10を着脱可能に取付けることも可能である。
【0038】
尚、本実施形態では、各トランスポンダ10の音波送受信部がカバー10aによって覆われているものを示したが、カバー10aの代わりに音波送受信部を水中生物の付着を防止可能な材料から成る塗料によって覆うことも可能である。
【0039】
尚、本実施形態では、SSBL(Super Short Base Line)音響測位法を用いて検出装置20による各トランスポンダ10までの距離の検出及び各トランスポンダ10の配置されている方向の検出を行うものを示した。これに対し、LBL(Long Base Line)音響測位法等の他の周知の方法を用いることも可能である。
【0040】
尚、本実施形態では、制御ユニット30において各トランスポンダ10,11の位置を演算するものを示したが、検出装置20や管理コンピュータ35によって同様の演算を行うことも可能である。
【0041】
尚、本実施形態では、各トランスポンダ10,11の位置を三次元的に演算するものを示したが、各トランスポンダ10,11の位置を二次元的に演算することも可能である。
【0042】
尚、本実施形態では、発電装置60によって発電した電力が蓄電器64を介してトランスポンダ10に供給されるものを示した。これに対し、図9に示すように、マリンホース40のホース本体41の内部に圧電素子70を設け、圧電素子70によって発電された電力が図示しない蓄電器を介してトランスポンダ10に供給されるように構成することも可能である。
【0043】
この場合、図9に示すように、ホース本体41は例えばインナーチューブ層41a、2層のカーカスから成る第1耐圧コード層41b、ボディワイヤー層41c、バッファー層41d、第2耐圧コード層41e及びカバーゴム層41fが設けられた周知の構造を有し、圧電素子70がボディワイヤー層41cのワイヤーの間に配置されている。このため、ホースラインHLが潮流等によって揺動してマリンホース40が屈曲すると、圧電素子70に圧力が加わって圧電効果によって電力が発生し、その電力が蓄電器を介してトランスポンダ10に供給される。
【符号の説明】
【0044】
10…トランスポンダ、11…基準位置トランスポンダ、20…検出装置、21…音波受信部、30…制御ユニット、31…記憶装置、32…表示装置、33…アンテナ、35…管理コンピュータ、36…アンテナ、37…記憶装置、38…表示装置、40…マリンホース、41…ホース本体、42…連結金具、43…フロート、44…カラー、44a…孔、50…傾斜検出装置、60…発電装置、61…装置本体、62…永久磁石、63…コイル、64…蓄電器、100…パイプライン施設、101…PLEM、200…ブイ、201…外周部、202…内周部、202a…ホース接続部、203…係留チェーン、HL…ホースライン、C…軸心、IHL…推定形状。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマリンホースを連結して成るホースラインの海中における形状を検出するホースラインの形状検出システムにおいて、
互いにホースラインの長手方向に間隔をおいて設けられ、所定の音波を受信するとそれぞれ所定の周波数の音波を発信する複数のトランスポンダと、
海中に向かって前記所定の音波を発信する音波発信手段と、
各トランスポンダから発信される音波を受信することにより各トランスポンダまでの距離及び各トランスポンダが配置されている方向を検出可能な検出手段と、
検出手段によって検出された各トランスポンダまでの距離及び各トランスポンダの配置されている方向に基づいて各トランスポンダの位置を演算する演算手段を備えた
ことを特徴とするホースラインの形状検出システム。
【請求項2】
前記ホースラインの上端が海上に浮いているブイに接続され、
検出手段がブイにおけるホースラインが接続されている部分に対して固定的に取付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項3】
前記ブイにおける検出手段が取付けられている部分に対して固定的に取付けられ、水平方向に対するブイの傾きを検出する傾斜検出装置を備えた
ことを特徴とする請求項2に記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項4】
前記所定の音波を受信すると前記各トランスポンダと異なる周波数の音波を発信する基準位置トランスポンダを備え、
前記ホースラインの下端が海底のパイプライン設備に接続されるとともに、パイプライン設備におけるホースラインの下端が接続されている部分に対して前記基準位置トランスポンダが固定的に取付けられ、
前記検出手段が、基準位置トランスポンダから発信される音波を受信することにより基準位置トランスポンダまでの距離及び基準位置トランスポンダが配置されている方向を検出可能に構成され、
前記演算手段が、検出手段によって検出された基準位置トランスポンダまでの距離及び基準位置トランスポンダの配置されている方向に基づいて各トランスポンダと基準位置トランスポンダとの相対位置を演算するように構成されている
ことを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項5】
前記検出手段による検出結果及び演算手段による演算結果のうち少なくとも何れか一方を保存する保存手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項6】
前記各マリンホースが、少なくとも一層の耐圧補強層が設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具とを有し、
前記各トランスポンダのうち少なくとも一部のトランスポンダが、マリンホースのホース本体の外周面に取付けられたリング状部材に着脱可能に取付けられている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項7】
前記各マリンホースが、少なくとも一層の耐圧補強層が設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具とを有し、
前記各トランスポンダのうち少なくとも一部のトランスポンダが、マリンホースの連結金具に着脱可能に取付けられている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項8】
前記各トランスポンダが、各トランスポンダと音波発信手段及び検出手段との間にホースラインが配置されないように設けられている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項9】
前記各トランスポンダの音波送受信部を覆うカバーが各トランスポンダにそれぞれ取付けられ、カバーの少なくとも外表面が水中生物の付着を防止可能な材料から形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項10】
前記各トランスポンダの音波送受信部が水中生物の付着を防止可能な材料から成る塗料によって覆われている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。
【請求項11】
前記検出手段による検出結果及び演算手段による演算結果のうち少なくとも何れか一方を衛星通信によって受信する受信装置を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の何れかに記載のホースラインの形状検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−75502(P2011−75502A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229682(P2009−229682)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】