説明

ホース締結具

【課題】 ホースのパイプへの挿入作業性の向上を図ると共に、ホースの抜け止め機能も確保できるホース締結具を提供する。
【解決手段】 ホース締結具1は、長尺帯状板材をC字形状に曲げたクランプ部11と、クランプ部の一端から延在し、前記板材より幅狭の細帯部12と、クランプ部の他端側に形成され、細帯部を受け入れる矩形状開口部13と、クランプ部に隣接して形成される係合部Aとを備えていて、締結時に、差し込んだホース2の先端に隣接するパイプ3の外周面に設けられた被係合部Bに、ホース締結具の係合部Aが係合することによって、ホースの抜け止め構造を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプとホース(ゴムホース、合成樹脂ホース等)との締結に使用されるホース締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にパイプとホース(ゴムホース、合成樹脂ホース等)との締結は、ホースをパイプに差し込み、各種のホースバンドによりクランプされるが、ホースの抜け止めとして、パイプの口部に紐だし形状(円周上の凸形状)が設けられていて、この部位によりその抜け止め機能を付加させている。例えば水道の蛇口等が最も代表的なものである。その他家庭用のガス管のホースジョイントや工場等でのエアホースジョイント等は、パイプ部のホース挿入嵌合部に挿入方向からみて、なだらかな角度での鋸切刃形状の凹凸が設けられており、ホースの挿入性を考慮しつつホースバンドにて締め込むことにより、この凹凸にホースが喰い込み、抜け止め機能を付加させている。
【0003】
また、各種自動車部品でのパイプとホースも同様にパイプの口部に紐だし形状を設け、スプリング式ワンタッチバンド(クランプ)にて締結されている。例えば、ラジエータのタンク等の入口パイプ又は出口パイプとホースとの締結には、従来より図4(a)に示すような締結バンド1を使用して、ホース2をパイプ(入口パイプ又は出口パイプ)3に差し込み(図4(b)参照)、ホース2の差し込み部分に上から締結バンド1を巻き付け、締め付けてホース2をパイプ3に固定している(図4(c)参照)。そして、ホース2のパイプ3からの抜け防止として、パイプ3の先端部に環状凸部(紐だし形状)31を形成して、その機能を付加させている。
【0004】
このように、従来においては、ホースの抜け止め機能として、パイプの口部(先端部)の環状凸部(紐だし形状)やパイプ部のホースとの嵌合部に凹凸形状を設ける必要があり、そのため、ホースの差し込みがやりにくかった。また、製造上において、樹脂パイプの先端に環状凸部を設ける場合、一体成形後にパイプをムリ抜きすると、白化、シワの発生が避けられないという品質低下の問題がある。また、このような品質低下を防止するために、半割金型を用いて成形を行うと、パイプ部のホースとの嵌合部に転写された型割ラインによってホースとパイプとのシール性が低下し、流体の微小漏れやホースの亀裂促進等の問題が生じる可能性があるため、型割ラインを切削などで除去する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホースのパイプへの挿入作業性の向上を図るとともに、ホースのパイプからの抜け止め機能も確保でき、更にパイプの製造上の問題点を改善し、品質低下を防止できるホース締結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載のホース締結具を提供する。
請求項1に記載のホース締結具は、長尺帯状板材が略C字形状に曲げられたクランプ部と、クランプ部の一端から延在し、長尺帯状板材より幅狭である細帯部と、クランプ部の他端側に形成され、細帯部を受け入れる矩形状開口部と、クランプ部に隣接して形成される係合部を備えていて、締結時に、差し込んだホースの先端に隣接するパイプの外周面に設けられた被係合部に、ホース締結具の係合部が係合することによって、ホースの抜け止め構造を形成するようにしたものであり、これにより、ホースはパイプの平滑な外周面に沿って挿入することができるので、パイプへのホースの挿入が容易であり、その作業性が改善される。また、パイプ部を樹脂タンク等と一体成形した場合の金型のムリ抜きの必要がないために、パイプ部の品質低下の恐れも回避される。
【0007】
請求項2のホース締結具は、係合部をクランプ部に隣接し、これに沿って間隔をあけて設けられた複数の突出部に形成された係合穴とし、被係合部をパイプの外周面にこれら係合穴と同じ間隔で複数形成された係合突起としたものであり、これによって、ホース締結具の係合穴とパイプの係合突起とを凹凸係合させることでホースのパイプからの抜け止め構造としているものであり、その作用効果は、請求項1と同様である。
請求項3のホース締結具は、係合部をクランプ部に隣接し、これに沿ってC字形状に形成された凸条リブとし、被係合部をパイプの外周面にリング状に凸条リブと略同じ長さに形成された凹条溝としたものであり、これによって、ホース締結具の凸条リブとパイプの凹条溝とを凹凸係合させることで、パイプからのホースの抜け止め構造としているものであり、その作用効果は、請求項1,2と同様である。
【0008】
請求項4のホース締結具は、係合部をクランプ部に隣接し、これに沿ってC字形状に形成された凹条溝とし、被係合部をパイプの外周面にリング状に凹条溝と略同じ長さに形成された凸条リブとしたものであり、これによって、ホース締結具の凹条溝とパイプの凸条リブとを凹凸係合させることで、ホースのパイプからの抜け止め構造としているものであり、その作用効果は、請求項1,2,3と同様である。
請求項5のホース締結具は、クランプ部の他端側の先端を立ち上げることによって掴持部を形成し、締結時に一時的にクランプ部のC字形状を弾性的に拡開できるようにしたものであり、これによって、ホース締結具の挿着作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に従って本発明の実施の形態のホース締結具について説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態のホース締結具の斜視図であり、図1(b)は、差し込み前のホースとパイプの状態を示す図であり、図1(c)は、パイプとホースの締結状態を示す断面図である。
【0010】
ホース締結具1は、パイプ3に差し込んだホース2を挟持して固定するために金属材料から成る長尺帯状平板を曲げることによって一体的に構成されている。ホース締結具1は、図1(a)に示すように、その中央に位置し一方側が開口されたC字形状のクランプ部11を有している。このクランプ部11は、前記平板の中央部分を円弧状に曲げることによって形成されている。クランプ部11の開口側の一端には、このクランプ部11より幅狭の細帯部12が延在して形成されている。クランプ部11の開口側の他端には、矩形状の開口部13が形成されていると共に、その先端を立ち上げるように外方に曲げることにより掴持部14を形成している。この矩形状開口部13には、細帯部12が差し込まれるようになっている。
また、C字形状のクランプ部11には、中心部に対して一対の開口部15が設けられ、この各開口部15は、中心部側に近づくにしたがって開口部分が細くなるくさび形をしている。
【0011】
更に、ホース締結具1には、本発明の特徴である係合部Aが設けられている。この係合部Aは、図1(a)に示すようにクランプ部11に隣接し、かつこれに沿って設けられており、本実施形態では、クランプ部11に沿って間隔を開けて複数設けられた突出部16に形成された係合穴17(図1(a)では2個所)が係合部Aとなっている。
【0012】
一方、パイプ3側には、被係合部Bが設けられている。この被係合部Bは、図1(b)に示すように、差し込まれたホース2の先端に隣接するパイプ3の根元側の外周面に設けられており、本実施形態では、このパイプ3の外周面上に周方向に係合穴17と同じ間隔で複数設けられた係合突起32(図1(b)では、1個だけ示している)が、被係合部Bとなっている。この係合突起32の横断面形状は、クランプ部11の突出部16に形成された係合穴17の形状と略同じである。ホース締結具1によるホース2とパイプ3との締結時に、この係合穴17と係合突起32とが凹凸嵌合することによって、パイプ3からのホース2の抜けが防止できる。また、ホース2の差し込みの終点の位置決めのために、パイプ3に段差部33を形成してもよい。
【0013】
上記構成よりなるホース締結具1によれば、通常の状態では、C字形状のクランプ部11の円弧部の直径はホース2の外径より小さくなっている。ホース2がパイプ3に係合突起32に当接する位置まで差し込まれる。ホース締結具1の掴持部14をもって、クランプ部11のC字形状の開口を拡げ(円弧部の直径も拡げ)、差し込んだホース2の上からホース締結具1を包囲するようにセットする。掴持部14による強制的なクランプ部11の拡開力を解除すると、クランプ部11のスプリングバック作用によって、ホース締結具1はホース2の上からしっかりとホース2を挟持し、固定する。このとき、パイプ3の係合突起32がクランプ部11の突出部16に形成された係合穴17に嵌入し、パイプ3からのホース2の抜けが防止されると共にホース2の回り止めの効果もある。なお、クランプ部11の一対のクサビ形開口部15は、ホース締結具1が締結状態に移行するときに、クランプ部11が真円形状に変形し易くしている。
【0014】
このように、本実施形態によれば、従来のようなパイプの先端に紐だし形状(環状凸部)を設けていないので、パイプ3へのホース2の差し込み作業が容易である。また、タンク部とパイプ部とを樹脂で一体成形するような場合においても、成形後に金型をムリ抜きする必要がないために、白化やシワの発生を防止でき、品質低下の恐れがない。
【0015】
図2(a)は、本発明の第2実施形態のホース締結具の斜視図であり、図2(b)は、ホースが差し込まれる前のパイプの斜視図であり、図2(c)は、パイプとホースの締結状態を示す断面図である。この第2実施形態では、ホース締結具1の係合部Aの構造が先の第1実施形態とは異なっており、それに伴なって、パイプ3の被係合部Bの構造も異なっている。即ち、第2実施形態では、係合部Aの構造として、ホース締結具1のC字形状のクランプ部11に隣接し、かつこれに沿ってC字形状に凸条リブ18が設けられている。これに伴って、被係合部Bの構造として、パイプ3の根元側の外周面の所定の位置に周方向にC字形状の凸条リブ18と略同じ長さの凹条溝34が設けられている。所定の位置とは、パイプ3に差し込んだホース2の先端に隣接する位置である。なお、この凹条溝34は、パイプ3の全周に渡って設けてもよいし、適宜の長さで、しかも、断続的に設けるようにしてもよい。これらの凸条リブ18と凹条溝34とは、締結時には、凹凸嵌合されることで、ホース2のパイプ3からの抜けが防止できる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0016】
図3(a)は、本発明の第3実施形態のホース締結具の斜視図であり、図3(b)は、ホースが差し込まれる前のパイプの斜視図であり、図3(c)は、パイプとホースの締結状態を示す断面図である。この第3実施形態では、第2実施形態での係合部Aと被係合部Bとの凹凸嵌合の状態を逆の状態にしたものである。即ち、第3実施形態では、係合部Aの構造として、ホース締結具1のC字形状のクランプ部11に隣接し、かつこれに沿ってC字形状に凹条溝19が設けられている。これに伴って、被係合部Bの構造として、パイプ3の根元側の外周面の所定の位置に周方向にC字形状の凹条溝19と略同じ長さの凸条リブ35が設けられている。なお、この凸条リブ35は、パイプ3の全周に渡って設けてもよいし、適宜の長さで、しかも断続的に設けるようにしてもよい。これらの凹条溝19と凸条リブ35とは、締結時には、凹凸嵌合されることで、ホース2のパイプ3からの抜けが防止できる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0017】
以上説明したように、本発明では、従来のパイプ先端の紐だし形状に基づく、ホースの組付け作業性の低下、製造上の難易度、コストアップ等の問題を解決し、組付け作業性を改善し、また製造上の難易度を下げ、コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態のホース締結具を、(a)その斜視図、(b)ホースとパイプの差し込み前の状態を示す図、(c)ホースとパイプの締結状態の断面図、とで説明している図である。
【図2】本発明の第2実施形態のホース締結具を、(a)その斜視図、(b)ホースが差し込まれる前のパイプの斜視図、(c)ホースとパイプの締結状態の断面図、とで説明している図である。
【図3】本発明の第3実施形態のホース締結具を、(a)その斜視図、(b)ホースが差し込まれる前のパイプの斜視図、(c)ホースとパイプの締結状態の断面図、とで説明している図である。
【図4】従来技術のホース締結具を、(a)その斜視図、(b)ホースとパイプの差し込み前の状態を示す図、(c)ホースとパイプの締結状態の断面図、とで説明している図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ホース締結具
11 クランプ部
12 細帯部
13 矩形状開口部
14 掴持部
15 クサビ形開口部
16 突出部
17 係合穴(係合部A)
18 凸条リブ(係合部A)
19 凹条溝(係合部A)
2 ホース
3 パイプ
31 紐だし形状(環状凸部)
32 係合突起(被係合部B)
33 段差部
34 凹条溝(被係合部B)
35 凸条リブ(被係合部B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースをパイプに差し込み、その差し込んだ前記ホースの上から前記ホースを弾性的に締め付けて、前記パイプに締結するホース締結具において、
前記ホース締結具が、長尺帯状板材が略C字形状に曲げられたクランプ部と、前記クランプ部の一端から延在し、長尺帯状板材より幅狭である細帯部と、前記クランプ部の他端側に形成され、前記細帯部を受け入れる矩形状開口部と、前記クランプ部に隣接して形成される係合部とを備えていて、
締結時に、差し込んだ前記ホースの先端に隣接する前記パイプの外周面に設けられた被係合部に、前記ホース締結具の前記係合部が係合することによって、ホースの抜け止め構造を形成していることを特徴とするホース締結具。
【請求項2】
前記係合部が、前記クランプ部に隣接し、これに沿って間隔をあけて設けられた複数の突出部に形成された係合穴であり、前記被係合部が、前記パイプの外周面に前記係合穴と同じ間隔で複数形成された係合突起であることを特徴とする請求項1に記載のホース締結具。
【請求項3】
前記係合部が、前記クランプ部に隣接し、これに沿ってC字形状に形成された凸条リブであり、前記被係合部が、前記パイプの外周面にリング状に前記凸条リブと略同じ長さに形成された凹条溝であることを特徴とする請求項1に記載のホース締結具。
【請求項4】
前記係合部が、前記クランプ部に隣接し、これに沿ってC字形状に形成された凹条溝であり、前記被係合部が、前記パイプの外周面にリング状に前記凹条溝と略同じ長さに形成された凸条リブであることを特徴とする請求項1に記載のホース締結具。
【請求項5】
前記クランプ部の他端側の先端を立ち上げることによって掴持部を形成し、前記掴持部によって、締結時に一時的に、前記クランプ部のC字形状を弾性的に拡開することが可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のホース締結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−57798(P2006−57798A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242626(P2004−242626)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】