説明

ホールプラグ

【課題】パネルに設けられた透孔を閉塞するためのホールプラグに関し、低挿入力で、しかも高抜去力を実現することができるようにしたものである。
【解決手段】ホールプラグ10は、パネル20に設けられた透孔21に挿入される挿入部30、挿入部30に連設され、透孔21を塞ぐカバー部、挿入部30に連設され、パネル20の表面に圧接して挿入部30と透孔21との間を塞ぐ環状の鍔部50を備える。挿入部30には、挿入部30の外周面から突出し、パネル20の裏面に当接して挿入部30と透孔21との間を塞ぐ環状段部60、環状段部60の外周面から突出し、互いに離れて位置し、透孔21に係止される複数個の係止突起70、72を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パネルに設けられた透孔を閉塞するためのホールプラグに関し、低挿入力で、しかも高抜去力を実現することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホールプラグの挿入部の外周面に、環状の裏側鍔部と、前記挿入部の中心軸線に対する放射方向に等角度間隔に設けた複数、例えば8個のリブとを備えたものが知られている(例えば特許文献1の段落番号「0012」、図1〜3参照、以下「前者」という。)。
従来の上記リブは、裏側鍔部の剛性を向上させる目的で設けられたものである(例えば特許文献1の段落番号「0016」参照)。
【0003】
また、従来、挿入部の外周面には、全周に亘り等間隔に複数、例えば4個の弾発係合部を突設したホールプラグが知られている(例えば特許文献2の2頁14〜21行、第1〜6図参照、以下「後者」という。)。
従来の上記挿入部には、その外周に環状の溶融可能部材を環装していた(例えば特許文献2の2頁21〜25行参照)。従来の上記弾発係合部は、挿入部に環装した溶融可能部材が、挿入部から抜け落ちないように保持するためのものである(例えば特許文献2の2頁25〜26行参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-51314号公報
【特許文献2】実公平07-14692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の前者(特許文献1)のリブは、裏側鍔部の剛性を向上させる目的で設けられたものであるため、リブの存在により、挿入部の挿入力が増加してしまうといった問題点があった。
また、従来の後者(特許文献2)の弾発係合部は、溶融可能部材の溶融による本止めまでの仮止めの作用しか果たさないという問題点があった。
【0006】
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、低挿入力で、しかも高抜去力を実現することができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項2に記載の発明は、環状段部の中心を通る対角線上に係止突起が位置しないように設けることで、挿入力の増加を防止することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項3に記載の発明は、環状段部の中心を通る対角線上に係止突起が位置し、且つ隣接する係止突起の間の角度が等しく設定することで、係止突起を適切な位置に配置することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0010】
第1に、ホールプラグ(10)は、例えば図1〜4に示すように、次の構成を備える。
(1)挿入部(30)
挿入部(30)は、例えば図1及び図7に示すように、パネル(20)に設けられた透孔(21)に挿入されるものである。
(2)カバー部(40)
カバー部(40)は、例えば図1及び図7に示すように、挿入部(30)に連設され、透孔(21)を塞ぐものである。
【0011】
(3)鍔部(50)
鍔部(50)は、例えば図1及び図7に示すように、挿入部(30)に連設され、パネル(20)の表面に圧接して挿入部(30)と透孔(21)との間を塞ぐものであり、環状に形成されている。
第2に、挿入部(30)には、例えば図1〜4に示すように、次の構成を備える。
(4)環状段部(60)
環状段部(60)は、例えば図1〜4及び図7に示すように、挿入部(30)の外周面から突出し、パネル(20)の裏面に当接して挿入部(30)と透孔(21)との間を塞ぐものである。
【0012】
(5)係止突起(70〜72)
係止突起(70〜72)は、例えば図1〜4及び図7に示すように、複数個有り、環状段部(60)の外周面から突出し、互いに離れて位置し、透孔(21)に係止されるものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、係止突起(70〜72)は、例えば図8(a)に示すように、環状段部(60)の中心を通る対角線上に位置しないように設けられている。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、例えば図8(a)に示すように、隣接する係止突起(70〜72)の間の角度が等しく(例えば120度)設定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、低挿入力で、しかも高抜去力を実現することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0016】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、環状段部の中心を通る対角線上に係止突起が位置しないように設けることで、挿入力の増加を防止することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0017】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、環状段部の中心を通る対角線上に係止突起が位置し、且つ隣接する係止突起の間の角度が等しく設定することで、係止突起を適切な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ホールプラグをパネルに取り付ける際の側面図である。
【図2】ホールプラグを斜め上方から見た斜視図である。
【図3】ホールプラグを斜め下方から見た斜視図である。
【図4】ホールプラグを斜め下方から見た他の斜視図である。
【図5】ホールプラグの平面図である。
【図6】ホールプラグの底面図である。
【図7】ホールプラグをパネルに取り付けた状態を示し、同図は図A−A線に沿う一部断面図である。
【図8】(a)〜(d)は係止突起を異なる位置に配置した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(ホールプラグ10)
図中、10は、ホールプラグを示し、このホールプラグ10は、図1及び図7に示すように、自動車のドアパネル等(図示せず)のパネル20に設けられた透孔21を閉塞するためのものである。
なお、パネル20として、自動車のドアパネルを例示したが、ドアパネルに限定されないばかりか、自動車用にも限定されない。
【0020】
パネル20には、図7に示すように、板厚が異なるものが複数種類有り、例えば板厚の厚い、例えば1.2mmのパネル20と、板厚の比較的薄い、例えば0.6mmのパネル20aがある。
なお、パネル20,20aの板厚は、2種類に限定されず、0.6mm〜1.2mmの範囲内で3種類以上存在しても良いし、又、例示した0.6mm、1.2mmにも限定されない。
透孔21は、図1に示すように、パネル20の表裏面に貫通し、円形に形成されている。
【0021】
なお、透孔21の形状として、円形を例示したが、これに限定されない。
ホールプラグ10は、適度な弾性と剛性とを有する、例えばポリエチレン等の熱可塑性樹脂で一体的に成形されている。
ホールプラグ10には、図1〜4に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(3)については後述する。
【0022】
(1)挿入部30
(2)カバー部40
(3)鍔部50
なお、ホールプラグ10の各部は、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(挿入部30)
挿入部30は、図1及び図7に示すように、パネル20に設けられた透孔21に挿入されるものである。
【0023】
具体的には、挿入部30は、図1〜4に示すように、環状に形成され、その外径を透孔21の内径以下、本実施の形態では内径にほぼ等しく設定している。
挿入部30には、図1〜4に示すように、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については後述する。
(1)環状段部60
(2)係止突起70〜72
なお、挿入部30の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(カバー部40)
カバー部40は、図1及び図7に示すように、挿入部30に連設され、透孔21を塞ぐものである。
【0024】
具体的には、カバー部40は、図1〜4に示すように、上面が塞がれた円筒形に形成されている。カバー部40は、図7に示すように、挿入部30の下端部から中心に向かって環状に延びた底壁41と、底壁41の内周端部から上方に向かって立ち上がる環状の側壁42と、側壁42の環状の上端部を塞ぐ円盤形の上壁43とから構成されている。
(鍔部50)
鍔部50は、図1及び図7に示すように、挿入部30に連設され、パネル20の表面に圧接して挿入部30と透孔21との間を塞ぐものであり、環状に形成されている。
【0025】
具体的には、鍔部50は、図7に示すように、挿入部30の上端部から斜め下向きに傘形に延び、肉厚を挿入部30の肉厚より薄く設定し、たわみ易くしている。
(環状段部60)
環状段部60は、図1〜4及び図7に示すように、挿入部30の外周面から突出し、パネル20の裏面に当接して挿入部30と透孔21との間を塞ぐものである。
【0026】
具体的には、環状段部60は、図7に示すように、断面が凸形に突出し、その最大突出部分の外径を透孔21の内径より大きく設定している。
(係止突起70〜72)
係止突起70〜72は、図1〜4及び図7に示すように、複数個、例えば3個有り、環状段部60の外周面から突出し、互いに離れて位置し、透孔21に係止されるものである。
【0027】
また、係止突起70〜72は、図8(a)に示すように、環状段部60の中心を通る対角線上に位置しないように設けられている。
すなわち、図8(a)に示すように、隣接する係止突起70〜72の間の角度が等しく、例えば120度設定されている。
具体的には、係止突起70〜72は、図7に示すように、断面が凸形に突出し、その最大突出部分の外径を透孔21の内径より大きく設定している。
(係止突起70〜72を3個とした理由)
係止突起70〜72は、図8(c)に示すように、本実施の形態では120度間隔で3個設けている。
【0028】
係止突起70〜72を3個としたのは、3個の係止突起70〜72を対角線上に位置させないためである。
すなわち、図8(c)に示すように、係止突起a〜dを、90度間隔で4個設けると、透孔21に挿入した際に、対角方向に位置する係止突起aとb、cとdとが、透孔21の内縁に押されて互いに内向きにたわもうとして相互に干渉し合い、挿入力が増加する弊害がある。
【0029】
これに対し、図8(a)に示すように、係止突起70〜72を120度間隔で3個設けた場合には、3個の係止突起70〜72のいずれもが対角方向に位置しないため、透孔21に挿入する際に、3個の係止突起70〜72が相互に干渉せず、挿入力が増加する弊害を回避することができる。
なお、本実施の形態では、3個の係止突起70〜72を、120度間隔で設けたが、等間隔でなく、不規則な間隔、例えば、係止突起70と71とを、120度間隔で、係止突起71と72とを100度間隔で、係止突起72と70とを140度間隔で設けても良い。
【0030】
一方、図8(b)に示すように、係止突起a,bを、180度間隔で2個設けた場合にも、係止突起aとbとが、対角方向に位置し、上記弊害がある。
図8(d)に示すように、係止突起a〜eを72度間隔で5個設けた場合には、5個の係止突起a〜eが対角方向には位置しない。しかし、係止突起a〜eの個数を増加すると、隣接する係止突起a〜eの距離が接近し、対角方向に設けた場合と同様の弊害がある。
【0031】
以上の通り、係止突起70〜72を120度間隔で3個設けた場合が、最適である。係止突起a〜eを72度間隔で5個設けた場合は、係止突起a〜dを90度間隔で4個設けた場合と比較して、挿入力を低減できる利点があり、72度間隔で5個設けた場合も実用上、利用可能である。なお、5個を超える場合、例えば7個、9個等のように奇数個設けた場合には、隣接する係止突起の距離が接近し過ぎ、対角方向に設けた場合と同様の弊害が顕著になり実用上も適さない。
(使用方法)
上記した構成を備えるホールプラグ10の使用方法について説明する。
【0032】
まず、ホールプラグ10の挿入部30を、図1に示すように、パネル20の透孔21に合わせて挿入する。
挿入部30を挿入すると、その係止突起70〜72が、透孔21の内縁に当接する。ここで、ホールプラグ10を強く押し込むと、係止突起70〜72が透孔21の内縁に押され、環状の壁から構成される挿入部30が変形することで、係止突起70〜72が透孔21を通過する。
【0033】
係止突起70〜72が透孔21を通過すると、挿入部30が復元することで、係止突起70〜72が、図7に示すように、パネル20の裏面に当接する。
このため、鍔部50と係止突起70〜72との間で、パネル20がその表裏面からはさみ持たれ、挿入部30が透孔21から抜けなくなる。
同時に、環状段部60も、係止突起70〜72より一段低く形成されていることから、係止突起70〜72が透孔21の内縁を通過する際に、環状段部60も透孔21を通過する。
【0034】
環状段部60が透孔21を通過すると、図7に示すように、環状段部60がパネル20の裏面に当接する。環状段部60がパネル20の裏面に当接することにより、挿入部30と透孔21との間が塞がれる。
すなわち、環状段部60は、環状に形成されていることから、透孔21の全周にわたって水シール性が確保される。
【0035】
一方、鍔部50は、図7に示すように、パネル20の表面に押されて上方にたわみ、樹脂の弾性復元力により、パネル20の表面に弾性的に圧接する。
また、鍔部50の弾性復元力により、挿入部30に対して透孔21から抜ける方向の力が作用する。このため、係止突起70〜72及び環状段部60がパネル20の裏面に強く当接する。
係止突起70〜72がパネル20の裏面に強く当接することで、透孔21中での挿入部30のガタ付きを防止することができる。
【0036】
また、環状段部60がパネル20の裏面に強く当接することで、水シール性を向上することができる。
一方、パネル20aの板厚が薄い場合にも、図7に示すように、鍔部50のたわみ量が変化することで、パネル20aの板厚の変化を吸収することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 ホールプラグ
20,20a パネル 21 透孔
30 挿入部 40 カバー部
41 底壁 42 側壁
43 上壁
50 鍔部 60 環状段部
70〜72 係止突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに設けられた透孔に挿入される挿入部と、
前記挿入部に連設され、前記透孔を塞ぐカバー部と、
前記挿入部に連設され、前記パネルの表面に圧接して前記挿入部と前記透孔との間を塞ぐ環状の鍔部とからなるホールプラグにおいて、
前記挿入部には、
当該挿入部の外周面から突出し、前記パネルの裏面に当接して前記挿入部と前記透孔との間を塞ぐ環状段部と、
前記環状段部の外周面から突出し、互いに離れて位置し、前記透孔に係止される複数個の係止突起とを備えていることを特徴とするホールプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のホールプラグであって、
前記係止突起は、
前記環状段部の中心を通る対角線上に位置しないように設けられていることを特徴とするホールプラグ。
【請求項3】
請求項2に記載のホールプラグであって、
隣接する前記係止突起の間の角度が等しく設定されていることを特徴とするホールプラグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−64296(P2011−64296A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216950(P2009−216950)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】